(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む少なくとも2種の金属の合金からなり、該合金は全率固溶体であることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の反射型マスクブランク。
前記多層反射膜、前記保護膜、前記吸収体膜は、前記基板の周縁部に離間して遮蔽部材を設けてスパッタ成膜により形成することを特徴とする請求項8又は9に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
前記導電膜の前記基板側には真空紫外域の波長の光の反射を低減させる反射低減層を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む少なくとも2種の金属の合金からなり、該合金は全率固溶体であることを特徴とする請求項8乃至13の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
請求項1乃至6の何れかに記載の反射型マスクブランク、又は請求項7乃至14の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法により得られる反射型マスクブランクを用いて、前記レジスト膜に対してレジストパターンを形成する工程と、形成されたレジストパターンをマスクにして前記吸収体膜をパターニングする工程とを有することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反射型マスクブランクの代表的な構造は、上記特許文献1に開示されているように、基板の一方の主表面に、露光光(EUV光)を反射する多層反射膜が形成され、この多層反射膜上に露光光(EUV光)を吸収する吸収体膜が形成された構造のものである。
【0008】
このような反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する場合、まず反射型マスクブランクの表面に電子線描画用のレジスト膜を形成する。次に、このレジスト膜に対し所望の電子線描画、現像を行ってレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、上記吸収体膜をドライエッチングして吸収体膜パターン(転写パターン)を形成することにより、多層反射膜上に吸収体膜がパターン状に形成された構造の反射型マスクが出来上がる。
【0009】
ところで、上記反射型マスクブランクにおける上記多層反射膜及び吸収体膜は、通常、イオンビームスパッタリング装置やDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて形成され、上記多層反射膜及び吸収体膜はいずれも基板の主表面の全面に形成され、さらに基板の端面にも回り込むように形成される。そして、上記レジスト膜は反射型マスクブランク上の全面に形成されるが、基板周縁部のレジスト膜剥離による発塵を抑制するため、通常、マスクパターンの形成されない基板周縁部のレジスト膜を除去することが行われている。
【0010】
このように基板周縁部のレジスト膜が除去された(換言すれば、基板周縁部にはレジスト膜が形成されていない)状態の反射型マスクブランクを用いて上記のように反射型マスクを製造した場合、基板周縁部ではレジスト膜が形成されていないため、露出している吸収体膜がエッチングにより除去されて、多層反射膜が露出することになる。通常、反射型マスクの製造工程において、吸収体膜パターンを形成した後に、レジストパターン除去等のために酸性やアルカリ性の水溶液(薬液)を用いたウェット洗浄が行われる。また、半導体装置の製造においても、露光時に反射型マスクに付着した異物を除去するため、薬液を用いたウェット洗浄が行われる。これらの洗浄は少なくとも複数回行われる。波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられるが、本発明者は、この洗浄によって、基板周縁部において露出した多層反射膜が損傷し膜剥がれが発生することを見出した。このような多層反射膜の膜剥がれは重大なパターン欠陥となるおそれがある。
【0011】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、第一に、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止できる反射型マスクブランク及びその製造方法、並びにこの反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造方法を提供することであり、第二に、この反射型マスクを使用し、多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことができる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するため、特に反射型マスクブランクを構成する各膜の形成領域、及び反射型マスクブランクの表面に形成するレジスト膜の形成領域に着目し、鋭意検討した結果、以下の本発明の構成によれば、マスク作製後、多層反射膜の露出することがなく、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止でき、また多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことができることを見出した。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0013】
(構成1)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜、該多層反射膜を保護するための保護膜、EUV光を吸収する吸収体膜、およびレジスト膜が順に形成された反射型マスクブランクであって、前記基板の中心から前記多層反射膜の外周端までの距離をL(ML)、前記基板の中心から前記保護膜の外周端までの距離をL(Cap)、前記基板の中心から前記吸収体膜の外周端までの距離をL(Abs)、前記基板の中心から前記レジスト膜の外周端までの距離をL(Res)としたとき、
L(Abs)>L(Res)>L(Cap)≧L(ML)であって、且つ、前記レジスト膜の外周端は前記基板の外周端よりも内側に存在することを特徴とする反射型マスクブランクである。
上記構成1の反射型マスクブランクによれば、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製後、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、また多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことが可能である。
【0014】
(構成2)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜、該多層反射膜を保護するための保護膜、EUV光を吸収する吸収体膜、およびレジスト膜が順に形成されている反射型マスクブランクであって、前記基板の中心から前記多層反射膜の外周端までの距離をL(ML)、前記基板の中心から前記保護膜の外周端までの距離をL(Cap)、前記基板の中心から前記吸収体膜の外周端までの距離をL(Abs)、前記基板の中心から前記レジスト膜の外周端までの距離をL(Res)としたとき、
L(Abs)≧L(Cap)>L(Res)>L(ML)であって、且つ、前記レジスト膜の外周端は前記基板の外周端よりも内側に存在することを特徴とする反射型マスクブランクである。
上記構成2の反射型マスクブランクによれば、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製後、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、また多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことが可能である。
【0015】
(構成3)
前記多層反射膜が形成されている側と反対側の前記基板上に導電膜が形成され、
前記基板の中心から前記導電膜の外周端までの距離をL(BL)としたとき、
L(BL)>L(Res)であることを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランクである。
上記構成3の反射型マスクブランクによれば、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製後、この反射型マスクの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、前記反射型マスクの吸収体膜パターンの形成されていない、基板が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面には導電膜が形成されているので、EUV露光装置の静電チャックに真空紫外領域の光が照射されることがない。従って、前記光による静電チャックへのダメージを防止することができる。
【0016】
(構成4)
前記導電膜の前記基板側には真空紫外領域の波長の光の反射を低減させる反射低減層を有することを特徴とする構成3に記載の反射型マスクブランクである。
上記構成4の反射型マスクブランクによれば、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製後、この反射型マスクの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、前記反射型マスクの吸収体膜パターンの形成されていない、基板が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面には真空紫外領域の波長の光の反射を低減させる反射低減層が形成されているので、被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまい、パターン精度が悪化するという問題が引き起こされることがない。
【0017】
(構成5)
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む少なくとも2種の金属の合金からなり、該合金は全率固溶体であることを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載の反射型マスクブランクである。
構成5にあるように、前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む少なくとも2種の金属の合金からなり、該合金は全率固溶体であることにより、例えばTa系材料のドライエッチングに適用される塩素系ガスによるドライエッチングや、マスク製造工程やマスク使用時の薬液洗浄等による保護膜の減損が非常に少なくなる。特に、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において露出する保護膜の減損が抑制されることで、下層の多層反射膜の露出、膜剥がれを防止することができる。
【0018】
(構成6)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜、該多層反射膜を保護するための保護膜、EUV光を吸収する吸収体膜、およびレジスト膜が順に形成された反射型マスクブランクの製造方法であって、前記基板の中心から前記多層反射膜の外周端までの距離をL(ML)、前記基板の中心から前記保護膜の外周端までの距離をL(Cap)、前記基板の中心から前記吸収体膜の外周端までの距離をL(Abs)、前記基板の中心から前記レジスト膜の外周端までの距離をL(Res)としたとき、
L(Abs)>L(Res)>L(Cap)≧L(ML)であって、且つ、前記レジスト膜の外周端は前記基板の外周端よりも内側に存在するように、前記多層反射膜、前記保護膜、前記吸収体膜、および前記レジスト膜をそれぞれ形成することを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法である。
上記構成6によれば、得られた反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製後、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、また多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことが可能である。
【0019】
(構成7)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜、該多層反射膜を保護するための保護膜、EUV光を吸収する吸収体膜、およびレジスト膜が順に形成された反射型マスクブランクの製造方法であって、前記基板の中心から前記多層反射膜の外周端までの距離をL(ML)、前記基板の中心から前記保護膜の外周端までの距離をL(Cap)、前記基板の中心から前記吸収体膜の外周端までの距離をL(Abs)、前記基板の中心から前記レジスト膜の外周端までの距離をL(Res)としたとき、
L(Abs)≧L(Cap)>L(Res)>L(ML)であって、且つ、前記レジスト膜の外周端は前記基板の外周端よりも内側に存在するように、前記多層反射膜、前記保護膜、前記吸収体膜、および前記レジスト膜をそれぞれ形成することを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法である。
上記構成7によれば、得られた反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製後、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、また多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことが可能である。
【0020】
(構成8)
前記多層反射膜、前記保護膜、前記吸収体膜は、前記基板の周縁部に離間して遮蔽部材を設けてスパッタ成膜により形成することを特徴とする構成6又は7に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
構成8によれば、前記多層反射膜、前記保護膜、前記吸収体膜を、前記基板の周縁部に離間して遮蔽部材を設けてスパッタ成膜することにより、上記構成6又は構成7に記載の構成を有する反射型マスクブランクを確実に得ることができる。
【0021】
(構成9)
前記多層反射膜が形成されている側と反対側の前記基板上に導電膜を形成し、
前記基板の中心から前記導電膜の外周端までの距離をL(BL)としたとき、
L(BL)>L(Res)とすることを特徴とする構成6乃至8の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
上記構成9によれば、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製後、この反射型マスクの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、前記反射型マスクの吸収体膜パターンの形成されていない、基板が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面には導電膜が形成されているので、EUV露光装置の静電チャックに真空紫外領域の光が照射されることがない。従って、前記光による静電チャックへのダメージを防止することができる。
【0022】
(構成10)
前記導電膜は、前記基板の周縁部に離間して遮蔽部材を設けてスパッタ成膜により形成することを特徴とする構成9に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
上記構成10によれば、前記導電膜を、前記基板の周縁部に離間して遮蔽部材を設けてスパッタ成膜することにより、上記構成9に記載の構成を有する反射型マスクブランクを確実に得ることができる。
【0023】
(構成11)
前記導電膜の前記基板側の表面に、真空紫外領域の波長の光の反射を低減させる反射低減層を有することを特徴とする構成9又は10に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
上記構成11によれば、この反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを作製後、この反射型マスクの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、前記反射型マスクの吸収体膜パターンの形成されていない、基板が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面には真空紫外域の波長の光の反射を低減させる反射低減層が形成されているので、被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまい、パターン精度が悪化するという問題が引き起こされることがない。
【0024】
(構成12)
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む少なくとも2種の金属の合金からなり、該合金は全率固溶体であることを特徴とする構成6乃至11の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
構成12にあるように、前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む少なくとも2種の金属の合金からなり、該合金は全率固溶体であることにより、例えばTa系材料のドライエッチングに適用される塩素系ガスによるドライエッチングや、マスク製造工程やマスク使用時の薬液洗浄等による保護膜の減損が非常に少なくなる。特に、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において露出する保護膜の減損が抑制されることで、下層の多層反射膜の露出、膜剥がれを防止することができる。
【0025】
(構成13)
構成1乃至5の何れかに記載の反射型マスクブランク、又は構成6乃至12の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法により得られる反射型マスクブランクを用いて、前記レジスト膜に対してレジストパターンを形成する工程と、形成されたレジストパターンをマスクにして前記吸収体膜をパターニングする工程とを有することを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
上記構成の反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造することにより、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、また多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことが可能である。
さらには、上記構成の反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造することにより、この反射型マスクの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、前記反射型マスクの吸収体膜パターンの形成されていない、基板が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面には導電膜、好ましくは、導電膜の前記基板側の表面には、真空紫外域の波長の光の反射を低減させる反射低減層が形成されているので、EUV露光装置の静電チャックに真空紫外領域の光が照射されることがなく、また、導電膜による反射光によって被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまい、パターン精度が悪化するという問題が引き起こされることがない。
【0026】
(構成14)
構成13に記載の反射型マスクの製造方法により得られる反射型マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
上記反射型マスクを用いて半導体装置を製造することにより、反射型マスクの多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことができ、高品質の半導体装置を得ることができる。さらには、導電膜による反射光によって被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまうことがなく、パターン精度が悪化することがないので、高品質の半導体装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止できる反射型マスクブランク及びその製造方法、並びにこの反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記反射型マスクを用いて半導体装置を製造することにより、多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥を無くすことができ、高品質の半導体装置が得られる半導体装置の製造方法を提供することができる。
さらに本発明によれば、上述の効果に加え、マスク使用時のEUV露光装置の静電チャックへのダメージが防止でき、また、導電膜による反射光によって被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまい、パターン精度が悪化することを防止できる反射型マスクブランク及びその製造方法、並びにこの反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造方法を提供することができる。
さらに、導電膜による反射光によって被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまうことがなく、パターン精度が悪化することがない高品質の半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る反射型マスクブランクの第1の実施の形態の構成を示す断面図である。
図1に示されるように、本実施の形態の反射型マスクブランク10Aは、基板1の一方の主表面1a上に、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜2、該多層反射膜2を保護するための保護膜3、EUV光を吸収する吸収体膜4、およびレジスト膜5が順に形成されており、基板1の他方の主表面1b(以下、「裏面」とも呼ぶ。)には導電膜6が形成されている構成である。
【0030】
EUV露光用の場合、上記基板1としては、露光時の熱によるパターンの歪みを防止するため、0±1.0×10
−7/℃の範囲内、より好ましくは0±0.3×10
−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有する基板材料が好ましく用いられ、この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO
2−TiO
2系ガラス(2元系(SiO
2−TiO
2)及び3元系(SiO
2−TiO
2−SnO
2等))や、例えばSiO
2−Al
2O
3−Li
2O系の結晶化ガラス等のガラス基板を用いることができる。
【0031】
上記基板1として上記のガラス基板が好ましく用いられ、転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光用の場合、ガラス基板の転写パターンが形成される側の主表面142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時に静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、好ましくは0.5μm以下である。なお、ここでいう平坦度とは、TIR(TotalIndicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を示す値であり、ガラス基板の表面を元に最小二乗法で定められる平面を焦平面としたとき、この焦平面より上にあるガラス基板の表面の最も高い位置と、焦平面より下にある最も低い位置の高低差の絶対値である。
【0032】
また、上記基板1としては、上記のとおり、SiO
2−TiO
2系ガラスなどの低熱膨張係数を有するガラス基板が用いられるが、このようなガラス基板は、精密研磨により、表面粗さとして例えばRMSで0.1nm以下の高平滑性を実現することが困難な場合がある。そのため、ガラス基板の表面粗さの低減、若しくはガラス基板表面の欠陥を低減する目的で、ガラス基板の表面に下地層を形成することが好適である。このような下地層の材料としては、露光光に対して透光性を有する必要はなく、下地層表面を精密研磨した時に高い平滑性が得られ、欠陥品質が良好となる材料が好ましく選択される。例えば、Si又はSiを含有するケイ素化合物(例えばSiO
2、SiONなど)は、精密研磨した時に高い平滑性が得られ、欠陥品質が良好なため、好ましく用いられる。特にSiが好ましい。下地層の表面は、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.15nm以下、特に好ましくは0.1nm以下となるように精密研磨されることが望ましい。
【0033】
上記多層反射膜2は、低屈折率層と高屈折率層を交互に積層させた多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が用いられる。例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。その他に、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長により、材質を適宜選択すればよい。
【0034】
上記保護膜3は、反射型マスクの製造工程におけるドライエッチングやウェット洗浄から多層反射膜を保護するために設けられる。保護膜3の材料としては、例えばルテニウム(Ru)単体や、RuにNb,Zr,Y,B,Ti,La,Moのうち1以上の元素を含有するルテニウム化合物、ケイ素(Si)にRu,Rh,Cr,Bのうち1以上の元素を含有するケイ素化合物、Si、Zr、Nb、La、B等の材料が用いられる。これらのうち、特にRuを含む材料を用いると、多層反射膜の反射率特性がより良好となる。
【0035】
上記吸収体膜4は、露光光であるEUV光を吸収する機能を有するもので、例えばタンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料が好ましく用いられる。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の観点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。Taを主成分とする材料としては、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくとも何れかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料などを用いることができる。また、TaにB、Si、Ge等を加えることにより、アモルファス構造が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。さらに、TaにN、Oを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができる。
【0036】
また、上記導電膜6は、反射型マスクの静電チャッキングを促進するために設けられる。導電膜6の材料としては、シート抵抗値が100Ω/□以下であることが好ましく、例えばCr及びNを含有する材料(CrN)や、Taを含有する材料を用いることができる。静電チャック時の導電膜の耐摩耗性及び耐薬性の向上の点では特にTaを含有する材料が好ましい。なお、詳しくは後述するが、導電膜6としてTaを含有する材料を用いる場合は、予め上記ガラス基板に対して少なくとも熱エネルギー又は光エネルギーを付与して、ガラス基板に含まれる水素を脱離させたガラス基板を用いることが好適である。
【0037】
本実施の形態の反射型マスクブランク10Aにおいては、前記基板1の中心から前記多層反射膜2の外周端までの距離をL(ML)、前記基板1の中心から前記保護膜3の外周端までの距離をL(Cap)、前記基板1の中心から前記吸収体膜4の外周端までの距離をL(Abs)、前記基板1の中心から前記レジスト膜5の外周端までの距離をL(Res)としたとき、
L(Abs)>L(Res)>L(Cap)≧L(ML)の関係を満たし、且つ、前記レジスト膜5の外周端は前記基板1の外周端よりも内側に存在するように、前記多層反射膜2、前記保護膜3、前記吸収体膜4、および前記レジスト膜5をそれぞれ形成していることを特徴としている。
【0038】
図1では、L(Cap)>L(ML)である場合を例示している。また、
図1には、L(Abs)を具体的に図示しているが、L(ML)、L(Cap)、L(Res)についても上記の意味である。また、基板1の中心とは、矩形状(例えば正方形)の基板においてはその重心の位置(重心の位置に対応する基板1の主表面1a上の点の位置)とする。また、上記基板1の外周端とは、基板1の主表面1aと、面取面1c(基板1の主表面1aと側壁面1dとの間に介在する)との境界線をいうものとする。
【0039】
図1から明らかなように、本実施の形態では、基板1の一方の主表面1a上に形成された多層反射膜2の形成領域を覆うように上記保護膜3が形成され、この保護膜3の形成領域を覆うように上記吸収体膜4が形成されており、これらの各膜は、上記基板1の外周端よりも内側に存在するように形成された上記レジスト膜5との間で、L(Abs)>L(Res)>L(Cap)≧L(ML)の関係を満たしている。
【0040】
前記レジスト膜5の外周端は前記基板1の外周端よりも内側に存在するようにしているのは、基板周縁部のレジスト膜剥離による発塵を抑制するためである。また、本実施の形態においては、前記吸収体膜4の外周端は前記基板1の外周端よりも内側に存在している。
【0041】
図1は、
図1に示す第1の実施の形態の反射型マスクブランク10Aを用いて得られる反射型マスク20Aの構成を示す断面図である。
反射型マスクブランク10Aを用いて反射型マスクを製造する場合、まず上記レジスト膜5に対し所望の電子線描画、現像を行ってレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、上記吸収体膜4をドライエッチングして吸収体膜パターン4aを形成することにより、多層反射膜2及びその保護膜3上に吸収体膜パターン4aが形成された構造の反射型マスク20Aが出来上がる。
【0042】
図2からも明らかなように、反射型マスクブランクを構成する各膜の形成領域に関し、上述の所定の関係を満たす本実施の形態の反射型マスクブランク10Aを用いて反射型マスク20Aを製造した場合、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができる。そのため、多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥の発生も無くすことができる。
【0043】
次に、以上説明した本実施の形態の反射型マスクブランクの製造方法について説明する。
[基板作製工程]
主表面を所定の平滑度、平坦度になるように鏡面研磨した後、洗浄を行ったガラス基板を準備する。使用するガラス素材は前述のとおりである。
次に、成膜工程に移る前に、予めガラス基板に含まれる水素を脱離させる処理を行ってもよい。前記基板1の裏面に形成する導電膜6としてTaを含有する材料を用いる場合は、予め上記ガラス基板に対して少なくとも熱エネルギー又は光エネルギーを付与して、ガラス基板に含まれる水素を脱離させたガラス基板を用いることが好適である。
【0044】
ガラス基板に対する加熱処理又は光照射処理により、ガラス基板の表層あるいは内部に取り込まれているOH基、水素及び水等を強制的に追い出すことができる。加熱処理又は光照射処理を行った後のガラス基板に対して、タンタルを含有する導電膜6を成膜することで、タンタルを含有する導電膜6中に水素が取り込まれることを抑制でき、導電膜6の経時的な圧縮応力の増大を抑制することができる。
【0045】
上述のガラス基板に対して行う加熱処理は、ガラス基板を150℃以上に加熱する処理であることが好ましい。150℃未満の加熱処理では、温度が不十分なので、ガラス基板中の水素をガラス基板外に排出させる効果が十分には得られない。加熱処理は、200℃以上であるとより効果が得られ、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは400℃以上、特に好ましくは500℃以上であると、加熱時間を短くしても水素をガラス基板外に排除する十分な効果が得られる。また、ガラス基板に対する加熱処理は、ガラス基板の材料の軟化点温度未満であることが必要である。軟化点温度以上であると、ガラス基板が軟化して変形してしまうためである。ガラス材料の軟化点は、例えば、SiO
2−TiO
2系ガラスの軟化点は1490℃、合成石英ガラスの軟化点は1600℃である。また、ガラス基板の軟化による変形を確実に避けるために、加熱処理はガラス材料の軟化点よりある程度低い温度で行うことが好ましい。具体的には、SiO
2−TiO
2系ガラス及び合成石英ガラス等のガラスに対する加熱処理の温度は、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1000℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。加熱処理の処理時間は、加熱温度にもよるが、少なくとも5分以上であることが好ましく、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上である。
【0046】
加熱処理は、ガラス基板の周囲に水素が極力排除された気体が存在する状態で行われることが好ましい。空気中には水素自体の存在量は少ないが、水蒸気は多く存在する。クリーンルーム内の空気でも湿度がコントロールされてはいるが、水蒸気は比較的多く存在する。ガラス基板に対する加熱処理をドライエア中で行うことで、水蒸気に起因する水素のガラス基板への侵入を抑制することができる。さらに、水素や水蒸気を含まない気体(窒素等の不活性ガスや希ガスなど)中でガラス基板を加熱処理することがより好ましい。また、ガラス基板の加熱処理は、真空中で行うこともできる。
【0047】
次に、ガラス基板に対する光照射処理について説明する。
光照射処理は、ガラス基板の周囲に水素が極力排除された気体が存在する状態で行われることが好ましい。空気中には水素自体の存在量は少ないが、水蒸気は多く存在する。クリーンルーム内の空気でも湿度がコントロールされてはいるが、水蒸気は比較的多く存在する。ガラス基板に対する加熱処理をドライエア中で行うことで、水蒸気に起因する水素のガラス基板への侵入を抑制することができる。さらに、水素及び水蒸気を含まない気体(窒素等の不活性ガス及び希ガスなど)中でガラス基板を光照射処理することがより好ましい。光照射処理は、大気圧の気体中又は真空中で行うことができる。ガラス基板の表層及び内部に取り込まれているOH基、水素及び水等を、確実に減少させるために、光照射処理対象のガラス基板の周囲をある程度以上の真空度にすることが好ましい。その真空度は、中真空(0.1Pa〜100Pa)であることがより好ましい。
【0048】
光照射処理に利用する光は、1.3μm以上の波長を含む光であることが好ましい。例えばハロゲンヒーターから発する光は、1.3μm以上の波長を含む光であるので、具体的には、光照射処理は、ハロゲンヒーターから発する光をガラス基板に照射する処理であることが好ましい。
光照射処理の際の光照射時間は、使用する光源の波長にもよるが、例えば、1.3μm以上の波長を含む光(ハロゲンヒーター)の場合、1分以上であることが好ましく、好ましくは5分以上、10分以上が望ましい。
以上のようにしてガラス基板を作製する。
【0049】
[多層反射膜成膜工程]
前述のとおり、例えば波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜2としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。この多層反射膜2の成膜は、通常、イオンビームスパッタ法やマグネトロンスパッタリング法などを適用して行う。本実施の形態においては、多層反射膜12の外周端を他の膜の外周端との間で所定の関係に調整する必要があるため、
図7に示すような遮蔽部材30を設けた成膜方法を適用することができる。基板1の周縁部に離間して遮蔽部材30を設けることにより、スパッタ粒子が基板1の周縁部に堆積することが妨げられる。そして、遮蔽部材30を設けることにより、多層反射膜の外周領域において膜厚傾斜領域21を形成することができる。基板1の主表面と遮蔽部材30との距離h、遮蔽部材30による遮蔽長さW、基板1の主表面の法線に対するスパッタ粒子の入射角度を調節することにより、基板1の中心から多層反射膜2の外周端までの距離L(ML)、膜厚傾斜領域21における膜厚及び傾斜角度を制御することができる。
【0050】
[保護膜成膜工程]
保護膜3としては例えばRuを含む材料等が好ましく用いられる。この保護膜3の成膜においても、通常、イオンビームスパッタ法やマグネトロンスパッタリング法などを適用して行う。この保護膜3についてもその外周端を他の膜の外周端との間で所定の関係に調整する必要があるため、成膜に際しては上述の
図7に示すような遮蔽部材30を設けた成膜方法を適用することができる。
保護膜3の膜厚は特に制限されないが、多層反射膜2の反射率に大きく影響を与えず、かつドライエッチング及びそれに引き続くウェット洗浄から多層反射膜2を保護することができるように適宜設定され、例えば1〜5nmの範囲である。
【0051】
[吸収体膜成膜工程]
吸収体膜4としては、前述のとおり例えばタンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料が好ましく用いられる。この吸収体膜4の成膜は、通常、マグネトロンスパッタリング法などを適用して行う。本実施の形態においては、この吸収体膜4についてもその外周端を他の膜の外周端との間で所定の関係に調整する必要があるため、成膜に際しては例えば
図8に示すような遮蔽部材50を設けた成膜方法を適用することができる。基板1の周縁部に離間して遮蔽部材50を設けることにより、スパッタリングターゲット40からのスパッタ粒子が基板1の周縁部に堆積することが妨げられ、基板1の外周領域に吸収体膜4は形成されない。
吸収体膜4の膜厚は、露光光であるEUV光を十分に吸収できる厚みであればよく、用いる吸収体材料の吸収係数によっても異なるが、通常30〜100nm程度の範囲である。
【0052】
[導電膜成膜工程]
基板1の裏面に設けられる導電膜6としては、前述のとおり、例えばCr及びNを含有する材料(CrN)や、Taを含有する材料を用いることができるが、静電チャック時の導電膜の耐摩耗性及び耐薬性の向上の点では特にTaを含有する材料が好ましく用いられる。この導電膜6の成膜は、通常、イオンビームスパッタ法やマグネトロンスパッタリング法などを適用して行う。上述のとおり、導電膜6としてTaを含有する材料を用いる場合は、予め上記ガラス基板に対して少なくとも熱エネルギー又は光エネルギーを付与して、ガラス基板に含まれる水素を脱離させたガラス基板を用いることが好適である。
Taを含有する材料としては、タンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料であることが好ましく、静電チャック時における導電膜6の耐摩耗性及び薬液耐性を向上することができる。
【0053】
タンタルは水素を取り込むと脆性化する特性を有するため、タンタルを含有する材料からなる導電膜6を成膜した直後の状態でも水素の含有量を抑制することが望まれる。このため、タンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料を選定することが望ましい。ここで「水素を実質的に含有しない」とは、導電膜6中の水素含有量が少なくとも5原子%以下であることをいう。導電膜6中の水素含有量の好ましい範囲は、3原子%以下であることが好ましく、検出下限値以下であることがより好ましい。
【0054】
導電膜6を形成するタンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料としては、例えば、タンタル金属、並びにタンタルに、窒素、酸素、ホウ素及び炭素から選択される一以上の元素を含有し、水素を実質的に含有しない材料などが挙げられる。具体的には、Ta、TaN、TaO、TaON、TaB、TaBN、TaBO、TaBON、TaSi、TaSiN、TaSiO及びTaSiONから選択した材料の一種類の薄膜又は二種類以上の複数の薄膜であることができる。また、耐摩耗性を向上し、パーティクル発生を抑制するために、導電膜6は、表面平滑性の高い非晶質(アモルファス)構造であることが好ましい。なお、上述の材料は、タンタル以外の金属を含有することができる。
【0055】
上記導電膜6は、タンタル及び窒素を含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料を含むことができる。タンタルに窒素を含有させることで、導電膜6中のタンタルの酸化を抑制することができる。
また、耐摩耗性及び薬液耐性の観点からは、TaBN及び/又はTaNを用いることが好ましく、TaBN/Ta
2O
5又はTaN/Ta
2O
5を用いることがさらに好ましい。
【0056】
導電膜6がTaB薄膜の場合の組成比は、Bを5〜25原子%含み、残部がTaであることが好ましい。導電膜6がTaBNの場合の組成比は、Bを5〜25原子%、Nを5〜40原子%含み、残部がTaであることが好ましい。導電膜6がTaNの場合の組成比は、Nを5〜40原子%含み、残部がTaであることが好ましい。導電膜6がTaOの場合の組成比は、Oを1〜20原子%含み、残部がTaであることが好ましい。
導電膜6の膜厚は特に制限されず適宜設定されるが、例えば10〜300nmの範囲である。
なお、上記導電膜6は、基板1に対して上記多層反射膜2を成膜する前に最初に成膜してもよい。
【0057】
[レジスト膜形成工程]
レジスト膜5は、通常、回転塗布装置を用いて回転塗布(スピンコート)される。本実施の形態においては、基板周縁部のレジスト膜剥離による発塵を抑制するため、レジスト膜5の外周端は前記基板1の外周端よりも内側に存在している。このようにレジスト膜5を形成するためには、通常の回転塗布法により、ブランク主表面の全面にレジスト膜を形成し、次いでブランク周縁部において形成されたレジスト膜を除去する方法が挙げられる。
【0058】
この場合、ブランク周縁部において不要なレジスト膜を除去する方法としては、たとえば、主表面全面にレジスト膜を形成したマスクブランク表面をカバー部材で覆い、このカバー部材の上からレジスト膜を溶解する溶媒を供給してこの溶媒をカバー部材の周辺部に設けられた溶媒流路を通じ、マスクブランク周縁部を除く領域においては残存され、マスクブランク周縁部においては除去されるよう、溶媒の供給量及び/又は供給装置を調整しながら溶媒を所定部位に供給することによって、不要なレジスト膜を溶媒で除去する方法を適用することができる(特許第3607903号公報参照)。また、不要なレジスト領域にレジスト剥離液を供給するための供給路と、この不要なレジスト領域のレジストを溶解した剥離液を排出するための排出路とを有するヘッド(具体的には基板の上下主表面周縁部及び端面部を囲むように断面コ字状に形成されたヘッド)を備えた除去装置を用いてもよい(例えば特開2004−335845号公報参照)。また、マスクブランク周縁部を予めレジスト膜が形成されないようにシールした上で、通常の回転塗布法によりレジスト膜を形成する方法を適用することもできる。
【0059】
以上のようにして製造される本実施の形態の反射型マスクブランク(
図1参照)を用いて、反射型マスク(
図2参照)を作製する方法については前述したとおりである。
【0060】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明に係る反射型マスクブランクの第2の実施の形態の構成を示す断面図である。
本実施の形態の反射型マスクブランク10Bにおいては、前記基板1の中心から前記多層反射膜2の外周端までの距離をL(ML)、前記基板1の中心から前記保護膜3の外周端までの距離をL(Cap)、前記基板1の中心から前記吸収体膜4の外周端までの距離をL(Abs)、前記基板1の中心から前記レジスト膜5の外周端までの距離をL(Res)としたとき、
L(Abs)≧L(Cap)>L(Res)>L(ML)の関係を満たし、且つ、前記レジスト膜5の外周端は前記基板1の外周端よりも内側に存在するように、前記多層反射膜2、前記保護膜3、前記吸収体膜4、および前記レジスト膜5をそれぞれ形成していることを特徴としている。
なお、
図3では、L(Abs)とL(Cap)がほぼ等しい場合を例示している。
【0061】
図3から明らかなように、本実施の形態では、基板1の一方の主表面1a上に形成された多層反射膜2の形成領域を覆い、且つ主表面1aの略全面に上記保護膜3が形成され、この保護膜3の形成領域とほぼ同一の領域を覆うように上記吸収体膜4が形成されており、これらの各膜は、上記基板1の外周端よりも内側に存在するように形成された上記レジスト膜5との間で、L(Abs)≧L(Cap)>L(Res)>L(ML)の関係を満たしている。
【0062】
図4は、
図3に示す第2の実施の形態の反射型マスクブランク10Bを用いて得られる反射型マスク20Bの構成を示す断面図である。
前述の第1の実施の形態の場合と同様、反射型マスクブランク10Bを用いて反射型マスクを製造するにあたっては、まず上記レジスト膜5に対し所望の電子線描画、現像を行ってレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、上記吸収体膜4をドライエッチングして吸収体膜パターン4aを形成することにより、多層反射膜2及びその保護膜3上に吸収体膜パターン4aが形成された構造の反射型マスク20Bが出来上がる。
【0063】
図4からも明らかなように、本実施の形態においても、反射型マスクブランクを構成する各膜の形成領域に関し、上述の所定の関係を満たす本実施の形態の反射型マスクブランク10Bを用いて反射型マスク20Bを製造した場合、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、さらには多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥の発生も無くすことができる。
【0064】
なお、本実施の形態においては、反射型マスク20Bの基板周縁部において上記保護膜3が露出することになる。従って、上記保護膜3が、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等に対して十分な耐性を有していないと、上記保護膜3がこれら洗浄等により損傷し、やがては周縁部の多層反射膜2が露出して多層反射膜2の膜剥がれを引き起こすおそれがある。
【0065】
上記保護膜3の材料は、前述したように、例えばルテニウム(Ru)単体や、ルテニウム化合物、ケイ素化合物等の材料が用いられるが、本実施の形態においては、保護膜3として、ルテニウム(Ru)を含む少なくとも2種の金属の合金からなり、該合金は全率固溶体である材料を用いることが好適である。このルテニウム(Ru)を含む少なくとも2種の金属の合金からなり、該合金は全率固溶体である材料を用いることにより、例えばTa系材料のドライエッチングに適用される塩素系ガスによるドライエッチングや、マスク製造工程やマスク使用時の薬液洗浄等による保護膜の減損が非常に少なくなる。本実施の形態のように、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において露出する保護膜の減損が抑制されることで、下層の多層反射膜の露出、膜剥がれを防止することができる。
【0066】
前記全率固溶体とは、液相状態でも固相状態でも各構成金属があらゆる濃度で溶け合う合金のことである。全率固溶体である合金は非常に安定なので、塩素系ガスを使用したドライエッチングによる塩素化を受けにくい。
【0067】
全率固溶体である合金としては、例えばルテニウム(Ru)とコバルト(Co)とからなる合金、ルテニウム(Ru)とレニウム(Re)とからなる合金、ニッケル(Ni)と銅(Cu)とからなる合金、金(Au)と銀(Ag)とからなる合金、銀(Ag)とスズ(Sn)とからなる合金、銀(Ag)と銅(Cu)とからなる合金及びゲルマニウム(Ge)とシリコン(Si)とからなる合金等が挙げられるが、本実施の形態においては、少なくともルテニウムを含む合金が好ましい。
これらの合金が単独で保護膜3を形成していても、2種以上の合金が併用されて保護膜3を形成していてもよい。
【0068】
また、塩素系ガスを使用したドライエッチングによる塩素化を受けにくくし、ウェット洗浄による保護膜3の減膜若しくは消失の抑制効果が発揮される範囲で、保護膜3を構成する全率固溶体である合金に、酸素、窒素、水素、炭素等の元素が含まれていても構わない。
また、塩素系ガスを使用したドライエッチングによる塩素化を受けにくくし、ウェット洗浄による保護膜3の減膜若しくは消失の抑制効果が発揮される範囲で、保護膜3の極最表面に、全率固溶体である合金の酸化物、窒化物、水素化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、酸化窒化炭化物等が形成されていても構わない。
【0069】
保護膜3は、通常、反射型マスクにおいてその構成層として残存するため、EUV光の吸収が低い(保護膜3が形成された状態において多層反射膜2の反射率が通常63%以上(通常73%未満)である)ことが好ましい。そのような観点からも、保護膜3は、ルテニウム(Ru)とコバルト(Co)とからなる合金又はルテニウム(Ru)とレニウム(Re)とからなる合金であることが好ましい。
【0070】
EUV光に対する高反射率の観点(反射率63%以上)から、前記ルテニウム(Ru)とコバルト(Co)とからなる合金又はルテニウム(Ru)とレニウム(Re)とからなる合金においては、Ruの前記合金中の含有量は、75原子%以上99.5原子%以下であることが好ましく、90原子%以上99.5%以下であることがより好ましく、95原子%以上99.5原子%以下であることが特に好ましい。この原子組成は、オージェ電子分光法により測定することができる。
【0071】
このような全率固溶体である合金からなる保護膜3においても、その形成方法や膜厚については、前述の第1の実施の形態と同様である。
なお、このような塩素系ガスによるドライエッチングや、マスク製造工程やマスク使用時の薬液洗浄等による保護膜の減損が非常に少なくなる全率固溶体である合金材料は、前述の第1の実施の形態(基板周縁部においては保護膜3は露出していない)においても好適であることは勿論である。
【0072】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明に係る反射型マスクブランクの第3の実施の形態の構成を示す断面図である。
本実施の形態の反射型マスクブランク10Cは、前述の第1の実施の形態の反射型マスクブランク10Aの変形例であり、吸収体膜4が基板1の端面(面取面1c及び側壁面1d)に回り込むように形成されている。このような吸収体膜4は、吸収体膜4の成膜の際、前述の遮蔽部材50(
図8)を設けないで成膜を行うことによって形成することができる。
【0073】
[第4の実施の形態]
図6は、本発明に係る反射型マスクブランクの第4の実施の形態の構成を示す断面図である。
本実施の形態の反射型マスクブランク10Dは、前述の第2の実施の形態の反射型マスクブランク10Bの変形例であり、保護膜3及び吸収体膜4がいずれも基板1の端面(面取面1c及び側壁面1d)に回り込むように形成されている。このような保護膜3及び吸収体膜4は、保護膜3及び吸収体膜4の成膜の際、前述の遮蔽部材30又は50(
図7、
図8)を設けないで成膜を行うことによって形成することができる。
【0074】
以上の第3の実施の形態の反射型マスクブランク10Cまたは第4の実施の形態の反射型マスクブランク10Dを用いて得られる反射型マスクにおいても、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、さらには多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥の発生も無くすことができる。
【0075】
[第5の実施の形態]
図11は、本発明に係る反射型マスクブランクの第5の実施の形態の構成を示す断面図である。
本実施の形態の反射型マスクブランク10Eは、前述の第1の実施の形態の反射型マスクブランク10Aの変形例であり、多層反射膜2が形成されている側と反対側の基板1上に導電膜6が形成され、基板1の中心から導電膜6の外周端までの距離をL(BL)としたとき、L(BL)>L(Res)の関係を満たした反射型マスクブランクである。
【0076】
本実施の形態においては、この導電膜6についてもその外周端をレジスト膜5の外周端との関係で所定の関係(L(BL)>L(Res))に調整する必要があるため、成膜に際しては、例えば、
図8に示すような遮蔽部材50を設けた成膜方法を適用することができる。基板1の周縁部に離間して遮蔽部材50を設けることにより、スパッタリングターゲット40からのスパッタ粒子が基板1の周縁部に堆積することが妨げられ、基板1の外周領域に導電膜6は形成されない。
【0077】
図12は、
図11に示す第5の実施の形態の反射型マスクブランク10Eを用いて得られる反射型マスク20Eの構成を示す断面図である。
反射型マスクブランク10Eを用いて反射型マスクを製造する場合、まず上記レジスト膜5に対し、所望の電子線描画、現像を行ってレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、上記吸収体膜4をドライエッチングして吸収体膜パターン4aを形成することにより、多層反射膜2及びその保護膜3上に吸収体膜パターン4aが形成された構造の反射型マスク20Eを得る。
【0078】
図12からも明らかなように、反射型マスクブランクを構成する各膜の形成領域に関し、上述の所定の関係を満たす本実施の形態の反射型マスクブランク10Eを用いて反射型マスク20Eを製造した場合、この反射型マスク20Eの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、反射型マスク20Eの吸収体膜パターン4aの形成されていない、基板1が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面に形成された導電膜6が形成されているので、EUV露光装置の静電チャックに真空紫外領域(波長190〜400nm)の光が照射されることがない。従って、前記光による静電チャックへのダメージを防止することができる。
【0079】
また、上記導電膜6のガラス基板側の表面には、真空紫外領域の波長の光の反射を低減させる反射低減層を設けることができる。この場合、反射型マスク20Eの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、前記反射型マスク20Eの吸収体膜パターン4aの形成されていない、基板1が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面には真空紫外領域の波長の光の反射を低減させる反射低減層が形成されているので、被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまい、パターン精度が悪化するという問題が引き起こされることがない。上記反射低減層は、例えば、真空紫外領域の光の反射を15%以下にする材料が選択される。
【0080】
上記反射低減層の材料としては、CrO、CrON、TaO、TaON、TaBO、TaBON等を使用することができる。反射低減層が金属酸化物(CrO、TaO、TaBO等)の場合、酸素(O)の含有量は10原子%〜90原子%とすることが好ましい。また、反射低減層が金属酸化窒化物(CrON、TaON、TaBON等)の場合、酸素(O)と窒素(N)の合計含有量は10原子%〜90原子%とすることが好ましい。
ガラス基板側の表面に反射低減層が形成された導電膜6としては、ガラス基板側から反射低減層と、真空チャッキングを促進するための導電層の積層構造とすることができる。
【0081】
以上の第5の実施の形態の反射型マスクブランク10Eを用いて得られる反射型マスク20Eにおいても、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、さらには多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥の発生も無くすことができる。
【0082】
[第6の実施の形態]
図13は、本発明に係る反射型マスクブランクの第6の実施の形態の構成を示す断面図である。
本実施の形態の反射型マスクブランク10Fは、前述の第2の実施の形態の反射型マスクブランク10Bの変形例であり、多層反射膜2が形成されている側と反対側の基板1上に導電膜6が形成され、基板1の中心から導電膜6の外周端までの距離をL(BL)としたとき、L(BL)>L(Res)の関係を満たした反射型マスクブランクである。
【0083】
本実施の形態においては、この導電膜6についてもその外周端をレジスト膜5の外周端との関係で所定の関係(L(BL)>L(Res))に調整する必要があるため、成膜に際しては、例えば、
図8に示すような遮蔽部材50を設けた成膜方法を適用することができる。基板1の周縁部に離間して遮蔽部材50を設けることにより、スパッタリングターゲット40からのスパッタ粒子が基板1の周縁部に堆積することが妨げられ、基板1の外周領域に導電膜6は形成されない。
【0084】
図14は、
図13に示す第6の実施の形態の反射型マスクブランク10Fを用いて得られる反射型マスク20Fの構成を示す断面図である。
反射型マスクブランク10Fを用いて反射型マスクを製造する場合、前述と同様、まず上記レジスト膜5に対し、所望の電子線描画、現像を行ってレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、上記吸収体膜4をドライエッチングして吸収体膜パターン4aを形成することにより、多層反射膜2及びその保護膜3上に吸収体膜パターン4aが形成された構造の反射型マスク20Fを得る。
【0085】
図14からも明らかなように、反射型マスクブランクを構成する各膜の形成領域に関し、上述の所定の関係を満たす本実施の形態の反射型マスクブランク10Fを用いて反射型マスク20Fを製造した場合、この反射型マスク20Fの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、反射型マスク20Fの吸収体膜パターン4aの形成されていない、基板1が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面に形成された導電膜6が形成されているので、EUV露光装置の静電チャックに真空紫外領域(波長190〜400nm)の光が照射されることがない。従って、前記光による静電チャックへのダメージを防止することができる。
【0086】
また、本実施の形態においても、上記導電膜6のガラス基板側の表面には、真空紫外領域の波長の光の反射を低減させる反射低減層を設けることができる。この場合、反射型マスク20Fの裏面を静電チャックで保持してEUV露光装置により被転写基板にパターンを転写して半導体装置を製造するにあたり、前記反射型マスク20Fの吸収体膜パターン4aの形成されていない、基板1が露出された基板周縁部に、EUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面には真空紫外領域の波長の光の反射を低減させる反射低減層が形成されているので、被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまい、パターン精度が悪化するという問題が引き起こされることがない。ガラス基板側の表面に反射低減層が形成された導電膜6としては、ガラス基板側から反射低減層と、真空チャッキングを促進するための導電層の積層構造とすることができる。
【0087】
本実施の形態における上記反射低減層の材料としては、上述の第5の実施の形態の場合と同様の材料を好ましく挙げることができる。
以上の第6の実施の形態の反射型マスクブランク10Fを用いて得られる反射型マスク20Fにおいても、吸収体膜パターンの形成されていない基板周縁部において多層反射膜が露出することがないため、マスク製造工程やマスク使用時の洗浄等による多層反射膜の膜剥がれを防止することができ、さらには多層反射膜の膜剥がれに起因する欠陥の発生も無くすことができる。
【0088】
また、本発明は、前記基板は、少なくとも熱エネルギー又は光エネルギーを付与して、ガラス基板に含まれる水素を脱離させたガラス基板であり、前記ガラス基板の前記多層反射膜が形成された面とは反対側の面に、タンタル(Ta)を含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなる導電膜が形成されていることを特徴とする構成1乃至5の何れかに記載の反射型マスクブランクについても提供する。
かかる構成においては、少なくとも熱エネルギー又は光エネルギーを付与して、ガラス基板に含まれる水素を脱離させたガラス基板を用いることにより、ガラス基板の他方の主表面に形成されたTa系導電膜の膜応力が時間の経過とともに圧縮応力の傾向が強くなることによって、平坦度が経時的に変化することを抑制できる。
【0089】
また、本発明は、前記基板としてガラス基板を使用し、該ガラス基板に対し、少なくとも熱エネルギー又は光エネルギーを付与して、前記ガラス基板に含まれる水素を脱離させた後、前記ガラス基板の一方の主表面に、前記多層反射膜、前記保護膜、前記吸収体膜、および前記レジスト膜をそれぞれ形成し、他方の主表面に、タンタル(Ta)を含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなる導電膜を形成することを特徴とする構成6乃至12の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法についても提供する。
かかる構成によれば、ガラス基板に対し、少なくとも熱エネルギー又は光エネルギーを付与して、前記ガラス基板に含まれる水素を脱離させることにより、前記ガラス基板の他方の主表面に形成するTa系導電膜の膜応力が時間の経過とともに圧縮応力の傾向が強くなることによって、平坦度が経時的に変化することを抑制できる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
両面研磨装置を用い、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨し、低濃度のケイフッ酸で基板表面を表面処理したSiO
2−TiO
2系のガラス基板(大きさが約152.4mm×約152.4mm、厚さが約6.35mm)を準備した。
得られたガラス基板の平坦度を測定したところ、142mm×142mmの測定領域において、100nm以下となっており良好であった。また、表面粗さは、1μm×1μmの測定領域において、二乗平均平方根粗さRMSで0.08nmとなっており極めて良好であった。
また、最大表面粗さ(Rmax)は、1μm×1μmの測定領域において、0.60nmで、Rmax/RMSは7.5となっており、表面粗さのばらつきは小さく良好であった。
【0091】
次に、上記ガラス基板を加熱炉に設置し、炉内の気体を炉外と同じ気体(クリーンルーム内の空気)とし、加熱温度550℃で45分間の加熱処理を行った。さらに、加熱処理後のガラス基板に対し、洗剤による洗浄と純水によるリンス洗浄を行い、さらに大気中でXeエキシマランプを照射し、紫外線と、その紫外線によって発生するO
3とによって主表面の洗浄を行った。
洗浄後のガラス基板中の水素濃度を、HFS分析法(水素前方散乱分析法)を用いて測定した結果、水素含有量は検出下限値以下であった。
【0092】
次に、上記ガラス基板上に、イオンビームスパッタリング装置を用いて、Si膜(膜厚:4.2nm)とMo膜(膜厚:2.8nm)を一周期として、40周期積層して多層反射膜(総膜厚280nm)を形成し、多層反射膜付き基板を得た。なお、この多層反射膜の成膜は、基板周縁部の所定の領域には成膜されないように、前述の
図7に示すような遮蔽部材を設けた成膜方法により行った。
【0093】
次に、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、上記多層反射膜上にRuNbからなる保護膜(膜厚:2.5nm)を形成し、さらに該保護膜上に、TaBN膜(膜厚:56nm)とTaBO膜(膜厚:14nm)の積層膜からなる吸収体膜を形成した。なお、この保護膜及び吸収体膜の成膜は、基板周縁部の所定の領域には成膜されないように、前述の
図8に示すような遮蔽部材を設けた成膜方法により行った。また、同じくDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、基板の裏面にTaN導電膜(膜厚:20nm)を形成した。
【0094】
次に、上記吸収体膜の表面上に、レジスト膜として、電子線描画用ポジ型レジスト膜を120nmの膜厚に形成した。レジスト膜の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。次いで、基板の外周端から内側に1mmの領域上に形成されたレジスト膜を前述の特許第3607903号公報に記載された方法を適用して除去した。
【0095】
なお、以上の基板の一方の主表面に形成した多層反射膜、保護膜、吸収体膜及びレジスト膜については、前述のL(Abs)>L(Res)>L(Cap)≧L(ML)の関係を満たすように、L(Abs):75.5mm、L(Res):75mm、L(Cap):74.5mm、L(ML):74.5mmとし、各膜をそれぞれ形成した。
これによって、例えば
図1に示すような構成のEUV反射型マスクブランクが得られた。
【0096】
次に、このEUV反射型マスクブランクを用いて、EUV反射型マスクを作製した。
まず、EUV反射型マスクブランクの上記レジスト膜に対して電子線描画機によりマスクパターンを描画、現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0097】
次に、このレジストパターンをマスクとして、吸収体膜を、フッ素系ガス(CF
4ガス)によりTaBO膜を、塩素系ガス(Cl
2ガス)によりTaBN膜をエッチング除去して、保護膜上に吸収体膜パターンを形成した。
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、前述の
図2に示すようなEUV反射型マスクを得た。
【0098】
この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行った。
次に、この得られた反射型マスクに対して、硫酸過水、アンモニア過水を使用したウェット洗浄を行った。硫酸過水の洗浄条件は、硫酸(98質量%)と過酸化水素(30質量%)を混合比率4:1とした硫酸過水を使用し、温度90℃、時間20分とした。また、アンモニア過水の洗浄条件は、アンモニア(29質量%)と過酸化水素(30質量%)と水を混合比率1:1:5としたアンミニア過水を使用し、温度70℃、時間20分とした。
【0099】
上記ウェット洗浄後のEUV反射型マスクについてもマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行い、ウェット洗浄前後の欠陥検査結果を対比したところ、洗浄による増加欠陥は特に確認されなかった。
また、上記反射型マスクについて、経時的な平坦度の変化についても確認したが、平坦度の変化は殆ど確認されなかった。
こうして得られた本実施例の反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行う場合、反射型マスク起因の転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行うことができる。
【0100】
(実施例2)
実施例1における保護膜として、全率固溶体の合金であるルテニウム(Ru)とコバルト(Co)とからなる合金を用いたこと以外は実施例1と同様にして保護膜を形成した。また、本実施例では、基板の一方の主表面に形成した多層反射膜、保護膜、吸収体膜及びレジスト膜については、L(Abs)≧L(Cap)>L(Res)>L(ML)の関係を満たすように、L(Abs):75.5mm、L(Cap):75.5mm、L(Res):75mm、L(ML):74.5mmとし、各膜をそれぞれ形成した。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして、例えば
図3に示すような構成のEUV反射型マスクブランクが得られた。
【0101】
次に、このEUV反射型マスクブランクを用いて、実施例1と同様にしてEUV反射型マスクを作製し、前述の
図4に示すようなEUV反射型マスクを得た。
【0102】
この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行った。
次に、この得られた反射型マスクに対して、実施例1と同様の硫酸過水、アンモニア過水を使用したウェット洗浄を5回繰り返し行った。
【0103】
上記ウェット洗浄後のEUV反射型マスクについてもマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行い、ウェット洗浄前後の欠陥検査結果を対比したところ、洗浄による増加欠陥は特に確認されなかった。
こうして得られた本実施例の反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行う場合、反射型マスク起因の転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行うことができる。
【0104】
(比較例1)
本比較例では、基板の一方の主表面に形成した多層反射膜、保護膜、吸収体膜及びレジスト膜について、L(Abs)≧L(Cap)>L(ML)>L(Res)の関係となるように、L(Abs):75.5mm、L(Cap):75.5mm、L(ML):75mm、L(Res):74.5mmとし、各膜をそれぞれ形成した。
各膜の材料は実施例1と同一である。
以上のこと以外は、実施例1と同様にして、
図9に示すような構成のEUV反射型マスクブランクを得た。
【0105】
次に、このEUV反射型マスクブランクを用いて、実施例1と同様にしてEUV反射型マスクを作製し、
図10に示すようなEUV反射型マスクを得た。
【0106】
この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行った。
次に、この得られた反射型マスクに対して、実施例1と同様の硫酸過水、アンモニア過水を使用したウェット洗浄を行った。
【0107】
上記ウェット洗浄後のEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行い、ウェット洗浄前後の欠陥検査結果を対比したところ、洗浄による増加欠陥は243個と大幅に増加した。
この欠陥箇所を詳細に確認した結果、主に基板周縁部における多層反射膜の膜剥がれによるものであることが判明した。これは、
図10からも明らかなように本比較例の反射型マスクにおいては、マスク作製後、基板周縁部の保護膜が露出するため、洗浄等により保護膜が損傷した場合、露出する下層の多層反射膜の膜剥がれが起こり易いことが原因であると考えられる。
【0108】
(実施例3)
実施例1において、導電膜の成膜を、基板周縁部の所定の領域には成膜されないように、前述の
図8に示すような遮蔽部材を設けた成膜方法により行った以外は実施例1と同様にしてEUV反射型マスクブランクを作製した。
なお、導電膜については、L(BL):75.5mmとし、レジスト膜との関係において、L(BL)>L(Res)の関係を満たすように形成した。
これによって、
図11に示すような構成のEUV反射型マスクブランクが得られた。
次に、このEUV反射型マスクブランクを用いて、実施例1と同様にしてEUV反射型マスクを作製し、前述の
図12に示すようなEUV反射型マスクを得た。
【0109】
この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行った。
次に、この得られた反射型マスクに対して、実施例1と同様の硫酸過水、アンモニア過水を使用したウェット洗浄を5回繰り返し行った。
上記ウェット洗浄後のEUV反射型マスクについてもマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行い、ウェット洗浄前後の欠陥検査結果を対比したところ、洗浄による増加欠陥は特に確認されなかった。
【0110】
こうして得られた本実施例の反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行う場合、反射型マスク起因の転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行うことができる。また、基板が露出された基板周縁部にEUV光以外の真空紫外領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面に形成された導電膜が形成されているので、露光装置の静電チャックに前記光が照射されることがない。
【0111】
(実施例4)
実施例3において、導電膜を基板側から前述の反射低減層のTa
2O
5膜(膜厚50nm)とTaN膜(膜厚:20nm)を形成した以外は、実施例3と同様にEUV反射型マスクブランク、及びEUV反射型マスクを作製した。
この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行った。
次に、この得られた反射型マスクに対して、実施例1と同様の硫酸過水、アンモニア過水を使用したウェット洗浄を5回繰り返し行った。
【0112】
上記ウェット洗浄後のEUV反射型マスクについてもマスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Teron600シリーズ)により欠陥検査を行い、ウェット洗浄前後の欠陥検査結果を対比したところ、洗浄による増加欠陥は特に確認されなかった。
こうして得られた本実施例の反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行う場合、反射型マスク起因の転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行うことができる。また、基板が露出された基板周縁部にEUV光以外の真空紫外光領域の光が入射され、基板内部に該光が入射されても基板裏面には反射低減層が設けられた導電膜が形成されているので、被転写基板上の不必要なレジストが感光してしまい、パターン精度が悪化することがなく、良好なパターン転写を行うことができる。