(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検者の色に関する視機能を検査するための視標を背景中に表示する手段であって前記背景の輝度が前記視標の輝度の10%小さい数値と10%大きい数値の間に属する数値となるように前記視標及び前記背景を表示する表示手段と、
被検者に前記表示手段の予め定められた一点を注視させた状態で視野中心の周辺領域又は視野中心に、被検者の知覚の可否を分ける前記視標の大きさである閾値が得られるよう前記視標を大きさを変えながら前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする検査装置。
前記表示制御手段は、前記視標を表示する点である測定点を切り替えながら各時点で1つの前記測定点に前記視標を表示させ、前記測定点ごとに前記視標の大きさを変化させることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
前記表示制御手段は、前記視標を表示する点を測定点として、同一の前記測定点において複数の前記閾値が得られるように、前記視標の大きさの切り替えを繰り返すことを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
前記表示制御手段は、前記応答の入力が無い場合には前記視標を大きくし、前記応答の入力が有る場合には前記視標を小さくすることを特徴とする請求項4に記載の検査装置。
前記表示制御手段は、前記応答の有りから無し又は無しから有りに切り替わる回数が2以上の所定回数となるまで、前記視標の大きさの切り替えを繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の検査装置。
被検者に背景中の1点を注視させた状態でその注視点の周辺領域又は注視点に、被検者の色に関する視機能を検査するための視標を、前記背景の輝度が前記視標の輝度の10%小さい数値と10%大きい数値の間に属する数値となるように提示し、
被検者に前記視標を知覚できたことの応答を求めて、その応答の有無に応じて前記視標の大きさを変化させることで、知覚の可否を分ける前記視標の大きさである閾値を得ることを特徴とする検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
視野の各領域において色ごとに知覚しやすさを示した度合い(色ごとの感度)を検査することは、緑内障等の眼の疾患の早期発見に役立つと考えられる。特許文献1では、有彩色による視標としてグリッドを表示して、グリッドの全領域が正常に知覚できるか、一部の領域が正常に知覚できないかを検査することが開示されている。このグリッドによる検査よりも、視野の各領域に対する色ごとの感度を得るのに適した手法を提案することは、グリッドによる検査では発見できない眼の疾患を発見するのに有益である。
【0005】
そこで、本発明は、視野の各領域に対する色ごとの感度を適切に検査できる装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の検査装置は、
被検者の色に関する視機能を検査するための視標を背景中に表示する手段であって前記背景の輝度が前記視標の輝度の10%小さい数値と10%大きい数値の間に属する数値となるように前記視標及び前記背景を表示する表示手段と、
被検者に前記表示手段の予め定められた一点を注視させた状態で視野中心の周辺領域又は視野中心に、被検者の知覚の可否を分ける前記視標の大きさである閾値が得られるよう前記視標を大きさを変えながら前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明よれば、被検者に表示手段の予め定められた一点を注視させた状態で視野中心の周辺領域又は視野中心に視標を大きさを変えながら表示させるので、視標の表示位置に対応する視野領域における、視標が知覚できるかできないかの閾値となる視標サイズを得ることができる。この閾値は、視標の色に対する感度に相関し、具体的には閾値が小さいほど感度が高いことを示す。また、視標と背景とが同様の輝度に合わせられるので、輝度の違いの知覚ではなく色の違いの知覚が適切に検査できる。
【0008】
また、本発明において、前記表示制御手段は、前記視標を表示する点である測定点を切り替えながら各時点で1つの前記測定点に前記視標を表示させ、前記測定点ごとに前記視標の大きさを変化させる。
【0009】
このように、測定点を切り替えながら各時点で1つの測定点に視標を表示させることで、1回の検査で、視野の各領域に対して色の感度を検査できるとともに、被検者の注視点が視標の方に移動してしまうのを抑制できる。
【0010】
また、本発明において、前記表示制御手段は、前記視標を表示する点を測定点として、同一の前記測定点において複数の前記閾値が得られるように、前記視標の大きさの切り替えを繰り返す。このように、同一の測定点において複数の閾値を得ることで、測定点における色の感度を正確に評価できる。
【0011】
また、本発明において、被検者が前記視標を知覚できたことの応答を入力する入力手段を備える。これによって、被検者がどのサイズの視標を知覚できたのか又はできなかったのかを特定しやすくでき、ひいては閾値を得やすくできる。
【0012】
また、本発明において、前記表示制御手段は、前記応答の入力が無い場合には前記視標を大きくし、前記応答の入力が有る場合には前記視標を小さくする。このように、応答の有無に基づいて検査装置が自動で視標を変化させることで、検査実施者の負担を軽減できるとともに、閾値を得やすくできる。
【0013】
また、本発明において、前記表示制御手段は、前記応答の有りから無し又は無しから有りに切り替わる回数が2以上の所定回数となるまで、前記視標の大きさの切り替えを繰り返す。これによって、閾値を複数(所定回数分)得ることができ、複数の閾値を得ることで、色の感度を正確に評価できる。
【0014】
本発明の検査方法は、被検者に背景中の1点を注視させた状態でその注視点の周辺領域又は注視点に、被検者の色に関する視機能を検査するための視標を、前記背景の輝度が前記視標の輝度の10%小さい数値と10%大きい数値の間に属する数値となるように提示し、
被検者に前記視標を知覚できたことの応答を求めて、その応答の有無に応じて前記視標の大きさを変化させることで、知覚の可否を分ける前記視標の大きさである閾値を得ることを特徴とする。また、前記視標を提示する点を測定点として、同一の前記測定点において前記閾値の測定を複数回行う。これによって、上記本発明の検査装置と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図1に示すように、被検者に画面31の前に位置させた状態で、画面31に基準点6を表示させ、被検者にその基準点6を片目で注視させる。そして、基準点6を注視した被検者の視野中心(基準点6)の周辺領域に、特定の有彩色に着色された視標5を表示させる。そして、時間経過に伴って視標5の表示位置を、予め定められた複数の測定点300間でランダムに変化させる。このとき、各時点において視標5を1つのみ表示させる。また、視標5の表示中はその表示位置はいずれかの測定点300に固定とされている。ある測定点300から別の測定点300に表示位置が変わる場合には、視標5を一旦消したうえで視標5の表示位置を変える。
【0017】
図1では、測定点300の個数が16点の例を示している。これら16個の測定点300は、基準点6を中心にして、縦4列、横4列に配置されるように定められる。例えば、被検者の眼が画面31から所定距離(例えば30cm)離された状態で、隣り合う測定点300間の視覚が所定角度(例えば1度)となるように、測定点300間の間隔が定められる。
【0018】
また、被検者に、視標5を知覚できたことの応答を求め、この応答が無い場合には、視標5のサイズ(大きさ)を段階的に大きくしていく。一方、視標5を知覚できたことの応答があった場合には、視標5のサイズを段階的に小さくしていく。そして、測定点300ごとに、応答有りから無しに又は応答無しから有りに切り替わる回数が所定回数(例えば4回)になるまで、視標5のサイズ変更を繰り返す。つまり、測定点300ごとに、視標5の知覚の可否を分ける閾値となる視標サイズを所定回数分得るようにする。
【0019】
また、視標5をランダムに表示させている間に、視標5の表示に代えて、基準点6を注視している被検者にとって知覚できない盲点位置にダミー視標8を時々表示させる。そして、ダミー視標8の表示に対して被検者から応答があった場合には、その被検者の視線は基準点6から外れている可能性があるとして、例えば今回の検査の信頼性は低いと判定して再検査を行う。
【0020】
さらに、画面31の背景7は、視標5とは異なる色(例えば黒色、灰色、白色等の無彩色)とするとともに、視標5と背景7とを同様の輝度(具体的には、背景7の輝度が視標5の輝度の10%小さい数値と10%大きい数値の間に属する)に合わせる。ここで、色の3属性(明度、彩度、色相)のうちで明度だけを有する色が無彩色であり、無彩色でない色が有彩色である。また、色の輝度とは、X、Y、Zの3刺激値のうちのY値をいう。
【0021】
図4には、視標5と背景7とを同様の輝度にすることの根拠となるデータが示されている。詳しくは、
図4には、複数の被検者に対して赤(R)、黄赤(YR)、赤黄(RY)、黄(Y)、緑黄(GY)、黄緑(YG)、緑(G)、青緑(BG)、緑青(GB)、青(B)、紫青(PB)、青紫(BP)、紫(P)、赤紫(RP)、紫赤(PR)の各色の色視力の計測を行ったときの計測結果の例が示されている。横軸が各色、縦軸が視力の対数プロット(右縦軸が視力の平均値、左縦軸が視力の標準偏差値)である。
【0022】
この視力検査は、ランドルト環を横軸に示す各色で彩色し、背景色は白色点D65として行った。その際、ランドルト環の色の輝度は1平方メートル当たり30カンデラとし、背景色の輝度は1平方メートル当たり100カンデラと30カンデラの2通りを用いた。背景色の輝度が1平方メートル当たり100カンデラの場合のプロット、30カンデラの場合のプロットがそれぞれ図示上側、図示下側に示されている。
【0023】
図示よりあきらかに背景色の輝度が1平方メートル当たり100カンデラの場合には各色の視力(色視力)はほぼ同じであるとの結果がでたが、背景色の輝度が1平方メートル当たり30カンデラの場合には各色の色視力は顕著に異なっている。具体的には、R(赤)やGB(緑青)など、およびその近傍(色度図上での近傍)の色では色視力が相対的に高いのに対して、GY(緑黄)やBP(青紫)やその近傍の色では色視力が相対的に低い。背景色の輝度が1平方メートル当たり100カンデラの場合はランドルト環と背景とで輝度が明確に異なっており、背景色の輝度が1平方メートル当たり30カンデラの場合はランドルト環と背景とが等輝度である。
【0024】
したがって両結果を比較すると、ランドルト環の輝度と背景の輝度が明確に異なる場合には、被検者はランドルト環と背景との色の相違を知覚できていなくても輝度の相違を知覚することによってランドルト環の向きを認識しており、これにより各色の色視力がほぼ同じとなっていると考えられる。これに対してランドルト環の輝度と背景の輝度が同じ場合には、被検者がランドルト環と背景と色の相違をどれだけ知覚しているかが検査結果に正確に反映することとなり、これにより各色ごとに色視力が異なっていると考えられる。
【0025】
この知見、すなわち検査視標と背景の輝度を同様にすることが色視力の検査に有効であるとの知見の適用範囲はあきらかに色視力検査に限定されるべきものでなく、色視野の検査にも有効な知見だと考えられる。そこで本実施形態の視機能検査においてもこの知見を活用し、
図1において視標5と背景7とを同様の輝度とする。
【0026】
上記したように、
図1の検査では、測定点300ごとに、視標5の知覚の可否を分ける視標サイズ(閾値)を得ることができる。この閾値は、視標5の色に対する知覚しやすさ(感度)に相関し、具体的には閾値が小さいほど感度が高いことを示している。つまり、
図1の検査では、各測定点300に対応する視野領域ごとに、視標5の色に対する感度を定量的に検査できる。また、各測定点300に対して、知覚の可否を分ける閾値を複数得ることできるので、例えば得られた複数の閾値を平均することで、測定誤差を低減した形で色の感度を検査できる。
【0027】
また、
図1の検査は複数回行われ、それら複数回の検査間で視標5の色を異ならせる。例えば、
図4のデータで示された15色(赤(R)、黄赤(YR)、赤黄(RY)、黄(Y)、緑黄(GY)、黄緑(YG)、緑(G)、青緑(BG)、緑青(GB)、青(B)、紫青(PB)、青紫(BP)、紫(P)、赤紫(RP)、紫赤(PR))のそれぞれに対して
図1の検査を行っても良いし、光の3原色である赤、緑、青に対して検査を行っても良いし、
図4の15色の中で特に知覚しづらい色(具体的にはGY、BP)に対して検査を行っても良い。また、
図1の検査は、片目ずつ行われる。
【0028】
ここで、本発明者は、眼に疾患が無い正常者と眼に何らかの異常を有した者に対して、視標の表示点(測定点)をいくつか変えたときの、視標の知覚の可否を分ける視標サイズ(閾値)を得る検査(つまり、
図1と同様の検査)を行った。ここで、
図5はこの検査における測定点301を示している。
図5において軸の単位は視角[°]である。
図5に示すように、測定点301は、水平方向及び垂直方向にそれぞれ視角が1°、3°、−1°、−3°となる16点の位置に設定した。また、
図1の検査と同様に、視標と背景とを同様の輝度にするとともに、視標色が赤色の場合と、ブルーパープルの場合のそれぞれで検査を行った。
【0029】
図6、
図7は検査結果を示している。具体的には、
図6は視標色を赤色とした場合の検査結果を示している。
図7は視標色をブルーパープルとした場合の検査結果を示している。
図6、
図7では、眼に何らかの異常を有した者としてA、B、C、Dの4人の結果をそれぞれ示している。
図6、
図7において、横軸は測定点301(
図5参照)の位置を、[水平方向の視覚]*[垂直方向の視覚]として示している。例えば、「1*1」は、
図5において水平方向の視覚が1°、垂直方向の視覚が1°の位置の測定点301における結果を示している。また、
図6、
図7の縦軸は、視標の知覚の可否を分ける視標サイズ、つまり閾値を示しており、軸の上ほど閾値が大きいことを示している。また、
図6の被検者Aの結果は右眼における結果を示し、
図6の被検者B―D、
図7の被検者A−Dの結果は、右眼、左眼のそれぞれを示している。また、
図6、
図7において、○の点は、正常者の閾値の平均値を示している。
【0030】
図6、
図7に示すように、検査結果は、正常者と眼に何らかの異常(緑内障等)を有した者のどちらも、視標の表示点(
図5の測定点301)が視野中心から遠くなるほど、視標を知覚できるサイズが大きくなるという傾向を示した。しかし、眼に異常を有した者A−Dに対する検査結果は、正常者の検査結果(○の点)と違う傾向を示し、具体的には、正常者の検査結果に比べて全体的に視標を知覚できるサイズが大きいという傾向を示した。また、正常者、眼に異常を有した者のどちらも、視標の表示点が同一であっても、色の違いによって視標を知覚できるサイズが変わってくることを示し、具体的には、視標色が赤色の場合に比べて、ブルーパープルのほうが視標を知覚できるサイズが大きいという傾向を示した。さらに、眼に異常を有した者A−Dに対する結果では、正常者の結果に比べて、視標の表示点が変わることによる閾値の変動が大きいことを示した。
【0031】
以上の検査結果より、
図1の検査は、正常者と緑内障等の眼の疾患を有した者との間で異なる検査結果を示し、正常者の検査結果と、眼の疾患を有した者の検査結果の違いや、疾患の種類ごとの検査結果の違いを予め調査しておくことで、色ごとの視野の異常を早期に発見できたり、緑内障等の眼の疾患を早期に発見できたり、眼の疾患の進行度合いを正確に診断できたりすることが期待できる。
【0032】
なお、緑内障の従来の検査としては、ハンフリー視野計やOCT(Optical Coherence Tomography、光干渉断層像)による検査(網膜の断面画像による検査)がある。ハンフリー視野計の検査では、白色光を照射した背景中に、その背景の光よりも強い白色光を視標として照射し、その視標の位置及び明るさを変えて、被検者に基準点を注視させた状態で視標が知覚できたことの応答を求めるというものである。緑内障の発見という点では、ハンフリー視野検査よりもOCT検査のほうが早期に緑内障を発見できる。また、ハンフリー視野検査では、白色光の背景中に白色光の視標を表示するので、異なる色を知覚する3種の錐体(S錐体、M錐体、L錐体)のうちいずれかに異常があったとしても、他の錐体が正常であれば視標を知覚できてしまう。以上より、ハンフリー視野検査は、緑内障の検査として必ずしも精度が高いとはいえない。
【0033】
これに対し、
図1の検査では、有彩色の視標5を背景7の輝度と同様にして表示するものであるので、測定点300ごとに色の違いによる視標5の知覚の可否を適切に検査できる。そして、3種の錐体のいずれかに異常がある場合には、異常の錐体が知覚しやすい色の視標5で検査を行うことで、異常の錐体があることを捉えることができる。これにより、色ごとの視野の異常や緑内障などの眼の疾患を早期に発見できたり、疾患の進行度合いを正確に判定できる。
【0034】
図1の検査は
図2の検査装置1により行われる。検査装置1は、表示部3、入力部4及びこれらに接続した制御部2を備えている。表示部3は、例えば液晶ディスプレイのように電力が供給されて発光する部分(例えば液晶のバックライト)を備えて構成される。表示部3は、
図1の表示を行う画面31を備えている。つまり、表示部3は、画面31の背景7中に視標5を表示するとともに、視標5と背景7とを同様の輝度にして表示する。なお、視標5及び背景7の輝度を分光放射輝度計などにより計測を行い、視標5の輝度計測値と背景7の輝度計測値とを比較することで、視標5の輝度と背景7の輝度とが同様か否かを判断できる。そして、視標5の輝度と背景7の輝度とが異なっている場合には、視標5の輝度と背景7の輝度の少なくとも一方を変えて、再度、輝度計測を行うという手順を、視標5の輝度と背景7の輝度とが同様になるまで繰り返せばよい。なお、表示部3は、視標5と背景7とを同様の輝度にすることができるものであれば、ヘッドマウント型のディスプレイなど、どのようなディスプレイであっても良い。なお、表示部3が本発明の表示手段に相当する。
【0035】
入力部4は、被検者により操作が行われる操作部として構成されており、視標5を知覚できたことの信号の入力を行う部分である。入力部4は、例えば被検者に把持される把持部と、その把持部を把持した状態で被検者の親指により押下操作が行われる操作部とを有する。なお、入力部4が本発明の入力手段に相当する。
【0036】
制御部2は、通常のコンピュータと同様の構造を有し、CPU21、RAM22及びROM23を備える。CPU21は各種演算を実行し、RAM22はCPU21のための作業領域として機能する揮発性の記憶部である。ROM23は本発明に関係するプログラムやデータを記憶する不揮発性の記憶部である。なおROM23は、ハードディスクなど他の形態の不揮発性記憶部でもよい。
【0037】
制御部2は、本発明の表示制御手段に相当し、表示部3の表示を制御したり、入力部4からの応答信号を取得してそれに応じた処理を実行したりする。以下、
図3を参照して、制御部2が実行する処理を説明する。
図3の処理は、表示部3の画面31から所定距離(例えば30cm)に被検者の眼が位置するように被検者を位置させ、かつ、被検者に入力部4を把持させた状態で行われる。なお、
図3の処理のプログラムはROM23に記憶されている。
【0038】
図3の処理を開始すると、制御部2(CPU21)は、先ず、視標5の知覚の可否を分ける視標サイズである閾値の測定回数を示した変数nを0とする(S1)。この変数nは測定点300ごとに定められ、S1では、各測定点300の変数nをそれぞれ0とする。次に、
図1に示すように、画面31の中心に基準点6を表示させる(S2)。この基準点6を被検者に片方の眼で注視させる。
【0039】
以降、画面31の、基準点6の周辺領域にランダムに視標5を表示させる。詳しくは、複数の測定点300のうちのいずれかに視標5を表示させる(S3)。このとき、視標5と背景7との輝度が同様となるように、それら視標5、背景7を表示させる。なお、視標5の形状は特に限定はないが、例えば円形とする。また、視標5の初期サイズは特に限定なないが、例えば、予め定められた複数段階のサイズのうちの最小サイズとする。また、視標5を最初に表示させる位置は、複数の測定点300のうちのいずれであっても良い。
【0040】
次に、今回の測定点300に対する視標5の表示時間が所定時間を経過したか否かを判断する(S4)。この前提として、制御部2は、内部にタイマーを備えており、そのタイマーにより、今回の測定点300に視標5の表示を開始してからの経過時間(視標5の表示時間)を計測する。視標5の表示時間が所定時間に達しない場合には(S4:No)、待機して、当該測定点300における視標5の表示を継続させる。
【0041】
視標5の表示時間が所定時間に達した場合には(S4:Yes)、視標5の表示中に入力部4からの応答信号の入力が有ったか否かを判断する(S5)。応答が無い場合には(S5:No)、今回の測定点300における視標サイズの変更方向を段階的に大きいサイズとなる方向に設定する(S6)。設定したサイズ変更方向(段階的に大きいサイズとなる変更方向)を、今回の測定点300に対応付けてRAM22に記憶する。
【0042】
次に、今回の測定点300において前回に視標5を表示したときには応答が有り、今回の表示では応答が無しであったか否かを判断する(S7)。つまり、応答有りから無しに変化したのか、それとも、前回も応答無しであったかを判断する。前回は応答有りで今回は応答無しの場合、つまり応答有りから無しに変化した場合には(S7:Yes)、今回の視標サイズを閾値として、今回の測定点300に対応付けてRAM22やROM23に記憶する(S12)。そして、今回の測定点300における変数nを1増加させる(S13)。つまり、n=n+1とする。そして、全ての測定点300に対して変数nが所定値C(Cは2以上の整数。例えば4)に達したか否かを判断する(S14)。全ての測定点300に対して変数nが所定値Cに達した場合には(S14:Yes)、
図3の処理を終了する。変数nが所定値Cに達していない測定点300が1つでもある場合には(S14:No)、S15の処理に移行する。
【0043】
また、S7において、前回も応答が無い場合、つまり応答有りから無しに変化しない場合(応答無しが継続中の場合)には(S7:No)、S15の処理に移行する。
【0044】
一方、S5において応答が有った場合には(S5:Yes)、その応答が盲点に表示したダミー視標8(
図1参照)に対する応答か否かを判断する(S8)。ダミー視標8に対する応答の場合には(S8:Yes)、その応答が有ったことを示したフラグをオンにしたり、その応答の回数を示した変数を1加算してRAM22やROM23に記憶したりする(S9)。その後、
図15の処理に移行する。
【0045】
一方、ダミー視標8に対する応答ではない場合、つまり視標5に対する応答の場合には(S8:No)、今回の測定点300における視標サイズの変更方向を段階的に小さいサイズとなる方向に設定する(S10)。設定したサイズ変更方向(段階的に小さいサイズとなる変更方向)を、今回の測定点300に対応付けてRAM22に記憶する。
【0046】
次に、今回の測定点300において前回に視標5を表示したときには応答が無く、今回の表示では応答が有りであったか否かを判断する(S11)。つまり、応答無しから有りに変化したのか、それとも、前回も応答有りであったかを判断する。前回は応答無しで今回は応答有りの場合、つまり応答無しから有りに変化した場合には(S11:Yes)、今回の視標サイズを閾値として、今回の測定点300に対応付けてRAM22やROM23に記憶する(S12)。その後、上述のS13、S14の処理を実行する。
【0047】
一方、S11において、前回も応答が有る場合、つまり応答無しから有りに変化しない場合(応答有りが継続中の場合)には(S11:No)、S15の処理に移行する。
【0048】
S15の処理では、視標5の表示位置を別の測定点300に切り替える。このとき、視標5の表示位置がランダムであることを示すために、例えば、視標5の表示位置の切り替え前後で測定点300が隣り合わないようにする。また、S15の処理では、視標5のサイズを測定点300ごとに段階的に変更させながら、視標5の切り替えを行う。具体的には、測定点300ごとに前回に視標5を表示したときの視標5のサイズ(前回サイズ)をRAM22に記憶しておき、今回の表示では、視標5のサイズを、記憶しておいた前回サイズより1段階大きい又は小さいサイズに変更する。このとき、S6の処理でサイズ変更方向を段階的に大きくする方向に設定した測定点300に表示位置を切り替える場合には、S15の処理では、前回のサイズから1段階大きいサイズの視標5を表示させる。他方、S10の処理でサイズ変更方向を段階的に小さくする方向に設定した測定点300に表示位置を切り替える場合には、S15の処理では、前回のサイズから1段階小さいサイズの視標5を表示させる。
【0049】
なお、視標5を知覚できたことの応答は測定点300ごとに行われるので、異なる測定点300間では、視標5のサイズやサイズ変更の方向に関連性はない。つまり、例えば視標5のサイズが10段階(段数が大きいほどサイズが大きいことを示す)に切り替わるとして、ある測定点300(第1の測定点)では前回に5段目のサイズの視標5を表示し、今回は1段サイズを大きくして6段目のサイズに変更したとしても、別の測定点300(第2の測定点)においては、第1の測定点における前回の視標サイズである5段目とは異なるサイズ(例えば7段目)の視標5を前回に表示して、今回は1段サイズを小さくする場合もあり得る。
【0050】
また、S15の処理では、視標5の表示に代えて、基準点6を注視している状態では知覚できない予め定められた盲点位置にダミー視標8(
図1参照)を時々表示させる。
【0051】
なお、S15の処理で測定点300を変更したとしても、視標5及び背景7の輝度は変化させない。
【0052】
S15の後、S4に戻って、切替後の測定点300に対して上記した各処理S4〜S14を実行する。
【0053】
このように、
図3の処理では、所定時間経過する度に視標5の表示位置をランダムに切り替えるとともに、測定点300ごとに、応答が無い間は段階的に視標サイズを大きくする一方で、応答が有る間は段階的に視標サイズを小さくする。そして、測定点300ごとに、応答無しから有りに切り替わる、又は応答有りから無しに切り替わる視標サイズを閾値として測定し、この閾値測定を所定回数だけ行う。
【0054】
制御部2は、
図3の処理により得られた測定結果(具体的には測定点300ごとの所定回数分の閾値)を例えば表示手段や印刷手段等で出力する。また例えば、制御部2は、所定回数分の閾値の平均値を出力しても良い。また、制御部2は、ダミー視標8に対する応答の有無や応答回数も出力する。検査実施者(医師など)は、検査装置1から出力された測定結果に基づいて、色ごとに視野内に見えにくい領域が有るか否かや、緑内障等の眼の疾患の有無や進行度合いなどを判断する。また、検査実施者は、例えばダミー視標8に対する応答の有無や応答回数に基づいて、今回の検査の信頼性を判断し、信頼性が低い場合には、再検査を行う。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、視標5と背景7とを同様の輝度にしたうえで、視野内の各領域に有彩色の視標5をサイズを変えながら表示し、知覚の可否を分ける視標サイズを閾値として得るので、視野の各領域ごとに、色ごとの感度(閾値)を定量的にかつ適正に検査できる。また、予め定められた複数の測定点300間でランダムに視標5を表示するので、どこに視標5が表示されるのかを被検者に予測されてしまうのを抑制できる。これにより、視標5の表示位置に被検者の注視点が移動してしまうのを抑制でき、検査の信頼性が低下しまうのを抑制できる。また、本実施形態では、測定点300ごとに複数回の閾値測定を行うので、測定誤差を抑制した形で色に対する感度を評価できる。また、本実施形態では、入力部4による応答の有無に応じて視標サイズを大きくするか小さくするかを決定するので閾値が得られるまでの時間を短くできる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図8に示すように、本実施形態では、画面31の中心を囲むように複数(
図8では4つ)の点61を表示し、これら点61で囲まれた領域を被検者に注視させる。その注視領域(中心領域)を測定点として注視領域に特定の有彩色の視標5を表示させる。このとき、第1実施形態と同様に、背景7は視標5と異なる色(例えば無彩色)にするとともに、視標5と背景7とを同様の輝度にする。さらに、視標5のサイズを所定時間経過する度に段階的に変化させる。具体的には、知覚できたことの応答が無い場合には応答が有るまで視標5のサイズを段階的に大きくする一方で、応答が有る場合には応答が無しになるまで視標5のサイズを段階的に小さくする。つまり、知覚の可否を分ける視標5のサイズである閾値を測定する。そして、第1実施形態と同様に、この閾値測定を複数回(例えば4回)行う。また、
図8の検査は、例えば
図4の15色の中で特に知覚しづらい色(具体的にはGY、BP)に対して行われるが、他の色に対して行われたとしても良い。
【0057】
図8の検査は
図1の検査装置1により行われる。このとき、
図3のS2では、
図8の点61を表示させる。S3では、点61で囲まれた領域に視標5を表示させる。また、本実施形態では測定点は1つしかないので、S14では、中心の測定点に対して変数nが所定値Cに達したか否かを判断する。S15では、中心の測定点での視標サイズを変更する。
【0058】
このように、本実施形態では、視野中心の色ごとの感度(色ごとの視力)を定量的にかつ適正に評価できる。視野中心の色ごとの感度に基づいて、緑内障等の眼の疾患を早期に発見できたり、疾患の進行度合いを正確に評価できる。
【0059】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。例えば上記第1実施形態では、複数の測定点間で視標をランダムに表示させることで、同時並行的に各測定点での閾値を測定する例を示したが、1つの測定点ずつ閾値測定を行っても良い。具体的には、複数の測定点のうち閾値測定を行う測定点を選択して、この測定点(以下、対象測定点という)において視標を段階的に変化させる。対象測定点での閾値測定を行っている間は、他の測定点での視標表示及び閾値測定は行わない。そして、対象測定点での閾値測定が終了した場合には、対象測定点を別の測定点に切り替え、以降、切り替えた後の対象測定点に対して閾値測定を行う。この手順を、全ての測定点に対して閾値が得られるまで繰り返す。
【0060】
また、上記第1実施形態では、入力部4により応答の有無に応じて、次に表示する視標サイズを大きくするか小さくするかを決定していたが、応答の有無にかかわらず視標サイズを段階的に変化させても良い。具体的には、各測定点において、視標を最小サイズから最大サイズまで、又は最大サイズから最小サイズまで段階的に変化させていき、この間の応答の有無を記録する。この際、応答無しから有りに、又は応答有りから無しに変わったとしても、視標サイズの変化方向を切り替えずに、最大サイズまで又は最小サイズまで変化させる。これによっても、応答の有無が切り替わる視標サイズである閾値を得ることができる。そして、この閾値測定を測定点ごとに複数回行うことで、測定点ごとに複数の閾値を得ることができる。また、各測定点において、視標を最小サイズから段階的に大きくしていき応答無しから有りに変化した時点で(つまり最大サイズまで変化させないで)、又は視標を最大サイズから段階的に小さくしていき応答有りから無しに変化した時点で(つまり最小サイズまで変化させないで)1回の閾値測定を終了しても良い。これによっても、閾値を得ることができる。
【0061】
また、1つの測定点ずつ閾値測定を行う場合や、第2実施形態の視野中心での閾値測定を行う場合は、視標サイズの切り替え中も視標を表示し続けても良い。つまり、視標を常時表示しつつ、応答が無い間は視標を次第に大きくしていき、応答が有る間は視標を次第に小さくしていくように、視標のサイズ変更を行っても良い。
【0062】
また、
図1の例では測定点の個数が16個の例を示したが、測定点の個数は16個以外の個数であっても良い。また、上記実施形態では、円形の視標を例示したが、視標は多角形(四角形)、楕円などでもよく、図柄、絵柄(動物、植物、食べ物など)などでもよい。図柄、絵柄などは被検者が子供の場合に特に好適となる。
【0063】
また、上記実施形態では、有彩色の視標を表示する例を示したが、無彩色の視標を表示しても良い。この場合は、無彩色の色感度を測定できる。また、背景は、視標と異なる色であれば、無彩色でも有彩色でも良い。
【0064】
また、上記実施形態では、視標の表示点が制御部により自動的に切り替わる例を示したが、検査実施者(医師など)が視標の表示点や切替タイミングを選択できるように構成しても良い。また、視標を知覚できたことを被検者に口頭で応答させるようにしても良い。
【解決手段】被検者に背景7中の1点6を注視させた状態でその注視点6の周辺領域に、被検者の色に関する視機能を検査するための視標5を、背景7の輝度が視標5の輝度の10%小さい数値と10%大きい数値の間に属する数値となるように表示させる。視標5は、予め定められた複数の測定点300間でランダムに表示させる。各測定点300において、被検者に視標5を知覚できたことの応答を求めて、その応答が無い場合には視標5を段階的に大きくし、応答が有る場合には視標5を段階的に小さくする。そして、測定点300ごとに、知覚の可否を分ける視標5の大きさである閾値を複数回(例えば4回)得る。