特許第6184066号(P6184066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184066
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】対空標識
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20170814BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20170814BHJP
   G01S 13/90 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   G01S7/03 200
   G01C15/06 T
   G01S13/90
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-191505(P2012-191505)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-48163(P2014-48163A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年7月7日
【審判番号】不服2016-10159(P2016-10159/J1)
【審判請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末廣 明生
(72)【発明者】
【氏名】園部 雅史
【合議体】
【審判長】 酒井 伸芳
【審判官】 須原 宏光
【審判官】 中塚 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第1777550(EP,A1)
【文献】 特開2002−29494(JP,A)
【文献】 実開昭63−84700(JP,U)
【文献】 特開2002−240776(JP,A)
【文献】 特開2007−121111(JP,A)
【文献】 特開2002−111370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/03
G01S 13/90
G01C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成開口レーダーにより検知可能な被災地用対空標識であって、
地表に対し垂直に立設される柱部と、
記柱部の周囲の前記地表に敷設され、前記柱部の軸に対し直交する上面を有する平面部とからなり、
記柱部の表面及び前記平面部の前記上面は、前記合成開口レーダーが発信する電磁波を反射する材料からなり、
前記平面部の上に設けられる電磁波反射材料は前記柱部のみであり、
記柱部は円柱形状、又は複数の円柱を束ねた形状であり、真上を除く全方位からの電波の到来に対して用いられること、
を特徴とする被災地用対空標識。
【請求項2】
請求項1に記載の被災地用対空標識において、
記柱部と前記平面部とは分離可能であり、
前記平面部は柔軟性を有する材質からなり折り畳み可能であり、
記柱部は、複数段に分割して入れ籠構造にでき、かつ前記入れ籠構造とした状態にて折り畳まれた前記平面部を収納可能な空洞を有すること、
を特徴とする被災地用対空標識。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1つに記載の被災地用対空標識において、
平面部は、
シート状の主部と、
前記主部の縁に設けられ前記主部を囲む枠部と、
を有し、
前記枠部は、流体を注入されて膨張し、前記平面部の縁を内側より高くすること、
を特徴とする被災地用対空標識。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar:SAR)により検知される対空標識に関する。
【背景技術】
【0002】
地震、津波及び、豪雨による土砂災害等の自然災害では、道路や通信基盤が使用不能となって孤立集落を招くことがあり、被災状況の把握が難しくなることがある。さらに、被災地域が広範囲に及ぶと、その全容を迅速に把握することが難しくなる。このような場合には、ヘリコプターなどの航空機を用いた上空からの状況把握が有効である。
【0003】
この上空からの把握手段として、地球観測衛星も用いることができる。これに関し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を含む世界の複数の宇宙機関が参加して、大規模な災害発生時に他機関の地球観測衛星のリソースも活用し災害から生じる危機の軽減等に貢献することを目的とした、通称「国際災害チャーター」と呼ばれる国際協力の枠組みがある。
【0004】
地球観測衛星には可視光での撮影を行う光学衛星と、電波を地表へ向けて発信し、その反射波を分析するSARを搭載したSAR衛星とが存在する。
【0005】
過去の災害では、例えば、避難場所の校庭等に、救援を要請する“SOS”の文字やヘリコプター着陸要請のための“H”マークを大きく描くなどして、上空からの観察に対して救援サインを送り、航空機や光学衛星がこれを検知して早期救援措置に繋げられたケースがあった。
【0006】
また、防災の取り組みの一環として、小学校の児童らによって大きく救援の人文字を形成するなどの訓練も行われている。
【0007】
このように被災地域の上空からの観察に対して、被災者の存在や救援要求を伝えるために、地表(地面、建物等の地物が存在する場所では屋上等、地物の表面)に対空標識を設けることが有効である。
【0008】
その一方、航空機による上空からの観察は悪天候時や夜間においては困難となる。また晴天であっても被災地が広域に及ぶ場合には限界がある。この点において地球観測衛星は広域を観測できるが、光学衛星では被災地域上空が雲で覆われていたり夜間であったりすると航空機と同様に地表の状況を捉えることはできない。この点、マイクロ波は可視光などに比べて波長が長いため、雲を通過する。そのため、マイクロ波帯のSAR衛星は天候の影響を受けず、また夜間においても観察を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−166241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
SARから地表に照射された電波をSARへ反射する装置としてコーナーキューブリフレクタがある。SAR衛星は強い反射が得られたことに基づいてコーナーキューブリフレクタを検知することができる。しかし、強い反射を返すためには、コーナーキューブリフレクタの開口面を電波の到来方向に向けて設置する必要がある。そのため、コーナーキューブリフレクタを被災地域での対空標識として用いようとした場合、被災者等は一般にSAR衛星の軌道を知らずに設置することになり、当該コーナーキューブリフレクタはたまたまその開口面が向く方向から特定のSAR衛星が電波を照射するまで検知されないことになる。最悪の場合、開口面が向く方向から電波照射する衛星が存在しなければ検知すらされない。従って、救援を迅速に行うことができない可能性があるという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、設置が簡単で、複数のSAR衛星により設置後早期に検知可能な対空標識を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る対空標識は、合成開口レーダーにより検知可能な対空標識であって、地表に立設される柱部と、前記柱部の周囲の前記地表に敷設される平面部と、を有し、前記柱部及び前記平面部は、前記合成開口レーダーが発信する電磁波を反射する材料からなる。
【0013】
(2)上記(1)に係る対空標識において、前記柱部は円柱、又は複数の円柱を束ねた形状とすることができる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)に係る対空標識において、前記平面部の上面は周辺地物に比べて反射率が高い色からなり、上空からの可視光撮影により検知可能であるものとすることができる。
【0015】
(4)上記(1)又は(2)に係る対空標識において、前記平面部は前記柱部から分離可能とされ、いずれの面を上面として敷設するかを選択でき、前記平面部の一方の面は上空からの可視光撮影により検知可能な色であり、他方の面は前記一方の面と反射率が異なり前記可視光撮影にて前記一方の面と識別可能な色であるものとすることができる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)に係る対空標識において、前記柱部と前記平面部とは分離可能であり、前記平面部は柔軟性を有する材質からなり折り畳み可能であり、前記柱部は、折り畳まれた前記平面部を収納可能な空洞を有するものとすることができる。
【0017】
(6)上記(1)から(5)に係る対空標識において、前記平面部は、シート状の主部と、前記主部の縁に設けられ前記主部を囲む枠部と、を有し、前記枠部は、流体を注入されて膨張し、前記平面部の縁を内側より高くするものとすることができる。
【0018】
(7)本発明に係る対空標識は、前記地表に複数配置された上記(4)の対空標識からなり、それらの前記平面部の面の向きについての組み合わせのパターンにより標示内容の識別を可能とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による対空標識は、反射波を好適に返せる電波の到来方向の範囲が広いのでSAR衛星の軌道を考慮せずに略全方位(地球観測衛星SARは鉛直方向に電波を照射しないので、真上は除く)からの電波の到来に対して設置することができる。これにより、対空標識の設置が容易になると共に、SAR衛星が本対空標識を検知可能な位置を通過し易いことから本対空標識が検知されるまでの時間が短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態である対空標識の概略の斜視図である。
図2】本発明の実施形態である対空標識の概略の平面図である。
図3】地表に設置された対空標識と上空を通過するSAR衛星及び光学衛星とを示す模式図である。
図4】対空標識がSAR衛星からの照射波を反射する様子を示す模式図である。
図5】柱部を分解可能な対空標識の使用時における概略の垂直断面図である。
図6】柱部を分解可能な対空標識の非使用時における概略の垂直断面図である。
図7】両面で色が異なる平面部を説明する模式図である。
図8】柱部及び平面部からなる対空標識を4つ組み合わせた対空標識の模式的な平面図である。
図9】柱部の他の例を示す対空標識の概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)である対空標識について、図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は実施形態である対空標識2の概略の斜視図である。また、図2は対空標識2の概略の平面図である。対空標識2は柱部4と平面部6とを備える。柱部4は地表に基本的に垂直に立設される柱形状であり、平面形状(柱の軸に垂直な断面形状)は円、又は円に比較的近い等方性を有する回転対称な形とする。図1図2に示す対空標識2では柱部4は円柱である。平面部6は柱部4の周囲の地表に敷設され、基本的に平坦な上面を形成する。例えば、平面部6の平面形状は正方形や円形などとすることができる。本実施形態では柱部4と平面部6とは分離可能であり、平面部6を地表に敷設した後、その中心付近に柱部4を設置することで対空標識2が構築される。
【0023】
柱部4の表面及び平面部6の平坦な上面となる部分は、SARが発信する電磁波を反射する材料で構成される。柱部4は例えば、金属製の筒で作ることができる。平面部6は例えば、ビニールシートなどで作ることができる。
【0024】
また平面部6の少なくとも一方面は白色又は黄色であり、この面を上面として敷設することで、対空標識2は上空からの可視光撮影により検知可能である。
【0025】
平面部6は平坦なシート状の主部8だけとすることもできるが、本実施形態では、主部8の縁に設けられ主部8を囲む枠部10を備える。枠部10は水や空気などの流体を注入して膨張させることができる。また、枠部10にはタブ12が取り付けられており、ペグをタブ12に打ち込んで平面部6を地表に固定することができる。
【0026】
図3は地表20に設置された対空標識2と上空を通過するSAR衛星22(22a,22b)及び光学衛星24とを示す模式図である。2つのSAR衛星22a,22bは対空標識2から見て互いに異なる方位に位置し、また互いに異なる入射角でマイクロ波帯の照射波26(26a,26b)を照射する。SAR衛星は地球を上昇軌道と下降軌道で周回し、衛星の進行方向に対して直角の方向の右下方、もしくは左下方に向けて電波を照射するため、20〜40°程度の入射角を持って撮影する。光学衛星24は光学センサーで地表20を撮影する。
【0027】
図4は対空標識2がSAR衛星22a,22bからの照射波26a,26bを反射する様子を示す模式図である。対空標識2において柱部4の側面と平面部6の主部8上面とはどの方位に対しても直角をなしている。例えば、SAR衛星22aから柱部4の軸に向かう方位に送信された照射波26aが主部8上面に入射すると、照射波26aは主部8上面で反射し、その反射波28aは柱部4の側面に入射する。そして柱部4の側面のうち照射波26aの到来した方位に略直交する領域に入射した反射波28aは照射波26aの到来した方位へ反射され、反射波30aを生じる。すなわち、反射波30aは照射波26aと同一の鉛直面上にある。さらに上述のように反射波28aを生じる主部8上面と反射波30aを生じる柱部4の側面とは直交しているので、反射波30aは当該鉛直面上にて照射波26aと平行で逆向きに進行する。よって、反射波30aはSAR衛星22aに到達し、その受信信号に基づいて対空標識2が検知される。
【0028】
以上、照射波26aの反射について説明したが、方位や入射角が異なる照射波26bについても同様であり、照射波26bに対する対空標識2の反射波30bはSAR衛星22bに到達し、対空標識2が検知される。また、照射波26a,26bが柱部4の側面に入射した場合は、マイクロ波は上述した経路を逆に辿ってSAR衛星22a,22bに戻るので、この場合も対空標識2は検知される。
【0029】
このように、対空標識2は、反射波をSAR衛星22へ好適に返せる電波の到来方向の範囲が広いので、その設置に際してSAR衛星22の軌道を考慮したり、SAR衛星22の軌道に合わせて設置状態を調整したりする必要がなく、設置や取り扱いが容易であり、災害時に利用し易い。また、SAR衛星が対空標識2を検知可能な位置に巡ってくるまでの時間が短くなるので、対空標識2は早期に検知されることを期待でき、災害時の早期救援に有効である。
【0030】
さらに、平面部6を反射率が高く上空からの可視光撮影により検知可能な色としていることにより、光学衛星24により撮影された可視光画像においても対空標識2を検知することが可能となる。
【0031】
対空標識2の柱部4の高さや太さ、また平面部6の面積は、SAR衛星22や光学衛星24が対空標識2を検知できるように設定される。例えば、対空標識2は、X,C,LバンドのSAR衛星22で地上分解能(Ground Sampled Distance:GSD)が3m級のもので検知でき、またGSDが1m級の光学衛星24で検知できるように構成される。この場合、柱部4の高さは1.5〜2m、太さは0.5m程度、平面部6を正方形とする場合はその一辺を、また円形とする場合はその直径を各々4m前後とすることができる。
【0032】
対空標識2を災害時の救援サインとして利用する目的では、対空標識2は使用する際に例えば、校庭、公園などに仮設され、非使用時には収納できることが好適である。そこで、対空標識2は収納を容易とするために、既に述べたように、柱部4と平面部6とを分離可能とし、また平面部6を柔軟性を有する材質で作ることで折り畳み可能としている。図5図6は非使用時には分解して小さくすることができる対空標識2の一例を説明する模式図であり、図5は使用時における対空標識2の概略の垂直断面図、図6は非使用時における概略の垂直断面図である。
【0033】
この対空標識2は柱部4を構成する筒を複数段に分割でき、分割された筒の各部は入れ籠構造にして小さくすることができる。例えば、図5の対空標識2の柱部4は下段部40、中段部41、上段部42の3段に分割される。各段は基本的に円筒であるが、中段部41の外径は下段部40の内径より小さく、また上段部42の外径は中段部41の内径より小さい。これにより、非使用時には下段部40の内側に中段部41、さらに中段部41の内側に上段部42が格納される入れ籠構造とされ、使用時より高さを小さくすることができる。
【0034】
なお、図5図6に示す例では、使用時に下段部40、中段部41、上段部42を順に単に積み重ねて柱部4を形成できるように、下段部40の上端側には中段部41の下端が載せられるように内側に後退した段差44が設けられ、同様に中段部41の上端側には上段部42の下端が載せられるように内側に後退した段差44が設けられる。また、下段部40の上端側には外径が中段部41の内径より小さい接続部46が設けられ、同様に中段部41の上端側には外径が上段部42の内径より小さい接続部46が設けられている。各段を積み重ねたときに各接続部46はその上の段の円筒内に挿入され、積み重ねた中段部41、上段部42の横ずれ、落下を防止する。
【0035】
また、積み上げた下段部40、中段部41及び上段部42の固定はネジ止めなど他の手段で行うこともできる。
【0036】
柱部4を構成する円筒内の空洞は、非使用時に、折り畳まれた平面部6を収納するために利用することができる。これにより、非使用時の対空標識2の収納スペースの縮小を図ることができる。図6に示す例では、分解して入れ籠状態とされた柱部4の内部、つまり上段部42内の空間に、平面部6を折り畳んだ塊48が納められている。当該空間には、対空標識2の組み立てに必要な他の部品や道具も格納することができ、例えば、平面部6を地面に固定するペグ50を格納することもできる。
【0037】
さて、図5に示すように使用時において平面部6は地表に展開される。例えば、枠部10に水などの液体を注入して膨らませることで、枠部10は平面部6が風などでめくれにくくするための重りの役目を果たす。また、枠部10が膨張することで、主部8に張力を及ぼし主部8の平坦性を増すことができる。なお、平面部6の固定のために、既に述べたように、ペグ50を打ち込んでタブ12を地表20に留めることもできる。
【0038】
枠部10が膨張することにより、平面部6の縁は主部8からなる内側領域より高くなる。これにより形成される平面部6の内側の窪みには水などの液体52を溜めることができる。その液面は平面部6が敷設される地表20の凹凸の影響を受けず、主部8だけの場合より平坦性が増してマイクロ波の散乱が軽減され、平面部6に入射したマイクロ波はその液体表面における全反射となることが期待できるので、当該構成は対空標識2からSAR衛星22への反射波の強度の確保に有効である。
【0039】
平面部6の一方の面は既に述べたように、白色等の反射率が高く上空からの可視光撮影により検知が容易な色とされるが、他方の面は一方の面より反射率が低く上空からの可視光撮影で検知しにくい色とすることもできる。図7はこのような両面で色が異なる平面部6を説明する模式図である。図7の左側に示す(a)の状態は反射率が高い面を上面として設置された平面部6の斜視図であり、右側に示す(b)の状態は反射率が低い面を上面として設置された平面部6の斜視図である。例えば、図7の(a)の状態の上面は上述したように白色や黄色とすることができる。一方、(b)の状態の上面は例えば、黒色や青色とすることができる。図7の中央の両方向への矢印は、対空標識2の設置に際して、平面部6のいずれの面を上面とするかを選択することができることを表している。
【0040】
SAR衛星22は平面部6の上面の色が違っても、対空標識2を基本的に同等に検知可能である。一方、光学衛星24の可視光画像にて、平面部6が図7の(a)の状態とされた対空標識2は検知し易いが、図7の(b)の状態とされた対空標識2は検知しにくい。よって、SAR衛星22の検知結果と光学衛星24の画像とを照合することで、2つの状態の対空標識2を区別して検知することができる。それら2つの状態それぞれについて標示内容を予め取り決めておくことで、対空標識2により2つの意味を伝達可能である。
【0041】
上述した対空標識2はそれぞれを識別できる距離と持たせて複数個を配列して、その集合を一つの対空標識として利用することもできる。例えば、対空標識群を構成する対空標識2の個数や配置パターン(対空標識の配置位置、平面部6の面の向き、及びこれらの組み合わせ)に応じて異なる標示内容を伝達可能となる。図8は4つの対空標識2からなる対空標識60の模式的な平面図である。対空標識60は対空標識2を2×2のマトリクス状に配置した構成を有する。対空標識60を構成する各対空標識2は両面の色が異なる平面部6を備え、対空標識60はそれらの平面部6の面の向きについての組み合わせのパターンにより標示内容の識別を可能とする。例えば、4つの対空標識2の平面部6の色の明暗の違いにより16通りの標示内容が可能である。
【0042】
また、対空標識2を常設しない場合は、緊急時に設置することになるため、緊急時に一度撮影したのみでは見落としてしまう可能性がある。このため、対空標識2の設置箇所、設置配置を予め決めておき、設置していない状態の画像と設置した状態の画像とを平時に設置箇所単位で撮影しておくことにより、緊急時での標識設置による観測画像との比較において、対空標識2の抽出精度を向上させることができ、強いては早期検知、早期救援が可能となる。
【0043】
図9は柱部4の他の例を示す対空標識2の概略の斜視図である。上述の対空標識2では柱部4は円柱であったが、複数本(円に比較的近い等方性を有する回転対称な形という意味では3本以上)の同じ太さの円柱をそれらの軸が円周上に並ぶように束ねることが好ましい。図9は柱部4の例として同じ太さの6本の円柱62をそれらの軸が円周上に並ぶように束ねた形状を示している。なお、図9では円周上に円柱を並べ、その内部に円柱が存在していないが、必要となる筒の数と横風などに対する設置強度との兼ね合い等により、内部に円柱を配置することも可能である。
【0044】
また、対空標識2を常設とする場合には、平面部6は柔軟性を有する材質である必要はなく、例えば、堅く地表20の凹凸の影響を受けず平坦性を確保し易い材質で作ることができ、例えば、金属板で平面部6を作ることができる。
【符号の説明】
【0045】
2 対空標識、4 柱部、6 平面部、8 主部、10 枠部、12 タブ、20 地表、22,22a,22b SAR衛星、24 光学衛星、40 下段部、41 中段部、42 上段部、44 段差、46 接続部、50 ペグ、60 対空標識、62 円柱。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9