【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の内張断熱パネルによると、内装下地材の施工と断熱材の施工とを別々に行う必要がないので、内張断熱パネルを容易に設置することができる。したがって、既存建物を改修して断熱性を高める際の施工の手間や煩雑さを改善することができる。
【0010】
しかも、断熱材の透湿率が0.0017g/m・h・mmHg以下でかつ熱伝導率が0.040W/m・K以下でかつ熱抵抗値が0.30m
2・K/W以上とされることにより、断熱性を向上し、しかも、従来のものでは達成されていない内部結露の抑制効果を得ることができる。
【0011】
このような断熱材は、JISA9511に記載の発泡プラスチック系断熱材から得ることができる。より好ましい断熱材は、フェノール樹脂発泡体であり、好ましいフェノール樹脂のタイプは、レゾール樹脂である。レゾール樹脂は、フェノール、又はクレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニールフェノール、レゾルシノール等のフェノール化合物と、ホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒドとの、触媒としての水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、又はトリメチルアミンやトリエチルアミン等の脂肪族アミンの存在下での化学反応によって得ることができる。又、密度は20Kg/m
2以上、制限酸素指数26%以上、ホルムキャッチャー剤を使用し、VOC発生を抑制したものが好ましい。
【0012】
フェノール樹脂発泡体を使用することで、断熱材の厚みを20mm程度としても、上記の条件を達成することが可能であり、こうして、透湿率および熱伝導率がともに小さい断熱材を用いることにより内張断熱パネルを薄肉化した上で、内部結露の抑制効果を得ることができる。
【0013】
内装下地材としては、石膏ボード、耐水石膏ボード、合板、珪酸カルシウム板、木毛セメント板や構造用パネル、パーティクルボード、シージングボード、MDF、ハードボード、積層繊維板、構造用合板等の木質系ボードやロックウール吸音板などが使用され、断熱材としては、JISA9511準拠の発泡プラスチック系断熱材、例えば、フェノール樹脂発泡体、硬質ウレタンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォームなどや無機繊維系断熱材(例えばグラスウール、ロックウール)、真空断熱材、シリカエアロゲル等が使用される。通常、断熱材の両面には、ガラス繊維混抄紙、寒冷紗、織布、不織布、紙、ライナー紙、エンボス加工紙、複合紙などの面材が積層される。断熱パネルは、現場でカッターや丸鋸等で容易に加工できるものとされていることが好ましい。
【0014】
断熱材の内装下地材への固定は、タッカー、ビス、くぎ、ネジなどの固定具による機械式固定、接着剤・テープなどによる接着式固定などの適宜な手段で行われる。
【0015】
断熱材に複数本のスリット(第1のスリット)が設けられていることが好ましい。
【0016】
断熱材に第1のスリットが入っていることで、内張断熱パネルの剛性が緩和され、取付面の凹凸や波打ち等の不陸に対応しやすくなる。このようにすることで、既存壁と内張断熱パネル間の隙間を抑えることができる。
【0017】
第1のスリットは、縦方向に設けられてもよく、横方向に設けられてもよく、縦・横両方に設けられてもよい。第1のスリットの深さは、断熱材の厚さの75〜99%とすることが好ましい。
【0018】
上記断熱パネルにおいて、内装下地材と断熱材との間に防湿層が設けられていることがある。
【0019】
防湿層としては、寒冷地(I〜II地域)向けとしては、JISA6930B種に記載の住宅用プラスチック系防湿フィルムが適しており、一般地(III〜IV地域)向けとしては、JISA6930A種に記載の住宅用プラスチック系防湿フィルムが適している。具体的には、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニールフィルム、ビニールシート不織布ポリエチレン、ビチューメン含浸ポリプロピレンフォイル等が挙げられる。もしくは、適宜な面材を積層することにより、湿度に対する遮蔽性能を著しく改善することができる。好ましい面材としては、アルミニウム箔張付け不織布、金属板、金属箔などが例示される。なお、防湿層(非透湿系面)は、断熱パネルの内部に1層、部分的または複数層に形成されてもよい。
【0020】
また、上記断熱パネルにおいて、断熱材の内装下地材側の面に面材が積層されて、断熱材の透湿率が0.00072g/m・h・mmHg以下とされていることがある。
【0021】
断熱材として、上記のフェノール樹脂発泡体を使用するとともに、適宜な面材(非透湿系面材)を積層することにより、透湿率が0.00072g/m・h・mmHg以下の断熱材を得ることができる。好ましい面材としては、アルミニウム箔張付け不織布、水酸化アルミニウム紙張アルミニウム箔、ポリエチレン(PE)フィルム積層複合面材、金属板、金属箔などが例示される。
【0022】
断熱材として、例えばフェノール樹脂発泡体を使用し、適宜な面材(非透湿系面材)を積層することにより、透湿率が0.00072g/m・h・mmHg以下とされた断熱パネル(以下、「面材付き内張断熱パネル」と称することがある。)は、以下の形態で使用することができる。
【0023】
面材付き内張断熱パネルは、断熱材の周縁の1対の短辺部および1対の長辺部のいずれかが面材を残して切り欠かれていることがあり、また、断熱材の周縁部が面材を残して方形状に切り欠かれていることがある。面材付き内張断熱パネルの施工に際しては、桟木等に固定するために、切欠き部を設ける必要があるが、面材を残すことで、切欠き部における透湿率の低下を防止することができる。
【0024】
また、面材付き内張断熱パネルは、断熱材に縦方向又は横方向又は双方向に複数本のスリット(第2のスリット)が面材を残して設けられていることがある。面材付き内張断熱パネルの施工に際しては、桟木等に固定するために、切欠き部を設ける必要があるが、面材を残すことで、切欠き部における防湿性の悪化を防止することができる。
【0025】
第2のスリットが設けられる場合、各第2のスリットの一部または全部を埋めるように、各面材に補強材が固定されていることが好ましい。補強材は、木材、金属、樹脂、発泡体等とされる。
【0026】
この発明による内張断熱壁は、新築または既存壁の室内側から取り付けられた内張断熱パネルを備えたRC造建物の内張断熱壁であって、内張断熱パネルは、方形状の内装下地材と、断熱材とが積層された積層体であり、前記内装下地材は、厚さが9.5mmの石膏ボードであり、前記断熱材は、両面に
不織布からなる面材が積層されたフェノール樹脂発泡体であり、前記断熱材の透湿率が0.0017g/m・h・mmHg以下でかつ熱伝導率が0.040W/m・K以下でかつ熱抵抗値が0.30m
2・K/W以上であり、前記断熱材の厚さが20mm又は25mmであり、前記断熱材は前記内装下地材と同一寸法の長方形であり、
前記内装下地材としての石膏ボードと前記断熱材としてのフェノール樹脂発泡体とが接着剤で固定されており、前記フェノール樹脂発泡体は横方向または縦方向に複数のスリットを有し、前記内張断熱パネルの前記フェノール樹脂発泡体側が前記RC造建物の壁面に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0028】
この発明による内張断熱パネルの施工法は、内張断熱パネルをRC造建物の新築または既存壁に室内側から取り付けるための内張断熱パネルの施工法であって、内張断熱パネルは、方形状の内装下地材と、断熱材とが積層された積層体であり、前記内装下地材は、厚さが9.5mmの石膏ボードであり、前記断熱材は、両面に
不織布からなる面材が積層されたフェノール樹脂発泡体であり、前記断熱材の透湿率が0.0017g/m・h・mmHg以下でかつ熱伝導率が0.040W/m・K以下でかつ熱抵抗値が0.30m
2・K/W以上であり、前記断熱材の厚さが20mm又は25mmであり、前記断熱材は前記内装下地材と同一寸法の長方形であり、前記内装下地材としての石膏ボードと前記断熱材としてのフェノール樹脂発泡体とを接着剤で固定する工程と、前記フェノール樹脂発泡体に、面材を残して横方向または縦方向に複数のスリットを設ける工程と、前記内張断熱パネルの前記フェノール樹脂発泡体側を前記RC造建物の壁面に取り付ける工程と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0033】
この発明の内張断熱パネルによると、方形状の内装下地材と断熱材とが積層されているので、内装下地材の施工と断熱材の施工とを別々に行う必要がなく、したがって、内張断熱パネルを容易に設置することができ、既存建物を改修して断熱性を高める際の施工の手間や煩雑さを改善することができる。
【0034】
さらに、断熱材は、透湿率が0.0017g/m・h・mmHg以下でかつ熱伝導率が0.040W/m・K以下でかつ熱抵抗値が0.30m
2・K/W以上とされていることで、断熱性を向上し、しかも、内部結露のリスクを抑えることができる。
【0035】
また、断熱材にスリット(第1のスリット)が設けられたものでは、既存壁の不陸に追従しやすくなり、施工性が向上する。したがって、内張断熱パネルをより一層容易に設置することができ、既存建物を改修して断熱性を高める際の施工の手間や煩雑さを改善することができる。
【0036】
また、断熱材の内装下地材側の面に面材が積層されて、断熱材の透湿率が0.00072g/m・h・mmHg以下とされている内張断熱パネルによると、面材によって防湿性の向上が図られ、施工に際して、面材を残すように断熱材を切り欠くことで、継ぎ目部などにおける防湿性の悪化を防止することができる。