特許第6184073号(P6184073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184073電気機械のロータ角度を推定する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184073
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】電気機械のロータ角度を推定する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20170814BHJP
   H02P 6/16 20160101ALI20170814BHJP
【FI】
   H02P27/06
   H02P6/16
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-227719(P2012-227719)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2013-90567(P2013-90567A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2015年10月15日
(31)【優先権主張番号】13/273,376
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591005165
【氏名又は名称】ディーア・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ラヴ・タイアガラジャン
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−237986(JP,A)
【文献】 特開2010−016966(JP,A)
【文献】 特開2000−324882(JP,A)
【文献】 特開平10−201284(JP,A)
【文献】 特開2011−087357(JP,A)
【文献】 特開平09−215397(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01785792(EP,A1)
【文献】 特開2001−211682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械のロータ角度を推定する方法であって、
永久磁石電気機械に結合されたエンコーダから位置サンプルを受け取るステップと、
前記位置サンプルをデータ記憶デバイスに格納するステップと、
連続する位置サンプル間において第1の複数の第1位置変化を判定するステップと、
連続する第1位置変化の間において、第2の複数の第2変化を判定するステップと、
各第1位置変化が、全体的に増大しているか、減少しているか、または一定か判定を行うステップと、
前記第1位置変化が全体的に増大しているかまたは減少しているかに基づいて、格納された各位置サンプルに補正運動係数を適用するステップと、
前記位置サンプルの内特定の1つと、それぞれの時点に対応する前記位置サンプルの前記特定の1つと関連した、対応する第1位置変化とに基づいて、前記電気機械の最終ロータ角度を推定するステップと、
前記電気機械が起動時に回転している場合、デコーダまたはディジタル信号プロセッサのカウンタを補償最終ロータ角度によって、エンコーダ分解能に基づいて自動的にスケーリングされるカウントを単位として、更新するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記受け取った位置サンプルが、パルス幅変調信号として表現され、前記パルス幅変調信号のデューティ・サイクルが、前記電気機械の位置またはロータ角度に比例する、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記受け取った位置サンプルが、以下の式にしたがって表現され、
【数1】
ここで、Pは推定された位置値であり、前記電気機械のロータ角度に比例し、tonは、サンプリングされた信号のオン・デューティ・サイクル部分の時間単位のパルス幅であり、toffは、サンプリングされた信号のオフ・デューティ・サイクル部分の時間単位のパルス幅であり、Dは時間を単位とした、可能な最大パルス幅期間にほぼ等しい、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記補正運動係数が、以下の式にしたがって決定され、
【数2】
ここで、Cは補正運動係数、ΔP1は第1位置変化、nはt/Tに等しく、t=tfinal−tinitialおよびT=1/fPWM、ΔP2は第2位置変化、mは(n(n+1))/2に等しく、fpwmは前記エンコーダによって出力されるパルス幅変調信号の周波数であり、前記信号のデューティ・サイクルはロータ角度を示す、方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記第1位置変化がある時間間隔において全体的に増大する場合、前記最終ロータ角度を推定するために、前記補正運動係数が、位置サンプルと関連した初期ロータ角度に加算される、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記第1位置変化がある時間間隔において一定である場合、前記最終ロータ角度を推定するために、前記補正運動係数が使用されない、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、更に、
前記最終ロータ角度を推定するときに、伝搬遅延または経過処理時間を補償するステップを含む、方法。
【請求項8】
電気機械のロータ角度を推定するシステムであって、
永久磁石電気機械に結合されたエンコーダと、
前記エンコーダから位置サンプルを受け取り、データ記憶デバイスに前記位置サンプルを格納する主処理モジュールと、
連続する位置サンプル間において第1複数の第1位置変化を判定し、連続する第1位置変化間において第2複数の第2変化を判定し、各第1位置変化が全体的に増大しているか、減少しているか、一定であるか判定する、前記主処理モジュールのデータ・プロセッサと、
を含み、
前記データ・プロセッサが、前記第1位置変化が全体的に増大しているかまたは減少しているかに基づいて、格納された各位置サンプルに補正運動係数を適用し、
前記データ・プロセッサが、前記位置サンプルの内特定の1つと、それぞれの時点に対応する、前記位置サンプルの前記特定の1つと関連した、対応する第1位置変化とに基づいて、前記電気機械の最終ロータ角度を推定し、前記システムは更に
前記エンコーダに結合されたコントローラ・ディジタル信号プロセッサと、
前記コントローラ・ディジタル信号プロセッサのカウンタであって、エンコーダ分解能に基づいて自動的にスケーリングされるカウントで最終ロータ角度を補償するように構成された、カウンタと、
を含む、システム。
【請求項9】
請求項記載のシステムにおいて、前記受け取った位置サンプルが、パルス幅変調信号として表現され、前記パルス幅変調信号のデューティ・サイクルが、前記電気機械の位置またはロータ角度に比例する、システム。
【請求項10】
請求項記載のシステムにおいて、前記受け取った位置サンプルが、以下の式にしたがって表現され、
【数3】
ここで、Pは推定された位置値であり、前記電気機械のロータ角度に比例し、tonは、サンプリングされた信号のオン・デューティ・サイクル部分の時間単位のパルス幅であり、toffは、サンプリングされた信号のオフ・デューティ・サイクル部分の時間単位のパルス幅であり、Dは時間を単位とした、可能な最大パルス幅期間にほぼ等しい、システム。
【請求項11】
請求項記載のシステムにおいて、前記補正運動係数が、以下の式にしたがって決定され、
【数4】
ここで、Cは補正運動係数、ΔP1は第1位置変化、nはt/Tに等しく、t=tfinal−tinitialおよびT=1/fPWM、ΔP2は第2位置変化、mは(n(n+1))/2に等しく、fpwmは前記エンコーダによって出力されるパルス幅変調信号の周波数であり、前記信号のデューティ・サイクルはロータ角度を示す、システム。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、前記第1位置変化がある時間間隔において全体的に増大する場合、前記データ・プロセッサが、前記最終ロータ角度を推定するために、前記補正運動係数を、位置サンプルと関連した初期ロータ角度に加算するように構成されるかまたは命令される、システム。
【請求項13】
請求項記載のシステムにおいて、前記第1位置変化がある時間間隔において一定であるかまたはほぼゼロである場合、前記データ・プロセッサが、前記最終ロータ角度を推定するために、前記補正運動係数を使用しないかまたは前記補正運動係数をゼロにセットする、システム。
【請求項14】
請求項記載のシステムにおいて、前記データ・プロセッサが、前記最終ロータ角度を推定するときに、伝搬遅延または経過処理時間を補償する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械のロータ角度またはロータ位置を推定する方法およびシステムに関する。
【従来技術】
【0002】
電気機械(electric machine)または電気モータ(electric motor)は、永久磁石およびステータを有するロータに特徴があると考えられる。例えば、電気機械は、永久磁石(PM)モータ、内部永久磁石(IPM)モータ、またはIPM同期モータを含むことができる。電気機械は、従来の手法の適用では精度高く推定することが困難な、ロータ角度またはロータ位置を有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電気機械の初期ロータ位置を推定するには、様々な異なる従来の技術的手法がある。第1の手法の下では、モータの逆起電力(逆EMF)電圧が、ステータに対するロータ位置の関数となるので、センサは多相交流モータの非励起相の逆起電力波形から、ロータ位置情報を抽出することができる。しかしながら、この第1の手法は、モータが低回転速度で動作している場合には、ロータ位置を推定するのに適していない。何故なら、逆EMF電圧は、速度しきい値(例えば、毎分100回転)よりも低い低回転速度で精度高く検出するには、余りに低過ぎることが頻繁に起こるからである。加えて、電気機械の1つ以上の電流搬送相における切り替え過渡からの電磁ノイズまたは干渉が、ロータ位置の推定誤差を招く可能性がある。
【0004】
第2の手法の下では、コンピュータが、電気機械の相電圧および相電流に基づいて、ロータ位置を推定する。例えば、コンピュータをカルマン・フィルターと関連付けて、ロータ位置を推定することができる。この第2の手法は、計算集約的であることが多く、定量化誤差、丸め誤差、および低い測定精度を生じやすい。第2の手法のロータ位置推定値は、例えば、積分関数(integration functions)のドリフトのために、モータが速度しきい値(例えば、毎分100回転(RPM))よりも低い低速において動作しているときに、精度が低くなる可能性がある。十分に高精度にするためには、第2の手法は一般に温度変化に伴うモータ・パラメータの変化を補償する必要があるが、これは計算の複雑さの一因となる。
【0005】
第3の手法の下では、永久磁石モータにおけるロータの突出を使用して、非対照的なロータ構造または磁気飽和に基づいて、ロータ位置を推定する。この第3の手法は、高周波検査信号のモータの制御端子への注入を使用することができる。第3の手法は、モータの低回転速度ではうまく作用し一般にロータ速度には独立しているが、第3の手法は、ロータの突出がない表面実装永久磁石交流モータのような、非突出永久磁石モータでは使用することができない。したがって、以上に記した欠点の1つ以上に取り組むために、電気機械のロータ角度またはロータ位置を推定する方法およびシステムの改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、電気機械のロータ角度を推定する方法およびシステムは、永久磁石電気機械に結合されているエンコーダから位置サンプルを受け取る。これらの位置サンプルは、データ記憶デバイスに格納される。データ・プロセッサが、連続する位置サンプル間における第1複数の第1位置変化(例えば、ΔP1)を判定する。このデータ・プロセッサは、連続する第1位置変化間において、第2複数の第2変化(例えば、ΔP2)を判定する。データ・プロセッサは、各第1位置変化が全体的に増大しているか、減少しているか、または一定であるか判断する。補正運動係数(例えば、第1位置変化が全体的に増大しているかまたは減少しているかに基づいて、速度係数(ΔP1*n)+加速係数(ΔP2*m))が、各格納されている位置サンプルに適用される。データ・プロセッサは、位置サンプルの特定の1つと、それぞれの時点に対応する位置サンプルの特定の1つと関連した対応第1位置変化とに基づいて、電気機械の最終ロータ角度を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、電気機械のロータ角度またはロータ位置を推定するシステムの一実施形態のブロック図である。
図1B図1Bは、図1Aのセンサ(例えば、エンコーダ)を更に詳細にしたブロック図、およびセンサのデータ処理システムに対する関係を示す。
図2図2は、図1Aに従う電子データ処理システムのブロック図である。
図3図3は、電気機械のロータ角度またはロータ位置を推定する方法の第1実施形態のフロー・チャートである。
図4図4は、電気機械のロータ角度またはロータ位置を推定する方法の第2実施形態のフロー・チャートである。
図5図5は、電気機械のロータ角度またはロータ位置を推定する方法の第3実施形態のフロー・チャートである。
図6図6は、電気機械のロータ角度またはロータ位置を推定する方法の代替実施形態のフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態によれば、図1Aは、モータ117(例えば、内部永久磁石(IPM)モータ)または他の交流電気機械を制御するシステムを開示する。一実施形態では、このシステムは、モータ117の他に、インバータまたはモータ・コントローラと呼ぶこともできる。
【0009】
このシステムは、電子モジュール、ソフトウェア・モジュール、または双方を含む。一実施形態では、モータ・コントローラは、1つ以上のソフトウェア・モジュールのソフトウェア命令の格納、処理、または実行をサポートするために、電子データ処理システム120を含む。電子データ処理システム120は、図1Aでは破線で示されており、図2において更に詳しく示されている。
【0010】
データ処理システム120は、インバータ回路188に結合されている。インバータ回路188は、モータ117に制御信号を出力するために、スイッチング半導体(例えば、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)または他のパワー・トランジスタ)を駆動または制御する半導体駆動回路を含む。一方、インバータ回路188は、モータ117または電気機械に結合されている。
【0011】
モータ117は、センサ115(例えば、位置センサ、レゾルバ、またはエンコーダ位置センサ)と関連付けられている。センサ115は、モータ軸126またはロータと関連付けられている。モータ軸126は、破線として示されている。何故なら、モータ軸126は、センサ115に機械的に接続または結合されてもされなくてもよいからである。センサ115がモータ軸126に機械的に接続または結合されていない場合、センサ115は、電磁場、即ち、モータ軸126またはロータ上に取り付けられている1つ以上の磁石に関連する場を検知する。
【0012】
センサ115およびモータ117(または電気機械)は、データ処理システム120に結合され、例えば、可能なフィードバック・データまたは信号の中でもとりわけ、フィードバック・データ(例えば、i、i、iのような電流フィードバック・データ)、生の位置信号を供給する。他の可能なフィードバック・データには、限定ではないが、巻線温度読み取り値、インバータ回路118の半導体温度読み取り値、三相電圧データ、あるいはモータ117についての他の熱または性能情報が含まれる。
【0013】
一実施形態では、トルク・コマンド生成モジュール105が、d−q電流生成マネージャ109(例えば、d−q軸電流生成参照表)に結合されている。d−q軸電流とは、モータ117のような、ベクトル制御交流機械のコンテキストにおいて適用可能な、直接軸電流および直角軸電流のことである。d−q軸電流生成マネージャ190の出力、および電流調節モジュール107(例えば、d−q軸電流調節モジュール107)の出力は、加算器119に供給される。一方、加算器119の1つ以上の出力(例えば、直接軸電流データ(i)および直角軸電流データ(i))は、電流規制コントローラ111に供給または結合される。
【0014】
電流規制コントローラ111は、パルス幅変調(PWM)生成モジュール112(例えば、空間ベクトルPWM生成モジュール)と通信することができる。電流規制コントローラ111は、それぞれのd−q軸電流コマンド(例えば、iおよびi)および実際のd−q軸電流(例えば、idおよびiq)を受け取り、対応するd−q軸電圧コマンド(例えば、vおよびvコマンド)を、PWM生成モジュール112への入力のために出力する。
【0015】
一実施形態では、PWM生成モジュール112は、例えば、モータ117の制御のために、直接軸電圧および直角軸電圧データを、二相データ表現から三相表現(例えば、v、v、およびvのような、三相電圧表現)に変換する。PWM生成モジュール112の出力は、インバータ188に結合されている。
【0016】
インバータ回路118は、モータ117に印加されるパルス幅変調信号または他の交流信号(例えば、パルス、方形波、正弦波、または他の波形)を生成、変更、および制御するために、スイッチング半導体のような、パワー・エレクトロニクスを含む。PWM生成モジュール112は、インバータ回路188内部にあるドライバ段に入力を供給する。インバータ回路188の出力段は、モータの制御のために、パルス幅変調電圧波形、または他の電圧信号を供給する。一実施形態では、インバータ188は直流(DC)電圧バスによって給電される。
【0017】
モータ117(または電気機械)は、センサ115(例えば、レゾルバ、エンコーダ、速度センサ、あるいは他の位置センサまたは速度センサ)と関連付けられている。センサ115は、モータ軸126の角度位置、モータ軸126の速度(speed or velocity)、およびモータ軸126の回転方向の内少なくとも1つを推定する。センサ115は、モータ軸126上に取り付けられるか、またはこれと一体化するのでもよい。あるいは、センサ115は、モータ軸126から離間している非接触センサまたは磁場センサ(図1Bにおける206)を含むこともできる。センサ15の出力は、主処理モジュール114(例えば、位置および速度処理モジュール)と通信することができる。一実施形態では、センサ115をアナログ/ディジタル変換器(図示せず)に結合することができる。このアナログ/ディジタル変換器は、アナログ位置データまたは速度データを、それぞれ、ディジタル位置データまたは速度データに変換する。他の実施形態では、センサ115(例えば、ディジタル位置エンコーダ)はモータ軸126またはロータについての位置データまたは速度データのディジタル・データ出力を供給することができる。
【0018】
主処理モジュール114の第1出力(例えば、モータ117についての位置データおよび速度データ)が、相変換器113(例えば、三相/二相電流パーク変換モジュール(Park transformation module)に伝達される。相変換器113は、測定された電流のそれぞれの三相ディジタル表現を、測定された電流の対応する二相ディジタル表現に変換する。主処理モジュール114の第2出力(例えば、速度データ)は、計算モジュール110(例えば、調節電圧/速度比モジュール)に伝達される。
【0019】
検知回路124の入力は、少なくとも測定された三相電流および直流(DC)バス(例えば、DC電力をインバータ回路188に供給することができる高電圧DCバス)の電圧レベルを検知するために、モータ117の端子に結合されている。検知回路124の出力は、検知回路124の出力をディジタル化するために、アナログ/ディジタル変換器122に結合されている。一方、アナログ/ディジタル変換器122のディジタル出力は、副処理モジュール116(例えば、直流(DC)バスおよび三相電流処理モジュール)に結合されている。例えば、検知回路124は、3つの相電流(例えば、モータ117の巻線に印加される電流、巻線内に誘導される逆MF、または双方)を測定するために、モータ117と関連付けられている。
【0020】
主処理モジュール114および副処理モジュール116のある種の出力は、相変換器113に接続する(feed)。例えば、相変換器113は、副処理モジュール116からのディジタル三相電流データおよびセンサ115からの位置データに基づいて、測定された電流の三相表現を二相電流表現に変換するために、パーク変換または他の変換式(例えば、ある種の適した変換式は、当業者には周知である)を適用することができる。相変換器113の出力は、電流規制コントローラ111に結合されている。
【0021】
主処理モジュール114および副処理モジュール116の他の出力は、計算モジュール(例えば、調節電圧/速度比計算モジュール(adjusted voltage over speed ratio calculation module))の入力に結合されている。例えば、主処理モジュール114は、以下の内1つ以上を供給することができる。ロータの速度データ(例えば、モータ軸126の1分毎の回転数)、ロータの加速度データ、角度位置データ、初期ロータ角度、最終ロータ角度、あるいはインバータ切り替え回路118またはインバータの起動時における初期ロータ角度。副処理モジュール116は、測定された直流電圧(例えば、車両の直流(DC)バス上における)のレベルを供給することができる。インバータ回路188に電気エネルギを供給するDCバス上における直流電圧レベルは、種々の要因のために、変動する、即ち、様々に変化する可能性がある。種々の要因には、限定ではないが、周囲温度、バッテリ状態、バッテリ充電状態、バッテリ抵抗またはリアクタンス、燃料セルの状態(該当する場合)、モータ負荷状態、それぞれのモータ・トルクおよび対応する動作速度、ならびに車両電気負荷(例えば、電気的に駆動される空調用コンプレッサー)が含まれる。計算モジュール110は、副処理モジュール116とdq−軸電流生成マネージャ109との間における仲介物として接続されている。計算モジュール110の出力は、d−q電流生成マネージャ109によって生成される電流コマンドを調節する、またはこれに作用して、とりわけ、直流バス電圧の変動またはばらつきを補償することができる。
【0022】
温度推定モジュール104、電流整形モジュール106、および端子電圧フィードバック・モジュール108は、dq−軸電流調節モジュール107に結合されている、またはこれと通信することができる。一方、d−q軸電流モジュール107は、dq−軸電流生成マネージャまたは加算器119と通信することができる。
【0023】
温度推定モジュール104は、ロータの1つまたは複数の永久磁石の温度を推定または判定する。一実施形態では、温度推定モジュール104はステータ上に配置されている1つ以上のセンサからロータ磁石の温度を推定することができる。このセンサは、ステータと熱連通しているか、またはモータ117の筐体に固定されている。
【0024】
他の代替実施形態では、ロータ磁石温度推定モジュール104を温度検出器(例えば、ワイヤレス送信機に結合されているサーミスタまたは赤外線熱センサ)と置き換えることができる。この温度検出器は、ロータまたは磁石上あるいはその近くに取り付けられており、この検出器は1つまたは複数の磁石の温度を示す信号(例えば、ワイヤレス信号)を供給する。
【0025】
一実施形態では、本方法またはシステムは以下のように動作することができる。トルク・コマンド生成モジュール105は、車両データ・バス118を介して、速度制御データ・メッセージ、電圧制御データ・メッセージ、またはトルク制御データ・メッセージというような、入力制御データ・メッセージを受け取る。トルク・コマンド生成モジュール105は、受け取った入力制御メッセージをトルク制御コマンド・データ316に変換する。
【0026】
d−q電流生成マネージャ109は、それぞれのトルク制御コマンド・データおよびモータ軸126の検出されたそれぞれの速度データと関連した、直接軸電流コマンド・データおよび直角軸電流コマンド・データを選択または決定する。例えば、d−q軸電流生成マネージャ109は、以下の内の1つ以上にアクセスすることによって、直接軸電流コマンド、直角軸電流コマンドを選択または決定する。(1)それぞれのトルク・コマンドを対応する直接および直角軸電流に関係付ける参照表、データベース、または他のデータ構造、(2)それぞれのトルク・コマンドを対応する直接および直角軸電流に関係付ける二次方程式または線形方程式、あるいは(3)それぞれのトルク・コマンドを対応する直接および直交軸電流に関係付ける1組の規則(例えば、if−then規則)。モータ117上のセンサ115は、モータ軸126について検出された速度データの提供を容易にし、主処理ユニット114は、センサ115によって供給されたデータを速度データに変換することができる。
【0027】
電流調節モジュール107(例えば、d−q電流調節モジュール)は、ロータ磁石の温度温度推定モジュール104、電流整形モジュール106、および端子電圧フィードバック・モジュール108からの入力データに基づいて、直接軸電流コマンド・データおよび直角軸電流コマンド・データを調節するための電流調節データを供給する。
【0028】
電流整形モジュール106は、以下の係数の内1つ以上に基づいて、直角軸(q−軸)電流コマンドおよび直接軸(d−軸)電流コマンドの補正または暫定的調節を決定することができる。例えば、モータ117上のトルク負荷およびモータ117の速度。温度推定モジュール104は、推定されたロータ温度の変化に基づいて、q−軸電流コマンドおよびd−軸電流コマンドの二次調節値を生成することができる。端子電圧フィードバック・モジュール108は、コントローラ電圧コマンドの電圧制限に対する関係に基づいて、d−軸電流コマンドおよびq−軸電流コマンドに対する第3調節値を与えることができる。電流調節モジュール107は、暫定的調節、二次調節値および第3調節値の内の1つを考慮する集計電流調節値を与えることができる。
【0029】
一実施形態では、モータ117は、内部永久磁石(IPM)機械または同期IPM機械(IPMSM)を含むことができる。IPMSMは、従来の誘導型機械または表面実装PM機械(SMPM)と比較すると、例えば、高い効率、高い電力密度、広い一定電力動作領域、保守不要というような、多くの好ましい利点を有する。
【0030】
センサ115(例えば、軸またはロータ速度検出器)は、以下の内1つ以上を含むことができる。直流モータ、光エンコーダ、磁場センサ(例えば、ホール効果センサ)、磁気抵抗センサ、およびレゾルバ(例えば、ブラシレス・レゾルバ)。一構成では、センサ115は位置センサを含み、モータ軸126についての速度(speed or velocity)データを判定するために、位置データおよび関連した時間データが処理される。他の構成では、センサ115は、モータ軸の位置を判定するために、速度センサ、または速度センサと積分器との組み合わせを含む。
【0031】
更に他の実施形態では、センサ115は、モータ軸126の速度を判定するために、モータ117のモータ軸126に機械的に結合されている補助コンパクト直流生成器を含み、この直流生成器は、モータ軸126の回転速度に比例する出力電圧を生成する。更に他の構成では、センサ115は、光源を有する光エンコーダを含む。この光エンコーダは、軸126に結合されている回転体に向けて信号を送り、光検出器において、反射または回折された信号を受け取る。ここで、受け取られた信号パルス(例えば、方形波)の周波数が、モータ軸126の速度に比例するのであればよい。追加の構成では、センサ115は、第1巻線および第2巻線を有するレゾルバを含み、第1巻線には交流電流が供給され、第2巻線に誘導される電圧が、ロータの回転の頻度と共に変動する。
【0032】
図1Bは、図1のセンサ115(例えば、エンコーダ)の図示例、および電子データ処理システム120とのセンサの関係を示す。一実施形態では、センサ115は位置データ、または1つ以上のロータ角度を示す信号を、データ・プロセッサ264、一次処理モジュール114、または双方に伝達する。例えば、位置データは、絶対位置データ、増分位置データを含むことができ、一方前述の信号は、1つ以上のパルス幅変調信号、差分信号、方形波信号、または正弦波信号を含むことができる。可能な構成の1つでは、センサ115は電子データ処理システム120に、第3データ・ポート272(図2)およびデータ・プロセッサ264(図2)を介して通信することができ、データ・プロセッサ264は、(例えば、図1Bの)コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256を含む。
【0033】
図1Bに示すように、センサ115は、磁場センサ206(ホール効果センサ・アレイ)、エンコーダ・ディジタル信号プロセッサ204、パルス幅変調(PWM)インターフェース252、および増分インターフェース254を含む。代替実施形態では、PWMインターフェース252および増分インターフェース254を1つ以上のデータ・ポート(例えば、シリアル・データ・ポートまたはユニバーサル・シリアル・データ・ポート)と置き換えることもできる。
【0034】
磁場センサ206は、エンコーダ・ディジタル信号プロセッサ204との通信のために、エンコーダ・ディジタル信号プロセッサ204に結合されている。一方、エンコーダ・ディジタル信号プロセッサ204は、PWMインターフェース252および増分インターフェース254に結合されている。磁場センサ206、エンコーダ・ディジタル信号プロセッサ204、PWMインターフェース252、および増分インターフェース254を相互接続する線は、物理的データ経路(例えば、1系統以上のデータ・バス)、論理的データ経路(例えば、ソフトウェア・モジュール間の通信)、または双方を含む。
【0035】
コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256は、更に、取り込み入力201、およびカウンタ202を有するデコーダ200(例えば、直角デコーダ)も含む。一実施形態では、取り込み入力201は、データ・ポート、復調器、あるいはセンサ115からの絶対位置データまたはパルス変調信号のパルス・エッジをデコードするためのパルス・エッジ・デコーダを含む。デコーダ200は、直角デコーダ、または直角デコーダおよびカウンタ202の組み合わせを含むことができる。構成では、デコーダ200は、位置データ、1つ以上のパルス幅変調信号、または電気機械117の推定ロータ角度を示す他の信号を検出し、デコードし、または復調することができる。例えば、カウンタ202は、対応する時間間隔において磁場センサ206によって出力されるパルス幅変調信号のパルス・エッジ数をカウントまたは追跡するために、デコーダ内部にカウンタを含むことができる。
【0036】
一構成では、カウンタ202には直角デコーダ200(またはその一部)が関連付けられている。カウンタ202は、エンコーダの分解能に基づいて自動的にスケーリングまたは調節されるカウントで、最終ロータ角度を補償するように構成することができる。例えば、エンコーダの分解能に基づいて自動的にカウントをスケーリングまたは調節するのを容易にするために、カウンタ202をセンサ115(例えば、エンコーダ)のPWM信号(例えば、PWMインターフェース252から出力される)に同期させることができる。
【0037】
図1Bにおいて、磁場センサ206は、磁場、または電気機械(例えば、モータ117)のロータの軸126の回転に伴う磁場の変化を検知または観察する。磁場センサ206は、観察した磁場データをディジタル信号プロセッサ204に供給する。一方、エンコーダ・ディジタル信号プロセッサ204は、観察された磁場データに基づいて、ロータ角度または速度を推定する。パルス幅変調200インターフェースは、例えば、ロータ角度または初期ロータ角度を示すパルス幅変調信号を出力する。コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256またはデータ・プロセッサ264は、主処理モジュール114の補償ソフトウェア命令または補正式を実行して、センサ115によって供給される推定ロータ角度または速度の精度を高める。これについては、本文書において更に詳しく説明する。
【0038】
図2において、電子データ処理システム120は、電子データ・プロセッサ264、データ・バス262、データ記憶デバイス260、および1つ以上のデータ・ポート(268、270、272、274、および276)を含む。データ・プロセッサ264、データ記憶デバイス260、および1つ以上のデータ・ポートは、データ・プロセッサ264、データ記憶デバイス260、および1つ以上のデータ・ポート間におけるデータの伝達をサポートするために、データ・バス262に結合されている。
【0039】
一実施形態では、データ・プロセッサ264は、電子データ・プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブル・ロジック・アレイ、ロジック回路、算術論理ユニット、特定用途集積回路、ディジタル信号プロセッサ、比例−積分−微分(PID)コントローラ、または他のデータ処理デバイスを含むことができる。
【0040】
データ記憶デバイス260は、データを格納するために、任意の磁気、電子、または光デバイスを含むことができる。例えば、データ記憶デバイス260は、電子データ記憶デバイス、電子メモリ、不揮発性電子ランダム・アクセス・メモリ、1つ以上の電子データ・レジスタ、データ・ラッチ、磁気ディスク・デバイス、ハード・ディスク・デバイス、光ディスク・デバイス等を含むことができる。
【0041】
図2に示すように、前述のデータ・ポートは、第1データ・ポート268、第2データ・ポート270、第3データ・ポート272、第4データ・ポート274、および第5データ・ポート276を含むが、任意の適した数のデータ・ポートを使用することができる。各データ・ポートは、例えば、トランシーバまたはバッファ・メモリを含むことができる。一実施形態では、各データ・ポートは任意のシリアルまたはパラレル入力/出力ポートを含むことができる。
【0042】
図2に示すような一実施形態では、第1データ・ポート268が車両データ・バス118に結合されている。一方、車両データ・バス118はコントローラ266に結合されている。一構成では、第2データ・ポート270をインバータ回路188に結合することができ、第3データ・ポート272をセンサ115に結合することができ、第4データ・ポート274をアナログ/ディジタル変換器122に結合することができ、第5データ・ポート276を端子電圧フィードバック・モジュール108に結合することができる。アナログ/ディジタル変換器122は、検知回路124に結合されている。
【0043】
データ処理システム120の一実施形態では、トルク・コマンド生成モジュール105が、電子データ処理システム120の第1データ・ポート268と関連付けられているか、またはこれによってサポートされている。第1データ・ポート268は、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)データ・バスのような、車両データ・バス118に結合することができる。車両データ・バス118は、第1データ・ポート268を介して、データ・バス・メッセージをトルク・コマンドと共にトルク・コマンド生成モジュール105に供給することができる。車両の操作者は、スロットル、ペダル、コントローラ266、または他の制御デバイスのようなユーザ・インターフェースを介して、トルク・コマンドを生成することができる。
【0044】
ある種の実施形態では、センサ115および主処理モジュール114が、データ処理システム120の第3データ・ポート272と関連付けられている、またはこれによってサポートされているのであってもよい。
【0045】
一般に、データ・プロセッサ264は、電気モータ117または電気機械のロータの角度ロータ位置または初期ロータ位置を判定することに加えて、本文書において明記される任意の式または数学的表現、あるいは特許請求の範囲に該当するその変形を実行、判定、計算、または解明することができる。
【0046】
図3は、電気機械(例えば、電気モータまたは発電機)のロータ角度を推定する方法のフロー・チャートである。この方法は、インデックス・パルスが、例えば、センサ115から入手可能か、またはセンサ115によって供給されるかには関係なく、インバータ切り替え回路188またはインバータの起動時に、モータのロータ角度または初期角度位置を判定するために使用することができる。図3の方法は、ステップS100において開始する。
【0047】
ステップS100において、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ)は、永久磁石電気機械(例えば、モータ117)に結合されているエンコーダまたはセンサ115から位置サンプル(例えば、位置データ)を受け取る。ステップS100は、交互にまたは一括して適用することができる種々の手順にしたがって実行される。第1手順の下では、受け取られた位置サンプルは、パルス幅変調信号として表現され、パルス幅変調信号のデューティ・サイクルは、電気機械17の位置またはロータ角度に比例する。第2手順の下では、受け取られた位置サンプルは、以下の式にしたがって、パルス幅変調信号として表現される。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、Pは推定された位置値であり、電気機械117のロータ角度を示すか、またはこれに比例する。tonは、サンプリングされた信号のオン・デューティ・サイクル部分の時間単位のパルス幅であり(例えば、センサのエンコーダ出力(252、254)、または直角デコーダ200における)、toffは、サンプリングされた信号のオフ・デューティ・サイクル部分の時間単位のパルス幅であり(例えば、センサ115のエンコーダ出力(252、254)、または直交デコーダ200における)、Dは時間を単位とした、可能な最大パルス幅期間にほぼ等しい(例えば、特定のそれぞれのセンサ115に対する)。
【0050】
ステップS102では、データ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)または主処理モジュール114は、位置サンプルをデータ記憶デバイス260に格納する。
【0051】
ステップS104では、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)は、連続する位置サンプル間における第1複数の第1位置変化(例えば、ΔP1)を判定する。
【0052】
ステップS106では、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)は、連続する第1位置変化間における第2複数の第2変化(例えば、ΔP2)を判定する。例えば、第2変化は、単位時間当たりの第1位置変化の微分を表す。
【0053】
ステップS108において、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)は、各第1位置変化が全体的に増大しているか、減少しているか、または一定であるか判定を行う。
【0054】
ステップS110において、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)は、第1位置変化が全体的に増大しているかまたは減少しているかに基づいて、補正運動係数(例えば、速度係数(ΔP1*n)+加速係数(ΔP2*m))を、格納されている各位置サンプルに適用する。例えば、補正運動係数は、以下の式にしたがって決定される。
【0055】
【数2】
【0056】
ここで、Cは補正運動係数、ΔP1は第1位置変化、nはt/Tに等しく、t=tfinal−tinitialおよびT=1/fPWM、ΔP2は第2位置変化、mは(n(n+1))/2に等しく、fpwmはエンコーダ115によって出力されるパルス幅変調信号の周波数であり、信号のデューティ・サイクルはロータ角度を示す。
【0057】
ステップS112において、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)は、位置サンプルの内特定の1つ、およびそれぞれの時刻に対応する位置サンプルのこの特定の1つと関連した、対応する第1位置変化に基づいて、電気機械117の最終ロータ角度またはロータ位置を推定する。ステップS112は、種々の技法にしたがって実行することができ、これらの技法は個々にまたは集合的に適用することができる。第1技法の下では、データ・プロセッサ264は、第1位置変化がある時間間隔において全体的に増大する場合、最終ロータ角度を推定するために、補正運動係数を、位置サンプルと関連した初期ロータ角度に加算する。第2技法の下では、データ・プロセッサ264は、第1位置変化がある時間間隔において全体的に減少する場合、補正運動係数を、位置サンプルと関連した初期ロータ角度から減算する。第3技法の下では、第1位置変化がある時間間隔において一定であるかまたはほぼゼロである場合、最終ロータ角度を推定するために補正運動係数は使用されない(例えば、受け取られる位置サンプルの少なくとも1時間間隔またはサンプリング周期の間一時的に使用されない)。本明細書において使用する場合、ほぼゼロとは、0±1/5を意味することとする。
【0058】
図4の方法は、図3の方法と同様であるが、図4の方法が更にステップS114を含むことを除く。図3および図4における同様のステップまたは手順は、同様の参照番号で示されている。
【0059】
ステップS114において、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)は、最終ロータ角度を推定したときの伝搬遅延および経過処理時間を補償するか、または補償された最終ロータ角度を決定する。代替実施形態では、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264は、最終ロータ角度を推定するときまたは補償された最終ロータ角度を決定するときの伝搬遅延または経過処理時間を補償する。伝搬遅延とは、サンプル(例えば、位置データ・サンプル)が取り込まれてから(例えば、特定用途集積回路(ASIC)を含むことができるセンサ115上のホール・センサ・アレイ)、そのサンプルがPWMインターフェース(252)および増分インターフェース(254)において変換され角度データとして入手可能になるまでの間の時間量、即ち、遅延のことを言う。経過処理時間は、第1時点と第2時点との間の差を含み、ここで、第1時点とは、データ・プロセッサ264または主データ処理モジュール114においてエンコーダ115から特定の位置サンプルが受け取られた(例えば、ステップS100において)ときであり、第2時点とは最終ロータ信号が推定されたとき(例えば、ステップS112において)である。例えば、経過時間は、nに等しいかまたはこれに比例するとよく、ここでnはt/Tに等しく、t=tfinal−tinitialおよびT=1/fPWMである。主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264は、ロータ速度、ロータ加速データ、または双方を経過処理時間の間において使用して、経過処理時間または伝搬遅延に伴う最終位置のあらゆる誤差を補償する補償最終ロータ角度の決定のために、ステップS112の最終ロータ角度に加算すべき補償位置成分を推定する。
【0060】
図5の方法は、図4の方法と同様であるが、図4の方法が更にステップS116を含むことを除く。図3および図5における同様のステップまたは手順は、同様の参照番号で示されている。
【0061】
ステップS116において、電気機械(例えば、117)が起動時に回転している場合、主処理モジュール114またはデータ・プロセッサ264は、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256においてデコーダ200(例えば、直角デコーダ)のカウンタ202を、最終ロータ角度(例えば、補償されたロータ角度)によって、エンコーダ分解能に基づいて自動的にスケーリングされるカウントを単位として更新する。
【0062】
図6の方法は、電気機械のロータ角度を推定する方法の代替実施形態を示す。図6の方法は、ステップS600において開始する。
ステップS600において、データ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)または主処理モジュール114は、永久磁石電気機械117に結合されているエンコーダ115からのパルス幅変調信号として、位置サンプルを受け取る。
【0063】
ステップS602において、データ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)または主処理モジュール114は、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256またはデータ・プロセッサ264におけるデコーダ200を、エンコーダ115によって出力されたパルス幅変調(PWM)信号の先端エッジに同期させる。例えば、エンコーダ115のPWM出力(例えば、252)を、直角デコーダ200またはコントローラ・ディジタル信号プロセッサ256のストローブ入力に接続して、デコーダまたはコントローラ・ディジタル信号プロセッサ256の、エンコーダ115によって出力された信号のパルスの先端エッジへの同期を容易にすることができる。
【0064】
ステップS604では、データ・プロセッサ264(例えば、コントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)または論理回路は、デコーダ200のカウンタ202(図1B)を増分して、サンプリング期間における各パルス幅変調信号の先端エッジ、後端エッジ、または双方の検出に基づいて、最終ロータ位置を推定する。例えば、エンコーダ115のPWM出力(例えば、252)が直角デコーダ200(例えば、直角デコーダ)のストローブ入力に接続されている場合、ストローブ・イベントの検出時に、直角デコーダ・カウンタ202を0にリセットし、その後検出されたエッジ毎に、絶対位置によって戻された値が、直角デコーダに更新される。したがって、一旦エッジを検出するために直角デコーダ200が同期されると、直角デコーダ200、したがってエンコーダ115および電子データ処理システム120(例えば、データ・プロセッサ264またはコントローラ・ディジタル信号プロセッサ256)は、高い精度でロータ位置を追跡することができる。
【0065】
本明細書において開示した図1Aから図6までの方法およびシステムは、ロータの回転速度(例えば、100RPM以下というような、ロータの低回転速度)に関係なく、そして電気機械のロータがロータ突出を有するか否かにも関係なく、電気機械(例えば、電気モータ)におけるロータのロータ角度または位置の正確な推定を達成するのに非常に適している。更に、図1Aから図6までの方法およびシステムは、いずれのモータ・パラメータにも依存せず、ロータ角度を推定するために電圧相情報や電流相情報を必要としない。本明細書において開示した方法およびシステムは、事実上あらゆるタイプの電気モータに応用するのに非常に適しており、ロータ位置を推定するために電圧相および電流相を用いるというような、ある種の従来技術の構成よりも計算集約的ではない。例えば、本明細書において開示した方法およびシステムは、個々のモータの磁場または極構成を特徴化する必要なく、更に、回転速度のある範囲内でしか使用できない逆起電力を検知する必要なく、電気機械の起動時におけるロータ角度および初期ロータ角度の正確な推定値を与える。
【0066】
有利なこととして、本明細書において開示した方法およびシステムは、ロータが静止しているかまたはコントローラ起動時に回転しているときに、初期ロータ角度を判定するために、エンコーダからのインデックス・パルスを全く必要とせずに、初期ロータ角度の判定を簡単に行える。代わりに、しかるべき運動補正係数の適用によって(例えば、初期位置補正を直角デコーダまたはエンコーダに、フィーバック・データまたはフィードバック信号として供給するため)、モータが静止しているかまたは起動時に動いているのかに基づいて、初期ロータ角度が推定される。
【0067】
以上、好ましい実施形態について説明したが、添付した特許請求の範囲に定められている本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができることは明白であろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6