特許第6184096号(P6184096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

特許6184096転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置
<>
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000004
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000005
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000006
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000007
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000008
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000009
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000010
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000011
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000012
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000013
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000014
  • 特許6184096-転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184096
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】転がり軸受、スロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20170814BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20170814BHJP
   F02D 9/10 20060101ALI20170814BHJP
   F16K 1/226 20060101ALI20170814BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20170814BHJP
【FI】
   F16C33/78 D
   F16C19/06
   F02D9/10 F
   F16K1/226 D
   F16J15/3204
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-285196(P2012-285196)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-126178(P2014-126178A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】古越 秋三
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−193847(JP,A)
【文献】 実開平03−127098(JP,U)
【文献】 特開平11−344502(JP,A)
【文献】 実開平05−083542(JP,U)
【文献】 特開2008−180277(JP,A)
【文献】 特開2003−307224(JP,A)
【文献】 特開2004−060677(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/144785(WO,A1)
【文献】 特開2006−258247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78
F02D 9/10
F16C 19/06
F16J 15/3204
F16K 1/226
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成される環状空間に配置された複数の転動体と、芯金及び該芯金を覆う弾性体によって構成されて前記環状空間をシールする環状のシール部材と、を備えた転がり軸受であって、
前記シール部材は、内周部に前記弾性体からなり、前記内輪の外周面に接触するリップ部を有し、該リップ部は、内周側で分岐して、前記環状空間の外側へ傾斜して延びて前記内輪の外周面に接触する外側リップ部と、前記環状空間の内側へ傾斜して延びて前記内輪の外周面に接触する内側リップ部とを有し、
前記リップ部は、前記外側リップ部と前記内輪の外周面との接触部と、前記内側リップ部と前記内輪の外周面との接触部との間の部分が前記内輪の外周面との間に隙間を形成し、
前記リップ部の前記外側リップ部と前記内側リップ部との間の部分と前記内輪の外周面との間の前記隙間の径方向の寸法は、前記外側及び内側リップ部の厚さ以下であり、
前記芯金の内周側の端部は、軸方向に直交する平面に平行で該芯金の径方向に、前記外側リップ部及び前記内側リップ部の傾斜面に達する位置を超えて前記弾性体の内部に延ばされ
前記外側リップ部の傾斜角度は、前記外側リップ部に作用する圧力に応じて設定され、前記内側リップ部の傾斜角度は、前記内側リップ部に作用する圧力に応じて設定されて、前記外側リップ部及び前記内側リップ部が前記圧力によって前記内輪に押付けられる力が調整され、前記シール部材は、正圧及び負圧に対して前記環状空間をシールすることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記外側及び内側リップ部と前記内輪の外周面との間の隙間の軸方向の幅は、前記外側及び内側リップ部の基部の軸方向の幅以上であることを特徴とする請求項に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記内輪の外周面は、前記転動体が転動する軌道面から前記内輪の端部まで延びる一定の直径の円筒面を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記外側及び内側リップ部の前記内輪との接触面は、粗さ曲線の最大高さ(Rz)が6.0μm以下で、かつ、算術平均粗さ(Ra)が1.3μm以下であり、
前記内輪の前記外側及び内側リップ部との接触面は、断面曲線の最大断面高さ(Pt)が3.0μm以下で、かつ、算術平均粗さ(Ra)が0.25μm以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記シール部材は、前記環状空間の一端側にのみ設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記環状空間の他端側には、シール手段が設けられていないことを特徴とする請求項に記載の転がり軸受。
【請求項7】
前記環状空間の他端側に、芯金と該芯金を覆う弾性体からなり、前記内輪に接触しない環状の非接触シール部材が設けられていることを特徴とする請求項に記載の転がり軸受。
【請求項8】
内燃機関のスロットルバルブ装置であって、吸気通路を開閉するスロットルバルブが取付けられたスロットルシャフトは、請求項1乃至のいずれか1項に記載の転がり軸受によって回転可能に支持されていることを特徴とするスロットルバルブ装置。
【請求項9】
車両のアンチロックブレーキ装置であって、ABSポンプ駆動用の電動モータの駆動軸は、請求項1乃至いずれか1項に記載の転がり軸受によって回転可能に支持されていることを特徴とするABS装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封性能を有する転がり軸受、並びに、転がり軸受を備えたスロットルバルブ装置及びアンチロックブレーキ装置(以下、ABS装置という)に関する。なお、本発明において、「ABS」は、アンチロックブレーキシステム(Anti-lock Brake System)を指す。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関(エンジン)のスロットルバルブ装置において、吸気通路を開閉するバタフライバルブを回転駆動するスロットルシャフトの両端部を転がり軸受によって支持する構造が公知である。このような構造では、転がり軸受は、吸入空気の漏れを防止するため、密封性能(気密性)が要求される。そして、転がり軸受は、エンジンの吸気負圧、更に、過給機付のエンジンの場合には過給圧力を受け、これらの圧力は、エンジンの運転状態により大きく変動するため、このような大きな圧力変動に対して充分な気密性を維持することが要求される。
【0003】
これに対して、特許文献1には、内輪と外輪との間の環状空間が軸受の両端部に設けられた一対の環状のシール部材によって密封されるシール構造が開示されている(特許文献1の特に図6参照)。しがしながら、このシール構造においては、一対のシール部材のうち、一方のシール部材が外側から大気圧を上回る高い圧力を受けると、このシール部材のリップ部が環状空間側へ捲れ上がり、その結果、環状空間の内部の圧力が上昇し、他方のシール部材が外側へ捲れ上がり、転がり軸受から脱落してしまう虞がある。
【0004】
さらに、特許文献1には、一方のシール部材に外側から大気圧を上回る高い圧力が加わり、リップ部が環状空間側へ移動された場合であっても、このリップ部の移動を内輪の外周面に設けた段差部によって規制するように構成された転がり軸受が開示されている(特許文献1の特に図1参照)。しかしながら、この転がり軸受においては、段差部、すなわち、リップ部が接触する部分は、切削仕上げになっており、研磨による仕上げに対して面精度が劣るため、高い密封性能を得ることが困難である。
また、段差部を研磨する方法もあるが、センタレス加工による研磨仕上げができないため、製造コストの上昇が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−263734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、正圧及び負圧に対するシール性を高め、圧力の変動に対して充分な気密性を維持することができ、かつ、構造が簡単で低コストの転がり軸受、並びに、そのような転がり軸受を備えたスロットルバルブ装置及びABS装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に形成される環状空間に配置された複数の転動体と、芯金及び該芯金を覆う弾性体によって構成されて前記環状空間をシールする環状のシール部材と、を備えた転がり軸受であって、
前記シール部材は、内周部に前記弾性体からなり、前記内輪の外周面に接触するリップ部を有し、該リップ部は、内周側で分岐して、前記環状空間の外側へ傾斜して延びて前記内輪の外周面に接触する外側リップ部と、前記環状空間の内側へ傾斜して延びて前記内輪の外周面に接触する内側リップ部とを有し、
前記リップ部は、前記外側リップ部と前記内輪の外周面との接触部と、前記内側リップ部と前記内輪の外周面との接触部との間の部分が前記内輪の外周面との間に隙間を形成し、
前記リップ部の前記外側リップ部と前記内側リップ部との間の部分と前記内輪の外周面との間の前記隙間の径方向の寸法は、前記外側及び内側リップ部の厚さ以下であり、
前記芯金の内周側の端部は、軸方向に直交する平面に平行で該芯金の径方向に、前記外側リップ部及び前記内側リップ部の傾斜面に達する位置を超えて前記弾性体の内部に延ばされ
前記外側リップ部の傾斜角度は、前記外側リップ部に作用する圧力に応じて設定され、前記内側リップ部の傾斜角度は、前記内側リップ部に作用する圧力に応じて設定されて、前記外側リップ部及び前記内側リップ部が前記圧力によって前記内輪に押付けられる力が調整され、前記シール部材は、正圧及び負圧に対して前記環状空間をシールすることを特徴とする。
本発明に係るスロットルバルブ装置は、内燃機関のスロットルバルブ装置であって、吸気通路を開閉するスロットルバルブが取付けられたスロットルシャフトは、上記本発明の転がり軸受によって回転可能に支持されていることを特徴とする。
本発明に係るアンチロックブレーキ装置は、車両のアンチロックブレーキ装置であって、ABSポンプ駆動用の電動モータの駆動軸は、上記本発明の転がり軸受によって回転可能に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、転がり軸受の正圧及び負圧に対するシール性を高め、圧力の変動に対して充分な気密性を維持することができ。また、構造が簡単で低コスト化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
図2図1に示す転がり軸受の要部であるシール部材の部分を拡大して示す図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る転がり軸受の縦断面図である。
図5】本発明に係る転がり軸受の気密性を評価するための比較対照となる第1比較対照軸受の縦断面図である。
図6】本発明に係る転がり軸受の気密性を評価するための比較対照となる第2比較対照軸受の縦断面図である。
図7】本発明に係る転がり軸受の気密性を評価するための比較対照となる第3比較対照軸受の縦断面図である。
図8】本発明に係る転がり軸受の気密性を評価するための比較対照となる第4比較対照軸受の縦断面図である。
図9】本発明に係る転がり軸受の気密性を評価するための試験装置の概略図である。
図10図6に示す第2比較対照軸受において、正圧の作用によりシール部材が撓んで捲れた状態を示す説明図である。
図11】本発明の第4実施形態に係るスロットルバルブ装置の縦断面図である。
図12】本発明の第5実施形態に係るABS装置の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る軸受1の回転軸となる軸方向Xを含む平面による縦断面図であり、図2は、図1のシール部材の部分の拡大図である。
【0011】
図1に示すように、軸受1は、シール機能を有する転がり軸受であって、内輪2と、外輪3と、内輪2の外周面2Aに形成された軌道面2Bと外輪3の内周面3Aに形成された軌道面3Bとの間に収容される複数個の転動体4(鋼球)と、これらの転動体4を軌道面2B、3B上において所定間隔で保持するリテーナ5とを備えている。そして、軸受1には、内輪2及び外輪3の間の軸方向Xの両端部に、これらの間の環状空間Sをシールするシール部材6、6が設けられている。なお、これらのシール部材6、6は、同様な構造であるから、一方(図1において右側のシール部材6)についてのみ詳細に説明する。
【0012】
内輪2の外周面2Aは、軸方向Xの中央部の軌道面2Bを除いて一定の直径を有する円筒面となっている。外輪3の内周面3Aの軸方向Xの両端部には、シール部材6、6が取付けられる同形状の環状のシール溝8、8が円周方向に沿って形成されている。シール溝8の底部の断面形状は、略半円となっている。外輪3の両端の内周縁部3C、3Cすなわち、シール溝8、8の軸方向Xの外側部分は、内側部分よりも大径となっている。
【0013】
シール部材6は、金属製の芯金10及び芯金10を被覆するゴム状の弾性体11で構成されている。シール部材6は、外輪3のシール溝8に嵌合する外周側の嵌合部12と、内輪2の外周面2Aに接触する内周側のリップ部13と、これらの間の中間部14とが一体に形成された環状部材である。嵌合部12は、シール溝8の内面と略同形状で、シール溝8に嵌合してシール部材6を外輪3に固定する。中間部14は、嵌合部12及びリップ部13の軸方向Xの中央から外側にオフセットされて、傾斜部14A、14Bを介して嵌合部12及びリップ部13に連なっている。リップ部13は、内周側が分岐して環状空間Sの外側及び内側に傾斜して延びる外側リップ部13Aと内側リップ部13Bとを有し、外側リップ部13A及び内側リップ部13Bの先端部が内輪2の外周面2Aに接触している。傾斜部14Bと傾斜した外側リップ部13Aとの間にV字状の溝Gが形成されている。弾性体11は、エンジンの排出ガス中等の高温下で使用され場合には、耐熱性の高いフッ素ゴム等で製造して熱による劣化を抑制することが望ましい。
【0014】
芯金10は、シール部材6の中間部14に沿って配置されて軸方向Xに直交する平面に平行な平坦部15と、平坦部15の外周側で軸方向Xの内側に略直角に折曲された外側フランジ部16と、平坦部15の内周側で傾斜部14Bに沿って軸方向Xの内側に折曲された傾斜部17と、傾斜部17の内周側で平坦部15に平行に折曲されて、外側リップ部13Aと内側リップ部13Bとの分岐部付近まで延びる延長部18とが一体に形成されている。芯金10は、弾性体11にインサートされて、弾性体11によって被覆されているが、平坦部15の軸方向Xの内側部分の一部は、弾性体11に覆われず、外部に露出している。芯金10は、弾性体11を補強して、外力に対してシール部材6の形状を保持する。
【0015】
図2を参照してシール部材6のリップ部13の形状について更に詳細に説明する。
芯金10の延長部18の先端部は、径方向内側にV字状の溝Gの最深部を超えて寸法Dだけ延びており、すなわち、延長部18の内径は、V字状の溝Gの最深部の径よりも寸法Dだけ小さくなっている。また、リップ部13は、外側及び内側リップ部13A、13Bが傾斜していることにより、内輪2の外周面2Aに接触する外側及び内側リップ部13A、13Bの先端部の間の部分が内輪2の外周面2Aとの間に隙間Hを形成している。この隙間Hの軸方向Xの幅W1は、少なくとも外側及び内側リップ部13A、13Bの基部の幅W(V字状の溝Gの最深部におけるシール部材6の厚さ)にわたって形成されている。また、この隙間Hは、外側及び内側リップ部13A、13Bの厚さT(寸法線は外側リップ部13Aにのみ付してある)よりも小さくなっている。外側及び内側リップ部13A、13Bは、その内径が内輪2の外周面2Aの外径よりも所定寸法だけ小さく、シール部材6がシール溝8に装着されたとき、内輪2の外周面に弾性的に押付けられるようになっている。
【0016】
このような径方向の隙間Hを設けないと、外側及び内側リップ部13A、13Bが変形しにくくなって、内輪2の回転トルクの増大の要因になる。隙間Hが外側及び内側リップ部13A、13Bの厚さTよりも大きいと、外側及び内側リップ部13A、13Bが変形したとき、隙間H側に入り込んで捲れやすくなる。また、隙間Hが設けられる軸方向Xの範囲が小さすぎると外側及び内側リップ部13A、13Bが変形し難くなり、必要以上の押圧力が発生して内輪2の回転トルクが大きくなってしまう。隙間Hを設ける範囲W1(軸方向Xの幅)は、外側及び内側リップ部13A、13Bの基部の幅Wの範囲以上であることが望ましい。
【0017】
外側及び内側リップ部13A、13Bが接触する内輪2の外周面2Aは、センタレス研磨仕上げされ、望ましくは面粗さが算術平均粗さRaを0.25μm以下(Ra≦0.25μm)、かつ、断面曲線の最大断面高さPtを3.0μm以下(Pt≦3.0μm)(JIS B 0601:2001)とする。また、外側及び内側リップ13A、13Bの内輪2の外周面2Aとの接触面は、粗さ曲線の最大高さRzが6.0μm以下(Rz≦6.0μm)で、かつ、算術平均粗さRaが1.3μm以下(Ra≦1.3μm)とする。
【0018】
そして、内輪2、外輪3及びシール部材6、6によって囲まれた環状空間S内にグリース等の潤滑剤が適量保持され、外輪2、内輪3、転動体4及び保持器5を潤滑する。
【0019】
以上のように構成した軸受1の作用について次に説明する。
図2を参照して、軸受1のシール部材6側に正圧が作用する場合(図2の斜線を付した矢印参照)、外側リップ部13Aは、外側に向って傾斜して突出しているので、その傾斜した外周面13A1に作用する圧力によって内輪2の外周面2Aに押付けられることになり、外輪2の外周面2Aに密着して気密性を維持することができる。このとき、外側リップ部13Aを内輪2の外周面2Aに押付ける力は、加圧流体の圧力に比例するので、高い圧力に対して気密性を維持することが可能になる。
また、シール部材6は、正圧の作用によって内側に傾けようとする力が作用したとき、外側リップ部13Aが内輪2の外表面2Aに押付けられることになるので、内輪2への密着状態が損なわれることがない。
【0020】
一方、シール部材6に負圧が作用する場合(図2の白抜き矢印参照)、内側リップ部13Bは、内側に向って傾斜して突出しているので、その傾斜した外周面13B1に作用する圧力(シール部材6の内側と外側との差圧)によって内輪2の外周面2Aに押付けられることになり、外輪2の外周面2Aに密着して気密性を維持することができる。このとき、内側リップ部13Bを内輪2の外周面2Aに押付ける力は、シール部材6の内側と外側との差圧に比例するので、高い負圧に対して気密性を維持することが可能になる。
また、シール部材6は、負圧の作用によって外側に傾けようとする力が作用したとき、内側リップ部13Bが内輪2の外表面2Aに押付けられることになるので、内輪2への密着状態が損なわれることがない。
【0021】
そして、シール部材6は、芯金10によって補強されて剛性が高められ、所定の形状が保持され、更に、芯金10の延長部18が外側リップ部13Aと内側リップ部13Bとの分岐部の近傍まで延びているので、シール部材6に正圧及び負圧のいずれが作用する場合でも、外側リップ部13A及び内側リップ部13Bが撓んで捲れたり、シール部材6がシール溝8から外れたりすることがなく、確実に気密性を維持することができる。
【0022】
このようにして、シール部材6は、正圧及び負圧のいずれが作用する場合でも、高い圧力(差圧)に対して気密性を維持することができ、また、軸受1の内部への異物の侵入及び軸受1の内部に設けられた潤滑剤の漏出を防止することができる。その結果、軸受1を例えば、エンジンのスロットルバルブ、車両のABS装置のポンプモータ等の気密性が要求される軸受をとして用いることができ、別途、シール手段を不要にして、部品点数及び組付工数を削減することができる。
【0023】
なお、シール部材6は、これに作用する圧力(正圧及び負圧)によって生じる内側へ押す力及び外側へ押す力に対して、剛性が同程度になるように、内側リップ部13Aと外側リップ部13Bの傾斜角度は略対称であることが望ましい。しかしながら、たとえば、正圧が負圧よりも大幅に大きい使用条件の場合は、外側リップ部13Aの傾斜角度を内側リップ部13Bの傾斜角度よりも小さくして互いに異ならせ、外周面13A1に作用する正圧によって外側リップ部13Aが内輪2の外周面2Aに押付けられる力をより大きくすることもできる。更に、上述のように、芯金10に延長部18を設けて内側及び外側リップ部13A、13Bの剛性を充分高くすることにより、内輪2の外周面2Aにストッパとなる段差を設けてリップ部の変形を抑制する必要がないので、軌道面2Bを除く内輪2の外周面2Aを単純な円筒面とすることができる。これにより、外側及び内側リップ部13A、13Bと接触する内輪2の外周面2Aをセンタレス加工により研削仕上げすることが可能になる。これにより、内輪2の外周面の算術平均粗さRa≦0.25μm、かつ、断面曲線の最大断面高さPt≦3.0μmを容易に達成できるので、高い気密性を実現できると共に、内輪2の回転トルクを低く抑えることができる。さらに、内輪2の仕上げ加工が簡単になるので軸受1の製造コストを低減することができる。
【0024】
次に、本発明の第2及び第3実勢形態について、図3及び図4を参照して、説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態に係る軸受1に対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0025】
以上のように、シール部材6に外側及び内側リップ部13A、13Bからなる2つのリップ部を設けることにより、正圧及び負圧の両方に対して一端側のシール部材6により高い気密性を維持することができる。これにより、図3に示すように、第2実施形態に係る軸受1Aでは、他端側のシール部材6を省略している。また、図4に示すように、第3実施形態に係る軸受1Bでは、他端側については、シール部材6の代りに、内輪2との間に隙間を設けて内輪2に接触しないシール部材6A(非接触シール部材)が設けられている。シール部材6Aは、芯金及びこれを被覆する弾性体から構成されている。
【0026】
次に、図5乃至図10を参照して、上記第1乃至第3実施形態に係る軸受1、1A及び1Bの気密性及び起動トルクを評価する比較試験について説明する。軸受1、1A及び1Bの比較対照として、これらとシール構造のみが異なる図5乃至図8に示す比較対照軸受31、41、51及び61を用意し、図9に示す試験装置60を用いて比較試験を行った。
【0027】
図5に示すように、比較対照軸受31は、上述の特許文献1の図1に示される転がり軸受に相当し、両端部にリップシール32、32が装着され、リップシール32、32のリップ部32Aが接触する内輪33の外周面に、リップ部32Aを支持する段差部34が形成されている。リップ部32Aは、V字型の溝35を設けることにより、可撓性を付与して、内輪33への密着性を高めている。
【0028】
図6に示すように、比較対照軸受41は、上述の特許文献1の図6に示される転がり軸受に相当し、図5に示す比較対照軸受31に対して、内輪33の外周面の段部34を省略したものである。
【0029】
図7に示すように、比較対照軸受51は、上記特許文献1の図3に示される転がり軸受に相当し、図6に示す比較対照軸受41に対して、リップシール52の肉厚を厚くしてリップ部52Aの剛性を高めたものである。
【0030】
図8に示すように、比較対照軸受61は、上記第3実施形態に係る軸受1Bに対して、シール部材6の2つのリップ部のうち一方の内側リップ部13Bを省略してリップシール6Bとしたものである。
【0031】
なお、比較対照軸受31では、内輪の外周面の段差部34は、切削仕上げとなるので、リップシールとの接触部分の粗さを次のように設定した。
・リップシール:断面曲線の最大断面高さPt≦14μm 算術平均粗さRa≦3.5μm
・内輪外周面:段差部の断面曲線の最大断面高さはPt≦5.0μm 算術平均粗さRa≦0.5μm
【0032】
比較対照軸受41、51及び61は、内輪の外周面に段差部がなく、第1乃至第3実施形態と同様、研磨仕上げが可能なので、リップシールと内輪の外周面との接触部分の粗さを次の様に設定した。
・リップシール:断面曲線の最大断面高さPt≦14μm 算術平均粗さRa≦3.5μm
・内輪外周面:断面曲線の最大断面高さPt≦3.0μm 算術平均粗さRa≦0.25μm(第1乃至第3実施形態と同じ面粗さ)
【0033】
図9に示すように、試験装置70は、試験を行う軸受をセットする治具71と、治具71に空気(正圧又は負圧)を供給するポンプ72と、治具71に供給する正圧又は負圧を調整するレギュレータ73と、治具71、ポンプ72間の空気の流量を測定する流量計74と、治具71に供給する空気の圧力を測定する圧力計75とを備えている。
【0034】
治具71は、断面円形のボア76の中心に小径のシャフト部77を立設してボア76内に円筒状の空間を形成し、ボア76の内周溝及びシャフト部の外周溝にそれぞれOリング78、79を装着した構造となっている。そして、ボア76とシャフト部77との間の円筒状の空間に、試験を行う軸受をセットして、これらの外輪とボア76との間をOリング78によってシールし、内輪とシャフト部77との間をOリング79によってシールして、ボア76内に密閉された円筒状の軸受室S1を形成する。
【0035】
試験を行う軸受に正圧を作用させる場合には、ポンプ72を加圧ポンプとして、管路80を通して治具71の軸受室S1に圧縮空気を供給し、レギュレータ73及び圧力計75により軸受室S1に供給する圧縮空気の圧力を所定圧力に調整する。そして、流量計74により、ポンプ72側から治具71側へ流れる圧縮空気の流量を測定する。
【0036】
試験を行う軸受に負圧を作用させる場合には、ポンプ72を真空ポンプとして、管路80を通して治具71の軸受室S1に負圧を供給(軸受室S1の空気を吸引)し、レギュレータ73及び圧力計75により軸受室S1に供給する負圧を所定圧力に調整する。そして、流量計74により、治具71側からポンプ72側へ流れる空気の流量を測定する。
【0037】
試験を行う軸受を治具71にセットし、次の条件1〜3に示す負圧及び正圧を供給したとき、管路80を流れる空気の流量を流量計74により測定し、その流量の測定値を各軸受の漏れ量として気密性を評価した結果を表1に示す。
・条件1:軸受室S1に−60kPa〜+129kPaの圧力差を付与する。
・条件2:軸受室S1に+130kPa〜+235kPaの圧力差を付与する。
・条件3:軸受室S1に−70kPa〜+500kPaの圧力差を付与する。
要求気密性能は、0.5ml/分以下とし、また、起動トルクの要求は、0.015N・m以下とする。
評価結果は以下の基準により、○、×および△で表す。
○:気密性能および起動トルクの両方の要求を満足する。
△:気密性能は要求を満足するが、起動トルクは要求を満足しない。
×:気密性能の要求を満足しない。
【表1】
【0038】
表1に示されるように、条件1では、0.5ml/分以下の気密性能は第1実施形態の軸受1、及び、比較対照軸受51で満足された。ただし、比較対照軸受51は摺動トルクが高いため評価は△となった。比較対照軸受31はリップシールが密着する面の面粗さが大きいため、0.5ml/分以下の気密性能を満足できなかった。比較対照軸受41はリップシールの接触部分の面粗さが大きいため、0.5ml/分以下の気密性能を満足できなかった。
【0039】
条件2では、比較対照軸受31、41は、0.5ml/分以下の気密性能を満足できなかった。内輪の外周面が切削加工仕上げでは、リップシールと内輪が接触する部分の粗さを抑えることが難しく、気密性を確保できないことが確認された。また、リップシールの接触部分の面粗さも抑える必要がある。
【0040】
条件2及び3で、0.5ml/分以下の気密性能が要求された場合、比較対照軸受41のようにリップシール32にV字状の溝35を形成してリップ部32Aを設け、芯金の内径をV字状の溝の直径よりも大きくするとリップシール32のリップ部32Aに剛性が不足するため、内輪33の外周面がストレート形状(円筒面)であると、図10に示すように、リップ部32Aが低圧側(軸受内部側)へ反転してしまい(捲れてしまい)、気密性が維持できない。比較対照軸受31は、内輪の外周面に段差部34を設けてリップ部32Aを支持しているので、リップ部32Aは反転しないが、段差部34を切削加工するため、面粗さが大となり、気密性の確保が困難である。
【0041】
比較対照軸受51では、図示のようにリップシール52の内径部分を厚くして剛性を持たせることにより、内径部分が反転せず、気密性は確保できたが、リップシール52と内輪33との接触部の摩擦抵抗が大きくなり、起動トルクが増大することになる。
【0042】
次に、片側のみにシール部材6を設けた第2及び第3実施形態に係る軸受1A、1B及び比較対照軸受61をそれぞれ治具71にセットし、次の条件4〜7に示す負圧及び正圧を供給したとき、管路80を流れる空気の流量を流量計74により測定し、その流量の測定値を各軸受の漏れ量として気密性を評価した結果を表2に示す。
・条件4:軸受室S1に−20kPaの圧力差を付与する。
・条件5:軸受室S1に−70kPaの圧力差を付与する。
・条件6:軸受室S1に+300kPaの圧力差を付与する。
・条件6:軸受室S1に+500kPaの圧力差を付与する。
要求気密性能は、0.5ml/分以下とし、また、起動トルクの要求は、0.015N・m以下とする。
評価結果は以下の基準により、○、×および△で表す。
○:気密性能および起動トルクの両方の要求を満足する。
△:気密性能は要求を満足するが、起動トルクは要求を満足しない。
×:気密性能の要求を満足しない。
なお、表2中において、シール部材6側を大気側に向けて設置した場合を「向きA」とし、軸受室S1側に向けて設置した場合を「向きB」とする。
【表2】
【0043】
表2に示されるように、比較対照軸受61は、起動トルクについてはすべての条件で要求を満足したが、条件5(圧力差−70KPa)、条件6(圧力差+300kPa)及び条件7(圧力差+500kPa)において、流量0.5ml/分以上のエアー漏れが確認された。これに対して、第2及び第3実施形態に係る軸受1A、1Bは、いずれの条件においても全ての要求を満足する結果が得られた。
【0044】
次に、本発明の第4実施形態について図11を参照して説明する。第4実施形態は、図1に示す第1実施形態に係る軸受1を内燃機関のスロットルバルブ装置161に組込んだものである。
スロットルバルブ装置161は、吸気通路162を直径方向(図11における左右方向)へ貫通するスロットルシャフト163にスロットルバルブ164が固定され、スロットルシャフト163の両端部が軸受1によって支持されている。そして、各軸受1の外輪3は、ハウジング165の嵌合溝112に嵌合されている。なお、転がり軸受1を除く構成は従来のスロットルバルブ装置と同様であるため、ここでは、スロットルバルブ装置161の詳細な説明を省略する。
【0045】
スロットルバルブ装置161においては、車両の走行時(内燃機関の作動時)に、吸気通路162内の圧力が頻繁に変化する。これにより、軸受1の各シール部材6のうち、吸気通路162側のシール部材6には、エンジン構造によって、正圧または負圧が付与される。このため、たとえば比較対照軸受41を用いて従来のシール部材32に正圧が付与された場合、リップ部32Aが内輪33の外周面に強く押付けられ、その結果、リップ部32Aと内輪33の外周面との摺動抵抗が増大し、転がり軸受の回転抵抗もこれに伴い増大する。そして、吸気通路162側のシール部材32に大きい正圧が付与された場合、図10に示すようにシール部材32のリップ部32Aの内周部15が内側へ反転して捲れ上がってしまい、シール構造の密封性能が損なわれることになる。また、吸気通路162の反対側のシール部材32に大きい負圧が付与された場合、シール部材32のリップ部32Aの内周部が軸受41の内側へ反転して捲れ上がってしまい、シール構造の密封性能が損なわれることになる。
【0046】
第4実施形態では、スロットルシャフト163の両端部を上述した第1実施形態の軸受1によって支持したことにより、軸受1のシール部材6に正圧又は負圧のいずれが付与された場合であっても、要求される気密性能(密封性能)を確保することができる。更に、吸気通路162と軸受1の環状空間Sとの圧力差が、−70kPaから+500kPaまでのより過酷な環境下で使用することが可能なスロットルバルブ装置161を提供することができる。また、シール部材6は、リップ部が外側リップ13Aと内側リップ13Bとのダブルリップ構造なので、正圧と負圧のいずれに対しても、気密性能を維持することができる。したがって、第4実施例では、シール部材6を軸受1の両側ではなく、たとえば吸気通路162側のみに取付けた構成としても気密性能を確保することができる。この場合、反対側には非接触ゴムシールを設けるか、又は、シール部材を取付けずに解放されたままとすることができる。シール部材6は接触シールなので、軸受1の片側のみに取付けることにより両側に取付けた場合よりも摺動抵抗が減少して、起動トルクを小さくすることができる。
【0047】
軸受1の反対側にシールを取付けずに解放にした場合は、図11のように解放側の端面を別の部材に当接させて異物が転がり軸受1の内部に侵入しないようにするのが好ましい。また、図4に示す第3実施形態の軸受1Bのように、反対側に非接触ゴムシール6Aを取付けた場合は、起動トルクを大きくせずに軸受単体で異物の侵入防止ができる。更に、いずれの場合でも、転がり軸受1の両側にシール部材6を取付けるよりも製造コストが安くなる。
【0048】
次に、本発明の第5実施形態について、図12を参照して説明する。第5実施形態は、図1に示す第1実施形態に係る軸受1を車両のABS装置171に組込んだものである。
ABS装置171は、リザーバタンク内のブレーキ液を汲み上げてブレーキ装置のマスタシリンダへ供給するためのピストン172と、このピストン172を駆動するABSポンプ駆動用の電動モータ173とを備えている。そして、電動モータ173の駆動軸174は、モータハウジング175に取付けられた一対の軸受1によって支持されている。
【0049】
図12に示すように、電動モータ173は密閉されたモータハウジング175内に収容されているが、駆動軸174は、ピストン72側(図12における左側)へ延長され、その先端部には、ピストン172を図12における上下方向へ往復動作させるための偏心転がり軸受176が組み付けられている。したがって、ピストン172側でブレーキ液の漏洩があった場合、ピストン172側に配置された転がり軸受1のピストン172側のシール構造は、漏洩したブレーキ液に晒される。
【0050】
この時、ピストン172側に配置された転がり軸受1のピストン172側のシール構造の液密性能(密封性能)が不足している場合、漏洩したブレーキ液がピストン172側に配置された転がり軸受1からモータハウジング175内へ浸入するおそれがある。そして、モータハウジング175内へ浸入したブレーキ液が電動モータ173のブラシ177に到達すると、電動モータ173が動作不良を起こす虞がある。
【0051】
第5実施形態では、電動モータ173の駆動軸174を第1実施形態の軸受1によって支持したことにより、ピストン172側でブレーキ液の漏洩があった場合であっても軸受1のシール部材6のダブルリップ構造により、漏洩したブレーキ液がピストン172側に配置された軸受1からモータハウジング175内へ浸入するのを確実に防ぐことができる。これにより、電動モータ173、延いてはABS装置の不具合を未然に防ぐことが可能になり、信頼性が高いABS装置を提供することができる。なお、駆動軸174のピストン172側(図12における左側)のみを軸受1とすることでも上記目的を達成することが可能である。さらに、ピストン172側にのみシール部材6を設けるようにしてもよい。
【0052】
なお、上記各実施形態では、一例として玉軸受について説明しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、ころ軸受等の他の転がり軸受にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…軸受、2…内輪、2A…外周面、3…外輪、6…シール部材、10…芯金、11…弾性体、13…リップ部、13A…外側リップ部、13B…内側リップ部、H…隙間、S…環状空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12