【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための、
検知対象ガスが反応する検知極及び対極を電解質層の両側に接続したセンサ手段と、外気に含まれる前記検知対象ガスが前記検知極に拡散律速で接触するように前記外気の流入量を制御する拡散制御孔を形成した拡散制御手段とを備え、前記検知極と前記対極との間に流れる電流又は当該電流に対応する電圧に基づいて、前記検知対象ガスの濃度を検知する電気化学式センサの異常状態を診断する電気化学式センサの診断方法の特徴手段は、
前記検知対象ガスの濃度検知を正常に行える状態を正常状態として、
前記検知極と前記対極との間に界面異常診断周波数の交流を印加して、前記検知極と前記対極との間のインピーダンスの容量成分又はインピーダンスを検出し、
検出されたインピーダンスの容量成分が前記正常状態における基準インピーダンスの容量成分より増加した場合、又は検出されたインピーダンスが前記正常状態における基準インピーダンスより増加した場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響により異常状態にある可能性があると診断することにある。
【0015】
後述するように、発明者らは、複数の電気化学式センサを対象として、検知極と対極との間、特に電解質層が良好な湿潤状態にあり、拡散
制御孔に関しても、孔が完全な開放状態にある電気化学式センサで、基準濃度の検知対象ガスの濃度を電気化学式センサで検知した場合に、その出力が基準濃度に相当する出力を示さない電気化学式センサの異常原因を鋭意検討した。結果、このような異常を示す電気化学式センサにあっては、検知極又は対極を構成する電極触媒の表面に電解液が介在し、或いは、電解液の成分が析出していることが判明した。さらに、このような異常品の電気的特性(インピーダンスの容量成分又はインピーダンス)を正常品の電気的特性と比較した場合、特定の周波数範囲のインピーダンスの容量成分或いはインピーダンスに関して、正常品と異常品とで明確な差があることを見出した。即ち、異常品の電気的特性が、正常品の電気的特性に対して増加していることを見出した。
本発明において、「界面異常診断周波数」は、このような電気的特性に関して、正常品と異常品とが区別できる周波数を意味している。
【0016】
従って、検知極と対極との間に界面異常診断周波数の交流を印加して、検知極と対極との間のインピーダンスの容量成分又はインピーダンスを検出し、検出されたインピーダンスの容量成分が正常状態における基準インピーダンスの容量成分より増加した場合、又は検出されたインピーダンスが正常状態における基準インピーダンスより増加した場合に、検知極又は対極を成す電極触媒が電解質層の電解液の影響により異常状態にある可能性があると診断することができる。
【0017】
ここで、前記診断をインピーダンスの容量成分の増加で行う場合に、前記界面異常診断周波数の交流として0.1Hzから10Hzの範囲内の周波数の交流を印加し、前記インピーダンスの容量成分を検出することが好ましい。
後に
図5に基づいて説明するように、0.1Hzから10Hzの範囲内の周波数の交流で検出されるインピーダンスの容量成分で、電極触媒が電解液の影響により異常状態にある異常品と、このような現象が発生していない正常品とを明確に区別できるためである。
即ち、記載の周波数範囲のインピーダンスの虚数部を求めることで、検出結果から、正常・異常の診断を良好に行える。
【0018】
さらに、前記診断をインピーダンスの増加で行う場合に、前記界面異常診断周波数の交流として0.1Hzから1.5Hzの範囲内の周波数の交流を印加し、前記インピーダンスを検出することが好ましい。
後に
図6に基づいて説明するように、0.1Hzから1.5Hzの範囲内の周波数の交流で検出されるインピーダンスで、電極触媒が電解液の影響により異常状態にある異常品と、このような現象が発生していない正常品とを明確に区別できるためである。
即ち、記載の周波数範囲のインピーダンスを求めることで、この検出結果から、正常・異常の診断を良好に行える。
【0019】
これまで説明してきた、この種の電気化学式センサは、検知極と対極との間が正常な湿潤状態にあり、且つ拡散
制御孔が完全に開放されている状態で、検知対象ガスをその濃度まで精度よく検知できる。
そこで、前記検知極と前記対極との間が正常な正常湿潤状態にあるか否かを診断するとともに、前記拡散
制御孔が正常な開放状態にあるか否かを診断し、前記検知極と前記対極との間が正常な正常湿潤状態にあると診断するとともに、前記拡散
制御孔が正常な開放状態にあると診断した状態で、
前記検知極と前記対極との間に発生するインピーダンスの容量成分が正常状態に於ける基準インピーダンスの容量成分より増加している、又はインピーダンスが正常状態に於ける基準インピーダンスより増加している場合に、
前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響により異常状態にあると診断し、当該異常状態にないと診断した場合に、検知対象ガスの検知が可能と診断することが好ましい。
【0020】
即ち、電気化学式センサの構造起因の異常要因である、水枯れ、拡散
制御孔の閉塞の可能性を排除して、本発明に係る電極触媒に対する電解液の影響を診断することで、異常要因を特定することができるとともに、検知対象ガスの濃度を精度よく検知できる。
【0021】
また、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、前記検知極と前記対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、前記検知極と前記対極との間のインピーダンスを検出し、
前記低周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを一方の指標とし、前記高周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを他方の指標として定義される2次元の領域に関して、
検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスの少なくとも一方が、前記正常状態に於けるインピーダンスである基準インピーダンスより大きい領域である異常領域に位置する場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響により異常状態にある可能性があると診断し、
検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスが、共に、前記基準インピーダンス以下の領域である正常領域に位置する場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響を受けていない正常状態にある可能性があると診断することが好ましい。
【0022】
即ち、発明者らは、検知極又は対極を成す電極触媒における電解質層の電解液の影響による異常(以下、界面状態の異常と略記する場合がある)の原因について、鋭意検討した。そして、検知極や対極は、担体に触媒が担持されて構成されるものであるが、界面状態の異常は、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合により現れるものであることを見出した。
説明を加えると、触媒そのものが電解液により被覆されると(即ち、反応表面積が低下して、触媒の反応活性が低下する)、インピーダンスの容量成分が増加し、担体表面が電解液により被覆されると(即ち、電導性が低下する)、インピーダンスの抵抗成分が増加する。
つまり、界面状態の異常は、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合によるものであり、インピーダンスの容量成分の変化(増加)と抵抗成分の変化(増加)とに現れるという知見を得た。
【0023】
一方、交流を検知極と対極との間に印加したときの検知極と対極との間のインピーダンスは、抵抗成分と容量成分との複素和であり、高周波数側(例えば、10Hz以上)の周波数の交流を検知極と対極との間に印加した場合の両極間のインピーダンスは、略抵抗成分に等しく、低周波数側(例えば、1.5Hz以下)の周波数の交流を検知極と対極との間に印加した場合の両極間のインピーダンスは、略容量成分に等しい。
【0024】
そこで、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、検知極と対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、検知極と対極との間のインピーダンスを検出する。そして、低周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを一方の指標とし、高周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを他方の指標として定義される2次元の領域に関して、正常状態に於けるインピーダンスである基準インピーダンスを定めて、検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスを基準インピーダンスと比較することにより、検知極又は対極を成す電極触媒が電解質層の電解液の影響により異常状態にあるか否かを診断する。
従って、インピーダンスの容量成分の変化に加えて、インピーダンスの抵抗成分の変化に基づいて、界面状態の異常を診断するので、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合による界面状態の異常を診断することができるようになり、界面状態が異常状態にある可能性があることを一層的確に診断することができる。
【0025】
また、上記目的を達成するための別の電気化学式センサの診断方法は、
検知対象ガスが反応する検知極及び対極を電解質層の両側に接続したセンサ手段と、外気に含まれる前記検知対象ガスが前記検知極に拡散律速で接触するように前記外気の流入量を制御する拡散制御孔を形成した拡散制御手段とを備え、前記検知極と前記対極との間に流れる電流又は当該電流に対応する電圧に基づいて、前記検知対象ガスの濃度を検知する電気化学式センサの異常状態を診断する電気化学式センサの診断方法であって、その特徴構成は、
前記検知対象ガスの濃度検知を正常に行える状態を正常状態として、
前記検知極と前記対極との間に界面異常診断周波数の交流を印加して、前記検知極と前記対極との間のインピーダンスを検出するに、
インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、前記検知極と前記対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、前記検知極と前記対極との間のインピーダンスを検出し、
前記低周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを一方の指標とし、前記高周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを他方の指標として定義される2次元の領域に関して、
検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスの少なくとも一方が、前記正常状態に於けるインピーダンスである基準インピーダンスより大きい領域である異常領域に位置する場合に、電気化学式センサが異常状態にある可能性があると診断し、
検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスが、共に、前記基準インピーダンス以下の領域である正常領域に位置する場合に、電気化学式センサが正常状態にある可能性があると診断することにある。
【0026】
この診断方法も、電気化学式センサの異常は、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合によるものであり、インピーダンスの容量成分の変化と抵抗成分の変化とに現れるという知見に基づくものである。
【0027】
つまり、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、検知極と対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、検知極と対極との間のインピーダンスを検出する。そして、低周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを一方の指標とし、高周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを他方の指標として定義される2次元の領域に関して、正常状態に於けるインピーダンスである基準インピーダンスを定めて、検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスを基準インピーダンスと比較することにより、電気化学式センサが異常状態にある否かを診断する。
従って、インピーダンスの容量成分の変化に加えて、インピーダンスの抵抗成分の変化に基づいて、電気化学式センサの異常を診断するので、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合による電気化学式センサの異常を診断することができるようになり、電気化学式センサが異常状態にある可能性があることを的確に診断することができる。
【0028】
ここで、低周波数側界面異常診断周波数と高周波数側界面異常診断周波数とにより電気化学式センサの診断を行う場合に、前記低周波数側界面異常診断周波数が1.5Hz以下の周波数であり、前記高周波数側界面異常
診断周波数が10Hz以上の周波数であることが好ましい。
【0029】
つまり、一対の電極間に印加する交流の周波数の領域が1.5Hz以下の場合は、一対の電極間のインピーダンスは一層容量成分に等しくなり、一対の電極間に印加する交流の周波数の領域が10Hz以上の場合は、一対の電極間のインピーダンスは一層抵抗成分に等しくなる。
そこで、低周波数側界面異常診断周波数として、1.5Hz以下の周波数を用い、高周波数側界面異常
診断周波数として、10Hz以上の周波数を用いることにより、正常・異常の診断を良好に行える。
【0030】
ここで、前記高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが低インピーダンス側の所定インピーダンス範囲において、前記低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスに対する前記基準インピーダンスが一定値であり、
前記高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが前記低インピーダンス側の所定インピーダンス範囲より高い高インピーダンス範囲において、前記高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが増加するに従って、前記低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスに対する基準インピーダンスが低下するように設定されていることが好ましい。
【0031】
後述するように、発明者らは、湿潤状態や開放状態に異常がない複数の電気化学式センサを対象にして、基準濃度の検知対象ガスの濃度を電気化学式センサで検知した場合に、その出力が基準濃度に相当する出力を示さない(即ち、感度が鈍化している)電気化学式センサについて、その異常原因を鋭意検討した。結果、このような異常を示す電気化学式センサにあっては、前述の湿潤状態や開放状態の異常以外の要因による電気化学式センサの異常(例えば、検知極又は対極を構成する電極触媒の表面に電解液が介在し、或いは、電解液の成分が析出している異常)が発生していることが判明した。
【0032】
さらに、このように感度が鈍化している異常品と感度が鈍化していない正常品とについて、低周波数側界面異常診断周波数と高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数の交流を検知極と対極との間に印加して、検知極と対極との間のインピーダンスを検出し、検出結果を前述の2次元の領域で比較することにより、正常品と異常品とに明確に分ける境界を見出した。
即ち、
図10に示すように、高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが低インピーダンス側の所定インピーダンス範囲においては、低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが所定の一定値となる形態の境界で、正常品(感度安定品と記載)と異常品(感度低下品と記載)とに分かれる。また、高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが低インピーダンス側の所定インピーダンス範囲より高い高インピーダンス範囲においては、高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが増加するに従って低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが低下する形態の境界で、正常品と異常品とに分かれることを見出した。
従って、このような境界に基づいて、低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスに対する基準インピーダンスを設定することにより、正常・異常の診断を一層良好に行える。
【0033】
また、前記界面異常診断周波数として、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、前記検知極と前記対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、前記検知極と前記対極との間のインピーダンスを検出し、
前記低周波数側界面異常診断周波数を印加された状態で検出されるインピーダンスについて、検出されたインピーダンスの容量成分が前記正常状態における基準インピーダンスの容量成分より増加した場合、又は検出されたインピーダンスが前記正常状態における基準インピーダンスより増加した場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響により異常状態にある可能性があると診断し、
前記高周波数側界面異常診断周波数を印加された状態で検出されるインピーダンスについて、検出されたインピーダンスの抵抗成分が前記正常状態における基準インピーダンスの抵抗成分より増加した場合、又は検出されたインピーダンスが前記正常状態における基準インピーダンスより増加した場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響により異常状態にある可能性があると診断するようにしても良い。
【0034】
この診断方法も、電気化学式センサの異常は、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合によるものであり、インピーダンスの容量成分の変化と抵抗成分の変化とに現れるという知見に基づくものである。つまり、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、検知極と対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、検知極と対極との間のインピーダンスを検出し、検出した両方の界面異常診断周波数のインピーダンスに基づいて診断することにより、検知極又は対極を成す電極触媒が電解質層の電解液の影響により異常状態にあるか否かを診断する。
従って、そのような異常状態にある可能性があることを一層的確に診断することができる。
【0035】
これまで説明してきた電気化学式センサの診断方法を実施する診断装置は、以下の構成とすることができる。
即ち、検知対象ガスが反応する検知極及び対極を電解質層の両側に接続したセンサ手段と、外気に含まれる前記検知対象ガスが前記検知極に拡散律速で接触するように前記外気の流入量を制御する拡散制御孔を形成した拡散制御手段とを備え、前記検知極と前記対極との間に流れる電流又は当該電流に対応する電圧に基づいて、前記検知対象ガスの濃度を検知する電気化学式センサの異常状態を診断する診断装置であって、
前記検知極と前記対極との間に界面異常診断周波数の交流電圧を印加したときに、前記検知極と前記対極との間に発生するインピーダンスの容量成分又はインピーダンスを検出する検出手段と、
前記検知対象ガスの濃度検知を正常に行える状態を正常状態として、
検出されたインピーダンスの容量成分と前記正常状態における基準インピーダンスの容量成分とを比較、又は、検出されたインピーダンスと前記正常状態における基準インピーダンスを比較し、検出されたインピーダンスの容量成分が前記正常状態における基準インピーダンスの容量成分より上昇した場合、又は検出されたインピーダンスが前記正常状態における基準インピーダンスより上昇した場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響により異常状態にある可能性があると診断する診断手段を備える。
【0036】
この診断装置では、先に検知極又は対極を成す電極触媒が電解質層の電解液の影響により異常状態にあることの診断要件となる、界面異常診断周波数の交流電圧を印加した時の検知極と前記対極との間に発生するインピーダンスの容量成分又はインピーダンスを、検出手段が検出する。
そして、診断手段は、検出されたインピーダンスの容量成分と正常状態における基準インピーダンスの容量成分とを比較、又は、検出されたインピーダンスと前記正常状態における基準インピーダンスを比較し、検出されたインピーダンスの容量成分が正常状態における基準インピーダンスの容量成分より上昇した場合、又は検出されたインピーダンスが正常状態における基準インピーダンスより上昇した場合に、検知極又は対極を成す電極触媒が電解質層の電解液の影響により異常状態にある可能性があると診断する。
【0037】
結果、これまで知られていなかった電解液の電極触媒への悪影響を、合理的な基準に基づいて診断することができる。
【0038】
この診断装置の場合も、前記診断手段に、
前記検知極と前記対極との間が正常な正常湿潤状態にあるか否かを診断する湿潤状態診断部を備えるとともに、前記拡散
制御孔が正常な開放状態にあるか否かを診断する開放状態診断部を備え、
前記湿潤状態診断部が前記検知極と前記対極との間が正常な正常湿潤状態にあると診断するとともに、前記開放状態診断部が前記拡散
制御孔が正常な開放状態にあると診断した状態で、
前記診断手段に備えられる界面状態診断部が、前記検知極と前記対極との間に発生するインピーダンスの容量成分が正常状態に於ける基準インピーダンスの容量成分より増加している、又はインピーダンスが正常状態に於ける基準インピーダンスより増加している場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響により異常状態にあると診断し、当該異常状態にないと診断した場合に、検知対象ガスの検知が可能と診断する構成を採用することにより、電気化学式センサの構造起因の異常要因である、水枯れ、拡散
制御孔の閉塞の可能性を排除して、本発明に係る電極触媒に対する電解液の影響を診断することで、異常要因を特定することができるとともに、検知対象ガスの濃度を精度よく検知できる。
【0039】
さらに、これまで説明してきた診断装置において、
前記湿潤状態診断部が、湿潤状態診断周波数としての10Hzから10000Hzの範囲内の周波数の交流を、前記検知極と前記対極との間に印加し、交流印加状態で求められるインピーダンスの増加に基づいて、湿潤状態の診断を行い、
前記開放状態診断部が、開放状態診断周波数としての10Hz以下の範囲内の周波数の交流を、前記検知極と前記対極との間に印加し、交流印加状態で求められるインピーダンスの減少又はインピーダンスの抵抗成分の減少に基づいて、開放状態の診断を行うことが好ましい。
この構成を採用すると、湿潤状態の診断及び開放状態の診断を、異なった周波数で、各目的に適合した診断手法で行うことができる。
【0040】
また、この診断装置においても、前記検出手段が、前記界面異常診断周波数として、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、前記検知極と前記対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、前記検知極と前記対極との間のインピーダンスを検出し、
前記診断手段が、前記低周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを一方の指標とし、前記高周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを他方の指標として定義される2次元の領域に関して、
検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスの少なくとも一方が、前記正常状態に対応する基準インピーダンスより大きい領域である異常領域に位置する場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響により異常状態にある可能性があると診断し、
検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスが、共に、前記基準インピーダンス以下の領域である正常領域に位置する場合に、前記検知極又は前記対極を成す電極触媒が前記電解質層の電解液の影響を受けていない正常状態にある可能性があると診断する構成を採用しても良い。
【0041】
この診断装置も、電気化学式センサの異常は、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合によるものであり、インピーダンスの容量成分の変化と抵抗成分の変化とに現れるという知見に基づくものである。
【0042】
つまり、検出手段は、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、検知極と対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、それらの間のインピーダンスを検出する。
そして、診断手段は、低周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを一方の指標とし、高周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを他方の指標として定義される2次元の領域に関して、検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスを基準インピーダンスと比較することにより、検知極又は対極を成す電極触媒が電解質層の電解液の影響により異常状態にあるか否かを診断する。
従って、インピーダンスの容量成分の変化に加えて、インピーダンスの抵抗成分の変化に基づいて、界面状態の異常を診断するので、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合による界面状態の異常を診断することができるようになり、界面状態が異常状態にある可能性があることを一層的確に診断することができる。
【0043】
また、上記目的を達成するための別の電気化学式センサの診断装置は、
検知対象ガスが反応する検知極及び対極を電解質層の両側に接続したセンサ手段と、外気に含まれる前記検知対象ガスが前記検知極に拡散律速で接触するように前記外気の流入量を制御する拡散制御孔を形成した拡散制御手段とを備え、前記検知極と前記対極との間に流れる電流又は当該電流に対応する電圧に基づいて、前記検知対象ガスの濃度を検知する電気化学式センサの異常状態を診断する電気化学式センサの診断装置であって、その特徴構成は、
前記検知極と前記対極との間に界面異常診断周波数の交流電圧を印加したときに、前記検知極と前記対極との間に発生するインピーダンスを検出する検出手段と、その検出手段の検出情報に基づいて電気化学式センサの異常状態を診断する診断手段とを備え、
前記検出手段が、前記界面異常診断周波数として、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、前記検知極と前記対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、前記検知極と前記対極との間のインピーダンスを検出し、
前記診断手段が、
前記検知対象ガスの濃度検知を正常に行える状態を正常状態として、
前記低周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを一方の指標とし、前記高周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを他方の指標として定義される2次元の領域に関して、
検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスの少なくとも一方が、前記正常状態に対応する基準インピーダンスより大きい領域である異常領域に位置する場合に、電気化学式センサが異常状態にある可能性があると診断し、
検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスが、共に、前記基準インピーダンス以下の領域である正常領域に位置する場合に、電気化学式センサが正常状態にある可能性があると診断することにある。
【0044】
この診断装置も、電気化学式センサの異常は、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合によるものであり、インピーダンスの容量成分の変化と抵抗成分の変化とに現れるという知見に基づくものである。
【0045】
つまり、検出手段は、インピーダンスが主に容量成分からなる低周波数側界面異常診断周波数と、インピーダンスが主に抵抗成分からなる高周波数側界面異常診断周波数との両方の界面異常診断周波数について、検知極と対極との間に両方の界面異常診断周波数の交流を印加して、それらの間のインピーダンスを検出する。
そして、診断手段は、低周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを一方の指標とし、高周波数側界面異常診断周波数に於けるインピーダンスを他方の指標として定義される2次元の領域に関して、検出された両界面異常診断周波数のインピーダンスを基準インピーダンスと比較することにより、電気化学式センサが異常状態にあるか否かを診断する。
従って、インピーダンスの容量成分の変化に加えて、インピーダンスの抵抗成分の変化に基づいて、電気化学式センサの異常を診断するので、電解液の触媒そのものへの被覆と担体への被覆との複合による電気化学式センサの異常を診断することができるようになり、電気化学式センサが異常状態にある可能性があることを的確に診断することができる。
【0046】
ここで、低周波数側界面異常診断周波数と高周波数側界面異常診断周波数とにより電気化学式センサの診断を行う場合に、前記低周波数側界面異常診断周波数が1.5Hz以下の周波数であり、前記高周波数側界面異常
診断周波数が10Hz以上の周波数であることが好ましい。
【0047】
つまり、一対の電極間に印加する交流の周波数の領域が1.5Hz以下の場合は、一対の電極間のインピーダンスは一層容量成分に等しくなり、一対の電極間に印加する交流の周波数の領域が10Hz以上の場合は、一対の電極間のインピーダンスは一層抵抗成分に等しくなる。
そこで、低周波数側界面異常診断周波数として、1.5Hz以下の周波数を用い、高周波数側界面異常
診断周波数として、10Hz以上の周波数を用いることにより、正常・異常の診断を良好に行える。
【0048】
ここで、前記高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが低インピーダンス側の所定インピーダンス範囲において、前記低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスに対する前記基準インピーダンスが一定値であり、
前記高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが前記低インピーダンス側の所定インピーダンス範囲より高い高インピーダンス範囲において、前記高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが増加するに従って、前記低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスに対する基準インピーダンスが低下するように設定されていることが好ましい。
【0049】
前述のように、界面状態についての正常品と異常品との境界は、高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが低インピーダンス側の所定インピーダンス範囲においては、低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが所定の一定値となる形態の境界となり、高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが低インピーダンス側の所定インピーダンス範囲より高い高インピーダンス範囲においては、高周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが増加するに従って低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスが低下する形態の境界となる。
従って、このような境界に基づいて、低周波数側界面異常診断周波数のインピーダンスに対する基準インピーダンスを設定することにより、正常・異常の診断を一層良好に行える。