特許 6184150 車両用灯具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6184150

(24)【登録日】2017年8月4日

(45)【発行日】2017年8月23日

(54)【発明の名称】車両用灯具

(51)【国際特許分類】

   F21S 8/12 20060101AFI20170814BHJP

   F21Y 115/10 20160101ALN20170814BHJP

【ＦＩ】

   F21S8/12 125

   F21Y115:10

【請求項の数】4

【全頁数】13

(21)【出願番号】特願2013-79507(P2013-79507)

(22)【出願日】2013年4月5日

(65)【公開番号】特開2014-203698(P2014-203698A)

(43)【公開日】2014年10月27日

【審査請求日】2016年3月3日

(73)【特許権者】

【識別番号】000001133

【氏名又は名称】株式会社小糸製作所

(74)【代理人】

【識別番号】100099999

【弁理士】

【氏名又は名称】森山 隆

(72)【発明者】

【氏名】宇賀神 佑太

【審査官】 田中 友章

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１１−２４３３６２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００９−１１０８９５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００８−２５８００１（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｆ２１Ｓ ８／１２

Ｆ２１Ｙ １１５／１０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された発光素子と、この発光素子からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、このリフレクタからの反射光の一部を上向きに反射させるための上向き反射面を有し、該上向き反射面の前端縁が上記後側焦点またはその近傍を通るようにして配置されたミラー部材と、を備えてなる車両用灯具において、
上記上向き反射面が、上記前端縁に沿って帯状に延びる前部領域と、この前部領域の後方側に位置する後部領域とを備えており、
上記後部領域が、上記前部領域に対して後方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されており、
上記後部領域の一部に、光拡散反射処理が施された拡散反射領域が形成されており、
上記拡散反射領域が、上記後部領域と上記前部領域との境界線から後方に離れた位置において該境界線に沿って帯状に延びるように形成されている、ことを特徴とする車両用灯具。

【請求項2】

上記前部領域が、平面状に形成された一般部と、この一般部の前端位置の上記後側焦点よりも自車線側の部分において上方側に突出する立壁部とを備えており、
上記立壁部が、平面視において上記上向き反射面の前端縁に沿って細幅で延びるように形成されている、ことを特徴とする請求項１記載の車両用灯具。

【請求項3】

上記後部領域が、上記後側焦点を通るようにして前後方向に延びる鉛直面に関して左側に位置する左側部分と右側に位置する右側部分とを備えており、これら左側部分と右側部分とで左右方向の傾斜角度が互いに異なる値に設定されている、ことを特徴とする請求項１または２記載の車両用灯具。

【請求項4】

上記前部領域が、後方へ向けて水平に延びるように形成されている、ことを特徴とする請求項１〜３いずれか記載の車両用灯具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本願発明は、プロジェクタ型の車両用灯具に関するものであり、特に、ミラー部材を備えたプロジェクタ型の車両用灯具に関するものである。

【背景技術】

【0002】

一般に、プロジェクタ型の車両用灯具においては、投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源からの光をリフレクタにより投影レンズへ向けて反射させるように構成されている。

【0003】

そして、このような車両用灯具によってロービーム用配光パターン等のような上端部にカットオフラインを有する配光パターンを形成する際には、リフレクタからの反射光の一部を遮蔽するためのシェードを備えた構成が多く採用されている。

【0004】

その際、例えば「特許文献１」に記載されているように、発光素子を光源とするプロジェクタ型の車両用灯具においては、シェードの代わりに、リフレクタからの反射光の一部を上向きに反射させるための上向き反射面を有するミラー部材を備えた構成とし、これにより発光素子からの光の有効利用を図るようにすることも多い。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特許第４７５４５１８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

ミラー部材を備えたプロジェクタ型の車両用灯具により形成される配光パターンは、ミラー部材の上向き反射面の前端縁の上方空間を通過した光により形成される第１の配光パターンと、その上向き反射面で上向きに反射した光によって形成される第２の配光パターンとの合成配光パターンとして形成されるようになっている。

【0007】

その際、第２の配光パターンは、カットオフラインに沿って左右方向に延びる配光パターンとして、第１の配光パターンに対して部分的に重複して形成されるので、全体の配光パターンとしては、カットオフラインに沿って左右方向に延びる横長領域の明るさを十分に確保することができる。

【0008】

一方、発光素子を光源とする場合には、全体の配光パターンとして、第２の配光パターンの下端縁において明るさが急激に変化してしまうので、車両前方路面に配光ムラが発生しやすくなってしまう、という問題がある。

【0009】

本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ミラー部材を備えたプロジェクタ型の車両用灯具において、車両前方路面に配光ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。

【課題を解決するための手段】

【0010】

本願発明は、ミラー部材の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。

【0011】

すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された発光素子と、この発光素子からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、このリフレクタからの反射光の一部を上向きに反射させるための上向き反射面を有し、該上向き反射面の前端縁が上記後側焦点またはその近傍を通るようにして配置されたミラー部材と、を備えてなる車両用灯具において、
上記上向き反射面が、上記前端縁に沿って帯状に延びる前部領域と、この前部領域の後方側に位置する後部領域とを備えており、
上記後部領域が、上記前部領域に対して後方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されており、
上記後部領域の一部に、光拡散反射処理が施された拡散反射領域が形成されており、
上記拡散反射領域が、上記後部領域と上記前部領域との境界線から後方に離れた位置において該境界線に沿って帯状に延びるように形成されている、ことを特徴とするものである。

【0012】

上記「発光素子」は、投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置されていれば、その具体的な位置や向き等は特に限定されるものではない。

【0013】

上記「ミラー部材」は、その「上向き反射面の前端縁」が投影レンズの後側焦点またはその近傍を通るようにして配置されていれば、その「上向き反射面」の具体的な形成範囲やその表面形状等は特に限定されるものではない。

【0014】

上記上向き反射面における「前部領域」と「後部領域」との境界線の具体的な位置は特に限定されるものではない。

【0015】

上記「後部領域」は、「前部領域」に対して後方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されていれば、その具体的な傾斜角度は特に限定されるものではなく、また、その際、一定の傾斜角度で形成されていてもよいし、徐々に変化する傾斜角度で形成されていてもよい。

【発明の効果】

【0016】

上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、ミラー部材を備えたプロジェクタ型の灯具として構成されているが、上記ミラー部材は、その上向き反射面として、該上向き反射面の前端縁に沿って帯状に延びる前部領域と、この前部領域の後方側に位置する後部領域とを備えており、その後部領域は前部領域に対して後方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。

【0017】

すなわち、上述したように、ミラー部材の上向き反射面の前端縁の上方空間を通過した光により形成される第１の配光パターンに対して、その上向き反射面で上向きに反射した光によって形成される第２の配光パターンは、カットオフラインに沿って左右方向に延びる配光パターンとして第１の配光パターンに対して部分的に重複して形成されるので、全体の配光パターンとしては、カットオフラインに沿って左右方向に延びる横長領域の明るさを十分に確保することができる。

【0018】

その際、上向き反射面は、その後部領域が前部領域に対して後方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されているので、後部領域からの上向き反射光によって形成される配光パターンを、前部領域からの上向き反射光によって形成される配光パターンに対して下方に変位した状態で形成することができる。そしてこれにより、第２の配光パターンの明るさが、その下端縁において急激に変化してしまわないようにすることができる。

【0019】

したがって、全体の配光パターンとして、カットオフラインに沿って左右方向に延びる横長領域の下端縁において明るさが急激に変化してしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより車両前方路面に配光ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。

【0020】

このように本願発明によれば、ミラー部材を備えたプロジェクタ型の車両用灯具において、車両前方路面に配光ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。

【0021】

上記構成において、前部領域として、平面状に形成された一般部と、この一般部の前端位置の上記後側焦点よりも自車線側の部分において上方側に突出する立壁部とを備えた構成とすれば、左右段違いのカットオフラインを有する配光パターンを形成するようにした場合においても、第２の配光パターンを滑らかな光度分布で形成することができる。

【0022】

上記構成において、後部領域として、投影レンズの後側焦点を通るようにして前後方向に延びる鉛直面に関して左側に位置する左側部分と右側に位置する右側部分とを備えた構成とした上で、これら左側部分と右側部分とで左右方向の傾斜角度が互いに異なる値に設定された構成とすれば、後部領域からの上向き反射光によって形成される配光パターンを、前部領域からの上向き反射光によって形成される配光パターンに対して下方に均等に変位させることができる。

【0023】

上記構成において、後部領域の一部に光拡散反射処理が施された構成とすれば、この光拡散反射処理が施された拡散反射領域において拡散反射した光によって、第２の配光パターンの下端縁における明るさの変化を一層緩やかなものとすることができる。

【0024】

上記構成において、前部領域が後方へ向けて水平に延びるように形成された構成とすれば、第２の配光パターンの明るさを十分に確保することができる。

【図面の簡単な説明】

【0025】

【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す側断面図

【図2】上記車両用灯具を示す平面図

【図3】上記車両用灯具の主要構成要素を示す斜視図

【図4】図１の要部詳細図

【図5】（ａ）は、上記車両用灯具から前方へ照射される光により、車両前方２５ｍの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図、（ｂ）は、従来の車両用灯具から前方へ照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図

【図6】（ａ）は、上記実施形態の第１変形例を示す、図４と同様の図、（ｂ）は、上記実施形態の第２変形例を示す、図４と同様の図

【発明を実施するための形態】

【0026】

以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。

【0027】

図１は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具１０を示す側断面図であり、図２は、その平面図である。また、図３は、この車両用灯具１０の主要構成要素を示す斜視図である。

【0028】

これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具１０は、投影レンズ１２と、この投影レンズ１２の後側焦点Ｆよりも後方側に配置された発光素子１４と、この発光素子１４を上方側から覆うように配置され、該発光素子１４からの光を投影レンズ１２へ向けて反射させるリフレクタ１６と、このリフレクタ１６からの反射光の一部を上向きに反射させるための上向き反射面２０ａを有するミラー部材２０とを備えた構成となっている。

【0029】

その際、発光素子１４およびリフレクタ１６はミラー部材２０に支持されており、投影レンズ１２は、レンズホルダ１８を介してミラー部材２０に支持されている。

【0030】

この車両用灯具１０は、ヘッドランプの一部として組み込まれた状態で用いられる灯具ユニットであって、ヘッドランプに組み込まれた状態では、その投影レンズ１２の光軸Ａｘが車両前後方向に対して０．５〜０．６°程度下向きの方向に延びた状態で配置されるようになっている。

【0031】

発光素子１４は、白色発光ダイオードの発光チップであって、横長矩形状の発光面を有している。そして、この発光素子１４は、その発光面を光軸Ａｘのやや下方において上向きにした状態で配置されている。

【0032】

リフレクタ１６の反射面１６ａは、光軸Ａｘと同軸の長軸を有するとともに発光素子１４の発光中心を第１焦点とする略楕円面状の曲面で構成されている。その際、この反射面１６ａは、その光軸Ａｘに沿った鉛直断面形状が後側焦点Ｆのやや前方に位置する点を第２焦点とする楕円形状に設定されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そしてこれにより、リフレクタ１６は、発光素子１４からの光を、鉛直断面内においては後側焦点Ｆのやや前方に位置する点に収束させるとともに、水平断面内においてはその収束位置をかなり前方へ移動させるようになっている。

【0033】

ミラー部材２０の上向き反射面２０ａは、該ミラー部材２０の上面にアルミニウム蒸着等による鏡面処理を施すことにより形成されている。この上向き反射面２０ａは、その前端縁２２が後側焦点Ｆを通るようにして配置されている。その際、この前端縁２２は、平面視において後側焦点Ｆから左右両側へ向けて、投影レンズ１２のメリジオナル像面に沿って前方側へ湾曲するようにして延びている。また、上向き反射面２０ａは、その前端縁２２から後方側に一定距離離れた位置までの範囲内の領域に形成されている。

【0034】

そして、このミラー部材２０は、その上向き反射面２０ａにおいて、図１に示すように、リフレクタ１６の反射面１６ａから投影レンズ１２へ向かう反射光の一部を上向きに反射させて投影レンズ１２に入射させ、これを下向き光として投影レンズ１２から出射させるようになっている。そして、この投影レンズ１２からの出射光により、左配光のロービーム用配光パターン（これについては後述する）を形成するようになっている。

【0035】

上向き反射面２０ａは、その前端縁２２に沿って略一定幅で帯状に延びる前部領域２０ａＡと、この前部領域２０ａＡの後方側に位置する後部領域２０ａＢとで構成されている。その際、前部領域２０ａＡは、後方へ向けて水平に延びるように形成されており、後部領域２０ａＢは、前部領域２０ａＡの後端縁から後方へ向けて斜め下向きに一定の傾斜角で延びるように形成されている。

【0036】

前部領域２０ａＡは、平面状に形成された一般部２０ａＡ１と、この一般部２０ａＡ１の前端位置の後側焦点Ｆよりも左側（灯具正面視では右側）の部分において上方側に突出する立壁部２０ａＡ２とで構成されている。

【0037】

一般部２０ａＡ１は、光軸Ａｘのやや下方において水平面に沿って延びるように形成されている。

【0038】

立壁部２０ａＡ２は、平面視において前端縁２２に沿って細幅で延びるように形成されている。その際、この立壁部２０ａＡ２は、光軸Ａｘ上の位置から左側へ向けて一定の高さで延びており、また、光軸Ａｘ上の位置から右側へ向けて一般部２０ａＡ１の高さ位置まで斜め下方に延びている。

【0039】

後部領域２０ａＢは、光軸Ａｘを含む鉛直面に関して左側に位置する左側部分２０ａＢＬと右側に位置する右側部分２０ａＢＲとで構成されている。これら左側部分２０ａＢＬと右側部分２０ａＢＲとでは、左右方向の傾斜角度が互いに異なる値に設定されている。具体的には、左側部分２０ａＢＬは、後方へ向けて左側に多少傾斜して延びるように形成されており、右側部分２０ａＢは、後方へ向けて右側に多少傾斜して延びるように形成されている。その結果、後部領域２０ａＢには、左側部分２０ａＢＬと右側部分２０ａＢＲとの境界線として、光軸Ａｘの真下に前後方向に延びる稜線Ｒが形成されている。

【0040】

後部領域２０ａＢには、その一部にフロスト処理等による光拡散反射処理が施された拡散反射領域２０ａＢｄが形成されている。この拡散反射領域２０ａＢｄは、後部領域２０ａＢと前部領域２０ａＡとの境界線から僅かに後方に離れた位置において、その境界線に沿って帯状に延びるように形成されている。

【0041】

図１に示すように、後方へ向けて斜め下向きに延びる後部領域２０ａＢに到達したリフレクタ１６からの反射光は、この後部領域２０ａＢが水平面に沿って延びるように形成されているとした場合に比して、この後部領域２０ａＢにおいてより大きな上向き角度で反射し、投影レンズ１２の後側焦点面（すなわち後側焦点Ｆを含む焦点面）を後側焦点Ｆから上方にある程度離れた位置において通過して、投影レンズ１２に入射することとなる。

【0042】

図４は、図１の要部詳細図である。

【0043】

同図に示すように、後部領域２０ａＢに到達したリフレクタ１６からの反射光の大半は、この後部領域２０ａＢにおいて正反射するが、拡散反射領域２０ａＢｄに到達したリフレクタ１６からの反射光は、この拡散反射領域２０ａＢｄにおいて拡散反射し、そのうちの何割かが投影レンズ１２に入射することとなる。

【0044】

図５（ａ）は、車両用灯具１０から前方へ照射される光により、車両前方２５ｍの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンＰＬを透視的に示す図である。

【0045】

このロービーム用配光パターンＰＬは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインＣＬ１、ＣＬ２を有している。このカットオフラインＣＬ１、ＣＬ２は、灯具正面方向の消点であるＨ−Ｖを鉛直方向に通るＶ−Ｖ線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、Ｖ−Ｖ線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインＣＬ１として形成されるとともに、Ｖ−Ｖ線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインＣＬ１から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインＣＬ２として形成されている。

【0046】

このロービーム用配光パターンＰＬは、リフレクタ１６で反射した発光素子１４からの光によって投影レンズ１２の後側焦点面上に形成された発光素子１４の像を、投影レンズ１２により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、そのカットオフラインＣＬ１、ＣＬ２は、ミラー部材２０の上向き反射面２０ａの前端縁２２の反転投影像として形成されるようになっている。その際、下段カットオフラインＣＬ１は、上向き反射面２０ａの前端縁２２のうち、前部領域２０ａＡの立壁部２０ａＢの部分の反転投影像として形成され、また、上段カットオフラインＣＬ２は、その前部領域２０ａＡの立壁部２０ａＢの右端部および一般部２０ａＡ１の部分の反転投影像として形成されるようになっている。

【0047】

このロービーム用配光パターンＰＬにおいて、下段カットオフラインＣＬ１とＶ−Ｖ線との交点であるエルボ点Ｅは、Ｈ−Ｖの０．５〜０．６°程度下方に位置している。これは光軸Ａｘが車両前後方向に対して０．５〜０．６°程度下向きの方向に延びていることによるものである。

【0048】

このロービーム用配光パターンＰＬは、ミラー部材２０の上向き反射面２０ａの前端縁２２の上方空間を通過して直接投影レンズ１２に到達した光により形成される第１の配光パターンＰ１と、その上向き反射面２０ａで上向きに反射した光によって形成される第２の配光パターンＰ２との合成配光パターンとして形成されている。

【0049】

その際、第２の配光パターンＰ２は、カットオフラインに沿って左右方向に延びる配光パターンとして、第１の配光パターンＰ１に対して部分的に重複して形成されており、これによりロービーム用配光パターンＰＬとして、カットオフラインＣＬ１、ＣＬ２に沿って左右方向に延びる横長領域の明るさを十分に確保するようになっている。

【0050】

第２の配光パターンＰ２は、２つの配光パターンＰ２Ａ、Ｐ２Ｂの合成配光パターンとして形成されている。

【0051】

配光パターンＰ２Ａは、前部領域２０ａＡからの上向き反射光によって形成される配光パターンであり、配光パターンＰ２Ｂは、後部領域２０ａＢからの上向き反射光によって形成される配光パターンである。

【0052】

これら２つの配光パターンＰ２Ａ、Ｐ２Ｂは、いずれも横長に延びる配光パターンであるが、配光パターンＰ２Ｂは配光パターンＰ２Ａに対して下方に変位した状態で形成されている。これは、前部領域２０ａＡが水平面に沿って延びるように形成されているのに対して後部領域２０ａＢが後方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されていることによるものである。

【0053】

その際、配光パターンＰ２Ｂは、配光パターンＰ２Ａに対する下方変位量が全体にわたって略均等になっている。これは、図２に示すように、リフレクタ１６からの反射光が光軸Ａｘ寄りの方向に向かうのに対応して、後部領域２０ａＢの左側部分２０ａＢＬが後方へ向けて左側に多少傾斜するとともに、その右側部分２０ａＢｇが後方へ向けて右側に多少傾斜していることによるものである。

【0054】

図５（ｂ）は、従来の車両用灯具から前方へ照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンＰＬ´を透視的に示す図である。

【0055】

このロービーム用配光パターンＰＬ´は、後部領域２０ａＢが、水平面に沿って延びる前部領域２０ａＡをそのまま延長した水平面で構成されている、とした場合に形成される配光パターンである。

【0056】

このロービーム用配光パターンＰＬ´も、第１の配光パターンＰ１´については、ロービーム用配光パターンＰＬにおける第１の配光パターンＰ１と同様であるが、第２の配光パターンＰ２´は、その下端縁の明暗差が大きい配光パターンとして形成されている。

【0057】

これに対し、図５（ａ）に示すように、ロービーム用配光パターンＰＬにおける第２の配光パターンＰ２は、配光パターンＰ２Ｂが配光パターンＰ２Ａに対して下方に変位した状態で形成されているので、その下端縁の明暗差が小さい配光パターンとして形成されている。

【0058】

次に本実施形態の作用効果について説明する。

【0059】

本実施形態に係る車両用灯具１０は、ミラー部材２０を備えたプロジェクタ型の灯具として構成されているが、ミラー部材２０は、その上向き反射面２０ａとして、該上向き反射面２０ａの前端縁２２に沿って帯状に延びる前部領域２０ａＡと、この前部領域２０ａＡの後方側に位置する後部領域２０ａＢとを備えており、その後部領域２０ａＢは前部領域２０ａＡに対して後方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されているので、次のような作用効果を得ることができる。

【0060】

すなわち、上述したように、ミラー部材２０の上向き反射面２０ａの前端縁２２の上方空間を通過した光により形成される第１の配光パターンＰ１に対して、その上向き反射面２０ａで上向きに反射した光によって形成される第２の配光パターンＰ２は、カットオフラインＣＬ１、ＣＬ２に沿って左右方向に延びる配光パターンとして第１の配光パターンＰ１に対して部分的に重複して形成されるので、ロービーム用配光パターンＰＬとして、カットオフラインＣＬ１、ＣＬ２に沿って左右方向に延びる横長領域の明るさを十分に確保することができる。

【0061】

その際、上向き反射面２０ａは、その後部領域２０ａＢが前部領域２０ａＡに対して後方へ向けて斜め下向きに延びるように形成されているので、後部領域２０ａＢからの上向き反射光によって形成される配光パターンＰ２Ｂを、前部領域２０ａＡからの上向き反射光によって形成される配光パターンＰ２Ａに対して下方に変位した状態で形成することができる。そしてこれにより、第２の配光パターンＰ２の明るさが、その下端縁において急激に変化してしまわないようにすることができる。

【0062】

したがって、ロービーム用配光パターンＰＬとして、カットオフラインＣＬ１、ＣＬ２に沿って左右方向に延びる横長領域の下端縁において明るさが急激に変化してしまうのを未然に防止することができる。そしてこれにより車両前方路面に配光ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。

【0063】

このように本実施形態によれば、ミラー部材２０を備えたプロジェクタ型の車両用灯具１０において、車両前方路面に配光ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。

【0064】

その際、本実施形態においては、前部領域２０ａＡが、平面状に形成された一般部２０ａＡ１と、この一般部２０ａＡ１の前端位置の後側焦点Ｆよりも自車線側の部分において上方側に突出する立壁部２０ａＡ２とで構成されているので、左右段違いのカットオフラインＣＬ１、ＣＬ２を有するロービーム用配光パターンＰＬを形成するようになっているにもかかわらず、第２の配光パターンＰ２を滑らかな光度分布で形成することができる。

【0065】

また本実施形態においては、後部領域２０ａＢが、光軸Ａｘを含む鉛直面（すなわち後側焦点Ｆを通るようにして前後方向に延びる鉛直面）に関して左側に位置する左側部分２０ａＢＬと右側に位置する右側部分２０ａＢＲとで構成されており、これら左側部分２０ａＢＬと右側部分２０ａＢＲとで左右方向の傾斜角度が互いに異なる値に設定されているので、配光パターンＰ２Ｂを、左右全領域にわたり配光パターンＰ２Ａに対して下方に均等に照射させることができる。

【0066】

さらに本実施形態においては、後部領域２０ａＢの一部が拡散反射領域２０ａＢｄとして構成されているので、この拡散反射領域２０ａＢｄにおいて拡散反射した光によって、第２の配光パターンＰ２の下端縁における明るさの変化を一層緩やかなものとすることができる。

【0067】

また本実施形態においては、前部領域２０ａＡが後方へ向けて水平に延びるように形成されているので、第２の配光パターンＰ２の明るさを十分に確保することができる。

【0068】

上記実施形態においては、上向き反射面２０ａの前端縁２２が、後側焦点Ｆを通るようにして配置されているものとして説明したが、後側焦点Ｆの近傍（例えば後側焦点Ｆの上方近傍や下方近傍）を通るようにして配置された構成とすることも可能である。

【0069】

上記実施形態においては、車両用灯具１０が、左配光のロービーム用配光パターンＰＬを形成するように構成されているが、右配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されている場合、あるいは上端部に水平カットオフラインのみを有する配光パターンを形成するように構成されている場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより同様の作用効果を得ることができる。

【0070】

次に、上記実施形態の変形例について説明する。

【0071】

まず、上記実施形態の第１変形例について説明する。

【0072】

図６（ａ）は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、図４と同様の図である。

【0073】

同図（ａ）に示すように、本変形例に係る車両用灯具は、その基本的な構成については上記実施形態の場合と同様であるが、ミラー部材１２０の上向き反射面１２０ａの構成が上記実施形態の場合と異なっている。

【0074】

すなわち、本変形例のミラー部材１２０における上向き反射面１２０ａも、その前端縁１２２に沿って略一定幅で帯状に延びる前部領域１２０ａＡと、この前部領域１２０ａＡの後方側に位置する後部領域１２０ａＢとで構成されている。その際、前部領域１２０ａＡは、後方へ向けて水平に延びているが、後部領域１２０ａＢは、前部領域１２０ａＡの後端縁から後方へ向けて斜め下向きに徐々に傾斜角が大きくなるように形成されており、前部領域１２０ａＡと滑らかに繋がっている。

【0075】

本変形例の構成を採用した場合には、図５（ａ）に示す第２の配光パターンＰ２において、２つの配光パターンＰ２Ａ、Ｐ２Ｂが互いに重複しないように連続的に形成されるようにした上で、第２の配光パターンＰ２の明るさがその下端縁において急激に変化してしまわないようにすることができる。

【0076】

次に、上記実施形態の第２変形例について説明する。

【0077】

図６（ｂ）は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、図４と同様の図である。

【0078】

同図（ｂ）に示すように、本変形例に係る車両用灯具は、その基本的な構成については上記実施形態の場合と同様であるが、ミラー部材２２０の上向き反射面２２０ａの構成が上記実施形態の場合と異なっている。

【0079】

すなわち、本変形例のミラー部材２２０における上向き反射面２２０ａも、その前端縁２２２に沿って略一定幅で帯状に延びる前部領域２２０ａＡと、この前部領域２２０ａＡの後方側に位置する後部領域２２０ａＢとで構成されている。その際、前部領域２２０ａＡは、後方へ向けて斜め下向きに一定の傾斜角で延びており、後部領域２２０ａＢは、前部領域２２０ａＡの後端縁から後方へ向けて斜め下向きに、前部領域２２０ａＡの傾斜角よりも大きい一定の傾斜角で延びている。

【0080】

本変形例の構成を採用した場合には、図５（ａ）に示すロービーム用配光パターンＰＬにおいて、第２の配光パターンＰ２の位置が全体的にやや下方に変位するが、第２の配光パターンＰ２の明るさがその下端縁において急激に変化してしまわないようにすることができる。

【0081】

なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。

【0082】

また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。

【符号の説明】

【0083】

１０ 車両用灯具
１２ 投影レンズ
１４ 発光素子
１６ リフレクタ
１６ａ 反射面
１８ レンズホルダ
２０、１２０、２２０ ミラー部材
２０ａ、１２０ａ、２２０ａ 上向き反射面
２０ａＡ、１２０ａＡ、２２０ａＡ 前部領域
２０ａＡ１ 一般部
２０ａＡ２ 立壁部
２０ａＢ、１２０ａＢ、２２０ａＢ 後部領域
２０ａＢｄ 拡散反射領域
２０ａＢＬ 左側部分
２０ａＢＲ 右側部分
２２、１２２、２２２ 前端縁
Ａｘ 光軸
ＣＬ１ 下段カットオフライン
ＣＬ２ 上段カットオフライン
Ｅ エルボ点
Ｆ 後側焦点
ＰＬ ロービーム用配光パターン
Ｐ１ 第１の配光パターン
Ｐ２ 第２の配光パターン
Ｐ２Ａ、Ｐ２Ｂ 配光パターン
Ｒ 稜線

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】