(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
10mm以上150mm以下の有効長を有する複数本の中空糸膜を含み、前記中空糸膜の内側に血液が流れ、前記中空糸膜の外側に透析液および濾液のうちの少なくとも一方を含む液が流れる中空糸膜束と、
前記中空糸膜束を収容する本体ケースと、を備えた血液浄化器であって、
前記中空糸膜を透過する透過液の体積を前記中空糸膜の膜面積および時間で除算することによって得られる透過流束Jvのうち、前記中空糸膜束の中での最大値をJvmaxとし、
前記中空糸膜内に供給され前記中空糸膜内で流れる血液の線速度をuBとし、
前記中空糸膜の内側を流れる血液と前記中空糸膜の外側を流れる前記液との間の圧力差をTMPとし、
前記血液浄化器において血液濾過を開始し、濾過開始の時点から60分の間、一定の濾過流量に設定した状態で血液を循環させて血液濾過を行ない、濾過開始の時点から60分後、濾過流量を一定量大きくしてその状態で血液を60分の間循環させ、その後、最初の濾過流量に戻してその状態で血液を20分の間循環させ、その後、濾過流量を直前値よりも一定量大きくしてその状態で血液を60分の間循環させる、という動作を繰り返し、濾過流量を前記直前値よりも前記一定量大きくする量については血液流量と濾過流量との比が濾過流量を大きくする毎に0.025ずつ大きくなるように設定した場合において、濾過開始の時点から60分が経過した時点のTMPの値(P0)と、20分の循環を行なった時点のTMPの値(P1〜P8)とを測定し、濾過開始から60分が経過した時点のTMPの値(P0)を基準とし、濾過流量を変化させてから60分後に濾過流量を初期値に戻し、その後20分が経過した時点で得られる各TMP(P1〜P8)の前記基準としてのTMP(P0)に対する比をTMP変化率として算出し、
前記中空糸膜の濾過係数をLp[μm/(s・mmHg)]とし、流量変化後60分経過時点のAF差圧をΔPAF[mmHg]とし、膠質浸透圧をΔπ[mmHg]とすると、最大濾過流束Jvmax[μm/s]は、Jvmax={Lp×(ΔPAF−Δπ)}の式で表される値であり、
前記血液浄化器内に流入する血液の単位時間あたりの血液流量をQB[μm3/s]とし、前記中空糸膜の断面積の和をA[μm2]とすると、線速度uB[μm/s]は、uB=QB/Aの式で表される値であり、
前記中空糸膜の単位膜面積あたりの前記中空糸膜内への血液充填量が20mL/m2以上35mL/m2以下となり、且つJvmax/uBの値が0.00015以上0.0006以下となる状況下において、TMP変化率の値が95%以上105%以下となる条件を満足している、
血液浄化器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数および量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数およびその量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品および相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0013】
図1は、実施の形態における血液浄化システム100を模式的に示す図である。血液浄化システム100は、血液浄化対象(図示せず)内の血液を浄化させるものである。血液浄化システム100は、血液透析や血液透析濾過など作用によって血液浄化を行うことが可能であり、たとえば、腎機能が損なわれた患者(腎不全などにより血液中の老廃物除去機能等が損なわれた患者)の治療に用いられることができる。
【0014】
血液浄化システム100は、血液浄化器10、血液流路11,12、透析液流路13,14、ローラーポンプ15,16、およびモニター用ポンプ17,18,19を備えている。血液浄化器10は、円筒形状を有する本体ケース10Cと、本体ケース10Cの中に収容された中空糸膜束10Hとを含んでいる。中空糸膜束10Hは、複数本の中空糸膜が束ねられることにより構成されるものである。本体ケース10Cには、血液流入口、血液流出口、透析液流入口および透析液流出口の4つのポートが設けられている。
【0015】
血液流入口および血液流出口の各ポートには、複数本の中空糸膜の内側に連通する血液流路11,12がそれぞれ接続されている。透析液流入口および透析液流出口の各ポートには、複数本の中空糸膜の外側に連通する透析液流路13,14がそれぞれ接続されている。血液は、本体ケース10Cに接続された血液流路11を通して、中空糸膜の内側へと流れる。血液は、中空糸膜の内側から血液流路12へと流れる。透析液は、本体ケース10Cに接続された透析液流路13を通して、中空糸膜の外側へと流れる。透析液は、中空糸膜の外側から透析液流路14へと流れる。あるいは、流路13を閉じて、濾液を流路14より排出してもよい。
【0016】
半透膜としての中空糸膜を介して、血液中の物質(血液中に蓄積した尿素、クレアチニン、尿酸、低分子量タンパク質および水等)は、透過液として、透析液中に拡散の作用によって移動する。血液浄化器10に用いられる中空糸膜は、物質透過性および透水性に優れているため、除水によって強制的な濾過を行わない場合においても、中空糸膜を介して血液と透析液との間で濾過(内部濾過)および逆濾過(内部逆濾過)を行うことができる。血液浄化器10は、血液透析を行うのと同時に、透析液側に陰圧をかけて、血液中の物質(たとえば、尿素、クレアチニンおよび水分等)を透析液側に濾過により移動させ
るものであってもよいし、さらに補液を行う(血液濾過および血液透析濾過)ものであってもよい。
【0017】
血液浄化器10内では、血液と透析液とは互いに対向する方向に流通させられる。中空糸膜を介して、血液および透析液のうち、圧力の高い方から低い方へと液体(透過液)が移動する。内部濾過は、血液浄化器10内の血液流入側で起こりやすく、内部逆濾過は、血液浄化器10内の血液流出側で起こりやすい。
【0018】
血液浄化器10内に流入する血液の単位時間あたりの流量Q
Bは、血液流路11に設けられたローラーポンプ15によって変更可能とされている。血液浄化器10内に流入する血液の圧力(P17)は、血液流路11に設けられたモニター用ポンプ17によってモニタリングされる。血液浄化器10から流出する血液の圧力(P18)は、血液流路12に設けられたモニター用ポンプ18によってモニタリングされる。
【0019】
血液浄化器10内に流入する透析液の単位時間あたりの流量は、透析液流路14に設けられたローラーポンプ16によって変更可能とされている。透析液流路14を通して、濾過流量Q
F(徐水流量)の濾過が行われる。透析液側の圧力(P19)は、透析液流路14に設けられたモニター用ポンプ19によってモニタリングされる。複数本の中空糸膜の内側を流れる血液と複数本の中空糸膜の外側を流れる透析液との間の圧力差(膜間圧力差)をTMP(transmembrane pressure)とすると、TMP=(P17+P18)/2−P19の式が成立している。
【0020】
本体ケース10C内に収容された複数本の中空糸膜は、10mm以上150mm以下の有効長を有しており、当該寸法範囲によって小型化などを図ることが可能となっている。ここでいう有効長とは、複数本の中空糸膜のうち、その長手方向において血液側と透析側との物質交換が行われるのに実際に使用される部位の長さのことである。
【0021】
複数本の中空糸膜は、その長手方向の両端が封止樹脂を介して本体ケース10Cの内壁に固定されている。複数本の中空糸膜の有効長とは、たとえば、複数本の中空糸膜のうちの本体ケース10C(封止樹脂)に固定された両端部分を除いた部位の平均長さを示す。血液浄化システム100を携帯型の血液浄化に使用することを想定した場合、血液回路を短くするとポンプ性能や血液充填量の観点から有利である。
【0022】
血液浄化器10は、ベルトなどを用いて身体に近い位置で固定するのが理想的である。長尺な血液浄化器10は、患者の動作を制限してしまうため好ましくなく、できるだけ短尺の血液浄化器10を患者の胴部に横向き(水平)に巻き付けるのが望ましい。
【0023】
成人の胴部の幅は200mm程度であり、小児の胴部の幅は150mm程度である。本体ケース10Cのポートの形状を考慮すると、複数本の中空糸膜の有効長が10mm以上150mm以下であれば、患者の動作をほとんど制限することなく、血液浄化器10を患者の身体に密着固定させることが可能となる。さらなる小型化などの観点から、複数本の中空糸膜の有効長は、好ましくは10mm以上100mm以下であり、より好ましくは10mm以上40mm以下である。
【0024】
[実験例]
血液が中空糸膜に接触すると、中空糸膜の表面が変性したり、中空糸膜の表面に血中成分や蛋白質が堆積しゲル層が形成されたり、吸着によって膜孔の狭窄または閉塞が起きたり(ファウリング)、血液の凝固によって中空糸膜の内腔自体にも血栓が形成されたりする。上述の血液浄化システム100(
図1参照)を用いて長時間にわたって血液濾過(C:Continuous)HFを施行した場合に、血液浄化器10の中空糸膜にファウリング(fouling)や凝固などが発生しにくく血液浄化器10の性能が適切に発揮されるような、血液流量、濾過流量、ならびに血液流量と濾過流量との比などの各種の設定条件ついて検討した。本実験例においては、上述の実施の形態に基づく実施例の構成を有する血液浄化器10と、それとは異なる比較例の構成を有する血液浄化器とを準備した。
【0025】
(実施例)
実施例に基づく本体ケース10Cを構成している部材の材質は、PC(ポリカーボネート)とした。本体ケース10Cの胴部の内径は、40.0mmとした。本体ケース10Cの全長は、52.6mmとした。本実施例においては、中空糸膜の有効長(平均値)は、37.6mmとした。中空糸膜を構成している部材の材質は、CTA(セルローストリアセテート)とした。
【0026】
中空糸膜の内径(平均値)は、100μmとした。中空糸の膜厚(平均値)は、15μmとした。中空糸の膜面積(平均値)は、0.55m
2とした。ここで言う膜面積とは、中空糸膜のうち、その長手方向において血液側と透析側との物質交換が行われるのに実際に使用される部位の面積であって、中空糸の内側の表面を基準として計算される値である。ここで言う中空糸膜の膜面積とは、複数本の中空糸膜のうちの本体ケース10C(封止樹脂)に固定された両端部分を除いた部位の平均の膜面積である。
【0027】
中空糸膜が束ねられている本数は、46228本とした。中空糸膜の有効長(L)と本体ケース10Cの胴部の平均内径(D)との比(L/D)は、0.94(平均値)とした。中空糸膜の内腔の断面積(平均値)は、363mm
2とした。本体ケース10Cの容積に占める中空糸膜(中空糸膜束)の割合(充填率)は、49%とした。一般的な血液浄化器は、いわゆる細長の形状を有している。本実施例で用いた血液浄化器10は、短くて太い形状を有している。
【0028】
中空糸膜の単位膜面積あたりの中空糸膜内の血液充填量(平均値)は、20mL/m
2以上35mL/m
2以下とされる。中空糸膜の単位膜面積あたりの中空糸膜内の血液充填量(平均値)は、好ましくは20mL/m
2以上30mL/m
2以下であるとよい。膜面積が同じである場合、血液充填量は少ない方が、濾過効率が良くなり、性能低下の程度も小さくなるため、血液充填量は小さい方がよい。同じ血液充填量に換算した場合、対応する膜面積は大きい方が濾過効率が良く、性能低下の程度も小さいといえる。すなわち、中空糸膜内への血液充填量が小さい方が(換言すると、中空糸膜の内径が小さい方が)、血液濾過には有利であると言える。本実施例においては、中空糸膜の単位膜面積あたりの中空糸膜内の血液充填量(平均値)は、25mL/m
2とした。
【0029】
血液浄化器10へのプライミングボリューム(血液充填量)は、5mL以上100mL以下とされる。血液浄化器10内の中空糸膜束へのプライミングボリューム(血液充填量)は、好ましくは5mL以上80mL以下であり、さらに好ましくは5mL以上50mL以下である。一般的に、体内の循環血液量は体重の7〜8%と言われている。患者の体重を20kgとした場合、体内の循環血液量は20000×
0.075=1500[g]である。
【0030】
血液浄化療法における体外の循環血液量は、体内の循環血液量の10%以下に設定する必要があるとされている。体外循環が可能な血液量は、上記の場合、最大で1500×0.10=150[g]となる。血液の比重を考慮すると、体外循環が可能な血液量は、150×0.95=142.5[mL]となる。
【0031】
血液浄化器10を携帯型の血液浄化に使用することを想定した場合、血液回路に最小クラスの血液充填量を持つものを採用したとして、体外循環の血液量としては、たとえば約40mLが必要となる。この場合、血液浄化器の血液充填量は、142.5−40=102.5[mL]以下でなければならない。さらに、血液浄化器10を携帯型の血液浄化に使用することを想定した場合、血液製剤などの使用も想定しにくいことを考えると、102.5×0.50=51.25[mL]以下とするのが望ましいと言える。本実施例においては、血液浄化器10へのプライミングボリューム(血液充填量)は、34.7mLとした。
【0032】
中空糸膜の血液入口側と血液出口側との圧力損失(平均値)は、0mmHg以上60mmHg以下であるとよい。圧力損失が少ない構造を有している方が血液への負荷が小さくなる。すなわち、同じ膜面積であれば、細長のものより短太のモジュールの方が血液濾過には有利であると言える。本実施例においては、中空糸膜の血液入口側と血液出口側との圧力損失(平均値)は、実施例1では56mmHgとし、実施例2では27mmHgとし、実施例3では19mmHgとした。実験対象としては、ブタの血液1Lを準備した。この血液は、HCTが30%に調整され、TPが6.5g/dLに調整されたものである。
【0033】
(比較例)
比較例に基づく本体ケースを構成している部材の材質は、PC(ポリカーボネート)とした。本体ケースの胴部の内径は、23.7mmとした。本体ケースの全長は、183mmとした。本比較例においては、中空糸膜の有効長(平均値)は、165mmとした。中空糸膜を構成している部材の材質は、CTA(セルローストリアセテート)とした。
【0034】
中空糸膜の内径(平均値)は、200μmとした。中空糸の膜厚(平均値)は、15μmとした。中空糸の膜面積(平均値)は、0.52m
2とした。ここで言う膜面積とは、中空糸膜のうち、その長手方向において血液側との物質交換が行われるのに実際に使用される部位の面積であって、中空糸の内側の表面を基準として計算される値である。ここで言う中空糸膜の膜面積とは、複数本の中空糸膜のうちの本体ケース(封止樹脂)に固定された両端部分を除いた部位の平均の膜面積である。
【0035】
中空糸膜が束ねられている本数は、4992本とした。中空糸膜の有効長(L)と本体ケースの胴部の平均内径(D)との比(L/D)は、6.96(平均値)とした。中空糸膜の内腔の断面積(平均値)は、157mm
2とした。本体ケースの容積に占める中空糸膜(中空糸膜束)の割合(充填率)は、47%とした。本比較例の血液浄化器は、いわゆる細長の形状を有している。
【0036】
本比較例においては、中空糸膜の血液入口側と血液出口側との圧力損失(平均値)は、比較例1では105mmHgとし、比較例2では50mmHgとし、比較例3では32mmHgとした。実験対象としては、ブタの血液1Lを準備した。この血液は、HCTが30%に調整され、TPが6.5g/dLに調整されたものである。
【0037】
図2を参照して、血液浄化システム100において、血液濾過を開始し、濾過開始の時点から60分の間、一定の濾過流量に設定した状態で血液を循環させ、血液濾過を行なった。濾過開始の時点から60分後、濾過流量を一定量大きくし、その状態で血液を60分の間循環させた。その後、最初の濾液流量に戻し、その状態で血液を20分の間循環させた。その後、濾過流量を直前値よりも一定量大きくし、その状態で血液を60分の間循環させた。濾過流量を大きくする量については、血液流量と濾過流量との比が、濾過流量を大きくする毎に、0.025、0.05、0.075、0.1の順で大きくなるように設定した。
【0038】
濾過開始の時点から60分が経過した後、上記のように低い濾過流量で20分の循環を行うことと、一定量大きくした濾過流量で60分の循環を行うこととを繰り返す上記の方式にて、血液流量を50mL/minに設定したときのTMPの値(平均値)と、血液流量を100mL/minに設定したときのTMPの値(平均値)と、血液流量を200mL/minに設定したときのTMPの値(平均値)とをそれぞれ測定した。
【0039】
図3を参照して、TMPの値は、濾過開始の時点から60分が経過した時点のTMPの値(P0)と、上記のように低い濾過流量で20分の循環を行なった時点のTMPの値(P1〜P8)とを測定するものとした。
図3は、血液流量を200mL/minに設定したときのTMPの値の推移(点P0〜P8)を示すグラフである。濾過開始から60分が経過した時点のTMPの値(P0)を基準とし、濾過流量を変化させてから60分後に濾過流量を初期値に戻し、その後20分が経過した時点の各TMP(P1〜P8)を、TMP上昇率とし算出した。当該算出は、血液流量を50mL/minに設定したときと、血液流量を100mL/minに設定したときと、血液流量を200mL/minに設定したときとのそれぞれについて算出した。
【0040】
図4を参照して、中空糸膜20を透過する透過液の体積を中空糸膜の膜面積および時間で除算することによって、透過流束Jvが得られる。透過流束Jvは、濾過流量Qf[μm
3/s]および膜面積S[μm
2]を用いて、Jv=Qf/Sの式で表すこともできる。透過流束Jvは、中空糸膜20の長手方向における任意の箇所において異なる値を示す。透過流束Jvのうち、中空糸膜束の中での最大値をJvmaxとする。
【0041】
一般的に、透過流束Jvは、中空糸膜20の長手方向において、血液の入口21の側が高い値を示し、血液の出口22の側が低い値を示す。最大濾過流束Jvmaxは、たとえば、中空糸膜20の長手方向において最も上流側の部分から得られる透過流束Jvの値に等しい値となる。血液の入口21の側は、血液が下流側(出口22の側)に比べて多く濾過される部位であり、血液の入口21の側に負荷が大きく作用する。最大濾過流束Jvmaxに着目することは、中空糸膜の耐用期間などの算出に有効である。
【0042】
中空糸膜の濾過係数をLp[μm/(s・mmHg)]とし、流量変化後60分経過時点のAF差圧をΔPAF[mmHg]とし、膠質浸透圧をΔπ[mmHg]とすると、最大濾過流束Jvmax[μm/s]は、その圧力における理論上の最大透過流束として、Jvmax={Lp×(ΔPAF−Δπ)}の式によって得ることもできる。本実験例では、濾過係数Lp[μm/(s・mmHg)]の値は血漿と水の
粘度分を補正をして、実施例では0.0381とし、比較例では0.0637とし、膠質浸透圧Δπ[mmHg]の値は22.88とした。
【0043】
透過流束Jvの平均値は、平均濾過流束Jvavgによって示される。濾過流量をQ
F[μm
3/s]とし、中空糸膜の膜面積をS[μm
2]とすると、平均濾過流束Jvavg[μm/s]は、Jvavg={Q
F/S}の式によって得ることもできる。本実験例では、濾過流量Q
F[μm
3/s]の値は血液流量の2.5%から25%まで変化させ、例えば、血液流量200mL/minでは、8.3×10
10〜8.3×10
11とし、膜面積S[μm
2]の値は5×10
11とした。
【0044】
(TMPと濾過流量との関係)
図5は、TMP[mmHg]と、濾過流量[mL/min]との関係を示す図である。上述の実施例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、実施例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、実施例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、実施例3として図中にプロットされている。
【0045】
上述の比較例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、比較例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、比較例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、比較例3として図中にプロットされている。
【0046】
それぞれのプロットについて、図中の最も左に示されているものは、
図3中の点P0に対応している。それぞれのプロットについて、その一つ右隣に示されているものは、
図3中の点P1に対応している。以下同様に、一つ右隣に示されているものは、順に、
図3中の点P2〜P8に対応している。実施例1〜3および比較例1〜3のそれぞれのプロットは、濾過流量が一定量だけ増加されるにつれて(上側に進むにつれて)、TMPの値も上昇していることが読み取れる。
【0047】
(JvavgとTMP変化率との関係)
図6は、Jvavg[μm/s]と、TMP変化率との関係を示す図である。上述の実施例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、実施例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、実施例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、実施例3として図中にプロットされている。
【0048】
上述の比較例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、比較例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、比較例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、比較例3として図中にプロットされている。
【0049】
それぞれのプロットについて、図中の最も左に示されているものは、
図3中の点P0および点P1から算出されるTMP変化率に対応している。それぞれのプロットについて、その一つ右隣に示されているものは、
図3中の点P0および点P2から算出されるTMP変化率に対応している。以下同様に、一つ右隣に示されているものは、順に、
図3中の点P0および点P3〜P8から算出されるTMP変化率に対応している。
【0050】
実施例1〜3のそれぞれのプロットのうち、左側に示されているプロットは、TMP変化率が1.0もしくはその近傍の値をとっていることが読み取れる。右側に進むにつれて(濾過流量が一定量だけ増加されるにつれて)、Jvavgが増加するとともに、TMP変化率も上昇していることが読み取れる。
【0051】
比較例1〜3のそれぞれのプロットのうち、左側に示されているプロットは、TMP変化率が1.0〜1.2の値をとっていることが読み取れる。右側に進むにつれて(濾過流量が一定量だけ増加されるにつれて)、Jvavgが増加するとともに、TMP変化率は実施例1〜3に比べて急峻に上昇していることが読み取れる。
【0052】
実施例の血液浄化器と比較例の血液浄化器とを比較する際に、JvavgとTMP変化率との関係という観点でこれらを比較した場合、たとえば実施例2の推移と比較例1の推移とが同様の傾向を示していたり、実施例3が比較例2と比較例3との間で推移していたりすることから、後述の「Jvmax/uBとTMP変化率との関係」という観点の方が比較しやすいと言える(詳細は後述する)。
【0053】
(Jvavg/uBとTMP変化率との関係)
中空糸膜内に供給され中空糸膜内で流れる血液の線速度は、uB[μm/s]によって示される(
図4参照)。血液浄化器内に流入する血液の単位時間あたりの血液流量をQ
B[μm
3/s]とし、中空糸膜の断面積の和をA[μm
2]とすると、線速度uBは、uB=Q
B/Aの式で表すことができる。
【0054】
図7は、Jvavg/uBと、TMP変化率との関係を示す図である。上述の実施例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、実施例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、実施例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、実施例3として図中にプロットされている。
【0055】
上述の比較例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、比較例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、比較例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、比較例3として図中にプロットされている。
【0056】
それぞれのプロットについて、図中の最も左に示されているものは、
図3中の点P0および点P1から算出されるTMP変化率に対応している。それぞれのプロットについて、その一つ右隣に示されているものは、
図3中の点P0および点P2から算出されるTMP変化率に対応している。以下同様に、一つ右隣に示されているものは、順に、
図3中の点P0および点P3〜P8から算出されるTMP変化率に対応している。
【0057】
実施例1〜3のそれぞれのプロットのうち、左側に示されているプロットは、TMP変化率が1.0もしくはその近傍の値をとっていることが読み取れる。右側に進むにつれて(濾過流量が一定量だけ増加されるにつれて)、Jvavg/uBが増加するとともに、TMP変化率も上昇していることが読み取れる。
【0058】
比較例1〜3のそれぞれのプロットのうち、左側に示されているプロットは、TMP変化率が1.0もしくはその近傍の値をとっていることが読み取れる。右側に進むにつれて(濾過流量が一定量だけ増加されるにつれて)、Jvavg/uBが増加するとともに、TMP変化率も上昇していることが読み取れる。
【0059】
実施例の血液浄化器と比較例の血液浄化器とを比較する際に、Jvavg/uBとTMP変化率との関係という観点でこれらを比較した場合、たとえばJvavg/uBが0.005〜0.01の範囲では実施例2,3の推移と比較例1,2の推移とが同様の傾向を示していたり、Jvavg/uBが0.01〜0.015の範囲では実施例3の推移と比較例2の推移とが同様の傾向を示していたりすることから、後述の「Jvmax/uBとTMP変化率との関係」という観点の方が比較しやすいと言える(詳細は後述する)。
【0060】
(Jvmax/壁ずり速度とTMP変化率との関係)
図8は、Jvmax/壁ずり速度と、TMP変化率との関係を示す図である。壁ずり速度とは、流体の移動量が時間とともに増す割合のことであり、たとえば円管内層流の流れにおいては、壁面からの距離をR、流体の平均速度をuBとしたときに、(壁ずり速度)=4uB/Rの式によって得ることができるものである。上述の実施例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、実施例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、実施例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、実施例3として図中にプロットされている。
【0061】
上述の比較例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、比較例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、比較例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、比較例3として図中にプロットされている。
【0062】
それぞれのプロットについて、図中の最も左に示されているものは、
図3中の点P0および点P1から算出されるTMP変化率に対応している。それぞれのプロットについて、その一つ右隣に示されているものは、
図3中の点P1および点P2から算出されるTMP変化率に対応している。以下同様に、一つ右隣に示されているものは、順に、
図3中の点P2および点P3、点P3および点P4、点P4および点P5、点P5および点P6、点P6および点P7、点P7および点P8から算出される一時間あたりのTMP変化率に対応している。
【0063】
実施例1〜3のそれぞれのプロットのうち、左側に示されているプロットは、TMP変化率が1.0もしくはその近傍の値をとっていることが読み取れる。右側に進むにつれて(濾過流量が一定量だけ増加されるにつれて)、Jvmax/壁ずり速度が増加するとともに、TMP変化率も上昇していることが読み取れる。
【0064】
比較例1〜3のそれぞれのプロットのうち、左側に示されているプロットは、TMP変化率が1.0もしくはその近傍の値をとっていることが読み取れる。右側に進むにつれて(濾過流量が一定量だけ増加されるにつれて)、Jvmax/壁ずり速度が増加するとともに、TMP変化率も上昇していることが読み取れる。
【0065】
実施例の血液浄化器と比較例の血液浄化器とを比較する際に、Jvmax/壁ずり速度とTMP変化率との関係という観点でこれらを比較した場合、実施例1〜3の推移と比較例1〜3の推移とが同様の傾向を示していることから、後述の「Jvmax/uBとTMP変化率との関係」という観点の方が比較しやすいと言える(詳細は後述する)。
【0066】
(JvmaxとTMP変化率との関係)
図9は、Jvmaxと、TMP変化率との関係を示す図である。上述の実施例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、実施例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、実施例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、実施例3として図中にプロットされている。上述の比較例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、比較例1として図中にプロットされている。
【0067】
それぞれのプロットについて、図中の最も左に示されているものは、
図3中の点P0および点P1から算出されるTMP変化率に対応している。それぞれのプロットについて、その一つ右隣に示されているものは、
図3中の点P1および点P2から算出されるTMP変化率に対応している。以下同様に、一つ右隣に示されているものは、順に、
図3中の点P2および点P3、点P3および点P4、点P4および点P5、点P5および点P6、点P6および点P7、点P7および点P8から算出される一時間あたりのTMP変化率に対応している。
【0068】
実施例1〜3および比較例1のそれぞれのプロットのうち、左側に示されているプロットは、TMP変化率が1.0もしくはその近傍の値をとっていることが読み取れる。右側に進むにつれて(濾過流量が一定量だけ増加されるにつれて)、Jvmaxが増加するとともに、TMP変化率も上昇していることが読み取れる。
【0069】
実施例の血液浄化器と比較例の血液浄化器とを比較する際に、JvmaxとTMP変化率との関係という観点でこれらを比較した場合、実施例1〜3の推移と比較例1の推移とは同様の傾向を示している。Jvmaxは、TMP上昇を決める規定因子であると考えられる。実施例1(血液浄化器への血液流量が200mL/minの場合)については、Jvmaxが2μm/sを超えるとTMP上昇が見られるため、それより小さい値であれば長時間での使用が可能であると考えられる。
【0070】
(Jvmax/uBとTMP変化率との関係)
図10および
図11は、Jvmax/uBと、TMP変化率との関係を示す図である。
図11は、
図10の一部(Jvmax/uBが0〜0.0005の範囲)を拡大したものに相当している。上述の実施例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、実施例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、実施例2として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、実施例3として図中にプロットされている。
【0071】
上述の比較例の構成を有する血液浄化器について、血液浄化器への血液流量を200mL/minに設定したときの結果は、比較例1として図中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を100mL/minに設定したときの結果は、比較例2として
図11中にプロットされている。血液浄化器への血液流量を50mL/minに設定したときの結果は、比較例3としてプロットされている。
【0072】
それぞれのプロットについて、図中の最も左に示されているものは、
図3中の点P0および点P1から算出されるTMP変化率に対応している。それぞれのプロットについて、その一つ右隣に示されているものは、
図3中の点P0および点P2から算出されるTMP変化率に対応している。以下同様に、一つ右隣に示されているものは、順に、
図3中の点P0および点P3〜P8から算出されるTMP変化率に対応している。
【0073】
図11を参照して、実施例1〜3については、Jvmaxが線速度uBに対して約0.015%以上0.06%以下になるように設計すれば、血液浄化器10を長期間使用してもTMP変化率は0.95以上1.05以下の値をとることとなり、ファウリングが少なく安定した使用が可能であると考えられる。一方で、比較例1〜3については、Jvmaxが線速度uBに対して約0.015%以上0.06%以下になるように設計した場合でも、血液浄化器を長期間使用したときのTMP変化率は1.05を超える値をとることとなり、ファウリングが実施例1〜3に比べて多く発生し、安定した使用が可能な濾過流量、血液流量の範囲が狭くなっているといえる。
【0074】
上述の通り、実施例1〜3については、中空糸膜の単位膜面積あたりの中空糸膜内への血液充填量が20mL/m
2以上35mL/m
2以下とされている。したがって、中空糸膜の単位膜面積あたりの中空糸膜内への血液充填量が20mL/m
2以上35mL/m
2以下となり、且つJvmax/uBの値が0.00015以上0.0006以下となる状況下において、TMP変化率の値が0.95以上1.05以下の条件を満足していることによって、血液浄化器10を長期間使用してもTMP変化率は0.95以上1.05以下の値をとることとなり、ファウリングが少なく安定した使用が可能となると言える。
【0075】
より好ましくは、中空糸膜の単位膜面積あたりの中空糸膜内への血液充填量が20mL/m
2以上30mL/m
2以下となり、且つJvmax/uBの値が0.00015以上0.0006以下となる状況下において、TMP変化率の値が0.95以上1.05以下の条件を満足しているとよい。中空糸膜内への血液充填量が小さい方が(換言すると、中空糸膜の内径が小さい方が)、血液濾過にはより有利である。
【0076】
以上の実験例により、膜面積あたりの血液充填量が少なく、上述のいわゆる短太の形状を有する血液浄化器10は、小型化および携帯性の向上が実現可能となっているだけでなく、所定の条件に設定して使用することにより、高い性能を発揮することが可能であることがわかる。
【0077】
以上、本発明に基づいた実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。