特許第6184180号(P6184180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許6184180-部品選択方法、プログラム及びシステム 図000005
  • 特許6184180-部品選択方法、プログラム及びシステム 図000006
  • 特許6184180-部品選択方法、プログラム及びシステム 図000007
  • 特許6184180-部品選択方法、プログラム及びシステム 図000008
  • 特許6184180-部品選択方法、プログラム及びシステム 図000009
  • 特許6184180-部品選択方法、プログラム及びシステム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184180
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】部品選択方法、プログラム及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20170814BHJP
   G06F 19/00 20110101ALI20170814BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20170814BHJP
【FI】
   G06F17/50 604G
   G06F17/50 612A
   G06F19/00 110
   G06Q50/04
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-123440(P2013-123440)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-241065(P2014-241065A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】清水 淳也
(72)【発明者】
【氏名】清水 周一
【審査官】 合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−141192(JP,A)
【文献】 特開平06−325109(JP,A)
【文献】 特開2006−236035(JP,A)
【文献】 特開平07−164815(JP,A)
【文献】 特開2005−259061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06F 19/00
G06Q 50/04
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品からなり、各部品には、初期試作機を構成するノミナル・バリエーションを含む複数のバリエーションがありえる製品について、設計目標を達成する望ましい部品のバリエーションの組み合わせをコンピュータの処理によって求める方法であって、
前記複数の部品について、前記初期試作機における制御対象部分の入出力計測に基づく簡易モデル上や過去の設計データに基づき、性能限界をみたすバリエーションを選択するステップと、
バリエーションを含む部品の数をNとし、各部品について、最大の性質を示すバリエーションと、最小の性質を示すバリエーションを選び、その2N通りについて上記簡易モデルによるシミュレーションを行い、前記ノミナル・バリエーションを用いた場合と併せて、前記簡易モデルから導出される状態空間モデルの係数ノルムをN+1次元空間にプロットするステップと、
前記プロットされた点に基づき、微分が不連続にならない補間法によって超曲面を構成するステップと、
上記初期試作機に該当する組み合わせについて、制御器も含む実装置でテストした結果を得るステップと、
前記実装置でのテストの結果と、上記設計目標の差が、所定閾値以内かどうか判断し、そうでないなら、前記超曲面上において、前記実装置を構成している部品に該当する点で各部品のバリエーションの軸に対して、バリエーションの軸方向の勾配と、その他のバリエーション軸との組み合わせで影響を受ける方向の勾配を計算し、最も勾配絶対値が大きい方向に関わる部品のバリエーションを選んで実装置でのテストを行うために部品のバリエーションを提示し、前記実装置でのテストの結果と、前記設計目標の差が、所定閾値以内になるまで繰り返すステップを有する、
方法。
【請求項2】
前記その他のバリエーション軸との組み合わせで影響を受ける方向の勾配が、2つのバリエーションの軸方向に対して45度クロスする勾配である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微分が不連続にならない補間法が、スプライン補間法である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最大の性質と前記最小の性質が、直接的には各部品のパラメータの大きさであって、間接的には前記簡易モデルで該当パラメータ使用時に導出される性質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数の部品からなり、各部品には、初期試作機を構成するノミナル・バリエーションを含む複数のバリエーションがありえる製品について、設計目標を達成する望ましい部品のバリエーションの組み合わせをコンピュータの処理によって求めるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記複数の部品について、前記初期試作機における制御対象部分の入出力計測に基づく簡易モデル上や過去の設計データに基づき、性能限界をみたすバリエーションを選択するステップと、
バリエーションを含む部品の数をNとし、各部品について、最大の性質を示すバリエーションと、最小の性質を示すバリエーションを選び、その2N通りについて上記簡易モデルによるシミュレーションを行い、前記ノミナル・バリエーションを用いた場合と併せて、前記簡易モデルから導出される状態空間モデルの係数ノルムをN+1次元空間にプロットするステップと、
前記プロットされた点に基づき、微分が不連続にならない補間法によって超曲面を構成するステップと、
上記初期試作機に該当する組み合わせについて、制御器も含む実装置でテストした結果を得るステップと、
前記実装置でのテストの結果と、上記設計目標の差が、所定閾値以内かどうか判断し、そうでないなら、前記超曲面上において、前記実装置を構成している部品に該当する点で各部品のバリエーションの軸に対して、バリエーションの軸方向の勾配と、その他のバリエーション軸との組み合わせで影響を受ける方向の勾配を計算し、最も勾配絶対値が大きい方向に関わる部品のバリエーションを選んで実装置でのテストを行うために部品のバリエーションを提示し、、前記実装置でのテストの結果と、前記設計目標の差が、所定閾値以内になるまで繰り返すステップを実行させる、
プログラム。
【請求項6】
前記その他のバリエーション軸との組み合わせで影響を受ける方向の勾配が、2つのバリエーションの軸方向に対して45度クロスする勾配である、請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記微分が不連続にならない補間法が、スプライン補間法である、請求項5に記載のプログラム。
【請求項8】
前記最大の性質と前記最小の性質が、直接的には各部品のパラメータの大きさであって、間接的には前記簡易モデルで該当パラメータ使用時に導出される性質である、請求項5に記載のプログラム。
【請求項9】
複数の部品からなり、各部品には、初期試作機を構成するノミナル・バリエーションを含む複数のバリエーションがありえる製品について、設計目標を達成する望ましい部品のバリエーションの組み合わせをコンピュータの処理によって求めるシステムであって、
前記複数の部品について、前記初期試作機における制御対象部分の入出力計測に基づく簡易モデル上や過去の設計データに基づき、性能限界をみたすバリエーションを選択する手段と、
バリエーションを含む部品の数をNとし、各部品について、最大の性質を示すバリエーションと、最小の性質を示すバリエーションを選び、その2N通りについて上記簡易モデルによるシミュレーションを行い、前記ノミナル・バリエーションを用いた場合と併せて、前記簡易モデルから導出される状態空間モデルの係数ノルムをN+1次元空間にプロットする手段と、
前記プロットされた点に基づき、微分が不連続にならない補間法によって超曲面を構成する手段と、
上記初期試作機に該当する組み合わせについて、制御器も含む実装置でテストした結果を得る手段と、
前記実装置でのテストの結果と、上記設計目標の差が、所定閾値以内かどうか判断し、そうでないなら、前記超曲面上において、前記実装置を構成している部品に該当する点で各部品のバリエーションの軸に対して、バリエーションの軸方向の勾配と、その他のバリエーション軸との組み合わせで影響を受ける方向の勾配を計算し、最も勾配絶対値が大きい方向に関わる部品のバリエーションを選んで実装置でのテストを行うために部品のバリエーションを提示し、、前記実装置でのテストの結果と、前記設計目標の差が、所定閾値以内になるまで繰り返す手段を有する、
システム。
【請求項10】
前記その他のバリエーション軸との組み合わせで影響を受ける方向の勾配が、2つのバリエーションの軸方向に対して45度クロスする勾配である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記微分が不連続にならない補間法が、スプライン補間法である、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記最大の性質と前記最小の性質が、直接的には各部品のパラメータの大きさであって、間接的には前記簡易モデルで該当パラメータ使用時に導出される性質である、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車などの、多数の部品からなる機械製品において、性能を最適化するための部品選択技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械製品を製造するための部品の集まりは、BOM(Bills of materials = 部品表)と呼ばれる。BOMには、設計情報から決められた設計BOM(E-BOM)、部品パラメータにバリエーションを持たせて複数の候補からなる技術BOM(T-BOM)、及び製造工程も考慮した部品群である製造BOM(M-BOM)などが知られている。
【0003】
自動車(その他多くの機械製品)の設計では実機(プロトタイプ)を試作する前に、計算機上でコントローラ(制御器)やプラント(制御対象)をモデル化して、(仮想的に)シミュレーションを行ったり過去の設計データに基づいて所望の設計目標が達成できるように、各部品のパラメータ(E-BOMに相当)を決定する。例えば、プラントではバネ定数やオイル粘度、制御器ではPIDの各係数などが該当する。
【0004】
ところが、モデルのシミュレーションは、必ずしも実機の絶対値で定義される現象までは再現することができない。例えば、ばねの硬さの絶対値を精密に決定することができない。言い換えれば、モデル上の最適化問題としては解決できない。
【0005】
したがって、実際の設計開発においては、部品のパラメータのバリエーションをT-BOM(マテリアル候補)として所定の範囲で(複数)用意して、その組み合わせを実際に試して期待の現象を作り出せるように、組み合わせで試行することになる。この組み合わせ試行に非常にコストがかかることが問題となっている。
【0006】
一方で、モデルのシミュレーションにおいても、例えば、ばねを硬くする、あるいは柔らかくすると影響がどの程度出るのか、その傾向を示すことができるので、絶対値は必ずしも合わないが、その相対値が傾向を示せることを利用する方法が望ましい。
【0007】
実際に最終製品を製造するためには、個々の部品毎に部品のパラメータのバリエーションを複数もつT-BOMから、唯一の組み合わせで定義される製造部品群(M-BOM)を決定する必要があるが、T-BOMにN種類(1≦k≦N)のマテリアルがあり、その各々がMk個の部品候補ならなるとすると、M-BOMを決定するには、
【数1】
通りの組み合わせの中から選択する作業が必要になり、多くの場合、それは組み合わせ的爆発を引き起こすので、実行困難である。
【0008】
なお、部品選択に関する従来技術として以下のようなものが知られている。
まず、特開2007−140678号公報は、汎用部品の選択作業を容易なものとして、製品の開発期間の短縮及び製品のコストを低減できる汎用部品選択支援装置を提供することを目的とするものであって、汎用部品であるボルトごとに、ボルトを識別する情報と当該ボルトの形状情報とを対応付けて記憶しておき、ボルトを一覧表示させるコマンドが発生した場合に、情報と形状情報とを一覧で表示させる表示データを作成して、ボルトの情報の一覧と、当該各ボルトの形状情報との一覧とを一画面内で表示させることを開示する。
【0009】
特開2008−2907号公報は、車両が備える所定部品に関する情報を取得する所定部品情報取得手段と、所定部品に置換可能な代替部品に関する情報を作成する代替部品情報作成手段と、入力された情報に基づいて車両性能を算出する車両性能算出手段と、を備え、所定部品情報取得手段により取得された所定部品に関する情報を入力した場合に、車両性能算出手段により算出される現状の車両性能と、所定部品情報取得手段により取得された所定部品に関する情報の少なくとも一部に代えて代替部品情報作成手段により作成された代替部品に関する情報を入力した場合に、車両性能算出手段により算出される置換後の車両性能と、の対比に基づきユーザーに情報提供することを開示する。
【0010】
しかし、これらの従来技術は、T-BOMから、M-BOMを決定する際の部品の組み合わせの多さの問題を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−140678号公報
【特許文献2】特開2008−2907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明の目的は、プロトタイプから簡易プラントモデルを作成し、マテリアル候補になっている部品装着時の影響を予測し、少ない部品交換回数で、適切なT-BOM選択を可能ならしめることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、以上の課題を解決するために、以下のステップを実行する。
(1) T-BOMにおいて、複数の部品候補を含む1種の部品(以下、マテリアルとも呼ぶ)についてパラメータのバリエーション幅について簡略検査する場合、その他のマテリアルについては初期部品のまま、E−BOM設計時のモデルや過去の設計データに基づき簡略的にシミュレーションを行い、マテリアルの部品候補について性能限界を保証するように取捨選択する。これを全マテリアルに関して検査する。ただし、過去の設計データからT−BOMとして与えられるべきパラメータの幅が明らかな場合は、この検査を省略する。
(2) それぞれのマテリアルについて、最大と最小の性質を示す部品候補を選んで、その他は初期部品のまま簡易プラントモデルを推定し、それを状態空間モデルで表した時の係数ノルムの和をN+1次元空間上にプロットする。N+1次元目が係数ノルムの和の数値である。このため、2N通りのシミュレーション結果と初期設定状態の簡易プラントモデルの結果を利用する。そして、微分可能な補間で性能予測超曲面を構成する。
(3) 設計時に選んだ部品組合わせを実テストで試す。
(4) 全体系の性能を示すものとして選んだ観測量に対して、実テストの観測出力結果と、設計目標がほぼ一致すれば終了。
(5) ずれがあれば、実装点において、性能への影響度、例えば、各マテリアル軸方向(Max, Minの2方向)と二つのマテリアル軸に対し、好適には45度クロスする方向(Max,Minの組合せ4方向)の勾配、を上記性能予測超曲面上で計算し、最も影響度絶対値が大きい方向に関与するマテリアルを選択(ただし、既に選んだ方向は除く)。
(6) 選んだマテリアルの中から、各候補位置で補間した係数ノルムの和が、初期設定モデルの係数ノルムの和に最も近い候補部品を選んで、それを実テストで試す。
(7) ステップ(4)へ戻る。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、パラメータ変更による影響を、超曲面の勾配で計算して、変更すべきマテリアルを選ぶことにより、従来の組み合わせ試行回数の増加の際にかかるコストを大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の前提の処理を示す模式図である。
図2】この発明を実施するためのコンピュータのハードウェアのブロック図である。
図3】この発明を実施するための機能要素のこの発明を実施するためのブロック図である。
図4】この発明の処理のフローチャートを示す図である。
図5】マテリアル選択のための超平面を示す図である。
図6】マテリアル選択のための勾配の方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に従って、本発明の実施例を説明する。これらの実施例は、本発明の好適な態様を説明するためのものであり、発明の範囲をここで示すものに限定する意図はないことを理解されたい。また、以下の図を通して、特に断わらない限り、同一符号は、同一の対象を指すものとする。
【0017】
先ず、図1の模式図を参照して、本発明の処理の前提について説明する。図1において、初期試作機102は、過去の設計データに基づき製作されたものであり、全体として安定系を構成している。
【0018】
簡易プラント104は、初期試作機102での計測結果や、そのプラント動作を表現する代表的な物理法則から求められたものである。上述のように、初期試作機102は、全体として安定系を構成しているので、そこから求められた簡易プラント104の挙動から、部品調整の影響を、ある程度予測できる。
【0019】
このようにして得られた簡易プラント104に対し、ここでの情報に基づいて調整される全体系は、プラント106と、制御器108とともに構成される。構成された全体系を動作させ、その結果として得られた、観測対象として選んだ出力値を設計値と比較し、ずれがある場合、全体系での実装・調整ステップ120でプラント106における部品をT-BOMの範囲で交換し、全体系からの出力値を設計値に近づけようとする。
【0020】
次に、図2のブロック図を参照して、本発明の処理を実現するためのコンピュータ・ハードウェアの構成について説明する。図2において、システム・バス202には、CPU204と、主記憶(RAM)206と、ハードディスク・ドライブ(HDD)208と、キーボード210と、マウス212と、ディスプレイ214が接続されている。CPU204は、好適には、32ビットまたは64ビットのアーキテクチャに基づくものであり、例えば、インテル社のCore(商標) i3、Core(商標) i5、Core(商標) i7、Xeon(R)、AMD社のAthlon(商標)、Phenom(商標)、Sempron(商標)などを使用することができる。主記憶206は、好適には、8GB以上の容量、より好ましくは、16GB以上の容量をもつものである
【0021】
ハードディスク・ドライブ208には、オペレーティング・システムが格納されている。オペレーティング・システムは、Linux(商標)、マイクロソフト社のWindows(商標) 7、Windows(商標)8などの、CPU204に適合する任意のものでよい。
【0022】
キーボード210及びマウス212は、オペレーティング・システムが提供するグラフィック・ユーザ・インターフェースに従い、ディスプレイ214に表示されたアイコン、タスクバー、テキストボックスなどのグラフィック・オブジェクトを操作するために使用される。
【0023】
システム・バス202には更に、PCIまたはUSBなどの既知のインターフェース・ボード216が接続され、インターフェース・ボード216には更に、全体系218が接続されている。インターフェース・ボード216は、全体系218から、係数ノルムなどの制御データを入力するために使用される。
【0024】
ハードディスク・ドライブ208にはさらに、図3に関連して後述するメイン・プログラム302、T−BOMのデータ304、ノミナル・モデル設定ルーチン306、マテリアルの信頼性チェック・ルーチン308、係数ノルム計算ルーチン310、マテリアル選択ルーチン312、及びマテリアル表示ルーチン314が保存されている。
と#d
メイン・プログラム302、ノミナル・モデル設定ルーチン306、マテリアルの信頼性チェック・ルーチン308、係数ノルム計算ルーチン310、マテリアル選択ルーチン312、及びマテリアル表示ルーチン314は、C、C++、C#、Java(R)などの既存の任意のプログラム言語で書くことができる。
【0025】
次に図3を参照して、本発明の機能構成について説明する。図3において、メイン・プログラム302は、キーボード210やマウス212等を使用したオペレータの操作に応答して、処理を開始したり、停止したり、その他の制御を行う。
【0026】
T-BOM304は、使用し得るマテリアル毎の複数のバリエーションを保存する。
【0027】
ノミナル・モデル設定ルーチン306は、初期試作機102のモデルであるノミナル・モデルを設定するためのルーチンである。観測入出力を設定し、それに対するシステム同定または過去の設計データから、初期試作機を状態空間モデルで表現する。
【0028】
マテリアルの信頼性チェック・ルーチン308は、各々のマテリアルに対して複数の候補を与えられたT-BOMにおいて、各マテリアルの候補部品仕様(パラメータ)の最大(Max)・最小(Min)の値を選び、それぞれの場合における簡易プラントモデル推定を行った結果あるいは、E−BOM設計時に用いた過去のデータに基づく情報から、ノミナル・モデルに対しての状態空間方程式における係数の振れを設定し、その分布から確率アルゴリズムを用いて、所与の信頼度における性能限界値を求める。ここで振れを表現する確率測度はノミナル・モデルを中心として、マテリアルのパラメータ・バリエーションが最大・最小の場合を両端とする一様分布でもよいし、過去の実験データから振れ幅特性が分かっている場合は、その特性分布を用いてもよい。そうして、例えば、G.Calafiore, F.Dabbene, R.Tempo, “A survey of randomized algorithms for control synthesis and performance verification,” Journal of Complexity, Vol.23, pp.301-316, 2007で定義されている評価関数に確率レベルと信頼度を与え、これに従いマテリアルのバリエーションを選ぶことにより、所望の信頼度を与えることができるようになる。この初期チェックは部品群が性能許容範囲に収まるまで、絞込みを行う。ここでの保証が出来ない場合は、部品感度が高すぎるものが候補部品になっていることになり、選定の再検討が必要となる。ただし、ノミナル・モデルとの差分比較を行う場合に、観測量を直接比較すると、部品仕様による立上がり特性によっては分布比較が難しい場合があるため、状態空間方程式の係数ノルムの和としてマッピングすることで比較基準を作ることとする。
【0029】
係数ノルム計算ルーチン310は、次のようにして係数ノルムの和を計算する。すなわち、y(t)が観測出力、u(t)が観測入力、x(t)が内部パラメータとして、状態空間モデルが以下の式であらわされるとして、
【数2】

係数ノルムの和は、
【数3】

で与えられる。ここで、Aは行列であり、BとCはベクトルである。ベクトルのノルムの定義は自明であるが、行列のノルムには、誘導されたノルム、フロベニウスノルム、トレースノルムなどがあり、どれを用いてもいいが、ここでは、AとAの転置行列を掛けた行列の固有値のうちの最大値の平方根で定義される行列のノルムを用いる。
【0030】
マテリアル選択ルーチン312は、ノミナルの値と、ノミナルのうちの一つのマテリアルについてパラメータを最大値に置き換えた点そしてそのパラメータを最小値に置き換えた点、それぞれで得られた簡易プラントモデルを状態空間モデルで表現した時の係数ノルムの和をスプライン補間することで超平面を構成し、そこでの勾配をもちいて、選ぶべきマテリアルを選択する処理を行うものであり、より詳細な処理は、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
マテリアル表示ルーチン314は、マテリアル選択ルーチン312によって選択されたマテリアルを、T-BOM304の情報を参照して、ディスプレイ214に表示する。オペレータは、ディスプレイ214に表示されたマテリアルをみて、全体系218におけるマテリアルを、表示されているマテリアルと交換して、次のテストを行う。
【0032】
パラメータ群316は、ノミナルのマテリアルのデータ、各マテリアルにおける最大・最小のマテリアル、その各々における簡易プラントモデルから導出された状態空間モデルの係数ノルムの和の値などの、マテリアル選択ルーチン312が必要とするデータを含む。パラメータ群316のデータは、好適にはハードディスク・ドライブ208に保存される。
【0033】
次に、図4のフローチャートを使用して、図3の機能ブロック図で示す論理構成の動作、主としてマテリアル選択ルーチン312の処理について説明する。
【0034】
以下の説明の前提として、想定するプラントがN個(Nは所定の自然数)のマテリアルからなり、i番目(1≦i≦N)のマテリアルは、Mi個の部品候補からなるとする。
【0035】
ここで、{Mi} = {1,2,...,Mi}と定義する。そして、ノミナル・モデルにおける部品の集合を、
(m1,m2,...,mN), mi ∈ {Mi} for 1≦i≦Nとする。このようなノミナル・モデルにおける部品の集合は、マテリアルの信頼性チェックルーチン308により、確率アルゴリズムを用いて、信頼度が設定されたものである。
【0036】
ステップ402では、i = 1からi = Nまで、i番目のマテリアルのMi個の部品候補について、i番目以外はノミナル・モデルのままでシミュレーションを行い、性能限界を保証する部品候補だけを残し、それに改めて順番をつけて、{M'i} = {1,2,...,M'i}とする。{M'i}⊂{Mi}である。このとき、{M'i}のうち、パラメータが最大の部品候補のインデックスをmmaxi、パラメータが最小の部品候補のインデックスをmminiとする。このようにして得たM'i、パラメータが最大の部品候補のインデックスをmmaxi、パラメータが最小の部品候補のインデックスをmmini、そのときの係数ノルムの和の値などの値は、メイン・プログラム302によって、パラメータ群316として保存される。
【0037】
この結果、以下のような2N個の、N+1次元の点が得られる。なお、下記で、Z1,Z2,...,Z2N+1は、対応する係数ノルムの和の値である。
(mmax1,m2,...,mN,Z1),mmax1 ∈ {M'1}
(mmin1,m2,...,mN,Z2),mmin1 ∈ {M'1}
.....
(m1,m2,...,mmax1N,Z2N-1),mmaxN ∈ {M'N}
(m1,m2,...,mmin1N,Z2N),mminN ∈ {M'N}
【0038】
マテリアル選択ルーチン312は、ステップ404で、上記2N個の点をN+1次元にプロットし、1≦i≦Nについて、
(m1,...,mi,...,mN,Z0)
(m1,...,mmaxi,...,mN,Z2i-1)
(m1,...,mmini,...,mN,Z2i)
の3点を三次関数のスプライン補間する。ここで、Z0はノミナルの高さである。このようにして形成された超曲面の例を図5の参照番号502で示す。図5は、マテリアル1とマテリアル2のパラメータをノミナル値で規格化した座標において係数ノルムの和を高さとしたグラフを示す。
【0039】
ステップ406では、オペレータが設計時に選んだノミナルの部品組み合わせを実テストで試す。
【0040】
その結果をもってマテリアル選択ルーチン312は、ステップ408で、実テストの結果、すなわち全体系の性能を示すものとして選んだ観測量に対して、実テストの観測出力結果と、設計目標を比較して、ほぼ一致、すなわち、差が所定の差の範囲であるなら終了。そうでなければ、マテリアル選択ルーチン312はステップ410で、実装点において各マテリアル軸方向と、2つのマテリアル軸に45度クロスする方向の6つの方向の勾配を超曲面上で計算し、最も勾配絶対値が大きい方向に関与するマテリアルを選択する。図6には、そのような6つの方向が示されている。
【0041】
マテリアルがN種類なので、上記した勾配は、軸方向の2N個と、クロス方向のN(N-1)/2個得られる。このどれかの軸方向に最大の勾配があらわれるなら、その方向のマテリアルが選ばれる。クロス方向に最大の勾配があらわれるなら、その方向に対応する2つのマテリアルが同時に調整対象として選ばれる。
【0042】
図5を例にとって説明すると、実装点504を基準に(0,0)とすると、この点の係数ノルム方向と曲面が交わる点506での勾配を考えることになる。図5で、横軸マイナス軸である領域508での勾配が一番大きいなら、横軸に相当するマテリアルが選択される。
【0043】
こうして例えば、マテリアル1が一旦候補として選ばれると、マテリアル選択ルーチン312は、ステップ412で、マテリアル1の方向を切り出し、マテリアル1の部品候補a,b,c,d,...のうち、各候補の位置で補間した係数ノルムの和がノミナルに一番近い部品候補を選び、マテリアル表示ルーチン314でディスプレイに表示する。それをディスプレイ214で見たオペレータは、それを全体系に装備して実テストで試し、ステップ408に戻って、実テストの結果を設計目標と比較する。
【0044】
なお、上記実施例では、2つのマテリアル軸に45度クロスする方向の6つの方向の勾配を超曲面上で計算したが、クロスする角度には45度に限らず自由度があり、例えば、30度と60度の方向にクロスする方向でみるようにしてもよい。用途に応じて、これ以外の角度も使用し得る。
【0045】
また、超曲面を形成するための補間方法は、微分可能な曲線を生成するならスプライン補間以外の任意の補間方法が使用可能であり、スプライン補間においても、3次スプライン法が一般的であるが、それ以外のBスプライン、非一様有理Bスプライン(NURBS)なども使用可能である。
【0046】
さらに、上記実施例は、自動車の部品選択に関するものであったが、この発明の適用範囲は自動車に限定されず、安定したノミナル・モデルをもち、多数の部品からなる任意の機械製品の設計に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
218・・・全体系
304・・・T-BOM
306・・・ノミナル・モデル設定ルーチン
308・・・マテリアルの信頼性チェック・ルーチン
310・・・係数ノルム計算ルーチン
312・・・マテリアル選択ルーチン
図1
図2
図3
図4
図5
図6