(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明する。次に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。なお、本明細書において、上下方向又は鉛直方向とは、路面に対して垂直な方向をいう。また、横方向又は水平方向とは、路面に対して平行な方向をいう。
【0020】
図1は、第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1のA−A破断面図である。第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100は、内部に流動体12を収容する複数個の小容器10と複数個の小容器10を収容する大容器20とを備える。
【0021】
小容器10は、有底筒状の胴部11を有する。胴部11の水平方向における断面形状は、例えば、円形、楕円形又は四角形若しくは五角形などの多角形である。
図1では、円形である形態を示した。胴部11の内側の幅W及び高さtは、制振する対象物に応じて設定するものであり特に制限はない。
図1では一例として、幅Wが30mm、高さtが90mmである形態を示した。ここで、胴部11の内側の幅Wは、胴部11の水平方向における断面形状が円形のときは直径であり、楕円形のときは長径であり、多角形のときは最大幅である。胴部11の上端開口部は、
図1及び
図2に示すように蓋部13を設けて閉鎖することが好ましい。
【0022】
小容器10の材質は、内部に流動体12を収容できればよく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック又はアルミニウム若しくはスチールなどの金属である。このうち、軽量化、耐腐食性の観点から、プラスチックであることが好ましい。
【0023】
小容器10の個数は、2〜100個であることが好ましく、10〜50個であることがより好ましい。小容器10の個数及び配置は、制振する対象物に応じて設定するものであり、
図1では、一例として、縦に4列、横に5行の合計20個の小容器10を配置した形態を示した。また、
図1では、各小容器10を1段で配置した形態を示したが、2段以上で配置してもよい。
【0024】
流動体12は、特に制限はないが、例えば、水、油、粘性体、ゲル、ビーズ、粉体である。流動体12は、非可燃性であることが好ましい。流動体12の上端面12aの高さtは、胴部11の高さTに対して、5〜50%であることが好ましく、10〜20%であることがより好ましい。上端面12aの高さtは、各小容器10で同じ高さとするか、又は各小容器10で異なる高さとしてもよい。すべての小容器10で上端面12aの高さtを同じ高さとすることで、所定の共振周波数に対応した動吸振器とすることができる。また、小容器10の上端面12aの高さtを異なる高さとすることで、複数の共振周波数に対応した動吸振器とすることができる。
【0025】
大容器20は、底壁21と底壁21の各辺から立設する側壁22とで形成された収容部23を有する。収容部23は、複数個の小容器10を収容する部分である。大容器20の上面は、
図1及び
図2に示すように上蓋壁24を設けて閉鎖するか、又は上蓋壁24を設けずに開放したまま(不図示)でもよい。
【0026】
大容器20の材質は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック、板紙若しくは段ボール紙などの紙又はアルミニウム若しくはスチールなどの金属である。このうち、軽量化及び耐水性の観点から、プラスチックであることが好ましい。
【0027】
各小容器10は、大容器20の収容部23内に並べて配置される。各小容器10は、収容部23で横方向又は縦方向の少なくとも一方に固定されていることが好ましく、横方向及び縦方向の両方に固定されていることがより好ましい。各小容器10を固定することで、ガタツキがなく、より安定した制振効果を得ることができる。各小容器10を横方向に固定する方法は、特に制限はないが、例えば、
図1及び
図2に示すように大容器20の収容部23内に複数個の小容器10を詰めて配置する方法、収容部23に小容器10の外寸法に合わせた格子状の枠部材(不図示)を設けて枠内に各小容器10を配置する方法である。各小容器10を縦方向に固定する方法は、特に制限はないが、例えば、各小容器10を大容器20の底壁21と上蓋壁24とで挟む方法(不図示)である。また、横方向及び縦方向の両方に固定する方法は、横方向に固定する方法と縦方向に固定する方法とを組み合わせるか、又は各小容器10と大容器20とを一体に成形してもよい。
【0028】
第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100では、各小容器10内の流動体12が振り子の役目を果たし、各小容器10がそれぞれ液体同調動吸振器として機能する。そして、複数の小容器10を大容器20に収容することで、複数の液体同調動吸振器を並列に配置したことと同様の作用効果を奏し、小型、かつ、軽量でありながら制振効果に優れた動吸振器となる。また、本実施形態では、流動体12の共振周波数は、上端面12aの高さtによって調整できるため、幅広い振動の周波数に対応することができる。
【0029】
図1及び
図2では、各小容器10の長手方向を上下方向に向けた形態を示したが、各小容器10の長手方向を横方向に向けてもよい(不図示)。各小容器10の長手方向を横方向に向けるときは、各小容器10の長手方向を車両の進行方向に向けて配置するか、又は各小容器10の長手方向を車両の進行方向に対して垂直に配置してもよい。各小容器10の長手方向を車両の進行方向に向けて配置すると、車両の発進及び停車時の振動や動揺に対応した動吸振器とすることができる。各小容器10の長手方向を車両の進行方向に対して垂直横向きに配置すると、走行中の定常的に発生する左右の振動に対応した動吸振器とすることができる。
【0030】
図3は、第二実施形態に係る輸送積荷用動吸振器の一例を示す斜視図である。第二実施形態に係る輸送積荷用動吸振器200は、大容器20の上側及び下側に、それぞれ上緩衝材201及び下緩衝材202を配置した以外は、第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100と同様の構成を有する。
図3に示すように、大容器20を、上緩衝材201及び下緩衝材202で挟むことで、上下方向の振動をより抑制することができる。
【0031】
上緩衝材201及び下緩衝材202は、それぞれ、例えば、スポンジ、ゴム、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンである。このうち、軽量化の観点から、スポンジであることが好ましい。スポンジの材質は、例えば、軟質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォームである。軟質ウレタンフォームには、反発弾性率(JIS K 6400−3:2011「軟質発泡材料−物理特性−第3部:反発弾性の求め方」)が15%以下の、いわゆる低反発弾性ウレタンフォームがあるが、この低反発弾性ウレタンフォームでは、原点復帰能力が少なく、バネ性能が得られないため、動吸振器の性能が得られない場合がある。よって、本実施形態では、上緩衝材201及び下緩衝材202の材質として、低反発弾性ウレタンフォームを除くことが好ましい。
【0032】
上緩衝材201及び下緩衝材202は、それぞれ大容器20に固定することが好ましい。固定方法は特に制限はないが、例えば、上緩衝材201、大容器20及び下緩衝材202を結束材(不図示)で結束する方法、接着剤で固定する方法である。
【0033】
第二実施形態に係る輸送積荷用動吸振器200では、下緩衝材202の弾性率は、上緩衝材201の弾性率よりも高いことが好ましい。下緩衝材202の弾性率を上緩衝材201の弾性率よりも高くすることで、上下方向の振動の偏りを小さくすることができる。本明細書において、緩衝材の弾性率とは、JIS K 7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」に準じて測定した圧縮弾性率であり、緩衝材に圧縮応力を加えて得た応力‐ひずみ曲線の立ち上がり部分に接線を引き、その接線の傾きから求めることができる。
【0034】
図4は、第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器の一例を示す斜視図である。
図5は、
図4のB−B破断面図である。第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300は、下緩衝材302として大容器20を収容可能で、かつ、上方が開口した箱型緩衝材を配置し、上緩衝材301として下緩衝材302の上方開口部を閉鎖する蓋型緩衝材を配置した以外は、第二実施形態に係る輸送積荷用動吸振器200と同様の構成を有する。第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300では、外形が一体の箱型であるため、取り扱い性が向上する。
【0035】
第四実施形態に係る輸送積荷用動吸振器(不図示)は、大容器が緩衝材からなる以外は、第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100と同様の構成を有する。また、第四実施形態に係る輸送積荷用動吸振器は、第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300において、大容器20を省略して、下緩衝材302に直接小容器10を収容した形態であるともいえる。第四実施形態に係る輸送積荷用動吸振器は、第二実施形態に係る輸送積荷用動吸振器200又は第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300のように、大容器20の上下又は周囲に緩衝材を配置した場合と同様の作用効果を奏する。さらに、大容器を緩衝材で形成することで、更なる軽量化及び低コスト化が図れる。大容器は、箱型緩衝材と蓋型緩衝材との2つの部品で形成するか、又は底壁及び下緩衝材を兼ねる板状の緩衝材と、側壁に相当する枠型の側壁緩衝材と、上蓋壁及び上緩衝材を兼ねる板状の緩衝材との3つの部品で形成してもよい。
【0036】
図12は、第五実施形態に係る輸送積荷用動吸振器の一例を示す概略断面図である。第五実施形態に係る輸送積荷用動吸振器500は、上緩衝材501若しくは下緩衝材502のいずれか一方又は両方が、磁性体30で挟まれている以外は、第二実施形態に係る輸送積荷用動吸振器200と同様の構成を有する。上緩衝材501若しくは下緩衝材502のいずれか一方又は両方を磁性体30で挟むことで、磁性体30の斥力又は引力を利用して、緩衝材のバネ定数を容易に変化させることができる。その結果、緩衝材だけでは対応が難しかった速度に対応して制振することができる。また、より高精度に制振することができる。このとき、上緩衝材501及び下緩衝材502は、緩衝機能に加えて、向かい合う磁性体30a間又は30b間のスペーサーとしても機能する。
図12では、一例として上緩衝材501が磁性体30(30a)で挟まれ、かつ、下緩衝材502が磁性体30(30b)で挟まれている形態を示したが、上緩衝材501だけが磁性体30(30a)に挟まれている形態又は下緩衝材502だけが磁性体30(30b)に挟まれている形態であってもよい。
【0037】
磁性体30は、永久磁石であることが好ましい。永久磁石は、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石である。上緩衝材501を挟む磁性体30(30a)と下緩衝材502を挟む磁性体30(30b)とは、同種のものを用いるか、又は異種のものを用いてもよい。磁性体30は、例えば、板状、棒状、リング状であり、
図12に示すように上緩衝材501又は下緩衝材502の一部を挟むか、又は上緩衝材501又は下緩衝材502の全面を挟んでもよい。本発明は磁性体30の材質及び形状に限定されない。
【0038】
上緩衝材501を挟む磁性体30(30a)同士は、上緩衝材501に対して同極を向けて配置するか、又は上緩衝材501に対して異極を向けて配置してもよい。このうち、バネ定数の調整がより容易な点で、上緩衝材501に対して異極を向けて配置することがより好ましい。下緩衝材502を挟む磁性体30(30b)についても、上緩衝材501を挟む磁性体30(30a)と同様である。
【0039】
磁性体30は、上緩衝材501又は下緩衝材502に固定されていることが好ましい。磁性体30を固定する方法は、特に限定されないが、例えば、磁性体30同士の引力で固定する方法、磁性体30を接着剤などの副資材を用いて固定する方法である。
【0040】
図13は、第六実施形態に係る輸送積荷用動吸振器の一例を示す概略断面図である。第六実施形態に係る輸送積荷用動吸振器600は、大容器20の側壁の少なくとも一つに沿って配置した側壁緩衝材603,604を更に備え、上緩衝材601、下緩衝材602及び側壁緩衝材603,604の少なくともいずれか一つが、磁性体30で挟まれている以外は、第五実施形態に係る輸送積荷用動吸振器500と同様の構成を有する。側壁緩衝材603,604を更に備えることで、上下方向及び左右方向の振動をより抑制することができる。また、緩衝材を磁性体30で挟むことで、磁性体30の斥力又は引力を利用して、緩衝材のバネ定数を容易に変化させることができる。その結果、緩衝材だけでは対応が難しかった速度に対応して制振することができる。また、より高精度に制振することができる。
【0041】
側壁緩衝材603,604は、輸送積荷用動吸振器600の任意の側面を正面としたとき、大容器20の左側に配置される左側壁緩衝材603、右側に配置される右側壁緩衝材604、正面側に配置される前側壁緩衝材(不図示)、背面側に配置される後側壁緩衝材(不図示)を包含する。本実施形態では、左側壁緩衝材603、右側壁緩衝材604、前側壁緩衝材(不図示)及び後側壁緩衝材(不図示)のうち、四面すべてを設けるか、又は三面、二面若しくは一面だけを設けてもよい。
【0042】
図13では、一例として上緩衝材601が磁性体30(30a)で挟まれ、かつ、下緩衝材602が磁性体30(30b)で挟まれ、かつ、左側壁緩衝材603が磁性体30(30c)で挟まれ、かつ、右側壁緩衝材604が磁性体30(30d)で挟まれている形態を示したが、本発明は、磁性体30で挟む緩衝材の組合せに限定されない。例えば、上緩衝材601、下緩衝材602及び側壁緩衝材603,604のうち、いずれか一つの緩衝材だけが磁性体30に挟まれている形態、いずれか二つ以上の緩衝材が磁性体30に挟まれている形態であってもよい。また、前側壁緩衝材(不図示)及び後側壁緩衝材(不図示)が磁性体30に挟まれていてもよい。磁性体30で挟む緩衝材の好ましい組合せ例としては、少なくとも上緩衝材601及び下緩衝材602が、それぞれ磁性体30に挟まれている形態である。
【0043】
上緩衝材601、下緩衝材602、側壁緩衝材603,604は、
図13に示すように、それぞれ別個の部品であるか、又はいずれかを一体の部品としてもよい。いずれかを一体の部材とする形態は、例えば、
図4に示すように下緩衝材602、左側壁緩衝材603,右側壁緩衝材604、前側壁緩衝材(不図示)及び後側壁緩衝材(不図示)を一体にして箱型緩衝材を形成し、上緩衝材601を蓋緩衝材とする形態である。または、左側壁緩衝材603、右側壁緩衝材604、前側壁緩衝材(不図示)及び後側壁緩衝材(不図示)を一体にして枠型とし、上緩衝材601を上蓋、下緩衝材602を底壁とする形態である。
【0044】
図14は、第七実施形態に係る輸送積荷用動吸振器の一例を示す概略断面図である。第七実施形態に係る輸送積荷用動吸振器700は、各緩衝材を挟む磁性体30が、更に導体40を挟んでいる以外は、第六実施形態に係る輸送積荷用動吸振器600と同様の構成を有する。導体40を磁性体30の磁束を横断して配置することで、磁気減衰力によって、制振効果を向上することができる。
図14では、各緩衝材を挟む磁性体30のすべてが導体40を挟んでいる形態を示したが、導体40を挟んでいない磁性体30があってもよい。好ましい形態例としては、少なくとも上緩衝材701を挟む磁性体30(30a)及び下緩衝材702を挟む磁性体30(30b)が、それぞれ導体40を挟んでいる形態である。また、
図14では導体40が各緩衝材701,702,703,704に内蔵されている形態を示したが、これに限定されない。導体40が磁性体30の磁束を横断していればよく、例えば、導体40が各緩衝材701,702,703,704の上側又は下側に配置されていてもよい。
【0045】
導体40の材質は、例えば、鉄、アルミニウムである。導体40は、例えば、板状である。導体40は、
図14に示すように導体40を挟む磁性体30と同じ大きさとするか、導体40を挟む磁性体30よりも小さくするか、又は導体40を挟む磁性体30よりも大きくしてもよい。本実施形態は、導体40の材質及び形状に限定されない。導体40は、別の磁性体30に挟まれる導体40と導通していないことが好ましい。より安定した制振効果を得ることができる。
【0046】
本実施形態では、第五実施形態に係る輸送積荷用動吸振器500が、上緩衝材501を挟む磁性体30(30a)及び/又は下緩衝材502を挟む磁性体30(30b)が、更に導体を挟んでいる形態としてもよい。
【0047】
図6は、本実施形態に係る輸送方法の第一例を説明するための図である。本実施形態に係る輸送方法は、第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100を、包装体1を複数段に積み重ねた集合包装構造2の最上段若しくは中段のいずれか一方又は両方に配置する。
図6は、一例として第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100を最上段だけに配置した形態を示す。輸送積荷用動吸振器100の配置は、輸送時に生じる振動モードに対応して選択する。例えば、振動モードが1次モードで、最上段での揺れが最も大きくなるときは、
図6に示すように、輸送積荷用動吸振器100を集合包装構造2の最上段だけに配置する。また、振動モードが2次モードで、最上段及び中段で揺れが大きくなるときは、輸送積荷用動吸振器100を集合包装構造2の最上段及び中段の両方に配置する。振動モードが2次モードで、中段での揺れが最も大きくなるときは、輸送積荷用動吸振器100を中段だけに配置する。輸送積荷用動吸振器100を集合包装構造2の最上段及び中段の両方に配置する場合では、最上段用の輸送積荷用動吸振器と中段用の輸送積荷用動吸振器とは、最上段の振動又は中段の振動にそれぞれ対応させて相互に異なるものを配置することが好ましい。また、中段用の輸送積荷用動吸振器は、被包装物に替えて輸送用積荷用動吸振器を収容したダミー包装体(不図示)として、集合包装構造2の中段に配置することが好ましい。本明細書において、集合包装構造2の中段とは、集合包装構造2の全高Hを100%としたとき、設置面2aから25〜65%の高さをいう。中段用の輸送積荷用動吸振器は、集合包装構造2の全高Hを100%としたとき、設置面2aから40〜60%の高さに配置することがより好ましく、設置面2aから45〜55%の高さに配置することが特に好ましい。なお、
図6は、一例として第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100を示したにすぎず、第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100に替えて、第二実施形態に係る輸送積荷用動吸振器200又は第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300を配置してもよい。また、第四〜第七実施形態に係る輸送積荷用動吸振器500,600,700を配置してもよい。
【0048】
包装体1は、例えば、段ボール箱である。包装体1に収容される被包装物は、特に制限はないが、例えば、イチゴ、イチジク、サクランボなどの易損性青果物である。包装体1は、輸送時には、複数段積み重ねられて塔状の集合包装構造2を形成する。集合包装構造2を形成する包装体1の段数は、例えば、5〜25段である。包装体1は、
図6に示すように、取り扱い性の観点から、例えば5段毎にプラスチックバンド3で結束してもよい。
【0049】
本実施形態に係る輸送方法は、集合包装構造2に加わった動きを吸収する仕組みである。原理は質量とバネとダンパーとからなる。本実施形態では、流動体12を含めた輸送積荷用動吸振器100,200,300全体の質量が質量として作用する。第一実施形態のように緩衝材を有さない形態では流動体12がバネとして作用し、第二〜第四実施形態のように緩衝材を有する形態では流動体12並びに上緩衝材201,301及び下緩衝材202,302がバネとして作用する。また、流動体12がダンパーとして作用する。このように、流動体12が質量、バネ及びダンパーのすべての機能をもつ。
【0050】
図7は、本実施形態に係る輸送方法の第二例を説明するための図である。本実施形態に係る輸送方法は、包装体1を複数段に積み重ねた集合包装構造2A,2Bを複数本並列し、第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器101を、隣り合う集合包装構造2A,2Bの同一の高さを有する段に跨って配置する。
図7では、2本の集合包装構造2A,2Bを並列させたが、これに限定されず、3本以上を並列してもよい。また、3本以上並列するときは、一列に並べることに限らず、二列以上に並べてもよい。輸送積荷用動吸振器101を配置する段の高さは、輸送時に生じる振動モードに対応して、例えば、
図7に示すように最上段だけとするか、中段だけ又は最上段及び中段の両方としてもよい。
【0051】
図15は、本実施形態に係る輸送方法の第三例を説明するための概略平面図である。
図6又は
図7に示す輸送方法において、第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100,101に替えて、
図15に示すように第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300を複数個並べて配置してもよい。輸送積荷用動吸振器を複数個並べて配置することで、より均等に制振することができる。
図15では、一例として第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300を縦に3列、横に3行の合計9個配置した形態を示したが、制振する対象物に応じて設定するものであり特に制限はない。なお、
図15は、一例として第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300を示したにすぎず、第三実施形態に係る輸送積荷用動吸振器300に替えて、第一実施形態に係る輸送積荷用動吸振器100、第二実施形態に係る輸送積荷用動吸振器200又は第四〜第七実施形態に係る輸送積荷用動吸振器500,600,700を配置してもよい。
【実施例】
【0052】
次に、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0053】
(実施例1)
小容器として水平方向の断面形状が円形で、胴部の内側の幅が30mm、高さが90mmである円筒形のプラスチックボトル(材質:ポリプロピレン)を140個用意した。また、大容器として水平方向の断面形状が長方形で、収容部の内側の横幅が300mm、縦幅が420mm、高さが100mmであるプラスチックケース(材質:ポリエチレン)を1個用意した。各小容器に、それぞれ上端面の高さが5〜70mmになるように水を入れて蓋をした。これらの小容器の長手方向を上下方向に向けた状態で、大容器内に縦に14列、横に10行を1段配置して上蓋を閉めたものを実施例1の輸送積荷用動吸振器とした。実施例1の輸送積荷用動吸振器の質量は、4189gであった。
【0054】
(実施例2)
小容器として実施例1で用いたものと同じものを30個用意した。また、(1)縦幅が400mm、横幅が400mmの正方形の板状ハードスポンジ(材質:ポリウレタン製スポンジ、厚さ:55mm、弾性率:0.25〜0.30N/mm
2、型番:硬質スポンジ、コーナン社製)、(2)縦幅が400mm、横幅が400mmの正方形の板状スポンジ(材質:ポリウレタン製スポンジ、厚さ:55mm、弾性率:0.25〜0.30N/mm
2、型番:硬質スポンジ、コーナン社製)の中央部分を縦幅が200mm、横幅が200mmの長方形にくりぬいた枠型スポンジ、(3)縦幅が400mm、横幅が400mmの長方形の板状ソフトスポンジ(材質:ポリウレタン製スポンジ、厚さ:55mm、弾性率:0.15〜0.20N/mm
2、型番:軟質スポンジ、コーナン社製)の(1)〜(3)を各1枚ずつ用意した。各小容器に、それぞれ上端面の高さが5〜70mmになるように水を入れて蓋をした。(1)ハードスポンジの上に(2)枠型スポンジを配置し、枠型スポンジの枠内に、小容器の長手方向を横方向に向けてそろえた状態で縦に2列、横に5行を2段配置した。その上に(3)ソフトスポンジを配置して、(1)〜(3)のスポンジを粘着テープで巻いて固定したものを実施例2の輸送積荷用動吸振器とした。実施例2の輸送積荷用動吸振器の質量は、1512gであった。弾性率は、JIS K 7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」に準じて圧縮弾性率を測定した。すなわち、小型卓上試験機(EZ Test、島津製作所社製)を用いて、(1)〜(3)の緩衝材と同質の物(寸法:100mm×100mm×55mm)に、圧縮速度50mm/分で圧縮応力を加え、得られた応力−ひずみ曲線の立ち上がり部分に接線を引き、その接線の傾きから求めた。
【0055】
(積荷の作製)
イチゴ0.3kgをプラスチック製トレイ(材質PP、寸法 縦112mm×横162mm×深さ70mm)に詰めて、プラスチックフィルムを開口部に掛け、イチゴ入りパックとした。イチゴ入りパック4パックを、段ボール箱(レンゴー社製、材質 表及び裏ライナー180g/m
2、中芯120g/m
2、寸法 縦335mm×横235mm×深さ80mm)に収納した。次いで、段ボール箱5箱を縦に重ねて、ポリプロピレン製バンドによって結束した。これを縦に5段積み上げて、塔状の集合包装構造とした。この集合包装構造の質量は60kgであった。
【0056】
(振動試験)
図6に示すような集合包装構造の最上段に実施例1又は実施例2の輸送積荷用動吸振器を配置したものを、振動試験機(IMV社製、動電型振動試験機)の架台に載せて、加振波形として2HZ‐100HZフラットランダム波形を与え、5箱ごとに小型加速度センサ(型式:352C23、東陽テクニカ社製)を取付けて振動応答を測定し、FFT(Fast Fourier Transform)アナライザ(型式:OR36、東陽テクニカ社製)で収録、解析した。加速度センサの位置は、下から順に1〜5の番号で示す。揺れの大きさは、振動エネルギー実効値RMS(root mean square、単位:m/s2)で評価した。比較例1として、輸送積荷用動吸振器を配置しない集合包装構造について同様に試験を行った。
【0057】
図8は、実施例1及び比較例1の横方向(X方向)のRMSを比較したグラフである。ここで、横方向(X方向)は、段ボール箱の短手方向である。
図8に示すように、下から4番目(20段目)までは実施例1及び比較例1でRMSに大きな差は見られなかったが、下から5番目(最上段、25段目)では、比較例1は特に揺れが激しかったのに対して、実施例1はX方向の揺れを大幅に減少することが確認できた。
【0058】
図9は、実施例1及び比較例1の上下方向(Z方向)のRMSを比較したグラフである。
図9に示すように、下から3番目(15段目)以上において、実施例1のRMSが、比較例1のRMSよりも小さくなる傾向が見られた。さらに、最上段において、実施例1のRMSは、比較例1のRMSよりも30%小さく、実施例1は比較例1と比較してZ方向の揺れを減少することが確認できた。
【0059】
図10は、実施例2及び比較例1の上下方向(Z方向)のRMSを比較したグラフである。
図10に示すように、各地点の加速度センサにおいて、実施例2のRMSが比較例1のRMSよりも小さく、特に下から3番目(15段目)以上では、実施例2のRMSと比較例1のRMSとの差が広かった。さらに、最上段において、実施例2のRMSは、比較例1のRMSよりも30%小さく、実施例2は比較例1と比較してZ方向の揺れを減少することが確認できた。
【0060】
図11は、実施例2及び比較例1の上下方向(Z方向)の10HZにおける伝達率を比較したグラフである。ここで、伝達率は、振動伝達率である。振動伝達率とは、特定周波数における入力加速度に対する応答加速度の比率をいう。
図11に示すように、最上段において、実施例2の伝達率は、比較例1の伝達率の1/3であった。
【0061】
(実施例3)
図16は、実施例3の輸送積荷用動吸振器の内部構造を示す写真である。
図17は、実施例3の輸送積荷用動吸振器を用いた振動試験の様子を示す写真である。小容器として実施例1で用いたものと同じものを70個用意した。各小容器に、それぞれ上端面の高さが5〜70mmになるように水を入れて蓋をし、
図16に示すように小容器の長手方向を横方向に向けてそろえた状態で縦に5列、横に7行を2段配置した。小容器を配列した小容器群の周囲にスポンジ(材質:ポリウレタン製スポンジ、厚さ:100mm、弾性率:0.1N/mm
2、型番:硬質スポンジ、コーナン社製)を敷き詰めて、
図17に示すように外寸法が縦(t1)750mm、横(t2)900mm、高さ(t3)100mmの直方体に成形したものを実施例3の輸送積荷用動吸振器とした。実施例3の輸送積荷用動吸振器の質量は、3000gであった。弾性率は、JIS K 7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」に準じて圧縮弾性率を測定した。
【0062】
(振動試験)
図17に示すように、集合包装構造の最上段に実施例3の輸送積荷用動吸振器を配置したものを振動試験機(IMV社製、動電型振動試験機)の架台に載せて、加振波形として2HZ‐100HZフラットランダム波形を与え、最上段に小型加速度センサ(型式:352C23、東陽テクニカ社製)を取付けて振動応答を測定し、FFT(Fast Fourier Transform)アナライザ(型式:OR36、東陽テクニカ社製)で収録、解析した。揺れの大きさは、振動エネルギー実効値RMS(root mean square、単位:m/s
2)で評価した。比較例1として、輸送積荷用動吸振器を配置しない集合包装構造について同様に試験を行った。
【0063】
図18は、実施例3及び比較例1の上下方向及び横方向の加速度を比較したグラフである。
図18では、比較例1の振動エネルギー実効値RMSを100%としたときの、実施例3の振動エネルギー実効値RMSを示す。実施例3は、比較例1と比較して振動を上下方向及び横方向ともに、約40%低減していた。