特許第6184219号(P6184219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184219
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】SRモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/08 20160101AFI20170814BHJP
【FI】
   H02P25/08
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-152471(P2013-152471)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-23749(P2015-23749A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏昭
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−268961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/08−25/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体スイッチ素子を有するパワー回路と、前記半導体スイッチ素子に制御信号を供給する制御部とを備え、前記パワー回路よりSRモータに備わるU相、V相およびW相巻線に制御電流を供給し、前記SRモータに備わるロータを回転駆動させるSRモータ制御装置において、
前記制御部は、
前記巻線に供給される制御電流の電流値が目標電流値に近づくように前記パワー回路を制御モードで機能させる第1制御信号と、前記パワー回路を還流モードで機能させる第2制御信号と、前記パワー回路を回生モードで機能させる第3制御信号とを出力するとともに各相巻線のインダクタンスの増減に対応して、前記第1制御信号、前記第2制御信号、前記第3制御信号の順に出力され、
前記第1制御信号および前記第2制御信号は前記インダクタンスの増加区間に出力され、前記第3制御信号は前記インダクタンスの減少区間に出力され、
前記第1制御信号が出力される第1区間と前記第2制御信号が出力される第2区間はモータトルク指令値の大きさに対応して変化するよう設定されていることを特徴とするSRモータ制御装置。
【請求項2】
記SRモータ制御装置において、
前記モータトルク指令値が大きくなると前記第1区間が増加するとともに前記第2区間が減少し、前記モータトルク指令値が小さくなると前記第1区間が減少するとともに前記第2区間が増大するよう設定されていることを特徴とする請求項に記載のSRモータ制御装置。
【請求項3】
前記SRモータ制御装置において、
前記目標電流値は、予め定められた設定電流値に設定されていることを特徴とする請求項に記載のSRモータ制御装置。
【請求項4】
前記SRモータ制御装置において、
前記ロータの回転速度が予め定められた設定速度よりも小さいときは、前記目標電流値は前記モータトルク指令値に対応して増減するとともに、前記インダクタンスの増加区間では前記第1制御信号のみが出力されることを特徴とする請求項に記載のSRモータ制御装置。
【請求項5】
前記SRモータ制御装置において、
前記第1制御信号が出力されることを選択する選択信号が供給されたときは、前記目標電流値は前記モータトルク指令値に対応して増減するとともに、前記インダクタンスの増加区間では前記第1制御信号のみが出力されることを特徴とする請求項に記載のSRモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、SRモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SRモータ装置は、SRモータと、SRモータに制御電流を供給するSRモータ制御装置とを備える。SRモータは、U相、V相およびW相巻線がそれぞれ集中巻きにて巻装されたステータと、ステータに対し回転自在に配置されたロータとを備える。SRモータ制御装置は、複数の半導体スイッチ素子を有するパワー回路と、半導体スイッチ素子に制御信号を供給する制御部とを備える。ここで、パワー回路には制御装置に電力を供給する電源が接続される。そして、SRモータ制御装置は、パワー回路よりSRモータに備わるU相、V相およびW相巻線に制御電流を供給し、SRモータに備わるロータを回転駆動させる。
【0003】
上記のSRモータにおいては、ロータが回転駆動を行う際に生じる駆動音の音圧を小さくすることが求められる。そして、駆動音の音圧を小さくする手法として、SRモータに供給される制御電流の波形を調整する手法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−21082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、SRモータの駆動音の音圧の低減を目的とし、音圧を低減させることができる制御電流をSRモータに供給するSRモータ制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のSRモータ制御装置は、複数の半導体スイッチ素子を有するパワー回路と、これらの半導体スイッチ素子に制御信号を供給する制御部とを備える。そして、パワー回路よりSRモータに備わるU相、V相およびW相巻線に制御電流を供給し、前記SRモータに備わるロータを回転駆動させる。制御部は、U相、V相およびW相巻線に供給される制御電流の電流値が目標電流値に近づくようにパワー回路を制御モードで機能させる第1制御信号と、パワー回路を還流モードで機能させる第2制御信号と、パワー回路を回生モードで機能させる第3制御信号とを出力するとともに各相巻線のインダクタンスの増減に対応して、前記第1制御信号、前記第2制御信号、前記第3制御信号の順に出力する。また、前記第1制御信号および前記第2制御信号は前記インダクタンスの増加区間に出力され、前記第3制御信号は前記インダクタンスの減少区間に出力される。さらに、前記第1制御信号が出力される第1区間と前記第2制御信号が出力される第2区間はモータトルク指令値の大きさに対応して変化するよう設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のSRモータ制御装置は、SRモータの駆動音の音圧を低減させることができる制御電流をSRモータに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態におけるSRモータ装置のシステムブロック図である。
図2】パワー回路の各動作モードを説明する図である。
図3】各動作モードの形成タイミングを説明する図である。
図4】トルク指令値と第2区間の割合との関係を説明する図である。
図5】駆動音の音圧の低減を説明する図である。
図6】本発明の第2の実施形態におけるSRモータ装置のシステムブロック図である。
図7】目標電流値の調整を説明する図である。
図8】本発明の第3の実施形態におけるSRモータ装置のシステムブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
次に、この発明の第1の実施形態のSRモータ装置を図1に基づき説明する。図1は、第1の実施形態におけるSRモータ装置S1のシステムブロック図である。
【0010】
SRモータ装置S1は、SRモータ1と、SRモータ制御装置100とを備える。SRモータ1は、巻線4を有するステータ2と、ステータ2に対し回転自在に配置されたロータ3とを備える。巻線4は、U相巻線(U1,U2)、V相巻線(V1,V2)およびW相巻線(W1,W2)を備える。ここで、各U相巻線(U1,U2)は互いに直列に接続され、各V相巻線(V1,V2)は互いに直列に接続され、各W相巻線(W1,W2)は互いに直列に接続される。また、SRモータ1にはロータ3の回転位置を検出する回転センサ5が取り付けられている。なお、本実施形態においては、回転センサ5としてレゾルバが用いられている。
【0011】
SRモータ制御装置100は、複数の半導体スイッチ素子(11a,11d,12a,12d,13a,13d)を有するパワー回路10と、半導体スイッチ素子(11a,11d,12a,12d,13a,13d)に制御信号を供給する制御部20とを備える。そして、パワー回路10よりSRモータ1に備わるU相、V相およびW相巻線(U1〜W2)に制御電流を供給し、SRモータ1に備わるロータ3を回転駆動させる。
【0012】
パワー回路10は、電源Bに接続されるとともにSRモータ1の各巻線(U1〜W2)に接続される。パワー回路10は、U相ブリッジ回路11、V相ブリッジ回路12、W相ブリッジ回路13を備え、各ブリッジ回路(11〜13)は、電源Bに対しそれぞれ並列に配置接続される。また、各ブリッジ回路(11〜13)には、それぞれに対し並列に平滑コンデンサCが接続される。
【0013】
U相ブリッジ回路11は、半導体スイッチ素子としてのFET(11a,11d)とダイオード(11b,11c)とを備える。そして、FET11aとダイオード11bは、接続点P1にて直列に接続され、ダイオード11cとFET11dは、接続点P2にて直列に接続される。
【0014】
同様に、V相ブリッジ回路12は、半導体スイッチ素子としてのFET(12a,12d)とダイオード(12b,12c)を備える。そして、FET12aとダイオード12bは、接続点P3にて直列に接続され、ダイオード12cとFET12dは、接続点P4にて直列に接続される。
【0015】
同様に、W相ブリッジ回路13は、半導体スイッチ素子としてのFET(13a,13d)とダイオード(13b,13c)を備える。そして、FET13aとダイオード13bは、接続点P5にて直列に接続され、ダイオード13cとFET13dは、接続点P6にて直列に接続される。
【0016】
次に、パワー回路10と、SRモータ1の各巻線(U1〜W2)の接続について説明する。互いに直列に接続されたU相巻線(U1,U2)の一方の接続ラインL1はU相ブリッジ回路11の接続点P1に接続され、他方の接続ラインL2はU相ブリッジ回路11の接
続点P2に接続される。同様に、互いに直列に接続されたV相巻線(V1,V2)の一方の接続ラインL3はV相ブリッジ回路12の接続点P3に接続され、他方の接続ラインL4はV相ブリッジ回路12の接続点P4に接続される。同様に、互いに直列に接続されたW相巻線(W1,W2)の一方の接続ラインL5はW相ブリッジ回路13の接続点P5に接続され、他方の接続ラインL6はW相ブリッジ回路13の接続点P6に接続される。
【0017】
そして、各接続ライン(L2,L4,L6)には各電流センサ(6u,6v,6w)が配置される。電流センサ6uはパワー回路10からU相巻線(U1,U2)に供給される制御電流の電流値を検出し、電流センサ6vはパワー回路10からV相巻線(V1,V2)に供給される制御電流の電流値を検出し、電流センサ6wはパワー回路10からW相巻線(W1,W2)に供給される制御電流の電流値を検出する。
【0018】
次に、本形態の制御部20について図1に基づき説明する。なお、本実施形態では制御部20として、マイコンが用いられている。
【0019】
制御部20は、目標電流設定部21と、電流検出部22と、デューティ設定部23と、位置検出部24と、速度検出部25と、マップ部26と、通電タイミング設定部27と、第2制御信号指令部28と、PWM信号出力部29とを備える。
【0020】
目標電流設定部21には、メモリに予め定められた設定電流値が記録されている。そして、目標電流設定部21からは、この記録されている設定電流値に対応する所定の電流指令信号が出力される。
【0021】
電流検出部22には、各電流センサ(6u〜6w)からのセンシング信号が供給される。そして、電流検出部22からは、センシング信号に基づき電流検出信号が出力される。
【0022】
デューティ設定部23は、電流比較部23aおよびデューティ演算部23bを備える。電流比較部23aには、電流指令信号および電流検出信号が供給される。そして、電流比較部23aは、電流指令信号と電流検出信号との偏差を演算し、電流偏差信号を出力する。デューティ演算部23bには、電流偏差信号が供給される。そして、デューティ演算部23bは、電流偏差信号よりデューティを演算し、デューティ指令信号を出力する。
【0023】
位置検出部24には、回転センサ5からのロータ3の回転位置に対応するセンシング信号が供給される。そして、位置検出部24は、このセンシング信号からロータ3の回転位置を演算し、回転位置信号を出力する。
【0024】
速度検出部25には、位置検出部24から回転位置信号が供給される。そして、速度検出部25は、回転位置信号からロータ3の回転速度を演算し、回転速度信号を出力する。
【0025】
マップ部26は、通電角マップ26aおよび進角マップ26bを備える。各マップ(26a,26b)には、通電角情報および進角情報が記録されている。ここで、マップ部26には、回転速度信号と電流指令信号が供給される。マップ部26は、回転速度信号と電流指令信号と各マップ(26a,26b)に記録された通電角情報および進角情報とを参照比較し、適正な通電角および進角を演算する。そして、マップ部26は、演算した通電角および進角より補正通電タイミング信号を演算出力する。
【0026】
通電タイミング設定部27には、回転位置信号および補正通電タイミング信号が供給される。そして、通電タイミング設定部27は、回転位置信号および補正通電タイミング信号からU相巻線(U1,U2)、V相巻線(V1,V2)およびW相巻線(W1,W2)の各巻線にパワー回路10から電力を供給する通電タイミング時間を演算し、演算した通電
タイミング時間に対応する通電タイミング信号を出力する。
【0027】
第2制御信号指令部28には、回転位置信号およびトルク指令信号が供給される。第2制御信号指令部28は「トルク指令値と第2区間(還流モード)」の相関情報を記録したマップ(図4参照)を備えており、このマップから「第2区間の割合」を抽出する。そして、この抽出した「第2区間の割合」と回転位置信号に基づき、マスク期間を演算しマスク信号として出力する。なお、「第2区間(還流モード)」に関しては、後に詳述する。
【0028】
PWM信号指令部29には、デューティ指令信号、通電タイミング信号およびマスク信号が供給される。PWM信号指令部29は、通電タイミング信号とマスク信号から、パワー回路10を制御モードまたは還流モードのいずれかで機能させる区間処理を行う。そして、PWM信号指令部29は、デューティ指令信号に基づき制御モードにおけるFETのオンオフ比を演算し、PWM信号指令部29からは制御モードで機能させる区間(第1区間)において、演算されたPWM信号が出力される。そして、PWM信号指令部29は、還流モードで機能させる区間(第2区間)において、パワー回路10のPWM作動を禁止する禁止信号を出力する。なお、「第1区間(制御モード)」および「第2区間(還流モード)」については、後に詳述する。
【0029】
次に、「通電タイミング設定部27およびPWM信号出力部29」からパワー回路10のFET(11a,11d,12a,12d,13a,13d)への信号の供給について説明する。
【0030】
通電タイミング設定部27は、パワー回路10のFET(11d,12d,13d)に通電タイミング信号を供給する。具体的には、通電タイミング設定部27は、通電タイミング時間において、各FET(11d,12d,13d)をオンさせる信号を供給する。
【0031】
PWM信号出力部29は、パワー回路10のFET(11a,12a,13a)にPWM信号および禁止信号を供給する。具体的には、PWM信号出力部29は、パワー回路10を制御モードで機能させる区間(第1区間)において、FET(11a,12a,13a)を所定のデューティでオンオフするPWM信号を供給し、パワー回路10を還流モードで機能させる区間(第2区間)において、FET(11a,12a,13a)をオフさせる禁止信号を供給する。
【0032】
上記のように通電タイミング設定部27およびPWM信号出力部29から、通電タイミング信号、PWM信号および禁止信号が出力されることにより、制御部20からパワー回路10に対し、パワー回路10を制御モードで機能させる「第1制御信号」、パワー回路10を還流モードで機能させる「第2制御信号」、および、パワー回路10を回生モードで機能させる「第3制御信号」が出力される。
【0033】
次に、第1制御信号、第2制御信号および第3制御信号と、そのときのパワー回路10の動作について図2および図3に基づいて説明する。なお、SRモータ1の巻線4には、U相巻線(U1,U2)、V相巻線(V1,V2)およびW相巻線(W1,W2)に電気角120度のタイミングでパワー回路10より順次同様の制御電流が供給される。そのため、図2および図3ではU相巻線(U1,U2)への制御電流の供給について表示し、V相巻線(V1,V2)およびW相巻線(W1,W2)への制御電流の供給については説明を省略する。
【0034】
(制御モード(第1区間))
図2に示すように、制御部20からパワー回路10に第1制御信号が供給されることにより、パワー回路10は動作モードとして制御モードで機能する。また、図3に示すように
第1制御信号が供給される「第1区間」は、インダクタンスの増加区間内に設定される。なお、図3では、進角通電されているため、インダクタンスの増加前から「第1区間」が開始されている。
【0035】
第1制御信号は、U相ブリッジ回路11のFET11dを常時オンする信号が通電タイミング設定部27より供給されるともに、U相ブリッジ回路11のFET11aをPWM動作(オンオフ動作)させるPWM信号がPWM信号出力部29より供給される。これらの制御信号により制御モードでは、U相巻線(U1,U2)に対し、供給通電と還流通電が実施される。制御モードでは、制御電流の電流値が目標電流値に素早く到達させるために(近づけるために)初期においては、デューティ100%、すなわち供給通電のみが実施される。そして、制御電流の電流値が目標電流値に到達した後は、制御電流の電流値を目標電流値に維持し、近づけるべく所定のデューティで制御モードが実行される。すなわち、図2に示すように、所定のディーティで給電通電と還流通電が繰り返され、所定の制御モードが実行される。
【0036】
(還流モード(第2区間))
図2に示すように、制御部20からパワー回路10に第2制御信号が供給されることにより、パワー回路10は動作モードとして還流モードで機能する。また、図3に示すように第2制御信号が供給される「第2区間」は、インダクタンスの増加区間内において「第1区間」の後に設定される。
なお、インダクタンスの増加区間に対する「第2区間」の割合は、後に詳述する。
【0037】
第2制御信号は、U相ブリッジ回路11のFET11dを常時オンする信号が通電タイミング設定部27より供給されるともに、U相ブリッジ回路11のFET11aをオフ動作させる禁止信号がPWM信号出力部29より供給される。これらの制御信号により還流モードでは、U相巻線(U1,U2)に対し、還流通電が実施される。この還流通電により、U相巻線(U1,U2)を流れる制御電流の電流値は、U相巻線(U1,U2)のインピーダンス等により急峻に上昇・下降することなくなだらかに減少する。
【0038】
(回生モード)
図2に示すように、制御部20からパワー回路10に第3制御信号が供給されることにより、パワー回路10は動作モードとして回生モードで機能する。また、図3に示すように第3制御信号が供給される時間は、インダクタンスの減少区間内に設定される。なお、第3制御信号が供給される時間は、インダクタンスの減少区間内にのみに限定されるものではなく、インダクタンスの増加期間から開始してもよい。
【0039】
第3制御信号は、U相ブリッジ回路11のFET11dをオフする信号が通電タイミング設定部27より供給されるともに、U相ブリッジ回路11のFET11aをオフさせる信号がPWM信号出力部29より供給される。これらの制御信号により回生モードでは、U相巻線(U1,U2)に対し、回生通電が実施される。この回生通電により、U相巻線(U1,U2)を流れる制御電流は電源に回生され、U相巻線(U1,U2)を流れる制御電流の電流値は、ゼロ値に向けて減少する。
【0040】
(第2区間の割合)
次に、図4に基づき、インダクタンスの増加区間に対する「第2区間」の割合について説明する。上述のように、第2制御信号指令部28は「トルク指令値と第2区間(還流モード)」の相関情報(マップ情報)を記録したマップを備えている。図4に示すように、このマップはモータトルク指令値が増加するにつれて、インダクタンスの増加区間に対する「第2区間」の割合の値が減少するマップ情報を記録している。より詳細には、モータトルク指令値が最小(min)においては「第2区間の割合」の値は「100%」に設定さ
れ、モータトルク指令値が増加するにつれて、初めは急峻にその後緩やかに「第2区間の割合」は徐々に減少し、モータトルク指令値が最大(max)においては「第2区間の割合」の値は「0%」に設定されている。
【0041】
上記のように「第2区間」が設定されているため、図4に示すように、第1制御信号が出力される「第1区間」と第2制御信号が出力される「第2区間」はモータトルク指令値の大きさに対応して変化するよう設定されている。より詳細には、モータトルク指令値が大きくなると「第1区間」が増加するとともに「第2区間」が減少し、モータトルク指令値が小さくなると「第1区間」が減少するとともに「第2区間」が増大するよう設定されている。
【0042】
(効果)
次に、図5に基づき、本実施の形態のSRモータ制御装置100有する効果について説明する。
【0043】
図5は、従来の制御装置(第2区間なし、「第2区間の割合」=0%)によりSRモータを回転駆動させた場合、および、本実施の形態のSRモータ制御装置(第2区間あり)100によりSRモータを回転駆動させた場合におけるSRモータの駆動音の音圧を比較するグラフである。この比較は、モータトルク指令値を段階的に減少させて実施されている。
従来の制御装置(第2区間なし、「第2区間の割合」=0%)においては、目標電流値は、予め定められた設定電流値に設定されず可変である。そして、還流モードを実行する第2区間は設けられず、制御モードと回生モードのみが実行される。そして、モータトルク指令値の大きさに対応させて目標電流値が増減される。一方、本実施の形態のSRモータ制御装置(第2区間あり)100においては、目標電流値は、予め定められた設定電流値に設定される。そして、還流モードを実行する第2区間が設けられ、制御モードと回生モードとの間に「還流モード(第2区間)」が実行される。そして、モータトルク指令値の大きさに対応させて「第2区間」の割合が増減される。
【0044】
図5に示すように、従来の制御装置(第2区間なし)に比して、本実施の形態のSRモータ制御装置(第2区間あり)100によりSRモータを回転駆動させた場合のSRモータの駆動音の音圧が、いずれのトルクにおいても小さくなっていることが確認される。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、この発明の第2の実施形態のSRモータ装置を図6に基づき説明する。図6は、第2の実施形態におけるSRモータ装置S2のシステムブロック図である。SRモータ装置S2は、制御部30を有するモータ制御装置110を備える。ここで、第2の実施形態におけるSRモータ装置S2は、第1の実施形態におけるSRモータ装置S1に比して、制御部における目標電流設定部および第2制御信号指令部のみが異なり、その他の構成は同一である。よって、目標電流設定部および第2制御信号指令部以外については、第1の実施形態におけるSRモータ装置S1と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
目標電流設定部21Aは、電流メモリと、速度メモリと、比較部と、目標電流演算部とを備える。電流メモリには、予め定められた設定電流値が記録され、速度メモリには、予め定められた設定速度が記録される。比較部は、設定速度と回転速度を比較し、目標電流演算部は、モータトルク指令信号より目標電流値を算出する。そして、図6に示すように、目標電流設定部21Aには、モータトルク指令信号および回転速度信号が供給される。
【0047】
(回転速度が小さい場合)
比較部において、回転速度信号よりロータ3の回転速度が予め定められた設定速度よりも
小さいと判断されたときは、目標電流演算部により算出された目標電流値が目標電流設定部21Aより出力される。
【0048】
(回転速度が大きい場合)
比較部において、回転速度信号よりロータ3の回転速度が予め定められた設定速度以上である(大きい)と判断されたときは、第1の実施形態と同様に予め定められた設定電流値が目標電流設定部21Aより出力される。
【0049】
第2制御信号指令部28Aは、マップと、速度メモリと、比較部とを備える。マップは、第1の実施形態と同様に「トルク指令値と第2区間(還流モード)」の相関情報が記録されている。速度メモリには、(目標電流設定部21Aと同一の)予め定められた設定速度が記録される。比較部は、設定速度と回転速度を比較する。そして、図6に示すように、第2制御信号指令部28Aには、モータトルク指令信号、回転速度信号および回転位置信号が供給される。
【0050】
(回転速度が小さい場合)
比較部において、回転速度信号よりロータ3の回転速度が予め定められた設定速度よりも小さいと判断されたときは、第2制御信号指令部28Aからはマスク信号は出力されない。
【0051】
(回転速度が大きい場合)
比較部において、回転速度信号よりロータ3の回転速度が予め定められた設定速度以上である(大きい)と判断されたときは、第1の実施形態と同様に、第2制御信号指令部28Aは、マップから「第2区間の割合」を抽出し、抽出した「第2区間の割合」と回転位置信号に基づき、マスク期間を演算しマスク信号として出力する。
【0052】
上記のように構成されることにより、ロータ3の回転速度が予め定められた設定速度よりも小さいときは、図7に示すように、目標電流値はモータトルク指令値に対応して増減するとともに、インダクタンスの増加区間では第1制御信号のみが出力される。ロータ3の回転速度が小さい場合には、「第2区間」を設定することよる駆動音の音圧の低減効果を有効に発揮できない場合も考えられる。そのような場合は、上記のように目標電流値を可変した方がモータ性能を十分に発揮できると考えられる。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、この発明の第3の実施形態のSRモータ装置を図8に基づき説明する。図8は、第3の実施形態におけるSRモータ装置S3のシステムブロック図である。SRモータ装置S3は、制御部40を有するモータ制御装置120を備える。ここで、第3の実施形態におけるSRモータ装置S3は、第1の実施形態におけるSRモータ装置S1に比して、制御部における目標電流設定部および第2制御信号指令部のみが異なり、その他の構成は同一である。よって、目標電流設定部および第2制御信号指令部以外については、第1の実施形態におけるSRモータ装置S1と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
目標電流設定部21Bは、電流メモリと、選択信号検出部と、目標電流演算部とを備える。電流メモリには、予め定められた設定電流値が記録され、選択信号検出部は、選択信号の入力の有無を検出する。目標電流演算部は、モータトルク指令信号より目標電流値を算出する。そして、図8に示すように、目標電流設定部21Bには、モータトルク指令信号および選択信号が供給される。ここで、選択信号は、SRモータ装置S3の使用者の任意の操作により選択的に供給される。
【0055】
(選択信号が検出された場合)
選択信号検出部において選択信号が検出された場合は、目標電流演算部により算出された目標電流値が目標電流設定部21Bより出力される。
【0056】
(選択信号が検出されない場合)
選択信号検出部において選択信号が検出されない場合は、第1の実施形態と同様に予め定められた設定電流値が目標電流設定部21Bより出力される。
【0057】
第2制御信号指令部28Bは、マップと、選択信号検出部とを備える。マップは、第1の実施形態と同様に「トルク指令値と第2区間(還流モード)」の相関情報が記録されている。選択信号検出部は、選択信号の入力の有無を検出する。そして、図8に示すように、第2制御信号指令部28Bには、モータトルク指令信号、選択信号および回転位置信号が供給される。
【0058】
(選択信号が検出された場合)
選択信号検出部において選択信号が検出された場合は、第2制御信号指令部28Bからはマスク信号は出力されない。
【0059】
(選択信号が検出されない場合)
選択信号検出部において選択信号が検出されない場合は、第1の実施形態と同様に、第2制御信号指令部28Bは、マップから「第2区間の割合」を抽出し、抽出した「第2区間の割合」と回転位置信号に基づき、マスク期間を演算しマスク信号として出力する。
【0060】
上記のように構成されることにより、第1制御信号のみが出力されることを選択する選択信号が供給されたときは、図7に示すように、目標電流値はモータトルク指令値に対応して増減するとともに、インダクタンスの増加区間では第1制御信号のみが出力される。このように構成することにより、SRモータ装置S3の使用者の任意の操作により、モータ性能および駆動音を任意に設定することができる。
【0061】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【符号の説明】
【0062】
S1(S2,S3)・・・SRモータ装置
1・・・SRモータ
2・・・ステータ
3・・・ロータ
4・・・巻線
U1〜U2・・・U相巻線
V1〜V2・・・V相巻線
W1〜W2・・・W相巻線
5・・・回転センサ(レゾルバ)
6u〜6w・・・電流センサ
10・・・パワー回路
11〜13・・・U相〜W相ブリッジ回路
11a・・・FET(半導体スイッチ素子)
11b〜11c・・・ダイオード
11d・・・FET(半導体スイッチ素子)
12a・・・FET(半導体スイッチ素子)
12b〜12c・・・ダイオード
12d・・・FET(半導体スイッチ素子)
13a・・・FET(半導体スイッチ素子)
13b〜13c・・・ダイオード
13d・・・FET(半導体スイッチ素子)
C・・・コンデンサ
B・・・バッテリー
100(110,120)・・・制御装置
20(30,40)・・・制御部
21(21A,21B)・・・目標電流設定部
22・・・電流検出部
23・・・デューティ設定部
23a・・・電流比較部
23b・・・デューティ演算部
24・・・位置検出部
25・・・速度検出部
26・・・マップ部
27・・・通電タイミング設定部
28(28A,28B)・・・第2制御信号指令部
29・・・PWM信号出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8