特許第6184225号(P6184225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184225
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】衣料用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/83 20060101AFI20170814BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20170814BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20170814BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20170814BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20170814BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C11D1/83
   C11D17/08
   C11D1/29
   C11D1/722
   C11D1/04
   C11D3/43
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-155219(P2013-155219)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-25062(P2015-25062A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】喜多 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】牧 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】岩本 芳浩
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−285339(JP,A)
【文献】 特開2011−208130(JP,A)
【文献】 特開2010−265445(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02420559(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0010118(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/119935(WO,A1)
【文献】 特開2009−138056(JP,A)
【文献】 特開2010−229387(JP,A)
【文献】 特開2010−275468(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02436755(EP,A1)
【文献】 特開2011−063788(JP,A)
【文献】 特開2011−246585(JP,A)
【文献】 特開2011−021138(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0115769(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02455446(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/83
C11D 1/04
C11D 1/29
C11D 1/722
C11D 3/43
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び水を配合してなり、
水の配合量が8質量%超、50質量%以下であり、
(a)成分の配合量と(b)成分の配合量との質量比が、(b)成分/(a)成分で、0.02以上、0.5以下であり、
(a)成分の配合量と(b)成分の配合量と(c)成分の配合量の合計量と、(d)成分の配合量との質量比が、(d)成分/〔(a)成分+(b)成分+(c)成分〕で、0.3以上、0.8以下である、
衣料用液体洗浄剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で表される陰イオン界面活性剤
1−O−(A1O)p1−(EO)q1−SO3M (1)
〔式中、R1は炭素数12以上、14以下の炭化水素基を示し、A1Oは、炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、p1は平均付加モル数であり、1.0以上、3.0以下の数を示し、q1は平均付加モル数であり、1.0以上、3.0以下の数を示し、Mは水素原子又は塩を形成する対イオンを示す。−(A1O)p1−(EO)q1−は、この順にR1−Oとブロックで結合している。〕
(b)成分:下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤
2−O−(A2O)p2−(EO)q2−H (2)
〔式中、R2は炭素数12以上、14以下の炭化水素基を示し、A2Oは、炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基を示し、p2は平均付加モル数で1.0以上、3.0以下の数であり、EOはエチレンオキシ基であり、q2は平均付加モル数で1.0以上、3.0以下の数を示す。−(A2O)p2−(EO)q2−は、この順にR2−Oとブロックで結合している。〕
(c)成分:炭素数12以上、14以下の脂肪酸及びその塩から選ばれる化合物
(d)成分:炭素数3以上、9以下の炭化水素基を有する2価のアルコール、及び炭素数1以上、5以下の1価のアルコールに、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基が、2モル又は3モル付加した化合物から選ばれる1種以上の化合物
【請求項2】
前記の(a)成分の配合量と(b)成分の配合量の合計量と、(c)成分の配合量との質量比が、(c)成分/〔(a)成分+(b)成分〕で、0.05以上、0.4以下である、請求項1に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)成分のp1と(b)成分のp2との比が、p1/p2で、0.8以上、1.2以下であり、(a)成分のq1と(b)成分のq2との比が、q1/q2で、0.9以上、1.1以下である、請求項1又は2に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
塗布型である、請求項1〜3の何れかに記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ミートソースなどの脂質汚れに代表される食べこぼし汚れは、落ちにくい汚れの一つとして知られている。食べこぼし汚れの洗浄性を高める為に、衣料用液体洗浄剤組成物を、衣料に付着した食べこぼし汚れに塗布して洗浄することが知られている。
【0003】
近年、洗濯機が大型化し、1回当たりの洗濯物の量が増えている。洗濯物の量が多いと、洗濯槽内に多量の衣料が詰め込まれた状態で洗濯される場合がある。また、洗濯に使用する水の量を少なくする洗濯機も販売されている。洗濯に使用する水の量を少なくすることは、洗濯する衣料の質量(kg)に対して、水(洗浄液)の容量(リットル)が少なくなる傾向を助長する。衣料の質量に対する洗浄液の量の比で表される浴比が、洗浄液の容量(リットル)/衣料の質量(kg)で、15以下になると、洗濯槽内に多量の衣料が詰め込まれた状態と、概ね同じ条件になると考えられる。
【0004】
特許文献1には、特定の構造を有する非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、シリコーン化合物、特定の香料化合物、及び水混和性有機溶剤を含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。特許文献1には、詰め込み洗濯時の課題の示唆はない。
【0005】
特許文献2には、有機汚垢に対して高い洗浄率を有し、溶剤が少なくても低温での流動性に優れた液体洗浄剤組成物が開示されている。特許文献2には、詰め込み洗濯時の課題の示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−87228号公報
【特許文献2】特開2010−47655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
作業者は、皮脂汚れ又は脂質汚れに代表される食べこぼし汚れに対して、液体洗浄剤組成物を塗布することで優れた洗浄効果を高めている。しかしながら、洗濯槽内に衣料が詰め込まれた状態で洗濯する時の洗浄効果には、未だ改善の余地がある。
【0008】
本発明は、衣料が洗濯槽に詰め込まれた状態で洗濯しても、食べこぼし汚れの洗浄性に優れる衣料用液体洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び水を配合してなり、
水の配合量が8質量%超、50質量%以下であり、
(a)成分の配合量と(b)成分の配合量との質量比が、(b)成分/(a)成分で、0.02以上、0.5以下であり、
(a)成分の配合量と(b)成分の配合量と(c)成分の配合量の合計量と、(d)成分の配合量との質量比が、(d)成分/〔(a)成分+(b)成分+(c)成分〕で、0.3以上、0.8以下である、
衣料用液体洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:下記一般式(1)で表される陰イオン界面活性剤
1−O−(A1O)p1−(EO)q1−SO3M (1)
〔式中、R1は炭素数10以上、18以下の炭化水素基を示し、A1Oは、炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、p1は平均付加モル数であり、1.0以上、3.0以下の数を示し、q1は平均付加モル数であり、1.0以上、3.0以下の数を示し、Mは水素原子又は塩を形成する対イオンを示す。−(A1O)p1−(EO)q1−は、この順にR1−Oとブロックで結合している。〕
(b)成分:下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤
2−O−(A2O)p2−(EO)q2−H (2)
〔式中、R2は炭素数10以上、18以下の炭化水素基を示し、A2Oは、炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基を示し、p2は平均付加モル数で1.0以上、3.0以下の数であり、EOはエチレンオキシ基であり、q2は平均付加モル数で1.0以上、3.0以下の数を示す。−(A2O)p2−(EO)q2−は、この順にR2−Oとブロックで結合している。〕
(c)成分:炭素数12以上、14以下の脂肪酸及びその塩から選ばれる化合物
(d)成分:炭素数3以上、9以下の炭化水素基を有する2価のアルコール、及び炭素数1以上、5以下の1価のアルコールに、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基が、2モル又は3モル付加した化合物から選ばれる1種以上の化合物
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、衣料が洗濯槽に詰め込まれた状態で洗濯しても、食べこぼし汚れの洗浄性に優れる衣料用液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(a)成分>
本発明で用いられる(a)成分の陰イオン界面活性剤は、下記一般式(1)で表される化合物である。
1−O−(A1O)p1−(EO)q1−SO3M (1)
〔式中、R1は炭素数10以上、18以下の炭化水素基を示し、A1Oは、炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、p1は平均付加モル数であり、1.0以上、3.0以下の数を示し、q1は平均付加モル数であり、1.0以上、3.0以下の数を示し、Mは水素原子又は塩を形成する対イオンを示す。−(A1O)p1−(EO)q1−は、この順にR1−Oとブロックで結合している。〕
【0012】
(a)成分の一般式(1)中、R1は炭素数10以上、18以下の炭化水素基である。R1は、洗浄力の点で炭素数12以上が好ましく、そして、16以下、更に14以下が好ましい。R1の炭化水素基としては、洗浄力の点から、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R1の炭化水素基としては、洗浄力の点から、直鎖の炭化水素基が好ましい。とりわけ直鎖の第1級アルキル基、直鎖の第1級アルケニル基が好ましく、直鎖の第1級アルキル基がより好ましい。
【0013】
一般式(1)中のA1Oである炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基としては、オキシトリメチレン基、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,3−ジイル基、オキシブタン−2,3−ジイル基、オキシテトラメチレン基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。入手性の点から、オキシプロパン−1,2−ジイル基〔一般的にプロピレンオキシ基と呼ばれることもある。〕及びオキシブタン−1,2−ジイル基(一般的にブチレンオキシ基と呼ばれることもある。)から選ばれる1種以上の基が好ましく、オキシプロパン−1,2−ジイル基が更に好ましい。
【0014】
一般式(1)中の“−(A1O)p1−(EO)q1−”とは、1モルのR1O基に対して、炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基(A1O)が平均でp1モル付加し、アルキレンオキシ基に対してエチレンオキシ基(EO)が平均でq1モル付加していることを表す。p1モルのアルキレンオキシ基とq1モルのエチレンオキシ基は、(A1O)p1、(EO)q1の順でR1−Oとブロックで結合している。ブロックで結合している構造を有することが、詰め込み洗濯条件下での、食べこぼし汚れに対する洗浄効果の点で好ましい。
【0015】
一般式(1)中のp1は、A1Oの平均付加モル数であり、食べこぼし汚れの洗浄性の点から、1.0以上であり、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.7以上が更に好ましい。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を衣料に塗布した後、詰め込み洗濯を行っても、衣料から汚れと共に洗浄液中に脱離しやすい点で、p1は3.0以下であり、2.8以下が好ましく、2.6以下がより好ましく、2.4以下が更に好ましい。また、(a)成分と(b)成分に対する相対的な(c)成分の必要量を少なくできる点、即ち、(a)成分の配合量と(b)成分の配合量の合計量と(c)成分の配合量との質量比(c)成分/〔(a)成分+(b)成分〕を、より小さくできる点で、p1は3.0以下であり、2.8以下が好ましく、2.6以下がより好ましく、2.4以下が更に好ましい。
【0016】
一般式(1)中のq1は、EOの平均付加モル数であり、詰め込み洗濯を行っても、衣料から汚れと共に洗浄液中に脱離しやすい点で、1.0以上であり、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.6以上が更に好ましい。また、(a)成分と(b)成分に対する相対的な(c)成分の必要量を少なくできる点、即ち、(a)成分の配合量と(b)成分の配合量の合計量と(c)成分の配合量との質量比(c)成分/〔(a)成分+(b)成分〕をより小さくできる点で、q1は1.0以上であり、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.6以上が更に好ましい。q1は、食べこぼし汚れの洗浄性の点から、3.0以下であり、2.8以下が好ましく、2.6以下がより好ましく、2.4以下が更に好ましい。
【0017】
また、一般式(1)中のMは、水素原子又は塩を形成する対イオンの陽イオンである。Mの好ましい例は、水素原子イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、及び炭素数1以上、6以下のアルカノールアンモニウムイオンが挙げられる。
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンが挙げられ、アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオンが挙げられ、炭素数1以上、6以下のアルカノールアンモニウムイオンとしては、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオンが挙げられる。これらの中では、洗浄力の点で、ナトリウムイオン、カリウムイオンのアルカリ金属イオン又はモノエタノールアンモニウムイオンが好ましく、モノエタノールアンモニウムイオンがより好ましい。
【0018】
<(b)成分>
本発明で用いられる(b)成分の非イオン界面活性剤は、下記一般式(2)で表される化合物である。
2−O−(A2O)p2−(EO)q2−H (2)
〔式中、R2は炭素数10以上、18以下の炭化水素基を示し、A2Oは、炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基を示し、p2は平均付加モル数で1.0以上、3.0以下の数であり、EOはエチレンオキシ基であり、q2は平均付加モル数で1.0以上、3.0以下の数を示す。−(A2O)p2−(EO)q2−は、この順にR2−Oとブロックで結合している。〕
【0019】
(b)成分の一般式(2)中、R2は炭素数10以上、18以下の炭化水素基である。R2は、洗浄力の点で炭素数12以上が好ましく、そして、16以下、更に14以下が好ましい。R2の炭化水素基としては、洗浄力の点から、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R2の炭化水素基としては、洗浄力の点から、直鎖の炭化水素基が好ましい。とりわけ直鎖の第1級アルキル基、直鎖の第1級アルケニル基が好ましく、とりわけ直鎖の第1級アルキル基が好ましい。
【0020】
一般式(2)中のA2Oである炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基としては、オキシトリメチレン基、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,2−ジイル基、オキシブタン−1,3−ジイル基、オキシブタン−2,3−ジイル基、オキシテトラメチレン基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。入手性の点から、オキシプロパン−1,2−ジイル基〔一般的にプロピレンオキシ基と呼ばれることもある。〕及びオキシブタン−1,2−ジイル基(一般的にブチレンオキシ基と呼ばれることもある。)から選ばれる1種以上の基が好ましく、オキシプロパン−1,2−ジイル基が更に好ましい。
【0021】
一般式(2)中の“−(A2O)p2−(EO)q2−”とは、1モルのR2O基に対して、炭素数3のアルキレンオキシ基及び炭素数4のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基(A2O)が平均でp2モル付加し、アルキレンオキシ基に対してエチレンオキシ基(EO)が平均でq2モル付加していることを表す。p2モルのアルキレンオキシ基とq2モルのエチレンオキシ基は、(A2O)p2、(EO)q2の順でR2−Oとブロックで結合している。ブロックで結合している構造を有することが、詰め込み洗濯条件下での、食べこぼし汚れに対する洗浄効果の点で好ましい。
【0022】
一般式(2)中のp2は、A2Oの平均付加モル数であり、食べこぼし汚れの洗浄性の点から、1.0以上であり、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.7以上が更に好ましい。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を衣料に塗布した後、詰め込み洗濯を行っても、衣料から汚れと共に洗浄液中に脱離しやすい点で、p2は3.0以下であり、2.8以下が好ましく、2.6以下がより好ましく、2.4以下が更に好ましい。
【0023】
一般式(2)中のq2は、EOの平均付加モル数であり、詰め込み洗濯を行っても、衣料から汚れと共に洗浄液中に脱離しやすい点で、1.0以上であり、1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.6以上が更に好ましい。q2は、食べこぼし汚れの洗浄性の点から、3.0以下であり、2.8以下が好ましく、2.6以下がより好ましく、2.4以下が更に好ましい。
【0024】
本発明では、(a)成分のp1と(b)成分のp2との比が、p1/p2で、0.8以上、1.2以下であることが、詰め込み洗濯条件下での食べこぼし汚れのより優れた洗浄性を有する点で、好ましい。p1/p2の比は、0.85以上が好ましく、0.90以上がより好ましく、0.95以上が更に好ましく、そして、1.15以下が好ましく、1.1以下がより好ましく、1.05以下が更に好ましい。
【0025】
また、本発明では、(a)成分のq1と(b)成分のq2との比が、q1/q2で、0.9以上、1.1以下であることが、詰め込み洗濯条件下での食べこぼし汚れのより優れた洗浄性を有する点で、好ましい。q1/q2の比は、0.95以上が好ましく、そして、1.05以下が好ましい。
【0026】
本発明では、p1とp2、及びq1とq2の値が近いことが、(a)成分と(b)成分が協働して、たべこぼし汚れの洗浄性を向上させる点でより好ましい。そのため、p1/p2の比が前記範囲にあり、且つq1/q2の比が前記範囲にあることが好ましい。
【0027】
(a)成分と(b)成分が、より協働して、たべこぼし汚れの洗浄性を向上させる点で、前記R1とR2が実質的に同じ炭化水素基、すなわち、同じ炭素数且つ同じ構造の炭化水素基であることが好ましい。
【0028】
<(c)成分>
(c)成分は、炭素数12以上、14以下の脂肪酸及びその塩から選ばれる化合物である。より具体的には、ラウリン酸及びミリスチン酸から選ばれる脂肪酸並びにその塩から選ばれる化合物である。詰め込み洗濯条件下での、食べこぼし汚れの洗浄性が優れる点で、(c)成分中、ラウリン酸及びその塩から選ばれる化合物が50質量%以上であることが好ましい。塩として使用する場合は、ナトリウム塩、カリウム塩、モノエタノールアミン塩であることが、洗浄性の点で好ましい。
【0029】
<(d)成分>
(d)成分は、炭素数3以上、9以下の炭化水素基を有する2価のアルコール〔以下、(d1)成分という〕、及び炭素数1以上、5以下の1価のアルコールに、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基が、2モル又は3モル付加した化合物〔以下、(d2)成分という〕から選ばれる1種以上の化合物である。
【0030】
(d)成分のうち、(d1)成分の炭素数3以上、9以下の炭化水素基を有する2価のアルコールとしては、詰め込み洗濯条件での、食べこぼし汚れの洗浄性の点から、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール及び1,9−ノナンジオールから選ばれる化合物が好ましい。
【0031】
また、(d)成分のうち、(d2)成分の炭素数1以上、5以下の1価のアルコールに、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基が、2モル又は3モル付加した化合物としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0032】
本発明では、(d)成分として、(d1)成分及び(d2)成分の両方を配合することが好ましい。その場合、(d1)成分と(d2)成分を含む(d)成分がより少ない配合量で本発明の目的を達成できる点から、(d2)/(d1)の質量比は、5以上、更に10以上が好ましく、そして、50以下、更に30以下が好ましい。
【0033】
<水>
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、5℃〜40℃における状態を液体状態とする為に、水を含有する。水は脱イオン水(イオン交換水とも言う場合もある)や次亜塩素酸ソーダをイオン交換水に対して1mg/kg以上、5mg/kg以下、添加した水を使用することが出来る。
【0034】
<衣料用液体洗浄剤組成物>
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び水を配合してなる。本発明において「配合してなる」とは、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び水だけでなく、必要に応じて任意の成分を配合できることを意味する。本発明において、「(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び水を配合してなる」とは、前記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び水を含む成分を配合してなることも意味する。以下、質量%は、特記しない限り、全配合原料の合計質量を基準とするものである。また、各成分についての配合量は、組成物中の含有量として読み替えることができる。
【0035】
本発明の本発明の衣料用液体洗浄剤組成物では、水の配合量が8質量%超、50質量%以下である。水の配合量が、8質量%超であると、衣料用液体洗浄剤組成物を、衣料に付着した食べこぼし汚れに塗布した後、詰め込み洗濯をした場合に、汚れを洗浄浴中に分散させやすくなる。詰め込み洗濯時の食べこぼし汚れの洗浄性の向上の点で、水の配合量は、10質量%以上が好ましい。食べこぼし汚れの洗浄性の点から、水の配合量は50質量%以下であり、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより更に好ましい。
【0036】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物では、(a)成分の配合量と(b)成分の配合量との質量比が、(b)成分/(a)成分で、0.02以上、0.5以下である。衣料に付着した食べこぼし汚れに塗布する使用方法での洗浄性を高める点で、(b)成分/(a)成分の質量比は、0.05以上が好ましく、0.08以上が好ましく、0.09以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.15以上が更に好ましい。保存安定性の点で、(b)成分/(a)成分の質量比は、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましく、0.18以下がより更に好ましい。
【0037】
(c)成分は、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を、衣料に付着した食べこぼし汚れに塗布した後、詰め込み洗濯をした場合に、食べこぼし汚れの洗浄性を高めるために用いても良い。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物では、(a)成分の配合量と(b)成分の配合量の合計量と、(c)成分の配合量との質量比は、(c)成分/〔(a)成分+(b)成分〕で、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.09以上が更に好ましく、0.1以上がより更に好ましい。コストの点から、(c)成分/〔(a)成分+(b)成分〕の質量比は、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.25以下が更に好ましく、0.2以下がより更に好ましい。
【0038】
(d)成分は、詰め込み洗濯時に、食べこぼし汚れが付着した衣料に、衣料用洗浄剤組成物を塗布して洗浄する際に、衣料から汚れを洗浄液中に分散させることで洗浄性を高める働きを有すると考えている。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物では、(a)成分の配合量と(b)成分の配合量と(c)成分の配合量の合計量と、(d)成分の配合量の比が、(d)成分/〔(a)成分+(b)成分+(c)成分〕で、0.3以上、0.8以下である。(d)成分/〔(a)成分+(b)成分+(c)成分〕の質量比は、塗布して洗浄する際の洗浄性向上の点から、0.4以上が好ましい。コストの点から、0.7以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
【0039】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物では、上記質量比を満たした上で、(a)成分の配合量と(b)成分の配合量と(c)成分の配合量の合計配合量は、20質量%以上、更に30質量%以上、そして、40質量%以下、更に35質量%以下の範囲から選択されることが好ましい。
【0040】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物では、上記質量比を満たした上で、(a)成分の配合量は、15質量%以上、更に20質量%以上、そして、40質量%以下、更に30質量%以下の範囲から選択されることが好ましい。
【0041】
本発明の液体洗浄剤組成物には、上記必須成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、(c)成分以外の高級脂肪酸、(d)成分以外の溶剤、キレート剤、再汚染防止剤として、例えばポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース等、乳濁剤として、例えばポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルスチレン重合体、ポリスチレンなどを配合する事ができる。更にpHを調整するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン、硫酸、塩酸等を使用できる。また、増粘剤、漂白剤、酵素、防腐剤などを配合することもできる。更に、洗浄力などを更に向上させるために(a)成分以外の陰イオン界面活性剤、(b)成分以外の非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤など、他の界面活性剤を配合することもできる。
【0042】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、塗布型の組成物として好適である。塗布型とは、衣料に直接塗布して洗浄に供する洗浄方法に使用されることを意味する。本発明は、衣料用塗布型洗浄剤組成物を提供する。また、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、浴比が3以上、15以下である洗浄方法に使用されることが好ましい。ここで、浴比は、衣料の質量と水と本発明の衣料用液体洗浄剤組成物とを含有する洗浄液の容量との比であり、洗浄液の容量(リットル)/衣料の質量(kg)で定義される。
【0043】
本発明により、水と、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物0.01質量%以上、0.1質量%以下とを含有する、温度が0℃以上、35℃以下の洗浄液で、衣料の質量と前記洗浄液の量(リットル)の比で表される浴比が、洗浄液の量(リットル)/衣料の質量(kg)=3以上、好ましくは5以上、そして、15以下、好ましくは13以下の条件で、衣料を1分間以上、7分間以下洗浄する、衣料の洗浄方法が提供される。なお、洗浄液は、水と本発明の組成物が混合し含有したものでもよいし、前記のように本発明の組成物を衣料に塗布し、該衣料を水と混合することで調製されたものでもよい。
【実施例】
【0044】
下記の(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び水を用いて表1に記載の衣料用液体洗浄剤組成物を調製した。なお、モノエタノールアミンをpH調整剤として使用した。また、表中では、(b’)成分を(b)成分として質量比等を示した。
【0045】
〔(a)成分〕
(a−1):一般式(1)において、R1がラウリル基とミリスチル基とを、ラウリル基/ミリスチル基の質量比が7/3で混合したアルキル基であり、A1Oがプロピレンオキシ基であり、p1が2.0の数であり、q1が2.0の数であり、Mがモノエタノールアンモニウムイオンである化合物。
【0046】
〔(b)成分〕
(b−1):一般式(2)において、R2がラウリル基とミリスチル基とを、ラウリル基/ミリスチル基の質量比が7/3で混合したアルキル基であり、A2Oがプロピレンオキシ基であり、p2が2.0の数であり、q2が2.0の数である化合物。
【0047】
〔(b’)成分:比較化合物〕
(b’−1):一般式(2)において、R2がラウリル基とミリスチル基とを、ラウリル基/ミリスチル基の質量比が7/3で混合したアルキル基であり、A2Oがプロピレンオキシ基であり、p2が2.0の数であり、q2が10の数である化合物。
【0048】
〔(c)成分〕
(c−1):ラウリン酸とミリスチン酸が質量比で、ラウリン酸/ミリスチン酸=60/40で混合された混合脂肪酸
【0049】
〔(d)成分〕
(d1−1):プロピレングリコール
(d2−1):ジエチレングリコールモノブチルエーテル
【0050】
〔水〕:イオン交換水
【0051】
・ミートソース汚染布の調製
市販のレトルトミートソース〔日清フーズ(株)製 マ・マー つけスパゲッティ用ミートピリ辛ソース〕を木綿メリヤス布(谷頭商店製)に0.15g塗布し、均一に塗り広げて25℃、45%RHの環境下で12時間乾燥させたものを試験に供した。
【0052】
<洗浄評価方法>
(1)洗浄力の評価
評価用液体洗浄剤組成物を、上記で作製したミートソース汚染布(6cm×6cm)5枚に、それぞれ67μL直接塗り、その状態で5分間静置したのち、1Lの水道水に入れてターゴトメーター(Ueshima, MS-8212)にて85rpmで洗浄した。洗浄条件は洗浄時間10分、洗浄時洗剤組成物濃度0.033質量%、水温は20℃であり、浴比は12(木綿2003(谷頭商店製)を6cm×6cmに裁断した布で調整)であり、洗浄後、水道水(20℃)で3分間すすいだ。
【0053】
汚染前の原布、及び洗浄前後の550nmにおける反射率を測色色差計(日本電色株式会社製 Z−300A)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた(表中の値は5枚の洗浄率の平均値)。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(原布の反射率−洗浄前の反射率)]
【0054】
【表1】