(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184298
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】印刷機においてシートをフィルムでコーティングする方法
(51)【国際特許分類】
B41M 7/02 20060101AFI20170814BHJP
B41M 1/24 20060101ALI20170814BHJP
B29C 39/14 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
B41M7/02
B41M1/24
B29C39/14
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-230898(P2013-230898)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-94562(P2014-94562A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】10 2012 021 819.2
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヴェーバー
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−223313(JP,A)
【文献】
特開平06−344439(JP,A)
【文献】
特開平08−224796(JP,A)
【文献】
特開2009−226917(JP,A)
【文献】
特開平09−193302(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0002255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 7/02
B29C 39/14
B41M 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機においてシート(10)をフィルム(8)でコーティングする方法であって、
第1のステップで、液状のフィルム(8)を第1の胴(2)上に形成し、
第2のステップで、フォイルウェブ(9)を前記フィルム(8)に押し付け、これにより前記フィルム(8)の表面を成形し、同時に前記フィルム(8)を照射により固化し、
第3のステップで、固化された状態の前記フィルム(8)を前記第1の胴(2)から、第2の胴(1)により搬送されるシート(10)に転写させる、
ことを特徴とする、印刷機においてシート(10)をフィルム(8)でコーティングする方法。
【請求項2】
前記第1の胴(2)として、ゴムブランケット胴(2)を用いる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1のステップで、前記フィルム(8)を、アニロックスローラ(3)を用いて、前記第1の胴(2)に塗布する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
第2のステップで、フォイルウェブ(9)のレリーフを前記フィルム(8)に型取りして、前記フィルム(8)に構造(13)を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記構造(13)は、ホログラム構造である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第3のステップで、前記フィルム(8)を、前記構造(13)でシート(10)に向けて、該シート(10)に転写させる、請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
第3のステップで、シート(10)を、前記第2の胴(1)のグリッパ(12)に挟み込んで保持する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記第1の胴(2)と前記第2の胴(1)とが相互に転動する際に、前記グリッパ(12)は、一時的に前記第1の胴(2)の胴溝(11)に進入し、前記第1の胴(2)が引き続き回転する間に、前記胴溝(11)は、前記フォイルウェブ(9)を通過し、その際、前記フォイルウェブ(9)は、前記第1の胴(2)と巻掛け接触する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第3のステップで、前記フィルム(8)を、該フィルム(8)のまえに前記シート(10)に塗布される接着剤(7)を用いて、前記シート(10)に接着する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第2のステップで、前記フォイルウェブ(9)を通って前記フィルム(8)に照射を行い、これにより前記フィルム(8)を固化させる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
第2のステップで、前記フィルム(8)にUV光線を照射し、これにより前記フィルム(8)を固化させる、請求項1又は10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機においてシートをフィルムでコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷製品の表面加工(高品質化のための表面仕上げ加工)はその重要度がますます増している。印刷製品は、様々な方式で表面加工することができる。
【0003】
米国特許第8100160号明細書において、例えばフィルム転写装置が記載されている。このフィルム転写装置は、接着剤を塗布するユニットと印刷シートにフィルムを塗布するユニットとを備える。
【0004】
米国特許第8105455号明細書において、印刷機が記載されている。この印刷機は、組み込まれた転写ユニットを備える印刷ユニットを有する。それにもかかわらず印刷ユニットは、印刷に使用することができる。
【0005】
米国特許第8136563号明細書において、フィルム転写装置が記載されている。このフィルム転写装置は、カセットとして構成されている。フィルム転写装置が使用されないときには、カセットは、印刷ユニットから取り外される。
【0006】
米国特許第8156982号明細書において、フィルム転写ユニットが記載されている。このフィルム転写ユニットでは、複数のフィルムウェブが設けられている。
【0007】
前述の装置では、既製のフィルムウェブが使用される。
【0008】
これに対して独国特許出願公開第10022939号明細書において、フィルムを先ず印刷機内で形成する方法が記載されている。この方法では、ワニスが転写ドラムに塗布され、転写ドラム上でUV照射器により硬化させられる。硬化させられたワニスフィルムに接着剤が塗布されて、これによりワニス・接着剤・複合フィルムが形成される。複合フィルムは、転写ローラから印刷シートに転写させられる。
【0009】
UV硬化性のワニスは、独国特許公開102008028949号明細書においても使用される。そこでは、ワニスは、シートに塗布され、そのあとでフィルムがエンボス加工されたパターンで、塗布されたワニスにプレスされる。これにより、このパターンは、フィルムからワニスに転写させられる。UV照射器により、透明のフィルムを通して、ワニスが硬化させられる。ワニスにエンボス加工されるパターンは、例えばホログラムであってよい。
【0010】
ホログラムを表面レリーフ構造として支持する母型を用いた型取り方法が、独国特許出願公開第4132476号明細書にも記載されている。この場合、母型は、印刷胴上に配置されている。印刷胴の内側にUV光源が配置されており、UV光源により、ワニスが硬化させられる。このために印刷胴及び母型は、UV光線透過性に構成されている。この型取り方法は、ウェブ状の被印刷物にとって適切である。被印刷物上に形成されるエンボス構造のレリーフは、外向きに、被印刷物から離れる方に向いている。したがってレリーフは、特に汚染及び摩耗に対して影響を受けやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第8100160号明細書
【特許文献2】米国特許第8105455号明細書
【特許文献3】米国特許第8136563号明細書
【特許文献4】米国特許第8156982号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10022939号明細書
【特許文献6】独国特許公開102008028949号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第4132476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、背景技術の欠点を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題を解決するための本発明による方法によれば、印刷機においてシートをフィルムでコーティングする方法であって、第1のステップで、液状のフィルムを第1の胴上に形成し、第2のステップで、フォイルウェブをフィルムに押し付け、これによりフィルムの表面を成形し、同時にフィルムを照射により固化し、第3のステップで、固化された状態のフィルムを第1の胴から、第2の胴により搬送されるシートに転写させる。
【0014】
好適には、第1の胴として、ゴムブランケット胴を用いる。
【0015】
好適には、第1のステップで、フィルムを、アニロックスローラを用いて、第1の胴に塗布する。
【0016】
好適には、第2のステップで、フォイルウェブのレリーフをフィルムに型取りして、フィルムに構造を形成する。
【0017】
好適には、構造は、ホログラム構造である。
【0018】
好適には、第3のステップで、フィルムを、構造でシートに向けて、シートに転写させる。
【0019】
好適には、第3のステップで、シートを、第2の胴のグリッパに挟み込んで保持する。
【0020】
好適には、第1の胴と第2の胴とが相互に転動する際に、グリッパは、一時的に第1の胴の胴溝に進入し、第1の胴が引き続き回転する間に、胴溝は、フォイルウェブを通過し、その際、フォイルウェブは、第1の胴と巻掛け接触する。
【0021】
好適には、第3のステップで、フィルムを、フィルムのまえにシートに塗布される接着剤を用いて、シートに接着する。
【0022】
好適には、第2のステップで、フォイルウェブを通ってフィルムに照射を行い、これによりフィルムを固化させる。
【0023】
好適には、第2のステップで、フィルムにUV光線を照射し、これによりフィルムを固化させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の方法によれば、第1のステップで、コーティング液が第1の胴に塗布され、コーティング液は、胴上でフィルムを形成する。コーティング液は、ワニス、例えばクリアラッカであってよい。好適には、コーティング液は透明である。これに続く第2のステップで、例えば金属又はプラスチックから成るほぼ帯状のフォイルと、第1の胴に塗布された液体フィルムとが相互に接触させられ、これによりフィルムの表面は、例えば平滑化されるか又は構造化される。接触中、成形された表面は、フィルムを固化して、これにより表面の形状を持続的に安定させるために、目的に合わせて照射される。その後に続く第3のステップで、固化されたフィルムは、第1の胴からシートに転写させられる。このことは、第1の胴と第2の胴とが協働して形成する胴ニップにおいてプレスしながら行われる。
【0025】
従属請求項には、本発明に係る方法の好適な改良態様が記載されている。
【0026】
1つの改良態様では、第1の胴として、ゴムブランケット胴を用いる。この場合、第1の胴と第2の胴とが協働して形成する胴ニップは、いわゆるソフトドラムニップである。
【0027】
別の1つの改良態様では、第1のステップで、フィルムを、アニロックスローラを用いて、第1の胴に塗布する。アニロックスローラにより、液体の正確な調量を行うことができ、この液体は、第1の胴に塗布されたあとで、第1の胴上にフィルムを形成する。
【0028】
別の1つの改良態様では、第2のステップで、レリーフをフォイルウェブからフィルムに型取りし、その際、フィルムに構造を形成する。フィルムに形成される構造は、フォイルウェブのレリーフのネガ型である。この構造は、ホログラム構造であってよい。
【0029】
別の1つの改良態様では、第3のステップで、フィルムを、構造がシートに向くように、シートに転写させる。したがって、転写したあとでフィルムがシートと協働して形成する多層のサンドイッチ構造の場合、フォイルウェブにより加工されるか又は成形されるフィルムの表面は、シートに向けられる。フィルムが第1の胴上に載せられた、フィルムの別の表面は、フィルムとシートとが結合されたあとで、外側に向けられて、サンドイッチ構造の外観面を形成する。
【0030】
別の1つの改良態様では、第3のステップで、シートを、第2の胴のグリッパに挟み込んで保持する。グリッパは、シートを前縁で保持する。クランプグリッパの代わりにサクショングリッパを使用することが考えられる。
【0031】
別の改良態様では、第1の胴と第2の胴とが相互に転動する際に、グリッパは、一時的に第1の胴の胴溝に進入し、第1の胴が引き続き回転する間に、胴溝は、フォイルウェブを通過し、その際、フォイルウェブは、第1の胴と巻掛け接触する。サクショングリッパを用いる場合又は第2の胴の周線から突出しないクランプグリッパの場合、場合によっては、胴溝を省くことができる。
【0032】
別の改良態様では、第3のステップで、フィルムを、フィルムのまえにシートに塗布される接着剤を用いて、シートに接着する。接着剤として、同様にワニスを用いてもよい。接着剤は、UV硬化性であってよく、この場合、フィルムとシートとを相互に接合したあとで、その間に位置する接着剤をUV照射により硬化させることができる。接着剤は、好適には、フィルムとは異なる材料である。
【0033】
別の改良態様では、第2のステップで、フォイルウェブを通ってフィルムに照射を行い、これによりフィルムを固化させるか又は硬化させる。この場合好適には、第2のステップで、フィルムにUV光線を照射し、これによりフィルムを硬化させる。この場合、フィルムウェブは、UV光線を通過させる透明のプラスチックから成っていてよい。
【0034】
構造的かつ機能的な別の好適な改良態様は、後続の実施の形態の説明及び付属の図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】シートをフィルムでコーティングする装置を備える表面加工ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の実施の形態を、図示の態様を用いて詳説する。
【0037】
図面には、枚葉オフセット印刷用の印刷機の一部が示されている。この部分は、オフセット印刷ユニットに並んで設けられている、印刷機の表面加工ユニット15を示している。表面加工ユニット15は、シート10を搬送するためのグリッパ12を有する圧胴1を備える。圧胴1は、胴溝11を備える転写胴又はゴムブランケット胴2と協働する。胴の回転ごとに、グリッパ12は、一時的に胴溝11に進入する。アニロックスローラ3とチャンバドクタ4とが協働して、ゴムブランケット胴2にUV硬化性のワニスを塗布するための供給装置を形成する。供給装置は、胴1,2の加圧ニップの出口に後置されている。エンドレスであってよく、繰出し及び巻取り可能であるフォイルウェブ9が、供給装置に後置されている。フォイルウェブ9は、供給装置により塗布されるワニスフィルム8にパターン、ホログラム又はこれらに類するものをエンボス加工又は型取りするためのレリーフを有し、したがって母型として働く。フォイルウェブ9は、2本の押圧ローラ5aを介して案内され、これらの押圧ローラ5aにより、巻掛け区分の内側でゴムブランケット胴2に押し付けられる。この場合、フォイルウェブ9のレリーフは、ゴムブランケット胴2に塗布されたワニスフィルム8にプレスされ、これにより、ワニスフィルムは、型取り構造又はエンボス構造を受け取る。その際、フォイルウェブ9は、圧胴1の周速にほぼ一致する同期速度で走行するので、ワニスフィルムとフォイルウェブとの間に速度差は生じない。巻掛け区分の領域においてUV照射器6又はUV乾燥器が配置されており、UV照射器6又はUV乾燥器は、フォイルウェブ9を通して、エンボス構造を硬化させるか又は定着させる。このために、フォイルウェブ9は、UV光線透過性の材料から成っている。ゴムブランケット胴2が引き続き回動している間に、ワニス層8は、エンボス加工により構造化された構造面13で外向きに、胴1,2の加圧ニップの入口に向かって搬送される。そこにはシート10も搬送される。シート10の外向きの面には、接着剤7が被覆されている。シート10を接着剤7で被覆する働きは、表面加工ユニット15に前置された塗布ユニット、例えば被覆のために改変された、図示されていない印刷ユニット又ニス引きユニットが担う。エンボス加工のあとで、構造面13は外向きに、つまり接近してくるシート10に向いている。ワニスフィルム8は、平滑面14で、転写胴又はゴムブランケット胴2上に載っている。加圧ニップにおいて、ワニスフィルム8は、シート10に転着もしくは転写させられ、その際、構造面13が接着剤7にプレスされる。ワニスフィルム8が構造面13でシート10に接着されることにより、特に安定した結合が得られる。さらにこのことにより、表面加工が仕上がったシート10で、ワニスフィルム8の平滑面14が外向きになる。この平滑面14は、接触による破損及び汚染に対して影響を受けにくい。影響を受けやすい構造面13は、内側を向いていて、したがって保護されている。
【0038】
仮想線により、フィルムウェブ9及び押圧ローラは、ゴムブランケット胴2から引っ込められた受動位置で示されている。この受動位置では、押圧ローラは符号5bで表されている。フォイルウェブ9は、もはやゴムブランケット胴2に巻き掛けられず、ゴムブランケット2に対して間隔を置いて設置されている。押圧ローラは、選択的に能動位置5aと受動位置5bとに切換可能であり、エンボス加工されたワニスフィルムによりシートを表面加工する必要がない場合に受動位置5bを占める。
【0039】
転写胴又はゴムブランケット胴2を介して非直接的に行われる、シート10へのフォイルウェブ9のエンボス構造の転写の利点は、フォイルウェブ9が、直接的に、グリッパ12を備える圧胴1と協働しないことにある。フォイルウェブ9は、その代わりに、直接的にゴムブランケット胴2と協働する。しかもゴムブランケット胴2はグリッパを備えないので、グリッパによるフォイルウェブ9の破損は排除されている。同様に、フォイルウェブ9に対する、圧胴1に搬送されるシート10の衝突による、フォイルウェブ9の破損も排除されている。
【0040】
第1の胴とも呼称されるゴムブランケット胴2のゴム周面は、耐UV性のプラスチックから成るべきである。第1の胴2が硬質の、例えば金属製の周表面を有し、第2の胴とも呼称される圧胴1が軟質の、例えばゴム又はプラスチックから成る弾性的な周表面を有する変化態様も考えられる。
【符号の説明】
【0041】
1 圧胴
2 ゴムブランケット胴
3 アニロックスローラ
4 チャンバドクタ
5a 押圧ローラ
5b 押圧ローラ
6 UV照射器
7 接着剤
8 ワニスフィルム
9 フォイルウェブ
10 シート
11 胴溝
12 グリッパ
13 構造面
14 平滑面
15 表面加工ユニット