(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、形材自身の断面寸法にばらつきがあるため、送り出された気密材の先端位置が形材のポケットに正確に一致しないことがあり、ポケットの入口端部にて気密材がひっかかるなど、挿入不良を生じさせる可能性があった。このため、従来の気密材挿入機では、新たな形材を設置する度に、形材に対する機密材案内部材の位置を調整するなど、気密材の送り出し位置を正確に一致させる必要があり、作業に手間がかかるという問題があった。
また、気密材として弾性材料が多用され、弾性変形し易いことから、入口端部にひっかかった機密材は、さらに送り出されることで、挿入されずにそのまま変形してしまうことが多い。従って、多少無理をすれば挿入できるといったものではなく、このことが、機密材の挿入を余計に難しくしていた。
【0005】
本発明の目的は、押出形材のポケットに気密材等の建具用線材を確実に挿入できる建具用線材の挿入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具用線材の挿入装置は、形材の長手方向に形成された溝状のポケットに線材を挿入する建具用線材の挿入装置であって、前記形材に前記線材を送る送り装置と、送られる前記線材を前記形材の前記ポケットに案内するガイド部材と、前記ガイド部材を支持する支持機構とを備え、前記支持機構は、前記ガイド部材を前記線材の送り方向に対して交差する方向に変位させ、かつ所定の基準位置に復帰させるように支持可能な弾性部材を有する。
【0007】
本発明によれば、挿入装置が備える支持機構により、線材を案内するガイド部材が弾性部材によって容易に変位可能に支持される。このため、形材の断面寸法の誤差によって当該形材とガイド部材とが位置ずれしていても、形材の端面部分に当たった線材への反力等でガイド部材が容易に変位し、線材の送り方向に倣うように互いの位置関係を修正でき、線材を形材のポケットに確実に挿入できる。
【0008】
本発明の建具用線材の挿入装置において、前記送り方向に沿って上流側から前記送り装置、前記ガイド部材、前記形材の順に設置されてなることが好ましい。
本発明によれば、挿入装置における線材の出口端部側とガイド部材における線材の入口端部側とが対向し、また、ガイド部材における線材の出口端部側と形材のポケットにおける線材の入口端部側とが対向する。従って、反力等によるガイド部材の変位の際には、ガイド部材の入口端部と送り装置の出口端部との位置も変位することになるが、ガイド装置を介することによって、送り装置の出口端部からポケットの入口端部とにわたって、線材を引っ掛かることなく円滑に送ることができる。
【0009】
本発明の建具用線材の挿入装置において、前記支持機構は、前記ガイド部材をそれぞれ異なる方向から支持する第1支持手段および第2支持手段を含み、前記第1支持手段による支持方向と、前記第2支持手段による支持方向と、前記送り方向とは互いに直交していることが好ましい。
この際、例えば、前記送り方向は水平方向であり、前記ガイド部材は、水平方向の両側および下方から前記弾性部材で支持されてもよく、前記送り方向は鉛直方向であり、前記ガイド部材は、水平方向の四方から前記弾性部材で支持されていてもよい。
本発明によれば、線材を水平方向に送る場合に好適な挿入装置や、線材を鉛直方向に送る場合に好適な挿入装置を提供できる。
【0010】
本発明の建具用線材の挿入装置において、前記第1支持手段は、前記送り方向に沿って間隔を空けて配置された少なくとも2箇所の前記弾性部材で支持されることが好ましい。
本発明の建具用線材の挿入装置において、前記第2支持手段は、前記送り方向に沿って間隔を空けて配置された少なくとも2箇所の前記弾性部材で支持されることが好ましい。
本発明によれば、ガイド部材を形材の送り方向に沿った2箇所の第1支持手段や2箇所の第2支持手段で支持するので、ガイド部材の出口端部側が形材の断面寸法の誤差との関係で位置ずれし、このずれを修正するためにガイド部材の出口端部側が変位するにあたっては、入口端部側が同じ量だけ同様に変位するのを抑制できる。従って、入口端部側で挿入されている線材への負担を軽減して、線材の挿入をスムーズにできたり、出口端部側での変位が入口端部側で挿入されている線材からの反力によって阻害されたりするのを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[挿入装置の概略]
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、挿入装置10は、建具用線材としての合成樹脂製のAT(Air Tight)材9を、建具としての図示しないサッシ窓を構成するアルミ製の押出形材(以下、形材と略す)8に挿入する装置であり、適宜な躯体構造を有する架台11と、架台11の上部に設置された装置本体12とを備えている。
【0013】
[形材およびAT材]
ここで、形材8およびAT材9について、
図6に基づき説明しておく。なお、以下の説明で上下左右とあるのは、形材8およびAT材9が
図6に図示した向きにある場合を基準にしており、下向きの方向が重力の作用する方向である。形材8およびAT材9の使用される向きによっては、その位置や方向が変更されることは勿論である。また、形材8およびAT材9の断面形状は、
図6に示すものに限定されず、建具の形態に応じて適宜決められる。
【0014】
図6において、形材8の断面形状としては、水平な中央部80と、中央部80の右端から該中央部80に対して上方に延出した第1鉛直片部81と、中央部80の左端から該中央部80に対して上方および下方に延出した第2鉛直片部82および垂下片部83とを有している。このうち、第2鉛直片部82の上端には、上方に向けて開口した断面C形状のポケット84が設けられている。ポケット84は、上方の開口と、この開口より下の溝部とからなり、開口の左右寸法に対し溝部の左右寸法が大きいことで、断面C形状を呈する。なお、ポケット84は形材8の長手方向に連続する溝部でもある。このような形材8は、各部が図示した向きとなるように、挿入装置10に設置される。
【0015】
一方のAT材9の断面形状は、形材8のポケット84に挿入される断面逆T形状の挿入部91と、挿入部91から上方に延びて設けられた基部92と、基部92の右端から図中斜め左上方に延出したヒレ93とを有し、弾性部材として構成されている。弾性部材を形成する材料は、合成ゴムや熱可塑性エラストマーなどである。形材8がサッシ窓の窓枠用の枠材として使用される場合に、窓枠に取り付けたAT材9のヒレ93が窓枠に嵌め込まれた障子の框材に当接して弾性変形し、その際の弾性力により框材との当接状態が維持されることで、窓枠と障子との間の気密性能あるいは水密性能が確保される。
【0016】
[挿入装置の装置本体]
図1に戻り、挿入装置10の装置本体12は、AT材9の送り方向の上流から下流に向けて順に配置された送り装置20、ガイド装置30、第1かしめ装置50、および第2かしめ装置60を備える。第1、第2かしめ装置50,60の間には、間隔を空けて配置された一対の形材設置部材70が設けられている。装置本体12には、架台11の端部に設けられたプレート13の図示しない供給孔を通してAT材9が供給される。
【0017】
[送り装置]
図2、
図3に示すように、送り装置20は、供給孔からのAT材9を下流のガイド装置30に送る装置であって、AT材9が通される通し溝21Aが設けられ、かつAT材9の送り方向に沿って所定長さに設けられたガイド部21を有する。通し溝21Aの上流側の入口端部には、プレート13(
図1)に向かって左右寸法が漸次拡開した拡開部21Bが設けられ、AT材9を通し溝21Aに引き込み易くしている。
【0018】
ガイド部21の長手方向の中間には、通し溝21Aを挟むようにして一対の円板状の送りローラ22,22が位置している。なお、それらの送りローラ22,22は、同一水平面内に位置するようにしている。送りローラ22は、2個の送りローラ22,22を一組として、上流と下流とに離間して二組設けられている。ガイド部21には、送りローラ22の平面形状に対応した凹部21Cが設けられ、凹部21C内に送りローラ22が回転可能に配置されている。凹部21Cは通し溝21Aに開口しており、凹部21C内に配置された送りローラ22の一部が通し溝21Aに出現していることで、送りローラ22がAT材9に直接接触できる。
【0019】
送りローラ22は、鉛直な回転軸23の上部側に取り付けられている。回転軸23は、ガイド部21の下方に位置した支持プレート24で支持されている。支持プレート24から下方に突出した回転軸23の部分には、従動ギア25が取り付けられている。通し溝21Aに対して一方側に配置された上流および下流の各従動ギア25には、その間に設けられた駆動ギア26が噛合している。駆動ギア26は、回転軸27を介して駆動モータ28によって駆動される。駆動モータ28は、架台11の天板11Aの下面に固定されている。このような駆動ギア26、回転軸27、および駆動モータ28は、通し溝21Aに対して他方側にも配置され、当該他方側に設けられた各送りローラ22を駆動する。
【0020】
このような送り装置20では、通し溝21Aを挟んで位置した送りローラ22により、通し溝21A内にあるAT材9の鉛直部91A(
図6参照)が挟持され、回転する送りローラ22によってAT材9がガイド装置30に送られる。つまり、それらの送りローラ22,22の回転によって、送りローラ22,22より上流側では、AT材9が供給孔から送りローラ22,22に向けて引き込まれ、送りローラ22,22より下流側では、AT材9がガイド装置30に向けて押出されて供給される。
【0021】
[ガイド装置]
ガイド装置30は、
図2、
図3に示すように、一対の支柱部材31,31により所定の高さ位置に配置されたホルダ32と、ホルダ32内に配置されたガイド部材としてのガイドブロック33と、ガイドブロック33をホルダ32に対して支持させる支持機構40とを備えている。この際、支柱部材31は、架台11の天板11Aの上面に螺合により立設されている。
【0022】
ホルダ32は、平面視で矩形状とされたベースプレート34と、ベースプレート34の長辺側の両側面にボルト35A(
図4)により固定されたサイドプレート35とを有し、ベースプレート34の下面にボルト36A(
図5)にて固定された締結クランプ36を介して支柱部材31の上部に取り付けられている。このホルダ32は、AT材9の送り方向の上流側および下流側の各端部が開放し、かつ上方にも開放した断面凹状に形成されている(
図4参照)。なお、ホルダ32の長手方向とAT材9の送り方向とは同一方向である。直方体状とされたガイドブロック33でも同様である。
【0023】
ガイドブロック33は、ガイド部21と略同じ幅寸法を有するとともに、ホルダ32よりも大きい長さ寸法を有し、上流側の端部がホルダ32の端部と面一とされ、下流側の端部がホルダ32よりも形材8側に突出して配置されている。ガイドブロック33の上流側の入口端部は、ガイド部21の下流側の出口端部と僅かな隙間を介して近接対向し、ガイドブロック33の下流側の出口端部は、位置決め部材14に当接されることで位置決めされる形材8の上流側の入口端部に対し、僅かな隙間を介して近接対向する。
【0024】
ガイドブロック33には、
図4にも示すように、ガイド部21の通し溝21Aの延長上に位置するガイド溝33Aが設けられている。ガイド溝33Aの延長上には、形材8のポケット84が位置する。AT材9は、通し溝21Aを通り、ガイド溝33Aを通った後、形材8のポケット84に挿入されるため、これらの断面形状はポケット84の断面C形状と同様な形状をしている。ガイド溝33Aの上流側の入口端部には、ガイド部21に向かって左右寸法が漸次拡開した拡開部33Bが設けられ、ガイド部21から送られたAT材9をガイド溝33Aに引き込み易くしている。ガイド溝33Aの拡開部33Bから引き込まれたAT材9は、ガイド溝33Aの下流の出口端部から形材8のポケット84の入口端部に送り出される。引き続きAT材9を送り出すことで、AT材9はガイドブロック33のガイド溝33Aでガイドされながら、形材8のポケット84に挿入される。
【0025】
このような本実施形態のガイドブロック33は、
図4に示すように、ガイド溝33Aの加工性を考慮し、ガイド溝33A部分で接合された第1部材37および第2部材38によって構成されている。
【0026】
以下、ガイド装置30の支持機構40について説明する。
図2ないし
図5において、支持機構40は、ガイドブロック33を下方から支持する第1支持手段41と、ガイドブロック33を左右両側から支持する第2支持手段42とを備えて構成されている。第1、第2支持手段41,42によりガイドブロック33は、AT材9の送り方向に対して直交する3方向から支持される。なお、本実施形態では、第1、第2支持手段41,42の支持方向も互いに直交している。つまり、第1支持手段41は、
図5においてガイドブロック33の上下方向の変位に対する支持を行うのに対し、第2支持手段42はガイドブロック33の左右方向の変位に対する支持を行う。
【0027】
第1支持手段41は、ガイドブロック33とホルダ32のベースプレート34との間に介装され、かつ送り方向に離間して配置された一対のコイルバネ43,43を備えて構成されている。このため、ガイドブロック33の下面およびベースプレート34の上面において、それらの幅方向の中央にはそれぞれ、コイルバネ43が設置される断面凹状の受座33C,34Cが設けられている。コイルバネ43は圧縮バネとして機能し、ガイドブロック33をその重量に抗して上方へ付勢している。
【0028】
第2支持手段42は、ガイドブロック33の長手方向(AT材9の送り方向と同じ)に沿った両側面において、ホルダ32のサイドプレート35に設けられた貫通孔35Bを貫通し、かつ送り方向に離間して螺合された一対のボルト44,44と、サイドプレート35の外方にてボルト44に螺合されたナット45およびサイドプレート35間に配置されたコイルバネ46とを備えて構成されている。コイルバネ46は圧縮バネとして機能し、ボルト44に挿通された状態でガイドブロック33をボルト44の頭部側へ付勢している。なお、コイルバネに限らず、弾性変形を行うものであればよく、合成樹脂製の弾性部材や、皿バネを使用することもできる。
【0029】
ここで、ボルト44の螺合端側には、ボルト44がガイドブロック33から緩むのを防止するロックナット47が螺設され、ボルト44におけるナット45の外方側には、当該ナット45が緩むのを防止するロックナット48が螺設されている。ボルト44が貫通するサイドプレート35の貫通孔35Bの孔径は、ボルト44の外周と干渉しないようボルト44の外径よりも大きく、コイルバネ46が入り込まないようコイルバネ46の外径よりも小さい。また、ボルト44は、ガイドブロック33を中心にして左右対称位置に設けられている(
図3、
図4参照)。
【0030】
この支持機構40では、ガイドブロック33の重量と第1支持手段41のコイルバネ43のバネ力とのつり合いにより、ガイドブロック33の上下方向の位置が決定する。
そして、第2支持手段42の左右のコイルバネ46のバネ力のつり合いにより、ガイドブロック33の左右方向の位置が決定する。
【0031】
ここで、何らかの理由でガイドブロック33の上下位置を大きく変更したい場合には、支柱部材31を天板11Aへねじ込む量を調整することで、上下位置を変更できる。なお、より大きなバネ力のコイルバネ43を使用したり、より小さなバネ力のコイルバネ43を使用したりすることで、位置調整の調節することができる。さらに、一対のコイルバネ43としてバネ力の異なるものを用いたり、シムの介装位置を適宜選択したりすれば、ガイドブロック33の入口端部および出口端部での高さ位置を変更可能である。
【0032】
また、第2支持手段42では、左右に対向し合うボルト44において、一方のボルト44でのナット45の螺合位置を変更することで、ガイドブロック33の左右位置および各ボルト44に挿通された両方のコイルバネ46のバネ力が変更される。
【0033】
換言すれば、第2支持手段42において、コイルバネ46のバネ力を変えずにガイドブロック33の左右位置を変更したい場合には、左右のボルト44での各ナット45の螺合位置を左右同方向に同程度移動させればよい。また、ガイドブロック33の位置を変えずに左右のコイルバネ46のバネ力を変更したい場合には、各ナット45の螺合位置を互いに近接させたり、離間させたりする方向に同程度移動させればよい。すなわちバネ力は、ガイドブロック33が後述の基準位置にあるときのコイルバネ46の初期変形量を変更することで調整される。
【0034】
そして、各バネ力でつり合った位置では、ガイドブロック33はコイルバネ43,46によりホルダ32内で容易に変位可能に支持される。このことでガイドブロック33は、わずかな外力が作用するだけで、任意の方向に変位することが可能である。また、つり合った状態にある位置は、ガイドブロック33の基準位置である。この基準位置に対して変位したガイドブロック33から、その変位を取り除くことにより、ガイドブロック33はバネ力によって基準位置に復帰する。
【0035】
図1において、第1、第2かしめ装置50,60は、AT材9が挿入された後の形材8のポケット84部分に対してかしめ加工で固定し、ポケット84からAT材9が抜け出すのを防止する。なお、かしめ加工に限らず、形材が樹脂製の場合では、第1、第2かしめ装置50,60に代わる装置として、超音波溶着装置等が用いられ、樹脂形材とAT材9とが互いの摩擦熱で溶着されるようにしてもよい。
【0036】
形材設置部材70は、形材8の断面形状に応じた設置面を有する。形材設置部材70を用いることで、ポケット84がガイドブロック33のガイド溝33Aに近接対向する位置となるように形材8を設置することが可能である。
【0037】
その他、第1かしめ装置50近傍には、ポケット84へAT材9が完全に挿入された後、形材8とガイドブロック33との隙間に入り込んでAT材9を自動的に切断するカッター等の切断装置が設けられている。また、第2かしめ装置60近傍には、ポケット84に挿入されたAT材9の先端が所定位置まで送られたことを検出する光学センサー等の任意の検出装置が設けられ、検出装置からの検出信号に基づいて送り装置20を停止させたり、切断装置を動作させたり、第1、第2かしめ装置50,60を動作させたり等の制御が行われる。
【0038】
[AT材の挿入動作]
以下には、挿入装置10による形材8へのAT材9の挿入動作について説明する。
先ず、手動またはロボット等の搬送装置にて形材8を挿入装置10に搬入し、形材設置部材70に設置しておく。次いで、ガイド装置30の支持機構40を調整し、ガイドブロック33におけるガイド溝33Aの入口端がガイド部21における通し溝21Aの出口端部に正対するように、また、ガイド溝33Aの出口端部が形材8のポケット84の入口端部に正対するように、当該ガイドブロック33の基準位置を調整し、この基準位置にガイドブロック33を位置決めしておく。
【0039】
次いで、手動にてAT材9をプレート13の供給孔を通して送り装置20側に引き出し、ガイド部21の通し溝21A内に挿入する。挿入したAT材9を通し溝21Aに沿ってさらに引き込み、上流側の送りローラ22で挟持される位置までもってくる。ここから、スタートスイッチ等を操作して挿入装置10を起動し、送り装置20を駆動して送りローラ22を回転させ、AT材9を下流側で回転する送りローラ22でも挟持させながら、自動にてガイド装置30側に送る。
【0040】
引き続き送り装置20を駆動させることにより、AT材9をガイド部21の出口端部から送り出し、これに近接対向するガイドブロック33のガイド溝33A内に挿入する。そして、AT材9をガイド溝33Aで案内しながら送り続け、ガイドブロック33の出口端部から送り出し、これに近接対向する形材8のポケット84内に挿入する。
【0041】
そして、ポケット84内を進むAT材9がポケット84の下流側の端部に近づき、所定位置に達すると、これを検出した検出装置からの検出信号に基づいてAT材9の送りを停止し、AT材9を切断し、また、ポケット84部分のかしめ加工行う。この後、AT材9が挿入された形材8を手動または搬送装置にて挿入装置10から搬出する。
【0042】
次いで、新たな形材8を設置する。この新たな形材8からは、基準位置を調整すること無しに、送り装置20を駆動させることから開始し、ガイドブロック33から送り出されたAT材9を形材8に挿入し、以上に説明した形材8の搬出までを行う。以降、次の新たな形材8の設置、基準位置の調整なしでのAT材9の挿入、および形材8の搬出までを上記のように繰り返す。
【0043】
ここで、形材8の断面寸法の誤差等により、ポケット84の入口端部と基準位置にあるガイドブロック33のガイド溝33Aの出口端部とが正確に正対せず、両者間に多少のずれが生じている場合がある。この場合に従来では、ガイド溝から送り出されたAT材の先端は、ポケット84の入口端部の周囲の端面部分に当たってひっかかり、ポケットに挿入されない事態が生じる。このような事態を抑制するため、新たな形材が設置される都度、ガイドブロックの基準位置の調整が必要であった。
【0044】
これに対して本実施形態では、ガイド装置30の機能により、ポケット84の端面部分にAT材9の先端が当たった際の反力(外力)でガイドブロック33が容易に変位し、ポケット84の入口端部とガイド溝33Aの出口端部との位置ずれをAT材9の送り方向に倣って修正する。この結果、AT材9がポケット84に無理なく入り込むようになり、以後、送り装置20の駆動によってAT材9が連続的にポケット84に挿入されるようになる。なお、このように、AT材9の反力に追従してガイド装置30が動くことで、位置ずれを修正する機能を、コンプライアンス機能と言うこともある。
【0045】
[実施形態の効果]
以上の実施形態よれば、以下の効果がある。
挿入装置10に設けられたガイド装置30の支持機構40では、AT材9を案内するガイド溝33Aを有したガイドブロック33がコイルバネ43,46によって容易に変位可能に支持されているため、形材8の断面寸法の誤差によってポケット84の入口端部とガイド溝33Aの出口端部とが位置ずれしていても、ポケット84の端面部分に当たったAT材9への反力等でガイドブロック33が容易に変位し、AT材9の送り方向に倣って互いの位置関係を修正でき、AT材9をポケット84に確実に挿入できる。また、この反力等によるガイドブロック33の変位の際に、ガイド装置30の入口端部とガイド部21の出口端部との位置も変位することになるが、ガイド装置30を介することによって、ガイド部21の出口端部からポケット84の入口端部とにわたって、AT材9が引っ掛かることなく円滑に送られる。
【0046】
また、ガイドブロック33は、各支持手段41,42において、形材8の送り方向に沿った上流および下流の2箇所で間隔を空けて支持されているので、ガイドブロック33の出口端部側が形材8の断面寸法の誤差との関係で変位するにあたっては、ガイドブロック33の入口端部側までもが出口端部側と同じ量だけ大きく変位するのを抑制できる。従って、ガイドブロック33の出口端部側が変位しても、入口端部側で挿入されているAT材9への負担を軽減して、AT材9の挿入をスムーズにできたり、出口端部側での変位が入口端部側で挿入されているAT材9からの反力によって阻害されたりするのを抑制できる。
【0047】
さらに、ボルト44でのナット45の螺合位置を変更することにより、ガイドブロック33が基準位置にあるときのコイルバネ46の初期変形量を変更してバネ力を調整したり、ガイドブロック33の位置を変更して基準位置を調整したりできる。
【0048】
そして、ガイドブロック33を支持する弾性部材として、所定長さのコイルバネ43,46が用いられているので、コイルバネ43,46は伸縮方向に弾性変形するのみならず、撓み方向へも弾性変形可能である。従って、コイルバネ43,46が互いに直交する方向に配置された本実施形態でも、一方のコイルバネ43(46)の伸縮方向の弾性変形を他方のコイルバネ46(43)が撓み方向へ弾性変形することで許容でき、ガイドブロック33の任意な方向への変位を実現できて、形材8のポケット84とAT材9との多様な位置ずれに対応できる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態で説明した内容に限定されない。本発明の目的を達成できる範囲において、前記実施形態からの変形や変更等は本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態の挿入装置10では、形材8をその長手方向が水平となるように設置するとともに、AT材9を水平方向に送ることで、形材8のポケット84に挿入する構成になっていたが、長手方向が鉛直となるように形材8を設置し、AT材9を鉛直方向に送ることにより、ポケット84に挿入するように構成してもよい。
そして、上記のようにAT材9を鉛直に送る構成では、直方体状のガイドブロック33の四周の鉛直な各側面をそれぞれ、水平方向に伸縮するコイルバネ等の弾性部材で支持させてもよい。
【0050】
前記実施形態では、ガイドブロック33を支持する弾性部材として圧縮バネとして機能するコイルバネ43,46が用いられていたが、引張バネとして機能するコイルバネや、板バネ等のその他のバネ、あるいは樹脂製の発泡体など、ガイドブロック33を変位可能に支持でき、基準位置に復帰可能であれば任意の材料の弾性部材を適用できる。
【0051】
前記実施形態では、ガイドブロック33の底面において、コイルバネ43をAT材9の送り方向に間隔を空けて一対設け、各側面においても、コイルバネ46をAT材9の送り方向に間隔を空けて一対設けた例で説明したが、本発明の弾性部材の数や設ける位置などは、実施形態で例示したものに限定されず、各面で間隔を空けて3つ以上設けたり、1つだけ設けたりするなど、弾性部材の形状や特性を考慮して任意に決められてよい。
【0052】
前記実施形態では、本発明の線材としてAT材9について説明したが、これに限定されず、例えば、モヘアなどであってもよい。
前記実施形態では、本発明の形材としてアルミの押出形材8について説明したが、形材としては、樹脂製であってもよい。