(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出電極と前記シールド電極との間の電圧が一定となるように前記検出電極へ電荷を供給し、当該供給した電荷の積分値に応じた検出信号を出力する電荷積分回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
前記制御回路は、前記電荷供給回路による前記検出電極への電荷の供給を停止した状態で、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧の1サイクル毎に前記コンパレータの出力信号が反転したか否か判定し、当該判定の結果に応じて前記電荷供給回路から前記検出電極に前記逆極性の電荷を供給する
ことを特徴とする請求項6に記載の入力装置。
前記制御回路は、前記複数の駆動電極の中から前記操作面での配列の順番に従って前記駆動電極を1ずつ選択し、当該選択した駆動電極若しくは当該選択した駆動電極を含む一群の隣接した駆動電極に前記第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧を印加し、残りの駆動電極に前記第1駆動電圧と逆相の第2駆動電圧を印加するように前記複数の第2駆動回路を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の入力装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
相互容量検出タイプのセンサでは、1つの検出電極と複数の励起電極との間で相互容量を形成させることができるため、異なる複数の位置における物体の検出を1つの検出電極で行うことが可能である。例えば平面上の物体の近接位置を検出する場合、複数の検出電極と複数の励起電極を格子状に配列し、各励起電極へ順次に駆動電圧を供給するとともに、各検出電極において静電容量の検出を行うことによって、それぞれの格子点付近における物体の近接の有無を検出できる。従って、相互容量検出タイプのセンサは、複数の位置での検出を行う場合に、電極配線や検出回路を少なくできるという利点がある。
しかしながら、検出電極と励起電極との間の相互容量は通常数pFと小さな値であり、指の近接による相互容量の変化量は更に小さく数100fF以下である。従って、相互容量検出タイプのセンサは、一般に検出感度が低いという問題がある。
【0006】
これに対し、指の近接による自己容量の変化は相互容量の変化に比べて大きいため、自己容量検出タイプのセンサは、相互容量検出タイプのセンサに比べて検出感度が高いという利点がある。
しかしながら、一般的な自己容量検出タイプのセンサでは、検出電極と接地(グランド)との間に寄生容量が存在し、この寄生容量によって指の近接による自己容量の変化が相対的に小さくなるため、検出感度を高め難いという問題がある。
また、1つの検出電極上における物体の近接位置は、自己容量の変化によって見分けることができないため、複数の位置の検出を行うためには、その各位置に検出電極を設ける必要がある。従って、自己容量検出タイプのセンサは、複数の位置での検出を行う場合に、電極配線や検出回路が多くなるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作面上の複数の位置における物体の近接を検出する場合に、電極数や回路規模の増大を抑制しつつ、検出感度を高めることができる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る入力装置は、操作面への物体の近接による静電容量の変化に応じた情報を入力する入力装置であって、前記操作面に沿って配置された検出電極と、前記検出電極と交差するように前記操作面に沿って配置され、前記検出電極との間でそれぞれ静電容量を形成する複数の駆動電極と、前記検出電極及び前記複数の駆動電極と比べて前記操作面から離れた下層に配置されたシールド電極と、周期的にレベルが変化する第1駆動電圧を前記シールド電極に印加する第1駆動回路と、前記第1駆動電圧と同相又は逆相にレベルが変化する第2駆動電圧を前記複数の駆動電極に印加する複数の第2駆動回路と、前記複数の駆動電極の中から少なくとも1つの駆動電極を選択し、当該選択した駆動電極に前記第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧を印加し、残りの駆動電極に前記第1駆動電圧と逆相の第2駆動電圧を印加するように前記複数の第2駆動回路を制御し、前記第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧を印加する前記駆動電極を切り換える制御回路とを有し、前記検出電極において検出される前記静電容量の変化に基づいて、前記操作面における物体の近接位置に関する情報を入力することを特徴とする。
好適に、上記入力装置は、前記検出電極と前記シールド電極との間の電圧が一定となるように前記検出電極へ電荷を供給し、当該供給した電荷の積分値に応じた検出信号を出力する電荷積分回路を備えてよい。
【0009】
上記入力装置によれば、前記複数の駆動電極の中から少なくとも1つの駆動電極が選択され、当該選択された駆動電極にシールド電極の第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧が印加され、残りの駆動電極に前記第1駆動電圧と逆相の第2駆動電圧が印加される。そして、前記検出電極と前記シールド電極との間の電圧が一定となるように前記電荷積分回路から前記検出電極へ電荷が供給され、前記シールド電極に供給された電荷の積分値に応じた前記検出信号が前記電荷積分回路において生成される。
前記検出電極に指等が近接すると、前記検出電極と指等との間で大きな静電容量(自己容量)が形成されて、前記電荷積分回路から自己容量への電荷の供給が生じる。そのため、前記検出電極に指等が近接していない場合に比べて、前記電荷積分回路により生成される前記検出信号が大きく変化する。これにより、前記検出電極における指等の近接の有無を、前記検出信号に基づいて感度良く識別することが可能となる。
また、前記シールド電極の第1駆動電圧に対して同相の第2駆動電圧が印加される駆動電極と前記検出電極との間の静電容量形成部分に指等が近接することでその静電容量(相互容量)が変化する場合と、前記シールド電極の第1駆動電圧に対して逆相の第2駆動電圧が印加される駆動電極と前記検出電極との間の静電容量形成部分に指等が近接することでその静電容量(相互容量)が変化する場合とでは、前記電荷積分回路から相互容量へ供給される電荷量が異なる。そのため、前記検出電極に指等が近接している場合において、その近接位置を前記検出信号に基づいて的確に識別することが可能となる。
更に、前記シールド電極と前記検出電極との間の電圧が一定となるように制御されることによって、前記検出電極とグランド電位との間の浮遊容量の影響が低減されるため、自己容量の検出感度が向上する。
また、前記シールド電極の第1駆動電圧に対して逆相の第2駆動電圧が印加される駆動電極と前記検出電極との静電容量形成部分に指等が近接する場合、その静電容量(相互容量)には、前記第1駆動電圧と前記第2駆動電圧とが加算された大きな電圧の変化が生じる。これにより、前記電荷積分回路から相互容量へ供給される電荷が増え、前記電荷積分回路における電荷の積分値が大きくなるため、相互容量の検出感度が向上する。
【0010】
好適に、前記電荷積分回路は、キャパシタと、前記検出電極と前記シールド電極との間の電圧に応じた電流を発生し、当該電流を前記キャパシタ及び前記検出電極に出力するアンプ回路と、前記アンプ回路から前記キャパシタに流れる電流の経路を切り替えるスイッチ回路とを含んでよく、前記キャパシタの電圧に応じた前記検出信号を出力してよい。
前記制御回路は、前記第1駆動電圧が上昇するときに前記アンプ回路から前記キャパシタへ流れる電流の極性と、前記第1駆動電圧が下降するときに前記アンプ回路から前記キャパシタへ流れる電流の極性とが同一となるように前記スイッチ回路を制御してよい。
【0011】
好適に、前記アンプ回路は、前記検出電極と前記シールド電極との間の電圧を増幅する差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力電圧に応じた電流を前記検出電極に出力する第1電流出力回路と、前記差動増幅回路の出力電圧に応じた電流を前記キャパシタに出力する第2電流出力回路とを含んでよい。
【0012】
好適に、上記入力装置は、前記検出信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換回路を有してよい。前記電荷積分回路は、前記キャパシタの電圧を初期化する初期化回路を含んでよい。前記制御回路は、前記初期化回路において前記キャパシタの電圧を初期化した後、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧の周期的変化が所定のサイクル数に達した場合に、前記アナログ-デジタル変換回路において前記検出信号をデジタル信号に変換してよい。
【0013】
また、上記入力装置は、前記検出信号と基準電圧を比較するコンパレータと、前記コンパレータの出力信号に基づいて、前記検出信号に応じたデジタル信号を生成する信号処理回路と、前記検出電極に電荷を供給する電荷供給回路と有してよい。前記電荷積分回路は、前記キャパシタの電圧を初期化する初期化回路を含んでよい。前記制御回路は、前記初期化回路において前記キャパシタの電圧を初期化した場合、並びに、前記電荷供給回路による前記検出電極への電荷の供給を停止した状態で、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの周期的変化を経て前記コンパレータの出力信号が反転した場合において、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの間、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧のレベルが変化するときに、当該レベルの変化に応じて検出電極に形成された静電容量に前記アンプ回路から供給される電荷と逆極性の電荷を前記電荷供給回路から前記検出電極へ供給してよい。
【0014】
上記の構成によれば、前記初期化回路において前記キャパシタの電圧が初期化された場合、並びに、前記電荷積分回路による前記検出電極への電荷の供給を停止した状態で、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの周期的変化を経て前記コンパレータの出力信号が反転した場合において、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの間、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧のレベルが変化するときに、当該レベル変化に応じて前記検出電極に形成された静電容量に前記電荷積分回路から供給される電荷と逆極性の電荷が、前記電荷供給回路から前記検出電極へ供給される。
これにより、前記コンパレータの出力信号は、前記検出電極に形成された静電容量の大きさに応じて反転を生じる期間が変化する信号となるため、前記信号処理回路において、この出力信号に基づいて、前記検出信号に応じたデジタル信号を生成することが可能となる。
【0015】
好適に、前記制御回路は、前記電荷供給回路による前記検出電極への電荷の供給を停止した状態で、前記第1駆動電圧及び前記第2駆動電圧の1サイクル毎に前記コンパレータの出力信号が反転したか否か判定し、当該判定の結果に応じて前記電荷供給回路から前記検出電極に前記逆極性の電荷を供給してよい。
【0016】
好適に、前記電荷供給回路は、一端が前記検出電極に接続された電荷供給用キャパシタと、前記電荷供給用キャパシタの他端に第3駆動電圧を印加する第3駆動回路とを含んでよい。
【0017】
好適に、前記制御回路は、前記複数の駆動電極の中から前記操作面での配列の順番に従って前記駆動電極を1ずつ選択し、当該選択した駆動電極若しくは当該選択した駆動電極を含む一群の隣接した駆動電極に前記第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧を印加し、残りの駆動電極に前記第1駆動電圧と逆相の第2駆動電圧を印加するように前記複数の第2駆動回路を制御してよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作面上の複数の位置における物体の近接を検出する場合に、電極数や回路規模の増大を抑制しつつ、検出感度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る入力装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る入力装置の構成の一例を示す図である。
図1に示す入力装置は、指やペンなどの物体を近づけて操作するための操作面を有するセンサ部10と、センサ部10の操作面に指などの物体が近接することによる静電容量の変化を検出する静電容量検出回路20を有する。
本実施形態に係る入力装置は、容量センサが設けられた操作面に指やペンなどの物体を近接させることにより生じる静電容量の変化に基づいて、操作面における物体の近接位置に関する情報を入力する装置である。なお、本明細書における「近接」とは、接触した状態で近くにあることと、接触しない状態で近くにあることを両方含む。
【0021】
センサ部10は、操作面上の複数の検出位置において、指やペンなどの物体が近接することによる静電容量の変化を生じるように構成される。例えばセンサ部10は、操作面に沿って横方向に延びた複数の検出電極(Y1〜Y4)と、操作面に沿って縦方向に延びた複数の駆動電極(X1〜X5)と、これらの電極より下層に配置されたシールド電極ASを有する。複数の検出電極(Y1〜Y4)は縦方向へ平行に配列され、複数の駆動電極(X1〜X5)は横方向へ平行に配列される。複数の検出電極(Y1〜Y4)と複数の駆動電極(X1〜X5)は格子状に交差して配置されており、その交差点の付近において検出電極と駆動電極の間に静電容量(相互容量)が形成される。
図1の例では、操作面への物体の近接による静電容量の変化を生じ易くするため、検出電極及び駆動電極の交差点の近くには、ひし形状に膨らんだ部分が設けられている。検出電極(Y1〜Y4)と駆動電極(X1〜X5)は、それぞれ配線を介して静電容量検出回路20に接続される。
【0022】
図2は、
図1の点線P−P’におけるセンサ部10の断面を例示する図である。
図2の例において、センサ部10は7つの層(L1〜L7)を有しており、白塗りの部分は絶縁体を表す。物体の接触を考慮して、操作面となる最上層L1は絶縁体で覆われる。駆動電極X3,検出電極Y4及びシールド電極ASは、この順番で上層から下層に向かって配置される。駆動電極X3,検出電極Y4及びシールド電極ASの層間には、各電極が電気的に独立の電位を取り得るように、絶縁体の層が設けられている。なお、
図1の例において、駆動電極X3は検出電極Y4より上層(操作面に近い側)に配置されているが、逆の配置でもよい。また、
図1の例では、操作面の全面において駆動電極(X1〜X5)が検出電極(Y1〜Y4)より上層に配置されているが、これらの電極の上下関係は部分的に入れ替わってもよい。いずれの場合においても、シールド電極ASは検出電極(Y1〜Y4)及び駆動電極(X1〜X5)より下層(操作面から離れた側)に配置される。
【0023】
図3は、本実施形態に係る入力装置におけるセンサ部10と静電容量検出回路20の構成の一例を示す図であり、1つの検出電極Yと1つの駆動電極Xについて静電容量の検出を行う回路を示す。なお、符号「Y」は複数の検出電極(Y1〜Y4)における任意の1つを示し、符号「X」は複数の駆動電極(Y1〜Y5)における任意の1つを示す。
【0024】
図3において、符号「Cxy」は、駆動電極Xと検出電極Yの交差点付近で形成される駆動電極Xと検出電極Yとの間の静電容量(相互容量)を示す。符号「Cas」は、検出電極Yとシールド電極ASとの間に形成される静電容量(シールド容量)を示す。なお、これらの静電容量の他に、検出電極YとグランドGNDとの間には、指などの物体の近接による静電容量(自己容量)Cfsが形成される。
【0025】
静電容量検出回路20は、シールド電極ASに電圧を印加する第1駆動回路24と、駆動電極Xに電圧を印加する第2駆動回路25と、検出電極Yに供給する電荷を積分する電荷積分回路22と、アナログ−デジタル変換回路23と、制御回路21を有する。
例えば、第2駆動回路25は、複数の駆動電極Xにそれぞれ1つずつ設けられる。静電容量検出回路20は、複数の検出電極Yにそれぞれ1つずつ設けられてもよいし、切り替え回路を用いて複数の検出電極Yを1つの静電容量検出回路20に接続してもよい。静電容量検出回路20が複数の場合、アナログ−デジタル変換回路23は、複数の静電容量検出回路20の後段に1つずつ設けられてもよいし、切り替え回路を用いて複数の静電容量検出回路20を1つのアナログ−デジタル変換回路23に接続してもよい。
【0026】
第1駆動回路24は、周期的にレベルが変化する第1駆動電圧をシールド電極ASに印加する。
図3の例において、第1駆動回路24は、電源電圧VDDとグランドGNDの間に直列に接続されたスイッチASU及びASDを有する。第1駆動回路24は、スイッチASUとスイッチASDの接続中点からシールド電極ASに第1駆動電圧を出力する。第1駆動電圧は、スイッチASUがオン、スイッチASDがオフのとき「VDD」、スイッチASUがオフ、スイッチASDがオンのときにゼロ(グランド電位)となる。
【0027】
第2駆動回路25は、第1駆動電圧と同相又は逆相にレベルが変化する第2駆動電圧を駆動電極Xに印加する。
図3の例において、第2駆動回路25は、電源電圧VDDとグランドGNDの間に直列に接続されたスイッチTXU及びTXDを有する。第2駆動回路25は、スイッチTXUとスイッチTXDの接続中点から駆動電極Xに第2駆動電圧を出力する。第2駆動電圧は、スイッチTXUがオン、スイッチTXDがオフのとき「VDD」、スイッチTXUがオフ、スイッチTXDがオンのときにゼロ(グランド電位)となる。
【0028】
電荷積分回路22は、検出電極Yとシールド電極ASとの間の電圧が一定(例えばゼロ)となるように検出電極Yへ電荷を供給し、この検出電極Yへ供給した電荷の積分値に応じた検出信号Aoutを出力する。
【0029】
シールド電極AS,駆動電極Xと検出電極Yとの間には、
図3において示すように静電容量(Cas,Cxy等)が形成されているため、駆動電圧の印加によってシールド電極AS,駆動電極Xの電位が変化すると、検出電極Yの電位も変化する。電荷積分回路22は、この検出電極Yの電位変化がシールド電極ASの電位変化と一致するように、検出電極Yへ正又は負の電荷を供給する。シールド電極AS,駆動電極Xに供給される駆動電圧は所定の振幅を有していることから、駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)の一回のレベル変化に伴って電荷積分回路22から検出電極Yに供給される電荷は、検出電極Yに形成される静電容量(Cxy,Cfs等)に応じて変化する。従って、この電荷の積分値に応じた電荷積分回路22の検出信号は、検出電極Yに形成される静電容量(Cxy,Cfs等)に応じて変化する信号となる。
【0030】
図4は、電荷積分回路22の構成の一例を示す図である。
図4の例において、電荷積分回路22は、アンプ回路221と、スイッチ回路222と、初期化回路223と、キャパシタCintを有する。
【0031】
アンプ回路221は、検出電極Yとシールド電極ASとの間の電圧に応じた電流を発生し、この電流をキャパシタCint及び検出電極Yに出力する。
【0032】
スイッチ回路222は、後述する制御回路21の制御に従って、アンプ回路221からキャパシタCintに流れる電流の経路を切り替える。
駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)のレベルが周期的に変化すると、その1サイクルの期間においてアンプ回路221から検出電極Yへ供給される正電荷と負電荷はほぼ等しくなる。そのため、アンプ回路221から検出電極Yへ供給される電荷と同じ(若しくは比例した)電荷をそのままキャパシタCintに蓄積すると、正電荷と負電荷が相殺してしまい、キャパシタCintには殆ど電荷が蓄積しない。そこで、制御回路21は、アンプ回路221から検出電極Yへ正電荷が供給されるときにアンプ回路221からキャパシタCintへ流れる電流の極性と、アンプ回路221から検出電極Yへ負電荷が供給されるときにアンプ回路221からキャパシタCintへ流れる電流の極性とが同一となるようにスイッチ回路222を制御する。
【0033】
初期化回路223は、キャパシタCintにおいて電荷の蓄積を開始する際に、キャパシタCintの電圧を所定の電圧に初期化する。
【0034】
電荷積分回路22は、キャパシタCintの電圧に応じた検出信号Aoutを出力する。
【0035】
なお、
図4の例では、アンプ回路221から検出電極Yへの電流経路と、アンプ回路221からキャパシタCintへの電流経路が異なっているが、この電流経路は同一でもよい。すなわち、キャパシタCintは、アンプ回路221から検出電極Yへの電流経路上に設けてもよい。
【0036】
図5は、電荷積分回路22のより具体的な構成の一例を示す図である。
図5の例に示す電荷積分回路22は、差動増幅回路224と、第1電流出力回路225と、第2電流出力回路226と、スイッチSWf1,SWf2,SWr1,SWr2,SWrstと、キャパシタCintを有する。
【0037】
差動増幅回路224は、検出電極Yとシールド電極ASとの間の電圧を増幅し、その増幅結果を差動電圧として出力する。差動増幅回路224の反転入力端子は検出電極Yに接続され、非反転入力端子はシールド電極ASに接続される。
【0038】
第1電流出力回路225は、差動増幅回路224から出力される差動電圧に応じた電流を発生して検出電極Yに出力する。
図5の例において、第1電流出力回路225は、MOSトランジスタなどの相互コンダクタンス素子gm1,gm2を有する。相互コンダクタンス素子gm1,gm2は、電源電圧VDDとグランドGNDとの間に直列に接続されており、その接続中点から検出電極Yへ電流を出力する。第1電流出力回路225は、差動増幅回路224から出力される差動電圧の極性に応じて、電源電圧VDDから流し込む向きの電流、又は、グランドGNDへ引き込む向きの電流を出力する。すなわち、検出電極Yの電圧がシールド電極ASに比べて低いことを示す差動電圧が差動増幅回路224から出力される場合、相互コンダクタンス素子gm1の電流が相互コンダクタンス素子gm2の電流に比べて大きくなり、電源電圧VDDから検出電極Yへ流し込む向きの電流が流れる。逆に、検出電極Yの電圧がシールド電極ASに比べて高いことを示す差動電圧が差動増幅回路224から出力される場合、相互コンダクタンス素子gm2の電流が相互コンダクタンス素子gm1の電流に比べて大きくなり、検出電極YからグランドGNDへ引き込む向きの電流が流れる。
【0039】
第2電流出力回路226は、差動増幅回路224から出力される差動電圧に応じた電流を発生してキャパシタCintに出力する。
図5の例において、第2電流出力回路226は、第1電流出力回路225と同様に、電源電圧VDDとグランドGNDの間に直列接続された相互コンダクタンス素子gm1’,gm2’を有する。相互コンダクタンス素子gm1’,gm2’の接続中点はスイッチSWf1を介してキャパシタCintの一端(Aout)に接続されるとともに、スイッチSWr1を介してキャパシタCintの他端(A’)に接続される。相互コンダクタンス素子gm1及びgm1’のペア、並びに、相互コンダクタンス素子gm2及びgm2’のペアは、それぞれカレントミラーを構成する。従って、第2電流出力回路226は、第1電流出力回路225から検出電極Yに流れる電流に比例した電流をキャパシタCintに出力する。
【0040】
上述した差動増幅回路224、第1電流出力回路225及び第2電流出力回路226を含んだ回路ブロックは、
図4におけるアンプ回路221に対応する。
【0041】
スイッチSWr2は、スイッチSWf1が接続されたキャパシタCintの一端(Aout)と電源電圧VDDとの間に設けられる。
スイッチSWf2は、スイッチSWr1が接続されたキャパシタCintの他端(A’)とグランドGNDとの間に設けられる。
スイッチSWrstは、キャパシタCintの他端(A’)と基準電圧VR1との間に設けられる。
【0042】
スイッチSWf1,SWf2,SWr1及びSWr2を含む回路ブロックは、
図4におけるスイッチ回路222に対応する。電源電圧VDDから流し込む向きの電流が第2電流出力回路226から出力される場合、スイッチSWf1及びSWf2がオン、スイッチSWr1及びSWr2がオフするため、キャパシタCintの一端(Aout)が正、他端(A’)負となる極性で電流が流れる。グランドGNDへ引き込む向きの電流が第2電流出力回路226から出力される場合、スイッチSWr1及びSWr2がオン、スイッチSWf1及びSWf2がオフするため、この場合も、キャパシタCintの一端(Aout)が正、他端(A’)負となる極性で電流が流れる。
【0043】
スイッチSWr2及びSWrstを含む回路ブロックは、
図4における初期化回路223に対応する。キャパシタCintの電圧を初期化する場合、スイッチSWr2及びSWrstがオンし、他のスイッチ(SWf1,SWf2,SWr1)がオフする。これにより、キャパシタCintの電圧は「VDD−VR1」に初期化される。基準電圧VRが電圧VDDの半分とすると、キャパシタCintの電圧はほぼ「VDD/2」に初期化される。
以上が電荷積分回路22の説明である。
【0044】
図3に戻る。
アナログ−デジタル変換回路23は、電荷積分回路22から出力される検出信号Aoutを、基準電圧VR1(又は、単一ないしは複数の基準電圧VR2)に基づいて、単一ないしは複数ビットのデジタル信号Doutに変換する。アナログ−デジタル変換回路23は、例えば、制御回路21から供給されるタイミング信号AQに同期したタイミングでアナログ−デジタル変換を行う。
【0045】
制御回路21は、入力装置の各回路ブロックの動作を制御する回路であり、例えば専用のロジック回路やCPU,メモリーなどを含んで構成される。
【0046】
制御回路21は、センサ部10の静電容量に応じた検出信号Aoutを生成する場合、複数の駆動電極Xの中から少なくとも1つの駆動電極Xを選択し、選択した駆動電極Xに対してシールド電極ASの第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧を印加し、残りの駆動電極Xには第1駆動電圧と逆相の第2駆動電圧を印加するように、複数の第2駆動回路25を制御する。
具体的には、制御回路21は、複数の駆動電極Xの中から操作面での配列の順番に従って駆動電極Xを1ずつ選択する。そして、制御回路21は、選択した駆動電極X(若しくは、選択した駆動電極を含む一群の隣接した駆動電極X)に第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧を印加し、残りの駆動電極Xには第1駆動電圧と逆相の第2駆動電圧を印加するように複数の第2駆動回路25を制御する。すなわち、制御回路21は、複数の駆動電極Xの中から第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧を印加する駆動電極Xを順番に切り換える。
【0047】
また、制御回路21は、第2駆動電圧の印加を開始する場合、第2駆動電圧の印加対象として選択した駆動電極Xに接続される電荷積分回路22の初期化回路223において、予めキャパシタCintの電圧を初期化する。
【0048】
キャパシタCintの電圧初期化が完了し、第1駆動電圧及び第2駆動電圧のレベル変化によってアンプ回路221から検出電極Y及びキャパシタCintへの電荷供給が始まると、制御回路21は、アンプ回路221からキャパシタCintへ常に同一極性の電流が流れるように、スイッチ回路222を制御する。すなわち、制御回路21は、シールド電極ASの第1駆動電圧が上昇するときにアンプ回路221からキャパシタCintへ流れる電流の極性と、第1駆動電圧が下降するときにアンプ回路221からキャパシタCintへ流れる電流の極性とが同一となるように、スイッチ回路222の各スイッチ(SWf1,SWf2,SWr1,SWr2)を制御する。これにより、キャパシタCinには、検出電極Yに形成される静電容量(Cxy,Cfs等)に応じた電荷が繰り返し蓄積される。
【0049】
初期化回路223においてキャパシタCintの電圧を初期化した後、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の周期的変化が所定のサイクル数に達した場合、制御回路21は、アナログ−デジタル変換回路23において検出信号Aoutをデジタル信号Doutに変換する。
【0050】
ここで、上述した構成を有する本実施形態に係る入力装置の動作を説明する。
【0051】
図6は、センサ部10の検出電極Yに指が接近した場合の等価回路を示す図である。
この図では簡単化のため、電荷積分回路22以降を省略して図示している。基本的に、人体は、センサに近接したときのセンサとの静電容量より大きい容量でグランドGNDと結合していることから、人体や指は実質的にグランドGNDとみなせる。そのため、検出電極Yに指が近接すると、指の自己容量CfsがグランドGNDと検出電極Yとの間に形成されることになる。指の自己容量Cfsの大きさは、指が検出電極Yに近接するときの距離によって変化し、距離が短いほど指の自己容量Cfsは大きくなる。
【0052】
図7は、センサ部10のシールド電極AS及び駆動電極Xに印加される駆動電圧の位相と指の接触位置との関係を例示する図である。この図の例では、n本の駆動電極X1〜Xnが検出電極Y1と交差するように配置され、それらの下層にシールド電極ASが配置されている。駆動電極Xと検出電極Yは模式的に短冊状に示しているが、この形状に限定されない。
図3,
図6に示すような第1駆動回路24,第2駆動回路25によって、駆動電極X1とシールド電極ASには同じ位相の矩形波が印加され、駆動電極X2〜Xnにはそれと180度位相がシフトした矩形波が印加される。
【0053】
この
図7の例において、センサ部10に指が全く近接していない場合と、センサ部10の二重丸で示す「A」の部分に指が近接する場合と、「B」の部分に指が近接する場合について、それぞれ
図8〜
図10を参照して説明する。
【0054】
まず初めに、指が近接していない状態の等価回路を
図8に示す。
図8において、駆動電極X1と検出電極Y1との間に形成される静電容量を相互容量Cx1y1として示している。駆動電極X2〜Xnには同じ矩形波が印加されるため、駆動電極X2〜Xnと検出電極Y1との間に形成される各交差点付近の静電容量を1つの相互容量Crxyとして示す。検出電極Y1とシールド電極ASとの間には、シールド容量Casが形成される。検出電極Y1とシールド電極ASは、破線で囲まれた電荷積分回路22に接続される。電荷積分回路22は、検出電極Y1とシールド電極ASとの間の電圧に応じた電流を発生して検出電極Yに供給することにより、検出電極Y1とシールド電極ASとの電位がほぼ等しくなるように負帰還制御を行う。電荷積分回路22は、検出電極Yに供給する電流に比例した電流を積分して電圧に変換し、検出信号Aoutとして出力する。
【0055】
駆動電極X1、X2〜Xnおよびシールド電極ASに、図示するような同じ振幅VDDの矩形波の電圧を印加するとき、矢印で示す1つのエッジのタイミングにおいて(ただし、それ以前の動作が収束していると仮定する)検出電極Y1から電荷積分回路22に矢印の方向を正として流れ込む電荷を「Qy1」とする。電荷積分回路22の負帰還動作によって、検出電極Y1とシールド電極ASはほぼ同じ電圧となるように制御されているため、シールド容量Casに対する電荷の流入はゼロとなる。また、駆動電極X1とシールド電極ASは同相の電圧で駆動されており、検出電極Y1とシールド電極ASの電圧はほぼ等しいことから、相互容量Cx1y1に対する電荷の流入もゼロとなる。従って、電荷積分回路22から検出電極Yに供給される電荷Qy1は、次の式で表される。
【0056】
Qy1=2・VDD・Crxy … (1)
【0057】
電荷積分回路22は、この式(1)で表される電荷Qy1を積分し、その積分値に応じた検出信号Aoutを出力する。
【0058】
次に、
図7の「A」の部分に指が近接する状態の等価回路を
図9に示す。この場合は、検出電極Y1とグランドGNDとの間に指の自己容量Cfsが形成される。また、「A」の部分は駆動電極X1の上であるため、駆動電極X1と検出電極Y1との間の相互容量は、指が近接していないときの相互容量Cx1y1に比べて若干減少する。
【0059】
図11は、指の近接による相互容量の減少を説明するための図である。
図11(A)は、指が近接していない状態で駆動電極Xと検出電極Yに電位差がある場合の電気力線を模式的に表す。この2つの電極は、空間的に絶縁体を介して並んでいるため、静電容量の等価回路は
図11(A’)に示すように相互容量Cxyとして表すことができる。
【0060】
一方、
図11(B)は、指が近接した状態を表す図である。この場合は、
図11(B)に示すように、駆動電極Xと検出電極Yの間の空間にグランドGNDの電位を持つ導体が存在することになる。そのため、駆動電極Xと検出電極Yとの間を渡る電気力線の一部が、グランドGNDの電位を持つ導体によって遮蔽された状態になる。この場合の等価回路は、
図11(B’)に示すように、駆動電極Xと検出電極Yとの間の相互容量Cxy’、駆動電極XとグランドGNDとの間の静電容量Cf、及び、検出電極YとグランドGNDとの間の静電容量Cfsに分割される。従って、指が近接していない場合の相互容量Cxyは、指が近接する場合の相互容量Cxy’に比べて大きくなる。すなわち、「Cxy>Cxy’」の関係が成立する。
【0061】
相互容量Cxyと相互容量Cxy’との差を「Cp」(=Cxy−Cxy’)とすると、指が近接する場合の相互容量Cxy’は、「Cx1y1−Cp」と表せる。このとき、「A」以外の場所では指が近接していないため、駆動電極X2〜Xnと検出電極Y1との間の相互容量は「Crxy」で変わらない。駆動電極X1、X2〜Xn及びシールド電極ASに図示するような振幅VDDの矩形波を印加する場合に、矢印で示す1つのエッジのタイミングで検出電極Y1から電荷積分回路22に矢印の方向を正として流れ込む電荷を「Qy1’」と定義すると、この電荷Qy1’は次の式で表される。
【0062】
Qy1’=VDD・(2・Crxy+Cfs) … (2)
【0063】
式(2)において駆動電極X1と検出電極Y1の相互容量である「Cx1y1−Cp」の項が出てこないのは、駆動電極X1とシールド電極ASに印加される矩形波が同相で同じ振幅VDDを持つためである。
【0064】
次に、
図7の「B」の部分に指が近接する状態の等価回路を
図10に示す。
この場合も、検出電極Y1上に指が近接することによって、その場所における相互容量が減少する。ただし、
図8の場合と異なり、駆動電極X1とは別の駆動電極X2に指が近接するため、駆動電極X2〜Xnと検出電極Y1との間に形成される相互容量Crxyが「Cp」だけ減少する。駆動電極X1、X2〜Xn及びシールド電極ASに図示するような振幅VDDの矩形波を印加する場合、矢印で示す1つのエッジのタイミングにおいて検出電極Y1から電荷積分回路22に矢印の方向を正として流れ込む電荷を「Qy1’’」とすると、この電荷Qy1’’は次の式で表される。
【0065】
Qy1’’=VDD・{2・(Crxy−Cp)+Cfs} … (3)
【0066】
指の自己容量Cfsは、指の近接の有無による相互容量の差Cpに比べて大きく、自己容量Cfsは相互容量の差Cpの3倍以上であることが知られている。
【0068】
そのため、指が近接していない状態(
図8)、「A」の部分に指が近接した状態(
図9)、及び、「B」の部分に指が近接した状態(
図10)のそれぞれにおいて電荷積分回路22に流れ込む電荷には、次の関係が成立する。
【0069】
Qy1’>Qy1’’>Qy1 … (5)
【0070】
式(5)の関係が成立することから、電荷の積分値に基づいて生成される電荷積分回路22の検出信号Aoutを調べることによって、検出電極Y1に指が近接しているか否かを識別できるとともに、指が駆動電極X1に近接しているのか、あるいは駆動電極X2〜Xnに近接しているのかを識別することも可能となる。
【0071】
図12は、
図7に示す状態から駆動電極に印加する第2駆動電圧の位相を変更する例を示す図である。
図12の例では、
図7に示す駆動状態に続いて、駆動電極X2をシールド電極ASと同相の波形とし、他の駆動電極(X1、X3〜Xn)にはそれと180度位相がシフトした矩形波を印加する。これにより、駆動電極X2に指が近接しているのか、それとも駆動電極X1、X3〜Xnに指が近接しているのかを識別することが可能となる。以下同様に、シールド電極ASと同相になる駆動電極Xを1本ずつ横へずらしていき、全ての駆動電極Xについて同様なシーケンスを繰り返すことにより、検出電極Y1上の横方向における指の近接位置を特定することが可能となる。また、「Y1」と平行に複数本の検出電極Yが縦方向へ配列される
図1の構成によって、2次元の操作面上における指の近接位置を特定することが可能となる。
【0072】
なお、
図7、
図12の例では、1本の駆動電極Xに対してシールド電極ASと同相の矩形波を印加し、その他の駆動電極Xには180度位相をシフトした矩形波を印加していたが、シールド電極ASと同相の第2駆動電圧を印加する駆動電極Xは2本以上でもよい。
図13は、複数の駆動電極Xにシールド電極ASと同相の第2駆動電圧を印加する例を示す図である。
図13において「k」を「n/2」とすれば、シールド電極ASと同相の第2駆動電圧を印加される駆動電極Xの数が、逆相の第2駆動電圧を印加される駆動電極Xの数に等しくなる。この場合においても、駆動電極Xの電圧印加バターンを1本ずつずらすことによって所望の結果が得られ、指の近接位置を特定することが可能である。
【0073】
次に、
図5に示す電荷積分回路22において検出信号Aoutを生成する動作の詳細について、
図14のタイミング図を参照して説明する。
【0074】
このタイミング図において、
図14(A)はスイッチTXUの状態を示し、
図14(B)はスイッチTXDの状態を示し、
図14(C)はスイッチASUの状態を示し、
図14(D)はスイッチASDの状態を示し、
図14(E)は駆動電極Xに印加される第2駆動電圧を示し、
図14(F)はシールド電極ASに印加される第1駆動電圧を示し、
図14(G)はスイッチSWrstの状態を示し、
図14(H)はスイッチSWr1の状態を示し、
図14(I)はスイッチSWr2の状態を示し、
図14(J)はスイッチSWf1の状態を示し、
図14(K)はスイッチSWf2の状態を示し、
図14(L)は制御信号AQを示し、
図14(M)は検出信号Aout及びA’を示す。ただし、この図におけるスイッチの状態は、ハイレベルがオン状態、ローレベルがオフ状態を示す。
【0075】
図14(A),
図14(B)に示すスイッチ動作によって第2駆動電圧を生成される駆動電極Xは、シールド電極ASに対して逆相の第2駆動電圧が供給される駆動電極Xであり、例えば
図7における駆動電極X2〜Xnに対応する。
【0076】
時刻T1〜T6は、検出電極Yにおいて電荷の移動が生じる駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)のタイミングを示しており、この例では、駆動電圧の立ち上りと立ち下がりの両エッジで計6回分の電荷の移動が生じる。電荷積分回路22は、この電荷を取り込んで積分し、検出信号Aoutを生成する。検出信号Aoutと基準電位VR1との差分が、静電容量の計測結果を表す。
【0077】
初めにリセットシーケンスにおいて、制御回路21はスイッチTXDをオンにして、駆動電極Xの電位をグランドGNDに初期化する(シールド電極ASの電位設定は、駆動電極Xの電位設定を反転すれば良いので説明を省略する)。それと同時に、制御回路21はスイッチSWrst、SWr2もオンにして、キャパシタCintの電圧を初期化する。このとき、キャパシタCintの両端の電位差は「VDD−VR1」であり、基準電圧VR1が電源電圧VDDの半分(=VDD/2)とすると、キャパシタCintの初期電圧は「VDD/2」となる。検出電極Yの電圧は、電荷積分回路22の負帰還動作によって、シールド電極ASの電圧と常に等しくなる(検出電極Yの電圧は省略)。
【0078】
制御回路21は、スイッチSWrstをオフしてリセットシーケンスが終了すると、次の時刻T1のタイミングでスイッチTXUをオンにして、駆動電極Xの電圧を「VDD」へ遷移させるとともに、スイッチSWr1をオンにする。このとき、電荷積分回路22では、差動増幅回路224の反転入力の電位をシールド電極ASと同じ電位を保とうとする負帰還制御が働くため、第1電流出力回路225の相互コンダクタンス素子gm1,gm2によって検出電極Yから正電荷を引き抜く方向に電流が流れる。第2電流出力回路226の相互コンダクタンス素子gm1’,gm2’には、カレントミラー比に応じた引き込み電流が流れる。そのため検出信号A’の電位は、基準電圧VRより降下する。他方、検出信号Aoutは電圧VDDである。外来ノイズの無い状態において、駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)の各エッジによる検出信号A’の電位変化ΔA’は、式(1)〜式(3)で表される転送電荷をまとめて符号「Qy」で表すと、次のように表される。
【0079】
ΔA’=(Qy/Cint)・B … (6)
【0080】
式(6)において、「B」は第1電流出力回路225及び第2電流出力回路226のカレントミラー比を示す。第1電流出力回路225の出力電流を「I1」、第2電流出力回路226の出力電流を「I2」とすると、カレントミラー比Bは「I2/I1」である。
駆動電圧の1回のエッジ(レベル変化)によって、キャパシタCintの端子間の電位差(Aout−A’)は「VR1+ΔA’」となる。その後、制御回路21は、スイッチSWr1、SWr2をオフにして、検出電極Yからの転送電荷に比例した電圧ΔA’だけ基準電圧VR1から変化したキャパシタCintの電圧が保持された状態にして、スイッチTXUをオフにする。
【0081】
次の時刻T2のタイミングにおいて、制御回路21は、スイッチTXDをオンする。これにより、駆動電極Xの第2駆動電圧は電源電圧VDDからグランド電位へ立ち下がる。また同時に、制御回路21は、スイッチSWf1、SWf2をオンにするため、時刻T1と逆向きの電荷転送が検出電極Yと電荷積分回路22との間で生じる。更にこのとき、制御回路21は、電荷積分回路22のスイッチ回路222において、第2電流出力回路226からキャパシタCintに流れる電流の経路を切り替えて、キャパシタCintの他方の端子をグランドGNDに接続する。そのため、検出信号A’はグランド電位となる。時刻T2のタイミングにおいては、駆動電極Xの電位変化が立ち下がりエッジになるので、電荷積分回路22の第2電流出力回路226に接続されたキャパシタCintの一方の端子(Aout)は、第2電流出力回路226からの電流により充電されて上昇する。
図14(M)において、検出信号Aoutのレベル変化が収束するときの矢印1個分が、第2電流出力回路226の電流による電圧の変化ΔA’を表している。このときの検出信号Aoutの収束電位は、基準電圧VR1から「2xΔA’」だけ高い電位になる。
【0082】
このような動作が時刻T3〜T6まで更に2サイクル繰り返された後、制御回路21は、アナログ−デジタル変換回路23の変換動作を実行させる制御AQを出力する。アナログ−デジタル変換回路23は、制御信号AQの立ち上りエッジのタイミングにおいて、電荷積分回路22の検出信号Aoutと基準電位VR1との差の電位を静電容量の計測値としてアナログ−デジタル変換し、デジタル信号Doutを生成する。ただし、アナログ−デジタル変換回路23での計測基準電位は、電荷積分回路22の基準電位VR1と同じである必要は無く、これとは別の基準電位VR2を使用することも可能である。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係る入力装置によれば、複数の駆動電極Xの中から少なくとも1つの駆動電極Xが選択され、この選択された駆動電極Xにシールド電極ASの第1駆動電圧と同相の第2駆動電圧が印加され、残りの駆動電極Xに第1駆動電圧と逆相の第2駆動電圧が印加される。そして、検出電極Yとシールド電極ASとの間の電圧が一定となるように電荷積分回路22から検出電極Yへ電荷が供給され、このシールド電極ASに供給された電荷の積分値に応じた検出信号Aoutが電荷積分回路22において生成される。
検出電極Yに指等が近接すると、検出電極Yと指等との間で大きな自己容量Csfが形成されて、電荷積分回路22から自己容量Csfへの電荷の供給が生じる。そのため、検出電極Yに指等が近接していない場合に比べて、電荷積分回路22により生成される検出信号Aoutが大きく変化する。これにより、検出電極Yにおける指等の近接の有無を、検出信号Aoutに基づいて感度良く識別することが可能である。
また、シールド電極ASの第1駆動電圧に対して同相の第2駆動電圧が印加される駆動電極Xと検出電極Yとの相互容量形成部分に指等が近接することでその相互容量が変化する場合と、シールド電極ASの第1駆動電圧に対して逆相の第2駆動電圧が印加される駆動電極Xと検出電極Yとの相互容量形成部分に指等が近接することでその相互容量が変化する場合とでは、電荷積分回路22から相互容量へ供給される電荷量が異なる。そのため、検出電極Yに指等が近接している場合において、その近接位置を検出信号Aoutに基づいて的確に識別することが可能である。
従って、操作面上の複数の位置における物体の近接を検出する場合に、従来の自己容量検出タイプのセンサに比べて電極数や回路規模の増大を抑制できるとともに、従来の相互容量検出タイプのセンサに比べて検出感度を高めることができる。
【0084】
また、本実施形態に係る入力装置によれば、シールド電極ASと検出電極Yとの間の電圧が一定となるように制御されることにより、検出電極YとグランドGNDとの間の浮遊容量の影響が低減されるため、従来の自己容量検出タイプのセンサに比べて、自己容量の検出感度を高めることができる。
【0085】
更に、本実施形態に係る入力装置によれば、シールド電極ASの第1駆動電圧に対して逆相の第2駆動電圧が印加される駆動電極Xと検出電極Yとの相互容量形成部分に指等が近接する場合、その相互容量には、第1駆動電圧と第2駆動電圧とが加算された大きな電圧の変化が生じる。これにより、電荷積分回路22から相互容量へ供給される電荷が増え、電荷積分回路22における電荷の積分値が大きくなるため、従来の相互容量検出タイプのセンサに比べて相互容量の検出感度を高めることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る入力装置によれば、時間的に隣接して電荷積分回路22に取り込まれる外来ノイズの電荷が相殺されるため、検出シーケンス後のキャパシタCintでの電圧は、ノイズによる電荷が平均化された電圧となる。従って、外来ノイズの影響を低減できることになり、特に低周波ノイズにおいて低減効果が大きい。なお、電荷積分回路22において電荷を蓄積する回数は、
図14の例に示す6回に限定されるものではない。検出信号Aoutとして出力される電位がグランド電位と電源電圧VDDの範囲に収まる範囲、又は、回路の動作可能範囲において、でできるだけ多く電荷の蓄積を繰り返すことによって、ノイズの削減効果を高めることができる。また、駆動電極Xの電位変化の立ち上り及び立ち下りそれぞれの電荷遷移は、同じ回数行われることが望ましい。
【0087】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態に係る入力装置では、電荷積分回路22の後段にアナログ−デジタル変換回路23が設けられているが、本実施形態に係る入力装置では、電荷積分回路22の後段に設けたコンパレータの出力信号に応じて電荷積分回路22の入力に電荷を帰還させることにより、デルタシグマ型のアナログ−デジタル変換回路が構成される。
【0088】
図15は、第2の実施形態に係る入力装置におけるセンサ部10と静電容量検出回路20の構成の一例を示す図である。
図15におけるセンサ部10は、
図1〜
図3に示すセンサ部10と同じである。また、
図15における静電容量検出回路20は、
図3における静電容量検出回路20と同様な構成要素として電荷積分回路22と、第1駆動回路24と、第2駆動回路25を有するとともに、コンパレータ26と、信号処理回路27と、電荷供給回路28と、制御回路21Aを有する。
【0089】
コンパレータ26は、電荷積分回路22から出力される検出信号Aoutと基準電圧VR3とを比較し、その比較結果をハイレベル又はローレベルの信号として信号処理回路27に出力する。基準電圧VR3は、例えば
図5においてスイッチSWrstの一端に入力される電圧であり、電源電圧VDDの半分の電圧(VDD/2)に設定される。
【0090】
信号処理回路27は、コンパレータ26からの出力信号に基づいて、検出信号Aoutに応じた所定ビット長のデジタル信号Dout’を生成する。コンパレータ26からの出力信号は、電荷積分回路22から検出電極Yへ供給される電荷の大きさに応じて、ハイレベルの期間とローレベルの期間との時間的な割合が変化する信号であるため、信号処理回路27は、この時間的な割合をデジタル信号に変換する。
【0091】
信号処理回路27は、例えば
図15において示すように、フリップフロップ271とデジタルフィルタ272を有する。フリップフロップ271は、制御回路21Aから一定周期で出力される信号AQに同期してコンパレータ26の出力信号を取り込み、1ビットの信号Doutとして出力する。デジタルフィルタ272は、この信号Doutに対してFIR(finite impulse response)などのフィルタリング処理を施し、多ビットのデジタル信号Dout'を生成する。
【0092】
電荷供給回路28は、制御回路21Aの制御に従って検出電極Yに所定量の電荷を供給する。すなわち、電荷供給回路28は、シールド電極AS及び検出電極Yの駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)のレベルが変化するときに、このレベル変化に応じて電荷積分回路22から相互容量Cxy,自己容量Cfs等へ供給される電荷と逆の極性を持つ所定量の電荷を検出電極Yへ供給する。
【0093】
電荷供給回路28は、
図15の例において、電荷供給用キャパシタCdsと第3駆動回路281を有する。電荷供給用キャパシタCdsの一端は検出電極Yに接続され、その他端には第3駆動回路281から第3駆動電圧が印加される。電荷積分回路22から相互容量Cxy,自己容量Cfs等へ供給される電荷と逆極性の電荷を検出電極Yに供給するため、第3駆動電圧の振幅は、シールド電極ASの第1駆動電圧より大きい振幅に設定される。第3駆動回路281は、制御回路21Aの制御に従って、第1駆動回路24及び第2駆動回路25と同じタイミングで第3駆動電圧のレベルを変化させる。
【0094】
制御回路21Aは、電荷積分回路22,第1駆動回路24及び第2駆動回路25については、既に説明した制御回路21と同様の制御を行う。制御回路21Aは、これらの制御に加えて、信号処理回路27におけるコンパレータ26の出力信号の取り込みタイミングを制御するとともに、電荷供給回路28における電荷供給のタイミングを制御する。
【0095】
すなわち、制御回路21Aは、電荷積分回路22の初期化回路223においてキャパシタCintの電圧を初期化した場合、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの間において、第1駆動電圧及び第2駆動電圧のレベルが変化するときに(すなわち、立ち上りエッジ及び立下りエッジにおいて)、このレベルの変化に応じて検出電極Yに形成された静電容量(相互容量Cxy,自己容量Cfs等)にアンプ回路221から供給される電荷Qy(式(1)〜(3))とは逆極性の電荷を、電荷供給回路28から検出電極Yへ供給する。
また、制御回路21Aは、電荷供給回路28による検出電極Yへの電荷の供給が停止した状態で、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの周期的変化を経てコンパレータ26の出力信号が反転した場合においても、上記と同様に、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの間において、第1駆動電圧及び第2駆動電圧のレベルが変化するときに、アンプ回路221から相互容量Cxy,自己容量Cfs等へ供給される電荷Qyとは逆極性の電荷を、電荷供給回路28から検出電極Yへ供給する。
【0096】
ここで、上述した構成を有する入力装置の動作について、
図16のタイミング図を参照して説明する。
【0097】
このタイミング図において、
図16(A)〜(L)は、既に説明した
図14(A)〜(L)と同じである。また、
図16(M)はフリップフロップ271においてコンパレータ26から取り込んだ1ビットのデジタル信号Doutを示し、
図16(N)は第3駆動回路281の第3駆動電圧を示し、
図16(O)は検出信号Aout及びA’を示す。
【0098】
第1駆動回路24,第2駆動回路25において駆動電圧のレベルを変化させながら、シールド電極ASと検出電極Yの電圧が等しくなるように電荷積分回路22から検出電極Yに電荷を供給し、その電荷に比例した電荷を電荷積分回路22のキャパシタCintにおいて蓄積する動作については、
図14のタイミング図において既に説明したものと同様である。更に本実施形態においては、コンパレータ26の出力信号を電荷として電荷積分回路22の入力に帰還することによって、デルタシグマ変調が行われる。
【0099】
図16において、リセットシーケンスの動作は
図14と同じであるため、説明を省略する。リセットシーケンスに続く最初の第2駆動電圧(駆動電極X)の立ち上りと立ち下がりの両エッジ(T1、T2)において、第3駆動電圧Ddsは、この第2駆動電圧と逆向きに振幅VDD’で変化する。これにより、最初の1サイクル分の電荷Qdsが電荷供給回路28から検出電極Yに供給され、電荷積分回路22のキャパシタCintに蓄積される。第3駆動回路281が電荷供給用キャパシタCdsの一端に印加する電圧VDD’は、第1駆動回路24がシールド電極ASに印加する電圧VDDよりも若干大きい電圧(VDD’>VDD)に設定される。これは、第1駆動電圧及び第2駆動電圧のレベル変化に伴って検出電極Yに形成される静電容量(相互容量Cxy,自己容量Cfs等)に電荷積分回路22から供給される電荷Qy(式(1)〜(3))とは逆極性の電荷を、電荷Qdsとして電荷供給回路28から検出電極Yに供給するためである。電荷供給回路28から検出電極Yへの電荷Qdsの供給と、電荷積分回路22から相互容量Cxy,自己容量Cfs等への電荷Qyの供給は同時に行われる。第3駆動電圧Ddsの1エッジのレベル変化により、電荷供給用キャパシタCdsを介して検出電極Yに供給される電荷Qdsは、次のように表される。
【0100】
Qds=(VDD’−VDD)・Cds … (7)
【0101】
この電荷Qdsに対応して電荷積分回路22のキャパシタCintに蓄積される初期電荷Qds’は、次のように表される。
【0102】
Qds’=(VDD’−VDD)・Cds・B … (7’)
【0103】
式(7’)における「B」は、式(6)と同様に、第1電流出力回路225及び第2電流出力回路226のカレントミラー比を示す。
図16(O)では、初期電荷Qds’に対応する検出信号Aoutの出力波形を2点鎖線で示す。駆動電極Xに形成される静電容量(Cxy,Cfs等)に電荷Qyが供給されることによって、電荷Qdsから電荷Qyを差し引いた残りの電荷(Qds−Qy)に対応する電荷がキャパシタCintに蓄積される。そのため、検出信号Aoutの電圧は、2点鎖線で示す波形に比べて矢印の方向に低下した破線のA’の波形となる。これと同様な動作が、第2駆動電圧の立ち下りでも行われる。第3駆動電圧Ddsによる初期電荷Qds’は、最初の1サイクルにおける時刻T1、T2の両エッジでキャパシタCintに蓄積されるため、トータルでは、式(7’)の2倍の電荷が初期電荷としてキャパシタCintに蓄積される。なお、第3駆動電圧Ddsは電圧VDDよりも大きな電圧VDD’を必要とするが、電荷供給用キャパシタCdsを十分に大きくすれば、その差はごく僅かにすることができる。
【0104】
最初の1サイクルにおいて電荷供給回路28による初期電荷(2×Qds’)がキャパシタCintに取り込まれた後、制御回路21Aは、電荷供給回路28による電荷供給を停止させる。そのため、駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)の1サイクルの度に、検出電極Yに形成される静電容量(相互容量Cxy,自己容量Cfs等)への電荷供給が生じると、キャパシタCintに蓄積された電荷は、初期電荷(2×Qds’)よりも少なくなっていく。キャパシタCintに蓄積される電荷の変化に応じて、検出信号Aoutの電圧も1サイクル毎に変化する。シールド電極ASの第1駆動電圧が立ち上がって1サイクルが終了し、次のサイクルの立ち下がりが生じる直前における検出信号Aoutは、最初の1サイクル目において最も低くなっており、サイクル回数を重ねるにつれて徐々に上昇し、基準電圧VR3へ近づいていく。そして、
図16の例では、3サイクル目が終了して4サイクル目が開始する時刻T7の直前において、検出信号Aoutは基準電圧VR3超える。
【0105】
制御回路21Aは、駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)の1サイクル毎に信号AQを発生してフリップフロップ271にコンパレータ26の出力信号を取り込み、そのデジタル信号Doutの値が反転したか否かを確認している。時刻T7の直前に発生した信号AQのタイミングにおいて、デジタル信号Doutの値が[0]から[1]へ反転すると、制御回路21Aは、次のサイクルにおいて電荷供給回路28による電荷供給を1サイクルだけ実施する。これにより、電荷積分回路22のキャパシタには再び初期電荷(2×Qds’)が蓄積され、1サイクル終了時の検出信号Aoutは基準電圧VR3より低い電圧となり、デジタル信号Doutは[0]となる。以降、同様にして、駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)の1サイクルの度に検出信号Aoutが上昇していき、基準電圧VR3を超えたところで再び電荷供給回路28による電荷供給が実施される。このような動作が繰り返されることにより、デジタル信号Doutのビット列は、検出電極Yに形成される静電容量(相互容量Cxy,自己容量Cfs等)の大きさに応じて、[1]と[0]の発生頻度が変化する。デジタルフィルタ272は、このビット列にフィルタリング処理を実施することによって、[1]と[0]の発生頻度に応じた値を持つ所定ビット長のデジタル信号Dout’を生成する。
【0106】
以上説明したように、本実施形態に係る入力装置によれば、初期化回路223においてキャパシタCintの電圧が初期化された場合、並びに、電荷積分回路22による検出電極Yへの電荷の供給を停止した状態で、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの周期的変化を経てコンパレータ26の出力信号が反転した場合において、第1駆動電圧及び第2駆動電圧の少なくとも1サイクルの間、第1駆動電圧及び第2駆動電圧のレベルが変化するときに、このレベル変化に応じて検出電極Yに形成された静電容量(Cxy,Cfs等)に電荷積分回路22から供給される電荷とは逆極性の電荷が、電荷供給回路28から検出電極Yへ供給される。
これにより、コンパレータ26の出力信号は、検出電極Yに形成された静電容量(Cxy,Cfs等)の大きさに応じて反転を生じる期間が変化する信号となるため、信号処理回路27において、この出力信号に基づいて、検出信号Aoutに応じたデジタル信号Dout’を生成することができる。すなわち、上述した第1実施形態におけるアナログ−デジタル変換回路23よりも更に簡易な構成で、デルタシグマ型のアナログ−デジタル変換を実現できる。
【0107】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0108】
図5に示す電荷積分回路22では、検出電極Yに電流を流す経路とキャパシタCintに電流を流す経路とが別れているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば
図17において示すように、これらの電流経路を1つにまとめてもよい。
図17の例に示す電荷積分回路22Aでは、オペアンプ227の出力と反転入力との間の電流経路にキャパシタCintが設けられている。キャパシタCintの両端は、スイッチSWp1とスイッチSWq1を介してオペアンプ227の反転入力に接続されるとともに、スイッチSWp2とスイッチSWq2を介してオペアンプ227の出力に接続される。スイッチSWp1,SWp2,SWq1,SWq2は、オペアンプ227からキャパシタCintへ流れる電流の経路を切り替えるスイッチ回路222としての機能と、キャパシタCintの電圧をゼロに初期化する初期化回路223としての機能を備える。また、オペアンプ227は、検出電極Yとシールド電極ASとの電圧に応じた電流を発生し、この電流をキャパシタCintと検出電極Yに出力するアンプ回路221としての機能を備える。
【0109】
図3の例に示す第1駆動回路24及び第2駆動回路25は、電圧VDDとゼロの間でレベルが変化する矩形波の駆動電圧(第1駆動電圧,第2駆動電圧)を出力するが、本発明はこの例に限定されない。本発明の他の実施形態では、正弦波などの周期的な波形を持った駆動電圧をこれらの駆動回路において出力してもよい。
また、上述した実施形態では、シールド電極ASに印加する第1駆動電圧と駆動電極Xに印加する第2駆動電圧の振幅が同じとなる例を挙げているが、本発明はこの例に限定されるものではなく、適切な検出感度が得られるように、それぞれの駆動電圧の振幅を独立に設定してもよい。