特許第6184327号(P6184327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184327イメージング造影剤及びイメージング造影剤を使用するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184327
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】イメージング造影剤及びイメージング造影剤を使用するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20170814BHJP
   A61B 8/13 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61B8/00
   A61B8/13
   A61K49/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-545552(P2013-545552)
(86)(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公表番号】特表2014-502533(P2014-502533A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】IB2011055617
(87)【国際公開番号】WO2012085751
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月8日
(31)【優先権主張番号】61/425,808
(32)【優先日】2010年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】シー ウィリアム タオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコヴィッチ ラディスラヴ
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−537933(JP,A)
【文献】 特表2002−514456(JP,A)
【文献】 特表2002−508760(JP,A)
【文献】 特表2009−540904(JP,A)
【文献】 特表2008−519642(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/057021(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
A61K 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージング造影剤であって、
気泡と、
前記気泡から離れて自由浮遊する第1の光音響造影剤とを有し、
前記気泡は、前記第1の光音響造影剤によって放出される音響エネルギーを中継し、
前記イメージング造影剤は第2の光音響造影剤として機能する、
イメージング造影剤。
【請求項2】
イメージング造影剤と、
前記イメージング造影剤に含まれる音響エネルギー源の一つ以上の位置を特定する装置と、
を有するシステムであって、前記イメージング造影剤が、気泡と、前記気泡から離れて自由浮遊する光音響造影剤である前記音響エネルギー源とを有し、前記音響エネルギー源から放出される音響エネルギーが、前記気泡によって中継され、前記音響エネルギー源と前記気泡の間に物理的分離が存在し、前記装置が、前記中継されたエネルギーを受信するための機器を有するか、若しくは当該機器と通信可能に接続可能であり、前記位置特定は前記受信された中継されたエネルギーに基づく、システム
【請求項3】
前記装置が有する前記機器が、素子の空間分布を有する、イメージングアレイとして機能する超音波振動子アレイを含む、請求項2に記載のシステム
【請求項4】
前記機器に通信可能に接続されるための一つ以上の集積回路を有する、請求項2に記載のシステム
【請求項5】
イメージング造影剤と、
複数の気泡から受信される超音波の時間遅延及び方向を使用して音響エネルギー源を位置特定する装置と、
を有するシステムであって、前記イメージング造影剤が、前記気泡と、前記気泡から離れて自由浮遊する光音響造影剤である前記音響エネルギー源とを有し、前記気泡は、前記受信される超音波として前記音響エネルギー源によって放出される音響エネルギーを中継し、前記装置が、前記中継された音響エネルギーを受信するための機器を有するか、若しくは当該機器と通信可能に接続可能であり、前記位置特定は前記受信された中継されたエネルギーに基づく、システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気泡の使用、より具体的には気泡を使用したイメージングに向けられる。
【背景技術】
【0002】
光音響学は医用イメージングにおける新興分野である。光音響学は光吸収及び結果として生じる加熱/膨張過程によって生成される音波の検出を頼りにするため、技術は超音波と密接に関係している。典型的には、強度変調光源若しくは短パルス源(すなわちレーザ)が励起源として使用される。光は典型的には組織表面に照射されるが、低侵襲供給システム(例えば内視鏡、カテーテル、光供給針)を用いて内部から供給されることもできる。これは主に光散乱を介して組織を透過し、従って大きな体積を照射する。光は血液/組織発色団、又は、この目的で構成される光学色素若しくはナノ粒子などの非標的及び標的外因性造影剤によって吸収される。吸収、及び結果として生じる膨張は音波、すなわち超音波若しくは音響信号を生じる。血管(腫瘍内で異なるサイズと密度、及び異なる血液酸素化レベルを持つ)と周辺組織はその光吸収が異なる。光学的に生成される超音波において生じる差異はイメージングにおいて使用されるコントラストを提供する。この技術の人気は、全身小動物イメージング及び薬物動態モニタリングなどの一部の臨床前研究、並びに乳がん若しくは前立腺がんなどの腫瘍学における臨床応用を中心として、研究団体において急成長していると見られる。
【0003】
しかしながら、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる、同一出願人による国際公開番号WO2009/057021,Wang et al.(以下"Wang")、表題"Photoacoustic Imaging Contrast Agent and System for Converting Optical Energy to In‐Band Acoustic Emission"は、PA造影剤粒子などの点吸収体に短レーザパルスを照射することによって生成される光音響(PA)信号が広帯域であり、PA信号エネルギーのほんの一部しか標準医療超音波振動子の受信周波数範囲に入らないことを指摘し、その中の図1(a),1(b),2(a),2(b)によって図示している。エネルギーの大部分の主要な部分は範囲外であり、すなわち高周波数範囲に入る。
【0004】
これに対処するために、Wangは微小気泡及び/又はナノ気泡をPA造影剤のすぐ近くに置いている。
【0005】
特に、Wangにおける各ナノ粒子は蒸発物質と光吸収物質を包含する。光吸収物質が照射によって励起すなわち"活性化"されると、これはその蒸発物質を蒸発させ、それによって付着気泡を生じる。
【0006】
有利なことに、システムは気泡が主に標準医療超音波振動子の受信周波数範囲内のエネルギーを再放出するように調整されることができる。再放出されたエネルギーは増幅されており、超音波振動子の方向を含む全方向に広がっている。
【0007】
ナノ粒子は、活性化前、血管系とリンパ系の間の境界を越えるほど十分に小さい。従って、透過性が測定されることができる。また結果として、より解剖学的構造がイメージングされることができる。
【0008】
そこから気泡が形成される物質、及び気泡の形成を引き起こす光吸収物質は、実施形態によって異なる方法で粒子若しくは液滴に混合され、それによって集合的に、様々な気泡サイズ、及び繰り返し膨張にわたる気泡寿命を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは上述の帯域幅ミスマッチ問題に加えて、嚢胞、心臓若しくはリンパ節などの対象の従来のPAイメージングは、技術が差分光吸収を頼りにするため、主にただ組織境界を識別するに過ぎないことに気が付いた。差分吸収は各々組織における差分膨張を生じる。膨張によって境界で生成される超音波は、境界が超音波振動子からそれる程度まで見えにくくなる傾向がある。従って、照射方向境界のみがはっきりと見える。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で提案されるものはWangの拡張であり、上記課題の一つ以上に対処することに向けられる。
【0011】
本明細書で提案される通り、気泡は、Wangと同様に、染料ベース若しくはナノ構造PA造影剤などのPA造影剤のすぐ近くに置かれ、同様に全方向に音響エネルギーを再放出する。従って、上述のイメージングにおける角度依存性は同様に克服され、気泡から受信される超音波に基づいて構造をより完全に検出するために超音波振動子が利用されることができるように、気泡はその視覚化を助けるように組織構造を満たす。
【0012】
加えて、現在の提案において、気泡は自由浮遊性であり、予め作られることができ、サイズと寿命に関してより柔軟性を与える。さらに、気泡はなお、微小気泡が大き過ぎて到達できない領域へ浸透したナノサイズ粒子によって提供される音響エネルギーを中継する機能を果たすことができる。サイズに関して、気泡の散乱断面はその幾何学的断面よりも数桁(最大10まで)大きく、点PA源を接近して取り囲むコントラスト微小気泡が、音響エネルギーが中継されるのを効果的に妨害することを可能にする。
【0013】
本発明の態様において、イメージング造影剤は気泡と、気泡から離れて自由浮遊する第1の光音響造影剤とを含む。イメージング造影剤は第2の光音響造影剤として機能する。
【0014】
関連する態様において、第2の光音響造影剤は気泡と、不活性化状態の第1の光音響造影剤とを含む。
【0015】
別の関連する態様において、方法はイメージングされるための位置を持つ放射源によって放出された、受信された音響エネルギーを中継するために造影剤を位置決めするステップを含む。イメージングは中継されたエネルギーに基づく。放射源と、造影剤が含む気泡との間に物理的分離が存在する。
【0016】
下位の態様として、位置決めするステップはa)放射源と混合するように身体組織へ造影剤を注射するステップ、及びb)外部から造影剤を放射源と混合するステップの少なくとも一つを有する。
【0017】
別の下位の態様において、放射源は光音響造影剤を含む。
【0018】
異なる下位の態様において、放射源は複数の位置を持つ。造影剤は複数の位置のいずれかをイメージングするための気泡を含む。
【0019】
さらなる下位の態様において、位置決めするステップは造影範囲を最大化するため、及び多重散乱を最小化するために気泡濃度を制御するステップを含む。
【0020】
補完的な下位の態様において、複数の気泡の各々から受信される超音波の時間遅延、及び方向が、放射源の少なくとも一部の位置を特定するために使用される。
【0021】
さらに別の下位の態様として、造影剤はさらに光音響造影剤を有するという点で複合造影剤として機能する。
【0022】
なおさらなる下位の態様において、複合造影剤は、光音響造影剤への気泡の近さのために、第2の光音響造影剤として機能する。
【0023】
代替的な態様において、混合物として、第2の光音響造影剤を形成するための方法は、混合するために、第1のグループを第2のグループと結合させるステップを含む。第2のグループは気泡を含む。第1のグループは第1の光音響造影剤の粒子を含む。
【0024】
下位の一態様において、結合させるステップは混合物を受ける対象の体外で実行される。
【0025】
別のバージョンにおいて、混合の開始は対象の体内で起こる。
【0026】
代替的な態様の下位の態様は、気泡特異的超音波イメージングのガイド下でリアルタイムに、造影範囲と多重散乱最小化の同時目標へ向かって、イメージング部位における第2の光音響造影剤の気泡の濃度を制御するステップを含む。
【0027】
関連するバージョンにおいて、装置は音響エネルギー源の一つ以上の位置を特定するように構成される。エネルギーは気泡を含む造影剤によって中継される。物理的分離がエネルギー源と気泡の間に存在する。装置は中継エネルギーを受信するための機器を含むか、若しくはそれと通信可能なように接続可能である。位置特定は受信される中継エネルギーに基づく。
【0028】
下位のバージョンにおいて、装置が有する機器は、素子の空間分布を有する、イメージングアレイとして機能する、超音波振動子アレイを含む。
【0029】
代替的な下位のバージョンにおいて、装置は機器に通信可能なように接続されるための一つ以上の集積回路として実現される。
【0030】
さらに別のバージョンにおいて、装置は音響エネルギー源の位置を特定するために複数の気泡から受信される超音波の時間遅延、及び方向を用いるように構成される。気泡は受信される超音波としてエネルギーを中継する。装置は中継エネルギーを受信するための機器を含むか、若しくはそれと伝達可能なように接続可能である。位置特定は受信される中継エネルギーに基づく。
【0031】
本明細書で提案されるものは、方法、方法を実行するための事柄の構成、方法を実行するための装置、装置の機能を実行するためのコンピュータプログラム、機能を伝えるための信号、及び/又は信号を生成するための方法として実現可能である。信号を生成するための方法は、a)当該装置への有線入力、及びb)送信用アンテナの少なくとも一つに印加される電流を変化させ、変化させることによって信号を生成するようにするステップを有する。
【0032】
新規の光音響造影剤技術の詳細は以下の図面を用いて以下にさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】光音響システム例の略概念図である。
図2図1のシステムの動作を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
光音響(PA)システム100は、説明であり限定しない実施例として図1に図示する通り、イメージングアレイとして、制御ユニット104にケーブルで接続される超音波振動子アレイ102を含む。振動子アレイ102は振動子素子の空間分布(不図示)を有する。制御ユニット104は制御電子回路として、一つ以上の集積回路(IC)をコントローラ106として、及び随意に、制御情報を受信するためのアンテナ108及び/又は有線入力110を含むことができる。コントローラ106はケーブル若しくは無線接続によって振動子アレイ102と通信可能であるように接続可能である。アンテナ108はソースアンテナ112によって送信される制御情報を受信する。制御情報は電気回路116の電流を変化させること(114)によって形成される。制御情報は、制御ユニット104に与えられる場合、有線入力110への有線接続によっても伝達され得る。
【0035】
超音波(US)造影剤123として機能することができる微小気泡118,120,122が図1に図示され、身体組織124において自由浮遊している。身体組織124は内科患者、若しくはより一般的に、人若しくは動物の被験対象又は標本のものであり得る。
【0036】
平均1乃至5ミクロンの直径を持つ微小気泡は血管系に閉じ込められていることが多いが、リンパ系に入るほど十分に小さいものもある。PA造影剤すなわち"音響エネルギー源"140を構成するナノ粒子126,128,130,132,134,136,138は通路を作るほど十分に小さい。ナノ粒子126‐138はPA造影剤としてはたらく任意の既知の適切な種類のもの、例えば金若しくはカーボンナノロッド又はナノスフェアであり得る。
【0037】
ナノ粒子126は微小気泡118が大き過ぎて到達できない組織構造142の内部に示されている。
【0038】
微小気泡118はナノ粒子128から物理的に離れて位置するが、短PAパルスが微小気泡を励起する前に短距離だけ移動するのに十分なほど近い。従って、この近さにおける減衰損失は小さい。また、PAパルスは広帯域であり、中継される比較的低い音響周波数に対して比較的わずかな音響減衰損失が生物組織において起こる。従って、微小気泡118は音響エネルギーを妨害して再放出し、非線形音響エネルギー変換器及び音響信号増幅器としてはたらく。
【0039】
同じことが図1に図示される他の微小気泡120,122について、及びそれらの近隣のナノ粒子130,136それぞれについても言え、これらは音響エネルギー源140の他の部分であり、そのエネルギーは電流レーザパルスの印加によって生じる。エネルギー源140の少なくとも一部がイメージングされる。
【0040】
微小気泡118‐122のパルスエコーイメージングは超音波振動子アレイ102からのパルスを頼りにする必要がない。代わりに、光音響学の場合、元のパルスはレーザパルスを繰り返し放出し得るレーザ(不図示)からである。
【0041】
ここで使用されるパルスエコーイメージングは、光音響学において既に使用されているものとは異なり、気泡から中継される(散乱若しくは反射される)超音波に基づき、以下の通り進行する。レーザパルスは近くのナノ粒子128,130,136から音響エネルギーのパルスを生じ、そしてこれは近くの気泡118‐122の振動を生じる。振動は振動子アレイ102によって受信される超音波を伝える。元のレーザパルスは音波伝播速度よりもずっと速い光の速度で移動する。ナノ粒子128,130,136がその各微小気泡118‐122に無視できるほど近いということも想定される。従って、レーザパルスと振動子アレイ102の特定素子との間の時間遅延若しくは"飛行時間"(TOF)が、素子と同心の部分球面に対する半径の大きさとして視覚化されることができ、微小気泡118‐122は球面上のどこかに位置する。素子の複数、若しくは全部が、その特定の微小気泡118‐122について固有の球面を持つことができる。逆に、微小気泡118‐122の各々はその各自固有の球面のセットを持ち、各面はその固有の素子に対応する。所与の素子から異なる距離における微小気泡からのTOFは、受信時間窓の中で、受信した音圧の大きさにおける増加によって区別されることができる。各振動子素子の2球面は交差して曲線を形成し、三つ目はその線と交差して点を形成し得る。上述の球面から形成される各点に対して、"光"の増分が割り当てられる。従って、身体組織若しくは"関心体積"(VOI)124における一部の点は、他のものよりもいくらか多く、及び漸増的に光を持つ。最も光の多い点はVOIにおいて微小気泡118‐122の位置として幾何学的に特定される。要約すると、微小気泡118,120若しくは122はそれぞれナノ粒子128,130若しくは136の位置における近隣PA源(PAイメージングにおけるように)からの超音波パルスを中継(散乱/反射)し、微小気泡118‐122の位置は各微小気泡に非常に近い近隣ナノ粒子128,130及び136に従ってわかる。
【0042】
微小気泡118‐122の各々から後に到着する高周波データは、受信時間窓の中の観察される音圧の大きさの増加に再度基づいて区別され得る。到着するデータは、微小気泡がナノ粒子のすぐ近くに位置していない、すなわち比較的大きな微小気泡が特定組織構造に到達することができない状況のナノ粒子138を示し得る。既に位置特定された微小気泡118‐122から、その半径が各々追加TOFを反映する部分球面が、"離れた"ナノ粒子138を同様に三角測量し、それによって位置特定するために使用されることができる。従って、角度144,146,148及び各々の物理的分離、若しくは同等に、TOF 150,152,154が、離れたナノ粒子138を位置特定するために利用される。角度144‐148はPA造影剤、すなわち"エネルギー源"140によって放出された音響エネルギーが微小気泡118‐122によって振動子アレイ102の各素子へ中継される方向をあらわす。間接的に、事前に決定された微小気泡118‐122へのTOF 156,158,160も位置特定に使用される。TOF 156‐160は振動子アレイ102の各素子に対応するものとして図示されるが、同じ分析は複数の素子にわたって実行されることができる。
【0043】
微小気泡118(若しくは120若しくは122)とナノ粒子138との距離は微小気泡118(若しくは120若しくは122)とアレイ102との距離よりもずっと小さいので、微小気泡118‐122は依然としてエネルギー源140のナノ粒子138に対する音響信号エンハンサとしてはたらくことが指摘されるべきである。
【0044】
微小気泡118‐122は(超音波イメージングにおけるように)アレイ102から送信される超音波パルスも中継(散乱/反射)することができることに留意されたい。従って、微小気泡118‐122の位置は例えば微小気泡特異的超音波造影イメージングで決定されることができる。そして超音波造影イメージングにおけるような微小気泡の位置特定は、PAイメージングにおけるようにナノ粒子(ナノ粒子138など)の位置を決定することをより簡便に正確にする。加えて、超音波イメージングのための高いフレームレートが、必要な場合、送信超音波パルスシーケンスに対してより少ない広いビーム(限定的な場合においては一つの非常に広いビーム)を用いて実現されることができる。
【0045】
また、三つの微小気泡118‐122が実施例において使用されるが、より多くが貢献するデータを持つ場合、より多くが計算に使用されてもよい。付加的に、他のナノ粒子126がイメージングされるためにPA造影剤140の位置に配置される。従って、これらの他のナノ粒子126は同様に微小気泡がアクセスできない領域のイメージングを満たすために位置特定されることができる。
【0046】
従って、第1のPA造影剤140は、不活性化状態にあるときでも、微小気泡118‐122と組み合わされると、第2のPA造影剤162を構成する。ここで、第1のPA造影剤140は微小気泡118‐122から、これらを一緒に混合することによって両者が結合されるときであっても、離れて自由浮遊している。
【0047】
イメージングされる部位166における造影範囲164は図1に図示の実施例において微小気泡118‐122を含むように組織構造142を超えて広がる。
【0048】
図1に図示の通り微小気泡118,120間の音響エネルギーの多重散乱168はイメージングを歪める。多重散乱168は濃度を増加させることによって造影範囲164を最大化しながら気泡濃度を減少させることによって最小化される。
【0049】
操作上、図2を参照すると、医療超音波適用のための受信帯域幅が決定される(ステップS204)。例えばより深部の病変のイメージングは、分解能を犠牲にして低い超音波周波数の帯域を要する。逆に、より浅部の対象の調査は高周波数を含む帯域幅でなされることができる。気泡の共振周波数はそのサイズに反比例して変化するため、気泡サイズの範囲は超音波振動子アレイ102の受信周波数範囲内に入るように選択される(ステップS208)。
【0050】
選択された気泡サイズとUS造影剤123の混合/投与が実行される(ステップS212)。
【0051】
これがなされる多数の異なる可能な方法がある。
【0052】
PA造影剤すなわち"第1のグループ"140は、例えば不活性化状態で、US造影剤すなわち"第2のグループ"123と混合されて第2のPA造影剤162を形成することができる。
【0053】
混合は臨床検査中、及び/又はその直前に実行され得るが、現在の実施例のこの段階において混合は検査の直前に起こり、これは内部で、すなわち患者若しくは対象の中で、又は外部から実行されることができる。例えば、第1のグループ140と第2のグループ123は、希釈後、二つの別々の注射器ポンプを満たし得る。各グループの注射のタイミングと速度は、静脈内カテーテル(IV)を用いる点滴のように、各ポンプによって独立して制御されることができる。二つのポンプの出力はPA造影剤162を形成するように混合され、それから直接、若しくは生理食塩水注入ラインを用いて間接的に、患者へ注入される。注入はイメージング検査の前及び/又は最中に起こり得る。各グループ140,123のタイミングと投与量は独立して制御されることができる。混合は、エネルギー源140によって放出された受信された音響エネルギーを中継するために、結果として生じる微小気泡118‐122の各ナノ粒子126‐138への近さのおかげで、US造影剤123を位置決めする効果を持つ。US造影剤123は注入後その位置に留まる。
【0054】
代替的に、患者はイメージング検査のかなり前に予め混合された二つのグループ140,123の組み合わせを注入若しくは注射されることができる。ここでも、混合は、エネルギー源140によって放出された受信された音響エネルギーを中継するために、各ナノ粒子126‐138への微小気泡118‐122の結果として生じる近さのおかげで、超音波造影剤123を位置決めする。同様に、US造影剤は注入後その位置に留まる。
【0055】
一つのグループ140,123が血流へ系統的に注入されながら、もう一方のグループは、混合の開始が内部で起こるように、対象、例えば病変へ直接注射されることも可能である。
【0056】
さらなる実施例として、両グループ140,123が同時に若しくは異なる時に対象へ直接注射若しくは注入される。
【0057】
患者は、代替的に、例えば腸イメージングの場合に両グループ140,123を同時に若しくは別々に摂取することができる。若しくは、おそらく、グループ140,123は、腎臓のPA検査の別の実施例として、腎臓へ尿道を通じて注射され得る。
【0058】
いずれにしても、混合及び/又は投与のタイミング若しくは速度は、イメージング部位166に関して、微小気泡118‐122間の多重散乱168を最小化しながら造影範囲164を最大化するように実行され得る。
【0059】
部位166は、微小気泡118‐122が検査のために十分にその部位を満たしたときを検出するために、超音波造影剤パルスエコーイメージングによって観察されることができ(ステップS216)、この時点においてレーザパルスがその部位で発射されることができる(ステップS220)。それによって生成される音響エネルギーは超音波振動子アレイ102による受信のために中継される(ステップS224)。
【0060】
レーザパルシング及び受信ステップS220,S224は分析のためのデータをより多く蓄積するために繰り返しなされることができる(ステップS228)。随意に、レーザパルシングステップS220は、時々、微小気泡118‐122を位置特定するためにPAイメージングに代わる技術として上記の微小気泡特異的超音波造影イメージングを含んでもよく、この技術は位置特定を更新するために実行される。
【0061】
結果をチェックするための一時停止(ステップS228)などにおいて、パルシング及び受信ステップS220,S224が繰り返されないとき、若しくは、代替的に、繰り返され続ける間、ユーザはイメージングガイド下でリアルタイムに、造影範囲最大化と多重散乱最小化の同時目標をより完全に実現するために、混合及び/又は投与タイミング若しくは速度への調整を行うことができる(ステップS232)。イメージングガイドは、例えば微小気泡特異的超音波造影イメージングによって、イメージング部位166において存在する微小気泡濃度を観察することを含むことができる。
【0062】
そして、検査が続く場合(ステップS236)、処理はステップS220へ戻り、そうでなければ、検査が続かない場合、手順は終了する。
【0063】
気泡は一部の実施形態において光音響造影剤の一部として利用され、一部の実施形態において、音響エネルギー源の一つ以上の位置を特定するために利用される。微小気泡などの気泡は、第1の光音響造影剤のナノ粒子の近くで使用されることができ、それによって第2の光音響造影剤をもたらす。気泡は気泡のすぐ近くにある第1の光音響造影剤の光ベースの活性化によって放出される音響エネルギーを妨害して再放出することができる。さらなるオプションとして、ナノ粒子がさらに組織構造へ浸透するがまだ十分な近さに留まる場合、その位置は振動子アレイによって受信される超音波の方向と時間遅延に基づいて、付近の気泡によって三角測量されることができる。
【0064】
本明細書で提案されるものにかかる方法論は、人若しくは動物の対象に医療診断を提供するのに有利に適用されることができるが、意図される請求項の保護範囲はそれに限定されない。より広範に、in vivo、in vitro若しくはex vivoの増強光音響イメージングが想定される。
【0065】
提案される技術はPAイメージングの通常の標的応用分野である心臓血管イメージング及び腫瘍学に直接応用可能である。
【0066】
本発明は図面と前述の説明において詳細に図示され記載されているが、かかる図示と記載は説明若しくは例示であって限定ではないとみなされる。本発明は開示の実施形態に限定されない。
【0067】
例えば、上記に提案されるもののいずれか若しくは全部においてナノ気泡が微小気泡の代わりに使用され得る。
【0068】
開示の実施形態への他の変更が図面、開示、及び添付の請求項の考察から、請求される発明を実践する上で当業者によって理解されもたらされることができる。請求項において、"有する"という語は他の要素若しくはステップを除外せず、不定冠詞"a"若しくは"an"は複数を除外しない。請求項における任意の参照符号は範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0069】
コンピュータプログラムは瞬間的に、一時的に、若しくはより長い期間、光記憶媒体若しくは固体媒体などの適切なコンピュータ可読媒体上に記憶されることができる。かかる媒体は一時的な伝播信号ではないという意味でのみ非一時的であり、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ及びRAMなどの他の形式のコンピュータ可読媒体を含む。
【0070】
装置100の上記の発明的機能を具体化する信号、及びそれを装置に伝達するための信号は、電流を適切に変えることによって形成可能である。信号は装置入力配線によって到達するか、若しくはアンテナによって無線送信されることができる。
【0071】
信号プロセッサ若しくは他のユニットは請求項に列挙される複数の項目の機能を満たし得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。
図1
図2