(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184329
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】収縮が低減された多孔質セラミック品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/64 20060101AFI20170814BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20170814BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20170814BHJP
C04B 35/195 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
C04B35/64
C04B38/00 304Z
F27D21/00 G
!C04B35/195
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-556714(P2013-556714)
(86)(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公表番号】特表2014-512320(P2014-512320A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】US2012025836
(87)【国際公開番号】WO2012118633
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月20日
【審判番号】不服2016-13292(P2016-13292/J1)
【審判請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】13/036,596
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】バルスター,ジーン イー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,マイケル ピー
(72)【発明者】
【氏名】デネカ,トーマス ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル,ジョシュア エル
(72)【発明者】
【氏名】マコーリー,ダニエル エドワード
【合議体】
【審判長】
大橋 賢一
【審判官】
瀧口 博史
【審判官】
中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−316104(JP,A)
【文献】
特表2001−527202(JP,A)
【文献】
特開平2−255576(JP,A)
【文献】
特表2000−510434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/64
F27D 9/00 - 9/40
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質セラミック品を製造する方法において、
セラミック前駆体バッチ組成から複数個の押出未焼成体を形成する工程、
最高均熱温度に加熱される、複数の小区分からなる区分を有するトンネルキルン内で前記押出未焼成体を焼成して、多孔質セラミック品を作製する工程、
選ばれた未焼成体および多孔質セラミック品について、前記トンネルキルンを通過する少なくとも1つのサンプルの収縮特性を定期的に決定する工程、および
前記収縮特性が所定の範囲内になければ、前記最高均熱温度を調節する工程、
を含み、
前記収縮特性は、押出未焼成体を前記トンネルキルンに送り込む前に該未焼成体としてのサンプルの少なくとも1つの寸法を測定し、次に、該少なくとも1つの寸法を測定したサンプルが焼成されて多孔質セラミック品となったものの、先に測定した少なくとも1つの寸法に対応する寸法を、該多孔質セラミック品の前記トンネルキルンからの窯出しに続いて測定し、次に、前記押出未焼成体としてのサンプルの少なくとも1つの測定された寸法を、前記多孔質セラミック品としてのサンプルの少なくとも1つの測定された寸法と比較することによって、決定し、
前記最高均熱温度は、サンプルで代表される最初のセラミック品が該最高均熱温度に加熱された小区分に近づく間に、該セラミック品が該最高均熱温度に加熱された小区分に実際に到達したときに該最高均熱温度が調節された温度に変えられているように、調節され、
前記調節のタイミングを、前記最高均熱温度に加熱される小区分の温度の所要の温度変更量、最高均熱温度に加熱される小区分の温度の可能な変更レート、およびサンプルがトンネルキルンを通って移動する速度に依存して決定する、方法。
【請求項2】
前記押出未焼成体および前記多孔質セラミック品が、円形、楕円形または非対称形の断面を有し、前記収縮特性を決定する工程が前記少なくとも1つのサンプルの主断面軸の長さを、押出未焼成体としておよび多孔質セラミック品として、測定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記押出未焼成体および前記多孔質セラミック品が軸長を有し、前記収縮特性を決定する工程が、前記少なくとも1つのサンプルの前記軸長を、押出未焼成体としておよび多孔質セラミック品として、測定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記収縮特性が所定の大きさを上まわっていれば、前記最高均熱温度を低温側に調節することを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記収縮特性が所定の設定点を0.2%ずつ上まわる毎に前記最高均熱温度を所定の最高均熱温度から少なくとも7℃ずつ低温側に調節することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2011年2月28日に出願された米国特許出願第13/036596号の米国特許法第120条の下の優先権の恩典を主張する。本明細書は上記特許出願の明細書の内容に依存し、上記特許出願の明細書の内容はその全体が本明細書に参照として含められる。
【技術分野】
【0002】
本開示は全般にはセラミック材料を製造する方法に関し、さらに詳しくは焼成中の最高均熱温度を調節することにより成形セラミック品の収縮を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ハニカム形のセラミック製品は、可塑化バッチを形成するためにセラミック材料を水及び(押出助剤及び形成助剤を含む)様々な炭素含有材料と混合することによってセラミック未焼成体を作製する工程、セラミック未焼成体を可塑化バッチの押出によってハニカム形未焼成体に成形する工程及び最後にハニカム形未焼成体を焼成炉またはキルン内で焼成する工程によって作製されている。
【0004】
ハニカム形セラミック品の作製において重要な要因は、焼成中の、特に焼結プロセスの結果としての、セラミック品の収縮(または膨張)の変動を最小限に抑えることである。製品仕様は、ディーゼル粒子フィルタ(DPF)のような、ある種のセラミック品に目標値からの収縮(または膨張)に関して益々厳格になる仕様を満たすことを要求する。
【0005】
セラミック品の収縮(または膨張)における変動を最小限に抑える方法のほとんどは、初期バッチ組成に加えられる原材料(または原材料の特性)の制御に焦点を絞っている。これらの方法は、原材料の粒径分布に実質的な変化があると、その結果、一般に収縮の変化率が高くなるから、バッチ成分の粒径分布(PSD)の制御を含むことが多い。
【0006】
PSD制御方法は、既知の粒径分布をもつ原材料バッチ成分の特定の比率を選択する工程、定められた粒径分布まで原材料バッチ成分をか焼するかまたは微粉砕する工程、あるいは原材料バッチ成分を微粉砕装置を通して供給する速度を制御する工程のような手段を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらのプロセスが何らかのタイプのフィードバック制御機構(例えば、焼成されたパーツを測定する工程及びそれに応じて原材料供給を調節する工程)と組み合わされたとしても、原材料供給に調節の必要があると決定された時点においては既にかなりの材料が原材料供給及び混合の下流のプロセスにあるから、相当な量の窯出品が廃棄されなければならなくなることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態は多孔質セラミック品を製造する方法に関する。本方法は、セラミック前駆体バッチ組成から複数個の押出未焼成体を形成する工程を含む。本方法は、押出未焼成体を、最高均熱温度に加熱される区分を備えるトンネルキルン内で焼成して、多孔質セラミック品を作製する工程も含む。さらに、本方法は定期的に少なくとも1つのサンプルの収縮特性を決定する工程を含む。本方法は、収縮特性が所定の範囲内になければ、最高均熱温度を調節する工程をさらに含む。
【0009】
本開示の別の実施形態は上述した方法で作成された多孔質セラミック品に関する。
【0010】
さらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかであろうし、あるいは、記述及び添付される特許請求の範囲に、また添付図面にも、説明されるように実施形態を実施することによって認められるであろう。
【0011】
上述の全般的説明及び以下の詳細な説明がいずれも例示に過ぎず、特許請求の範囲の本質及び特質を理解するための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。
【0012】
添付図面はさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて、本明細書の一部をなす。図面は1つ以上の実施形態を示し、記述とともに様々な実施形態の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本明細書に開示されるような多孔質セラミック品を製造する方法を実行するために用いるに適し得るトンネルキルンの一例を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ハニカム形多孔質セラミック品を含む多孔質セラミック品を製造する方法が本明細書に開示され、多孔質セラミック品はトンネルキルンを通過する。本方法は、そうでなければ多孔質セラミック品の製造においておこるであろう、収縮変動の大きさを低減することができる。詳しくは、本方法により、下流のプロセスパラメータ、すなわちキルンを通過しているいくつかのセラミック品が受ける最高均熱温度の調節が可能になる。これにより、目標仕様を満たすことができないために廃棄されなければならない窯出品の量のかなりの低減が可能になる。
【0015】
本方法はトンネルキルンを通過したサンプルの収縮特性を定期的に決定する工程を含む。収縮特性は、例えば、サンプルを押出未焼成体として初めに測定することで決定され、ここでは未焼成体をトンネルキルンに送り込む前に未焼成体の少なくとも1つの寸法が測定される。後に、サンプルを多孔質セラミック品として測定することができ、ここではセラミック品の、先に測定した、少なくとも1つの寸法がトンネルキルンからのセラミック品の窯出に続いて測定される。次いで、押出未焼成体としてのサンプルの少なくとも1つの測定された寸法を多孔質セラミック品としてのサンプルの少なくとも1つの測定された寸法と比較することによって、収縮特性を決定することができる。サンプリング(すなわち収縮特性の決定)は、トンネルキルンを通過する、選ばれた未焼成体及びセラミック品だけについて行われる。
【0016】
本明細書に用いられるように、術語「収縮特性」はサンプル(例えば押出未焼成体または多孔質セラミック品)の寸法の、指定された寸法、例えば目標仕様の指定寸法からの変化を意味する。そのような変化には、指定目標寸法より小さい寸法測定値(収縮)を有するサンプルまたは指定目標寸法より大きい寸法測定値(膨張)を有するサンプルを含めることができる。
【0017】
収縮特性はサンプルの1つ以上の形状寸法を測定することによって決定することができる。例えば、サンプルが概ね円筒形である場合、収縮特性は、少なくともある程度は、サンプルの軸長測定値から決定することができる。概ね円筒形のサンプルは、円形、楕円形または非対称形の断面を有することができ、そのような場合、収縮特性は、少なくともある程度は、サンプルの主断面軸の測定長(すなわち最長断面軸測定値)から決定することができる。
【0018】
少なくとも一組の実施形態例において、収縮特性はサンプルの軸長測定値及びサンプルの少なくとも1つの主断面軸のいずれからも決定することができる。例えば、収縮特性は、例えばレーザゲージを用いて、サンプルの、及びサンプルの長さに沿う少なくとも1つの平面の、周に沿う少なくとも2つの点から測定された寸法から決定することができる。実施形態の一組の例において、収縮特性は、米国特許出願第12/550620号の明細書に説明されているように、レーザゲージを用いて、サンプルの長さに沿う3〜5の平面の、サンプルの周に沿う24点において測定された寸法から決定することができる。上記特許明細書の開示の全体は本明細書に参照として含められる。
【0019】
サンプルの収縮特性が所定の範囲内になければ、最高均熱温度(すなわち、トンネルキルン内でサンプルがさらされる最高温度)が指定された時間、上方または下方に調節される。この点に関し、出願人等は驚くべきことに、最高均熱温度のそのような調節により、調節がなければ生じたであろう収縮(または膨張)を完全にまたは少なくともある程度補償できることを見いだした。出願人等は驚くべきことに、多孔度、細孔直径、熱膨張係数(CTE)及び破壊係数(MOR)のような、他の物理特性及び機械特性が実施的に悪影響を受けないように、最高均熱温度を調節できることも見いだした。そのような調節により、(調節がなければ目標仕様を満たさなかったであろう)収縮特性に対する目標仕様を満たし、同時に、多孔度、細孔直径、CTE及びMORのような、多孔質セラミック品の他の物理的特性及び機械的特性も目標仕様内に維持している、多孔質セラミック品の歩留を高めることが可能になる。
【0020】
いくつかの実施形態例において、収縮特性が所定の量より大きいと、最高均熱温度は低温側に調節される。「所定の量より大きい」または「所定の設定点を上まわる」はサンプルが所定の量より大きく収縮したことを意味する(対照的に、収縮特性が「所定の量より小さい」か、または「所定の設定点を下まわる」は、サンプルが所定の量より大きく膨張したことを意味し、あるいは負の収縮を受けたことを言明する)。
【0021】
少なくとも一組の実施形態例において、最高均熱温度は収縮特性が所定の設定点を0.2%ずつ上まわる毎に、所定の最高均熱温度から、5℃と10℃の間のような、さらには6℃と8℃の間のような、少なくとも7℃を含む、少なくとも5℃ずつ、低温側に調節される。
【0022】
あるいは、最高均熱温度は収縮特性が0.2%ずつ負になる(すなわち、0.2%ずつの膨張を示す)毎に、所定の最高均熱温度から、5℃と10℃の間のような、さらには6℃と8℃の間のような、少なくとも7℃を含む、少なくとも5℃ずつ、高温側に調節することができる。
【0023】
本明細書に開示される実施形態において、最高均熱温度は、製造されているセラミック品のタイプに応じて変わり得る。いくつかの実施形態例において、最高均熱温度は、1400℃〜1430℃のような、1380℃〜1450℃の範囲にある。
【0024】
収縮特性は定期的に、キルンを通過している複数のセラミック品を代表するとして指定され得る少なくとも1つのサンプルから決定することができる。例えば、多孔質セラミック品の製造においては、単一セラミック前駆体バッチ組成から複数のセラミック品が製造されることが普通である。したがって、少なくとも一組の実施形態例において、与えられたセラミック前駆体バッチ組成から製造される全てのセラミック品を代表するとして、少なくとも1つのサンプルを指定することができる。次いで、バッチ組成から製造されたセラミック品がキルンを通されると、次のセラミックバッチ組成から製造される全セラミック品を代表するとして次の少なくとも1つのサンプルを指定することができ、以下同様である。
【0025】
例えば、本明細書に開示されるいくつかの実施形態例において、収縮特性はトンネルキルンを通過する押出未焼成体または多孔質セラミック品の、500個毎に少なくとも1つのような、さらには100個毎に少なくとも1つのような、1000個毎に少なくとも1つについて決定される。
【0026】
本明細書に開示されるプロセスにおいてセラミック品を製造するために用いられるセラミック前駆体バッチ組成は、いかなる数の複数の無機及び有機のセラミック形成成分も含むことができる。無機セラミック形成成分は、酸化物、水酸化物、等のような合成生産材料とすることができ、あるいはクレイ、タルクのような天然産鉱物、またはこれらのいずれかの混合物とすることができる。本明細書に開示される実施形態は粉末または原材料のタイプに限定されない。これらはセラミック品の所望の特性に応じて選ぶことができる。
【0027】
少なくとも一組の実施形態例において、セラミック前駆体バッチ組成はコージエライト形成成分を含む。非限定的例として、焼成すると最終的にコージエライトを形成する一組成は、約30〜40重量%のような、約33〜41重量%の酸化アルミニウム、約48〜52重量%のような、約46〜53重量%のシリカ及び、約12〜16重量%のような、約11〜17重量%の酸化マグネシウムである。
【0028】
少なくとも一組の実施形態例において、セラミック前駆体バッチ組成はチタン酸アルミニウム形成成分を含む。他の実施形態例において、無機セラミック形成成分は、ムライト形成成分とすることができ、あるいは焼成するとムライトとコージエライトの混合物となる成分とすることができる。そのような混合物の例は約2重量%〜約60重量%のムライトと約30重量%〜約97重量%のコージエライトであり、一般には約10重量%までが許容される、他の相が含まれる。
【0029】
少なくとも一組の実施形態例において、少なくとも1つのサンプルの収縮特性が所定の範囲内になければ、最高均熱温度は、その少なくとも1つのサンプルで代表されるセラミック品の全てまたは大半が最高均熱温度に加熱された区分を通過してしまうまで、調節されて維持される。例えば、少なくとも1つのサンプルがトンネルキルンを通過している次の1000個のセラミック品を代表し、その少なくとも1つのサンプルの収縮特性が所定の範囲内になければ、その1000個のセラミック品の少なくとも大半が最高均熱温度に加熱された区分を通過してしまうまで、最高均熱温度を調節して維持することができる。次いで、次の複数のセラミック品を代表する少なくとも1つのサンプルの収縮特性が所定の範囲内になければ、最高均熱温度を異なる温度に調節することができる。
【0030】
最高均熱温度は一般に瞬時に変えることはできないから、最高均熱温度は、サンプルで代表される最初のセラミック品が最高均熱温度に加熱された区分に近づく間に、そのセラミック品が最高均熱温度に加熱された区分に実際に到達するときに最高均熱温度が調節された温度に変えられているように、調節することができる。この調節のタイミングは、最高均熱温度に加熱される区分の温度の所要の温度変更量、最高均熱温度に加熱される区分の温度の可能な変更レート及びサンプルがトンネルキルンを通って移動する速度に依存し得る。
【0031】
例えば、一組の実施形態例において、押出未焼成体はトンネルキルンを通って順次に進む複数台の台車に乗ってトンネルキルンに送り込まれ、複数個の押出未焼成体がそれぞれの台車上に置かれ、例えば、サンプルの収縮特性が所定の範囲内になく、最高均熱温度が10℃の調節が必要であると測定され、1時間に1台の台車がトンネルキルンを通って進み、最高均熱温度が1時間に2℃のレートで調節され得るとすれば、最高均熱温度に加熱される区分に到達する、そのサンプルで代表される第1のセラミック品の最高均熱温度は5時間以内に調節することができる。最高均熱温度は次いで、そのサンプルで代表されるセラミック品の大半が最高温度に加熱された区分を通過してしまうまで、調節された温度に維持することができる。次いで、次の複数個のセラミック品を代表するサンプルの収縮特性が所定の範囲内になければ、最高均熱温度を異なる温度に変えることができる。詳しくは、最高均熱温度は、次のサンプルで代表される最初のセラミック品が最高均熱温度に加熱された区分に近づく間に、そのセラミック品が最高均熱温度に加熱された区分に実際に到達するときに最高均熱温度が調節された温度に変えられているように、調節することができる。
【0032】
いくつかの実施形態例において、最高均熱
区分は、それぞれが他の小区分と異なる温度に個別に加熱され得る、複数の小区分からなることができる。実施形態例において、最高均熱区分は、少なくとも5つの小区分のような、さらには少なくとも10の小区分のような、さらにまた、2〜50の小区分を含み、さらには5〜25の小区分を含む、少なくとも20の小区分のような、少なくとも2つの小区分からなり、それぞれの小区分は他の小区分とは異なる温度に個別に加熱することができる。
【0033】
したがって、最高均熱区分の温度が調節される場合、最高均熱区分の全体にわたる調節の必要はなく、代わりに、最高均熱区分の一部だけを調節することができる。言い換えれば、いくつかの小区分を調節し、他の小区分は調節しないでおくことができる。このようにすれば、最高均熱温度調節が必要な収縮特性を有するサンプルが与えられた時間に最高均熱区分を通過しているセラミック品の全ては代表していない場合に、そのサンプルが代表するセラミック品が通過している小区分だけの温度を調節することができ、そのサンプルが代表していないセラミック品が通過している小区分は調節する必要がない。言い換えれば、少なくとも1つのサンプルの収縮特性が所定の範囲内になければ、その少なくとも1つのサンプルが代表するセラミック品が最高均熱温度に加熱される区分を通過している間に、1つ以上の小区分の温度を順次に変えることによって最高均熱温度を調節することができる。
【0034】
例えば、最高均熱区分が20の小区分を有し、1時間に1台の台車がそれぞれの小区分を通過し、それぞれの台車に50個のセラミック品が置かれ、サンプルがトンネルキルンを通過している次の500個のセラミック品を代表して(言い換えれば、そのサンプルが連続する10台の台車上のセラミック品の全てを代表して)いれば、そのサンプルが代表するセラミック品を運んでいる台車によって占められている小区分は、必要であれば、調節することができ、そのサンプルが代表していないセラミック品を運んでいる台車によって占められている小区分は調節する必要がなく、よって、最高均熱区分の温度プロファイルは、サンプルが代表するセラミック品を運んでいる台車が最高均熱区分を通過している間、小区分毎に動的に調節される。
【0035】
表1は、サンプルの収縮特性が、そのサンプルが代表する全セラミック品について9℃の最高均熱温度の下げ調節を必要とし、それぞれの小区分の温度は1時間に3℃のレートで変えることができる、上述した例におけるそのような動的温度調節を示す。表1に示される例において、サンプルが代表していない全セラミック品(すなわちキルンを通過している次の500個以外のセラミック品)は、所定の設定点(T
S)からの最高均熱温度調節が必要ではない。表1において、横の最上行は1〜20に番号が付された最高均熱区分の小区分を表し、縦の第1列は時刻を時間単位で表しており、時刻=0はそのサンプルが代表する最初のセラミック品が小区分1において最高均熱区分に入った瞬間を表し、表1の残りの記載値は示される時刻における小区分のT
Sからの温度差を℃で表している。
【表1】
【0036】
図1は本明細書に開示されるようなプロセスを実施するために用いることができるトンネルキルンの実施形態例の構成の略図である。本実施形態において、トンネルキルン10は、前室領域12及び前室領域12の下流に配置された複数の除去区分(z1〜z11)を有する炭素含有材料放出領域14を備える。除去区分のそれぞれは、炭素含有材料を収集して下流への移動を防止するための収集トラップ領域(図示せず)を有する。キルンは炭素含有材料放出領域14の下流に配置された(部分的に示される)焼結領域16をさらに備える。放出された炭素含有材料を除去するための排気除去システム18が備えられ、放出領域14の除去区分と有効な態様で通じる。
【0037】
排気除去システム18は複数の抜取開口20を、詳しくはそれぞれの除去区域について少なくとも1つ、有する。放出される炭素含有材料は、対応する除去区域に対してキルンの天部に配置されることが好ましい、これらの抜取開口20を通して、気化しているかまたはある程度反応している形態で除去される。抜取開口20のそれぞれは二次コレクター
ダクト22と有効な態様で通じている。
図1に示される実施形態では抜取開口は天部に配置されるとして説明されているが、抜取開口の位置に関して重要な要件は、気化物が最も容易にまたは効率的に除去される位置に配置されることであり、必ずしも天部ではなく、例えば側壁またはキルンの地側の位置であり得ることに注意すべきである。
【0038】
抜取開口の形状に関しては、当業者であれば、放出される炭素含有材料の最適で有効な除去に最も適切な形状の抜取開口を経験的に決定し、それにしたがってトンネルキルン構成に組み入れることができる。
【0039】
二次コレクターダクト22は主コレクターダクト24に有効な態様で通じる。二次コレクターダクトと主コレクターダクトが連通する接合部の上流の二次コレクターダクトのそれぞれにダンパー弁26が設けられることが好ましい。排気ファンが主コレクターダクト24と有効な態様で通じ、放出される炭素含有材料を排気するに必要な引きをキルン焼成雰囲気に与えるように機能する。さらに、主コレクターダクト24にダンパー弁28が設けられる。ダンパー弁26のそれぞれは、除去区分z1〜z11のそれぞれにおいて個別の適切な排気引きを達成するように調節することができ、このようにすれば、放出される炭素含有材料の除去量が除去区分毎に移り変わる、及び/または変化することができる。複数本の二次ダクト22及び対応する抜取開口20及びキルン焼成雰囲気にかかる引きの全体制御はダンパー弁28の調節によって制御される。
【0040】
そうではないことが明白に言明されない限り、本明細書に述べられるいずれの方法もその工程が特定の順序で実施されることが必要であると解されることは全く意図されていない。したがって、方法請求項がその工程によってしたがわれるべき順序を実際に挙げていないか、または、そうではなくとも、工程が特定の順序に限定されるべきであると請求項または説明において特に言明されていない場合、いかなる特定の順序も推測されることは全く意図されていない。
【0041】
添付される特許請求の範囲に述べられるような本発明の精神または範囲を逸脱することなく様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。本開示の精神及び本質を組み込んでいる、開示された実施形態の改変組合せ、副組合せ及び変形が当業者には思い浮かび得るから、本開示は添付される特許請求項及びその等価形態の範囲内に全てを含むと解されるべきである。
【符号の説明】
【0042】
10 トンネルキルン
12 前室領域
14 炭素含有材料放出領域
16 焼結領域
18 排気除去システム
20 抜取開口
22 二次コレクターダクト
24 主コレクターダクト
26,28 ダンパー弁