(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉛直方向を向く軸線回りにタイヤを回転可能に支持するスピンドル軸と、前記スピンドル軸の軸線と平行な軸心回りに回転自在に支持されると共にタイヤに近接離反自在とされた回転ドラムとを備えたタイヤ試験機において、前記スピンドル軸の軸線に対する前記回転ドラムの配置を確認する回転ドラムのアラインメント確認装置であって、 前記スピンドル軸に水平方向を向いて形成された取付面に対して装着可能とされると共に、前記取付面と直角となる方向に案内面を備えた本体部と、
前記本体部の案内面に、上下方向に沿って取り付けられたリニアガイド部と、
前記リニアガイド部に対して転動部材を介して取り付けられると共に、前記転動部材を転動させることでリニアガイド部の敷設方向に沿って移動可能とされたスライダと、
前記スライダに基端側が取り付けられると共に、先端側が回転ドラム側に伸びるアーム部材と、
前記アーム部材の先端側に取り付けられたダイヤルゲージと、
を備え、
前記アーム部材には、
前記回転ドラムの側面に前記ダイヤルゲージの測定子を接触させることで、前記回転ドラムの側面が前記スピンドル軸の軸線に対して平行であることを確認する平行確認用アーム部材と、
前記回転ドラムの上面または下面に前記ダイヤルゲージの測定子を接触させることで、前記回転ドラムの上面または下面が前記スピンドル軸の軸線に対して直角であることを確認する直角確認用アーム部材と、があり、
前記平行確認用アーム部材と直角確認用アーム部材とは前記スライダに対して取り替え可能とされていて、
前記回転ドラムの側面には、前記タイヤが接触する位置に形成されたドラム溶射面と、前記ドラム溶射面の上部に隣接して形成される上部非溶射面と、前記ドラム溶射面の下部に隣接して形成される下部非溶射面と、が形成されており、
前記平行確認用アーム部材の先端に設けられたダイヤルゲージの測定子を前記上部非溶射面に接触させるように、前記スライダをリニアガイド部に位置決めする上部位置決め手段と、
前記平行確認用アーム部材の先端に設けられたダイヤルゲージの測定子を前記下部非溶射面に接触させるように、前記スライダをリニアガイド部に位置決めする下部位置決め手段と、
が設けられている
ことを特徴とする回転ドラムのアラインメント確認装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明のアラインメント確認装置1の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。まず、アラインメント確認装置1の説明に先立ち、アラインメント確認装置1が設けられるタイヤ試験機2について説明する。
図1は、第1実施形態のアラインメント確認装置1が設けられたタイヤ試験機2を模式的に示したものである。
【0014】
図1に示すように、タイヤ試験機2は、鉛直方向を向く軸線回りに回転可能とされたスピンドル軸3と、スピンドル軸3の軸線と平行な軸心回りに回転自在に支持されると共にタイヤに近接離反自在とされた回転ドラム4とを備えている。
具体的には、スピンドル軸3は、鉛直方向を向く軸線に沿って配備されたスピンドルシャフト5と、スピンドルシャフト5と同軸となる円筒状に形成されると共にスピンドルシャフト5を内部に収容したスピンドルハウジング6とを備えている。このスピンドルシャフト5とスピンドルハウジング6との間には、スピンドルハウジング6に対してスピンドルシャフト5を回転自在に支持する軸受7が配備されている。この軸受7の作用によりスピンドルシャフト5は鉛直方向を向く軸線回りに回転可能とされている。
【0015】
上述したスピンドルシャフト5は、長尺な丸棒状の部材であり、上下方向に沿って配備されている。このスピンドルシャフト5の上端側は、下端側に比べて大径なフランジ部8とされている。このスピンドルシャフト5のフランジ部8の上面は水平方向を向く平坦な面とされている。このスピンドルシャフト5のフランジ部8の平坦な上面の中央には図示を省略する上シャフトの先端(下端)を嵌入可能な係合孔が形成されている。そして、その係合孔を介して、スピンドルシャフト5のフランジ部8に上シャフトを連結させることで上下のリム部材9の間にタイヤを挟み込み、スピンドル軸3にタイヤを保持(固定)できるようになっている。
【0016】
さらに、スピンドルシャフト5の下端側には、スピンドル軸3の側方に隣接して配備されたモータからベルトやチェーンなどを介して回転駆動力が伝達されており、スピンドルハウジング6(基礎)に対して、タイヤが保持されたスピンドルシャフト5を回転駆動できるようになっている。
回転ドラム4は、鉛直方向を向く軸心、すなわちスピンドル軸3の軸線と平行な軸心回りに円筒状に形成された部材であり、スピンドル軸3から水平方向に距離をあけて配備されている。回転ドラム4の外周面(側面)は軸心の周囲を周回する円筒な面状に形成されており、この円筒な外周面がタイヤを走行させる模擬走行路面10とされている。
【0017】
具体的には、回転ドラム4は、円筒状に形成されると共に外周面に模擬走行路面10が形成されたドラム本体11と、このドラム本体11を回転自在に支持するドラムシャフト12とを備えている。このドラム本体11の外周面については上下方向の中途側が溶射により粗面化されており、ドラム本体11は粗面化された部分をタイヤが走行する構成となっている。
【0018】
また、溶射された部分の上部に隣接する外周面は、溶射されていない上部非溶射面13とされており、後述するダイヤルゲージ14を接触できるようになっている。また、溶射された部分の下部に隣接する外周面は、溶射されていない下部非溶射面15とされており、上部非溶射面13と同様にダイヤルゲージ14を接触できるようになっている。そして、本発明のアラインメント確認装置1では、これらの上部非溶射面13と下部非溶射面15との2点にダイヤルゲージ14を接触させて計測を行うことで、スピンドル軸3の軸線に対して回転ドラム4の外周面が平行であることが確認可能とされている。
【0019】
この回転ドラム4の中央には上下方向に沿って貫通孔が形成されており、貫通孔の内部にはドラムシャフト12が挿通されている。このドラムシャフト12は、ドラム本体11との間に図示を省略する軸受を有しており、ドラム本体11を鉛直方向を向く軸心回りに回転自在に支持している。
また、ドラムシャフト12の上下方向の長さはドラム本体11よりも長尺であり、ドラムシャフト12の上端はドラム本体11の上面よりも上方に突出しており、またドラムシャフト12の下端はドラム本体11の下面よりも下方に突出している。そして、これらの突出した上端及び下端には、回転ドラム4に加わった荷重を計測可能なロードセル16が設けられており、これらのロードセル16を用いてドラムシャフト12(回転ドラム4)に加わった荷重など力成分を計測できるようになっている。
【0020】
ところで、本発明のアラインメント確認装置1は、回転ドラム4の軸心とスピンドル軸
3の軸線とが平行となるよう、また、スピンドル軸3の軸線に対する回転ドラム4の配置を確認するためのものである。
具体的には、本発明の回転ドラム4のアラインメント確認装置1は、スピンドル軸3の上側に水平方向を向いて形成された取付面17(本実施形態の場合であればフランジ部8の上面)に対して装着可能とされる本体部18を有している。この本体部18には取付面17と直角となる方向に案内面19が形成されており、案内面19には上下方向に沿ってリニアガイド部20が取り付けられている。また、リニアガイド部20には、このリニアガイド部20に対して転動部材を介して取り付けられると共に転動部材を転動させることでリニアガイド部20の敷設方向に沿って移動可能とされたスライダ21(スライドナット)が設けられている。そして、このスライダ21には、スライダ21に基端側が取り付けられると共に、先端側が回転ドラム4側に伸びるアーム部材22と、アーム部材22の先端側に取り付けられて、アーム部材22の先端から回転ドラム4の表面までの距離を計測するダイヤルゲージ14と、が設けられている。
【0021】
次に、本発明のアラインメント確認装置1を構成する本体部18、リニアガイド部20、スライダ21、アーム部材22、及びダイヤルゲージ14について詳しく説明する。
本体部18は、スピンドル軸3の上部に対して、リニアガイド部20を鉛直方向に沿って取り付けるための部材である。具体的には、上述したようにスピンドル軸3のスピンドルシャフト5の上端側にはフランジ部8が形成されており、このフランジ部8の上面は水平方向を向く平坦な面状に形成されている。そして、本体部18は、この平坦なフランジ部8の上面を取付面17として、この取付面17に起立状に装着されている。
【0022】
また、本体部18は、上方に向かって尖ったテーパ状の形状(上部が傾斜状に截頭された角柱形状)に形成された部材である。本体部18の下側には、上述した取付面17と面状態で接触可能な底面(
図2のA)が形成されている。また、本体部18の回転ドラム4側を向く側面(
図2のB)は、底面に対して厳密に直角となるように形成されており、上述したリニアガイド部20を装着する取付面17とされている。つまり、底面がフランジ部8の上面に面状態で接するように本体部18をフランジ部8の上面に装着すると、本体部18の側面を鉛直方向に沿って配備することが可能となり、リニアガイド部20を鉛直方向に沿って配備することが可能となる。
【0023】
リニアガイド部20は、取付面17の上に鉛直方向を向いて取り付けられたレール部材であり、ボールやコロなどの転動部材を有するスライダ21を上下方向に案内するために用いられる。このリニアガイド部20には、転動部材を転動させるガイド面がスピンドル軸3の軸線と平行となるように設けられており、ガイド面の敷設方向(鉛直方向)に沿ってスライダ21を案内可能としている。
図2のリニアガイド部20の場合であれば、水平方向を向く取付面17と直交する向きにガイド面が形成されており、このガイド面に沿ってスライダ21が鉛直方向に沿って案内可能とされている。
【0024】
また、リニアガイド部20には、スライダ21の移動範囲の上限を決定する上部位置決め手段23(上部のストッパ)と、スライダ21の移動範囲の下限を決定する下部位置決め手段24(下部のストッパ)とが設けられている。この上部位置決め手段23は、後述するダイヤルゲージ14の測定子を回転ドラム4側面の上部に形成される上部非溶射面13に接触させるように、スライダ21をリニアガイド部20に位置決めするものである。また、下部位置決め手段24は、後述するダイヤルゲージ14の測定子を下部非溶射面15に接触させるように、スライダ21をリニアガイド部20に位置決めするものである。
【0025】
上述した上部位置決め手段23及び下部位置決め手段24には、本体部18からスライダ21に向かって突出するように設けられた位置決めボルト25が設けられている。この位置決めボルト25は、本体部18の回転ドラム4側の表面(ガイド面)から起立する板状のボルト取付部26に設けられており、スライダ21に接触することでスライダ21の上下移動を規制できるようになっている。
【0026】
具体的には、ボルト取付部26は、リニアガイド部20の側方に位置するガイド面から回転ドラム4側に向かって突出するように設けられている。そして、この板状のボルト取付部26を板厚方向に貫通するように位置決めボルト25が水平方向を向いて設けられて
いる。つまり、位置決めボルト25は、ボルト取付部26に螺合して取り付けられているので、工具などを用いて位置決めボルト25を締めたり緩めたりすれば、位置決めボルト25の先端がボルト取付部26からスライダ21側に向かって進出したり、遠ざかったりする。そして、先端がスライダ21の側面に接触するまで位置決めボルト25を進出させればスライダ21の上下移動が規制され、位置決めボルト25の先端をスライダ21の側面から離間させればスライダ21の上下移動が許容され、測定子を回転ドラム4の側面の上部非溶射面13に接触させて計測を行うことが可能となる。
【0027】
一方、下部位置決め手段24の位置決めボルト27は、本体部18におけるリニアガイド部20の下側に隣接した位置から回転ドラム4側へ向かって突出するように設けられた板状のボルト取付部28に対して、この板状のボルト取付部28を上下方向に貫通するように設けられている。この下側の位置決めボルト27も、工具などを用いて上下方向に高さ調整できるようになっている。それゆえ、ダイヤルゲージ14の測定子と回転ドラム4の側面の下部非溶射面15とが同じ高さになる位置に上述した下部位置決め手段24を設けておけば、測定子を回転ドラム4の側面の下部非溶射面15に接触させて計測を行うことが可能となる。
【0028】
図2及び
図3に示すように、スライダ21は、上述したリニアガイド部20の敷設方向(上下方向)に沿って移動可能とされた部材である。このスライダ21は、後述の
図4Bに示すように、リニアガイド部20側を向く側面が凹んで形成されており、この凹んだ部分に上述したリニアガイド部20を嵌入させるようにして上下方向に案内可能とされている。
【0029】
また、スライダ21は、リニアガイド部20のガイド面上を転動するボールやコロなどの転動部材を有している。このような転動部材を用いるのは、次のような理由に基づいている。
つまり、スライダ21とリニアガイド部20との間に転動部材がない場合、リニアガイド部20に対してスライダ21を移動させるためには、スライダ21とリニアガイド部20との間にある程度の隙間が必要となる。ところが、このような隙間があるとリニアガイド部20に対してスライダ21が振れやすくなり、回転ドラム4に対するダイヤルゲージ14の姿勢が安定しにくくなり、ダイヤルゲージ14の計測精度が低下してしまう。ところが、上述したスライダ21では、転動部材がガイド面上を転動する際のころがりを利用してスライダ21が移動するので、リニアガイド部20に対する移動にぶれが殆ど生じなくなり、ダイヤルゲージ14の計測精度を良好な状態に維持することが可能となる。
【0030】
なお、転動部材を用いたスライダ21を利用すればリニアガイド部20との隙間を小さくすることは可能であるが、この隙間をさらに小さくするにはスライダ21に予圧が加えられたものを用いるのが好ましい。すなわち、バネなどによりリニアガイド部20側にスライダ21自体を押し付けておけば、スライダ21とリニアガイド部20との隙間がさらに小さくなって、ダイヤルゲージ14をより精確に上下移動させることが可能となり、ダイヤルゲージ14の計測精度をより良好な状態に維持することが可能となる。
【0031】
アーム部材22は、スライダ21とダイヤルゲージ14とを連結する長尺な棒状の部材である。アーム部材22の基端側は、ボルトなどを用いてスライダ21に固定されている。また、アーム部材22の先端側には、ダイヤルゲージ14が設けられている。
上述したアーム部材22には、スピンドル軸3の軸線に対して回転ドラム4が平行であることを確認する際に用いる平行確認用アーム部材30と、スピンドル軸3の軸線に対して回転ドラム4が直角であることを確認する際に用いる直角確認用アーム部材31と、がある。
【0032】
平行確認用アーム部材30は、長手方向の中途側が略直角に折り曲げられた棒状の部材である。平行確認用アーム部材30の先端側には、ダイヤルゲージ14が水平方向に向かって伸びる測定子を回転ドラム4の側面に接触させるようにして設けられている。なお、図例の平行確認用アーム部材30は、基端側から水平方向に沿って回転ドラム4側に伸び、長手方向の中途側で下方に向かって略直角に曲げられている。そして、平行確認用アーム部材30の先端(下端)には、ダイヤルゲージ14の測定子が回転ドラム4の側面側を
向いて取り付けられている。
【0033】
また、直角確認用アーム部材31は、平行確認用アーム部材30と同様に、スライダ21と回転ドラム4の近傍との間を連結する部材である。この直角確認用アーム部材31の先端側に、ダイヤルゲージ14が鉛直方向に向かって伸びる測定子を回転ドラム4の上面に接触させるようにして設けられている。なお、図例の直角確認用アーム部材31は、基端側から水平方向に沿って回転ドラム4側に伸び、長手方向の中途側で下方に向かって垂直に曲げられており、垂直に曲げられた下端にダイヤルゲージ14の測定子が回転ドラム4の上面側を向いて取り付けられている。
【0034】
ダイヤルゲージ14は、アーム部材22の先端側に取り付けられていて、回転ドラム4の表面に接触する測定子を備えている。このダイヤルゲージ14は、アームの先端側から回転ドラム4の表面までの距離の変化量を計測するものとなっている。
次に、上述したアラインメント確認装置1を用いて回転ドラム4の配置を確認する方法、言い換えれば本発明の回転ドラム4のアラインメント確認方法について説明する。
【0035】
まず、スピンドル軸3の軸線に対して回転ドラム4の水平を確認する手順について説明する。
図4A及び
図4Bに示すように、スピンドル軸3の軸線に対して回転ドラム4の水平を確認する際には、まずアラインメント確認装置1の本体部18をスピンドル軸3のフランジ部8の上面に載せ、フランジ部8の上面(取付面17)に本体部18の底面を接触させるようにして本体部18をスピンドル軸3の上部に延接するように固定する。
【0036】
次に、本体部18の案内面19のリニアガイド部20に取り付けられたスライダ21に、平行確認用アーム部材30を取り付ける。この平行確認用アーム部材30は、スライダ21に連結された基端側から回転ドラム4側に向かって水平方向に伸び、長手方向の中途側で下方に略直角に折れ曲がり、折り曲げられた下端側(先端側)にダイヤルゲージ14が取り付けられている。このダイヤルゲージ14は、測定子を水平方向に向けるようにして配備されており、測定子の先端を回転ドラム4の側面に当接させることが可能とされている。
【0037】
次に、このスライダ21をリニアガイド部20の敷設方向に沿ってリニアガイド部20の上端まで移動させ、上述した上部位置決め手段23の位置決めボルト25を締め付けてスライダ21をリニアガイド部20の上端に位置決めする。そうすると、ダイヤルゲージ14の測定子が回転ドラム4の側面の上部非溶射面13に対応した高さに位置するようになり、ダイヤルゲージ14を用いて、アームの先端側から回転ドラム4の表面までの距離、言い換えれば、スピンドル軸3の軸線から上部非溶射面13までの距離を計測することが可能となる。
【0038】
上部非溶射面13にダイヤルゲージ14の測定子が接触している状態で回転ドラム4を固定させたまま、ダイヤルゲージの先端を上部非溶射面13上で走査させる。具体的には、スピンドルシャフト5を任意の角度だけ回転し、そのスピンドルシャフト5の上端側のフランジ部8の上面に載せられているアラインメント確認装置1を搖動させ、
図4Bに示すように、ダイヤルゲージの先端を上部非溶射面13上で走査させる。この時のダイヤルゲージの先端が最も引っ込んだときの値を「数値A」として読み込む。
【0039】
次に、上部位置決め手段23の位置決めボルト25を緩めてスライダ21の下方移動を可能とし、スライダ21をリニアガイド部20の敷設方向に沿って下方に移動させる。そして、スライダ21がリニアガイド部20の下端まで移動した際に、下部位置決め手段24の位置決めボルト27を用いてスライダ21をリニアガイド部20の下端で位置決めする。そうすればスライダ21の下方移動が規制され、ダイヤルゲージ14の測定子を回転ドラム4の下部非溶射面15に接触させることが可能となる。
【0040】
そして、下部非溶射面15にダイヤルゲージ14の測定子が接触している状態で回転ドラム4を固定させたまま、ダイヤルゲージの先端を下部非溶射面15上で走査させる。すなわち、「数値A」を読み込んだ場合と同様に、具体的には、スピンドルシャフト5を任意の角度だけ回転し、そのスピンドルシャフト5の上端側のフランジ部8の上面に載せられているアラインメント確認装置1を搖動させ、
図4Bに示すように、ダイヤルゲージの
先端を下部非溶射面15上で走査させる。この時のダイヤルゲージの先端が最も引っ込んだときの値を「数値B」として読み込む。
【0041】
上述した「数値A」及び「数値B」が読み込まれたら、「数値A」から「数値B」を差し引き、上部非溶射面13から下部非溶射面15までの距離L(回転ドラム4の高さL)で除した評価指標( (A−B)/L。あるいは、その(A−B)/Lの絶対値。)を用いて、スピンドル軸3の軸線に対する回転ドラム4の平行を評価する。
すなわち、評価指標が予め定められた基準値(PARAL CRITERIA)を超える場合には、スピンドル軸3の軸線に対して「回転ドラム4が平行となっていない」と判断し、評価指標が予め定められた基準値(PARAL CRITERIA)以下の場合には、スピンドル軸3の軸線に対して「回転ドラム4が平行となっている」と判断する。
【0042】
一方、スピンドル軸3の軸線に対して回転ドラム4の上面(下面)が直角であることを確認する際には、
図5に示すように、スライダ21に直角確認用アーム部材31を取り付ける。この直角確認用アーム部材31の先端側に取り付けられたダイヤルゲージ14は、測定子を上下方向(鉛直方向)に向けるようにして配備されており、測定子の先端が回転ドラム4の上面に当接するようになっている。
【0043】
上述した直角確認用アーム部材31のダイヤルゲージ14を用いて回転ドラム4の上面(下面)が直角であることを確認する際には、まず、このスライダ21をリニアガイド部20の敷設方向に沿ってリニアガイド部20の上方に移動させ、ダイヤルゲージ14の測定子を回転ドラム4の上面に接触させて、上述した上部位置決め手段23を用いてスライダ21をリニアガイド部20の上端に位置決めする。そして、ダイヤルゲージ14の測定子を回転ドラム4の上面に接触させた状態で、直角確認用アーム部材31の先端に対する回転ドラム4の上面の位置(上下方向の高さ)を計測する。
【0044】
具体的には、直角確認用アーム部材31はスライダ21から水平方向に回転ドラム4側に向かって伸び、回転ドラム4の上方で下方に向かって略直角に折り曲げられており、折り曲げられた部分の先端(下端)にダイヤルゲージ14を備えた構成となっている。また、直角確認用アーム部材31が取り付けられた本体部18はスピンドル軸3の軸線回りに回転可能となっており、本体部18を軸線回りに回転させると、回転ドラム4の上面を一方から他方へ円弧状に横切るようにダイヤルゲージ14が移動する構成となっている。
【0045】
例えば、
図6に示すように、円弧状の軌道で回転ドラム4の上面を横切るダイヤルゲージ14が、円形の外周縁と交差する場所の一方(
図6のE点)でダイヤルゲージ14の測定子を押し当てて計測を行う。そして、この位置での計測数値を「数値E」として記録する。
次に、この上面の外周縁の他方(
図6のF点)にダイヤルゲージ14の測定子を押し当て、この位置での計測数値をスピンドル軸3の軸線から回転ドラム4までの「数値F」として記録する。このとき、回転ドラム4を回転させ、E点をF点に一致させるようにして計測する。こうすることで、回転ドラム4の上側に生じる機械加工面のずれをキャンセルすることができる。
【0046】
このようにして「数値E」及び「数値F」が読み込まれたら、「数値E」から「数値F」を差し引き、一方の外周縁から他方の外周縁までの水平距離Lで除した評価指標((E−F)/L。あるいはその(E−F)/Lの絶対値。)を用いて、スピンドル軸3の軸線に対する回転ドラム4の直角を評価する。
すなわち、評価指標が予め定められた基準値(SQUARE CRITERIA)を超える場合には、スピンドル軸3の軸線に対して「回転ドラム4が直角となっていない」と判断し、評価指標が予め定められた基準値(SQUARE CRITERIA)以下の場合には、スピンドル軸3の軸線に対して「回転ドラム4が直角となっている」と判断する。
【0047】
上述のようにして「回転ドラム4が平行となっていない」という評価や「回転ドラム4が直角となっていない」という評価が得られたら、
図7のような手順で、スピンドル軸3の軸線に対する回転ドラム4の配置を修正する。
回転ドラム4が平行となっていない場合には、ロードセル16の図示しない取付ボルトを緩めて、ロードセル16の位置をスピンドル軸3に対し近づけたり、遠ざけたりするこ
とで、回転ドラム4の平行を調整後、ロードセル16の取付ボルトを正規の締め付けトルクで固定する。
【0048】
また、回転ドラム4が直角となっていない場合には、回転ドラム4を支持するハウジングと、このハウジングを水平方向に移動させるためのガイド機構との間に、板状のシム32を入れることで回転ドラム4の直角を修正することができる。つまり、回転ドラム4の前後左右の4箇所に対して適宜シム32を挟み込めば、回転ドラム4の軸心をスピンドル軸3の軸線に平行なものにすることが可能となる。
【0049】
上述したスライダ21はリニアガイド部20に対して転動部材を介して取り付けられているため、スライダ21とリニアガイド部20との間にがたつきが殆どない。そのため、水平確認用アーム部材22や直角確認用アーム部材31を上下や左右に移動させても、アームの先端に取り付けられたダイヤルゲージ14がぶれることはない。そのため、スピンドル軸3の軸線に対する回転ドラム4の配置を、より詳しくは、スピンドル軸3の軸線に対して回転ドラム4の軸心が平行であることや、スピンドル軸3の軸線に対して回転ドラム4の上面もしくは下面が直角であることを、精確に確認することができる。
【0050】
また、上述したように、スライダ21に対して水平確認用アーム部材22と直角確認用アーム部材31とを取り替え自在に設ければ、回転ドラム4の水平を確認する際と直角を確認する際とでスライダ21などの部材を共通化することができ、アラインメント確認装置1の構成を簡単にすることが可能となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0051】
例えば、上述した上部位置決め手段23には、スライダ21の側面に位置決めボルト25を接触させてスライダ21の移動を規制するものが設けられていたが、この上部位置決め手段23には他の位置決め手段を設けることもできる。
すなわち、
図8A及び
図8Bに示すように、スライダ21の上側に、回転ドラム4側に向かって突出するブラケット33を設ける。また、リニアガイド部20の上端に、案内面19から回転ドラム4側に向かって突出する取付片(ボルト取付部26)を設けておく。さらに、この取付片に、位置決めボルト25(図例では蝶ナット)を上下方向に出退自在に取り付けると共に、ブラケット33に位置決めボルト25が螺合可能なボルト孔を形成する。このようにすれば取付片から下方に向かって突出した位置決めボルト25の先端がブラケット33のボルト孔に螺合し、スライダ21の位置をリニアガイド部20の上端に位置決めすることが可能となる。
【0052】
また、
図8Cに示すように、リニアガイド部20の上端に、案内面19から回転ドラム4側に向かって突出する板状の取付片を設けておき、この取付部の先端に棒状の揺動部材34を揺動可能に設ける。この揺動部材34を長手方向の一端が他端に対して揺動自在となるように取付片の先端に設け、揺動された揺動部材34の一端をスライダ21の下側に差し入れ可能とする。このようにしても、スライダ21の下側に差し入れられた揺動部材によりスライダ21の下方移動が規制され、スライダ21の位置をリニアガイド部20の上端に位置決めすることが可能となる。