【実施例1】
【0024】
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒駆動機構を
図2に基づいて説明する。
【0025】
本実施例の制御棒駆動機構を説明する前に、本実施例の制御棒駆動機構が適用される沸騰水型原子力発電プラントの概略構成を、
図1を用いて説明する。
【0026】
沸騰水型原子力発電プラントは、炉心への冷却水の供給の形態により、強制循環型沸騰水型原子力発電プラント及び自然循環型原子力発電プラントの2つに分類される。強制循環型沸騰水型原子力発電プラントでは、原子炉に設けられた再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)の駆動によって冷却水が強制的に炉心に供給される。自然循環型原子力発電プラントでは、原子炉に再循環ポンプまたはインターナルポンプが設けられていなく、冷却水が自然循環により炉心に供給される。冷却水の自然循環力を高めるために、チムニーが原子炉内に設けられる。
【0027】
本実施例の制御棒駆動機構は、強制循環型沸騰水型原子力発電プラント及び自然循環型原子力発電プラントのそれぞれの原子炉に適用することができる。ここでは、本実施例の制御棒駆動機構が適用される自然循環型原子力発電プラントの構成を、
図1を用いて説明する。
【0028】
自然循環型原子力発電プラント1は、原子炉2、タービン15及び復水器16を有する。原子炉2は、原子炉圧力容器3を有し、原子炉圧力容器3内に、炉心シュラウド5、上部格子板53、炉心支持板54、チムニー10、気水分離器11及び蒸気乾燥器12を設置している。少なくとも自然循環型原子力発電プラント1の運転中では、原子炉圧力容器3は、上端部に蓋4が取り付けられて密封されている。複数の燃料集合体7が装荷された炉心6は、炉心シュラウド5によって取り囲まれている。炉心支持板54は、炉心6の下方に配置されて炉心シュラウド5に取り付けられる。上部格子板53は、炉心6の上方に配置されて炉心シュラウド5に取り付けられる。炉心6は、炉心支持板54と上部格子板53の間に配置される。
【0029】
炉心6に装荷された各燃料集合体7の下端部は、炉心支持板54に設置された複数の燃料支持金具(図示せず)によって支持される。各燃料集合体7の上端部は、上部格子板53によって支持される。
【0030】
上部格子板53の上方に配置されるチムニー10は、円筒状の外筒55及び格子部材56を有する。外筒55は、炉心シュラウド5の上端に取り付けられる。格子部材56は、外筒55内に配置されて外筒55の内面に取り付けられる。格子部材56は、複数の仕切り板を格子状に組み合わせて構成され、外筒55の下端から外筒55の上端まで伸びている。格子部材56によって、横断面が正方形の複数の冷却材通路57が外筒55内に形成される。気水分離器11はチムニー10の上方に配置され、蒸気乾燥器12は気水分離器11の上方に配置される。
【0031】
複数の制御棒案内管8が原子炉圧力容器3内で炉心6の下方に配置される。複数の制御棒駆動機構ハウジング9が、原子炉圧力容器3の底部を貫通して原子炉圧力容器3に取り付けられている。各制御棒案内管8の下端がそれぞれの制御棒駆動機構ハウジング9の上端に連結される。
【0032】
炉心6に装荷された燃料集合体7間に出し入れされて原子炉出力を制御する複数の制御棒20(
図2参照)が、それぞれの制御棒案内管8内に別々に配置される。これらの制御棒8の下端部は、制御棒駆動機構21の上端部に着脱可能に連結されている。各制御棒駆動機構21は、制御棒駆動機構ハウジング9内に別々に収納されている。減速材と冷却材を兼ねた冷却水が、原子炉圧力容器3内に充填される。
【0033】
タービン15は、主蒸気配管58によって原子炉圧力容器3に設けられたノズル13に接続される。復水器16は、タービン15の下方に配置され、給水配管17によってノズル14に接続される。給水ポンプ18及び給水加熱器19が給水配管17に設けられる。
【0034】
必要な数の制御棒20が、それぞれの制御棒駆動機構21により炉心6から引き抜かれ、自然循環型原子力発電プラント1の原子炉出力が定格出力である100%出力まで上昇する。その後、自然循環型原子力発電プラント1は、1つの運転サイクルが終了するまで、実質的に100%出力で運転される。自然循環型原子力発電プラント1の運転中では、炉心6に供給される冷却水は、それぞれの燃料集合体7内を流れ、燃料集合体7に含まれる複数の燃料棒内の核燃料物質の核分裂により発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この結果、冷却水及び蒸気を含む気液二相流が、各燃料集合体7内を上昇する。
【0035】
この気液二相流は、チムニー10に形成されたそれぞれの冷却材通路57を上昇し、気水分離器11に流入する。気水分離器11は、流入した気液二相流に含まれる冷却水と蒸気を分離する。分離された蒸気は、蒸気乾燥器12に流入してされに湿分を除去され、主蒸気配管58に排出される。この蒸気(飽和蒸気)は、タービン15に導かれてタービン15を回転させる。タービン15に連結された発電機(図示せず)も回転され、電力が発生する。
【0036】
タービン15から排出された蒸気は、復水器16で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管17を通って原子炉圧力容器3内に供給される。給水は、給水ポンプ18で昇圧され、給水加熱器19で加熱されて温度が上昇した後に、原子炉圧力容器3内に導かれる。
【0037】
給水配管17によって原子炉圧力容器3内に供給された給水は、気水分離器11で分離された冷却水に混合される。給水を混合した冷却水は、原子炉圧力容器3の内面とチムニー10の外筒55及び炉心シュラウド5のそれぞれの外面との間に形成される、横断面が環状であるダウンカマ59内に流入する。この冷却水は、ダウンカマ59内を下降して炉心6内の各燃料集合体7内に供給される。
【0038】
核燃料集合体7内への冷却水の供給は、冷却水の自然循環によって行われる。冷却水の自然循環力は、炉心6内を上昇する密度の低い気液二相流とダウンカマ59内を下降する密度の高い冷却水の密度差によって生じ、この冷却水の自然循環力は、チムニー10の煙突効果によってさらに強められる。
【0039】
本実施例の制御棒駆動機構21の構成を、
図2を用いて説明する。
【0040】
制御棒駆動機構21は、ピストンチューブ23、ボールねじ24、ボールナット26、アウターチューブ28、ガイドチューブ29、スプールピース34、内側磁気継手35、外側磁気継手40及びモータ39を有する。ガイドチューブ29がアウターチューブ28内に配置され、ガイドチューブ29の下端部がアウターチューブ28に支持される。ピストンチューブ23がガイドチューブ29内に配置される。上部ガイド30がアウターチューブ28の上端部に取り付けられる。ガイドチューブ29の上端部は外径が小さくなっており、皿バネ32が、ガイドチューブ29の外径が小さくなった上端部の外側に配置される。皿バネ32は、ガイドチューブ29と上部ガイド30の間に配置される。31はコイルバネである。
【0041】
ボールねじ24がピストンチューブ23の中心軸に形成された中空部内に挿入されている。ボールナット26がボールねじ24と噛み合っており、ピストンチューブ23の下端がボールナット26の上面に置かれている。ピストンチューブ23の上端部が制御棒20の下端部に取り外し可能に連結される。
【0042】
スプールピース34が制御棒駆動機構ハウジン9の下方に配置され、スプールピース34のフランジ38が制御棒駆動機構ハウジン9のフランジ9Aに複数のボルト42により取り外し可能に取り付けられている。シール部材である金属製のOリング45が、スプールピース34のフランジ38と制御棒駆動機構ハウジン9のフランジ9Aの間に配置され、スプールピース34のフランジ38と制御棒駆動機構ハウジン9のフランジ9Aの間の気密性を担保している。
【0043】
アウターチューブ28の下端は、スプールピース34内に達しており、スプールピース34内に配置された円筒状の支持部材48によって支持されている。アウターチューブ28の外径は、アウターチューブ28の全長に亘って、スプールピース34の内径よりも小さくなっており、アウターチューブ28をスプールピース34内に挿入することができる。このため、アウターチューブ28は、アウターチューブ28の半径方向においてスプールピース34の内面よりも外側に突出していない。スプールピース34の内径は、制御棒駆動機構ハウジン9の内径に実質的に等しくなっている。
【0044】
磁気継手が、内側磁気継手35及び外側磁気継手40を含んでいる。内側磁気継手35は、スプールピース34内に配置され、回転軸33に取り付けられる。分離検出機構23がボールねじ24の下端部に取り付けられる。回転軸33の上端が分離検出機構23に取り外し可能に連結される。コイルバネ37が、回転軸33に取り付けられたバネ受け60と分離検出機構23との間で回転軸33を取り囲んで配置される。ベアリングケース47が、バネ受け60と内側磁気継手35の間でスプールピース34内に配置され、スプールピース34に取り付けられている。回転軸33は、ベアリングケース47に設置された複数のベアリングによって回転可能に支持される。
【0045】
モータ39が、スプールピース34の下方に配置され、支持部材51によってスプールピース34に取り外し可能に取り付けられる。外側磁気継手40が、モータ39の回転軸に連結され、スプールピース34とモータ39の間に配置される。外側磁気継手40の円筒部は、スプールピース34の外側でスプールピース34を取り囲むように配置される。外側磁気継手40の円筒部の内面に設けられた外側磁石が、スプールピース34の側壁を間に挟んで、内側磁気軸受35の外面に設けられた内側磁石と向き合っている。外側磁気継手40の内面はスプールピース34の外面に接触していなく、外側磁気継手40の内面とスプールピース34の外面の間には、隙間が形成されている。さらに、保持ブレーキ61が、モータ39の上方に配置され取り付けられ、支持部材51に取り付けられている。保持ブレーキ61は、モータ39の回転が停止されているとき、モータ39の回転軸の回転を阻止し、制御棒20の自重によりボールねじ24が回転して制御棒20が下降することを防いでいる。
【0046】
制御棒20を炉心6から引き抜き場合には、制御棒駆動機構21においてモータ39を制御棒20の引き抜きが可能な方向に回転させる。モータ39の回転力は、外側磁気継手40に伝えられて外側磁気継手40を回転させる。外側磁気継手40が回転すると、スプールピース34内に配置された内側磁気継手35も、外側磁気継手40が回転する方向に回転する。この結果、回転軸33が回転され、ボールねじ24も外側磁気継手40が回転する方向に回転される。ボールねじ24に噛み合うボールナット26は、ガイドチューブ29によって回転が阻止されるため、下方に向かって移動する。ボールナット26に載っているピストンチューブ23が下降し、制御棒20が制御棒案内管8内を下降する。このため、制御棒20が炉心6から引き抜かれ、原子炉出力が上昇する。
【0047】
なお、
図2に示された制御棒20は、炉心6から完全に引き抜かれており、最も低い位置に存在している。
【0048】
ここで、従来例の制御棒駆動機構21Cを
図5に基づいて説明する。制御棒駆動機構21Cの構成のうち、本実施例の制御棒駆動機構21の構成と異なっている部分のみを説明する。制御棒駆動機構21Cでは、アウターチューブ22の下端部にフランジ43が形成されている。このフランジ43は、ボルト41によって制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aに取り付けられる。スプールピース34Aのフランジ38Aが、スプールピース34Aのフランジ38A及びアウターチューブ22のフランジ43を貫通するボルト42によって制御棒駆動機構ハウジング9に取り付けられる。制御棒駆動機構21に設けられた分離検出機構23は、制御棒駆動機構21Cではギヤカップリング(バックシート)25とギヤカップリング36に分離されている。さらに、金属製のOリング45が制御棒駆動機構21Cでは、フランジ9Aとフランジ43の間に配置され、ゴム製のOリング46がスプールピース34Aの内面とアウターチューブ22の外面の間に配置される。
【0049】
このような制御棒駆動機構21Cでは、前述したように、アウターチューブ22の外面とスプールピース34Aの内面の間に配置するゴム製のOリング46の交換に際しても、制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aとスプールピース34Aのフランジ38Aを結合しているボルト42を取り外す必要がある。このため、フランジ9Aとフランジ43の間に配置された金属製のOリング45の潰し状態を確認するため、制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aとアウターチューブ22のフランジ43の間の隙間を確認する必要がある。制御棒駆動機構21Cは、ゴム製のOリング46のメンテナンスのためだけに、スプールピース34Aを制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aから取り外さなければならない。
【0050】
本実施例の制御棒駆動機構21は、アウターチューブ2
8に、制御棒駆動機構21Cのように、フランジ43を形成していなく、制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9
Aとスプールピース34のフランジ38をボルト42で結合している。制御棒駆動機構21では、アウターチューブ2
8は、制御棒駆動機構ハウジング9及びスプールピース34内に配置される。アウターチューブ28の外径は、アウターチューブ28の全長に亘って、スプールピース34の内径よりも小さくなっており、アウターチューブ28はアウターチューブ28の半径方向においてスプールピース34の内面よりも外側に突出していない。この結果、制御棒駆動機構21では、制御棒駆動機構21Cのように、アウターチューブ22の外面とスプールピース34の内面の間に
、シール部材である配置するゴム製のOリング46を配置する必要がなくなる。
【0051】
この結果、制御棒駆動機構21では、制御棒駆動機構21Cに比べてメンテナンスの頻度を低減することができ、メンテナンスに要する時間も短縮することができる。
【0052】
制御棒駆動機構21では、アウターチューブ2
8のフランジ43が不要であるため、制御棒駆動機構21Cに比べてシール個所が一箇所少なくなり、原子炉圧力容器3内の冷却水の漏えいの可能性のある個所が一個所低減される。これは、沸騰水型原子力発電プラントの信頼性向上につながる。
【0053】
本実施例の制御棒駆動機構21は、特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構に比べてもシール個所が一個所低減される。すなわち、特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構では、スプールピースの上端部のフランジと制御棒駆動機構ハウジングのフランジの間及びスプールピースの下端部のフランジに取り付けられるシリンダ体とこのフランジとの間にそれぞれシール部材を配置する必要がある。制御棒駆動機構21では、特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構におけるスプールピースの下端部のフランジとシリンダ体との間に配置されるシール部材に相当するシール部材が不要である。このため、本実施例の制御棒駆動機構21のメンテナンスに要する時間が、特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構のメンテナンスに要する時間よりも短くなる。
【0054】
また、本実施例では、従来の制御棒駆動機構21Cにおいてアウターチューブ22のフランジ43及び制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aのボルト41による結合が不要になるため、メンテナンスのために制御棒駆動機構21の制御棒駆動機構ハウジング9への取り付け及び取り外しの作業を簡略化することができ、この作業に要する時間を短縮することができる。
【0055】
さらに、制御棒駆動機構21では、フランジ43がアウターチューブ2
8に形成されていなくゴム背のOリング46の交換が不要になるため、スプールピース34Aの取り外しに備えたギヤカップリング25とアウターチューブ22に形成されたバックシート33によるメタルシールを削除することができる。この結果、制御棒駆動機構21Cの冷却水の漏えいポテンシャルを低減することができる。さらに、バックシート33も削除することができるため、制御棒駆動機構21の部品点数を低減できる。
【0056】
なお、モータ39及び保持ブレーキ61はメンテナンスの対象になるが、支持部材51をスプールピース34から取り外すことにより、モータ39及び保持ブレーキ61のメンテナンスを容易に行うことができる。モータ39及び保持ブレーキ61のメンテナンスを行う際には、スプールピース34を制御棒駆動機構ハウジング9から取り外す必要はない。ただし、モータ39及び保持ブレーキ61をスプールピース34から取り外す際には、ピストンチューブ23に連結された制御棒20の自重によりボールねじ24が回転してボールナット26が下降しないように、制御棒20を炉心から完全に引抜き、ボールナット26を最も低い位置に位置させておく。
【0057】
ボールナット26を最も低い位置に位置していない状態で、モータ39及び保持ブレーキ61のメンテナンスのためにモータ39及び保持ブレーキ61を含むモータ部50(
図3参照)をスプールピース34から取り外す場合には、モータ39及び保持ブレーキ61をスプールピース34から取り外した後、素早く、回転阻止磁石49をスプールピース34の外面に取り付ける(
図3参照)。回転阻止磁石49は、内側磁気継手35の内側磁石と磁気的に対となる磁石である。制御棒20の自重による内側磁気継手35の回転が、回転阻止磁石49によって阻止される。このため、制御棒20の下降が阻止される。
【0058】
原子力発電プラントは、1体の制御棒20が炉心6から完全に引き抜かれても安全性が確保される。
【0059】
制御棒駆動機構21では、アウターチューブ28をスプールピース34内に配置した支持部材48で支持しているが、アウターチューブ28の下端をスプールピース34で直接支持してもよい。