特許第6184346号(P6184346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6184346-制御棒駆動機構 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184346
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】制御棒駆動機構
(51)【国際特許分類】
   G21C 7/12 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   G21C7/12 B
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-44931(P2014-44931)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2015-169554(P2015-169554A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】土屋 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】児玉 俊博
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 宏一
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−214288(JP,A)
【文献】 特開2007−232422(JP,A)
【文献】 特開2009−174941(JP,A)
【文献】 特開平11−281785(JP,A)
【文献】 特開平11−153687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブと、前記アウターチューブ内に配置されたガイドチューブと、前記アウターチューブの下端部が挿入されて前記アウターチューブ及び前記ガイドチューブを支持するスプールピースと、前記スプールピース内に配置された内側磁気継手と、前記内側磁気継手により回転され、前記ガイドチューブ内に配置されたボールねじと、前記ボールねじに噛み合ったボールナットと、前記ボールナットの上に置かれ、制御棒に連結されるピストンチューブと、前記スプールピースの下方に配置されて取り外し可能に前記スプールピースに取り付けられるモータと、前記スプールピースの外側に配置されて前記モータの回転軸に連結され、前記スプールピースを挟んで前記内側磁気継手に対向して配置される外側磁気継手と、前記モータと前記外側磁気継手の間に配置され、前記モータの回転が停止されているときに前記モータの回転軸の回転を阻止する保持ブレーキとを備え、
前記アウターチューブの外径は、前記アウターチューブの全長に亘って前記スプールピースの内径よりも小さく、前記アウターチューブは前記アウターチューブの半径方向において前記スプールピースの内面よりも外側に突出していない構造を有しており、
前記スプールピースの前記内側磁気継手に対向する位置に、前記保持ブレーキとは別に、前記内側磁気継手と磁気的に対となる磁石であって前記内側磁気継手の回転を阻止する回転阻止磁石を設けたことを特徴とする制御棒駆動機構。
【請求項2】
外側磁気継手は前記回転阻止磁石よりも外側に位置している請求項1に記載の制御棒駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御棒駆動機構に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な制御棒駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、原子炉圧力容器を有し、原子炉圧力容器内に、炉心シュラウド、上部格子板、炉心支持板、気水分離器及び蒸気乾燥器を設置している。複数の燃料集合体が装荷された炉心は、炉心シュラウドによって取り囲まれている。炉心支持板は、炉心の下方に配置されて炉心シュラウドに取り付けられる。上部格子板は、炉心の上方に配置されて炉心シュラウドに取り付けられる。炉心は、炉心支持板と上部格子板の間に配置される。気水分離器は上部格子板の上方に配置され、蒸気乾燥器は気水分離器の上方に配置される。
【0003】
炉心に装荷された各燃料集合体の下端部は、炉心支持板に設置された複数の燃料支持金具によって支持される。各燃料集合体の上端部は、上部格子板によって支持される。
【0004】
燃料集合体間に出し入れされて原子炉出力を制御する複数の制御棒が、原子炉圧力容器内に配置される。これらの制御棒のそれぞれは、制御棒駆動機構に連結されている。各制御棒駆動機構は、原子炉圧力容器の底部に設けられた制御棒駆動機構ハウジング内に別々に収納されている。減速材と冷却材を兼ねた冷却水が、原子炉圧力容器内に充填される。
【0005】
沸騰水型原子炉に用いられる制御棒駆動機構の一例が、特開平10−132977号公報に記載されている。制御棒駆動機構は、アウターチューブ、ガイドチューブ、ピストンチューブ、ボールねじ、ボールナット、スプールピース、内側磁気継手、外側磁気継手及びモータを有する。アウターチューブのフランジは、特開平10−132977号公報の図1に示されるように、スプールピースのフランジに複数のボルトによって取り付けられる。ガイドチューブはアウターチューブ内に配置され、ガイドチューブの下端部がアウターチューブに支持される。ピストンチューブがガイドチューブ内に配置される。ボールねじがピストンチューブの中心軸に形成された中空部内に挿入されている。ボールナットがボールねじと噛み合っており、ピストンチューブの下端がボールナットの上面に置かれている。ピストンチューブの上端部が制御棒の下端部に取り外し可能に連結される。バックシートがボールねじの下端部に設けられる。バックシートは、アウターチューブの下端部でアウターチューブの内側に設けられたバックシート受け部の上面に対向して配置される。制御棒駆動機構の通常状態では、バックシートの下面とバックシート受け部の上面の間に、間隙が形成され、バックシートの下面がバックシート受け部の上面に接触していない。
【0006】
アウターチューブに取り付けられたスプールピース内には、回転軸が取り付けられた内側磁気継手が配置される。この回転軸は、バックシートに取り外し可能に連結される。
【0007】
円筒状の外側磁気継手が、スプールピースの下端部を取り囲んで配置される。外側磁気継手は、支持部材によりスプールピースに取り付けられるモータの回転軸に連結される。外側磁気継手の内面に設けられた外側磁石が、スプールピースの側壁を間に挟んで、内側磁気軸受の外面に設けられた内側磁石と向き合っている。
【0008】
制御棒駆動機構のアウターチューブが原子炉圧力容器の底部に設けられた制御棒駆動機構ハウジング内に挿入され、ボルトで結合されたアウターチューブのフランジ及びスプールピースのフランジが、別の複数のボルトによって、制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けられる(特開平10−132977号公報の図1参照)。
【0009】
特開平10−132977号公報の図1に示された制御棒駆動機構は、内側磁気継手と外側磁気継手を連結する回転軸が不要であり、スプールピースは、圧力バウンダリーを形成し、原子炉圧力容器内の冷却水の外部への漏洩を防止している。特に、制御棒駆動機構ハウジングのフランジとスプールピースのフランジの間に配置されたOリング及びアウターチューブのフランジとスプールピースのフランジの間に配置されたOリングは、その冷却水の外部への漏洩を防止している。
【0010】
モータの回転力が、外側磁気継手により内側磁気継手に伝えられ、ボールねじを回転させる。ボールねじの回転によってボールナットが上下動し、これにより、制御棒が炉心に挿入され、または炉心から引き抜かれる。
【0011】
特開平10−132977号公報の図1に示された制御棒駆動機構では、上記したように、ボルトで結合されたアウターチューブのフランジ及びスプールピースのフランジを、別の複数のボルトによって、制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けている。これに対し、特開平10−132977号公報の図1に示された制御棒駆動機構において、特開平10−132977号公報の図5に示されるように、アウターチューブのフランジがボルトにより制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けられている状態で、スプールピースのフランジを別のボルトにより制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けてもよい。このような構造では、制御棒駆動機構ハウジングのフランジとアウターチューブのフランジの間にOリングが配置され、さらに、アウターチューブの外面とスプールピースの内面との間にOリングが配置される。
【0012】
特開平8−82690号公報にも、特開平10−132977号公報に記載された前述の制御棒駆動機構と同じ構成を有する制御棒駆動機構が記載されている。
【0013】
特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構も、ボールねじがモータにより回転され、ボールねじと噛み合うボールナットが上下動する。この結果、制御棒が炉心に挿入され、または炉心から引き抜かれる。この制御棒駆動機構では、円筒状のスプールピースの上端部に存在するフランジが制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けられ、シリンダ体がスプールピースの下端部のフランジに取り付けられている。制御棒駆動機構のガイドチューブの下端がシリンダ体の上面に置かれ、ガイドチューブがシリンダ体により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−132977号公報
【特許文献2】特開平8−82690号公報
【特許文献3】特開昭60−47987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
沸騰水型原子炉に適用される従来のモータ駆動の制御棒駆動機構(例えば、特開平10−132977号公報の図1に示された制御棒駆動機構)では、アウターチューブのフランジとスプールピースのフランジの間に、ゴム製のOリングを設けている。このOリングは、素材の寿命などの観点から、所定の頻度(例えば、10年に一度)で、スプールピースをアウターチューブから取り外し、新しいOリングと交換しなければならない。スプールピースをアウターチューブから取り外すためには、制御棒駆動機構ハウジングのフランジとアウターチューブのフランジの間に配置されてこれらのフランジ間の機密を保っている金属製Oリングに潰し力を与えて制御棒駆動機構ハウジングのフランジとスプールピースのフランジを結合しているボルトを取り外す必要がある。
【0016】
この結果、アウターチューブのフランジとスプールピースのフランジの間に配置するOリングを交換した後、スプールピースをボルトにより制御棒駆動機構ハウジングに取り付ける際に、その金属製Oリングの潰し状態を確認するため、制御棒駆動機構ハウジングとアウターチューブのフランジの間の隙間を確認する必要がある。
【0017】
特開平10−132977号公報の図1に示された制御棒駆動機構では、上記したように、結合されたアウターチューブのフランジ及びスプールピースのフランジが、別の複数のボルトによって、制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けられている。特開平10−132977号公報の図1に示された制御棒駆動機構において、そのような3つのフランジの結合構造を、特開平10−132977号公報の図5に示された制御棒駆動機構におけるそれらの3つのフランジの結合構造、すなわち、アウターチューブのフランジがボルトにより制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付けられている状態で、スプールピースのフランジを別のボルトにより制御棒駆動機構ハウジングのフランジに取り付ける結合構造に替えた場合でも、アウターチューブの外面とスプールピースの内面の間に配置するOリングの交換に際しても、制御棒駆動機構ハウジングのフランジとスプールピースのフランジを結合しているボルトを取り外す必要がある。このため、このケースでも、前述のケースと同様に、金属製Oリングの潰し状態を確認するため、制御棒駆動機構ハウジングとアウターチューブのフランジの間の隙間を確認する必要がある。
【0018】
さらに、モータ駆動の制御棒駆動機構では、モータの回転力をボールねじに伝えるために、外側磁気継手及び内側磁気継手が用いられる。外側磁気継手及び内側磁気継手は基本的にメンテナンスを必要としないため、アウターチューブのフランジとスプールピースのフランジの間に配置されるOリングのメンテナンスのためだけに、スプールピースを制御棒駆動機構ハウジング及びアウターチューブから取り外さなくてはならない。この結果、そのOリングのメンテナンスの作業に要する時間が長くなる。
【0019】
本発明の目的は、メンテナンスに要する時間を短縮することができる制御棒駆動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題解決するために、本発明は、減速材を兼ねた冷却材(軽水)が収容されるとともに、その中央部分に、多くの燃料集合体が装荷された炉心が配置され、燃料集合体の間には、制御棒が挿入・引抜き自在に設置されており、原子炉の起動・停止、反応度補償、負荷追従などの制御は、炉心に対し制御棒を挿入・引抜きすることにより行われるBWRの原子炉圧力容器下方に配置されるCRDであって、原子炉圧力容器の下鏡部に貫通固定されたハウジングと、そのハウジングの内側に固定されるCRD本体のうち、CRD本体を構成するアウターチューブの耐圧部となるフランジがその下方に設けられるスプールピース部と一体成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のCRDによれば、メンテナンス性を向上、メンテナンス頻度を低減することでランニングコストの低減が可能となる。また、CRD内部水の漏えいポテンシャルを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】沸騰水型原子力発電プラントの構成図である。
図2図1に示される沸騰水型原子力発電プラントに適用される、本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒駆動機構の縦断面図である。
図3図1に示す制御棒駆動機構において、モータを取り外した時にボールねじの回転を阻止する例を示す説明図である。
図4】本発明の他の好適な実施例である実施例2の制御棒駆動機構の縦断面図である。
図5】従来の制御棒駆動機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の好適な一実施例である実施例1の制御棒駆動機構を図2に基づいて説明する。
【0025】
本実施例の制御棒駆動機構を説明する前に、本実施例の制御棒駆動機構が適用される沸騰水型原子力発電プラントの概略構成を、図1を用いて説明する。
【0026】
沸騰水型原子力発電プラントは、炉心への冷却水の供給の形態により、強制循環型沸騰水型原子力発電プラント及び自然循環型原子力発電プラントの2つに分類される。強制循環型沸騰水型原子力発電プラントでは、原子炉に設けられた再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)の駆動によって冷却水が強制的に炉心に供給される。自然循環型原子力発電プラントでは、原子炉に再循環ポンプまたはインターナルポンプが設けられていなく、冷却水が自然循環により炉心に供給される。冷却水の自然循環力を高めるために、チムニーが原子炉内に設けられる。
【0027】
本実施例の制御棒駆動機構は、強制循環型沸騰水型原子力発電プラント及び自然循環型原子力発電プラントのそれぞれの原子炉に適用することができる。ここでは、本実施例の制御棒駆動機構が適用される自然循環型原子力発電プラントの構成を、図1を用いて説明する。
【0028】
自然循環型原子力発電プラント1は、原子炉2、タービン15及び復水器16を有する。原子炉2は、原子炉圧力容器3を有し、原子炉圧力容器3内に、炉心シュラウド5、上部格子板53、炉心支持板54、チムニー10、気水分離器11及び蒸気乾燥器12を設置している。少なくとも自然循環型原子力発電プラント1の運転中では、原子炉圧力容器3は、上端部に蓋4が取り付けられて密封されている。複数の燃料集合体7が装荷された炉心6は、炉心シュラウド5によって取り囲まれている。炉心支持板54は、炉心6の下方に配置されて炉心シュラウド5に取り付けられる。上部格子板53は、炉心6の上方に配置されて炉心シュラウド5に取り付けられる。炉心6は、炉心支持板54と上部格子板53の間に配置される。
【0029】
炉心6に装荷された各燃料集合体7の下端部は、炉心支持板54に設置された複数の燃料支持金具(図示せず)によって支持される。各燃料集合体7の上端部は、上部格子板53によって支持される。
【0030】
上部格子板53の上方に配置されるチムニー10は、円筒状の外筒55及び格子部材56を有する。外筒55は、炉心シュラウド5の上端に取り付けられる。格子部材56は、外筒55内に配置されて外筒55の内面に取り付けられる。格子部材56は、複数の仕切り板を格子状に組み合わせて構成され、外筒55の下端から外筒55の上端まで伸びている。格子部材56によって、横断面が正方形の複数の冷却材通路57が外筒55内に形成される。気水分離器11はチムニー10の上方に配置され、蒸気乾燥器12は気水分離器11の上方に配置される。
【0031】
複数の制御棒案内管8が原子炉圧力容器3内で炉心6の下方に配置される。複数の制御棒駆動機構ハウジング9が、原子炉圧力容器3の底部を貫通して原子炉圧力容器3に取り付けられている。各制御棒案内管8の下端がそれぞれの制御棒駆動機構ハウジング9の上端に連結される。
【0032】
炉心6に装荷された燃料集合体7間に出し入れされて原子炉出力を制御する複数の制御棒20(図2参照)が、それぞれの制御棒案内管8内に別々に配置される。これらの制御棒8の下端部は、制御棒駆動機構21の上端部に着脱可能に連結されている。各制御棒駆動機構21は、制御棒駆動機構ハウジング9内に別々に収納されている。減速材と冷却材を兼ねた冷却水が、原子炉圧力容器3内に充填される。
【0033】
タービン15は、主蒸気配管58によって原子炉圧力容器3に設けられたノズル13に接続される。復水器16は、タービン15の下方に配置され、給水配管17によってノズル14に接続される。給水ポンプ18及び給水加熱器19が給水配管17に設けられる。
【0034】
必要な数の制御棒20が、それぞれの制御棒駆動機構21により炉心6から引き抜かれ、自然循環型原子力発電プラント1の原子炉出力が定格出力である100%出力まで上昇する。その後、自然循環型原子力発電プラント1は、1つの運転サイクルが終了するまで、実質的に100%出力で運転される。自然循環型原子力発電プラント1の運転中では、炉心6に供給される冷却水は、それぞれの燃料集合体7内を流れ、燃料集合体7に含まれる複数の燃料棒内の核燃料物質の核分裂により発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この結果、冷却水及び蒸気を含む気液二相流が、各燃料集合体7内を上昇する。
【0035】
この気液二相流は、チムニー10に形成されたそれぞれの冷却材通路57を上昇し、気水分離器11に流入する。気水分離器11は、流入した気液二相流に含まれる冷却水と蒸気を分離する。分離された蒸気は、蒸気乾燥器12に流入してされに湿分を除去され、主蒸気配管58に排出される。この蒸気(飽和蒸気)は、タービン15に導かれてタービン15を回転させる。タービン15に連結された発電機(図示せず)も回転され、電力が発生する。
【0036】
タービン15から排出された蒸気は、復水器16で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管17を通って原子炉圧力容器3内に供給される。給水は、給水ポンプ18で昇圧され、給水加熱器19で加熱されて温度が上昇した後に、原子炉圧力容器3内に導かれる。
【0037】
給水配管17によって原子炉圧力容器3内に供給された給水は、気水分離器11で分離された冷却水に混合される。給水を混合した冷却水は、原子炉圧力容器3の内面とチムニー10の外筒55及び炉心シュラウド5のそれぞれの外面との間に形成される、横断面が環状であるダウンカマ59内に流入する。この冷却水は、ダウンカマ59内を下降して炉心6内の各燃料集合体7内に供給される。
【0038】
核燃料集合体7内への冷却水の供給は、冷却水の自然循環によって行われる。冷却水の自然循環力は、炉心6内を上昇する密度の低い気液二相流とダウンカマ59内を下降する密度の高い冷却水の密度差によって生じ、この冷却水の自然循環力は、チムニー10の煙突効果によってさらに強められる。
【0039】
本実施例の制御棒駆動機構21の構成を、図2を用いて説明する。
【0040】
制御棒駆動機構21は、ピストンチューブ23、ボールねじ24、ボールナット26、アウターチューブ28、ガイドチューブ29、スプールピース34、内側磁気継手35、外側磁気継手40及びモータ39を有する。ガイドチューブ29がアウターチューブ28内に配置され、ガイドチューブ29の下端部がアウターチューブ28に支持される。ピストンチューブ23がガイドチューブ29内に配置される。上部ガイド30がアウターチューブ28の上端部に取り付けられる。ガイドチューブ29の上端部は外径が小さくなっており、皿バネ32が、ガイドチューブ29の外径が小さくなった上端部の外側に配置される。皿バネ32は、ガイドチューブ29と上部ガイド30の間に配置される。31はコイルバネである。
【0041】
ボールねじ24がピストンチューブ23の中心軸に形成された中空部内に挿入されている。ボールナット26がボールねじ24と噛み合っており、ピストンチューブ23の下端がボールナット26の上面に置かれている。ピストンチューブ23の上端部が制御棒20の下端部に取り外し可能に連結される。
【0042】
スプールピース34が制御棒駆動機構ハウジン9の下方に配置され、スプールピース34のフランジ38が制御棒駆動機構ハウジン9のフランジ9Aに複数のボルト42により取り外し可能に取り付けられている。シール部材である金属製のOリング45が、スプールピース34のフランジ38と制御棒駆動機構ハウジン9のフランジ9Aの間に配置され、スプールピース34のフランジ38と制御棒駆動機構ハウジン9のフランジ9Aの間の気密性を担保している。
【0043】
アウターチューブ28の下端は、スプールピース34内に達しており、スプールピース34内に配置された円筒状の支持部材48によって支持されている。アウターチューブ28の外径は、アウターチューブ28の全長に亘って、スプールピース34の内径よりも小さくなっており、アウターチューブ28をスプールピース34内に挿入することができる。このため、アウターチューブ28は、アウターチューブ28の半径方向においてスプールピース34の内面よりも外側に突出していない。スプールピース34の内径は、制御棒駆動機構ハウジン9の内径に実質的に等しくなっている。
【0044】
磁気継手が、内側磁気継手35及び外側磁気継手40を含んでいる。内側磁気継手35は、スプールピース34内に配置され、回転軸33に取り付けられる。分離検出機構23がボールねじ24の下端部に取り付けられる。回転軸33の上端が分離検出機構23に取り外し可能に連結される。コイルバネ37が、回転軸33に取り付けられたバネ受け60と分離検出機構23との間で回転軸33を取り囲んで配置される。ベアリングケース47が、バネ受け60と内側磁気継手35の間でスプールピース34内に配置され、スプールピース34に取り付けられている。回転軸33は、ベアリングケース47に設置された複数のベアリングによって回転可能に支持される。
【0045】
モータ39が、スプールピース34の下方に配置され、支持部材51によってスプールピース34に取り外し可能に取り付けられる。外側磁気継手40が、モータ39の回転軸に連結され、スプールピース34とモータ39の間に配置される。外側磁気継手40の円筒部は、スプールピース34の外側でスプールピース34を取り囲むように配置される。外側磁気継手40の円筒部の内面に設けられた外側磁石が、スプールピース34の側壁を間に挟んで、内側磁気軸受35の外面に設けられた内側磁石と向き合っている。外側磁気継手40の内面はスプールピース34の外面に接触していなく、外側磁気継手40の内面とスプールピース34の外面の間には、隙間が形成されている。さらに、保持ブレーキ61が、モータ39の上方に配置され取り付けられ、支持部材51に取り付けられている。保持ブレーキ61は、モータ39の回転が停止されているとき、モータ39の回転軸の回転を阻止し、制御棒20の自重によりボールねじ24が回転して制御棒20が下降することを防いでいる。
【0046】
制御棒20を炉心6から引き抜き場合には、制御棒駆動機構21においてモータ39を制御棒20の引き抜きが可能な方向に回転させる。モータ39の回転力は、外側磁気継手40に伝えられて外側磁気継手40を回転させる。外側磁気継手40が回転すると、スプールピース34内に配置された内側磁気継手35も、外側磁気継手40が回転する方向に回転する。この結果、回転軸33が回転され、ボールねじ24も外側磁気継手40が回転する方向に回転される。ボールねじ24に噛み合うボールナット26は、ガイドチューブ29によって回転が阻止されるため、下方に向かって移動する。ボールナット26に載っているピストンチューブ23が下降し、制御棒20が制御棒案内管8内を下降する。このため、制御棒20が炉心6から引き抜かれ、原子炉出力が上昇する。
【0047】
なお、図2に示された制御棒20は、炉心6から完全に引き抜かれており、最も低い位置に存在している。
【0048】
ここで、従来例の制御棒駆動機構21Cを図5に基づいて説明する。制御棒駆動機構21Cの構成のうち、本実施例の制御棒駆動機構21の構成と異なっている部分のみを説明する。制御棒駆動機構21Cでは、アウターチューブ22の下端部にフランジ43が形成されている。このフランジ43は、ボルト41によって制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aに取り付けられる。スプールピース34Aのフランジ38Aが、スプールピース34Aのフランジ38A及びアウターチューブ22のフランジ43を貫通するボルト42によって制御棒駆動機構ハウジング9に取り付けられる。制御棒駆動機構21に設けられた分離検出機構23は、制御棒駆動機構21Cではギヤカップリング(バックシート)25とギヤカップリング36に分離されている。さらに、金属製のOリング45が制御棒駆動機構21Cでは、フランジ9Aとフランジ43の間に配置され、ゴム製のOリング46がスプールピース34Aの内面とアウターチューブ22の外面の間に配置される。
【0049】
このような制御棒駆動機構21Cでは、前述したように、アウターチューブ22の外面とスプールピース34Aの内面の間に配置するゴム製のOリング46の交換に際しても、制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aとスプールピース34Aのフランジ38Aを結合しているボルト42を取り外す必要がある。このため、フランジ9Aとフランジ43の間に配置された金属製のOリング45の潰し状態を確認するため、制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aとアウターチューブ22のフランジ43の間の隙間を確認する必要がある。制御棒駆動機構21Cは、ゴム製のOリング46のメンテナンスのためだけに、スプールピース34Aを制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aから取り外さなければならない。
【0050】
本実施例の制御棒駆動機構21は、アウターチューブ2に、制御棒駆動機構21Cのように、フランジ43を形成していなく、制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9とスプールピース34のフランジ38をボルト42で結合している。制御棒駆動機構21では、アウターチューブ2は、制御棒駆動機構ハウジング9及びスプールピース34内に配置される。アウターチューブ28の外径は、アウターチューブ28の全長に亘って、スプールピース34の内径よりも小さくなっており、アウターチューブ28はアウターチューブ28の半径方向においてスプールピース34の内面よりも外側に突出していない。この結果、制御棒駆動機構21では、制御棒駆動機構21Cのように、アウターチューブ22の外面とスプールピース34の内面の間に、シール部材である配置するゴム製のOリング46を配置する必要がなくなる。
【0051】
この結果、制御棒駆動機構21では、制御棒駆動機構21Cに比べてメンテナンスの頻度を低減することができ、メンテナンスに要する時間も短縮することができる。
【0052】
制御棒駆動機構21では、アウターチューブ2のフランジ43が不要であるため、制御棒駆動機構21Cに比べてシール個所が一箇所少なくなり、原子炉圧力容器3内の冷却水の漏えいの可能性のある個所が一個所低減される。これは、沸騰水型原子力発電プラントの信頼性向上につながる。
【0053】
本実施例の制御棒駆動機構21は、特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構に比べてもシール個所が一個所低減される。すなわち、特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構では、スプールピースの上端部のフランジと制御棒駆動機構ハウジングのフランジの間及びスプールピースの下端部のフランジに取り付けられるシリンダ体とこのフランジとの間にそれぞれシール部材を配置する必要がある。制御棒駆動機構21では、特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構におけるスプールピースの下端部のフランジとシリンダ体との間に配置されるシール部材に相当するシール部材が不要である。このため、本実施例の制御棒駆動機構21のメンテナンスに要する時間が、特開昭60−47987号公報に記載された制御棒駆動機構のメンテナンスに要する時間よりも短くなる。
【0054】
また、本実施例では、従来の制御棒駆動機構21Cにおいてアウターチューブ22のフランジ43及び制御棒駆動機構ハウジング9のフランジ9Aのボルト41による結合が不要になるため、メンテナンスのために制御棒駆動機構21の制御棒駆動機構ハウジング9への取り付け及び取り外しの作業を簡略化することができ、この作業に要する時間を短縮することができる。
【0055】
さらに、制御棒駆動機構21では、フランジ43がアウターチューブ2に形成されていなくゴム背のOリング46の交換が不要になるため、スプールピース34Aの取り外しに備えたギヤカップリング25とアウターチューブ22に形成されたバックシート33によるメタルシールを削除することができる。この結果、制御棒駆動機構21Cの冷却水の漏えいポテンシャルを低減することができる。さらに、バックシート33も削除することができるため、制御棒駆動機構21の部品点数を低減できる。
【0056】
なお、モータ39及び保持ブレーキ61はメンテナンスの対象になるが、支持部材51をスプールピース34から取り外すことにより、モータ39及び保持ブレーキ61のメンテナンスを容易に行うことができる。モータ39及び保持ブレーキ61のメンテナンスを行う際には、スプールピース34を制御棒駆動機構ハウジング9から取り外す必要はない。ただし、モータ39及び保持ブレーキ61をスプールピース34から取り外す際には、ピストンチューブ23に連結された制御棒20の自重によりボールねじ24が回転してボールナット26が下降しないように、制御棒20を炉心から完全に引抜き、ボールナット26を最も低い位置に位置させておく。
【0057】
ボールナット26を最も低い位置に位置していない状態で、モータ39及び保持ブレーキ61のメンテナンスのためにモータ39及び保持ブレーキ61を含むモータ部50(図3参照)をスプールピース34から取り外す場合には、モータ39及び保持ブレーキ61をスプールピース34から取り外した後、素早く、回転阻止磁石49をスプールピース34の外面に取り付ける(図3参照)。回転阻止磁石49は、内側磁気継手35の内側磁石と磁気的に対となる磁石である。制御棒20の自重による内側磁気継手35の回転が、回転阻止磁石49によって阻止される。このため、制御棒20の下降が阻止される。
【0058】
原子力発電プラントは、1体の制御棒20が炉心6から完全に引き抜かれても安全性が確保される。
【0059】
制御棒駆動機構21では、アウターチューブ28をスプールピース34内に配置した支持部材48で支持しているが、アウターチューブ28の下端をスプールピース34で直接支持してもよい。
【実施例2】
【0060】
本発明の他の好適な実施例である実施例2の制御棒駆動機構を、図4を用いて説明する。本実施例の制御棒駆動機構21Bは、実施例1の制御棒駆動機構21において、に回転阻止磁石49Aを追加した構成を有する。回転阻止磁石49Aは、内側磁気継手35の内側磁石と磁気的に対となる磁石であり、内側磁気継手35の一部と対向する位置でスプールピース34に取り付けられている。制御棒駆動機構21Bの他の構成は、実施例1の制御棒駆動機構21と同じである。
【0061】
制御棒駆動機構21Bでは、モータ39及び保持ブレーキ61をメンテナンスのためにスプールピース34から取り外したとき、回転阻止磁石49Aがスプールピース34に設けられているため、ボールナット26が最も低い位置に位置していない場合でも、制御棒20の自重による内側磁気継手35の回転が、回転阻止磁石49Aによって阻止される。このため、制御棒20の下降が防止される。
【0062】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、ボールナット26が最も低い位置に位置していない状態でモータ39及び保持ブレーキ61をメンテナンスのためにスプールピース34から取り外したときにおいても、本実施例は、スプールピース34に設けられている回転阻止磁石49Aの作用により、制御棒20の自重によるボールねじ24の回転を阻止することができる。このため、制御棒20が下降することを防止できる。
【0063】
実施例1及び2の制御棒駆動機構は、強制循環型沸騰水型原子力発電プラントにも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…自然循環型原子力発電プラント、2…原子炉、3…原子炉圧力容器、6…炉心、96…制御棒駆動機構ハウジング、9A,38…フランジ、10…チムニー、20…制御棒、21,21B…制御棒駆動機構、23…ピストンチューブ、24…ボールねじ、26…ボールナット、28…アウターチューブ、29…ガイドチューブ、33…回転軸、34…スプールピース、35…内側磁気継手、39…モータ、40…外側磁気継手、45…Oリング、49,49A…回転阻止磁石、50…モータ部。
図1
図2
図3
図4
図5