特許第6184404号(P6184404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184404グルカゴン/GLP−1レセプターコアゴニスト
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  • 特許6184404-グルカゴン/GLP−1レセプターコアゴニスト 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184404
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】グルカゴン/GLP−1レセプターコアゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/605 20060101AFI20170814BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C07K14/605ZNA
   C07K19/00
   A61K38/26
   A61K45/00
   A61P3/10
   A61P3/04
   A61P3/06
   A61P1/16
   A61P25/00
【請求項の数】10
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2014-517015(P2014-517015)
(86)(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公表番号】特表2014-524908(P2014-524908A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】US2012042085
(87)【国際公開番号】WO2012177444
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】61/500,025
(32)【優先日】2011年6月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505407553
【氏名又は名称】インディアナ ユニヴァーシティ リサーチ アンド テクノロジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ディマルキ リチャード ディー
(72)【発明者】
【氏名】スマイリー デイヴィッド エル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ビン
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/155258(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/148089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00−14/825
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:37のアミノ酸配列を含むペプチドであって、GLP−1及びグルカゴンレセプターにおけるコアゴニスト活性を有する、ペプチド
【請求項2】
配列番号:37のアミノ酸配列のみからなるペプチド。
【請求項3】
異種部分とコンジュゲートされた、請求項1に記載のペプチドを含むコンジュゲート。
【請求項4】
異種部分が、ペプチド、ポリペプチド、核酸分子、抗体若しくはそのフラグメント、ポリマー、クォンタムドット、小分子、毒素、診断薬の1つ以上を含む、請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
異種部分がペプチドであり、コンジュゲートが融合ペプチド又はキメラペプチドである、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
配列番号:37のアミノ酸配列の29位のアミノ酸に結合している1−21アミノ酸を含む、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記1−21アミノ酸が、Gly、Glu、Cys、Gly-Gly、Gly-Glu、GPSSGAPPPS(配列番号:9)又はGGPSSGAPPPS(配列番号:10)から成る群から選択される、請求項6に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
請求項1に記載のペプチドを含むダイマー又はマルチマー。
【請求項9】
請求項1に記載のペプチド、請求項3〜7のいずれか1項に記載のコンジュゲート、請求項8に記載のダイマー若しくはマルチマー、又は前記の組合せ、及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
患者における疾患又は症状を治療するための請求項9に記載の医薬組成物であって、当該疾患又は症状が、代謝性症候群、糖尿病、肥満、肝脂肪症、及び神経変性疾患からなる群から選択され、当該疾患又は症状の治療に有効な量で当該患者に投与される、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、米国仮特許出願No.61/500,025(2011年6月22日出願)(前記の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
電子提出資料の参照による本明細書への取り込み
本明細書と同時に提出され、以下のものと同一視されるコンピュータ読み出し可能ヌクレオチド/アミノ酸配列リストは、参照によりその全体が本明細書に含まれる:“07012J_PCT_SeqListing.txt”(2011年6月22日作成)と名付けられる38キロバイトACII(テキスト)ファイル。
【0002】
本発明は、GLP-1レセプターで本来のグルカゴンと比較して活性の強化を示すペプチド及び変種ペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
前プログルカゴンは158アミノ酸の前駆体ペプチドであり、種々の組織でプロセッシングされて多くの種々のプログルカゴン誘導ペプチドを形成する。前記誘導ペプチドにはグルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)及びオキシントモジュリン(OXM)が含まれ、それらは極めて多様な生理学的機能(グルコース恒常性、インシュリン分泌、胃内容枯渇及び腸管の成長とともに食物摂取の調節を含む)に必要とされる。グルカゴンは、前プログルカゴンのアミノ酸33から61に対応する29アミノ酸ペプチドであり、一方、GLP-1は、前プログルカゴンのアミノ酸72から108に対応する37アミノ酸ペプチドとして生成される。GLP-1(7-36)アミド又はGLP-1(7-37)酸は、GLP-1レセプターで本質的に等価の活性を示すGLP-1の生物学的に強力な形態である。
低血糖(血中グルコースレベルが正常以下に低下した)時に、グルカゴンは肝臓にグリコゲン分解及びグルコース放出の信号を発し、血中グルコースレベルを正常レベルに上昇させる。低血糖は、糖尿病に起因する高血糖症(血中グルコースレベル上昇)の患者のインシュリン療法における一般的副作用である。したがって、グルカゴンのグルコース調節でもっともよく知られた役割は、インシュリンの作用に対向し血中グルコースレベルを維持する役割である。
GLP-1はグルカゴンと比較して異なる生物学的活性を有する。その作用には、インシュリン合成及び分泌の刺激、グルカゴン分泌の阻害、及び食物摂取の阻害が含まれる。GLP-1は、糖尿病における高血糖を緩和することが示された。エクセンジン-4(GLP-1と約50%のアミノ酸同一性を共有するトカゲ毒に由来するペプチド)はGLP-1レセプターを活性化し、糖尿病の高血糖を緩和することが同様に示された。
GLP-1及びエクセンジン-4は食物摂取を低下させ、体重減少を促進させ得るという証拠もまた存在する(前記作用は糖尿病だけでなく肥満の患者にも有益であろう)。肥満患者は、より高い糖尿病、高血圧、高脂血症、心脈管系疾患及び筋骨格系疾患リスクを有する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、グルカゴンレセプターで、GLP-1レセプターで、又はグルカゴンレセプター及びGLP-1レセプターの各々で活性を示すペプチド及び変種ペプチドを提供する。例示的な実施態様では、本開示ペプチド及び変種ペプチドは、本来のグルカゴンと比較してGLP-1レセプターで活性の強化を示す。例示的な特徴では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、ヒトGLP-1レセプターに対して当該GIPレセプターに対するよりも少なくとも100倍の選択性を示す。
本開示はさらに、異種部分とコンジュゲートされた本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドのいずれかを含むコンジュゲートを提供する。例示的特徴では、前記異種部分はペプチド又はタンパク質であり、前記コンジュゲートは融合ペプチド又はキメラペプチドである。例示的特徴では、前記異種部分はポリマー(例えばポリエチレングリコール)である。本開示はさらに、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドのいずれかを含むダイマー及びマルチマーを提供する。
本開示はさらに、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドのいずれか及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物を、ある疾患又は症状(例えば代謝性症候群、糖尿病、肥満、肝脂肪症、神経変性疾患、低血糖症)を患者で治療又は予防する方法とともに提供する。前記方法は、本開示のペプチド又はペプチド変種(場合によって医薬組成物として処方される)を、前記疾患又は症状の治療に有効な量で投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は2つのグルカゴンアナローグの構造を示す。第一のグルカゴンアナローグは2位にD-セリンを有し、10位においてガンマ-Gluスペーサーを介してアダマンチルアセチルによりアシル化される(配列番号:48)。第二のグルカゴンアナローグは2位にD-セリンを有し、10位においてベンゾイルプロピオニルによりアシル化される(配列番号:49)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
本明細書で用いられる“約”という用語は、記載の値又は一続きの値より10パーセント大きいか又は小さいことを意味するが、任意の値又は一続きの値をこのより広い定義にのみ指定しようとするものではない。“約”という用語に続く各値又は一続きの値は、記載の絶対値又は一続きの絶対値の統合されたものもまた包含することが意図される。
本明細書で用いられるように、“医薬的に許容できる担体”という用語には、標準的な医薬担体のいずれか、例えばリン酸緩衝食塩水溶液、水、乳濁液(例えば油/水又は水/油乳濁液)及び多様なタイプの湿潤剤が含まれる。前記用語はまた、米国連邦政府の規制庁承認の又は動物(ヒトを含む)使用のために米国薬局方に列挙された任意の薬剤を包含する。
本明細書で用いられるように、“医薬的に許容できる塩”という用語は、親化合物の生物学的活性を保持し、生物学的に又は他の点でも不適切でない化合物の塩を指す。本明細書に開示する化合物の多くは、アミノ基及び/又はカルボキシル基又は前記と類似する基の存在により酸性及び/又は塩基性塩を形成することができる。
医薬的に許容できる塩基付加塩は無機及び有機塩基から調製できる。無機塩基から誘導される塩には、例示すればナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム塩が含まれる。有機塩基から誘導される塩には、一級、二級及び三級アミンの塩が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0007】
本明細書で用いられるように、“治療する”という用語は、当該具体的な異常若しくは症状の予防、又はある具体的な異常若しくは症状に付随する症候の緩和、及び/又は前記症候の予防又は除去を含む。例えば、本明細書で用いられるように、“糖尿病を治療する”という用語は、一般的にはグルコースの血中レベルを正常レベルの方へ変化させることを指し、さらに与えられた状況に合わせて血中グルコースレベルの上昇又は低下を含むことができる。
本明細書で用いられるように、グルカゴンペプチドの“有効な”量又は“治療的に有効な量”は、所望の作用を提供するために無害であるが十分なペプチドの量を指す。例えば、所望されるある作用は高血糖症の予防又は治療であろう。前記は、例えば正常により近づく血中グルコースレベルの変化、又は体重減少の誘発/体重増加の防止によって測定されるか、例えば体重の減少又は体重の増加の防止若しくは低下、又は体脂肪分布の正常化によって測定される。“有効”な量は、個体の年齢及び一般的状態、投与態様などに応じて対象動物ごとに変動するであろう。したがって、正確な“有効量”を特定することはいつも可能とは限らない。しかしながら、当業者は、任意の個々の事例における適切な“有効”量を日常的な実験を用いて決定できる。
“非経口的”という用語は、胃腸管を介さないが他の何らかの経路(例えば皮下、筋肉内、又は静脈内)を介することを意味する。
【0008】
本明細書で用いられるように、“ペプチド”という用語は、3つ以上のアミノ酸、典型的には100未満のアミノ酸の鎖を包含し、ここで当該アミノ酸は、天然に存在する若しくはコードされるか、又は天然に存在しない若しくはコードされないアミノ酸である。天然に存在しないアミノ酸は、in vivoでは天然に存在しないが、それにもかかわらず本明細書に記載のペプチド構造に取り込まれ得るアミノ酸を指す。本明細書で用いられる“コードされない”とは、以下の20のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr)のいずれかのL-異性体ではないアミノ酸を指す。本明細書で用いられる“コードされる”とは、以下の20のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr)のいずれかのL-異性体であるアミノ酸を指す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、配列番号:1(前記は長さが29アミノ酸である)とほぼ同じ長さ(例えば長さが25−35アミノ酸)である。例示的長さには29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50アミノ酸の長さが含まれる。
典型的には、ポリペプチド及びタンパク質は、“ペプチド”のポリマー長より長いポリマー長を有する。
【0009】
本出願の全体を通して、数字で個々のアミノ酸の位置(例えば28位)をいう時はいずれも、本来のグルカゴン(配列番号:1)の当該位置のアミノ酸又はその任意のアナローグの対応するアミノ酸の位置を指す。例えば、本明細書で“28位”というとき、配列番号:1の最初のアミノ酸が欠失されてあるグルカゴンアナローグの対応する27位を意味するであろう。同様に、“28位”というとき、配列番号:1のN-末端の前に1つのアミノ酸が付加されてあるグルカゴンアナローグの対応する29位を意味するであろう。本明細書で用いられるように、“アミノ酸改変”とは以下を指す:(i)異なるアミノ酸(天然に存在する若しくはコードされる、又はコードされない若しくは天然に存在しないアミノ酸)による配列番号:1のアミノ酸の置換又は置き換え、(ii)配列番号:1へのアミノ酸(天然に存在する若しくはコードされる、又はコードされない若しくは天然に存在しないアミノ酸)の付加、又は(iii)配列番号:1の1つ以上のアミノ酸の欠失。
2つのアミノ酸配列に関し“パーセント同一”とは、第二の参照配列中のアミノ酸に一致する(同一である)第一の配列のアミノ酸の数を参照配列の長さで割ったものを指し、このとき当該2つの配列は最大の一致を達成するように(例えばギャップを最適なアラインメントのために導入できる)アラインメントが実施される。
【0010】
アミノ酸“改変”は、挿入、欠失又はあるアミノ酸の別のアミノ酸による置換を指す。いくつかの実施態様では、アミノ酸置換又は置き換えは、保存的アミノ酸置換、例えば2、5、7、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、24、27、28又は29位の1つ以上におけるアミノ酸の保存的置換である。本明細書で用いられるように、“保存的アミノ酸置換”は、あるアミノ酸の類似の特性(例えばサイズ、電荷、疎水性、親水性、及び/又は芳香族性)を有する別のアミノ酸による置き換えであり、前記は以下の5つのグループの1つの中での交換を含む:
I.小さな脂肪族の非極性又はわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;
II.極性、陰性荷電残基並びにそれらのアミド及びエステル:Asp、Asn、Glu、システイン酸及びホモシステイン酸;
III.極性陽性荷電残基:His、Arg、Lys、オルニチン(Orn);
IV.大きな脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、Cys、ノルロイシン(Nle)、ホモシステイン;
V.大きな芳香族残基:Phe、Tyr、Trp、アセチルフェニルアラニン。
いくつかの実施態様では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換ではなく、例えば前記は非保存的アミノ酸置換である。
本明細書で用いられるように、“荷電アミノ酸”又は“荷電残基”という用語は、生理学的pHの水溶液中で陰性に荷電(すなわち脱プロトン化)又は陽性に荷電(すなわちプロトン化)される側鎖を含むアミノ酸を指す。例えば陰性荷電アミノ酸にはアスパラギン酸、グルタミン酸、システイン酸、ホモシステイン酸、及びホモグルタミン酸が含まれ、一方、陽性荷電アミノ酸にはアルギニン、リジン及びヒスチジンが含まれる。荷電アミノ酸には20のコードアミノ酸の中の荷電アミノ酸とともに非定型的又は天然に存在しない若しくは非コードアミノ酸が含まれる。
【0011】
本明細書で用いられるように、“酸性アミノ酸”という用語は、第二の酸性部分(当該アミノ酸のカルボン酸以外)、(例えばカルボン酸又はスルホン酸を含む)を含むアミノ酸を指す。
本明細書で用いられるように、“アシル化アミノ酸”という用語は、天然に存在するアミノ酸にとって本来のものではないアシル基を含むアミノ酸を指し、前記アシル基が生成された手段を問わない(例えば当該アミノ酸のペプチドへの取り込み前のアシル化又はペプチドへの取り込み後のアシル化)。
本明細書で用いられるように、“アルキル化アミノ酸”という用語は、天然に存在するアミノ酸にとって本来のものではないアルキル基を含むアミノ酸を指し、前記アルキル基が生成された手段を問わない。したがって、本開示のアシル化アミノ酸及びアルキル化アミノ酸は非コードアミノ酸である。
本明細書で用いられるように、第二のレセプターに対する第一のレセプターについてのある分子の“選択性”という用語は、以下の比率、すなわち第一のレセプターにおける当該分子のEC50で割った第二のレセプターにおける当該分子のEC50を指す。例えば、第一のレセプターで1nMのEC50及び第二のレセプターで100nMのEC50を有する分子は、第二のレセプターに対して第一のレセプターで100倍の選択性を有する。
本明細書で用いられるように、“本来のグルカゴン”という用語は配列番号:1の配列から成るペプチドを指し、“本来のGLP-1”という用語は、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1(7-37)酸又は前記2つの化合物の混合物を示す包括的用語である。
本明細書で用いられるように、“グルカゴン潜在能力”又はある分子の“本来のグルカゴンと比較した潜在能力”とは、グルカゴンレセプターにおける本来のグルカゴンのEC50で割った当該分子のグルカゴンレセプターにおけるEC50の逆比を指す。
本明細書で用いられるように、“GLP-1潜在能力”又はある分子の“本来のGLP-1と比較した潜在能力”とは、GLP-1レセプターにおける本来のGLP-1のEC50で割った当該分子のGLP-1レセプターにおけるEC50の逆比を指す。
【0012】
実施態様
本開示は、GLP-1レセプターで、グルカゴンレセプターで、又はGLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターの両方で活性を示すペプチド及び変種ペプチドを提供する。これに関して、本開示は、GLP-1レセプターアゴニストペプチド、グルカゴンレセプターアゴニストペプチド、及びGLP-1/グルカゴンレセプターコアゴニストペプチドを提供する。例示的実施態様では、本開示のペプチド及び変種ペプチドは、本来のヒトグルカゴン(配列番号:1)と比較して、GLP-1レセプターで強化活性又はより高い潜在能力を示す。例示的実施態様では、本開示のペプチド及び変種ペプチドは、本来のヒトGLP-1(配列番号:2)又はその活性型(配列番号:5及び6)の1つと比較してGLP-1レセプターでより高い潜在能力を示す。例示的実施態様では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、本来のヒトGLP-1と比較してグルカゴンレセプターでより高い潜在能力を示す。例示的実施態様では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、本来のヒトグルカゴンと比較してグルカゴンレセプターでより高い潜在能力を示す。
例示的実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、本来のグルカゴン又は本来のGLP-1に比して他の特性の改良を示す。前記他の改良は、例えばより高い安定性、より高い溶解性、循環中の半減期の延長、作用開始の引き延ばし、作用時間の延長、ピークの鈍化(例えば平均ピーク血漿濃度の相対的低下)及びプロテアーゼ(例えばDPP-IV)耐性の改良である。
【0013】
本明細書に開示のペプチド及び変種ペプチドは、本来のヒトグルカゴン(配列番号:1)のアミノ酸配列を土台とし、本明細書では“ペプチド”、“変種ペプチド”、“グルカゴンアナローグ”、“アナローグ”又は“グルカゴンペプチド”と記載される。例えば“アナローグ”又は“変種”又は“改変”という用語は、de novoに合成されるペプチド又はタンパク質を包含し、一切の特別な改変工程の実施を必要としないことは理解されるであろう。いくつかの特徴では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、配列番号:1と対比して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15のアミノ酸改変、さらにいくつかの事例では、本明細書でさらに記載するように16以上(例えば17、18、19、20、21、22、23、24、25、26)のアミノ酸改変を含む、配列番号:1の改変アミノ酸配列を含む。したがって、グルカゴンアナローグ及び/又はグルカゴンペプチドに関する以下の記載は、本来のヒトグルカゴン(配列番号:1)と本開示のペプチド又は変種ペプチドとの間の類似性の程度に関係なく、本開示のペプチド及び変種ペプチドのいずれにも適用される。
【0014】
本明細書に記載のペプチド配列のいずれも、追加のアミノ酸改変を取り込むことによって(例えば本明細書に記載の改変のいずれかを例えば本明細書の記載の位置に取り入れるか、又は保存的置換を取り入れるか、又は当該位置の本来のグルカゴンアミノ酸に戻すことによって)更なる変更を与え得ることが意図される。例示的実施態様では、改変には例えば以下が含まれる:アシル化、アルキル化、PEG付加、C-末端の切断、1、2、3、7、10、12、15、16、17、18、19、20、21、23、24、27、28及び29位の1つ以上におけるアミノ酸置換。例えば、本明細書に開示のペプチド配列のいずれかがPEG付加の目的でCysを含む場合、変種ペプチドはPEG付加のために種々のアミノ酸を用いることができる。別の例として、変種ペプチドは種々の位置でPEG付加され得る(例えば、既存のCysの異なるアミノ酸による置き換え、所望のPEG付加の位置への新規なCysの挿入、及び新規なCysのPEG付加)。さらにまた別の例として、本明細書に開示のペプチド配列のいずれかがアシル化の目的でLysを含む場合、このLysを別の位置に移動させ、新規な位置をアシル化することができる。ここに記載した実施態様のいずれかで、変種ペプチドは、親ペプチドの全長にわたって、又は親ペプチドのアミノ酸1−29にわたって親ペプチドと例えば80%、85%、90%又は95%同一であり得る(例えば親ペプチドと比較して1、2、3、4又は5つの追加の改変を取り込むことができる)。
本明細書に開示のペプチド配列のいずれかのコンジュゲート、融合タンパク質及びマルチマーもまた意図される。
【0015】
ペプチド及び変種ペプチドの活性
グルカゴンレセプターにおけるアゴニスト活性:
例示的実施態様では、本開示のペプチド及び変種ペプチドは、グルカゴンレセプターで約1000μM以下(例えば約750μM以下、約500μM以下、約250μM以下、約100μM以下、約75μM以下、約50μM以下、約25μM以下、約10μM以下、約5μM以下、又は約1μM以下)のEC50を示す。例示的実施態様では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、グルカゴンレセプター活性化についてナノモル範囲のEC50を示す。例えば、本開示のペプチド及び変種ペプチドは、グルカゴンレセプターで、約1000nM以下(例えば約750nM以下、約500nM以下、約250nM以下、約100nM以下、約75nM以下、約50nM以下、約25nM以下、約10nM以下、約5nM以下、又は約1nM以下)であるEC50を示す。例示的実施態様では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、グルカゴンレセプターでピコモル範囲であるEC50を示す。したがって例示的特徴では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、グルカゴンレセプター活性化について約1000pM以下(例えば約750pM以下、約500pM以下、約250pM以下、約100pM以下、約75pM以下、約50pM以下、約25pM以下、約10pM以下、約5pM以下、又は約1pM以下)のEC50を示す。より低いEC50は当該レセプターにおける活性又は潜在能力がより高いことを示すことは理解されよう。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のグルカゴンアナンローグは、グルカゴンレセプターで約0.001pM以上、約0.01pM以上又は約0.1pM以上であるEC50を示す。グルカゴンレセプター活性化(グルカゴンレセプター活性)は、グルカゴンレセプターを過剰発現するHEK293細胞でcAMP誘発を測定するin vitroアッセイによって測定できる(例えばグルカゴンレセプターコードDNA及びcAMP応答成分連結ルシフェラーゼ遺伝子を同時トランスフェクトしたHEK293細胞を実施例2に記載したようにアッセイする)。
【0016】
例示的実施態様では、本開示のペプチド及び変種ペプチドは、グルカゴンレセプターで、本来のグルカゴンに比して約0.001%以上、0.01約%以上、約0.1%以上、約0.5%以上、約1%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約75%以上、約100%以上、約125%以上、約150%以上、約175%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約350%以上、約400%以上、約450%以上、約500%以上の活性(グルカゴン潜在能力)を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、グルカゴンレセプターで、本来のグルカゴンに比して約5000%以下又は約10,000%以下の活性を示す。あるレセプターの本来のリガンドと比べた当該レセプターにおけるあるグルカゴンアナローグの活性は、本来のリガンドに対する当該グルカゴンアナローグのEC50の逆比として計算される。
いくつかの実施態様では、ペプチド及び変種ペプチドはグルカゴンレセプターにおいてのみ実質的な活性(潜在能力)を示し、GLP-1レセプターではほとんど又は全く活性を示さない。したがって、いくつかの実施態様では、ペプチド及び変種ペプチドは“純粋なグルカゴンレセプターアゴニスト”とみなされるか、又は“グルカゴン/GLP-1レセプターコアゴニスト”とはみなされない。いくつかの実施態様では、これらのペプチド及び変種ペプチドは、本明細書に記載のグルカゴンレセプターで任意のレベルの活性又は潜在能力を示すが、GLP-1レセプターでは実質的に低い活性(潜在能力)を有する。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、グルカゴンレセプターでのEC50よりも100倍以上であるEC50をGLP-1レセプターで示す。
【0017】
GLP-1レセプターにおけるアゴニスト活性:
例示的実施態様では、ペプチド及び変種ペプチドは、GLP-1レセプター活性化について約1000μM以下(例えば約750μM以下、約500μM以下、約250μM以下、約100μM以下、約75μM以下、約50μM以下、約25μM以下、約10μM以下、約5μM以下、又は約1μM以下)のEC50を示す。例示的実施態様では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、GLP-1レセプターで、約1000nM以下(例えば約750nM以下、約500nM以下、約250nM以下、約100nM以下、約75nM以下、約50nM以下、約25nM以下、約10nM以下、約5nM以下、又は約1nM以下)のEC50を示す。例示的実施態様では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、GLP-1レセプターでピコモル範囲であるEC50を示す。したがっていくつかの特徴では、前記ペプチド及び変種ペプチドは、GLP-1レセプター活性化について約1000pM以下(例えば約750pM以下、約500pM以下、約250pM以下、約100pM以下、約75pM以下、約50pM以下、約25pM以下、約10pM以下、約5pM以下、又は約1pM以下)のEC50を示す。より低いEC50は当該レセプターにおける活性又は潜在能力がより高いことを示すことは理解されよう。
例示的実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、GLP-1レセプターで約0.001pM以上、約0.01pM以上又は約0.1pM以上であるEC50を示す。GLP-1レセプター活性化(GLP-1レセプター活性)は、GLP-1レセプターを過剰発現するHEK293細胞でcAMP誘発を測定するin vitroアッセイによって測定できる(例えばGLP-1レセプターコードDNA及びcAMP応答成分連結ルシフェラーゼ遺伝子を同時トランスフェクトしたHEK293細胞を実施例2に記載したようにアッセイする)。
【0018】
いくつかの実施態様では、本開示のペプチド及び変種ペプチドは、GLP-1レセプターで、本来のGLP-1に比して約0.001%以上、0.01約%以上、約0.1%以上、約0.5%以上、約1%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約75%以上、約100%以上、約125%以上、約150%以上、約175%以上、約200%以上、約250%以上、約300%以上、約350%以上、約400%以上、約450%以上、約500%以上の活性(GLP-1潜在能力)を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、GLP-1レセプターで、本来のGLP-1に比して約5000%以下又は約10,000%以下の活性(GLP-1潜在能力)を示す。
いくつかの実施態様では、ペプチド及び変種ペプチドはGLP-1レセプターにおいてのみ実質的な活性(潜在能力)を示し、グルカゴンレセプターではほとんど又は全く活性を示さない。いくつかの実施態様では、ペプチド及び変種ペプチドは“純粋なGLP-1レセプターアゴニスト”とみなされるか、又は“グルカゴン/GLP-1レセプターコアゴニスト”とはみなされない。いくつかの実施態様では、これらのペプチド及び変種ペプチドは、本明細書に記載のGLP-1レセプターで任意のレベルの活性又は潜在能力を示すが、グルカゴンレセプターでは実質的に低い活性(潜在能力)を有する。いくつかの実施態様では、本ペプチド及び変種ペプチドは、GLP-1レセプターでのEC50よりも100倍以上であるEC50をグルカゴンレセプターで示す。
【0019】
GLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターにおけるアゴニスト活性:
例示的実施態様では、本ペプチド及び変種ペプチドはGLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターの両方で活性を示し、“グルカゴン/GLP-1レセプターコアゴニスト”とみなされ得る。例示的実施態様では、本ペプチド及び変種ペプチドのグルカゴンレセプターにおける活性(例えばEC50又は相対的活性若しくは潜在能力)は、GLP-1レセプターにおけるその活性(例えばEC50又は相対的活性若しくは潜在能力)と約50倍、約40倍、約30倍、約20倍、約10倍、又は約5倍以内で相違する(高いか又は低い)。例示的特徴では、本ペプチド又は変種ペプチドのグルカゴン潜在能力は、そのGLP-1潜在能力と約25倍、約20倍、約15倍、約10倍、又は約5倍以内で相違する(高いか又は低い)。例示的特徴では、本ペプチド又は変種ペプチドのグルカゴン潜在能力は、そのGLP-1潜在能力と約25倍、約20倍、約15倍、約10倍、又は約5倍以内低い。
例示的実施態様では、本コアゴニストはほぼ等しい潜在能力を有するか、又はグルカゴンレセプターよりもGLP-1レセプターで相対的に高い潜在能力を有する。例えば、GLP-1レセプターにおける本ペプチド又は変種ペプチドの相対的活性又はEC50又は潜在能力で割った、グルカゴンレセプターにおける本ペプチド又は変種ペプチドの相対的活性又はEC50又は潜在能力の比はX未満又は約Xであり、ここでXは100、75、60、50、40、30、20、15、10又は5から選択される。例示的実施態様では、GLP-1レセプターにおける本ペプチド又は変種ペプチドのEC50又は潜在能力又は相対的活性で割った、グルカゴンレセプターにおける本ペプチド又は変種ペプチドのEC50又は潜在能力又は相対的活性の比は約1及び5未満(例えば約4、約3、約2、約1)である。例示的実施態様では、グルカゴンレセプターにおける本ペプチド又は変種ペプチドのEC50又は潜在能力又は相対的活性で割った、GLP-1レセプターにおける本ペプチド及び変種ペプチドのEC50又は潜在能力又は相対的活性の比は5未満(例えば約4、約3、約2、約1)である。例示的実施態様では、本ペプチド又は変種ペプチドのGLP-1潜在能力に対する本ペプチド又は変種ペプチドのグルカゴン潜在能力の比はY未満であるか又は約Yであり、ここでYは100、75、60、50、40、30、20、15、10又は5から選択される。例示的実施態様では、本ペプチド又は変種ペプチドのGLP-1潜在能力に対する本ペプチド又は変種ペプチドのグルカゴン潜在能力の比は5未満(例えば約4、約3、約2、約1)である。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナンローグはグルカゴンレセプターで、GLP-1レセプターでのEC50より2倍から10倍(例えば2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍)高いEC50を有する。
【0020】
例示的実施態様では、本ペプチドは主としてグルカゴンアゴニストであり、GLP-1レセプターよりもグルカゴンレセプターで相対的に強力である(例えば本ペプチドはGLP-1レセプターと比較してグルカゴンレセプターで5倍以上強力である)。例えば、グルカゴンレセプターにおける本ペプチド又は変種ペプチドの相対的活性又は潜在能力又はEC50で割った、GLP-1レセプターにおける本ペプチド又は変種ペプチドの相対的活性又は潜在能力又はEC50の比はV未満又は約Vであり、ここでVは100、75、60、50、40、30、20、15、10又は5から選択される。いくつかの実施態様では、本ペプチド又は変種ペプチドのグルカゴン潜在能力に対する本ペプチド又は変種ペプチドのGLP-1潜在能力の比はW未満又は約Wであり、ここでWは100、75、60、50、40、30、20、15、10又は5から選択される。いくつかの実施態様では、本ペプチド又は変種ペプチドは、GLP-1レセプターで本来のGLP-1の活性(GLP-1潜在能力)の少なくとも0.1%(例えば約0.5%以上、約1%以上、約5%以上、約10%以上又はそれより高い)を示し、グルカゴンレセプターで本来のグルカゴンの活性(グルカゴン潜在能力)の少なくとも0.1%(例えば約0.5%以上、約1%以上、約5%以上、約10%以上又はそれより高い)を示す。
【0021】
GIPレセプターにおける活性:
グルカゴンレセプター及び/又はGLP-1レセプターでの活性に加えて、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、いくつかの特徴では、GIPレセプターで低いアゴニスト活性を示す。そのような特徴では、そのようなペプチド及び変種ペプチドは、好ましくはGIPレセプターに比してGLP-1レセプターに対して少なくとも100倍の選択性を有する。
しかしながら他の特徴では、本ペプチド又は変種ペプチドはGIPレセプターで相当な活性を示し、例えば当該アナローグのGIPレセプターにおけるEC50は、GLP-1レセプターにおけるそのEC50と約50倍未満の相違であり、場合によって、当該アナローグのGIPにおける潜在能力は当該アナローグのGLP-1における潜在能力の約50倍以内である。例示的実施態様では、本ペプチドは、GIPレセプター活性化能力について約1μM以下、又は約100nM以下又は約75、50、25、10、8、6、5、4、3、2又は1nM以下のEC50を示す。より低いEC50は当該レセプターにおける活性又は潜在能力がより高いことを示すことは理解されよう。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、GIPレセプターで約0.001nM、0.01nM又は0.1nMのEC50を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、GIPレセプターで約100nMを超えないEC50を示す。レセプター活性化は、当該レセプターを過剰発現するHEK293細胞でcAMP誘発を測定するin vitroアッセイによって測定できる(例えば当該レセプターコードDNA及びcAMP応答成分連結ルシフェラーゼ遺伝子を同時トランスフェクトしたHEK293細胞を実施例2に記載したようにアッセイする)。
【0022】
いくつかの実施態様では、本開示のペプチド及び変種ペプチドは、本来のGIPに比してGIPレセプターで少なくとも約0.1%、1%、10%、50%、100%、150%、又は200%以上の活性(GIP潜在能力)を示す。いくつかの実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、GIPレセプターで本来のGIPに比して1000%、10,000%、100,000%又は1000,000%を超えない活性を示す。あるレセプターの本来のリガンドと比較した当該レセプターにおけるグルカゴンペプチドの活性(潜在能力)は、本来のリガンドに対する当該ペプチドのEC50の逆比として計算される。
したがって、本開示のある特徴は、グルカゴンレセプター及びGIPレセプターの両方で活性を示すペプチド及び変種ペプチド(“グルカゴン/GIPコアゴニスト”)を提供する。いくつかの実施態様では、GIPレセプターにおける本ペプチドのEC50は、グルカゴンレセプターにおけるそのEC50と約50倍、40倍、30倍又は20倍未満相違する(高い又は低い)。いくつかの実施態様では、本ペプチドのGIP潜在能力は、そのグルカゴン潜在能力と約500倍、450倍、350倍、300倍、250倍、200倍、150倍、100倍、75倍、50倍、25倍、20倍、15倍、10倍、又は5倍未満相違する(高い又は低い)。いくつかの実施態様では、GLP-1活性は、例えば7位のアミノ酸改変、C-末端から27又は28位のアミノ酸の欠失、又は前記の組合せによって顕著に低下又は破壊されている。
【0023】
本開示のまた別の特徴では、本開示のペプチド及び変種ペプチドはGLP-1及びGIPレセプターで活性を示すが、例えば3位のGlnのアミノ酸改変のためにグルカゴンレセプターでは有意な活性を示さない(“GIP/GLP-1コアゴニスト”)。例えば、この位置での酸性、塩基性又は疎水性アミノ酸(グルタミン酸、オルニチン、ノルロイシン)による置換はグルカゴン活性を低下させる。他の特徴では、本ペプチド及び変種ペプチドは、グルカゴン、GIP及びGLP-1レセプターの各々で活性を示す(“グルカゴン/GIP/GLP-1トリアゴニスト”)。例えば、これら後者の特徴のどちらにおいても、GIPレセプターにおける当該ペプチドのEC50は、GLP-1レセプターにおけるそのEC50と約50倍、40倍、30倍又は20倍未満相違する(高い又は低い)。いくつかの実施態様では、本ペプチドのGIP潜在能力は、そのGLP-1潜在能力と約25倍、20倍、15倍、10倍、又は5倍未満相違する(高い又は低い)。いくつかの実施態様では、これらのペプチドは、当該グルカゴンレセプターで本来のグルカゴンの約10%以下の(例えば1−10%、又は約0.1−10%、又は約0.1%を超えるが約10%未満である)活性を有する。
【0024】
コンジュゲートの活性:
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のペプチド及び変種ペプチドは、上記に記載したように、グルカゴンレセプターにおける活性若しくは潜在能力及び/又はGLP-1レセプターにおける活性及び/又はGIPレセプターにおける活性を示し、このとき当該ペプチド又は変種ペプチドはコンジュゲートの部分であり(例えば異種部分(例えば親水性部分、例えばポリエチレングリコール)とコンジュゲートされている)、当該ペプチド又は変種ペプチドは、それらが当該コンジュゲートの部分でないときよりも低い活性(すなわちより低い潜在能力又はより高いEC50)を示す。いくつかの特徴では、非コンジュゲートペプチド又は変種ペプチドは、グルカゴンレセプター及び/又はGLP-1レセプターで、コンジュゲートペプチド又は変種ペプチドの潜在能力の約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約100倍又は前記を超える潜在能力を示す。
【0025】
グルカゴンアナローグの構造
アシル化:
いくつかの実施態様にしたがえば、グルカゴンアナローグはアシル化アミノ酸(例えば非コードアシル化アミノ酸(例えば天然に存在するアミノ酸にとって本来のものではないアシル基を含むアミノ酸))を含む。いくつかの実施態様のアシル化アミノ酸は、当該グルカゴンアナンローグに以下の1つ以上を付与する:(i)循環中の半減期の延長、(ii)作用開始の引き延ばし、(iii)作用時間の延長、(iv)プロテアーゼ(例えばDPP-IV)耐性の改良、及び(v)GLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターの一方又は両方における潜在能力の増加。本明細書に示すように、アシル化グルカゴンアナンローグは、対応する非アシル化グルカゴンアナローグと比較してグルカゴンレセプター及びGLP-1レセプターで活性の低下を示さない。むしろいくつかの実施態様では、アシル化グルカゴンアナローグは、実際にGLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターで活性の増加を示す。したがって、アシル化グルカゴンアナローグの潜在能力は、強化されないとしてもグルカゴンアナローグの非アシル化型に匹敵し得る。
ある実施態様にしたがえば、グルカゴンアナローグはアシル基を含み、前記アシル基は、循環中の半減期の延長及び/又は作用開始の引き延ばし及び/又は作用時間の延長及び/又はプロテアーゼ(例えばDPP-IV)耐性の改良の目的のために、エステル、チオエステル又はアミド結合を介してグルカゴンアナローグに結合される。
【0026】
アシル化は、グルカゴンアナローグ内の任意の位置(1−29位のいずれか、C-末端位から29番目のアミノ酸(例えば30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47位など、C-末端伸長内の位置、又はC-末端のアミノ酸))で実施できるが、ただしグルカゴン活性及び/又はGLP-1活性が、強化されないとしても維持されることを条件とする。非限定的な例には、5、7、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、24、27、28又は29位が含まれる。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、9、10、12、16及び20位から成る群から選択される1つ以上の位置でアシル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、10、12及び16位から成る群から選択される1つ以上の位置でアシル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、9、10、12、16及び20位から成る群から選択される1つ以上の位置でアシル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、10及び12位の1つ以上の位置でアシル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは12位にアシル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、C-末端伸長並びに9、10、12、16 、20及び37−43(例えば40)位から成る群から選択される1つ以上の位置でアシル化アミノ酸を含む。具体的な実施態様では、アシル化はグルカゴンアナローグの10位に生じ、当該グルカゴンアナローグは、分子内架橋(例えば分子内共有結合架橋(例えばラクタム架橋))を欠く。分子内架橋を欠くそのようなアシル化グルカゴンアナローグは、分子内共有結合架橋を欠く対応する非アシル化アナローグと比較して、及び10位以外の位置でアシル化され分子内共有結合架橋を欠く対応するアナローグと比較して、GLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターで活性の強化を示す。本明細書で示すように、10位におけるアシル化は、グルカゴンレセプターでほとんど活性を示さないグルカゴンアナローグを、グルカゴンレセプター及びGLP-1レセプターの両方で活性を示すグルカゴンアナローグに変換することすら可能である。したがって、アシル化が生じる位置はグルカゴンアナローグの全体的活性プロフィールを変更することができる。
【0027】
いくつかの実施態様のグルカゴンアナローグは、親水性部分が連結される同じアミノ酸の位置で、又は異なるアミノ酸の位置でアシル化される。非限定的な例には、10位でのアシル化、及びグルカゴンアナローグのC-末端部分内の1つ以上の位置(例えば24、28又は29位、C-末端伸長内、又はC-末端)におけるPEG付加(例えばC-末端Cysの付加による)が含まれる。
アシル基は、グルカゴンアナローグのアミノ酸に直接的に、又はスペーサーを介してグルカゴンアナローグのアミノ酸に間接的に共有結合させることができ、後者ではスペーサーはグルカゴンアナローグのアミノ酸とアシル基との間に配置される。
具体的な特徴では、グルカゴンアナローグは、当該グルカゴンアナローグのアミノ酸の側鎖アミン、ヒドロキシル又はチオールの直接的アシル化によってアシル基を含むように改変される。いくつかの実施態様では、アシル化はグルカゴンアナローグの10、20、24又は29位で生じる。これに関しては、前記アシル化グルカゴンアナローグは、配列番号:1のアミノ酸配列又は本明細書に記載のアミノ酸改変の1つ以上を含む前記の改変アミノ酸配列を含むことができ、後者ではアナローグの10、20、24及び29位のアミノ酸の少なくとも1つは、側鎖アミン、ヒドロキシル又はチオールを含む任意のアミノ酸に改変される。いくつかの具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグの直接的アシル化は、10位のアミノ酸の側鎖アミン、ヒドロキシル又はチオールを介して生じる。
【0028】
いくつかの実施態様では、側鎖アミンを含むアミノ酸は下記式Iのアミノ酸である:
【化1】
式中、nは1から4である。
いくつかの例示的な実施態様では、式Iのアミノ酸は、nが4(Lys)又はnが3(Orn)のアミノ酸である。
【0029】
他の実施態様では、側鎖ヒドロキシルを含むアミノ酸は下記式IIのアミノ酸である:
【化2】
式中、nは1から4である。
いくつかの例示的な実施態様では、式IIのアミノ酸は、nが1(Ser)のアミノ酸である。
【0030】
さらにまた他の実施態様では、側鎖チオールを含むアミノ酸は下記式IIIのアミノ酸である:
【化3】
式中、nは1から4である。
いくつかの例示的な実施態様では、式IIIのアミノ酸は、nが1(Cys)のアミノ酸である。
さらにまた他の実施態様では、側鎖アミン、ヒドロキシル又はチオールを含むアミノ酸は、式I、式II又は式IIIの同じ構造を含む(ただし式I、式II又は式IIIのアミノ酸のアルファ炭素と結合した水素は第二の側鎖で置き換えられるという点を除く)二置換アミノ酸である。
【0031】
いくつかの実施態様では、アシル化グルカゴンはアナローグとアシル基との間にスペーサーを含む。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグはスペーサーと共有結合され、前記スペーサーはアシル基と共有結合される。
いくつかの実施態様では、スペーサーは、側鎖アミン、ヒドロキシル若しくはチオールを含むアミノ酸、又は側鎖アミン、ヒドロキシル若しくはチオールを含むアミノ酸を含むジペプチド若しくはトリペプチドである。スペーサーが結合されるアミノ酸は、スペーサーとの結合を可能にする部分を含む任意のアミノ酸(例えば1ヶ所又は2ヶ所でα-置換されたアミノ酸)であり得る。例えば、側鎖NH2、-OH、又は-COOHを含むアミノ酸(例えばLys、Orn、Ser、Asp又はGlu)が適切である。これに関して、アシル化グルカゴンアナローグは、配列番号:1のアミノ酸配列又は本明細書に記載のアミノ酸改変の1つ以上を含む前記の改変アミノ酸配列を含むことができ、後者では10、20、24及び29位のアミノ酸の少なくとも1つは、側鎖アミン、ヒドロキシル又はカルボキシレートを含む任意のアミノ酸に改変される。
いくつかの実施態様では、スペーサーは、側鎖アミン、ヒドロキシル若しくはチオールを含むアミノ酸、又は側鎖アミン、ヒドロキシル若しくはチオールを含むアミノ酸を含むジペプチド若しくはトリペプチドである。
【0032】
アシル化がスペーサーのアミン基を介して生じるとき、当該アシル化は当該アミノ酸のアルファアミン又は側鎖アミンを介して生じ得る。アルファアミンがアシル化される事例では、スペーサーのアミノ酸は任意のアミノ酸であり得る。例えば、スペーサーのアミノ酸は、疎水性アミノ酸、例えばGly、Ala、Val、Leu、Ile、Trp、Met、Phe、Tyr、6-アミノヘキサン酸、5-アミノ吉草酸、7-アミノヘプタン酸及び8-アミノオクタン酸であり得る。また別には、スペーサーのアミノ酸は酸性残基、例えばAsp、Glu、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸、システイン酸、ガンマ-グルタミン酸であり得る。
スペーサーのアミノ酸の側鎖アミンがアシル化される事例では、スペーサーのアミノ酸は、側鎖アミンを含むアミノ酸、例えば式Iのアミノ酸(例えばLys又はOrn)である。この事例では、スペーサーのアミノ酸のアルファアミン及び側鎖アミンの両方がアシル化され得る。本発明の実施態様はそのような二アシル化分子を含む。
アシル化がスペーサーのヒドロキシル基を介して生じるとき、当該アミノ酸又はジペプチド若しくはトリペプチドのアミノ酸の1つは式IIのアミノ酸であり得る。具体的な例示の実施態様では、アミノ酸はSerである。
アシル化がスペーサーのチオール基を介して生じるとき、当該アミノ酸又はジペプチド若しくはトリペプチドのアミノ酸の1つは式IIIのアミノ酸であり得る。具体的な例示の実施態様では、アミノ酸はCysである。
【0033】
いくつかの実施態様では、スペーサーは親水性二官能性スペーサーである。ある種の実施態様では、親水性二官能性スペーサーは、2つ以上の反応基(例えばアミン、ヒドロキシル、チオール及びカルボキシル基又は前記の任意の組合せ)を含む。ある種の実施態様では、親水性二官能性スペーサーはヒドロキシル基及びカルボキシル基を含む。他の実施態様では、親水性二官能性スペーサーはチオール基及びカルボキシレートを含む。具体的な実施態様では、スペーサーはアミノポリ(アルキルオキシ)カルボキシレートを含む。これに関しては、スペーサーは、例えばNH2(CH2CH2O)n(CH2)mCOOHを含むことができ、前記式中、mは1から6の任意の整数でnは2から12の任意の整数であり、例えば8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸であり、前記はペプチドインターナショナル社(Peptides International, Inc., Louisville, KY)から市場で入手できる。
いくつかの実施態様では、スペーサーは疎水性二官能性スペーサーである。疎水性二官能性スペーサーは当業界では公知である。例えば以下を参照されたい:Bioconjugate Techniques, G. T. Hermanson(Academic Press, San Diego, CA, 1996)(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。ある種の実施態様では、疎水性二官能性スペーサーは、2つ以上の反応基(例えばアミン、ヒドロキシル、チオール及びカルボキシル基又は前記の組合せ)を含む。ある種の実施態様では、疎水性二官能性スペーサーはヒドロキシル基及びカルボキシレートを含む。他の実施態様では、疎水性二官能性スペーサーはアミン基及びカルボキシレートを含む。他の実施態様では、疎水性二官能性スペーサーはチオール基及びカルボキシレートを含む。カルボキシレート及びヒドロキシル基又はチオール基を含む適切な疎水性二官能性スペーサーは当業界で公知であり、例えば8-ヒドロキシオクタン酸及び8-メルカプトオクタン酸が含まれる。
【0034】
いくつかの実施態様では、二官能性スペーサーは、カルボキシレート基の間に1−7の炭素原子の非分枝メチレンを含むジカルボン酸ではない。いくつかの実施態様では、二官能性スペーサーは、カルボキシレート基の間に1−7の炭素原子の非分枝メチレンを含むジカルボン酸である。
具体的な実施態様のスペーサー(例えばアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性二官能性スペーサー又は疎水性二官能性スペーサー)は、長さが3から10原子(例えば6から10原子(例えば6、7、8、9又は10原子))である。より具体的な実施態様では、スペーサーは長さが約3から10原子であり、アシル基はC12からC18脂肪アシル基(例えばC14脂肪アシル基、C16脂肪アシル基)であり、したがってスペーサー及びアシル基の全長が14から28原子(例えば約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28原子)である。いくつかの実施態様では、スペーサー及びアシル基の長さは17から28(例えば19から26,19から21)原子である。
【0035】
ある種の前述の実施態様にしたがえば、二官能性スペーサーは、長さが3から10原子のアミノ酸骨格を含む合成アミノ酸又は天然に存在するアミノ酸(本明細書に記載されるアミノ酸のいずれかを含むが、ただしこれらに限定されない)であり得る(例えば6-アミノヘキサン酸、5-アミノ吉草酸、7-アミノヘプタン酸、及び8-アミノオクタン酸)。また別には、スペーサーは、長さが3から10原子(例えば6から10原子)のペプチド骨格を有するジペプチド又はトリペプチドスペーサーであり得る。当該ジペプチド又はトリペプチドの各アミノ酸は、当該ジペプチド又はトリペプチドの他のアミノ酸と同じでも異なっていてもよく、天然に存在するか又はコードされる及び/又はコードされない又は天然に存在しないアミノ酸から成る群からそれぞれ別個に選択できる。前記は例えば以下を含む:天然に存在するアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr)のD又はL異性体のいずれか、又は以下から成る群から選択される天然に存在しない又は非コードアミノ酸のD又はL異性体:β-アラニン(β-Ala)、N-α-メチル-アラニン(Me-Ala)、アミノ酪酸(Abu)、γ-アミノ酪酸(γ-Abu)、アミノヘキサン酸(ε-Ahx)、アミノイソ酪酸(Aib)、アミノメチルピロールカルボン酸、アミノペピリジンカルボン酸、アミノセリン(Ams)、アミノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸、アルギニンN-メトキシ-N-メチルアミド、β-アスパラギン酸(β-Asp)、アゼチジンカルボン酸、3-(2-ベンゾチアゾリル)アラニン、α-tert-ブチルグリシン、2-アミノ-5-ウレイド-n-吉草酸(シトルリン、Cit)、β-シクロヘキシルアラニン(Cha)、アセトアミドメチル-システイン、ジアミノブタン酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dpr)、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ジメチルチアゾリジン(DMTA)、γ-グルタミン酸(γ-Glu)、ホモセリン(Hse)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、イソロイシンN-メトキシ-N-メチルアミド、メチル-イソロイシン(MeIle)、イソニペコチン酸(Isn)、メチル-ロイシン(MeLeu)、メチル-リジン、ジメチル-リジン、トリメチル-リジン、メタノプロリン、メチオニン-スルホキシド(Met(O))メチオニン-スルホン(Met(O2))ノルロイシン(Nle)、メチル-ノルロイシン(Me-Nle)、ノルバリン(NVa)、オルニチン(Orn)、パラ-アミノ安息香酸(PABA)、ペニシラミン(Pen)、メチルフェニルアラニン(MePhe)、4-クロロフェニルアラニン(Phe(4-Cl))、4-フルオロフェニルアラニン(Phe(4-F))、4-ニトロフェニルアラニン(Phe(4-NO2))、4-シアノフェニルアラニン(Phe(4-CN))、フェニルグリシン(Phg)、ピペリジニルアラニン、ピペリジニルグリシン、3,4-デヒドロプロリン、ピロジニルアラニン、サルコシン(Sar)、セレノシステイン(Sec)、O-ベンジル-ホスホセリン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸(Sta)、4-アミノ-5-シクロヘキシル-3-ヒドロキシペンタン酸、(ACHPA)、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸(AHPPA)、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸(Tic)、テトラヒドロピラングリシン、チエニルアラニン(Thi)、O-ベンジル-ホスホチロシン、O-ホスホチロシン、メトキシチロシン、エトキシチロシン、O-(ビス-ジメチルアミノ-ホスホノ)-チロシン、チロシンスルフェートテトラブチルアミン、メチル-バリン(MeVal)、及びアルキル化3-メルカプトプロピオン酸。
【0036】
いくつかの実施態様では、スペーサーは全体として陰性の荷電を含むことができ、例えば1つ又は2つの陰性荷電アミノ酸を含む。いくつかの実施態様では、ジペプチドは一般構造A-Bのジペプチドのいずれでもなく、ここでAはGly、Gln、Ala、Arg、Asp、Asn、Ile、Leu、Val、Phe及びProから成る群から選択され、BはLys、HisTrpから成る群から選択される。いくつかの実施態様では、ジペプチドスペーサーは、Ala-Ala、β-Ala-β-Ala、Leu-Leu、Pro-Pro、γ-アミノ酪酸-γ-アミノ酪酸、Glu-Glu及びγ-Glu-γ-Gluから成る群から選択される。
いくつかの例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、スペーサーのアミン、ヒドロキシル又はチオールのアシル化によってアシル基を含むように改変される(前記スペーサーは当該グルカゴンアナローグの10、20、24又は29位のアミノ酸又はC-末端アミノ酸の側鎖に結合される)。
さらにまたより具体的な実施態様では、アシル基は当該グルカゴンアナローグの10位のアミノ酸に結合され、スペーサー及びアシル基の長さは14から28原子である。いくつかの特徴では、10位のアミノ酸は式Iのアミノ酸であるか、又は式Iと関連する二置換アミノ酸である。より具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグは分子内架橋(分子内共有結合架橋)を欠く。例えばグルカゴンアナローグは、当該アナローグのアルファヘリックスの安定化のために、1つ以上のアルファ、アルファ二置換アミノ酸、例えばAIBを含むグルカゴンアナローグであり得る。
【0037】
アミン、ヒドロキシル及びチオールを介するペプチドアシル化の適切な方法は当業界で公知である。例えば以下を参照されたい:実施例19(アミンを介するアシル化の方法)、Miller, Biochem Biophys Res Commun 218: 377-382 (1996); Shimohigashi and Stammer, Int J Pept Protein Res 19: 54-62 (1982);並びに Previero et al., Biochim Biophys Acta 263: 7-13, 1972(ヒドロキシルを介するアシル化の方法);並びにSan and Silvius, J Pept Res 66: 169-180, 2005(チオールを介するアシル化の方法);Bioconjugate Chem. "Chemical Modifications of Proteins: History and Applications" pages 1, 2-12 (1990); Hashimoto et al., Pharmacuetical Res. "Synthesis of Palmitoyl Derivatives of Insulin and their Biological Activity" Vol. 6, No: 2 pp.171-176, 1989。
アシル化アミノ酸のアシル基は任意のサイズ(例えば任意の長さの炭素鎖)であり得る。さらに直鎖でも分枝鎖でもよい。いくつかの具体的な実施態様では、アシル基はC4からC30脂肪酸である。例えば、アシル基は、C4脂肪酸、C6脂肪酸、C8脂肪酸、C10脂肪酸、C12脂肪酸、C14脂肪酸、C16脂肪酸、C18脂肪酸、C20脂肪酸、C22脂肪酸、C24脂肪酸、C26脂肪酸、C28脂肪酸、又はC30脂肪酸のいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、アシル基はC8からC20脂肪酸、例えばC14脂肪酸又はC16脂肪酸である。
また別の実施態様では、アシル基は胆汁酸である。胆汁酸は任意の適切な胆汁酸(コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、タウロコール酸、グリココール酸及びコレステロール酸が含まれるが、ただし前記に限定されない)であり得る。
【0038】
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、長鎖アルカンのグルカゴンアナローグによるアシル化によってアシル化されたアミノ酸を含む。具体的な特徴では、長鎖アルカンは、グルカゴンのカルボキシル基又はその活性化型と反応するアミン、ヒドロキシル又はチオール基(例えばオクタデシルアミン、テトラデカノール及びヘキサデカンチオール)を含む。グルカゴンアナローグのカルボキシル基又はその活性化型は、当該グルカゴンアナローグのアミノ酸(例えばグルタミン酸、アスパラギン酸)の側鎖の部分であるか、又は当該アナローグ骨格の部分であり得る。
ある種の実施態様では、グルカゴンアナローグは、当該グルカゴンアナローグに結合されるスペーサーによる長鎖アルカンのアシル化によってアシル基を含むように改変される。具体的な特徴では、長鎖アルカンは、スペーサーのカルボキシル基又はその活性化型と反応するアミン、ヒドロキシル又はチオール基を含む。カルボキシル基又はその活性化型を含む適切なスペーサーは本明細書に記載されてあり、例えば二官能性スペーサー(例えばアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド)、親水性二官能性スペーサー及び疎水性二官能性スペーサーが含まれる。
本明細書で用いられるように、“カルボキシル基の活性化型”という用語は一般式R(C=O)Xをもつカルボキシル基を指し、式中Xは脱離基でRはグルカゴンアナローグ又はスペーサーである。例えばカルボキシル基の活性化型にはアシル塩化物、無水物及びエステルが含まれるが、ただし前記に限定されない。いくつかの実施態様では、活性化カルボキシル基は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)脱離基をもつエステルである。
【0039】
長鎖アルカンがグルカゴンアナローグ又はスペーサーによってアシル化されるこれらの特徴に関しては、長鎖アルカンは任意のサイズであり、さらに任意の長さの炭素鎖を含むことができる。当該長鎖アルカンは直鎖でも分枝鎖でもよい。ある種の特徴では、長鎖アルカンはC4からC30アルカンである。例えば、長鎖アルカンは、C4アルカン、C6アルカン、C8アルカン、C10アルカン、C12アルカン、C14アルカン、C16アルカン、C18アルカン、C20アルカン、C22アルカン、C24アルカン、C26アルカン、C28アルカン、又はC30アルカンのいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、長鎖アルカンはC8からC20アルカン、例えばC14アルカン、C16アルカン、又はC18アルカンを含む。
さらにまたいくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグのアミン、ヒドロキシル又はチオール基はコレステロール酸でアシル化される。具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、アルキル化des-アミノCysスペーサー(すなわちアルキル化3-メルカプトプロピオン酸スペーサー)を介してコレステロール酸に連結される。アルキル化des-アミノCysスペーサーは、例えばドデカエチレングリコール部分を含むdes-アミノ-Cysスペーサーであり得る。ある実施態様では、グルカゴンアナローグは以下の構造を含む:
【化4】
【0040】
本明細書に記載するアシル化グルカゴンアナローグは、親水性部分を含むようにさらに改変することができる。いくつかの具体的な実施態様では、親水性部分はポリエチレングリコール(PEG)鎖を含むことができる。親水性部分の取り込みは、任意の適切な手段(例えば本明細書に記載の方法のいずれか)を介して達成できる。これに関しては、アシル化グルカゴンアナローグは、本明細書に記載の改変のいずれかを含む配列番号:1を含むことができ、前記では、当該アナローグの10、20、24及び29位のアミノ酸の少なくとも1つはアシル基を含み、16、17、21、24若しくは29位のアミノ酸、C-末端伸長内の位置、又はC-末端アミノ酸の少なくとも1つはCys、Lys、Orn、ホモ-Cys又はAc-Pheに改変され、さらに当該アミノ酸の側鎖は親水性部分(例えばPEG)と共有結合される。いくつかの実施態様では、アシル基は10位に結合され(場合によってCys、Lys、Orn、ホモ-Cys又はAc-Pheを含むスペーサーを介する)、親水性部分は24位のCys残基に取り込まれる。
また別には、アシル化グルカゴンアナローグはスペーサーを含むことができ、当該スペーサーにはアシル化及び親水性部分を含むための改変の両方が実施される。適切なスペーサーの非限定的な例には、Cys、Lys、Orn、ホモ-Cys及びAc-Pheから成る群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むスペーサーが含まれる。
【0041】
アルキル化:
いくつかの実施態様にしたがえば、グルカゴンアナローグはアルキル化アミノ酸(例えば非コードアルキル化アミノ酸(例えば天然に存在するアミノ酸にとって本来のものではないアルキル基を含むアミノ酸))を含む。いずれの特定の理論にも拘束されないが、グルカゴンアナローグのアルキル化は、グルカゴンアナローグのアシル化と(同じではないにしても)類似する作用をもたらすと考えられる。前記作用は、例えば循環中の半減期の延長、作用開始の引き延ばし、作用時間の延長、プロテアーゼ(例えばDPP-IV)耐性の改良並びにGLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターにおける潜在能力の増加である。
【0042】
アルキル化は、アシル化のための部位として本明細書に記載の任意の位置を含むグルカゴンアナローグ内の任意の位置で実施できる。前記位置には、アミノ酸1−29位のいずれか、C-末端から29番目の残基までのアミノ酸の位置、例えば30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47など、C-末端伸長内又はC-末端(ただしグルカゴン活性又はGLP-1活性が保持されることを条件とする)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。非限定的な例には、5、7、10、11、12、13、14、16、17、18、19、20、21、24、27、28又は29位が含まれる。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、9、10、12、16及び20から成る群から選択される1つ以上の位置でアルキル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、10、12及び16から成る群から選択される1つ以上の位置でアルキル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、9、10、12、16及び20から成る群から選択される1つ以上の位置でアルキル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、10及び12の1つ以上の位置でアルキル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは12位にアルキル化アミノ酸を含む。例示的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、C-末端伸長並びに9、10、12、16 、20及び37−43(例えば40)位から成る群から選択される1つ以上の位置でアルキル化アミノ酸を含む。アルキル基は、グルカゴンアナローグのアミノ酸に直接的に、又はスペーサーを介してグルカゴンアナローグのアミノ酸に間接的に共有結合させることができ、後者ではスペーサーはグルカゴンアナローグのアミノ酸とアルキル基との間に配置される。グルカゴンアナローグは、親水性部分が連結されるアミノ酸と同じアミノ酸の位置で又は異なるアミノ酸の位置でアルキル化できる。非限定的な例には、10位のアルキル化、及びグルカゴンアナローグのC-末端部分内の1つ以上の位置(例えば24、28又は29位、C-末端伸長内、又はC-末端)におけるPEG付加(例えばC-末端Cysの付加による)が含まれる。
【0043】
具体的な特徴では、グルカゴンアナローグは、当該グルカゴンアナローグのアミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシル又はチオールの直接的アルキル化によりアルキル基を含むように改変される。いくつかの実施態様では、アルキル化は当該グルカゴンアナローグの10、20、24又は29位で生じる。これに関しては、アルキル化グルカゴンアナローグは配列番号:2のアミノ酸配列又はその改変アミノ酸配列を含み、後者は、本明細書に記載の1つ以上のアミノ酸改変を含み、10、20、24及び29位のアミノ酸の少なくとも1つは側鎖アミン、ヒドロキシル又はチオールを含む任意のアミノ酸に改変される。いくつかの具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグの直接的アルキル化は、10位のアミノ酸の側鎖アミン、ヒドロキシル又はチオールを介して生じる。
いくつかの実施態様では、側鎖アミンを含むアミノ酸は式Iのアミノ酸である。いくつかの例示的な実施態様では、式Iのアミノ酸は、nが4(Lys)又はnが3(Orn)のアミノ酸である。
他の実施態様では、側鎖ヒドロキシルを含むアミノ酸は式IIのアミノ酸である。いくつかの例示的な実施態様では、式IIのアミノ酸は、nが1(Ser)のアミノ酸である。
さらに他の実施態様では、側鎖チオールを含むアミノ酸は式IIIのアミノ酸である。いくつかの例示的な実施態様では、式IIIのアミノ酸は、nが1(Cys)のアミノ酸である。
さらに他の実施態様では、側鎖アミン、ヒドロキシル、又はチオールを含むアミノ酸は、式I、式II、又は式IIIの同じ構造を含む(ただし式I、式II又は式IIIのアミノ酸のアルファ炭素と結合した水素は第二の側鎖で置き換えられるという点を除く)二置換アミノ酸である。
【0044】
いくつかの実施態様では、アルキル化グルカゴンアナローグは当該アナローグとアルキル基との間にスペーサーを含む。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグはスペーサーと共有結合され、前記スペーサーはアルキル基と共有結合される。いくつかの例示的実施態様では、グルカゴンアナローグは、スペーサーのアミン、ヒドロキシル又はチオールのアルキル化によってアルキル基を含むように改変され、前記スペーサーは、当該グルカゴンアナローグの10、20、24又は29位のアミノ酸の側鎖に結合される。スペーサーが結合するアミノ酸は、スペーサーとの結合を可能にする部分を含む任意のアミノ酸であり得る。例えば、側鎖NH2、-OH、又は-COOHを含むアミノ酸(例えばLys、Orn、Ser、Asp又はGlu)が適切である。これに関して、アルキル化グルカゴンアナローグは、配列番号:1の改変アミノ酸配列を含むことができ、前記は、本明細書に記載の1つ以上のアミノ酸改変を含み、10、20、24及び29位のアミノ酸の少なくとも1つは側鎖アミン、ヒドロキシル又はカルボキシレートを含む任意のアミノ酸に改変される。
いくつかの実施態様では、スペーサーは、側鎖アミン、ヒドロキシル若しくはチオールを含むアミノ酸、又は側鎖アミン、ヒドロキシル若しくはチオールを含むアミノ酸を含むジペプチド若しくはトリペプチドである。
【0045】
アルキル化がスペーサーのアミン基を介して生じるとき、当該アルキル化はアミノ酸のアルファアミン又は側鎖アミンを介して生じ得る。アルファアミンがアルキル化される事例では、スペーサーのアミノ酸は任意のアミノ酸であり得る。例えば、スペーサーのアミノ酸は、疎水性アミノ酸、例えばGly、Ala、Val、Leu、Ile、Trp、Met、Phe、Tyr、6-アミノヘキサン酸、5-アミノ吉草酸、7-アミノヘプタン酸及び8-アミノオクタン酸であり得る。また別には、スペーサーのアミノ酸は酸性残基、例えばAsp、Gluであり得るが、アルキル化が酸性残基のアルファアミンで生じることを条件とする。 スペーサーのアミノ酸の側鎖アミンがアルキル化される事例では、スペーサーのアミノ酸は、側鎖アミンを含むアミノ酸、例えば式Iのアミノ酸(例えばLys又はOrn)である。この事例では、スペーサーのアミノ酸のアルファアミン及び側鎖アミンの両方がアルキル化される事が可能で、したがって当該グルカゴンアナローグは二アルキル化される。本発明の実施態様はそのような二アルキル化分子を含む。
アルキル化がスペーサーのヒドロキシル基を介して生じるとき、当該アミノ酸又はジペプチド若しくはトリペプチドのアミノ酸の1つは式IIのアミノ酸であり得る。具体的な例示の実施態様では、アミノ酸はSerである。
アルキル化がスペーサーのチオール基を介して生じるとき、当該アミノ酸又はジペプチド若しくはトリペプチドのアミノ酸の1つは式IIIのアミノ酸であり得る。具体的な例示の実施態様では、アミノ酸はCysである。
【0046】
いくつかの実施態様では、スペーサーは親水性二官能性スペーサーである。ある種の実施態様では、親水性二官能性スペーサーは、2つ以上の反応基(例えばアミン、ヒドロキシル、チオール及びカルボキシル基又は前記の任意の組合せ)を含む。ある種の実施態様では、親水性二官能性スペーサーはヒドロキシル基及びカルボキシレートを含む。他の実施態様では、親水性二官能性スペーサーはアミン基及びカルボキシレートを含む。他の実施態様では、親水性二官能性スペーサーはチオール基及びカルボキシレートを含む。具体的な実施態様では、スペーサーはアミノポリ(アルキルオキシ)カルボキシレートを含む。これに関しては、スペーサーは、例えばNH2(CH2CH2O)n(CH2)mCOOHを含むことができ、前記式中、mは1から6の任意の整数でnは2から12の任意の整数であり、例えば8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸であり、前記はペプチドインターナショナル社(Louisville, KY)から市場で入手できる。
いくつかの実施態様では、スペーサーは疎水性二官能性スペーサーである。ある種の実施態様では、疎水性二官能性スペーサーは、2つ以上の反応基(例えばアミン、ヒドロキシル、チオール及びカルボキシル基又は前記の組合せ)を含む。ある種の実施態様では、疎水性二官能性スペーサーはヒドロキシル基及びカルボキシレートを含む。他の実施態様では、疎水性二官能性スペーサーはアミン基及びカルボキシレートを含む。他の実施態様では、疎水性二官能性スペーサーはチオール基及びカルボキシレートを含む。カルボキシレート及びヒドロキシル基又はチオール基を含む適切な疎水性二官能性スペーサーは当業界で公知であり、例えば8-ヒドロキシオクタン酸及び8-メルカプトオクタン酸が含まれる。
【0047】
具体的な実施態様のスペーサー(例えばアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性二官能性スペーサー又は疎水性二官能性スペーサー)は、長さが3から10原子(例えば6から10原子(例えば6、7、8、9又は10原子))である。より具体的な実施態様では、スペーサーは長さが約3から10原子(例えば6から10原子)であり、アルキルはC12からC18脂肪アルキル基(例えばC14アルキル基、C16アルキル基)であり、したがってスペーサー及びアルキル基の全長が14から28原子(例えば約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28原子)である。いくつかの実施態様では、スペーサー及びアルキルの長さは17から28(例えば19から26,19から21)原子である。
ある種の前述の実施態様にしたがえば、二官能性スペーサーは、長さが3から10原子のアミノ酸骨格を含む合成又は天然に存在しないか若しくは非コードアミノ酸であり得る(例えば6-アミノヘキサン酸、5-アミノ吉草酸、7-アミノヘプタン酸、及び8-アミノオクタン酸)。また別には、スペーサーは、長さが3から10原子(例えば6から10原子)のペプチド骨格を有するジペプチド又はトリペプチドスペーサーであり得る。ジペプチド又はトリペプチドスペーサーは、天然に存在するか若しくはコードされるアミノ酸、及び/又は非コード若しくは天然に存在しないアミノ酸(例えば本明細書に教示される任意のアミノ酸)で構成され得る。いくつかの実施態様では、スペーサーは全体として陰性の荷電を含み、例えば1つ又は2つの陰性荷電アミノ酸を含む。いくつかの実施態様では、ジペプチドスペーサーは、Ala-Ala、β-Ala-β-Ala、Leu-Leu、Pro-Pro、γ-アミノ酪酸-γ-アミノ酪酸及びγ-Glu-γ-Gluから成る群から選択される。
【0048】
アミン、ヒドロキシル及びチオールを介するペプチドアルキル化の適切な方法は当業界で公知である。例えばWilliamsonのエーテル合成を用いて、グルカゴンアナローグのヒドロキシル基とアルキル基との間にエーテル結合を形成できる。さらにまた、当該ペプチドのアルキルハロゲン化物による求核置換反応はエーテル、チオエーテル又はアミノ結合のいずれかを生じることができる。
アルキル化グルカゴンアナローグのアルキル基は任意のサイズ(例えば任意の長さの炭素鎖)であり得る。さらに直鎖でも分枝鎖でもよい。いくつかの実施態様では、アルキル基はC4からC30アルキルである。例えば、アルキル基は、C4アルキル、C6アルキル、C8アルキル、C10アルキル、C12アルキル、C14アルキル、C16アルキル、C18アルキル、C20アルキル、C22アルキル、C24アルキル、C26アルキル、C28アルキル、又はC30アルキルのいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、アルキル基はC8からC20アルキル、例えばC14アルキル又はC16アルキルである。
いくつかの具体的な実施態様では、アルキル基は、胆汁酸(例えばコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、タウロコール酸、グリココール酸及びコレステロール酸)のステロイド部分を含む。
本開示のいくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、求核性長鎖アルカンとグルカゴンアナローグ(ここで前記グルカゴンアナローグは求核性置換に適切な脱離基を含む)との反応によってアルキル化アミノ酸を含む。具体的な特徴では、長鎖アルカンの求核基はアミン、ヒドロキシル又はチオール基(例えばオクタデシルアミン、テトラデカノール及びヘキサデカンチオール)を含む。グルカゴンアナローグの脱離基はアミノ酸の側鎖の部分であるか、又はペプチド骨格の部分であり得る。適切な脱離基には、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド、ハロゲン及びスルホネートエステルが含まれる。
【0049】
ある種の実施態様では、グルカゴンアナローグは、求核性長鎖アルカンと当該グルカゴンアナローグに結合するスペーサーとの反応によってアルキル基を含むように改変される(前記スペーサーは脱離基を含む)。具体的な特徴では、長鎖アルカンはアミン、ヒドロキシル又はチオール基を含む。ある種の実施態様では、脱離基を含むスペーサーは、本明細書で考察した任意のスペーサー、例えばアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性二官能性スペーサー及び疎水性二官能性スペーサー(さらに、適切な脱離基を含む)であり得る。
長鎖アルカンが当該グルカゴンアナローグ又はスペーサーによってアルキル化される本開示のこれらの特徴に関しては、当該長鎖アルカンは任意のサイズであり、さらに任意の長さの炭素鎖を含むことができる。長鎖アルカンは直鎖でも分枝鎖でもよい。ある種の特徴では、長鎖アルカンはC4からC30アルカンである。例えば、長鎖アルカンは、C4アルカン、C6アルカン、C8アルカン、C10アルカン、C12アルカン、C14アルカン、C16アルカン、C18アルカン、C20アルカン、C22アルカン、C24アルカン、C26アルカン、C28アルカン、又はC30アルカンのいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、長鎖アルカンはC8からC20アルカン、例えばC14アルカン、C16アルカン又はC18アルカンである。
【0050】
さらに、いくつかの実施態様では、アルキル化はグルカゴンアナローグとコレステロール部分との間で生じ得る。例えば、コレステロールのヒドロキシル基は長鎖アルカンの脱離基を追い出して、コレステロール-グルカンアナローグ生成物を形成することができる。
本明細書に記載のアルキル化グルカゴンアナローグは、さらに改変されて親水性部分を含むことができる。いくつかの具体的な実施態様では、親水性部分はポリエチレングリコール(PEG)鎖を含むことができる。親水性部分の取り込みは、適切な任意の手段(例えば本明細書に記載の方法のいずれか)を介して達成できる。これに関しては、アルキル化グルカゴンアナローグは、本明細書に記載の1つ以上のアミノ酸改変を含む改変された配列番号:1を含むことができ、前記では、10、20、24及び29位のアミノ酸の少なくとも1つはアルキル基を含み、さらに16、17、21、24及び29位のアミノ酸、C-末端伸長内の位置のアミノ酸、又はC-末端アミノ酸の少なくとも1つはCys、Lys、Orn、ホモ-Cys又はAc-Pheに改変され、さらに当該アミノ酸の側鎖は親水性部分(例えばPEG)と共有結合される。いくつかの実施態様では、アルキル基は、10位に結合され(場合によってCys、Lys、Orn、ホモ-Cys又はAc-Pheを含むスペーサーを介する)、親水性部分は24位のCys残基に取り込まれる。
また別には、アルキル化グルカゴンアナローグはスペーサーを含むことができ、当該スペーサーはアルキル化されるとともに親水性部分を含むように改変される。適切なスペーサーの非限定的な例には、Cys、Lys、Orn、ホモ-Cys及びAc-Pheから成る群から選択される1つ以上のアミノ酸を含むスペーサーが含まれる。
【0051】
アルファヘリックス及びアルファヘリックス促進アミノ酸の安定化:
いずれの特定の理論にも拘束されないが、本明細書に記載のグルカゴンアナローグはヘリックス構造(例えばアルファヘリックス)を含む。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、アルファヘリックス構造を安定化させるアミノ酸を含む。したがって、いくつかの特徴では、グルカゴンアナローグは1つ以上のアルファヘリックス促進アミノ酸を含む。本明細書で用いられるように、“アルファヘリックス促進アミノ酸”という用語は、グルカゴンアナローグのアルファヘリックスに安定性の増進を提供するアミノ酸(当該アミノ酸はその部分である)を指す。アルファヘリックス促進アミノ酸は当業界で公知である。例えば以下を参照されたい:Lyu et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 88: 5317-5320, 1991;Branden & Tooze, Introduction to Protein Structure, Garland Publishing, New York, NY, 1991;Fasman, Prediction of Protein Structure and the Principles of Protein Conformation, ed. Fasman, Plenum, NY, 1989。本明細書の目的に適切なアルファヘリックス促進アミノ酸にはアラニン、ノルバリン、ノルロイシン、アルファアミノ酪酸、アルファアミノイソ酪酸、ロイシン、イソロイシン、バリンなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸は、天然に存在するタンパク質で見出されるアルファヘリックスの部分である任意のアミノ酸、例えばLeu、Phe、Ala、Met、Gly、Ile、Ser、Asn、Glu、Asp、Lys、Argである。
いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸は、グリシン又はアラニンと比較してアルファヘリックスにより強い安定性を提供する。いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸は、アルファ、アルファ二置換アミノ酸である。
【0052】
アルファヘリックス:アルファヘリックス促進アミノ酸の位置:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、本来のグルカゴン(配列番号:1)と類似するアミノ酸配列を含み、当該グルカゴンアナローグは少なくとも1つのアルファヘリックス促進アミノ酸を含む。いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸は19から29位(本来のグルカゴン(配列番号:1)の番号付けにしたがう)の任意の位置に存在する。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、配列番号:1の改変されたアミノ酸配列を含み、さらに少なくとも1つのアルファヘリックス促進アミノ酸を、例えば12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29位の1つ以上の位置に含む。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、16、17、20及び21位の1つ、2つ、3つ又は全てにアルファヘリックス促進アミノ酸を含む。
【0053】
アルファヘリックス:アルファ、アルファ二置換アミノ酸:
いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸はアルファ、アルファ二置換アミノ酸である。具体的な実施態様では、アルファ、アルファ二置換アミノ酸はR1及びR2を含み(その各々はアルファ炭素に結合する)、ここでR1及びR2の各々は、C1−C4アルキル(場合によってヒドロキシル、アミド、チオール、ハロで置換される)から成る群からそれぞれ別個に選択されるか、又はR1及びR2は、それらが結合しているアルファ炭素と一緒に環(例えばC3−C8環)を形成する。いくつかの実施態様では、R1及びR2の各々は、メチル、エチル、プロピル及びn-ブチルから成る群から選択されるか、又はR1及びR2は一緒にシクロオクタン又はシクロヘプタン(例えば1-アミノシクロオクタン-1-カルボン酸)を形成する。いくつかの実施態様では、R1及びR2は同じである。いくつかの実施態様では、R1はR2と異なる。ある種の特徴では、R1及びR2の各々はC1−C4アルキルである。いくつかの特徴では、R1及びR2の各々はC1又はC2アルキルである。いくつかの実施態様では、R1及びR2の各々はメチルであり、したがってアルファ、アルファ二置換アミノ酸はアルファ-アミノイソ酪酸(AIB)である。
【0054】
いくつかの特徴では。本明細書に記載のグルカゴンアナローグは1つ以上のアルファ、アルファ二置換アミノ酸を含み、さらに当該グルカゴンアナローグは特異的に分子内共有結合架橋(例えばラクタム)を欠く。なぜならば、アルファ、アルファ二置換アミノ酸は、共有結合架橋の非存在下でアルファヘリックスを安定化できるからである。いくつかの特徴では、グルカゴンアナローグは、C-末端(12−29位辺り)に1つ以上のアルファ、アルファ二置換アミノ酸を含む。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグの16、17、18、19、20、21、24、28又は29位の1つ、2つ、3つ、又は4つ以上は、α、α二置換アミノ酸(例えばアミノイソ酪酸(AIB))、メチル、エチル、プロピル及びn-ブチルから選択される同じ又は異なる基で二置換されたアミノ酸、又はシクロオクタン若しくはシクロヘプタン(例えば1-アミノシクロオクタン-1-カルボン酸)で置換される。例えば、16位のAIBによる置換は、分子内架橋(例えば分子内非共有結合架橋(例えば塩架橋)又は分子内共有結合架橋(例えばラクタム))の非存在下でGLP-1活性を強化する。いくつかの実施態様では、16、20、21又は24位の1つ、2つ又は3つ以上がAIBで置換される。具体的な実施態様では、本来のヒトグルカゴン(配列番号:1)の2、16位に対応するアミノ酸の一方又は両方がアルファ、アルファ二置換アミノ酸(例えばAIB)で置換される。
【0055】
いくつかの実施態様にしたがえば、分子内架橋を欠くグルカゴンアナローグは、アミノ酸12−29位内のα,α-二置換アミノ酸による1つ以上の置換及び当該グルカゴンアナローグの10位のアミノ酸の側鎖に結合したアシル又はアルキル基を含む。具体的な実施態様では、当該アシル又はアルキル基はアミノ酸に天然には存在しない。ある種の特徴では、当該アシル又はアルキル基は10位のアミノ酸にとって本来のものではない。分子内架橋を欠くそのようなアシル化又はアルキル化グルカゴンペプチドは、非アシル化ペプチド対応物と比較して、GLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターで活性の強化を示す。GLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターにおける更なる活性の強化は、アシル基又はアルキル基と当該アナローグの10位のアミノ酸の側鎖との間にスペーサーを取り込むことにより分子内架橋を欠くアシル化グルカゴンペプチドによって達成され得る。スペーサーを取り込んだ又は取り込まないアシル化及びアルキル化は本明細書でさらに説明される。
【0056】
アルファヘリックス:分子内架橋:
いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸は、当該グルカゴンアナローグの別のアミノ酸と細胞内架橋を介して連結されるアミノ酸である。そのような実施態様では、分子内架橋を介して連結されるこれら2つのアミノ酸の各々はアルファヘリックス促進アミノ酸と考えられる。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは1つ又は2つの分子内架橋を含む。いくつかの具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、1つの分子内架橋を少なくとも1つの他のアルファヘリックス促進アミノ酸(例えばアルファ、アルファ-二置換アミノ酸)と組み合わされて含む。
いくつかの実施態様では、分子内架橋は、グルカゴンアナローグの2つの部分を非共有結合(例えばファンデルワールス相互作用、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、双極子-双極子相互作用など)を介してつなぐ架橋である。これに関しては、ある種の特徴のグルカゴンアナローグは分子内非共有結合架橋を含む。いくつかの実施態様では、分子内非共有結合架橋は塩架橋である。
いくつかの実施態様では、分子内架橋は共有結合を介して当該アナローグの2つの部分をつなぐ架橋である。これに関しては、ある種の特徴のグルカゴンアナローグは分子内共有結合架橋を含む。
【0057】
いくつかの実施態様では、分子内架橋(例えば分子内非共有結合架橋、分子内共有結合架橋)は、3アミノ酸離れた2つのアミノ酸(例えばi及びi+4位のアミノ酸)の間で形成される(式中iは12と25の間の任意の整数(例えば12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25)である)。より具体的には、アミノ酸対12と16,16と20、20と24又は24と28(iが12、16、20又は24のアミノ酸対)の側鎖が互いに連結され、したがってグルカゴンアルファヘリックスを安定化させる。いくつかの具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグはアミノ酸17と21の間に分子内架橋を含む。いくつかの具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、16と20位又は12と16位のアミノ酸の間で分子内架橋、及び17と21位のアミノ酸の間で第二の分子内架橋を含む。1つ以上の分子内架橋を含むグルカゴンアナローグは本明細書で意図されるものである。具体的な実施態様(前記ではiとi+4位のアミノ酸が分子内架橋で結合される)では、リンカーのサイズは約8原子又は約7−9原子である。
他の実施態様では、分子内架橋は、2アミノ酸離れた2つのアミノ酸(例えばj及びj+3位のアミノ酸)の間で形成される(式中jは12と26の間の任意の整数(例えば12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25及び26)である)。いくつかの具体的な実施態様では、jは17である。具体的な実施態様(前記ではjとj+3位のアミノ酸が分子内架橋で結合される)では、リンカーのサイズは約6原子又は約5−7原子である。
さらにまた他の実施態様では、分子内架橋は、6アミノ酸離れた2つのアミノ酸(例えばk及びk+7位のアミノ酸)の間で形成される(式中kは12と22の間の任意の整数(例えば12、13、14、15、16、17、18、19、20、21及び22)である)。いくつかの具体的な実施態様では、kは12、13又は17である。例示的な実施態様では、kは17である。
【0058】
アルファヘリックス:分子内架橋に関係するアミノ酸:
結合(共有結合又は非共有結合)して6原子連結架橋を形成することができるアミノ酸ペアリングの例には、OrnとAsp、Gluと式Iのアミノ酸(式中nは2)、及びホモグルタミン酸と式Iのアミノ酸(式中nは1)が含まれ、ここで式Iは以下である:
【化5】
式中、nは1から4である。
【0059】
結合して7原子連結架橋を形成することができるアミノ酸ペアリングの例には、Orn-Glu(ラクタム環);Lys-Asp(ラクタム環);又はHomoser-Homoglu(ラクトン)が含まれる。8原子リンカーを形成することができるアミノ酸ペアリングの例には、Lys-Glu(ラクタム);Homolys-Asp(ラクタム);Orn-Homoglu(ラクタム);4-アミノPhe-Asp(ラクタム);又はTyr-Asp(ラクトン)が含まれる。9原子リンカーを形成することができるアミノ酸ペアリングの例には、Homolys-Glu(ラクタム);Lys-Homoglu(ラクタム);4-アミノPhe-Glu(ラクタム);又はTyr-Glu(ラクトン)が含まれる。これらアミノ酸の側鎖のいずれも、当該アルファヘリックスの三次元構造が破壊されない限り、さらに別の化学基でさらに別に置換され得る。当業者の誰もが、同様なサイズの安定化構造及び所望の効果を創り出し得る代替ペアリング又は代替アミノ酸アナローグ(化学的に改変された誘導体を含む)想定することができる。例えば、ホモシステイン-ホモシステインジスルフィド架橋は長さが6原子であり、所望の効果を提供するためにさらに改変され得る。
【0060】
共有結合が存在しなくとも、上記に記載のアミノ酸ペアリング(又は当業者の誰もが想定し得る同様なペアリング)はまた、非共有結合を介して(例えば塩架橋又は水素結合相互作用の形成を介して)アルファヘリックスに安定性を付け足すことができる。したがって、塩架橋は、OrnとGlu;LysとAsp;ホモセリンとホモグルタメート;LysとGlu;AspとArg;HomoLysとAsp;Ornとホモグルタメート;4-アミノPheとAsp;TyrとAsp;HomoLysとGlu;LysとHomoGlu;4-アミノPheとGlu;又はTyrとGluとの間で形成できる。いくつかの実施態様では、アナローグは以下のいずれかのアミノ酸対の間に塩架橋を含む:OrnとGlu;LysとAsp;LysとGlu;AspとArg;HomoLysとAsp;Ornとホモグルタメート;HomoLysとGlu;及びLysとHomoGlu。塩架橋は反対に荷電された側鎖をもつ他のペア間で形成してもよい。例えば以下を参照されたい:Kallenbach et al., Role of the Peptide Bond in Protein Structure and Folding, in The Amide Linkage: Structural Significance in Chemistry, Biochemistry, and Materials Science, John Wiley & Sons, Inc., 2000。
いくつかの実施態様では、分子内非共有結合架橋は疎水性架橋である。ある実施態様にしたがえば、アナローグのアルファヘリックスは、jとJ+3位又はiとi+4位に疎水性アミノ酸を取り込むことによって安定化される。例えば、iはTyrでi+4はVal又はLeuであるか、iはPheでi+4はMetであるか、又はiはPheでi+4はIleであり得る。本明細書の目的には、上記アミノ酸ペアリングは逆にすることができ、したがってi位の表示のアミノ酸はまた別にはi+4に存在でき、一方、i+4のアミノ酸はi位に存在し得ることは理解されよう。さらにまた、適切なアミノ酸ペアリングはjとj+3についても形成できることもまた理解されよう。
【0061】
アルファヘリックス:分子内共有結合架橋:
いくつかの実施態様では、分子内共有結合架橋はラクタム環又はラクタム架橋である。ラクタム環のサイズはアミノ酸側鎖の長さに応じて変動可能であり、ある実施態様では、ラクタムは、オルニチンの側鎖とアスパラギン酸の側鎖を連結することによって形成できる。ラクタム架橋及び前記を生成する方法は当業界で公知であり、例えば以下を参照されたい:Houston, Jr., et al., J Peptide Sci 1: 274-282 (2004)及び本明細書の実施例1。いくつかの実施態様では、アナンローグは、配列番号:1の改変配列及びiとi+4との間のラクタム架橋を含む(ここでiは上記に規定したとおりである)。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは以下の2つのラクタム架橋を含む:1つは16と20位のアミノ酸の間及びもう1つは17と21位のアミノ酸の間。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、1つのラクタム架橋及び1つの塩架橋を含む。さらに別の例示的実施態様は、実施例と題するセクションにおいて本明細書で説明される。さらに別の例示的実施態様には以下のペアリング(場合によってラクタム架橋を有する)が含まれる:12位のGluと16位のLys;12位の本来のLysと16位のGlu;16位のGluと20位のLys;16位のLysと20位のGlu;20位のGluと24位のLys;20位のLysと24位のGlu;24位のGluと28位のLys;24位のLysと28位のGlu。
【0062】
いくつかの実施態様では、分子内共有結合架橋はラクトンである。ラクトン架橋を生成する適切な方法は当業界で公知である。例えば以下を参照されたい:Sheehan et al., J Am Chem Soc 95: 875-879, 1973。
いくつかの特徴では、オレフィンメタセシスを用い、アナローグのアルファヘリックスの1つ又は2つのターンが全炭化水素架橋系により架橋される。この事例のグルカゴンアナローグは、様々な長さのオレフィン側鎖をもち、jとj+3又はiとi+4位でR又はS立体化学の立体配置を示すα-メチル化アミノ酸を含む。いくつかの実施態様では、オレフィン側鎖は(CH2)nを含む(式中nは1から6の任意の整数である)。いくつかの実施態様では、nは架橋長が8原子については3である。いくつかの実施態様では、nは架橋長が6原子については2である。オレフィン架橋を含む例示的なグルカゴンアナローグは、本明細書では配列番号:17として記載される。そのような分子内架橋を形成する適切な方法は当業界で記載されている。例えば以下を参照されたい:Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122: 5891-5892, 2000及びWalensky et al., Science 305: 1466-1470, 2004。また別の実施態様では、アナローグは近傍のヘリックスターンに存在するO-アリルSer残基を含む(前記残基はルテニウム触媒閉環メタセシスを介して一緒に架橋される)。そのような架橋方法は例えば以下に記載されている:Blackwell et al., Angew, Chem., Int. Ed. 37: 3281-3284, 1998。
【0063】
具体的な特徴では、非天然のチオジアラニンアミノ酸、ランチオニン(前記はシステインのペプチド模倣物として広く採用されている)の使用により、アルファヘリックスの1つのターンが架橋される。ランチオニンを用いる環状化の適切な方法は当業界で公知である。例えば以下を参照されたい:Matteucci et al., Tetrahedron Letters 45: 1399-1401, 2004;Mayer et al., J. Peptide Res. 51: 432-436, 1998;Polinsky et al., J. Med. Chem. 35: 4185-4194, 1992;Osapay et al., J. Med. Chem. 40: 2241-2251 (1997); Fukase et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 65: 2227-2240, 1992;Harpp et al., J. Org. Chem. 36: 73-80, 1971;Goodman and Shao, Pure Appl. Chem. 68: 1303-1308, 1996;およびOsapay and Goodman, J. Chem. Soc. Chem. Commun. 1599-1600, 1993。
いくつかの実施態様では、iとi+7位の2つのGlu残基の間のα,ω-ジアミノアルカンつなぎ綱(例えば1,4-ジアミノプロパン及び1,5-ジアミノペンタン)を用いて、アナローグのアルファヘリックスを安定化する。そのようなつなぎ綱は、ジアミノアルカンつなぎ綱の長さに応じて、長さが9原子以上の架橋の形成をもたらす。そのようなつなぎ綱で架橋されるペプチドを生成する適切な方法は当業界で記載されている。例えば以下を参照されたい:Phelan et al., J. Am. Chem. Soc. 119: 455-460, 1997。
【0064】
さらにまた他の実施態様では、ジスルフィド架橋を用いて、アナローグのアルファヘリックスの1つ又は2つのターンが架橋される。また別には、一方又は両方の硫黄原子がメチル基によって置き換えられる(イソステリックな大環化をもたらす)改変ジスルフィド架橋を用いて、アナローグのアルファヘリックスが安定化される。ジスルフィド架橋又は硫黄使用環化によりペプチドを改変する適切な方法は、例えば以下に記載されている:Jackson et al., J. Am. Chem. Soc. 113: 9391-9392, 1991;及びRudinger and Jost, Experientia 20: 570-571, 1964。
さらにまた他の実施態様では、アナローグのアルファヘリックスは、jとj+3又はiとi+4に位置する2つのHis残基又はHis及びCysのペアによる金属原子の結合を介して安定化される。金属原子は、例えばRu(III)、Cu(II)、Zn(II)又はCd(II)であり得る。そのような金属結合によるアルファヘリックス安定化の方法は当業界で公知である。例えば以下を参照されたい:Andrews and Tabor, Tetrahedron 55: 11711-11743, 1999;Ghadiri et al., J. Am. Chem. Soc. 112: 1630-1632, 1990;及びGhadiri et al., J. Am. Chem. Soc. 119: 9063-9064, 1997。
アナローグのアルファヘリックスは、また別にはペプチド環化の他の手段を介して安定化できる。前記手段は以下に概略されている:Davies, J. Peptide. Sci. 9: 471-501, 2003。アルファヘリックスは、アミド架橋、チオエーテル架橋、チオエステル架橋、尿素架橋、カルバメート架橋、スルホンアミド架橋などの形成を介して安定化できる。例えばチオエステル架橋はC-末端とCys残基の側鎖との間で形成できる。また別には、チオエステルは、チオールを有するアミノ酸(Cys)の側鎖とカルボン酸(例えばAsp、Glu)を介して形成できる。別の方法では、架橋剤、例えばジカルボン酸(例えばスベリン酸(オクタンジオイック酸)など)を、アミノ酸側鎖の2つの官能基(例えば遊離アミノ、ヒドロキシル、チオール基又は前記の組合せ)間の連結に導入することができる。
【0065】
DPP-IV耐性ペプチド:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、1若しくは2位に又は1及び2位の両方に、ジペプチドペプチダーゼIV(DPP IV)切断に対するグルカゴンアナローグの耐性を達成するアミノ酸を含む。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、1位に以下から成る群から選択されるアミノ酸を含む:D-ヒスチジン、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシル-ヒスチジン、アセチル-ヒスチジン、ホモ-ヒスチジン、N-メチルヒスチジン、アルファ-メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、又はアルファ、アルファ-ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、2位に以下から成る群から選択されるアミノ酸を含む:D-セリン、D-アラニン、バリン、グリシン、N-メチルセリン、N-メチルアラニン、又はアルファ、アミノイソ酪酸。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、DPP IVに対するグルカゴンアナローグの耐性を達成するアミノ酸を2位に含み、DPP IVに対するグルカゴンアナローグの耐性を達成するアミノ酸はD-セリンではない。
いくつかの特徴では、DPP IVに対するグルカゴンアナローグの耐性を達成するアミノ酸を含むグルカゴンアナローグは、さらに、例えば“i”と“i+4”(例えば12と16、16と20又は20と24)位のアミノ酸の間の共有結合を介して、グルカゴンのC-末端で見出されるアルファヘリックスを安定化させるアミノ酸改変を含む。いくつかの実施態様では、この共有結合は、16位のグルタミン酸と20位のリジンとの間のラクタム架橋である。いくつかの実施態様では、この共有結合はラクタム架橋以外の分子内架橋である。例えば、適切な共有結合の方法には以下の任意の1つ以上が含まれる:オレフィンメタセシス、ランチオニンによる環化、ジスルフィド架橋又は改変された硫黄含有架橋形成、α,ω-ジアミノアルカンつなぎ綱の使用、金属原子架橋の形成、及びペプチド環化の他の手段。
【0066】
1位の改変:
いくつかの具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグは、(a)大きな芳香族アミノ酸による1位のHisのアミノ酸置換、及び(b)当該分子のC-末端部分(例えば12−29位辺り)のアルファヘリックスを安定化させる分子内架橋を含む。具体的な実施態様では、1位のアミノ酸はTyr、Phe、Trp、アミノ-Phe、ニトロ-Phe、クロロ-Phe、スルホ-Phe、4-ピリジル-Ala、メチル-Tyr又は3-アミノTyrで置き換えられる。いくつかの実施態様では、分子内架橋は本明細書に記載した架橋のいずれかである。いくつかの特徴では、分子内架橋は、3つの介在アミノ酸によって離された2つのアミノ酸の側鎖間(すなわちiとi+4のアミノ酸の側鎖間)に存在する。いくつかの実施態様では、分子内架橋はラクタム環である。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、当該アナローグの1位に大きな芳香族アミノ酸及び16と20位のアミノ酸の間にラクタム架橋を含む。いくつかの特徴のそのようなグルカゴンアナローグは、さらに本明細書に記載の他の改変の1つ以上(例えば2つ、3つ、4つ以上)を含む。例えばグルカゴンアナローグは、C-末端カルボキシルの代わりにアミドを含むことができる。さらにまた、いくつかの実施態様では、そのようなグルカゴンアナローグはさらに、17位に大きな脂肪族アミノ酸、18位にイミダゾール含有アミノ酸、及び19位に陽性荷電アミノ酸の1つ以上を含む。いくつかの実施態様では、1位の改変及び分子内架橋を含むグルカゴンアナローグは、さらに17−19位にアミノ酸配列Ile-His-Glnを含む。そのような改変は、GLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターにおける当該アナローグの活性を破壊することなく実施され得る。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、さらに別にアシル化又はアルキル化アミノ酸残基を含む。
【0067】
3位の改変:
いくつかの実施態様では、配列番号:1の第三のアミノ酸(Gln3)は酸性、塩基性又は疎水性アミノ酸で置換され、さらにそのような改変はグルカゴンレセプター活性の低下を引き起こす。いくつかの実施態様では、酸性、塩基性又は疎水性アミノ酸は、グルタミン酸、オルニチン、ノルロイシンである。いくつかの特徴では、これら残基の1つによる改変は、実質的に低下又は破壊されたグルカゴンレセプター活性を示すグルカゴンアナローグをもたらした。いくつかの特徴では、例えばグルタミン酸、オルニチン又はノルロイシンで置換されたグルカゴンアナローグは、グルカゴンレセプターで本来のグルカゴンの活性の約10%以下を有し(例えば1−10%、又は約0.1−10%、又は約0.1%より高いが約10%より低い)、一方、GLP-1レセプターでGLP-1の活性の少なくとも20%を示す。いくつかの実施態様では、当該グルカゴンアナローグは、本来のグルカゴンの活性の約0.5%、約1%又は約7%を示し、一方、GLP-1レセプターでGLP-1活性の少なくとも20%を示す。
いくつかの実施態様では、当該グルカゴンアナローグの配列番号:1の3位のグルタミンは、グルカゴンレセプターにおける活性の実質的な低下をもたらさないでグルタミンアナローグで置換され、いくつかの事例では、グルカゴンレセプター活性の強化を示す。いくつかの実施態様では、グルタミンアナローグは、以下の構造I、II又はIIIの側鎖を含む天然に存在するか又は天然に存在しない若しくは非コードアミノ酸である:
【化6】
構造I
【化7】
構造II
【化8】
構造III
式中、R1はC0-3アルキル又はC0-3ヘテロアルキルであり;R2はNHR4又はC1-3アルキルであり;R3はC1-3アルキルであり;R4はH又はC1-3アルキルであり;XはNH、O又はSであり;さらにYはNHR4、SR3又はOR3である。いくつかの実施態様では、XはNHであるか、又はYはNHR4である。いくつかの実施態様では、R1はC0-2 アルキル又はC1ヘテロアルキルである。いくつかの実施態様では、R2はNHR4又はC1アルキルである。いくつかの実施態様では、R4はH又はC1アルキルである。例示的な実施態様では、構造Iの側鎖を含むアミノ酸が提供され、ここでR1はCH2-Sであり、XはNHであり、R2はCH3(アセトアミドメチル-システイン、C(Acm))であるか;R1はCH2であり、XはNHであり、さらにR2はCH3(アセチルジアミノブタン酸、Dab(Ac))であるか;R1はC0アルキルであり、XはNHであり、R2はNHR4であり、さらにR4はH(カルバモイルジアミノプロパン酸、Dap(尿素))であるか;又はR1はCH2-CH2であり、XはNHであり、さらにR2はCH3(アセチルオルニチン、Orn(Ac))である。例示的な実施態様では、構造IIの側鎖を含むアミノ酸が提供され、ここでR1はCH2であり、YはNHR4であり、さらにR4はCH3(メチルグルタミン、Q(Me))である。例示的な実施態様では、構造IIIの側鎖を含むアミノ酸が提供され、ここでR1はCH2であり、さらにR4はH(メチオニン-スルホキシド、M(O))である。具体的な実施態様では、3位のアミノ酸はDab(Ac)で置換される。例えば、グルカゴンアゴニストは、国際特許出願PCT/US2009/047438(2009年6月16日出願)(前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)の配列表の配列番号:595、配列番号:601、配列番号:603、配列番号:604、配列番号:605及び配列番号:606の改変されたアミノ酸配列を含むことができ、ここで、これらのアミノ酸配列は本明細書でさらに説明するように改変される。前記は、例えば、少なくとも3つのアルファヘリックス促進アミノ酸を含むように改変され、(i)10位にアシル化又はアルキル化アミノ酸、(ii)16位にアルファヘリックス促進アミノ酸、(iii)17及び/又は18位に脂肪族アミノ酸、及び(iv)C-末端から27位に位置する少なくとも1つの荷電アミノ酸、並びに場合によって更なる改変を含むように改変される。前記更なる改変は、グルカゴンアナローグの対応する位置にエクセンジン-4(配列番号:8)のアミノ酸18−24の少なくとも3つを含むための改変である。
【0068】
7位の改変:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、7位にアミノ酸改変を有する改変配列番号:1を含む。いくつかの特徴では、配列番号:1の7位のアミノ酸(Thr)は大きな脂肪族アミノ酸、例えばIle、Leu、Alaなどで置換される。そのような改変は、グルカゴンアナローグのGLP-1レセプターにおける活性を劇的に低下させると考えられる。
15位の改変:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、15位にアミノ酸改変(安定性を改善する)を有する改変配列番号:1を含む。いくつかの特徴では、配列番号:1の15位のアミノ酸は欠失するか、又はグルタミン酸、ホモグルタミン酸、システイン酸又はホモシステイン酸で置換される。そのような改変は、特に酸性又はアルカリ性緩衝液(例えば5.5から8の範囲内のpHの緩衝液)で、時間経過における当該アナローグの分解又は切断を減少させる。いくつかの実施態様では、この改変を含むグルカゴンアナローグは、25℃で24時間後に最初のアナローグの少なくとも75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%を維持する。
【0069】
16位の改変:
ある実施態様にしたがえば、潜在能力の強化並びに場合によって溶解性及び安定性の改善を有するグルカゴンのアナローグが提供される。ある実施態様では、グルカゴン潜在能力及びGLP-1潜在能力の強化は、本来のグルカゴン(配列番号:1)の16位のアミノ酸改変によって提供される。非限定的に例示すれば、そのような潜在能力の強化は、16位に天然に存在するセリンをグルタミン酸で、又は長さが4原子の側鎖を有する別の陰性荷電アミノ酸で、また別にはグルタミン、ホモグルタミン酸若しくはホモシステイン酸又は少なくとも1つの異原子(例えばN、O、S、P)を含む側鎖を有しさらに約4(又は3−5)原子の長さの側鎖を有する荷電アミノ酸で置換することによって提供することができる。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、グルタミン酸、グルタミン、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸、スレオニン又はグリシンから成る群から選択されるアミノ酸による16位のSerの置換を含む、改変された配列番号:1を含む。いくつかの特徴では、16位のセリン残基は、グルタミン酸、グルタミン、ホモグルタミン酸、及びホモシステイン酸から成る群から選択されるアミノ酸で置換される。いくつかの具体的な特徴では、16位のセリン残基は、グルタミン酸又はその保存的置換(例えばエクセンジン-4アミノ酸)で置換される。
また別の実施態様では、グルカゴンアナローグは、Thr又はAIB若しくは別の上記に記載のアルファヘリックス促進アミノ酸による16位のSerの置換によって改変された配列番号:1の改変配列を含む。いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸は、j+3又はi+4のアミノ酸とともに分子内非共有結合架橋を形成する。
【0070】
17−18位の改変:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、17及び18位の二塩基性Arg-Arg部位が除去された改変配列番号:1を含む。いずれの特定の理論にも拘束されないが、二塩基性部位の除去は、いくつかの実施態様ではグルカゴンアナローグのin vivo有効性を改善すると考えられる。いくつかの特徴では、これに関してグルカゴンアナローグは、配列番号:1の17位及び18位のアミノ酸の一方又は両方を、塩基性ではないアミノ酸(例えば脂肪族アミノ酸)で置換することによって改変される。いくつかの実施態様では、17位又は18位のアミノ酸の1つが欠失されるか、又は17位と18位の間にアミノ酸が挿入される。いくつかの実施態様では、17位のArgが、本明細書に記載の別のアミノ酸、例えばGln、親水性部分を含むアミノ酸、アルファヘリックス促進アミノ酸で置換される。いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸は、j+3又はi+4のアミノ酸とともに分子内非共有結合架橋を形成する。いくつかの実施態様では、18位のArgは、本明細書に記載の別のアミノ酸で置換される。例示的な特徴では、18位のアミノ酸は、アルファ、アルファ二置換アミノ酸(例えばAIB)である。いくつかの特徴では、18位のアミノ酸は小さな脂肪族アミノ酸(例えばAla)である。いくつかの具体的な特徴では、18位のアミノ酸は小さな脂肪族アミノ酸(例えばAla)であり、17位のArgは未改変のままである。
【0071】
20位の改変:
GLP-1レセプターにおける活性の強化はまた20位のアミノ酸改変によって提供される。いくつかの実施態様では、20位のグルタミンは、本明細書に記載のアルファヘリックス促進アミノ酸(例えばAIB)で置き換えられる。いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸は、j-3又はi-4のアミノ酸とともに分子内非共有結合架橋を形成する。いくつかの具体的な実施態様では、当該アミノ酸は、荷電を有するか又は水素結合能力を有する側鎖をもつ親水性アミノ酸であり、さらに長さが約5(又は4−6)原子であり(例えばリジン、シトルリン、アルギニン又はオルニチン)、さらに場合によって16位の別のアルファヘリックス促進アミノ酸と塩架橋を形成する(例えば陰性荷電アミノ酸)。そのような改変は、いくつかの具体的な特徴ではGlnの脱アミド化により生じる分解を減少させ、さらにいくつかの実施態様は、GLP-1レセプターにおけるグルカゴンアナローグの活性を高める。いくつかの特徴では、20位のアミノ酸はGlu又はLys又はAIBである。
21、23、24及び28位の改変:
いくつかの実施態様では、21位及び/又は24位は、アルファヘリックス促進アミノ酸による置換によって改変される。いくつかの実施態様では、アルファヘリックス促進アミノ酸はj-3又はi-4のアミノ酸とともに分子内非共有結合架橋を形成する。いくつかの特徴では、アルファヘリックス促進アミノ酸はAIBである。
例示的な実施態様では、23位のアミノ酸はアルファ、アルファ二置換アミノ酸(例えばAIB)である。
【0072】
荷電C-末端:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、当該アナローグのC-末端部分に荷電アミノ酸を導入するアミノ酸置換及び/又はアミノ酸付加によって改変される。いくつかの実施態様では、そのような改変は安定性及び可溶性を強化する。本明細書で用いられるように、“荷電アミノ酸”又は“荷電残基”は、生理学的pHの水溶液中で陰性に荷電する(すなわち又は脱プロトン化)又は陽性に荷電する(すなわちプロトン化)側鎖を含むアミノ酸を指す。いくつかの特徴では、荷電アミノ酸改変を導入するこれらのアミノ酸置換及び/又はアミノ酸付加は、配列番号:1のC-末端から27位の位置に存在する。いくつかの実施態様では、1つ、2つ又は3つ(及びいくつかの事例では4つ以上)の荷電アミノ酸がC-末端部分(例えばC-末端から27位の位置)内に導入される。いくつかの実施態様にしたがえば、28位及び/又は29位の本来のアミノ酸は荷電アミノ酸で置換され、及び/又はさらなる実施態様では、1つから3つ荷電アミノ酸がまたアナローグのC-末端に付加される。例示的な実施態様では、荷電アミノ酸の1つ、2つ又は全部が陰性荷電である。いくつかの実施態様の陰性荷電アミノ酸はアスパラギン酸、グルタミン酸、システイン酸、ホモシステイン酸又はホモグルタミン酸である。いくつかの特徴では、これらの改変は可溶性を高め、25℃で24時間後に測定したとき、例えば約5.5から8の間のあるpH(例えばpH7)で本来のグルカゴンと比して少なくとも2倍、5倍、10倍、15倍、25倍、30倍以上の可溶性を提供する。
【0073】
C-末端短縮:
いくつかの実施態様にしたがえば、本明細書に開示のグルカゴンアナローグは、C-末端の1つ又は2つのアミノ酸を切り縮めることによって改変される。本明細書に示すそのような改変グルカゴンペプチドは、グルカゴンレセプター及びGLP-1レセプターで同様な活性及び潜在能力を保持する。これに関しては、グルカゴンペプチドは、本来のグルカゴンアナローグ(配列番号:1)のアミノ酸1−27又は1−28を、場合によって本明細書に記載のさらに別の改変のいずれかとともに含むことができる。
荷電中性C-末端:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは改変された配列番号:1を含み、前記では、C-末端アミノ酸のカルボン酸は荷電中性基(例えばアミド又はエステル)で置き換えられる。いずれの特定の理論にも拘束されないが、ある種の特徴ではそのような改変はGLP-1レセプターにおけるグルカゴンアナローグの活性を増進させる。したがって、いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、アミド化ペプチド、C-末端残基がアミノ酸のアルファカルボキシレートの代わりにアミドを含むものである。本明細書で用いられるように、ペプチド又はアナローグと一般的にいうとき、改変されたアミノ末端、カルボキシ末端又はアミノ及びカルボキシ末端の両方を有するペプチドが包含される。例えば、末端のカルボン酸の代わりにアミド基を含むアミノ酸は、標準的なアミノ酸を示すアミノ酸配列に包含される。
【0074】
他の改変:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、さらに加えて又は代替として以下のアミノ酸改変を含む:
(i)2位のSerのAlaによる置換;
(ii)10位のTyrのVal若しくはPhe又はTrpによる置換;
(iii)12位のLysのArgによる置換;
(iv)17位のArgのGln又は小さな脂肪族アミノ酸(例えばAla)、又は大きな脂肪族アミノ酸(例えばIle)による置換;
(v)18位のArgの小さな脂肪族アミノ酸(例えばAla)又はイミダゾール含有アミノ酸(例えばHis)による置換;
(vi)19位のAlaの陽性荷電アミノ酸(例えばGln)による置換;
(vii)23位のValのIleによる置換;及び
(viii)29位のThrのGly又はGlnによる置換。
【0075】
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグの安定性は、27位のメチオニンの、例えばロイシン又はノルロイシンによる置換によって増進される。そのような改変は酸化性分解を減少させることができる。安定性もまた、20又は24又は28位のGlnの、例えばAla、Ser、Thr又はAIBによる置換によって増進され得る。そのような改変は、Glnの脱アミド化を介して生じる分解を減少させることができる。安定性は、21位のAspの、例えば別の酸性残基(例えばGlu)による置換によって増進させることができる。そのような改変は、Aspを脱水して環状スクシンイミド中間体を形成し、続いてイソアスパルテートへの異性化により生じる分解を減少させることができる。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のグルカゴンアナローグは、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アセチル化、環状化(例えばジスルフィド架橋による)されるか、又は塩に変換され(例えば酸付加塩、塩基付加塩)、及び/又は場合によってダイマー化、マルチマー化又はポリマー化又はコンジュゲートされる。
本明細書に記載の改変のいずれも個々に又は組み合わせて用いることができる(前記改変には、例えばグルカゴンのレセプター活性を増進又は低下させる改変、及びGLP-1レセプター活性を増進させる改変が含まれる)。GLP-1レセプター活性を増進させる改変の組合せは、単独で実施されるそのような改変のいずれよりも高いGLP-1活性を提供できる。
【0076】
例示的実施態様
本開示は、本来のヒトグルカゴンの構造と類似の構造を含み、本来のヒトグルカゴンと比較してGLP-1レセプターにおけるアゴニスト活性の強化を示すペプチドを提供する。
例示的な実施態様では、当該ペプチドは配列番号:37のアミノ酸配列を含む。
例示的な実施態様では、当該ペプチドは配列番号:13のアミノ酸配列を含む。
例示的な実施態様では、当該ペプチドは配列番号:14のアミノ酸配列を含む。
例示的な実施態様では、当該ペプチドは配列番号:47のアミノ酸配列を含む。
例示的な実施態様では、当該ペプチドは配列番号:35のアミノ酸配列を含む。
例示的な実施態様では、当該ペプチドは、配列番号:13−16、19−25、27−29及び31−33から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
例示的な実施態様では、当該ペプチドは、配列番号:26及び30から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
例示的な実施態様では、当該ペプチドは、配列番号:35−37から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0077】
例示的な実施態様では、当該ペプチドは、配列番号:38−49及び54から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、さらにGIPレセプターに対してヒトGLP-1レセプターで少なくとも100倍の選択性、及び場合によって少なくとも1%のGLP-1潜在能力を示す。例示的な特徴では、当該ペプチドは、本明細書で見出される記載のとおりのGLP-1レセプターにおけるEC50を示す。例えば“ペプチド及び変種ペプチドの活性”と題したセクションの教示を参照されたい。例示的な特徴では、当該ペプチドは、GLP-1レセプター及びグルカゴンレセプターの各々でアゴニスト活性を示す。例示的な特徴では、当該ペプチドは、本明細書で見出される記載のとおりのグルカゴンレセプターにおけるEC50を示す。例えば“ペプチド及び変種ペプチドの活性”と題したセクションの教示を参照されたい。
例示的な実施態様では、本開示のペプチドは、配列番号:50−52及び55から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで前記ペプチドは、GIPレセプターに対してヒトGLP-1レセプターで少なくとも100倍の選択性、及び場合によって少なくとも1%のGLP-1潜在能力を示す。例示的な特徴では、当該ペプチドは、例えば“ペプチド及び変種ペプチドの活性”と題したセクションに記載された活性を示す。
例示的な実施態様では、本開示のペプチドは、配列番号:38−52、54及び55から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで前記ペプチドのGIPレセプターにおけるEC50は、GLP-1レセプターにおけるそのEC50とは100倍未満(例えば約75倍以下、約50倍以下、約25倍以下、約20倍以下、約15倍以下、約10倍以下、約7倍以下、約5倍以下、約2倍以下)異なる。例えば“ペプチド及び変種ペプチドの活性”と題したセクションの教示を参照されたい。場合によって、当該ペプチドのGIP潜在能力は、当該ペプチドのGLP-1潜在能力の約50倍以内である。
【0078】
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:56のアミノ酸配列を含む。例示的な特徴では、GIPレセプターにおける当該ペプチドのEC50は、GLP-1レセプターにおけるそのEC50とは100倍未満(例えば約75倍以下、約50倍以下、約25倍以下、約20倍以下、約15倍以下、約10倍以下、約7倍以下、約5倍以下、約2倍以下)異なる。例えば“ペプチド及び変種ペプチドの活性”と題したセクションの教示を参照されたい。場合によって、当該ペプチドのGIP潜在能力は、当該ペプチドのGLP-1潜在能力の約50倍以内である。
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:58のアミノ酸配列を含む。
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:59のアミノ酸配列を含む。
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:60のアミノ酸配列を含む。
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:61のアミノ酸配列を含む。
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:62のアミノ酸配列を含む。例示的な特徴では、配列番号:62の2位のアミノ酸はD-Serである。
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:63のアミノ酸配列を含む。
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:64のアミノ酸配列を含む。例示的な特徴では、配列番号:64の2位のアミノ酸はD-Serである。
例示的実施態様では、本開示のペプチドは配列番号:65のアミノ酸配列を含む。例示的な特徴では、配列番号:65の2位のアミノ酸はD-Serである。
本開示はさらに、本開示ペプチドの1つのアミノ酸配列と高度に類似するアミノ酸配列を含む変種ペプチドを提供する。例示的実施態様では、本開示の変種ペプチドは、配列番号:13−16、19−33、35−52、54−56のいずれかのペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸1−29と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含み、ここで、当該変種ペプチドは、GLP-1レセプター、グルカゴンレセプター、及びGIPレセプターにおける親ペプチドの活性を保持する(例えば、GIPレセプターに対してヒトGLP-1レセプターで少なくとも100倍の選択性、及び場合によって少なくとも1%のGLP-1潜在能力を示すか、又はGIPレセプターにおける当該ペプチドのEC50は、GLP-1レセプターにおけるそのEC50とは100倍未満異なる)。場合によって、当該変種ペプチドのGIP潜在能力は、当該変種ペプチドのGLP-1潜在能力の約50倍以内である。
【0079】
例示的な実施態様では、本開示の変種ペプチドは、本開示のペプチドのアミノ酸配列を土台にするが、以下を含む(ただしこれらに限定されない)1つ以上のアミノ酸の位置で異なるアミノ酸配列を含む:1位、2位、3位、7位、10位、12位、15、16位、17位、18位、20位、21位、23位、24位、27位、28位、29位。例示的特徴では、変種ペプチドは親ペプチドに対して保存的置換を含むことができるか、本明細書に記載のアミノ酸改変のいずれかを含むことができるか、又は本来のグルカゴン配列(配列番号:1)の当該位置に存在するアミノ酸に戻すアミノ酸改変を含むことができる。例示的特徴では、本開示の変種ペプチドは、本開示のペプチドのアミノ酸配列を土台にするが、以下の態様の1つ以上で異なるアミノ酸配列を含む:
a)変種ペプチドはアシル化アミノ酸又はアルキル化アミノ酸を含む;
b)アシル化アミノ酸又はアルキル化アミノ酸は本来のグルカゴン(配列番号:1)の当該位置の対応するアミノ酸又は本来のアミノ酸の保存的置換で置き換えられ、さらに場合によって新規なアシル化又はアルキル化アミノ酸が異なる位置に導入される;
c)変種ペプチドは親水性部分と共有結合したアミノ酸を含む;
d)親水性部分と共有結合したアミノ酸は本来のグルカゴン(配列番号:1)の当該位置の対応するアミノ酸で置き換えられ、さらに場合によって親水性部分と共有結合した新規なアミノ酸が異なる位置に導入される;
e)変種ペプチドのC-末端アミノ酸は、C-末端アルファカルボキシレートの代わりにC-末端アミドを含む。
f)1位から29位のいずれかのアミノ酸が、本来のグルカゴン(配列番号:1)の当該位置の対応するアミノ酸で置き換えられる;
g)又は前記の任意の組合せ。
【0080】
例示的実施態様では、前述の変種ペプチドのいずれかに関して、当該変種ペプチドは、16、17、21、24、29位のアミノ酸、C-末端伸長内の位置のアミノ酸、又はC-末端のアミノ酸と共有結合した親水性部分を含む。例示的特徴では、変種ペプチドは、Cys、Lys、Orn、ホモシステイン及びAc-Pheから成る群から選択されるアミノ酸と共有結合した親水性部分を含む。例示的特徴では、親水性部分はポリエチレングリコールである。
例示的な特徴では、変種ペプチドは、アシル化又はアルキル化アミノ酸を場合によって10位に含む。例示的な特徴では、変種ペプチドは、C8からC20アルキル鎖、C12からC18アルキル鎖、又はC14からC16アルキル鎖を含むアシル化又はアルキル化アミノ酸を含む。例示的な特徴では、変種ペプチドは、式I、式II又は式IIIのアシル化又はアルキル化アミノ酸であるアシル化又はアルキル化アミノ酸を含み、場合によって式Iのアミノ酸はLysである。
例示的な特徴では、本開示の変種ペプチドはアシル化又はアルキル化アミノ酸を含み、ここで前記アシル基又はアルキル基はスペーサーを介して当該アミノ酸と共有結合し、場合によって当該スペーサーはアミノ酸又はジペプチドである。例示的実施態様では、スペーサーは1つ又は2つの酸性残基を含む。
前述の例示的実施態様のいずれでも、本開示の任意のペプチド又は変種ペプチドは、(グルカゴンレセプターにおけるEC50)/(GLP-1レセプターにおけるEC50)が約20以下(例えば20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.25、0.10、0.05、0.01、0.001)を示す。
前述の例示的実施態様のいずれでも、本開示の任意のペプチド又は変種ペプチドは、(グルカゴンレセプターにおけるEC50)/(GLP-1レセプターにおけるEC50)が約20以上(例えば21、25、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、750、又は1000以上)を示す。
前述の例示的実施態様のいずれでも、本開示の任意のペプチド又は変種ペプチドは、GLP-1レセプターにおけるEC50が、グルカゴンレセプターにおけるEC50よりも2倍から10倍(例えば3、4、5、6、7、8、9倍)大きいGLP-1レセプターにおけるEC50を示す。
【0081】
除外
例示的実施態様では、以下のペプチドのいずれも本明細書に記載のグルカゴンアナローグから除外されるが、ただし本明細書に記載の1つ以上のさらに別の改変を含み所望のGLP-1又はコアゴニスト活性を示す任意の以下のペプチド、そのような化合物を用いる医薬組成物、キット及び治療方法は本発明に含まれ得る:[Arg12]置換及びC-末端アミドを有する配列番号:1のペプチド;[Arg12,Lys20]置換及びC-末端アミドを有する配列番号:1のペプチド;[Arg12,Lys24]置換及びC-末端アミドを有する配列番号:1のペプチド;[Arg12,Lys29]置換及びC-末端アミドを有する配列番号:1のペプチド;[Glu9]置換を有する配列番号:1のペプチド;His1を失い[Glu9,Glu16,Lys29]置換及びC-末端アミドを有する配列番号:1のペプチド;[Glu9,Glu16,Lys29]置換及びC-末端アミドを有する配列番号:1のペプチド;ラクタム架橋を介して連結された[Lys13,Glu17]置換及びC-末端アミドを有する配列番号:1のペプチド;ラクタム架橋を介して連結された[Lys17,Glu21]置換及びC-末端アミドを有する配列番号:1のペプチド;His1を失いラクタム架橋を介して連結された[Glu20,Lys24]置換を有する配列番号:1のペプチド。いくつかの実施態様では、当該グルカゴンアナローグは、国際特許出願PCT/US2009/034448(2009年2月19日出願及びWO 2010/096052として2010年8月26日公開);国際特許出願PCT/US2009/068678(2009年12月18日出願及びWO 2010/096142として2010年8月26日公開;国際特許出願PCT/US2009/047438(2009年6月16日出願及びWO 2009/155258として2009年12月23日公開);国際特許出願PCT/US2008/053857(2008年2月13日出願及びWO 2008/101017として2008年8月21日公開);国際特許出願PCT/US2010/059724(2010年12月9日出願);国際特許出願PCT/US2009/047447(2009年6月16日及びWO2010/011439として2010年1月28日公開);国際特許出願PCT/US2010/38825(2010年6月16日出願及びWO2010/148089として2010年12月23日公開);国際特許出願PCT/US2011/022608(2011年1月26日出願);及び米国仮特許出願61/426,285(2010年12月22日出願)(前記文献の各々は参照によりその全体が本明細書に含まれる)のいずれかに開示されたペプチドのいずれでもない。いくつかの実施態様では、当該グルカゴンアナローグは29位の後のC-末端に連結された配列KRNRNNIAの全部又は部分(例えばKRNR)を含まない。
【0082】
ペプチドの作製方法
本開示のグルカゴンアナローグは当業界で公知の方法によって入手できる。ペプチドをde novo合成する適切な方法は例えば以下に記載されている:Chan et al., Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis, Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2005;Peptide and Protein Drug Analysis, ed. Reid, R., Marcel Dekker, Inc., 2000; Epitope Mapping, ed. Westwood et al., Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2000;及び米国特許5,449,752号。
さらにまた、本開示のアナローグが非コード又は非天然アミノ酸を全く含まない事例では、当該グルカゴンアナローグは、標準的な組換え方法により当該アナローグのアミノ酸配列をコードする核酸を用いて組換え的に生成することができる。例えば以下を参照されたい:Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 2001;及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, NY, 1994。
いくつかの実施態様では、本開示のグルカゴンアナローグは単離される。いくつかの実施態様では、本開示のグルカゴンアナローグは精製される。“純度”とは相対的な用語であり、必ずしも絶対純度又は完全濃縮又は完全選別と解されるべきではないことは理解される。いくつかの特徴では、当該純度は、少なくとも又は約50%、少なくとも又は約60%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約80%、又は、少なくとも又は約90%(例えば少なくとも又は91約%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%)であるか、又は約100%である。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のペプチドは、企業(例えばSynpep:Dublin, CA;Peptide Technologies Corp.;Gaithersburg, MD;及びMultiple Peptide Systems, San Diego, CA)によって商業的に合成される。これに関して、当該ペプチドは合成、組換え、単離及び/又は精製され得る。
【0083】
コンジュゲート
本発明はさらに、異種部分とコンジュゲートさせた本明細書に記載のグルカゴンアナローグの1つ以上を含むコンジュゲートを提供する。本明細書で用いられるように、“異種部分”という用語は“コンジュゲート部分”という用語と同義語であり、本明細書に記載のグルカゴンアナローグと異なる任意の分子(化学的若しくは生化学的な、天然に存在するか又は非コードの分子)を指す。本明細書に記載のグルカゴンアナローグのいずれかと連結され得る例示的なコンジュゲート部分には、異種ペプチド若しくはポリペプチド(例えば血漿タンパク質を含む)、標的薬剤、免疫グロブリン若しくはその部分(例えば可変領域、CDR又はFc領域)、診断標識(例えば放射性同位元素、発蛍光団又は酵素標識)、ポリマー(水溶性ポリマーを含む)、又は他の治療用若しくは診断用薬剤が含まれるが、ただしこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、本発明のアナローグ及び血漿タンパク質を含むコンジュゲートが提供され、ここで当該血漿タンパク質は、アルブミン、トランスフェリン、フィブリノゲン及びグロブリンから成る群から選択される。いくつかの実施態様では、コンジュゲートの血漿タンパク質部分はアルブミン又はトランスフェリンである。いくつかの実施態様のコンジュゲートは、1つ以上の本明細書に記載のグルカゴンアナローグ及び以下の1つ以上を含む:ペプチド(本明細書に記載のグルカゴンレセプター及び/又はGLP-1レセプター活性を有するグルカゴンアナローグとは別個のペプチド)、ポリペプチド、核酸分子、抗体若しくはそのフラグメント、ポリマー、クォンタムドット、小分子、毒素、診断用薬剤、炭水化物、アミノ酸。
【0084】
いくつかの実施態様では、異種部分は本明細書に記載のグルカゴンレセプター及び/又はGLP-1レセプター活性を有するアナローグとは別個のペプチドであり、当該コンジュゲートは融合ペプチド又は化学的ペプチドである。いくつかの実施態様では、異種部分は1−21アミノ酸のペプチド伸長である。具体的な実施態様では、当該伸長は、当該グルカゴンアナローグのC-末端、例えば29位のアミノ酸に結合される。
いくつかの具体的な特徴では、当該伸長は一アミノ酸又はジペプチドである。具体的な実施態様では、当該伸長は、荷電アミノ酸(例えば陰性荷電アミノ酸(例えばGlu)、陽性荷電アミノ酸)、親水性部分を含むアミノ酸から成る群から選択されるアミノ酸を含む。いくつかの特徴では、当該伸長はGly、Glu、Cys、Gly-Gly、Gly-Glyである。
いくつかの実施態様では、当該伸長は以下のアミノ酸配列を含む:配列番号:9(GPSSGAPPPS)、配列番号:10(GGPSSGAPPPS)、配列番号:8(KRNRNNIA)、又は配列番号:11(KRNR)。具体的な特徴では、当該アミノ酸配列は、グルカゴンアナンローグのC-末端アミノ酸、例えば29位のアミノ酸を介して結合される。いくつかの実施態様では、配列番号:13−16のアミノ酸配列がグルカゴンアナローグのアミノ酸29にペプチド結合を介して結合される。いくつかの具体的な実施態様では、グルカゴンアナローグの29位のアミノ酸はGlyであり、当該Glyは配列番号:8−11のアミノ酸配列の1つと融合される。
【0085】
いくつかの実施態様では、異種部分はポリマーである。いくつかの実施態様では、ポリマーは以下から成る群から選択される:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン及びその誘導体(ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレートが含まれる)、アクリル又はメタクリルエステル(以下を含む:ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソpブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、及びポリ(オクタデシルアクリレート))、ポリビニルポリマー(以下を含む:ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリ(ビニルアセテート)及びポリビニルピロリドン)、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びソノコポリマー、セルロース(以下を含む:アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート及びセルローススルフェートナトリウム塩)、ポリプロピレン、ポリエチレン(以下を含む:ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(エチレンテトラフタレート))、及びポリスチレン。
【0086】
いくつかの特徴では、ポリマーは以下を含む生物分解性ポリマーである:生物分解性合成ポリマー(例えば乳酸及びグリコール酸のポリマー、多価無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(ブチック酸)、ポリ(吉草酸)、及びポリ(ラクチド-コカプロラクトン))、及び天然の生物分解性ポリマー(例えばアルギネート及び他の多糖類(デキストラン及びセルロースを含む)、コラーゲン、その化学的誘導体(置換、化学基(例えばアルキル、アルキレン)の付加、ヒドロキシル化、酸化、及び当業者が日常的に実施する他の改変)、アルブミン及び他の親水性タンパク質(例えばゼイン並びに他のプロラミン及び疎水性タンパク質)、並びに任意のコポリマー及び前記の混合物。一般的には、これらの物質は、酵素的加水分解又は水へのin vivo曝露によって、表面若しくは全体的侵食によって分解される。
いくつかの特徴では、ポリマーは生物粘着性ポリマー、例えば生物腐食性ヒドロゲル(以下に記載されている:H. S. Sawhney, C. P. Pathak and J. A. Hubbell in Macromolecules, 1993, 26, 581-587(前記文献の教示は参照により本明細書に含まれる))、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、多価無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、及びポリ(オクタデシルアクリレート)である。
【0087】
いくつかの実施態様では、ポリマーは水溶性ポリマー又は親水性ポリマーである。親水性ポリマーは、“親水性部分”の項で本明細書にさらに記載されている。適切な親水性ポリマーは当業界で公知であり、例えば以下が含まれる:ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC;Klucel)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC; Methocel)、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、ヒドロキシプロピルペンチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース(Ethocel)、ヒドロキシエチルセルロース、種々のアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース、種々のセルロースエーテル、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ビニルアセテート/クロトン酸コポリマー、ポリ-ヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、メタクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、無水マレイン酸/メチルビニルエーテルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム及びカルシウム、ポリアクリル酸、酸性カルボキシポリマー、カルボキシポリメチレン、カルボキシビニルポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリメチルビニルエーテルコマレイン酸無水物、カルボキシメチルアミド、メタクリル酸カリウムジビニルベンゼンコポリマー、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレンオキシド並びにその誘導体、塩及び組合せ。
【0088】
具体的な実施態様では、ポリマーはポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG))である。
いくつかの実施態様では、異種部分は炭水化物である。いくつかの実施態様では、炭水化物は単糖類(例えばグルコース、ガラクトース、フラクトース)、二糖類(例えばシュクロース、ラクトース、マルトース)、オリゴ糖(例えばラフィノース、スタキオース)、多糖類(例えばデンプン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、キチン、カロース、ラミナリン、キシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナン)である。
いくつかの実施態様では、異種部分は脂質である。いくつかの実施態様では、脂質は、脂肪酸、エイコサノイド、プロスタグランジン、ロイコトリエン、スロンボキサン、N-アシルエタノールアミン、グリセロリピド(例えば一、二、三置換グリセロール)、グリセロホスホリピド(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン)、スフィンゴリピド(例えばスフィンゴシン、セラミド)、ステロールリピド(例えばステロイド、コレステロール)、プレノールリピド、サッカロリピド、又はポリケチド、油、ロウ、コレステロール、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質である。
いくつかの実施態様では、異種部分は、非共有結合又は共有結合を介して本開示のアナローグに結合される。ある種の特徴では、異種部分はリンカーを介して本開示のアナローグに結合される。結合は、化学的な共有結合、物理的な力(例えば静電気力、水素結合力、イオン力、ファンデルワールス力又は疎水性若しくは親水性相互作用)によって達成され得る。多様な非共有カップリング系を用いることができ、前記にはビオチン-アビジン、リガンド/レセプター、酵素/基質、核酸/核酸結合タンパク質、脂質/脂質結合タンパク質、細胞粘着分子パートナー;又は互いに親和性を有する任意の結合パートナー又はそのフラグメントが含まれる。
【0089】
いくつかの実施態様のグルカゴンアナローグは、当該アナローグの標的アミノ酸残基を有機誘導剤(これら標的アミノ酸の選択側鎖又はN-若しくはC-末端残基と反応し得る)と反応させることによって、直接共有結合を介してコンジュゲート部分と連結される。アナローグ又はコンジュゲート部分の反応基には、例えばアルデヒド、アミノ、エステル、チオール、α-ハロアセチル、マレイミド又はヒドラジノ基が含まれる。誘導剤には、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタールアルデヒド、無水コハク酸、又は当業界で公知の他の薬剤が含まれる。また別には、コンジュゲート部分は、当該アナローグに中間担体(例えば多糖類又はポリペプチド担体)を介して間接的に連結され得る。多糖類担体の例にはアミノデキストランが含まれる。適切なポリペプチド担体の例には、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、前記のコポリマー、並びにこれらアミノ酸及び他のもの(例えばセリン)の混合ポリマー(得られる充填担体に所望の溶解特性を付与する)が含まれる。
システイニル残基は、もっとも一般的にα-ハロアセテート(及び対応するアミン)、例えばクロロ酢酸、クロロアセトアミドと反応して、カルボキシメチル又はカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基はまた以下との反応によって誘導される:ブロモトリフルオロアセトン、アルファ-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)ピロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロルメルクリベンゾエート、2-クロルメルクリ-4-ニトロフェノール又はクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール。
【0090】
ヒスチジル残基はpH5.5−7.0でジエチルピロカーボネートとの反応によって誘導される(なぜならばこの薬剤はヒスチジル側鎖に対し比較的特異的であるからである)。パラ-ブロモフェナシルブロミドもまた有用である(前記反応は好ましくはpH6.0の0.1Mカコジル酸ナトリウム中で実施される)。
リシニル及びアミノ末端残基はコハク酸又は他のカルボン酸無水物と反応される。これらの薬剤との誘導は、リシニル残基の荷電を逆にする作用を有する。アルファ-アミノ含有残基を誘導する他の適切な試薬には、イミドエステル、例えばメチルピコリンイミデート、ピリドキサールホスフェート、ピリドキサール、クロロボロハイドライド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソウレア、2,4-ペンタンジオン、及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が含まれる。
アルギニル残基は、1つ又はいくつかの通常的試薬、とりわけフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン及びニンヒドリンとの反応によって改変される。アルギニン残基の誘導は、グアニジン官能基の高いpKaのためにアルカリ条件で反応が実施されることを要求する。さらにまた、これらの試薬は、アルギニンエプシロン-アミノ基と同様にリジンの基と反応できる。
チロシル残基にスペクトル標識を導入するという特別な関心から、芳香族化合物又はテトラニトロメタンとの反応によってチロシル残基の特異的改変を実施できる。もっとも一般的には、N-アセチルイミダゾール及びテトラニトロメタンを用いて、O-アセチルチロシル種及び3-ニトロ誘導体を形成する。
【0091】
カルボキシル側鎖基(アスパルチル又はグルタミル)をカルボジイミド(R-N=C=N-R’)との反応によって選択的に改変する(式中、R及びR’は異なるアルキル基(例えば1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリニル-4-エチル)カルボジイミド又は1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドである)。さらにまた、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパルギニル及びグルタミニル残基に変換される。
他の改変には、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基リン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のアルファ-アミノ基のメチル化(T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86, 1983)、アスパラギン又はグルタミンの脱アミド化、N-末端アミンのアセチル化、及び/又はC-末端カルボン酸基のアミド化又はエステル化が含まれる。
別のタイプの共有結合的改変は、グリコシドを当該アナローグに化学的又は酵素的にカップリングすることを必要とする。糖を(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基(例えばシステインの遊離スルフヒドリル基)、(d)遊離ヒドロキシル基(例えばセリン、スレオニン又はヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基)、(e)芳香族残基(例えばチロシン又はトリプトファンのもの)、又は(f)グルタミンのアミド基に結合させることができる。これらの方法は以下に記載されている:WO87/05330(1987年9月11日公開);及びAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306, 1981。
【0092】
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、当該グルカゴンアナローグのアミノ酸の側鎖と異種部分との間の共有結合を介して異種部分とコンジュゲートされる。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、16、17、21、24又は29位のアミノ酸、C-末端伸長内の位置のアミノ酸、又はC-末端アミノ酸、又はこれらの位置の組合せのアミノ酸の側鎖を介して異種部分とコンジュゲートされる。いくつかの特徴では、異種部分と共有結合により連結されるアミノ酸(例えば異種部分を含むアミノ酸)は、Cys、Lys、Orn、ホモ-Cys、又はAc-Pheであり、当該アミノ酸の側鎖は異種部分と共有結合される。
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、グルカゴンアナローグを異種部分と結合させるリンカーを含む。いくつかの特徴では、リンカーは、1から約60の原子、又は1から30原子若しくはそれより長い原子の鎖、2から5原子、2から10原子、5から10原子、又は10から20原子の長さの鎖を含む。いくつかの実施態様では、鎖の原子は全て炭素原子である。いくつかの実施態様では、リンカーの骨格内の鎖の原子はC、O、N及びSから成る群から選択される。鎖の原子及びリンカーはそれらの期待される溶解性(親水性)にしたがって選択され、より高い溶解性のコンジュゲートを提供することができる。いくつかの実施態様では、リンカーは、標的組織又は器官又は細胞で見出される酵素若しくは他の触媒又は加水分解条件による切断を受ける官能基を提供する。いくつかの実施態様では、リンカーの長さは、立体的障害に対する潜在性を減少させるために十分に長い。リンカーが共有結合又はペプチジル結合であり、コンジュゲートがポリペプチドである場合、全コンジュゲートは融合タンパク質であり得る。そのようなペプチジルリンカーは任意の長さであり得る。例示的なリンカーは、長さが約1から50アミノ酸、5から50、3から5、5から10、5から15、又は10から30アミノ酸である。そのような融合タンパク質は、また別には当業者に公知の組み換え遺伝子工学の方法によって生成することができる。
【0093】
コンジュゲート:Fc融合:
上記に特記したように、いくつかの実施態様では、アナローグは、免疫グロブリン又はその部分(例えば可変領域、CDR又はFc領域)とコンジュゲートされる(例えば融合される)。免疫グロブリン(Ig)の公知のタイプにはIgG、IgA、IgE、IgD又はIgMが含まれる。Fc領域はIg重鎖のC-末端領域であり、前記は、活性を遂行するFcレセプターとの結合に必要である。前記活性は、例えば再循環(半減期の延長をもたらす)、抗体依存細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体依存細胞傷害(CDC)である。
例えば、いくつかの定義にしたがえば、ヒトIgG重鎖Fc領域は重鎖のCys226からC-末端に達する。“ヒンジ領域”は一般的にヒトIgG1のGlu216からPro230に及ぶ(他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、システイン結合に必要なシステインをそろえることによってIgG1配列とアラインメントすることができる)。IgGのFc領域は、2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含む。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは通常アミノ酸231からアミノ酸341に及ぶ。ヒトIgG Fc領域のCH3ドメインは通常アミノ酸342からアミノ酸447に及ぶ。免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメント若しくは領域のアミノ酸の番号付けのために為される言及は全てKabatらの論文(Kabat et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Public Health, Bethesda, Md.)を基準にする。関連する実施態様では、当該Fc領域は、免疫グロブリン重鎖の1つ以上の本来の又は改変された定常領域を含み、前記定常領域は、CH1以外の領域、例えばIgG及びIgAのCH2及びCH3又はIgEのCH3及びCH4領域である。
【0094】
適切なコンジュゲート部分は、FcRn結合部位を含む免疫グロブリン配列の部分を含む。FcRn(サルベージレセプター)は、免疫グロブリンを再処理しそれらを血中循環に戻すために必要である。FcRnレセプターと結合するIgGのFc部分の領域位はX線結晶学を基に記載されている(Burmeister et al. 1994, Nature 372:379)。FcのFcRnとの主要な接触域はCH2とCH3ドメインの結合部近くである。Fc-FcRn接触はいずれも単一Ig重鎖内に存在する。主要な接触部位には、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250−257、272、285、288、290−291、308−311及び314、並びにCH3ドメインのアミノ酸残基385−387、428及び433−436が含まれる。
いくつかのコンジュゲート部分はFcγR結合部位を含むことがあり、又は含まないことがある。FcγRはADCC及びCDCに必要である。FcγRとの直接接触を果たすFc領域内の位置の例はアミノ酸234−239(低ヒンジ領域)、アミノ酸265−269(B/Cループ)、アミノ酸297−299(C’/Eループ)、及びアミノ酸327−332(F/G)ループ(Sondermann et al., Nature 406: 267-273, 2000)である。IgEの低ヒンジ領域はまたFcRI結合にも関係する(Henry, et al., Biochemistry 36, 15568-15578, 1997)。IgAレセプター結合に必要な残基はLewisらの報告に記載されている(Lewis et al., J Immunol. 175:6694-701, 2005)。IgEレセプター結合に必要なアミノ酸残基はSayersらの報告に記載されている(Sayers et al., J Biol Chem. 279(34):35320-5, 2004)。
【0095】
アミノ酸改変は免疫グロブリンのFc領域に対して実施できる。そのような変種Fc領域は、Fc領域のCH3ドメイン(残基342−447)に少なくとも1つのアミノ酸改変、及び/又はFc領域のCH2ドメイン(残基231−341)に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む。FcRnに対する親和性の増進を付与すると考えられる変異にはT256A、T307A、E380A及びN434Aが含まれる(Shields et al. 2001, J. Biol. Chem. 276:6591)。他の変異は、FcRnに対する親和性を顕著には低下させずに、Fc領域のFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、及び/又はFcγRIIIAとの結合を低下させることができる。例えば、Fc領域の297位のAsnをAla又は別のアミノ酸による置換は高度に保存されたN-グリコシル化部位を除去し、免疫原性を低下させると同時にFc領域の半減期を延長し、それとともにFcγRとの結合を低下させることができる(Routledge et al. 1995, Transplantation 60:847;Friend et al. 1999, Transplantation 68:1632;Shields et al. 1995, J. Biol. Chem. 276:6591)。FcγRとの結合を低下させるIgG1の233−236位のアミノ酸改変が実施された(Ward and Ghetie 1995, Therapeutic Immunology 2:77 and Armour et al. 1999, Eur. J. Immunol. 29:2613)。いくつかの例示的アミノ酸置換は米国特許7,355,008号及び7,381,408号に記載されている(前記の各々は参照により本明細書に含まれる)。
【0096】
コンジュゲート:親水性部分:
本明細書に記載のグルカゴンアナローグをさらに改変して、本来のグルカゴンに比して高い生物学的活性を維持しながら生理学的pHの水溶液におけるその溶解性及び安定性を改善することができる。親水性部分(例えばPEG基)は、タンパク質と活性化ポリマー分子との反応に用いられる任意の適切な条件下で当該アナローグに結合させることができる。以下を含む当業界で公知の任意の手段を用いることができる:アシル化、還元アルキル化、ミカエル付加、チオールアルキル化、又はPEG部分の反応基(例えばアルデヒド、アミノ、エステル、チオール、α-ハロアセチル、マレイミド又はヒドラジノ基)と標的化合物の反応基(例えばアルデヒド、アミノ、エステル、チオール、α-ハロアセチル、マレイミド又はヒドラジノ基)を介する他の化学選択的コンジュゲーション/結合方法。水溶性ポリマーを1つ以上のタンパク質に連結するために用いることができる活性化基には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):スルホン、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフレート、トレシレート、アジジリン、オキシラン、5-ピリジル、及びアルファ-ハロゲン化アシル基(例えばアルファ-ヨード酢酸、アルファ-ブロモ酢酸、アルファ-クロル酢酸)。還元アルキル化によってアナローグに結合される場合は、選択されるポリマーは、重合度を制御できるようにただ1つの反応性アルデヒドを有するべきである。例えば以下を参照されたい:Kinstler et al., Adv. Drug. Delivery Rev. 54: 477-485 (2002); Roberts et al., Adv. Drug Delivery Rev. 54: 459-476, 2002;及びZalipsky et al., Adv. Drug Delivery Rev. 16: 157-182, 1995。
【0097】
具体的な特徴では、チオールを有するアナローグのアミノ酸残基は親水性部分(例えばPEG)で改変される。いくつかの実施態様では、当該チオールは、ミカエル付加でマレイミド活性化PEGにより改変され、下記に示すチオエーテル結合を含むPEG付加アナローグを生じる:
【化9】
【0098】
いくつかの実施態様では、当該チオールは、求核置換反応でハロアセチル活性化PEGにより改変され、下記に示すチオエーテル結合を含むPEG付加アナローグを生じる:
【化10】
適切な親水性部分には以下が含まれる:ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばPOG)、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)、ポリオキシアルキレン、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、エチレングルコール/プロピレングリコールのコポリマー、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、モノ-(C1-C10)アルコキシ-又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(.ベータ.-アミノ酸)(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、ポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピロピレングリコールホモポリマー(PPG)及び他のポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、コロン酸又は他の多糖類ポリマー、フィコール又はデキストラン及び前記の混合物。デキストランはグルコースサブユニットの多糖類ポリマーであり、もっぱらα1-6結合によって連結される。デキストランは多くの分子量範囲(例えば約1kDから約100kD、又は約5、10、15若しくは20kDから約20、30、40、50、60、70、80又は90kD)で入手できる。直鎖又は分枝鎖ポリマーも意図される。得られたコンジュゲート調製物は本質的に単分散系又は多分散系で、1アナローグにつき約0.5、0.7、1、1.2、1.5又は2ポリマー部分である。
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、当該グルカゴンアナローグのアミノ酸の側鎖と親水性部分との間の共有結合を介して親水性部分とコンジュゲートされる。いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは、16、17、21、24又は29位のアミノ酸、C-末端伸長内の位置のアミノ酸、又はC-末端アミノ酸、又はこれらの位置の組合せのアミノ酸の側鎖を介して親水性部分とコンジュゲートされる。いくつかの特徴では、親水性部分と共有結合されるアミノ酸(例えば親水性部分を含むアミノ酸)はCys、Lys、Orn、ホモ-Cys、又はAc-Pheであり、当該アミノ酸の側鎖は親水性部分(例えばPEG)と共有結合する。
【0099】
コンジュゲート:rPEG:
いくつかの実施態様では、本開示のコンジュゲートは、化学的PEGと類似する引き延ばされた構造を形成できる付属アナローグ(例えば組換えPEG(rPEG)分子))と融合したグルカゴンアゴニスト活性及び/又はGLP-1アゴニスト活性を有するアナローグを含む(例えば国際特許出願公開WO2009/023270及び米国特許出願公開US20080286808に記載されたもの)。いくつかの特徴のrPEG分子は、1つ以上のグリシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、又はプロリンを含むポリペプチドである。いくつかの特徴では、rPEGは、ホモポリマー、例えばポリ-グリシン、ポリ-セリン、ポリ-グルタミン酸、ポリ-アスパラギン酸、ポリ-アラニン、又はポリ-プロリンである。他の実施態様では、rPEGは、2つのアミノ酸タイプの反復、例えばポリ(Gly-Ser)、ポリ(Gly-Glu)、ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Asp)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Ser-Glu)を含む。いくつかの特徴では、rPEGは3つの異なるタイプのアミノ酸、例えば例えばポリ(Gly-Ser-Glu)を含む。具体的な特徴では、rPEGは、グルカゴンアゴニスト及び/又はGLP-1アゴニストアナローグの半減期を長くする。いくつかの特徴では、rPEGは正味の陽性荷電又は正味の陰性荷電を含む。いくつかの特徴のrPEGは二次構造を欠く。いくつかの実施態様では、rPEGは長さが10アミノ酸以上であり、いくつかの実施態様では、長さが約40から約50アミノ酸である。いくつかの特徴の付属ペプチドは、ペプチド結合又はプロテイナーゼ切断部位を介して本開示のアナローグのN-若しくはC-末端に融合されるか、又は本開示のアナローグの当該ループに挿入される。いくつかの特徴のrPEGはアフィニティタグを含むか、又は5kDaを超えるPEGに連結される。いくつかの実施態様では、rPEGは、流体力学半径、半減期、プロテアーゼ耐性又は溶解性の増加を本開示のアナローグに付与するか、又は免疫原性の低下を当該アナローグに付与する。
【0100】
コンジュゲート:マルチマー:
本発明はさらに、本明細書に開示のアナローグのマルチマー又はダイマー(ホモ若しくはヘテロマルチマー又はホモ若しくはヘテロダイマーを含む)を提供する。2つ以上のアナローグが、当業者に公知の標準的な結合剤及び方法を用いて一緒に連結され得る。例えば、ダイマーは、二官能性チオール架橋剤及び二官能性アミン架橋剤(特にシステイン、リジン、オルニチン、ホモシステイン又はアセチルフェニルアラニン残基で置換されたアナローグのための架橋剤)の使用により2つのペプチド間で形成され得る。当該ダイマーはホモダイマー、或いはまたヘテロダイマーであり得る。ある種の実施態様では、2つ(又は3つ以上)のアナローグを連結するリンカーはPEG(例えば5kDaのPEG、20kDaのPEG)である。いくつかの実施態様では、リンカーはジスルフィド結合である。例えばダイマーの各モノマーはCys残基(例えば末端又は内部に位置するCys)を含むことができ、各Cys残基の硫黄原子はジスルフィド結合の形成に参加する。いくつかの特徴では、モノマーは、末端アミノ酸(例えばN-末端又はC-末端)を介して、内部のアミノ酸を介して、又は少なくとも1つのモノマーの末端アミノ酸及び少なくとも1つの他方のモノマーの内部のアミノ酸を介して結合される。具体的な特徴では、モノマーはN-末端アミノ酸を介して結合されない。いくつかの特徴では、マルチマーのモノマーは尾対尾の向きで一緒に結合される(この向きでは各モノマーのC-末端アミノ酸が一緒に結合される)。
【0101】
医薬組成物、使用及びキット
塩:
いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグは塩(例えば医薬的に許容できる塩)の形態であり得る。本明細書で用いられるように、“医薬的に許容できる塩”という用語は、親化合物の生物学的活性を保持し、生物学的にも又は他の態様でも望ましくないものではない化合物の塩を指す。そのような塩は、当該アナローグの最終的な単離及び精製時にin situで調製されるか、又は別々に遊離塩基性官能基と適切な酸との反応によって調製され得る。本明細書に開示した化合物の多くが、アミノ基及び/又はカルボキシル基又は前記と類似する基の存在のために酸及び/又は塩基の塩を形成することができる。
医薬的に許容できる酸付加塩は無機及び有機酸から調製できる。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、亜硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イソチオネート)、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びウンデカン酸塩が含まれる(ただしこれらに限定されない)。無機酸から誘導される塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含む。有機酸から誘導される塩は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエン-スルホン酸、サリチル酸などを含む。医薬的に許容できる酸付加塩を形成するために用いることができる酸の例には、例えば無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸)及び有機酸(例えばシュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸)が含まれる。
【0102】
塩基付加塩は、サリチル酸源の最終的な単離及び精製時にin situで調製されるか、又はカルボン酸含有部分を適切な塩基(例えば医薬的に許容できる金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩)又はアンモニア又は有機一級、二級若しくは三級アミンとの反応によって調製され得る。医薬的に許容できる塩には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):アルカリ金属若しくはアルカリ土金属の陽イオン(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩など)、及び無害な四級アンモニア及びアミン陽イオン(とりわけアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム及びエチルアンモニウムを含む)。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンには、例えばエチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジンなどが含まれる。有機塩基から誘導される塩には一級、二級及び三級アミンの塩が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
さらにまた、塩基性窒素含有基を本開示のアナローグで、低級アルキルハロゲン化物として(例えば塩化、臭化及びヨウ化メチル、エチル、プロピル及びブチル);長鎖ハロゲン化物として(例えば塩化、臭化及びヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリル);アリールアルキルハロゲン化物(例えば臭化ベンジル及びフェネチルなど)として四級化できる。それによって水溶性又は脂溶性若しくは分散性生成物が得られる。
【0103】
処方物:
いくつかの実施態様にしたがえば、本開示のグルカゴンアナローグ又は医薬的に許容できるその塩、及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は医薬的に許容できる任意の成分を含むことができ、前記成分には例えば以下が含まれる:酸性化剤、添加剤、吸着剤、エーロゾル発射薬、空気置換薬、アルカリ化剤、抗粘結剤、抗凝固剤、抗菌保存料、抗酸化剤、抗腐敗剤、基剤、結合剤、緩衝剤、キレート剤、コーティング剤、着色剤、吸湿剤、洗剤、希釈剤、殺菌剤、崩壊剤、分散剤、溶解促進剤、染料、保湿剤、乳化剤、乳液安定化剤、充填剤、薄膜形成剤、香り強化剤、香料、流動促進剤、ゲル化剤、顆粒化剤、湿潤剤、滑沢剤、粘膜吸着剤、軟膏基剤、軟膏剤、油性ベヒクル、有機性基剤、香錠基剤、色素、可塑剤、研磨剤、保存料、金属イオン封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶媒、安定化剤、座薬基剤、表面活性剤、サーファクタント、懸濁剤、甘味剤、増量剤、張度調製剤、増粘剤、水吸収剤、水混和剤、硬水軟化剤、又は湿潤化剤。
【0104】
いくつかの実施態様では、医薬組成物は以下の成分のいずれか1つ又は組合せを含む:アラビアゴム、アセスルフェームカリウム、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、寒天、アルブミン、アルコール、無水アルコール、変性アルコール、希釈アルコール、アリューリチック酸(aleuritic acid)、アルギン酸、脂肪族ポリエステル、アルミナ、水酸化アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アミロペプチン、α-アミロース、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、アスパルターム、静菌注射用水、ベントナイト、ベントナイトマグマ、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ブロモポール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチルパラベン、ブチルパラベンナトリウム、アルギン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、炭酸カルシウム、シクラミン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム無水物、第二リン酸カルシウムデハイドレート、三塩基性リン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カルシウムヘミハイドレート、カノーラ油、カルボマー、二酸化炭素、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、β-カロテン、カラギーナ、ひまし油、水素添加ひまし油、陽イオン性乳化ワックス、酢酸セルロース、酢酸セルロースフタレート、エチルセルロース、微晶質セルロース、粉末化セルロース、珪化微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セトステアリルアルコール、セトリミド、セチルアルコール、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、コレステロール、クロロヘキシジン、酢酸クロロヘキシジン、グルコン酸クロロヘキシジン、塩酸クロロヘキシジン、クロロジフルオロエタン(HCFC)、クロロジフルオロメタン、クロロフルオロカーボン(CFC)、クロロフェノキシエタノール、クロロキシレノール、コーンシロップ固形物、無水クエン酸、クエン酸一水和物、ココアバター、着色剤、トウモロコシ油、綿実油、クレゾール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾール、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、シクラミン酸、シクロデキストリン、デキストレート、デキストリン、デキストロース、無水デキストロース、ジアゾリジニルウレア、フタル酸ジブチル、ジブチルセバケート、ジエタノールアミン、フタル酸ジエチル、ジフルオロエタン(HFC)、ジメチル-β-シクロデキストリン、シクロデキストリン型化合物(例えばCaptisol(商標))、ジメチルエーテル、フタル酸ジメチル、エデント酸二カリウム、エデント酸二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ドキュセートカリウム、ドキュセートナトリウム、没食子酸ドデシル、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、エデンテートカルシウム二ナトリウム、エデト酸、エグルミン、エチルアルコール、エチルアルコール、エチルセルロース、没食子酸エチル、ラウリン酸エチル、エチルマルトール、マルトールエチル、オレイン酸エチル、エチルパラベン、エチルパラベンカリウム、エチルパラベンナトリウム、エチルバニリン、フルクトース、フルクトース液、フルクトースミル、発熱物質フリーフルクトース、粉末フルクトース、フマル酸、ゼラチン、グルコース、液体グルコース、飽和植物脂肪酸のグリセリド混合物、グリセリン、ベヘン酸グリセリル、一オレイン酸グリセリル、一ステアリン酸グリセリル、自己乳化一ステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、グリシン、グリコール、グリコフロール、グアゴム、ヘプタフルオロプロパン(HFC)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、高フルクトースシロップ、ヒト血清アルブミン、炭化水素(HC)、稀塩酸、水素添加植物油、II型、ヒドロキシエチルセルロース、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、イミドウレア、インジゴカルミン、イオン交換剤、酸化鉄、イソプロピルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、等張食塩水、カオリン、乳酸、ラクチトール、ラクトース、ラノリン、ラノリンアルコール、無水ラノリン、レシチン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、ノルマル炭酸マグネシウム、無水炭酸マグネシウム、水酸化炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ラウリル硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、無水三ケイ酸マグネシウム、リンゴ酸、麦芽、マルチトール、マルチトール溶液、マルトデキストリン、マルトール、マルトース、マンニトール、中等鎖トリグリセリド、メグルミン、メンソール、メチルセルロース、メタクリル酸メチル、オレイン酸メチル、メチルパラベン、メチルパラベンカリウム、メチルパラベンナトリウム、微晶質セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、鉱物油、軽鉱物油、鉱物油及びラノリンアルコール、油、オリーブオイル、モノエタノールアミン、モンモリロン石、没食子酸オクチル、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィン、落花生油、ワセリン、ワセリン及びラノリンアルコール、医薬用光沢剤、フェノール、液化フェノール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ポラクリリン、ポラクリリンカリウム、ポロキサマー、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギンサンカリウム、安息香酸カリウム、重炭酸カリウム、重亜硫酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、無水クエン酸カリウム、リン酸水素カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、ポビドン、プロピオン酸、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、没食子酸プロピル、プロピルパラベン、プロピルパラベンカリウム、プロピルパラベンナトリウム、硫酸プロタミン、菜種油、リンゲル液、サッカリン、サッカリンアンモニウム、サッカリンカルシウム、ベニバナ油、サポニン、血清蛋白質、ごま油、コロイドケイ酸、コロイド二酸化シリコン、アルギン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、無水クエン酸ナトリウム、脱水クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シクラミン酸ナトリウム、エデント酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、三塩基性プロピオン酸ナトリウム無水物、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪エステル)、ソルビトール、70%ソルビトール溶液、ダイズ油、鯨ロウ、デンプン、トウモロコシデンプン、前ゼラチン化デンプン、滅菌可能トウモロコシデンプン、ステアリン酸、精製ステアリン酸、ステアリルアルコール、シュクロース、砂糖、圧縮性糖、菓子業者糖、シュガースフェア、転化糖、シュガータブ(Sugartab)、サンセットイエローFCF、合成パラフィン、タルク、酒石酸、タルタジン、テトラフルオロエタン(HFC)、テオブロマ油、チメロサール、二酸化チタニウム、アルファトコフェロール、酢酸トコフェリル、コハク酸アルファトコフェリル酸、ベータ-トコフェロール、デルタ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、トラガカント、トリアセチン、クエン酸トリブチル、トリエタノールアミン、クエン酸トリエチル、トリメチル-β-シクロデキストリン、臭化トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリス緩衝液、エデント酸三ナトリウム、バニリン、I型、水素添加植物油、水、軟水、硬水、二酸化炭素フリー水、発熱因子フリー水、注射用水、吸入用滅菌水、注射用滅菌水、灌流用滅菌水、ロウ、陰イオン性乳化ワックス、カルナウバワックス、陽イオン性乳化ワックス、セチルエステルワックス、微晶質ワックス、非イオン性乳化ワックス、座薬用ワックス、白色ロウ、黄色ロウ、白色ワセリン、ウールファット、キサンタンゴム、キシリトール、ゼイン、プロピオン酸亜鉛、亜鉛塩、ステアリン酸亜鉛、又は以下のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients, Third Edition, A. H. Kibbe, Pharmaceutical Press, London, UK, 2000;前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)に記載の任意の賦形剤。以下の成書(Remington’s Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980;前記文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる)は、医薬的に許容できる組成物の処方及びその調製のための公知の技術で用いられる多様な成分を開示する。いずれの通常的薬剤も当該医薬組成物と不適合でない限り、医薬組成物におけるその使用が意図される。補足的な活性成分もまた当該組成物に取り込むことができる。
【0105】
いくつかの実施態様では、前述の成分は当該医薬組成物に任意の濃度、例えば少なくともAで存在でき、ここでAは0.0001%w/v、0.001%w/v、0.01%w/v、0.1%w/v、1%w/v、2%w/v、5%w/v、10%w/v、20%w/v、30%w/v、40%w/v、50%w/v、60%w/v、70%w/v、80%w/v、又は90%w/vである。いくつかの実施態様では、前述の成分は当該医薬組成物に任意の濃度、例えばせいぜいBで存在でき、ここでBは90%w/v、80%w/v、70%w/v、60%w/v、50%w/v、40%w/v、30%w/v、20%w/v、10%w/v、5%w/v、2%w/v、1%w/v、0.1%w/v、0.001%w/v、又は0.0001%w/vである。他の実施態様では、前述の成分は当該医薬組成物に任意の濃度範囲、例えば約Aから約Bで存在できる。いくつかの実施態様では、Aは0.001%でBは90%である。
当該医薬組成物は生理学的に適合し得るpHを達成するように処方できる。いくつかの実施態様では、医薬組成物のpHは、処方及び投与経路にしたがって少なくとも5、少なくとも5.5、少なくとも6、少なくとも6.5、少なくとも7、少なくとも7.5、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9、少なくとも9.5、少なくとも10、少なくとも10.5からpH11まで(pH11を含む)であり得る。ある種の実施態様では、医薬組成物は緩衝剤を含み、生理学的に適合し得るpHを達成できる。緩衝剤には所望のpHで緩衝させることができる任意の化合物、例えばリン酸緩衝剤(例えばPBS)、トリエタノールアミン、トリス、ビシン、TAPS、トリシン、HEPES、TES、MOPS、PIPES、カコジル酸、MESなどが含まれ得る。ある種の実施態様では、緩衝剤の強度は、少なくとも0.5mM、少なくとも1mM、少なくとも5mM、少なくとも10mM、少なくとも20mM、少なくとも30mM、少なくとも40mM、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも120mM、少なくとも150mM、少なくとも200mMである。いくつかの実施態様では、緩衝剤の強度は300mMを超えない(例えばせいぜい200mM、せいぜい、せいぜい100mM、せいぜい90mM、せいぜい80mM、せいぜい70mM、せいぜい60mM、せいぜい50mM、せいぜい40mM、せいぜい30mM、せいぜい20mM、せいぜい10mM、せいぜい5mM、せいぜい1mM)。
【0106】
投与経路:
投与経路に関する以下の考察は単に例示的実施態様を示すために提供され、いずれの態様でも本発明の範囲を制限するものと解されるべきではない。
経口投与に適切な処方物は以下から成り得る:(a)流動性溶液、例えば稀釈剤(例えば水、食塩水又はオレンジジュース)に溶解させた有効量の本開示のアナローグ;(b)カプセル、サシェ、ロゼンジ及びトローチ(各々は予め定めた量の活性成分を固体又は顆粒として含む);(c)散剤;(d)適切な液体中の懸濁物;及び(e)適切な乳濁液。液体処方物は、希釈剤、例えば水及びアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコール及びポリエチレンアルコールを、医薬的に許容できる界面活性剤の添加と併せて又は添加しないで含むことができる。カプセル形は通常の硬質又は軟質ゼラチンタイプであることができ、例えば界面活性剤、滑沢剤及び不活性充填剤(例えばラクトース、シュクロース、リン酸カルシウム及びトウモロコシデンプン)を含む。錠剤形は以下の1つ以上を含むことができる:ラクトース、シュクロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微晶質セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアゴム、二酸化ケイ素コロイド、クロシカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存料、香料、並びに他の薬理学的に許容できる賦形剤。ロゼンジ形は、香錠と同様に香料(通常はシュクロース及びアラビアゴム又はトラガカント)中に本開示のアナローグを含む。前記香錠は、不活性基剤、例えばゼラチン及びグリシン、又はシュクロース及びアラビアゴム、乳濁液及びゲルなど(その他に当業界で公知の賦形剤を含む)中に本開示のアナローグを含む。
【0107】
本開示のアナローグは、単独又は他の適切な成分と組み合わせて肺投与によりデリバーすることができ、さらに吸入により投与されるエーロゾル処方物にすることができる。これらエーロゾル処方物は許容可能な加圧発射薬(例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に置くことができる。前記はまた、例えばネブライザー又はスプレーの非加圧調製物用医薬として処方することができる。そのようなスプレー処方物はまた粘膜に噴霧するために用いることができる。いくつかの実施態様では、アナローグは散剤ブレンド又は微粒子若しくはナノ粒子に処方される。適切な肺処方物は当業界で公知である。例えば以下を参照されたい:Qian et al., Int J Pharm 366: 218-220, 2009;Adjei and Garren, Pharmaceutical Research, 7(6): 565-569, 1990;Kawashima et al., J Controlled Release 62(1-2): 279-287, 1999;Liu et al., Pharm Res 10(2): 228-232, 1993;国際特許出願公開WO 2007/133747及びWO 2007/141411。
非経口投与に適した処方物には水性及び非水性の等張無菌的注射溶液が含まれ、前記溶液は抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、目的の受容動物の血液と等張にする溶質、並びに水性及び非水性無菌的懸濁物(懸濁剤、可溶化剤、膨張剤、安定化剤及び保存料を含み得る)を含むことができる。“非経口的”という用語は、消化管を介さないいくつかの他の経路(例えば皮下、筋肉内、脊髄内又は静脈内)を意味する。本開示のアナローグは、医薬担体(例えば無菌的液体又は液体混合物)中の生理学的に許容可能な希釈剤とともに投与できる。前記には以下が含まれる:水、食塩水、デキストロース水及び関連する糖溶液、アルコール、例えばエタノール又はヘキサデシルアルコール、グリコール、例えばプロピレングリコール又はポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、ケタール、例えば2,2-ジメチル-153-ジオキソラン-4-メタノール、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステル又はグリセリド、又は医薬的に許容可能な界面活性剤(石鹸又は洗剤)を添加又は添加されていないアセチル化脂肪酸グリセリド、懸濁剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース、又は乳化剤及び他の医薬アジュバント。
【0108】
非経口的処方物で用いることができる油には、鉱油、動物油、植物油又は合成油が含まれる。油の具体例には、落花生油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン及び鉱物油が含まれる。非経口処方物で使用される適切な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が含まれる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは適切な脂肪酸エステルの例である。
非経口処方物で使用される適切な石鹸には、脂肪アルカリ金属、アンモニウム、及びトリエタノールアミン塩が含まれ、適切な洗剤には以下が含まれる:(a)陽イオン洗剤(例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド)、(b)陰イオン洗剤(例えばアルキル、アリール及びオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル及びモノグリセリドスルフェート、並びにスルホスクシネート、(c)非イオン性洗剤(例えば脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー)、(d)両性洗剤(例えばアルキル-β-アミノプロピオネート及び2-アルキル-イミダゾリン四級アンモニウム塩)、及び前記の混合物。
【0109】
非経口処方物は、ユニットドース又はマルチドース封入容器(例えばアンプル及びバイアル)中で提供でき、さらに、使用直前に無菌的液状賦形剤(例えば注射用水)の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存することができる。当業界で公知の種類の無菌的散剤、顆粒及び錠剤から即席の注射溶液及び懸濁液を調製できる。
注射可能処方物は本発明に合致する。注射可能組成物に有効な医薬担体の要件を当業者は周知している(例えば以下を参照されたい:Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J. B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238-250, 1982;及びASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 4th ed., pages 622-630,1986)。
さらにまた、本開示のアナローグは、多様な基剤(例えば乳化性基剤又は水溶性基剤)とともに混合することによって直腸投与用座薬にすることができる。膣投与用に適切な処方物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ペースト、泡沫、又は噴霧処方物(適切であることが当業界で判明している担体が活性成分に加えて含まれる)として提示され得る。
上記記載の医薬組成物に加えて、本開示のアナローグは、封入複合体(例えばシクロデキストリン封入複合体)又はリポソームとして処方することができる。
【0110】
用量:
本開示のアナローグは、グルカゴンレセプターアゴニズム、GLP-1レセプターアゴニズム又はグルカゴンレセプター/GLP-1レセプターコアゴニズムが役割を果たす疾患又は症状を治療する方法で有用であると考えられる。本開示の目的のためには、本開示のアナローグの投与される量又は用量は、対象者又は動物で合理的な時間枠にわたって例えば治療的又は予防的応答を達成するために十分であるべきである。例えば、本開示のアナローグの用量は、本明細書に記載するように細胞のcAMP分泌の刺激に十分であるか、又は、投与時点から約1から4分、1から4時間、又は1から4週間以上(例えば5から20週以上)にわたって、哺乳動物の血中グルコースレベル、脂肪レベル、食物摂取レベル又は体重を低下させるために十分であるべきである。ある種の実施態様では、前記時間はもっと長いこともあり得る。前記用量は、本開示の個々のアナローグの有効性及び動物(例えばヒト)の症状とともに治療されるべき動物(例えばヒト)の体重によって決定されるであろう。
投与用量を決定するための多くのアッセイが当業界で公知である。本明細書の目的のために、哺乳動物に本開示のアナローグのある用量を投与したときに血中グルコースが低下する程度を、前記アナローグの種々の用量をそれぞれに投与した一組の哺乳動物で比較する工程を含むアッセイを用いて、哺乳動物に投与されるべき開始用量を決定することができる。ある用量を投与したときに血中グルコースレベルが低下する程度は当業界で公知の方法によってアッセイすることができ、前記には、例えば実施例4として本明細書に記載した方法が含まれる。
【0111】
本開示のアナローグの用量はまた、本開示の個々のアナローグの投与に付随する恐れがある副作用の存在、性質及び程度によって決定されるであろう。典型的には、担当医が、多様な因子(例えば年齢、体重、一般的健康状態、投与される本開示のアナローグ、投与経路、及び治療される症状の重篤度)を考慮しつつ、個々の患者を治療する本開示のアナローグの投薬量を決定するであろう。例示としてさらに本発明を制限することなく示せば、本開示のアナローグの用量は、治療対象動物の体重1kg当たり毎日約0.0001から約1g/kg体重/日、約0.0001から約0.001g/kg体重/日、又は約0.01mgから約1g/kg体重/日である。
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、本開示のアナローグのいずれかを患者への投与に適切な純度レベルで含む。いくつかの実施態様では、当該アナローグは、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%の純度レベルを有し、医薬組成物は医薬的に許容できる希釈剤、担体又は賦形剤を有する。いくつかの特徴の医薬組成物は本開示のアナローグを少なくともAの濃度で含み、ここでAは約0.001mg/mL、約0.01mg/mL、約0.1mg/mL、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、約20mg/mL、約21mg/mL、約22mg/mL、約23mg/mL、約24mg/mL、約25mg/mL以上である。いくつかの実施態様では、医薬組成物はせいぜいBの濃度で当該アナローグを含み、ここでBは約30mg/mL、約25mg/mL、約24mg/mL、約23mg/mL、約22mg/mL、約21mg/mL、約20mg/mL、約19mg/mL、約18mg/mL、約17mg/mL、約16mg/mL、約15mg/mL、約14mg/mL、約13mg/mL、約12mg/mL、約11mg/mL、約10mg/mL、約9mg/mL、約8mg/mL、約7mg/mL、約6mg/mL、約5mg/mL、約4mg/mL、約3mg/mL、約2mg/mL、約1mg/mL、又は約0.1mg/mLである。いくつかの実施態様では、当該組成物はAからBmg/mLの濃度範囲、例えば約0.001から約30.0mg/mLでアナローグを含む。
【0112】
標的形:
本開示のアナローグは、当該アナローグの治療的又は予防的有効性が改変により増進されるように多様な態様で改変できることを、当業者は容易に理解しよう。例えば、本開示のアナローグは、直接的に又はリンカーを介して間接的に標的誘導部分にコンジュゲートできる。化合物(例えばグルカゴンアナローグ)を標的誘導部分にコンジュゲートする作業は当業界で公知であり、例えば以下を参照されたい:Wadhwa et al., J Drug Targeting, 3, 111-127, 1995;及び米国特許5,087,616号。本明細書で用いられる“標的誘導部分”という用語は、細胞表面レセプターを特異的に認識しこれと結合し、それによって当該標的誘導部分が、その表面に当該レセプター(グルカゴンレセプター、GLP-1レセプター)を発現する細胞集団に本開示のアナローグのデリバリーを指導する任意の分子又は薬剤を指す。標的誘導部分には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):抗体又はそのフラグメント、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカイン、及び細胞表面レセプターと結合する他の天然又は非天然リガンド(例えば上皮増殖因子レセプター(EGFR)、T-細胞レセプター(TCR)、B-細胞レセプター(BCR)、CD28、血小板由来増殖因子レセプター(PDGF)、ニコチンアセチルコリンレセプター(nAChR)など)。本明細書で用いられるように、“リンカー”とは、結合、分子又は分子の基であって、2つの分離した物質を互いに結合させるものである。リンカーは2つの物質の最適な空間配置を提供でき、さらに当該2つの物質を互いに分離させることができる不安定な結合も供給できる。不安定な結合は、光切断基、易酸性部分、易塩基性部分及び酵素切断性基を含む。いくつかの実施態様の“リンカー”という用語は、本開示のアナローグを標的誘導部分に架橋する任意の薬剤又は分子を指す。本開示のアナローグにいったん結合したリンカー及び/又は標的誘導部分は本開示のアナローグの機能(すなわち細胞のcAMP分泌促進能力)に干渉しないことを条件として、本開示のアナローグ上の部位(前記は本開示のアナローグの機能に必要ではない)が、リンカー及び/又は標的誘導部分の結合のために理想的な部位であることを当業者は理解していよう。
【0113】
制御放出処方物:
また別には、本明細書に記載のグルカゴンアナローグは、本開示のアナローグが投与体内に放出される態様が時間及び当該体内の位置に関して制御されるようにデポット形に改変できる(例えば米国特許4,450,150号を参照されたい)。本開示のアナローグのデポット形は、例えば本開示のアナローグ及び多孔性又は無孔性素材(例えばポリマー)を含む移植可能組成物であり得る(前記移植可能組成物では、本開示のアナローグは当該素材によって被包化されるか若しくは当該素材全体に拡散されるか、及び/又は無孔性素材の分解によって拡散される)。前記デポットは体内の所望の位置に移植され、本開示のアナローグは前記移植物から予め定められた速度で放出される。
ある種の特徴の当該医薬組成物は任意のタイプのin vivo放出プロフィールを有するように改変される。いくつかの特徴では、医薬組成物は、即時放出、制御放出、持続放出、長期放出、延長放出又は二相性放出処方物である。制御放出用ペプチドを処方する方法は当業界では公知である。例えば以下を参照されたい:Qian et al., J Pharm 374: 46-52, 2009;及び国際特許出願公開WO 2008/130158;WO2004/033036;WO2000/032218;及びWO 1999/040942。
本組成物はさらに、例えばミセル若しくはリポソーム又は他のいくつかの被包化形を含むことができ、或いは長期放出形で投与して長期貯蔵及び/又はデリバリー効果を提供することができる。開示の医薬処方物は任意の投薬スケジュールにしたがって投与できる。前記投薬スケジュールは、例えば毎日(1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回)、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2カ月毎を含む。
【0114】
併用:
本明細書に記載のグルカゴンアナローグは単独で又は他の治療薬(本明細書に記載の疾患又は症状のいずれかの治療又は予防を目的とする)と一緒に投与できる。例えば、本明細書に記載のグルカゴンアナローグは、抗糖尿病薬又は抗肥満薬と一緒に(同時に又は連続的に)投与できる。当業界で公知又は研究中の抗糖尿病薬には以下が含まれる:インシュリン、レプチン、ペプチドYY(PYY)、膵臓ペプチド(PP)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、Y2Y4レセプターアゴニスト、スルホニルウレア、例えばトルブタミド(Orinase)、アセトヘキサミド(Dymelor)、トラザミド(Tolinase)、クロルプロパミド(Diabinese)、ギリピジド(Glucotrol)、グリブリド(Diabeta, Micronase, Glynase)、グリメピリド(Amaryl)、又はグリクラジド(Diamicron);メグリチニド、例えばレパグリニド(Prandin)又はナテグリニド(Starlix);ビグアニド、例えばメトフォルミン(Glucophage)又はフェンホルミン;チアゾリジンジオン、例えばロシグリタゾン(Avandia)、ピオグルタゾン(Actos)、又はトログリタゾン(Rezulin)、他のPPARγ阻害剤;炭水化物消化を阻害するアルファグリコシダーゼ阻害剤、例えばミグリトール(Glyset)、アカルボース(Precose/Glucobay);エクセナチド(Byetta)又はプラムリニチドペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤、例えばビルダグリプチン又はシタグリプチン;SGLT(ナトリウム依存性グルコーストランスポータ1)阻害剤;グルコキナーゼアクチベータ(GKA);グルカゴンレセプターアンタゴニスト(GRA);又はFBPase(フルクトース1,6-ビスホスファターゼ)阻害剤。
【0115】
当業界で公知又は研究中の抗肥満薬には以下が含まれる:食欲抑制剤(以下を含む:フェネチルアミン型刺激薬、フェンテルミン(場合によってフェンフルラミン又はデキシフェンフルラミンといっしょに)、ジエチルプロピオン(Tenuate(商標))、フェンジメトラジン(Prelu-2(商標)、Bontril(商標))、ベンゾフェタミン(Didrex(商標))、シブトラミン(Medridia(商標)、Reductil(商標)));リノナバント(Acomplia(商標))、他のカンナビノイドレセプターアンタゴニスト;オキシントモジュリン;フルオキセチンヒドロクロリド(Prozac);Qnexa(トピラメート及びフェンテルミン)、Excalia(ブプロピオン及びゾニサミド)又はContrave(ブプロピオン及びナルトレキソン);又はリパーゼ阻害剤、XENICAL(Orlistat)に類似、又はCetilistat(ATL-962としても知られている)、又はGT389-255。
いくつかの実施態様で本明細書に記載したペプチドは、非アルコール性脂肪肝症又はNASHの治療薬と一緒に投与される。非アルコール性脂肪肝症の治療に用いられる薬剤には、ウルソデオキシコール酸(a.k.a., Actigall, URSO及びUrsodiol)、メトフォルミン(Glucophage)、ロシグリタゾン(Avandia)、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ポリミキシンB及びネタインが含まれる。
いくつかの実施態様で本明細書に記載したペプチドは、神経変性疾患、例えばパーキンソン病の治療薬と一緒に投与される。さらに別の抗パーキンソン病薬剤が当業界で公知であり、前記にはレボドーパ、カルビドーパ、抗コリン作動薬、ブロモクリプチン、プラミペクソール及びロピニロール、アマンタジン及びラサギリンが含まれる(ただしこれらに限定されない)。
前述の記載を鑑みれば、本発明はさらに、これら他の治療薬を追加された医薬組成物及びキットを提供する。前記さらに別の治療薬は本開示のアナローグと同時に又は連続して投与できる。いくつかの特徴では、本アナローグは前記さらに別の治療薬の前に投与されるが、他の特徴では、本アナローグは前記さらに別の治療薬の後で投与される。
【0116】
使用:
本明細書に記載したグルカゴンアナローグ及び関連する医薬組成物は、グルカゴンレセプター、GLP-1レセプター又は両レセプターにおける活性の欠如が疾患又は症状の開始及び/又は進行の要件である疾患又は症状の治療に有用である。したがって、本発明は、ある疾患若しくは症状を患者で治療又は予防する方法を提供し、ここで前記疾患又は症状は、GLP-1レセプター活性化及び/又はグルカゴンレセプター活性化の欠如が当該疾患又は症状の開始及び/又は進行に密接に関係する疾患又は症状である。前記方法は、本明細書に記載のアナローグのいずれかに一致するアナローグを当該疾患若しくは症状の治療又は予防に有効な量で患者に提供する工程を含む。
いくつかの実施態様では、当該疾患又は症状は代謝症候群である。代謝症候群(代謝症候群X、インシュリン耐性症候群又はリーベンス症候群としてもまた知られている)は、5千万を超えるアメリカ人が罹患する疾患である。代謝症候群は、典型的には以下のリスク因子の3つ以上の集合を特徴とする:(1)腹部肥満(腹部の内部及び周囲の過剰な脂肪組織)、(2)アテローム発生性異常脂肪血症(動脈壁内のプラーク蓄積を亢進する、高トリグリセリド、低HDLコレステロール及び高LDLコレステロールを含む血中脂肪異常)、(3)血圧上昇、(4)インシュリン耐性又はグルコース不耐性、(5)前血栓症状態(例えば血中の高フィブリノゲン又はプラスミノゲンアクチベーター阻害剤-1)、及び(6)前炎症状態(例えば血中C-反応性タンパク質上昇)。他のリスク因子には加齢、ホルモン不均衡及び遺伝性素因が含まれる。
【0117】
代謝症候群は、環状動脈性心臓疾患及び血管プラークの蓄積に関係する他の疾患(例えば、アテローム硬化症性心脈管系疾患(ASCVD)と称される脳血管系発作及び末梢血管性疾患)と密接に関係する。代謝症候群の患者は、その初期段階のインシュリン耐性状態からASCVDのリスクがさらに増した完全進行II型糖尿病に進み得る。いずれの特定の理論にも拘束されないが、インシュリン耐性、代謝症候群及び血管系疾患の間の関係は、1つ以上の同時病理発生メカニズム(インシュリン刺激血管拡張の障害、酸化性ストレスの増強によるNO利用性の、インシュリン耐性が密接に関係する低下、及び脂肪細胞由来ホルモン(例えばアジポネクチン)の異常を含む)を巻き込む可能性がある(Lteif and Mather, Can. J. Cardiol. 20 (suppl. B):66B-76B, 2004)。
2001年の米国成人治療コレステロール教育プログラム会議(National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel(ATP III))にしたがえば、同一個体で以下の特徴のいずれか3つを有すれば代謝症候群に適合する:(a)異常な肥満(胴周りが男性で102cmを超え女性で88cmを超える);(b)血清トリグリセリド(150mg/dL以上);(c)HDLコレステロール(男性で40mg/dL以下、女性で50mg/dL以下);(d)血圧(130/85以上);及び(e)飢餓時血中グルコース(110mg/dL以上)。世界保健機関(WHO)にしたがえば、以下の基準の少なくとも2つを有する高インシュリンレベル(飢餓時血中グルコース上昇又は食後グルコースのみ上昇)を示す個体は代謝症候群の基準を満たす:(a)異常な肥満(ウェスト対ヒップ比が0.9を超える、体容積指数が少なくとも30kg/m2、又はウェスト測定値が37インチを超える);(b)コレステロールパネルが、少なくとも150mg/dLのトリグリセリドレベル、又は35mg/dL未満のHDLコレステロールを示す;(c)血圧が140/90以上又は高血圧治療中(Mathur, Ruchi, “Metabolic Syndrome,” ed. Shiel, Jr., William C., MedicineNet.com, May 11, 2009)。
【0118】
本明細書の目的のためには、個体が、2001年の米国成人治療コレステロール教育プログラム会議又はWHOが示す基準の一方又は両方の基準を満たす場合、当該個体は代謝症候群に罹患しているとみなす。
いずれの特定の理論にも拘束されないが、本明細書に記載したペプチドは代謝症候群の治療に有用である。したがって、本発明は、患者で代謝症候群を予防若しくは治療するか、又はそのリスク因子の1つ、2つ、3つ又は4つ以上を減少させる方法を提供し、前記方法は、当該対象者に本明細書記載のアナローグを、代謝症候群を予防若しくは治療するか又はそのリスク因子を減少させるために有効な量で提供する工程を含む。
いくつかの実施態様では、前記方法は高血糖症状を治療する。ある種の特徴では、高血糖症状は、糖尿病、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、妊娠期糖尿病(インシュリン依存性又はインシュリン非依存性)である。いくつかの特徴では、前記方法は、1つ以上の糖尿病合併症(腎障害、網膜障害及び血管疾患を含む)を減少させることによって高血糖症状を治療する。
いくつかの特徴では、前記疾患又は症状は肥満である。いくつかの特徴では、肥満は薬剤誘発肥満である。いくつかの特徴では、前記方法は、患者で体重増加を予防するか、又は体重減少を増進することによって肥満を治療する。いくつかの特徴では、前記方法は、食欲を減退させ、食物摂取を減少させ、患者の脂肪レベルを低下させ、或いは胃腸管系の食物移動速度を低下させることによって肥満を治療する。
【0119】
肥満は他の疾患の開始又は進行と密接に関係するので、肥満を治療する方法は、肥満関連合併症(血管系疾患(冠状動脈疾患、脳血管系発作、末梢血管系疾患、虚血再灌流など)、高血圧、II型糖尿病の開始、高脂血症及び骨格筋疾患を含む)を治療する方法でさらに有用である。したがって、本発明は、肥満関連合併症を治療又は予防する方法を提供する。
いくつかの実施態様では、前記疾患又は症状は、非アルコール性脂肪肝症(NAFLD)である。NAFLDは、単純脂肪肝(脂肪症)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変(肝臓の不可逆的な進行性瘢痕形成)に及ぶ幅広い肝臓疾患を指す。NAFLDの病期の全てが共通して肝臓細胞(肝細胞)内に脂肪の蓄積(脂肪浸潤)を示す。単純脂肪肝とは、炎症又は瘢痕形成を伴わない、ある種のタイプの脂肪、トリグリセリドの肝臓細胞における異常な蓄積である。NASHでは、脂肪蓄積は、肝臓の種々の程度の炎症(肝炎)及び瘢痕形成(線維症)を伴う。炎症細胞は肝臓細胞を破壊することができる(肝細胞壊死)。“脂肪性肝炎”及び“脂肪性壊死”という用語では、脂肪性は脂肪浸潤を指し、肝炎は肝における炎症を指し、壊死は破壊された肝臓細胞を指す。NASHは、最終的に肝臓の瘢痕形成(線維症)、続いて不可逆的な進行した瘢痕形成(肝硬変)をもたらす。NASHによって引き起こされる肝硬変は、NAFLDの病期の最後でもっとも重篤な段階である(Mendler, Michel, “Fatty Liver: Nonalcoholic Fatty Liver Disease (NAFLD) and Nonalcoholic Steatohepatitis (NASH),” ed. Schoenfield, Leslie J., MedicineNet.com, August 29, 2005)。
【0120】
アルコール性肝疾患又はアルコール誘発肝疾患は、過剰なアルコール消費に関連する又は前記によって引き起こされる以下の3つの病理学的に別個の肝臓疾患を包含する:脂肪肝(脂肪症)、慢性若しくは急性肝炎、及び肝硬変。アルコール性肝炎は、軽度の肝炎(極端な検査室試験のみが疾患を示すことができる)から重篤な肝機能障害(合併症(例えば黄疸(ビリルビン保持によって生じる黄色皮膚)、肝性脳障害(肝不全によって生じる神経学的機能不全)、腹水(腹部の液体貯留)、食道静脈瘤(食道の静脈怒張)出血、異常な血液凝固及び昏睡)を伴う)まで範囲を有し得る。組織学的には、アルコール性肝炎は、肝細胞の腫脹変性を示す特徴的な外観、好中球を伴う炎症及びときにマロリー小体(細胞性中間物質フィラメントタンパク質の異常な凝集)を有する。肝硬変は、解剖学的には肝臓に広く拡散する線維症と一緒になった結節を特徴とする(Worman, Howard J., “Alcoholic Liver Disease”, Columbia University Medical Center website)。
いずれの特定の理論に拘束されないが、本明細書に記載のアナローグはアルコール性肝疾患、NAFLD又はその任意の病期の治療に有用である。前記病期には例えば脂肪症、脂肪性肝炎、肝炎、肝臓炎症、NASH、肝硬変又はその合併症が含まれる。したがって、本発明は、患者でアルコール性肝疾患、NAFLD又はその任意の病期を予防又は治療する方法を提供し、前記方法は、対象者に本明細書記載のアナローグを、アルコール性肝疾患、NAFLD又はその任意の病期を予防又は治療するために有効な量で提供する工程を含む。そのような治療方法は以下の1つ、2つ、3つ又は4つ以上の低下を含む:肝臓脂肪含有量、肝硬変発症または進行、肝臓細胞癌の発生、炎症の徴候(例えば異常な肝臓酵素レベル、例えばアスパルテートアミノトランスフェラーゼAST及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼALT又はLDH)、血清フェリチンの上昇、血清ビリルビンの上昇、及び/又は線維症の徴候(例えばTGF-ベータレベルの上昇)。好ましい実施態様では、当該ペプチドは、単純脂肪肝(脂肪症)よりも進行している炎症又は肝炎の徴候を示す患者の治療に用いられる。そのような方法は、例えばAST及び/又はALTレベルの低下をもたらすことができる。
【0121】
GLP-1及びエクセンジン-4はいくつかの神経保護作用を有することが示された。本発明はまた、神経変性疾患における本明細書記載のグルカゴンアナローグの使用を提供する。前記神経変性疾患には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、他の脱髄関連疾患、老年痴呆、皮質下痴呆、動脈硬化性痴呆、エイズ関連痴呆又は他の痴呆、中枢神経系の癌、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳血管発作又は大脳虚血、大脳血管炎、てんかん、ハンチントン病、ツレット症候群、ギャン-バレー症候群、ウィルソン病、ピック病、神経炎症性疾患、脳炎、ウイルス、真菌又は細菌起源の脳脊髄炎又は髄膜炎、又は他の中枢神経系感染症、プリオン病、小脳性運動失調、小脳変性、脳脊髄変性症候群、フリートライヒ運動失調、毛細血管拡張性運動失調、脊髄筋栄養障害、核上麻痺、ジストニー、筋痙攣、振せん、色素性網膜炎、線条体黒質変性、脳筋障害、神経セロイドリポフスチン沈着症、肝性脳障害、腎性脳障害、代謝性脳障害、毒素誘発脳障害、及び放射能誘発脳損傷。
いくつかの実施態様では、当該疾患又は症状は低血糖症である。いくつかの実施態様では、患者は糖尿病患者であり、低血糖症はインシュリン投与によって誘発される。具体的な特徴では、本方法は、本開示のアナローグをインシュリンと一緒に提供する工程を含み、したがって当該アナローグがインシュリンのボーラス投与の低血糖作用に干渉できる。
【0122】
いくつかの実施態様では、当該グルカゴンアナローグは、病院環境下の非糖尿病患者(例えば非経口的栄養補給又は完全非経口栄養補給を受けている患者)への非経口的栄養物投与と組み合わせて用いられる。非限定的な例には、外科手術患者、昏睡患者、消化管疾患又は胃腸管機能喪失を有する患者(例えば以下に起因する:外科的除去、閉塞又は吸収能力障害、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃腸管閉塞、胃腸管フィステル、急性膵炎、腸虚血、胃腸管大手術、ある種の先天性胃腸管奇形、長期下痢、又は外科手術に起因する小腸症候群)、ショック下患者が含まれ、治癒過程にある患者は、しばしば脂質、電解質、鉱物、ビタミン及びアミノ酸の多様な組み合わせとともに炭水化物の非経口的投与を受ける。当該グルカゴンアナローグ及び非経口的栄養組成物は、同時に、異なる時点で、それぞれの前又は後で投与され得るが、ただし当該グルカゴンアナローグは、非経口栄養組成物が消化される時点で所望の生物学的作用を表していることを条件とする。例えば、非経口栄養物は1日1、2又は3回投与できるが、グルカゴンアナローグは、1日おき、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は1ヶ月に1回投与される。
【0123】
本明細書で用いられるように、“治療”及び“予防”という用語は、それらに由来する語と同様に100%又は完全な治療若しくは予防を必ずしも意図しない。正確に言えば、当業者が潜在的利益又は治療効果と認識する種々の程度の治療又は予防が存在する。これに関しては、本方法は、哺乳動物の疾患又は症状の治療又は予防の任意の量又は任意のレベルを提供できる。さらにまた、本方法によって提供される当該治療又は予防は、当該疾患又は症状の1つ以上の症状又は徴候の治療又は予防を含むことができる。例えば、肥満を治療する方法に関して、本方法は、いくつかの実施態様で食物摂取の低下又は患者の脂肪レベルの低下を達成する。さらにまた本明細書の目的のためには、“予防”は当該疾患又はその症候群若しくは症状の開始を遅らせることを含むことができる。
上記治療方法に関して、当該患者は任意の宿主である。いくつかの実施態様では、当該宿主は哺乳動物である。本明細書で用いられるように、“哺乳動物”という用語は、哺乳動物クラスの任意の脊椎動物を指し、単孔類動物、有袋類動物及び胎盤動物分類群のいずれかを含むが、ただしこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、当該哺乳動物は、ネズミ目の哺乳動物の1つ(例えばマウス及びハムスター)及びウサギ目の哺乳動物の1つ(例えばウサギ)である。ある種の実施態様では、当該哺乳動物は、ネコ目(ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む)に由来する。ある種の実施態様では、当該哺乳動物は、ウシ目(ウシ科(乳牛)及びブタ科(ブタ)を含む)又はウマ目(ウマ科(ウマ)を含む)由来である。いくつかの事例では、当該哺乳動物は、サル目、セボイド又はシモイド(サル)又はアンスロポイド目(ヒト及び類人猿)由来である。具体的な実施態様では、当該哺乳動物はヒトである。
【0124】
キット:
ある実施態様にしたがえば、本開示のグルカゴンアナローグはキットの部分として提供できる。したがって、いくつかの実施態様では、グルカゴンアナローグ(例えばグルカゴンアゴニストペプチド)をその必要がある患者に投与するキットが提供され、ここで前記キットは本明細書に記載のグルカゴンアナローグを含む。
ある実施態様では、当該キットは、当該グルカゴン組成物を患者に投与するための装置(例えば注射筒の針、ペン型装置、ジェットインジェクター又は他の無針インジェクター)とともに提供される。当該キットは、また別に或いは追加として1つ以上の容器、例えばバイアル、チューブ、ビン、単若しくは多チャンバー付きの予め充填された注射筒、カートリッジ、輸液ポンプ(外付け又は埋め込み可能)、ジェットインジェクター、予め充填されたペン型装置などを含むことができ、場合によって凍結乾燥型又は水溶液のグルカゴンアナローグを含む。いくつかの実施態様のキットは使用のための指示を含む。ある実施態様にしたがえば、当該キットの装置はエーロゾルディスペンス装置であり、ここで組成物はエーロゾル装置に予め充填されている。別の実施態様では、当該キットは注射筒及び針を含み、ある実施態様では、無菌的グルカゴン組成物が当該注射筒に予め充填される。
以下の実施例は単に本発明を例示するために提供され、いかなる態様においても本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0125】
グルカゴンのペプチドフラグメントの合成
材料:
実施例で本明細書に記載する全てのペプチドが、特段の指定がない限りアミド化された。
ペプチド合成を通してMBHA樹脂(4-メチルベンゾヒドリルアミンポリスチレン樹脂)を用いた。MBHA樹脂、100−180メッシュ、1%DVB架橋ポリスチレン(0.7−1.0mmol/gのローディング)、Boc-保護及びFmoc保護アミノ酸はミッドウェストバイオテク(Midwest Biotech)から購入した。Boc保護アミノ酸を用いる固相ペプチド合成はアプライドバイオシステム(Applied Biosystem)430Aペプチド合成装置で実施した。Fmoc保護アミノ酸合成はアプライドバイオシステムズモデル433ペプチド合成装置を用いて実施した。
【0126】
ペプチド合成(Bocアミノ酸/HF切断):
これらのアナローグの合成はアプライドバイオシステムモデル430Aペプチド合成装置で実施した。合成ペプチドは、2mmolのBoc保護アミノ酸を含むカートリッジにアミノ酸を連続添加することによって構築した。具体的には、合成はBoc DEPBT活性化シングルカップリングを用いて実施した。カップリング工程の終了時に、ペプチジル樹脂をTFAで処理し、N-末端Boc保護基を除去した。前記をDMFで繰り返し洗浄し、この反復サイクルを所望数のカップリング工程について繰り返した。アッセンブリーの後、側鎖保護、Fmocを20%ピペリジン処理で除去し、DICを用いてアシル化を実施した。全ての合成の終了時にDCMを用いてペプチジル樹脂を乾燥させ、さらに無水HFを用いてペプチドを樹脂から切断した。
ラクタム化のためには、直交保護基をGlu及びLys(例えばGlu(Fm)、Lys(Fmoc))、Lys(Fmoc)のために選択した。保護基の除去後及びHF切断前に、以前に記載したように環化を実施した(例えば国際特許出願公開WO2008/101017を参照されたい)。
【0127】
ペプチジル樹脂のHF処理:
ペプチジル樹脂を無水HFで処理し、これによって典型的には約350mgの脱保護粗ペプチドが得られた(約50%の収量)。具体的には、切断のためにペプチジル樹脂(30mgから200mg)をフッ化水素(HF)反応容器に入れた。500μLのp-クレゾールをカルボニウムイオンスカベンジャーとして前記反応容器に添加した。前記容器をHF系に結合させ、メタノール/ドライアイス混合物に沈めた。前記容器を真空ポンプで空にし10mLのHF反応容器へ蒸留させた。ペプチジル樹脂とHFの反応混合物を0℃で1時間攪拌し、その後真空を達成しHFを迅速に(10−15分)追い出した。前記容器を注意深く取り出し、約35mLのエーテルを充填してペプチドを沈殿させ、さらにp-クレゾール及びHF処理から生じた小分子の有機保護基を抽出した。テフロンフィルターを用いて前記混合物をろ過し、2回繰り返して全ての過剰クレゾールを除去した。前記ろ液を廃棄した。沈殿ペプチドを約20mLの10%酢酸(aq)に溶解させた。このろ液(所望のペプチドを含んでいた)を収集し、凍結乾燥させた。
溶解させた粗ペプチドの分析用HPLCによる分析を以下の条件下で実施した:4.6x30 mm Xterra C8、1.50 mL/分、220 nm、A緩衝液0.1%TFA/10%ACN、B緩衝液0.1%TFA/100%ACN、15分かけて5−95%のBのグラジエント。抽出物を水で2倍に稀釈し、2.2x25cm Vydac C4調製用逆相カラムにロードし、アセトニトリルグラジエントを用いて水HPLC系(A緩衝液0.1%TFA/10%ACN、B緩衝液0.1%TFA/100%CAN、120分かけて0−100%のBのグラジエント)で溶出させた。精製ペプチドのHPLC分析は、95%を超える純度を示し、エレクトロスプレー質量分析を用いて当該ペプチドの実体を確認した。
【0128】
ペプチドのアシル化:
以下のようにアシル化ペプチドを調製した。ペプチドは、CS Bio4886ペプチド合成装置又はアプライドバイオシステムズ430Aペプチド合成装置のどちらかを用いて固相樹脂上で合成した。文献(Schnolzer et al., Int. J. Peptide Protein Res. 40: 180-193, 1992)の記載にしたがってin situ中和化学を用いた。アシル化ペプチドのためには、アシル化されるべき標的アミノ酸残基(例えば配列番号:3のアミノ酸の位置番号に対して10位)をNε-FMOCリジン残基で置換した。完成N-末端BOC保護ペプチドのDMF中の20%ピペリジンによる30分間の処理はFMOC/ホルミル基を除去した。遊離ε-アミノLys残基へのカップリングは、FMOC-保護スペーサーアミノ酸(ex. FMOC-Glu-OtBu)又はアシル鎖(ex. CH3(CH2)14-COOH)のどちらかの10倍モル過剰、及びDMF/DIEA中のPyBOP又はDEPBTカップリング試薬をカップリングすることによって達成した。前記に続くスペーサーアミノ酸のFMOC基の除去の後でアシル鎖によるカップリングが反復される。100%TFAによる最終的処理は一切の側鎖保護基及びN-末端BOC基の除去をもたらした。ペプチド樹脂を5%DIEA/DMFで中和し、乾燥させ、続いてHF/p-クレゾール(95:5)を0℃で1時間用いて支持体から切断させた。エーテル抽出に続いて、5%HOAc溶液を用いて粗ペプチドの溶媒和物を生成した。続いてESI-MSによって、溶液のサンプルが正確な分子量ペプチドを含むことを立証した。10%CH3CN/0.1%TFAから100%のCH3CN中の0.1%TFAの直線的グラジエントを用いて、正確なペプチドをRP-HPLCで精製した。精製にはVydac C18 22mmx250mmタンパク質カラムを用いた。アシル化ペプチドアナローグは概ね20:80の緩衝液比によって溶出が完了した。複数の部分を一緒にプールし、分析用HPLCで純度をチェックした。純粋な分画を凍結乾燥させ、白色固体ペプチドを得た。
ペプチドがラクタム架橋及びアシル化されるべき標的残基を含む場合、アシル化はペプチド骨格への当該アミノ酸の付加時に上記のように実施される。
【0129】
ペプチドのPEG付加:
ペプチドのPEG付加のために、40kDaのメトキシポリ(エチレングリコール)ヨードアセトアミド(NOF)を等モル濃度のペプチドと7M尿素、50mMトリス-HCl緩衝液中で反応させた。前記では、ペプチドとPEGの両方を清澄な溶液に溶解させるために必要な最小量の溶媒が用いられた(2−3mgのペプチドを用いる反応について概ね2mL未満)。室温で4−6時間激しく攪拌し、この反応を分析用RP-HPLCで分析した。PEG付加生成物は保持時間の短縮により出発物質とは別個であるように見えた。最初のペプチド精製に用いた条件と同様な条件を用いVydac C4カラムで精製を実施した。溶出は50:50の緩衝液比辺りで生じた。純粋なPEG付加ペプチドの分画を見つけ凍結乾燥した。収量は50%を超え、反応毎に変化した。
【0130】
質量分析を用いる分析:
標準的なESIイオン供給源をもつSciex API-IIIエレクトロスプレー四極質量分析計を用いて質量スペクトルを得た。用いたイオン化条件は以下のとおりであった:陽イオンモードのESI;イオンスプレー電圧、3.9kV;オリフィス電位、60V。用いた霧状化及びカーテンガスは流速9L/分の窒素であった。質量スペクトルを、各工程及び2msecの持続時間につき0.5Thで600−1800Thompsonまで記録した。サンプル(約1mg/mL)を1%の酢酸を含む50%のアセトニトリル水に溶解し、5μL/分の速度で外部シリンジポンプによって導入した。
ペプチドをPBS溶液中でESI MSによって分析するときは、製造業者(Millipore Corporation, Billerica, MA、 millipore.com/catalogue.nsf/docs/C5737のミリポアウェブサイトを参照されたい)が提供する指示にしたがい、0.6μLのC4樹脂を含むZipTip固相抽出チップを用いてペプチドを脱塩した。
【0131】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析:
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びMALDI分析を用いて、これら粗ペプチドについて予備分析を実施し、リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液(pH7.2)におけるそれらの凡その相対的変換速度を得た。粗ペプチドサンプルを1mg/mLの濃度でPBS緩衝液に溶解した。得られた溶液の1mLを1.5mLのHPLCバイアルで保存し、続いて前記を封入し37℃でインキュベートした。100μLアリコットを種々の時間間隔で取り出し、室温に冷やしHPLCで分析した。
HPLC分析は、UV検出装置を用い214nmでベックマンシステム(Beckman System)ゴールドクロマトグラフィー系を用いて実施した。HPLC分析は150mmx4.6mmのC18 Vydacカラムで実施した。流速は1mL/分であった。溶媒Aは蒸留水中に0.1%のTFAを含み、溶媒Bは90%のCH3CN中に0.1%TFAを含んでいた。直線的グラジエントを用いた(15分かけて40%から70%B)。データを収集し、ピークシンプルクロマトグラフィーソフトを用いて分析した。
加水分解の初速を用いて対応するプロドラッグの解離の速度定数を測定した。プロドラッグ及び当該薬剤の濃度をそれぞれピーク面積から概算した。プロドラッグの第一次解離速度定数を、種々の時間間隔でのプロドラッグの濃度の対数をプロットすることによって決定した。このプロットの勾配が速度定数‘k’を提供する。続いて種々のプロドラッグの分解の半減期を式t1/2=.693/kを用いて計算した。
【実施例2】
【0132】
各ペプチドのcAMP誘発能力をホタルルシフェラーゼ系レポーターアッセイで測定した。誘発されるcAMP生成は、グルカゴンレセプター又はGLP-1レセプターと結合するグルカゴンフラグメントと正比例する。それぞれグルカゴンレセプター又はGLP-1レセプター及びcAMP応答成分連結ルシフェラーゼ遺伝子を同時トランスフェクトしたHEK293細胞を前記バイオアッセイに用いた。
0.25%のウシ増殖血清(Bovine Growth Serum; HyClone, Logan, UT)を補充したダルベッコー改変最少必須培養液(Dulbecco-modified Minimum Essential Medium; Invitrogen, Carlsbad, CA)で16時間培養することにより細胞を血清枯渇させ、続いてグルカゴンフラグメントの連続希釈とともに37℃で5時間、96ウェルのポリ-D-リジン被覆“バイオコート”プレート(BD Biosciences, San Jose, CA)にて5% CO2下でインキュベートした。このインキュベーションの終了時に、100μLのLucLiteルミネセンス基質試薬(Perkin Elmer, Wellesley, MA)を各ウェルに添加した。前記プレートを簡単に振り動かして暗所で10分インキュベートし、光生成をマイクロベータ(MicroBeta)-1450液体シンチレーションカウンター(Perkin-Elmer, Wellesley, MA)で測定した。有効50%濃度(EC50)をオリジン(Origin)ソフトウェア(OriginLab, Northampton, MA)によって計算した。
【実施例3】
【0133】
配列リストに記載したアミノ酸配列を有するペプチドを本質的に実施例1に記載したように作製し、続いてグルカゴンレセプター及びGLP-1レセプターの各々におけるin vitroアゴニスト活性について本質的に実施例2に記載したように試験した。いくつかの事例では、GIPレセプターにおけるin vitroアゴニスト活性もまた試験した。結果を下記の表1に示す。
【表1】



表1に示すように、全てのペプチドではないとしても多くのペプチドが、本来のグルカゴンと比較して活性の強化を示す。
【実施例4】
【0134】
食事性肥満(DIO)マウスを各グループにつき8匹のマウスにグループ分けし、各グループの初期平均体重を測定した。マウスの各グループにある用量のペプチド又はベヒクルコントロールを1週間毎日皮下注射した。配列番号:12−25、27−29及び31−34のペプチドをこの実験で試験した。投与用量は、各被検ペプチドについて1から10nmol/kgで変動した。この試験期間を通して体重、体組成、食物摂取、及び血中グルコースレベルを周期的に測定した。
血中グルコースレベルにおけるこれらペプチドの効果をより良好に測定するために、db/dbマウスによる第二の実験を実施した。この実験では、db/dbマウスを各グループにつき8匹のマウスにグループ分けし、各グループの初期平均体重を測定した。マウスの各グループに配列番号:12−25、27−29及び31−34から成る群から選択されるペプチドの1用量を皮下注射した(ここで前記用量は3から30nmol/kgの範囲内である)。この試験期間を通して体重、体組成、食物摂取、及び血中グルコースレベルを周期的に測定した。
【0135】
本明細書に引用した全ての参考文献(刊行物、特許出願、及び特許を含む)は、あたかもそれぞれの参考文献を参照により本明細書に含むことを個々に及び具体的に指定したかのように、さらにその全体を本明細書で説明したかのように、参照により本明細書に含まれる。
本発明の説明(特に特許請求の範囲)の中で、用語“a”及び“an”並びに“the”及び類似の表現は、本明細書において特段の指示がないかぎり或いは文脈と明らかに矛盾しないかぎり、単数及び複数の両方を含むと解されるべきである。“含む”及び“有する”(comprising, including, having, containing)という用語は、末端を含む用語と解されるべきである(すなわち、“〜を含むが、ただし〜に限定されない”ということを意味する)。
本明細書の数値範囲の列挙は、本明細書において特段の指示がないかぎり、当該範囲及びそれぞれの終末点内に含まれるそれぞれ別々の値を個々に示すための便法として単に利用しようとするもので、それぞれ別々の値及び終末点は、値が個々に本明細書に列挙されたかのように本明細書に含まれる。
本明細書に記載した全ての方法は、本明細書において特段の指示がないかぎり或いは文脈と明らかに矛盾しないかぎり、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提示される全ての例又は例示的な言葉(例えば“例えば”)の使用は、単に本発明をより丁寧に説明しようとするものであり、特段に請求しないかぎり本発明の範囲を制限しよう
とするものではない。本明細書中のいずれの言葉も、本発明の実施に必須であると申し立てられていない成分の一切を示していると解されるべきではない。
本発明の好ましい実施態様(本発明を実施するために本発明者らが知り得る最良の態様を含む)が本明細書に記載される。前述の記載を読み進むとき、当業者にはそれら好ましい実施態様の変型が明白となろう。本発明者らは、当業者がそのような変型を適切なものとして利用することを予想し、さらに本発明者らは、本明細書に具体的に記載したものとは別の態様で本発明が実施され得ると考える。したがって、本発明は、適用され得る法律によって容認される添付の特許請求の範囲に列挙した主題の改変物及び等価物の全てを含む。さらにまた、本明細書で特段に指定されないかぎり或いは文脈と明らかに矛盾しないかぎり、本発明の一切の可能な変型における上記記載の成分のいずれの組合せも本発明に包含される。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕配列番号:37のアミノ酸配列を含むペプチド。
〔2〕配列番号:13のアミノ酸配列を含むペプチド。
〔3〕配列番号:14のアミノ酸配列を含むペプチド。
〔4〕配列番号:47のアミノ酸配列を含むペプチド。
〔5〕配列番号:35のアミノ酸配列を含むペプチド。
〔6〕配列番号:13−16、19−25、27−29及び31−33から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
〔7〕配列番号:26及び30から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
〔8〕配列番号:35−37から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
〔9〕配列番号:38−49及び54から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、当該アナローグが、ヒトGLP-1レセプターに対してGIPレセプターに対するよりも少なくとも100倍の選択性を示し、さらに場合によって少なくとも1%のGLP-1潜在能力を示す、前記ペプチド。
〔10〕配列番号:50−52及び55から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、当該アナローグが、ヒトGLP-1レセプターに対してGIPレセプターに対するよりも少なくとも100倍の選択性を示し、さらに場合によって少なくとも1%のGLP-1潜在能力を示す、前記ペプチド。
〔11〕前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のペプチドのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含む変種ペプチドであって、当該変種ペプチドが、本来のグルカゴンと比較してGLP-1レセプターで増強した活性を示し、さらにヒトGLP-1レセプターに対してGIPレセプターに対するよりも少なくとも100倍の選択性を示す、前記変種ペプチド。
〔12〕前記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載のペプチドのアミノ酸配列をベースとするアミノ酸配列を含むが、以下の態様の1つ以上で相違する変種ペプチド:
a.変種ペプチドはアシル化アミノ酸又はアルキル化アミノ酸を含む;
b.アシル化アミノ酸又はアルキル化アミノ酸は本来のグルカゴン(配列番号:1)の当該位置の対応するアミノ酸又は本来のアミノ酸の保存的置換で置き換えられ、さらに場合によって新規なアシル化又はアルキル化アミノ酸が異なる位置に導入される;
c.変種ペプチドは親水性部分と共有結合したアミノ酸を含む;
d.親水性部分と共有結合したアミノ酸は本来のグルカゴン(配列番号:1)の当該位置の対応するアミノ酸で置き換えられ、さらに場合によって親水性部分と共有結合した新規なアミノ酸が異なる位置に導入される;
e.変種ペプチドのC-末端アミノ酸は、C-末端アルファカルボキシレートの代わりにC-末端アミドを含む。
f.1位〜29位のいずれかのアミノ酸が、本来のグルカゴン(配列番号:1)の当該位置の対応するアミノ酸で置き換えられる;
g.又は前記の任意の組合せ。
〔13〕16、17、21、24、29位、C-末端伸長内の位置、又はC-末端のアミノ酸と共有結合した親水性部分を含む、前記〔12〕に記載の変種ペプチド。
〔14〕Cys、Lys、Orn、ホモシステイン及びAc-Pheから成る群から選択されるアミノ酸と共有結合した親水性部分を含む、前記〔12〕又は〔13〕に記載の変種ペプチド。
〔15〕親水性部分が、ポリエチレングリコール、場合によって10kDa〜40kDaの間の分子量のPEGである、前記〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載の変種ペプチド。
〔16〕10位にアシル化又はアルキル化アミノ酸を含む、前記〔12〕〜〔15〕のいずれかに記載の変種ペプチド。
〔17〕C8〜C20のアルキル鎖、C12〜C18のアルキル鎖、又はC14若しくはC16のアルキル鎖を含むアシル化又はアルキル化アミノ酸を含む、前記〔12〕〜〔16〕のいずれかに記載の変種ペプチド。
〔18〕式I、式II又は式IIIのアシル化又はアルキル化アミノ酸であるアシル化又はアルキル化アミノ酸を含み、場合によって式Iのアミノ酸がLysである、前記〔12〕〜〔17〕のいずれかに記載の変種ペプチド。
〔19〕アシル化又はアルキル化アミノ酸を含む、前記〔12〕〜〔18〕のいずれかに記載の変種ペプチドであって、アシル基又はアルキル基がスペーサーを介してアミノ酸と共有結合し、場合によってスペーサーがアミノ酸又はジペプチドである、変種ペプチド。
〔20〕スペーサーが1つ又は2つの酸性残基を含む、前記〔19〕に記載の変種ペプチド。
〔21〕(グルカゴンレセプターにおけるEC50)/(GLP-1レセプターにおけるEC50)が約20以下である、前記〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載のペプチド又は変種ペプチド。
〔22〕(グルカゴンレセプターにおけるEC50)/(GLP-1レセプターにおけるEC50)が20より大きい、前記〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載のペプチド又は変種ペプチド。
〔23〕グルカゴンレセプターにおけるEC50よりも2〜10倍大きいGLP-1レセプターにおけるEC50を示す、前記〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載のペプチド又は変種ペプチド。
〔24〕異種部分とコンジュゲートされた、前記〔1〕〜〔23〕のいずれかに記載のペプチド又は変種ペプチドを含むコンジュゲート。
〔25〕異種部分が、ペプチド、ポリペプチド、核酸分子、抗体若しくはそのフラグメント、ポリマー、クォンタムドット、小分子、毒素、診断薬の1つ以上を含む、前記〔24〕に記載のコンジュゲート。
〔26〕異種部分がペプチドであり、コンジュゲートが融合ペプチド又はキメラペプチドである、前記〔25〕に記載のコンジュゲート。
〔27〕C-末端から29位のアミノ酸に1−21アミノ酸の伸長又はペプチド若しくはペプチド変種を含む、前記〔26〕に記載のコンジュゲート。
〔28〕伸長が、Gly、Glu、Cys、Gly-Gly、Gly-Glu、GPSSGAPPPS(配列番号:9)又はGGPSSGAPPPS(配列番号:10)から成る群から選択される、前記〔26〕に記載のコンジュゲート。
〔29〕前記〔1〕〜〔28〕のいずれかに記載のペプチド又は変種ペプチドを含むダイマー又はマルチマー。
〔30〕前記〔1〕〜〔29〕のいずれかに記載のペプチド又は変種ペプチド、前記〔24〕〜〔28〕に記載のコンジュゲート、前記〔29〕に記載のダイマー若しくはマルチマー、又は前記の組合せ、及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物。
〔31〕患者における疾患又は症状を治療する方法であって、当該疾患又は症状が、代謝性症候群、糖尿病、肥満、肝脂肪症、及び神経変性疾患からなる群から選択され、当該方法が、前記〔30〕に記載の医薬組成物を当該疾患又は症状の治療に有効な量で当該患者に投与する工程を含む、前記方法。
図1
【配列表】
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