特許第6184414号(P6184414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184414シリンガレシノールを含む血管老化抑制用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184414
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】シリンガレシノールを含む血管老化抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/34 20060101AFI20170814BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20170814BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61K31/34
   A61P9/00
   A61P9/10
   A61P9/10 101
   A23L33/105
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-538710(P2014-538710)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2015-501318(P2015-501318A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】KR2012008815
(87)【国際公開番号】WO2013062332
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0110486
(32)【優先日】2011年10月27日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】株式会社アモーレパシフィック
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ, シ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チャン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, デ バン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ワン ギ
(72)【発明者】
【氏名】イ, サン ジュン
【審査官】 茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−528108(JP,A)
【文献】 特開2009−263359(JP,A)
【文献】 特公平05−060811(JP,B2)
【文献】 国際公開第2010/062122(WO,A1)
【文献】 特開平08−268887(JP,A)
【文献】 特表2014−534966(JP,A)
【文献】 J. Agric. Food Chem.,2007年,Vol. 55,pp. 1337-1346
【文献】 Natural Medicines,2002年,Vol. 56 No. 6,pp. 227-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 36/00−36/05;36/07−36/9068
A23L 5/40− 5/49
A23L 33/00−33/29
A61P 9/00
A61P 9/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンガレシノールまたは薬学的に許容し得るその塩を有効成分として含む組成物であって
前記有効成分は、前記組成物の全重量に対して1重量%〜80重量%のシリンガレシノールを含み、
前記有効成分は、心血管疾患を予防または改善し、
前記心血管疾患が、老化した血管細胞における、Sirtuin 1(SIRT 1)の発現抑制、endothelial nitric oxide synthase(eNOS)の発現抑制、またはplasminogen activator inhibitor−1(PAI−1)の過剰発現に起因するものである血管老化抑制用組成物。
【請求項2】
前記心血管疾患は、脳梗塞、脳出血、虚血性心疾患、心筋梗塞、及び動脈硬化からなる群より選ばれた一つ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は食品組成物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は薬学組成物である、請求項1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式1で示される化合物、その誘導体または薬学的に許容し得るその塩を有効成分として含む血管老化抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮細胞は内皮細胞由来の酸化窒素(nitric oxide、NO)とプロスタノイド(prostanoid)を遊離し、血管活性に係るホルモンを活性化あるいは分解して血管平滑筋の機能を調節することで血管を収縮及び/または弛緩させることができる。
【0003】
血管内皮細胞のテロメラーゼ(telomerase)活性は老化が進むにつれて減少する。また、老化した血管内皮細胞ではNOの生成、eNOS(endothelial nitric oxide synthase)の発現、及びプロスタシクリン(prostacyclin)の生成が減少して格段に低い血管の収縮力を示し、PAI−1(type I plasminogen activator)の発現が増加することで血栓の生成が促進し、Inter−Cellular Adhesion Molecule 1(ICAM−1)、インターロイキン−1、インターロイキン−8のような細胞付着タンパク質及びケモカインの発現が増加し炎症反応が増加することに伴い、血管が細くなるようになる。実際のところ、動脈硬化病変組織の血管内皮細胞は、正常組織の細胞に比べて細胞老化のマーカーとして知られているSA−β−Gal(senescence−associated beta−galactosidase)活性が増加していることが知られている。また、動脈硬化病変組織の細胞は、正常組織の細胞よりもテロメアの短縮程度が高い。
【0004】
したがって、血管内皮細胞の老化を抑制、遅延させると、それによる心血管疾患を予防、治療することができることが考えられる。これまでのところ、血管老化を遅延させる方法として周知されているものは、カロリーの制限が挙げられる。しかし、これは実際の適用が容易ではなく、日常生活に不便を生じさせるという点において他の代案が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、血管細胞のSIRT 1発現を増加させ且つテロメラーゼを活性化させることで優れた血管老化抑制効果を有し、また、心血管疾患の予防または改善に優れている効果を有する組成物を提供することをその目的とする。また、本発明は、優れた血管老化抑制効果を有する食品及び薬学組成物を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、一般式1で示される化合物、その誘導体または薬学的に許容し得るその塩を有効成分として含む血管老化抑制用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る組成物は、一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールを有効成分として含むことで、血管細胞のSIRT 1発現を促進し、且つテロメラーゼを活性化させ、血管の収縮/弛緩が滑らかに行われるようにすることで血管老化を抑制することができ、特に心血管疾患を予防または改善するうえで優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】高麗人参の実の抽出物からシリンガレシノールを分離及び精製する方法を示す概路図である。
図2】シリンガレシノールを処理した老化した血管細胞においてSIRT 1遺伝子の発現が増加することを示すグラフである。
図3】シリンガレシノールを処理した老化した血管細胞における老化マーカーの程度を示す写真である。
図4】シリンガレシノールを処理した老化した血管細胞における老化マーカーの量を示すグラフである。
図5】シリンガレシノールを処理した老化した血管細胞におけるテロメラーゼの活性程度を示すグラフである。
図6】シリンガレシノールを処理した老化した血管細胞におけるeNOSとPAI−1の発現程度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「抽出物」とは、抽出方法、抽出溶媒、抽出された成分または抽出物の形態を問わず、天然物の成分を抽出して得られた物質をいずれも含む広義の概念である。
【0010】
本明細書において「誘導体」とは、化合物の置換可能な位置で他の置換基に変更されるすべての化合物を意味する。該置換基の種類には制限がなく、例えば、それぞれ独立してヒドロキシル、フェノキシ、チエニル、フリル、ピリジル、シクロヘキシル、アルキルアルコール、アルキルジアルコール、又は任意置換されたフェニルに置換されていてよいC1−10の非環状炭化水素基;ヒドロキシル、ヒドロキシルメチル、メチル、又はアミノに置換されていてよいC5−6の環状炭化水素基;又は糖残基を含んでいてよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。本明細書において「糖残基」という用語は、多糖類の分子から1個の水素原子の除去時の基を意味し、したがって、例えば単糖類又はオリゴ糖に由来の残基を意味するものであってよい。
【0011】
本明細書において「薬学的に許容し得る」とは、通常の医薬的服用量(medicinal dosage)にて用いる際に相当な毒性効果を避けることにより、動物、より具体的には、ヒトに用いていてよいという政府又はこれに準する規制機構の承認を受けることができるか若しくは承認を受けたか、又は薬局方に列挙されているか、その他一般的な処方として認知されることを意味する。
【0012】
本明細書において「薬学的に許容し得る塩」とは、薬学的に許容し得るものであり且つ親化合物(parent compound)の好適な薬理活性を有する本発明の一側面に係る塩を意味する。前記塩は、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等といった無機酸により形成されるか;または、酢酸、プロピオン酸、ヘキサエン酸、シクロペンテンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2,2,2]−oct−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸といった有機酸により形成される酸付加塩(acid addition salt);または、(2)親化合物に存在する酸性プロトンが置換される際に形成される塩を含んでいてよい。また、本明細書における化合物は、薬剤学的に許容し得る塩のみならず、通常の方法にて製造され得るあらゆる塩、水和物、溶媒和物をいずれも含むものであってよい。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
カロリーを制限する場合、血管内皮細胞においてSIRT 1の発現が増加することが知られている。SIRT 1(Sirtuin 1)は、NAD−依存的ヒストンタンパク質脱アセチル化酵素(NAD−dependent histone deacetylase)であって、エネルギー代謝、ホルモン信号伝達、ストレスに対する反応などの様々な過程を調節する。よって、血管細胞のSIRT 1発現を促進する物質を適用した場合、カロリーを制限する場合と同様、血管内皮細胞の老化を抑制することで動脈硬化を含む心血管疾患を予防及び治療することができることが考えられる。
【0015】
本発明の一側面は、下記の一般式1で示される化合物、その誘導体または薬学的に許容し得るその塩を有効成分として含む血管老化抑制用組成物であって、
【0016】
【化1】
【0017】
前記R、R、R、又はRは、独立して直鎖状若しくは分岐鎖状のC〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基、C〜C18のアルケニル基、C〜C18のアルキニル基、又はC〜Cの環状アルキル基を表し、
前記R、R、R、R、R、R10、又はR11は、独立して水素または直鎖状若しくは分岐鎖状のC〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基、C1〜18のアルケニル基、C〜C18のアルキニル基、C〜Cの環状アルキル基を表す。
【0018】
本発明の一側面に係る血管老化抑制用組成物において、前記化合物はシリンガレシノールであってよい。
【0019】
本明細書において「シリンガレシノール(syringaresinol)」とは、一般式2で示すような化学構造を有するリグナン系化合物であって、化学合成を通じて得るか、または亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実のうちの一種以上から抽出することができる。前記亜麻仁、黄白、五加皮、及び胡麻は、各植物の葉、幹、根、実、または種を例に挙げられる植物の各部位をいずれも含み、高麗人参の実は、高麗人参の実の果皮または果肉を含む。
【0020】
【化2】
【0021】
本明細書において前記「シリンガレシノール」は、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実のうちの一種以上を、水、有機溶媒、及び水と有機溶媒との混合物からなる群より選ばれた一つ以上で抽出して収得していてよい。前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、エーテル、エチルアセテート、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、及びクロロホルムからなる群より選ばれた一種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。前記アルコールは、C〜Cの低級アルコールを含み、C〜Cの低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、及びイソブタノールからなる群より選ばれた一種以上を含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0022】
本発明の一側面において、シリンガレシノールを高麗人参の実から分離及び精製する方法は、次のような段階を含んでいてよい。高麗人参の実の果肉のアルコール抽出物を製造する段階;製造したアルコール抽出物を水とアルコールのうちの一種以上を含む溶媒で溶出させて分画を収得する段階;及び収得した分画に対して有機溶媒を展開溶媒としてクロマトグラフィー、具体的には薄膜クロマトグラフィー(TLC)を行う段階。前記有機溶媒は、アルコール、アセトン、エーテル、エチルアセテート、ジエチルエーテル、エチルメチルケトン、及びクロロホルムからなる群より選ばれた一種以上を含み、アルコールは、C〜Cのアルコールを含む。本発明の一側面に係る組成物は、前記のようにして精製されたシリンガレシノールを有効成分として含んでいてよい。
【0023】
一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、血管内皮細胞においてSIRT 1の発現及びテロメラーゼの活性を促進し、老化マーカーであるSA−β−Galの活性を減少させることで、血管細胞の老化を抑制することができる。一方、老化した細胞では、eNOSの発現が減少してNOの生成が低減することによって血管の収縮/弛緩が滑らかになされず、またPAI−1の発現が増加して血栓の生成が促進する。一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールは、老化した血管細胞においてeNOSの発現は増加させるがPAI−1の発現は低減させることで血管細胞の老化を抑制し、且つ血管細胞の機能を正常化させることができる。この結果、一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールを有効成分として含む組成物は、血管老化を抑制することができる。
【0024】
心血管疾患は、血管が詰まりまたは破れて組織に血液供給の障害を誘発する疾患であって、脳梗塞、脳出血、虚血性心疾患、心筋梗塞、動脈硬化などを代表的な例に挙げられる。このような心血管疾患は、年を取るにつれて血管を構成する内皮細胞が老化し、その過程で機能異常が蓄積して発生するとされている。本発明に係る組成物は、シリンガレシノールを有効成分として含み、血管老化を抑制する効果に優れているので、心血管疾患、特に老化性心血管疾患を予防または改善するうえで優れた効果を奏する。
【0025】
本発明の他の一側面において、シリンガレシノールは、亜麻仁、黄白、五加皮、胡麻、及び高麗人参の実の抽出物として組成物に含まれていてよく、好ましくは、血管老化の抑制に特に効果的な分画にて含まれていてよい。
【0026】
本発明の一側面に係る組成物は、組成物の全重量に対して1重量%〜80重量%、具体的には、5重量%〜60重量%、より具体的には、10重量%〜30重量%のシリンガレシノールを含んでいてよい。前記範囲で含む場合、本発明の意図した効果を示す上で好適であるだけでなく、組成物の安定性や安全性をいずれも満足することができ、且つ、コスト対効果の面でも前記範囲で用いることが好適である。具体的に、シリンガレシノールが1重量%未満の場合は十分な血管老化抑制を得ることができず、また、80重量%を超える場合は安全性や剤形安定性が劣化するおそれがある。
【0027】
本発明の一側面は、シリンガレシノールを有効成分として含む食品組成物を提供する。前記食品組成物は、血管老化を抑制することができ、さらには、脳梗塞、脳出血、虚血性心疾患、心筋梗塞または動脈硬化のような心血管疾患を予防または改善することができる。本発明の他の一側面に係る食品組成物は、嗜好食品または健康食品組成物を含む。
【0028】
前記食品組成物の剤形は、特に限定されないが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉末剤、ドリンク剤のような液剤、キャラメル、ゲル、バーなどに剤形化することができる。各剤形の食品組成物は、有効成分の他に当該分野において通常に用いられる成分を剤形または使用目的に応じて当業者が難なく適宜選定して配合することができ、他の原料と同時に適用する場合、相乗効果が生じることがある。
【0029】
前記有効成分の投与量の決定は当業者の水準内にあり、その1日投与用量は、例えば、0.1mg/kg/日〜5000mg/kg/日、より具体的には、50mg/kg/日〜500mg/kg/日であってよいが、必ずしもこれに制限されるのではなく、投与しようとする対象の年齢、健康状態、合併症などといった様々な要因によって変わり得る。
【0030】
本発明の一側面は、シリンガレシノールを有効成分として含む薬学組成物を提供する。前記薬学組成物は、血管老化を抑制及び防止することができ、特に脳梗塞、脳出血、虚血性心疾患、心筋梗塞、または動脈硬化のような心血管疾患を予防または治療することができる。
【0031】
本発明の一側面に係る薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などに投与されていてよい。
【0032】
経口投与のための剤形としては、錠剤、丸剤、軟質及び硬質カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、液剤、乳濁剤またはペレット剤であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらの剤形は、有効成分の他に希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースまたはグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸、またはポリエチレングリコール)、または結合剤(例:マグネシウムアルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカンス、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリジン)を含有してよい。場合に応じて、崩解剤、吸収剤、着色剤、香味剤、または甘味剤などの薬剤学的添加剤を含有してよい。前記錠剤は、通常的な混合、顆粒化、またはコーティング方法により製造されてよい。
【0033】
非経口投与のための剤形としては、点眼剤、注射剤、点滴剤、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、懸濁剤、乳液剤、坐剤、パッチまたは噴霧剤であってよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0034】
本発明の一側面に係る薬学組成物の有効成分は、投与を受ける対象の年齢、性別、体重、病理状態およびその深刻度、投与経路または処方者の判断によって変わり得る。こうした因子に基づいた適用量の決定は当業者の水準内にあり、その1日投与量は、例えば、0.1mg/kg/日〜100mg/kg/日、より具体的には5mg/kg/日〜50mg/kg/日であってよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0035】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。なお、これらの実施例及び実験例は、本発明に関する理解を助けるための目的にて例示したものに過ぎず、本発明の範疇及び範囲がそれらによって制限されるものではない。
【実施例】
【0036】
シリンガレシノールの分離及び分析
1.高麗人参の実の前処理
生高麗人参の実を収穫し、種を分離して除去した後、高麗人参の実の果皮を除去し果肉のみを日光乾燥または熱風乾燥して、高麗人参の実の果肉乾燥物を製造した。
【0037】
2.高麗人参の実の果肉抽出物からシリンガレシノールの分離及び分析
先に製造した高麗人参の実の果肉乾燥物1kgに水または酒精3Lを加えて常温または還流抽出しろ過した後、40〜45℃で減圧濃縮して、高麗人参の実の果肉抽出物300gを得た。抽出物にエーテル処理を施して脂溶性成分を除去した後、ブタノールで粗サポニンを抽出及び濃縮した。これを分離、精製してシリンガレシノールを得、その具体的な方法は次のとおりである。先ず、試料194gを逆相コラムクロマトグラフィー(reversed−phase(ODS)column chromatography)にて精製し、このとき、溶出溶媒として、最初は100%水を用い、メタノールを10%ずつ徐々に増加させて、最終的には100%メタノール溶媒を用いた。その結果、GB−1〜GB−10分画物を得、これらの分画物のうち、SIRT 1発現活性を示した分画GB−3を選別し濃縮した後、50%水溶性メタノール(aqueous methanol)を用いてセファデックスLH−20コラムクロマトグラフィー(Sephadex LH−20 column chromatography)を行った。得た分画物のうち、SIRT 1発現活性を示したGB−3−6(3F)を選別し濃縮した後、クロロホルム:メタノール(10:1)を展開溶媒として予備シリカゲル(preparative silica gel)TLCを行い、その結果、Rf値0.67の活性分画を精製した。前記分離及び精製方法を図式化して図1に示した。
【0038】
NMR分光分析とデータベース検索を行って、分離及び精製した活性化合物をシリンガレシノール(syringaresinol)と同定することができた。これを再確認するために質量(mass)分析を行い、ESI−massをpositive modeで測定した結果、[M+Na]+がm/z 440.9、[2M+Na]+がm/z 858.9で観察され、分子量が418であることが分かった。また、NMR分光分析を行った結果、一般式3で示すような結果が得られた。これによって、前記分離・精製した活性化合物は、シリンガレシノールであることが確認された。
【0039】
【化3】
【0040】
このように高麗人参の実の果肉からシリンガレシノールを分離した。
【0041】
[実験例1]老化したヒト血管内皮細胞におけるSIRT 1発現促進効果の評価
シリンガレシノールの老化したヒト血管内皮細胞におけるSIRT 1遺伝子発現促進効果を評価するために、以下のような実験を行った。
【0042】
ヒト血管内皮細胞は、LONZA(Walersville、MD、USA)から購入し、血管内皮細胞専用培地(EGM−2、EGM−2 SingleQuots、LONZA)において70%コンフルエント(confluent)するまで5%のCO培養器で培養した。血管内皮細胞の老化は、自然老化で育たないまで継代培養する方法にて誘導した。集団倍加レベル(Poplulation−doubling level、PDL)は、次式にて細胞成長が止まるまで各世代毎に計算した。PDL値は老化した細胞であればあるほど高くなる。
【0043】
PDL=(Log10Y−Log10X)/Log10
Yは、各世代の最後で数えた細胞数
Xは最初に継代した細胞数
【0044】
DMSOに溶かしたシリンガレシノールは、20、50、及び100μMの濃度で14PDL細胞から二日に1回ずつ処理して40PDL細胞まで老化を誘導しながら処理した。陰性対照群には培地体積1/1000のDMSOを処理した。各試料を処理した細胞を、冷たいPBSで2回洗浄した後、トリゾール試薬(TRIzol agent、Invitrogen)でRNAを抽出した。前記抽出して定量した1μg/μlのRNAと逆転写システム(Promega)を用いてcDNAを合成した。合成したcDNA及びSIRT 1とGAPDHの各遺伝子に対し、予めデザインされたプライマー(Primer)及びプローブ(probe)(Applied biosystems;SIRT 1、Hs01009006_m1;GAPDH、Hs99999905_m1)を利用して各遺伝子の発現様相を測定した。PCR反応と分析は、Rotor−Gene 3000システム(Corbett Research、Sydney、Australia)を利用した。その結果を図2に示した。
【0045】
図2に示すように、シリンガレシノールは、老化した血管内皮細胞において減少されたSIRT 1の発現を濃度依存的に増加させる。すなわち、シリンガレシノールは、血管老化を抑制し、さらには、心血管疾患を予防または改善することができることが分かる。
【0046】
[実験例2]老化した血管内皮細胞の老化マーカー抑制効果の評価
実験例1と実質的に等しい方法にて、50μMのシリンガレシノールを処理しながら血管内皮細胞の老化を誘導した。老化した細胞はPBSで洗浄し、細胞老化分析キット(Cellular Senescence Assay kit)(Cell Biolabs、Inc.、San Diego、CA、USA)から提供された固定液と染色液にて37℃で16時間染色を行った。翌日、PBSで洗浄し、20%グリセロール溶液をかけて顕微鏡で観察した結果を図3に示し、緑色で染色された細胞数を測定してから、老化マーカーであるSA−b−Gal活性程度を評価して図4に示した。
【0047】
図3及び図4に示すように、シリンガレシノールを処理した細胞は、DMSOのみを処理した細胞に比べて緑色で染色された細胞数が顕著に少なく、最大約50%もSA−b−Gal活性が減少した。これに基づき、シリンガレシノールは血管老化を抑制することで心血管疾患を予防または改善することができることが分かる。
【0048】
[実験例3]老化した血管内皮細胞のテロメラーゼ活性促進効果の評価
実験例1と実質的に等しい方法にて、50μMのシリンガレシノールを処理しながら、または対照群にDMSOを処理しながら血管内皮細胞の老化を誘導した。老化した細胞はPBSで洗浄し、緩衝液(lysis buffer、Sigma)で溶解(lysis)した後、タンパク質を得て定量した。テロメラーゼ活性を、Telo TAGGGテロメラーゼPCR ELISAPLUSキット(Roche Applied Science、Indianapolis、IN、USA)を利用して評価し、その結果を図5に示した。
【0049】
図5に示すように、シリンガレシノールを処理した細胞は、DMSOのみを処理した細胞に比べて約30%もテロメラーゼ活性が増加した。これに基づき、シリンガレシノールは、老化した血管細胞のテロメラーゼを活性化させて血管老化を抑制し、心血管疾患を予防または改善することができることが分かる。
【0050】
[実験例4]老化した血管内皮細胞の機能正常化効果の評価
シリンガレシノールが老化した血管細胞の機能減少を若い血管細胞と等しい水準に回復させることができるか否かを評価するために、先ず、実験例1と実質的に等しい方法にて、50μMのシリンガレシノールを処理しながら、または対照群にDMSOを処理しながら血管内皮細胞の老化を誘導した。老化した細胞は、eNOSの発現が減少してNOの生成が減少することから血管の収縮/弛緩がなされ難く、また、PAI−1の発現は増加して血栓の生成が促進することから動脈硬化などのような心血管疾患が発生し易い。シリンガレシノールを処理した細胞とDMSOを処理した細胞をPBSで洗浄し、緩衝液(lysis buffer、Sigma)で溶解してから上層液を回収した。各上層液のタンパク質をタンパク質染色試薬(Protein Dye ReagentTM、Bio−Rad)を用いて定量した。収得した各試料のタンパク質を100μgずつ8%のSDS−PAGEに電気泳動して大きさ別に分離した後、50Vの条件下でPVDF膜(Bio−Rad)に12時間転移させた。次いで、タンパク質が転移された膜を5%の脱脂牛乳溶液で1時間ブロッキング(blocking)した後、一次抗体として多クローン抗体である抗−eNOS、抗−PAI−1及び抗−アクチン(actin)を処理し、二次抗体としてHRP(horse radish peroxidase)が結合された抗マウスIgG(Amersham)抗体を処理し、ECLキット(enhanced chemiluminescence kit、Amersham)を利用して抗体反応させた。反応させたPVDF膜をX線フィルム(Fuji)に感光させてから現像し、タンパク質発現程度を確認した。その結果を図6に示した。
【0051】
図6に示すように、シリンガレシノールを処理した細胞では、老化して減少したeNOSの発現が若い細胞程度に増加し、また老化して増加したPAI−1の発現が若い細胞程度に減少した。これに基づき、シリンガレシノールは、老化した血管細胞の血管収縮/弛緩を滑らかにさせることができ、且つ血栓の生成を抑制することができることから、血管の老化を抑制するとともに、心血管疾患を予防または改善することができることが分かる。
【0052】
本発明の一側面に係る組成物の剤形例を以下で説明するが、他の種々の剤形としても応用可能であり、これらは、本発明を限定するためのものではなく、本発明を具体的に説明するためのものに過ぎない。
【0053】
[剤形例1]健康食品
シリンガレシノール................... 1000mg
ビタミン混合物
ビタミンAアセテート................. 70μg
ビタミンE........................... 1.0mg
ビタミンB1......................... 0.13mg
ビタミンB2......................... 0.15mg
ビタミンB6......................... 0.5mg
ビタミンB12....................... 0.2μg
ビタミンC........................... 10mg
ビオチン............................. 10μg
ニコチン酸アミド..................... 1.7mg
葉酸................................. 50μg
パントテン酸カルシウム............... 0.5mg
無機質混合物
硫酸第一鉄........................... 1.75mg
酸化亜鉛............................. 0.82mg
炭酸マグネシウム..................... 25.3mg
第一リン酸カリウム................... 15mg
第二リン酸カルシウム................. 55mg
クエン酸カリウム..................... 90mg
炭酸カルシウム....................... 100mg
塩化マグネシウム..................... 24.8mg
【0054】
前記ビタミン及びミネラル混合物の組成比は、比較的健康食品に適合した成分を好適な実施例に従い混合組成したが、その配合比を任意に変形実施してもよい。
【0055】
[剤形例2]健康飲料
シリンガレシノール.................... 1000mg
クエン酸.............................. 1000mg
オリゴ糖.............................. 100g
タウリン.............................. 1g
精製水................................ 残量
【0056】
通常の健康飲料の製造方法にて前記成分を混合した後、約1時間にわたって約85℃で撹拌加熱して得た溶液をろ過し、滅菌して得る
[剤形例3]精製
シリンガレシノール100mg、大豆抽出物50mg、葡萄糖100mg、紅参抽出物50mg、澱粉96mg、及びマグネシウムステアレート4mgを混合し、30%エタノールを40mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥し、打錠機を利用して打錠して得る。
【0057】
[剤形例4]顆粒剤
シリンガレシノール100mg、大豆抽出物50mg、葡萄糖100mg、及び澱粉600mgを混合し、30%エタノールを100mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥して顆粒を形成し、それを包みに充填して得る。
【0058】
[剤形例5]軟膏
下記の表1に表した組成で通常の方法にて軟膏を製造した。
【0059】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る組成物は、一般式1で示される化合物、具体的にシリンガレシノールを有効成分として含み、血管細胞のSIRT 1発現を促進し、且つテロメラーゼを活性化させ、血管の収縮/弛緩が滑らかになされるようにすることで血管老化を抑制することができ、特に心血管疾患を予防または改善する上で優れた効果を奏する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6