(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主軸(4)の前方側と後方側との間をスライド移動するスライド体(43)と、前記保持手段(53)を支持するアーム(49)と、該アーム(49)を旋回自在に支持する旋回支持手段(47)とを設け、該旋回支持手段(47)が前記スライド体(43)に設けられ、前記アーム(49)が、前記ワーク(11)の授受を行う際の横臥姿勢(B)と、ワーク(11)の搬送を行う際の起立姿勢(A)とに姿勢切り換えされる請求項1の工作機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記工作機械等において、ワークをセットするセット手段と主軸との間で簡単にワークを授受して搬送することができる搬送装置を備えた構成のものが必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の工作機械は、開閉自在なチャック8を前端側に備えた主軸4と、ワーク11をセットするセット手段41と、該セット手段41と前記主軸4との間でワーク11の搬送を行う搬送手段56とを備え、該搬送手段56が、ワーク11を保持する保持手段53を有し、前記主軸4の前方で、前記チャック8のチャック中心軸線C1と前記ワーク11のワーク中心軸線C2とを一直線上に位置させて、前記チャック8と前記保持手段53との間のワーク11の授受を行うように構成された工作機械において、前記セット手段41が、前記主軸4の後方に設けられ、前記チャック中心軸線C1と前記ワーク中心軸線C2とを一直線上に位置させてワーク11を支持するように配置され、前記ワーク11を前記セット手段41又は前記チャック8との間で授受する際の前記保持手段53の姿勢を同一としたことを第1の特徴とする。
【0006】
第2に、前記主軸4の前方側と後方側との間をスライド移動するスライド体43と、前記保持手段53を支持するアーム49と、該アーム49を旋回自在に支持する旋回支持手段47とを設け、該旋回支持手段47が前記スライド体43に設けられ、前記アーム49が、前記ワーク11の授受を行う際の横臥姿勢Bと、前記セット手段41側と前記主軸4側との間でワーク11の搬送を行う際の起立姿勢Aとに姿勢切り換えされることを特徴とする。
【0007】
第3に、前記主軸4を軸線方向に沿って前後移動可能に設け、前記主軸4の前方に、ワークの加工用の工具15を移動自在に支持する支持体12を設け、該支持体12の前方に前記工具15を配置して、前記支持体12の前方をワーク11の加工エリアA1とし、前記支持体12に、前記主軸4が挿入される挿入部14を設け、前記主軸4の移動範囲を、前記主軸4が前記挿入部14に挿入され、前記ワーク11を前記加工エリアA1内に配置する位置から、前記支持体12の後方側に、前記保持手段53と前記チャック8との間でワーク11の授受を行うためのスペース16を形成する位置までとしたことを特徴とする。
【0008】
第4に、前記加工エリアA1と前記支持体12の後方側のエリアとを区切るように前記挿入部14を閉塞するシャッタ17を開閉自在に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成される本発明の構造によると、前記セット手段によってワークが前記主軸の後方で、前記チャック中心軸線と前記ワーク中心軸線とが一直線上に位置した状態で支持されるため、前記保持手段を前記主軸の前方と後方とで同一姿勢として、前記保持手段と前記主軸又は前記セット手段との間でワークの授受を行うことが可能となる。これにより前記保持手段と前記主軸又は前記セット手段との間でワークの授受を行う際の前記保持手段の姿勢を簡単に調節することができるという効果がある。
【0010】
例えば前記主軸の前方側と後方側との間をスライド移動するスライド体と、前記保持手段を支持するアームと、該アームを旋回自在に支持する旋回支持手段とを設け、該旋回支持手段を前記スライド体に設け、前記アームを、前記ワークの授受を行う際の横臥姿勢と、前記セット手段側と前記主軸側との間でワークの搬送を行う際の起立姿勢とに姿勢切り換えされるように構成し、前記保持手段と前記主軸又は前記セット手段との間でのワークの授受を同じ横臥姿勢で行うことができる。
【0011】
この場合横臥姿勢時のアームの旋回角度を調節して定めることによって、前記主軸及び前記セット手段との間でワークの授受を行う際の前記保持手段の姿勢を簡単に調節することができ、また一つの調整手段で調整が可能とすることで搬送手段のコンパクト軽量化も図れる。
【0012】
なお供給対象のワークが、主軸後方から中空の主軸に対して順次送り込むような例えばスイス型自動旋盤の場合には2.5m、4.0mなど長尺棒材ワークの場合と、前記搬送手段により主軸の前方側に搬送するワークとの場合で、前記セット手段を共通使用可能な構造とすることができる。また長尺棒材の場合の例えば送り込みガイド構造と、前記搬送手段によるワーク供給の場合の前記セット手段とを切り換えて、ワーク供給を切り換える構成とすることで、長尺棒材ワークの供給と素形材ワークの供給とを同一エリアに供給手段を配置した構成とすることができる等の効果もある。
【0013】
また前記主軸が軸線方向に沿って前後移動可能に設けられ、前記主軸の前方に、ワークの加工用の工具を移動自在に支持する支持体が設けられ、該支持体の前方に前記工具が配置されて、前記支持体の前方がワークの加工エリアとして設定され、前記支持体に、前記主軸が挿入される挿入部が設けられる構成の工作機械の場合は、前記主軸の移動範囲を、前記挿入部に挿入され、前記ワークを前記加工エリア内に配置する位置から、前記支持体の後方側に、前記保持手段と前記チャックとの間でワークの授受を行うためのスペースを形成する位置までとすることによって、前記支持体の後方側で、前記保持手段と前記チャックとの間で容易にワークの授受を行うことができる。
【0014】
特に前記加工エリアと前記支持体の後方側のエリアとを区切るように前記挿入部を閉塞するシャッタを開閉自在に設けることによって、加工エリアに飛散する切削油や切削屑等が、前記支持体の後方側のエリアに侵入することを防止することができ、前記保持手段と前記主軸又は前記セット手段との間でのワークの授受を比較的クリーンな環境で行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して、工作機械について説明する。しかしながら、本発明は、図面又は以下に説明される実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
図1に、本発明に係る工作機械の一例である自動旋盤を示す。該自動旋盤は、ベッド1を備え、ベッド1上に3台の旋盤モジュールMが搭載されて構成されている。2つの旋盤モジュールMが並設され、1つの旋盤モジュールMが、並設された2つの旋盤モジュールMに対向するように、スライド機構SLを介してスライド自在に設けられている。
【0017】
各旋盤モジュールMは同一の構造であり、ベッド1に固定されるベース2上に構成されている。各旋盤モジュールMのベース2上には各々主軸台3が設けられている。主軸台3には回転自在に主軸4が支持されている。主軸4は、主軸台3の後方に設けられた主軸モータ6によって回転駆動される。
【0018】
ベース2上には、主軸4の軸線方向(Z軸方向)にスライドレール7が設けられている。スライドレール7は2本平行に設けられている。両スライドレール7上に主軸台3が搭載されている。主軸台3は、両スライドレール7の間に設けられたボールネジ5に螺合連結され、ボールネジ5の回転駆動によって、スライドレール7に沿って移動する。
【0019】
主軸4の前端面には主軸チャック8が開閉自在に設けられている。主軸チャック8は、複数のチャック爪9を備える。
図2(A),(B)に示されるように、各チャック爪9は主軸チャック8のチャック中心軸線C1の回りに均等に配置されている。各チャック爪9は、チャック中心軸線C1に向かって移動することによって閉じる。
【0020】
図2(A)に示される開状態のチャック爪9の間にワーク11を挿入し、
図2(B)に示されるように、チャック爪9を閉じることによってワーク11が主軸チャック8に把持される。主軸チャック8は、チャック中心軸線C1とワーク11の中心軸線(ワーク中心軸線)C2とが一直線上に位置するようにワーク11を把持する。主軸チャック8は、チャック中心軸線C1と主軸4の軸線C3とが一直線上に位置するように取り付けられている(
図1参照)。
【0021】
主軸台3の前方に、支持台12が設けられている。支持台12は、ベース2に固定されている。
図3に示されるように、支持台12の前方には、Z軸方向に直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)に移動自在に刃物台13が設けられている。X軸方向及びY軸方向は互いに直交している。刃物台13に工具15が装着される。
【0022】
図3〜5に示されるように、支持台12は、主軸台3が通過できるようにゲート状に形成されている。
図4に示されるように、主軸台3は、ゲートの空間14を通り、主軸4に把持されたワーク11を支持台12の前方に位置させることができるように、Z軸方向前方への移動範囲が設定されている。
【0023】
この際、主軸4は、主軸台3に支持された状態で、空間14を挿入部として、空間14に挿入される。
図3に示されるように、主軸台3は、支持台12の後方で、主軸4の前端と支持台12との間に所定のスペース16が形成される退避位置αに移動できるように、Z軸方向後方への移動範囲が設定されている。
【0024】
支持台12の前方はワーク11の加工を行う加工エリアA1を構成している。
図4に示されるように、主軸4に把持されたワーク11を支持台12の前方に突出させると、各旋盤モジュールMは、各々独立して、主軸台3のZ軸方向の移動と、刃物台13のX軸方向及びY軸方向の移動とによって、加工エリアA1において、工具15でワーク11を加工することができる。
【0025】
スペース16は、主軸台3の移動に応じて出没する。
図4に示されるように、ワーク11の加工時には、スペース16は主軸台3によって占有され現れない。
図3に示されるように、主軸台3を退避位置に移動させると、スペース16が出現する。
【0026】
支持台12の後端面側には、空間(挿入部)14を閉塞するプレート状のシャッタ17が設けられている。シャッタ17は、支持台12に固定されたガイドカバー18に、上下方向に昇降自在に保持されている。ガイドカバー18には、シリンダ取付板19を介してシリンダ21が取り付けられている。シリンダ21は、シリンダロッド22が上下方向に進退するように取り付けられている。
【0027】
シリンダロッド22はブラケット23を介してシャッタ17に連結されている。シャッタ17は、シリンダ21によって昇降駆動される。シャッタ17は、シリンダロッド22の縮作動によって上昇し、シリンダロッド22の伸び作動によって下降する。
図5(B)に示されるように、シャッタ17が下降することによって空間14が閉塞される。
図5(A)に示されるように、シャッタ17が上昇することによって空間14が開放される。
【0028】
図4に示されるように、ワーク11の加工時には、主軸台3が空間14内に位置するため、シャッタ17は開状態に維持される。主軸台3が退避位置αに移動する際は、
図3に示されるように、主軸台3側の構成物がシャッタ17の後方に移動すると、シャッタ17が閉じるように構成される。加工エリアA1は切削屑や切削油等が飛散する環境であるため、シャッタ17が閉じることによって支持台12の後方は加工エリアA1の環境から仕切られた比較的クリーンな環境となる。
【0029】
退避位置αに位置する主軸台3より後方にベース板24が設けられている。
図6に示されるように、ベース板24はブラケット25を介してベッド1側に固定されている。
図7に示されるように、ベース板24の下面にはシリンダ26が固定されている。シリンダ26はシリンダロッド27が下方を向くように取り付けられている。
【0030】
シリンダロッド27には、プレート28が固定されている。プレート28には前後に押しロッド29が立設されている。各押しロッド29は、上方に突出可能にベース板24に挿入されている。各押しロッド29の先端は、シリンダロッド27の縮作動によってベース板24の上方に突出する。各押しロッド29の先端は、シリンダロッド27の伸作動によってベース板24の下方に没する。
【0031】
ベース板24の上方には、固定部材31を介してストッパ板32が所定の高さ位置に固定されている。ストッパ板32には、左右及び前後に4本のロッド33が、上下方向にスライド移動自在に挿入されている。左右のロッド33の下端は連結板34によって連結されている。各ロッド33には、ストッパ板32の下面と連結板34の上面との間に圧縮バネ36が外嵌されている。
【0032】
各ロッド33の先端に昇降板37が固定されている。
図7(A),(B)に示されるように、昇降板37は圧縮バネ36によってストッパ板32と当接するように付勢されている。昇降板37の上面にはワーク支持板38が、前後方向に対向して設けられている。ワーク支持板38には、側面視で略V字状をなすV溝39が形成されている。
図6,
図7(C)に示されるように、ワーク11は、両ワーク支持板38のV溝39に収容されて前後位置で支持される。
【0033】
前後の各連結板34の下面略中央に前後の各押しロッド29の先端が当接する。シリンダロッド27を縮作動させ、圧縮バネ36の付勢力に抗して各押しロッド29によって各連結板34を上方に押圧することにより、昇降板37が上昇する。シリンダロッド27を伸び作動させることによって、圧縮バネ36の付勢力により昇降板37が下降する。
【0034】
昇降板37の下降によりワーク支持板38が下降した状態で、ワーク支持板38に対してワーク11を供給し、両ワーク支持板38によってワーク11を支持することができる。昇降板37の上昇によりワーク支持板38を上昇させることによって、両ワーク支持板38によって支持されたワーク11を持ち上げることができる。両ワーク支持板38は、ワーク11を持ち上げると、ワーク中心軸線C2がチャック中心軸線C1と一直線上に位置するように予め設定されている(
図1,
図3参照)。
【0035】
ベース板24,シリンダ26,プレート28,押しロッド29,ストッパ板32,ロッド33,圧縮バネ36,連結板34,昇降板37,ワーク支持板38等によってワーク11をセットするセット手段41が構成されている。セット手段41は、ワーク11を両ワーク支持板38によって持ち上げ、チャック中心軸線C1とワーク中心軸線C2とが一直線上に位置するように支持する。
【0036】
図6に示されるように、ベッド1側にテーブル40が一体的に固定されている。テーブル40上には、Z軸方向に平行なガイドレール42が固定されている。ガイドレール42は、主軸台3に対して並設されている。ガイドレール42上にベース台43が搭載されている。
【0037】
テーブル40上にボールネジ44が設けられている。ボールネジ44はガイドレール42に対して並設されている。ベース台43はボールネジ44に螺合連結され、ボールネジ44の回転駆動によって、スライド体として、ガイドレール42に沿ってスライド移動する。
図1に示されるように、ベース台43が、スペース16に隣接する位置P1と、セット手段41に隣接する位置P2との間で移動できるように設定されている。
【0038】
図8に示されるように、ベース台43上には、ブラケット46を介してロータリアクチュエータ47が固定されている。ロータリアクチュエータ47の回転駆動軸48にはアーム49が一体的に固定されている。ロータリアクチュエータ47は、旋回支持手段としてアーム49を旋回自在に支持する。
【0039】
図8(B)に示されるように、アーム49は、ロータリアクチュエータ47によって、略鉛直上方に延出する起立姿勢Aと、略水平方向に主軸台3側に向かう横臥姿勢Bとに姿勢が切り換えられる。アーム49には、シリンダ51が設けられている。シリンダ51のシリンダロッド52には、搬送チャック53が取り付けられている。
【0040】
搬送チャック53は、シリンダロッド52の移動によって、アーム49の長手方向に進退移動する。搬送チャック53はアーム49から突出する突出位置Xとアーム49側に位置する初期位置Yとに位置が切り換えられる。搬送チャック53の先端には開閉自在なチャック爪54が対向して設けられている。両チャック爪54は、搬送チャック53のチャック中心軸線C4に対して均等に配置されている。
【0041】
各チャック爪54は、搬送チャック53のチャック中心軸線C4に向かって移動することによって閉じる。搬送チャック53は、チャック爪54が開いた状態で、両チャック爪54の間にワーク11を挿入し、ワーク11が挿入された状態でチャック爪54を閉じることによってワーク11を把持することができる。搬送チャック53がワーク11を把持して保持する保持手段を構成している。
【0042】
図6に示されるように、アーム49の旋回位置は、横臥姿勢B時に、両ワーク支持板38によって持ち上げ支持されたワーク中心軸線C2と搬送チャック53のチャック中心軸線C4との高さ位置が一致するように設定されている。これにより主軸チャック8のチャック中心軸線C1とワーク中心軸線C2と搬送チャック53のチャック中心軸線C4との高さ位置が一致する。
【0043】
図9に示されるように、ベース台43を位置P2に移動させ、アーム49を横臥姿勢Bとし、搬送チャック53を突出位置Xに突出移動させることによって、両チャック爪54の間に、両ワーク支持板38によって持ち上げ支持されたワーク11を挿入することができる。
【0044】
この状態でチャック爪54を閉じることによって、ワーク中心軸線C2が、主軸チャック8のチャック中心軸線C1と一直線上に位置した状態のまま、搬送チャック53によってワーク11を把持することができる。ワーク11を把持した状態で、アーム49を起立姿勢Aとし、ベース台43を移動させることによって、主軸台3の側方位置で、主軸4の軸線方向C3に沿ってワーク11を搬送することができる。
【0045】
シリンダ51は、アーム49を起立姿勢Aとする際に、搬送チャック53を初期位置Yに戻すように設定されている。
図10に示されるように、主軸台3を退避位置αに移動させ、位置P1にベース台43を位置させ、アーム49を横臥姿勢Bとし、搬送チャック53を突出位置Xに移動させることによって、スペース16内において、ワーク11を搬送チャック53に把持された状態で主軸4の前方に配置することができる。
【0046】
ガイドレール42,ボールネジ44,ベース台43,ロータリアクチュエータ47,アーム49,搬送チャック53,シリンダ51等によってワーク11の搬送装置56が構成されている。搬送チャック53によるセット手段41との間でのワーク11の授受は、アーム49を横臥姿勢Bとし、搬送チャック53を突出位置Xに位置させることによって、主軸チャック8のチャック中心軸線C1とワーク中心軸線C2とが一直線上に位置した状態のままで行われる。
【0047】
このため、主軸4の前方位置でアーム49を横臥姿勢Bとして、搬送チャック53を突出位置Xに位置させると、ワーク11は、主軸チャック8のチャック中心軸線C1とワーク中心軸線C2とが一直線上に位置した状態で、主軸4の前方位置に配置される。これにより主軸チャック8と搬送チャック53との間でワーク8の授受が可能となる。
【0048】
本実施形態において、搬送装置56は主軸4にワークを供給するローダとして使用されている。主軸4へのワーク11のローディングは、まずワーク支持板38を下降させ、セット手段41に供給されたワーク11をワーク保持板38によって保持させる。次にワーク支持板38を上昇させてワーク11を支持し、搬送チャック53によってワーク11を把持する。
【0049】
次に主軸台3の退避位置αへの移動によって主軸4の前端と支持台12との間にスペース16が形成された状態で、主軸4の前方にワーク11を搬送する。次に、主軸チャック8を開いた状態で、主軸台3又はベース台43をZ軸方向に移動させることによって主軸チャック8のチャック爪9の間にワーク11を挿入する。
【0050】
次に主軸チャック8(チャック爪9)を閉じ、搬送チャック53を開くことによって、スペース16内で、ワーク11を主軸4に把持させ、主軸4へのワーク11のローディングが完了する。搬送チャック53を初期位置Yに戻し、アーム49を起立姿勢Aに切り換え、ベース台43を主軸台3の後方に移動させることで、次のローディング作業を開始することが可能となる。なおワーク保持板38へのワーク11の供給は、従来公知のパーツフィーダ等によって行うことができるが、従来公知のため詳細な説明は割愛する。
【0051】
主軸チャック8のチャック中心軸線C1とワーク支持板38に持ち上げ支持されたワーク中心軸線C2とが一直線上に位置しているため、ワーク11をセット手段41又は主軸チャック8との間で授受する際の搬送チャック53の姿勢を同一にすることができる。
【0052】
これにより搬送チャック53と前記主軸チャック8又は前記セット手段41との間でワークの授受を行う際の搬送チャック53の姿勢を簡単に調節して設定することができる。本実施形態の場合、搬送チャック53が旋回支持されているアーム49に設けられているため、セット手段41からワーク11を把持する際のアーム49の旋回位置と、主軸チャック8にワーク11を供給する際のアーム49の旋回位置とを共通にすることができる。
【0053】
このためアーム49を横臥させる際のポジションを1つの横臥姿勢Bとすることができ、ロータリアクチュエータ47の旋回角度調節等によるアーム49の旋回位置決め機構等を簡単に構成することができ、ポジションの位置調節も1ポジションで容易に行うことができる。例えばアーム49をストッパとの当接によって横臥姿勢Bに位置決めする場合、ストッパが1つで済み、位置決めの機構が簡単になる。
【0054】
ワーク11のローディングは、シャッタ17が閉じた支持台12の後方で、比較的クリーンな環境で行われる。このため切削油や切削屑等によるローディング不良等を防止することができ、安定したローディングを行うことができる。
【0055】
本実施形態のセット手段41は、ワーク11を持ち上げ支持してワーク中心軸線C2と主軸チャックの中心軸線C1とを一直線上に位置させるように構成されている。このためワーク11の径が変更された場合は、シリンダ26(シリンダロッド27)のストロークを調節するだけで、簡単にワーク中心軸線C2と主軸チャックの中心軸線C1とを一直線上に位置させるように、ワーク11を持ち上げ支持することができる。このためワーク11の径変更を容易に行うことができる。
【0056】
なお本発明に係る工作機械が例えばスイス型自動旋盤の場合には、供給対象ワークが中空主軸の後方から順次送り込まれる2.5m、4.0mなどの長尺棒材ワークの場合と、本実施形態で説明の搬送手段56により主軸4の前方側に搬送した方がよい、例えば短尺または段付形状のワークの場合とで、セット手段41を共通使用することもできる。
【0057】
あるいは前記長尺棒材ワークの場合の例えば送り込みガイド構造と、前記搬送手段によるワーク供給の場合のセット手段41とを切り換えるように構成することもできる。この場合ワーク中心軸線C2と主軸チャック8のチャック中心軸線C1とが一直線上に位置していることによって、長尺棒材ワークの供給と素形材ワークの供給とを同一エリアに配置した構造とすることが可能となる。
【0058】
またアーム49を旋回させることなく、予め横臥した状態で固定し、搬出チャック53をロッドレスシリンダ51等によって主軸台3側に向けて進退移動するように構成することもできる。この場合搬送チャック53の突出位置を、ワーク支持板38からワーク11を把持する際と、主軸チャック8にワーク11を供給する際とで共通にすることができる。
【0059】
これにより搬送チャック53の突出位置決め機構を簡単に構成することができるとともに、ポジションの位置調節も容易に行うことができる。なおアーム49を設けることなく、単に搬出チャック53を主軸台3側に向けて進退移動可能に設けるように構成しても良い。
【0060】
搬送チャック53を上方から下降させてチャック爪54の間にワーク11を挿入するように搬送装置を構成することもできる。この場合、搬送チャック53の下降位置をワーク支持板38からワーク11を把持する際と、主軸チャック8にワーク11を供給する際とで共通にすることができる。これにより、搬送チャック53の下降位置決め機構を簡単に構成することができるとともに、ポジションの位置調節も容易に行うことができる。
【0061】
上記実施形態では、搬送装置56を、セット手段41にセットされたワーク11を主軸4に供給するローダとして使用した例を説明したが、主軸チャック8に把持された加工済みのワークを、搬送チャック53によって把持し、セット手段41に搬出するアンローダとして使用することもできる。アンローダとする場合は、ローダの動作の逆を行えば良いため、詳細な動作説明について割愛する。
【0062】
搬送装置56をアンローダとして使用することによって、主軸チャック53に把持されたワーク11を、主軸チャック8のチャック中心軸線C1とワーク中心軸線C2とを一直線上に位置させて、ワーク支持板38に支持させることができる。1つの搬送装置56をローダ及びアンローダとして使用することができる他、所定の旋盤モジュールMの主軸台4に沿って同一構造の搬送装置56を配置し、一方をローダとして使用し、他方をアンローダとして使用することもできる。
【0063】
シャッタ17は支持台12の前端面側に設けても良い。この場合空間14内への切削油や切削屑の進入を防止することができる。支持台12の空間14を形成している周面に、主軸台3又は主軸4に接するようにワイパを設けてもよい。主軸台3が後退する際に、ワイパによって主軸台3や主軸4の周面が拭き取られることにより、主軸台3や主軸4に付着する切削油や切削屑の清掃が行われる。これにより切削油や切削屑等が主軸台3や主軸4に残る不都合が防止され、搬送チャック53との間で安定してワーク11の授受を行うことができる。