(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184421
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】相互接続された波状炭素系網状体
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20170814BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/86 B
【請求項の数】76
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-548972(P2014-548972)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-508379(P2015-508379A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】US2012071407
(87)【国際公開番号】WO2013162649
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】61/578,431
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ストロング ベロニカ エー.
(72)【発明者】
【氏名】エル‐キャディー マーハー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】カナー リチャード ビー.
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0159372(US,A1)
【文献】
特開2010−222245(JP,A)
【文献】
特表2009−525247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 − 32/991
H01M 4/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線光電子分光法(XPS)によって測定されると5%までの酸素含有量を有する複数の拡張かつ相互接続された炭素層を備え、
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数が、100より大きい、相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項2】
前記拡張かつ相互接続された炭素層の各々が、1原子厚である少なくとも1つの波状炭素シートを含む、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項3】
前記拡張かつ相互接続された炭素層の各々が、各々が1原子厚である複数の波状炭素シートを含む、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項4】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1500S/mより大きい導電率をもたらす、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項5】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1600S/mより大きい導電率をもたらす、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項6】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1650S/mの導電率をもたらす、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項7】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1700S/mより大きい導電率をもたらす、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項8】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1738S/mの導電率をもたらす、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項9】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1000平方メートル/グラム(m2/g)より大きい表面積を有する、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項10】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1500m2/gより大きい表面積を有する、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項11】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1520m2/gの表面積を有する、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項12】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1700S/mより大きい導電率と、1500m2/gである表面積とをもたらす、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項13】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1650S/mの導電率と、1520m2/gの表面積とをもたらす、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項14】
前記相互接続された波状炭素系網状体の二次不規則(2D)ラマンピークが、前記相互接続された波状炭素系網状体が炭素系酸化物から還元された後で、2730cm−1〜2688cm−1までシフトする、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項15】
前記相互接続された波状炭素系網状体の2Dラマンピークが、前記相互接続された波状炭素系網状体が炭素系酸化物から還元された後で、2700cm−1〜2600cm−1までシフトする、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項16】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層の平均厚さが、7.6μmである、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項17】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層の厚さの範囲が、7μm〜8μmである、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項18】
前記拡張かつ相互接続された炭素層の酸素含有量が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると3.5%である、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項19】
前記拡張かつ相互接続された炭素層の酸素含有量が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると1%〜5%に及ぶ、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項20】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると27.8:1の炭素対酸素(C/O)比を有する、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項21】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると100:1〜25:1に及ぶC/O比を有する、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項22】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、20メガオーム/平方〜80オーム/平方の範囲内で調節可能なシート抵抗を有する、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項23】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、2927cm−1でのラマン分光法S3二次ピークを有する、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項24】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、2920cm−1〜2930cm−1に及ぶラマン分光法S3二次ピークを有する、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項25】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数が、1000より大きい、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項26】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数が、10000より大きい、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項27】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数が、100000より大きい、請求項1に記載の相互接続された波状炭素系網状体。
【請求項28】
パターン化済みの相互接続された波状炭素層網状体を生成する方法であって、
炭素系酸化物膜を有する基体を受容することと、
前記炭素系酸化物膜の部分を、導電性であり、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると5%までの酸素含有量を有する複数の拡張かつ相互接続された炭素層に還元するのに十分な出力密度を有する光線を生成することと、
前記光線を、コンピュータ制御システムを介して、所定のパターンで前記炭素系酸化物膜を横切って方向付けることと、
を含む、方法。
【請求項29】
前記炭素系酸化物膜が前記光線に曝されるときに生成される前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層の導電率を調節するために、前記光線の前記出力密度を調整することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、20メガオーム/平方〜80オーム/平方の範囲内で調節可能なシート抵抗を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記炭素系酸化物膜が、酸化黒鉛膜である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記酸化黒鉛膜が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると2.6:1のC/O比を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記酸化黒鉛膜の前記光線に曝された部分が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると27.8:1のC/O比を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると100:1〜25:1に及ぶC/O比を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記光線がレーザー光線である、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記レーザー光線が、780nmの波長を有する赤外線レーザー光線である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
光線の放射が近赤外線から紫外線の波長に及ぶ、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記光線が、5mWの出力を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記光線が、5mW〜350mWの出力範囲を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記炭素系酸化物膜の部分を、前記相互接続された波状炭素系網状体に還元するのに十分な前記出力密度を有する前記光線を生成する前に、前記基体を、自動化されたレーザーパターン化システム中に装着することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
前記炭素系酸化物膜を前記光線に曝して、相互接続された波状炭素系網状体の前記所定のパターンを前記炭素系酸化物膜内に形成することが、炭素系対炭素系酸化物比を増加させるために、前記所定のパターンの所定の部分に対して繰り返される、請求項28に記載の方法。
【請求項42】
炭素系酸化物溶液を前記基体中にドロップ鋳造する初期ステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項43】
前記基体が、ポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項28に記載の方法。
【請求項44】
前記基体を酸素プラズマで、3分曝すことをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項45】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1520平方メートル/グラム(m2/g)の表面積を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項46】
前記拡張かつ相互接続された炭素層の各々が、わずか1原子厚である単一の波状炭素シートである、請求項28に記載の方法。
【請求項47】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1500S/mより大きい導電率をもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項48】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1600S/mより大きい導電率をもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項49】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1650S/mの導電率をもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項50】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1700S/mより大きい導電率をもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項51】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1738S/mの導電率をもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項52】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1000m2/gより大きい表面積を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項53】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1500m2/gより大きい表面積を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項54】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1520m2/gの表面積を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項55】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1700S/mより大きい導電率と、1500m2/gである表面積とをもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項56】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、1650S/mの導電率と、1520m2/gの表面積とをもたらす、請求項28に記載の方法。
【請求項57】
前記相互接続された波状炭素系網状体の二次不規則(2D)ラマンピークが、前記相互接続された波状炭素系網状体が炭素系酸化物から還元された後で、2730cm−1〜2688cm−1までシフトする、請求項28に記載の方法。
【請求項58】
前記相互接続された波状炭素系網状体の2Dラマンピークが、前記相互接続された波状炭素系網状体が炭素系酸化物から還元された後で、2700cm−1〜2600cm−1までシフトする、請求項28に記載の方法。
【請求項59】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層の平均厚さが、7.6μmである、請求項28に記載の方法。
【請求項60】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層の厚さの範囲が、7μm〜8μmである、請求項28に記載の方法。
【請求項61】
前記拡張かつ相互接続された炭素層の酸素含有量が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると3.5%である、請求項28に記載の方法。
【請求項62】
前記拡張かつ相互接続された炭素層の酸素含有量が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると1%〜5%に及ぶ、請求項28に記載の方法。
【請求項63】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると27.8:1のC/O比を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項64】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、X線光電子分光法(XPS)によって測定されると100:1〜25:1に及ぶC/O比を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項65】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、20メガオーム/平方〜80オーム/平方の範囲内で調節可能なシート抵抗を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項66】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、2927cm−1でのラマン分光法S3二次ピークを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項67】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層が、2920cm−1〜2930cm−1に及ぶラマン分光法S3二次ピークの範囲を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項68】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数が、100より大きい、請求項28に記載の方法。
【請求項69】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数が、1000より大きい、請求項28に記載の方法。
【請求項70】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数が、10000より大きい、請求項28に記載の方法。
【請求項71】
前記複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数が、100000より大きい、請求項28に記載の方法。
【請求項72】
前記所定のパターンが、全有機気体センサーの導電性トレースを画定する、請求項28に記載の方法。
【請求項73】
前記全有機気体センサーが、物理的に可撓性の亜酸化窒素(NO2)センサーである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記所定のパターンが、急速酸化還元活性電極を画定する、請求項28に記載の方法。
【請求項75】
前記所定のパターンが、ナノ粒子の直接成長用の骨格を画定する、請求項28に記載の方法。
【請求項76】
前記ナノ粒子が、白金(Pt)のナノ粒子である、請求項75に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、米国国防総省国防高等研究事業局によって認められた承認番号HR0011−10−3−0002の下、政府の支援を得てなされたものである。政府は、本発明における特定の権利を有する。
本研究は、部分的には、大学院特別研究員−任務遂行計画―を通じて、エジプト高等教育省によって支援された。
[関連出願]
本出願は、2011年12月21日に提出された米国仮特許出願第61/578,431号の恩典を主張するものであり、その開示の全体を参照して本明細書に組み込む。
[開示分野]
本開示は、相互接続された波状炭素系網状体と、この相互接続された波状炭素系網状体を作製し、パターン化し、この電気的、物理的、および電気化学的特性を調節する安価な工程と、を提供する。
[背景技術]
有機センサーなどの高品質のバルク炭素系デバイスを生成することを求めて、現在では様々な総合体が、酸化黒鉛(GO)を、大規模炭素系材料の生成のための前駆物質として組み込んでいる。黒鉛粉末の酸化による大量のGOを生成する安価な方法が現在では利用可能である。加えて、GOの水分散性は、安価な生成方法と相まって、GOを、炭素系デバイス生成のための理想的な開始物質としている。特に、GOは、水分散特性を有する。残念なことに、GOにその水分散特性を付与する同一の酸素種はまた、その電子構造中に欠陥を生じ、その結果、GOは、絶縁体である。したがって、優れた電子特性を持つデバイスグレードの炭素系膜の開発は、これらの酸素種の除去、共役の炭素網状体の再確立、および炭素系デバイス特徴部を制御可能にパターン化する方法を必要とする。
【0002】
酸化黒鉛を減少させる方法は、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、もしくは他の還元剤、科学的還元気体および/または不活性雰囲気下での高温焼きなまし、ソルボサーマル還元、科学的還元方法および熱的還元方法の組み合わせ、フラッシュ還元、および直近ではGOのレーザー還元を含んでいた。これらの方法のうちのいくつかは、高品質の酸化黒鉛還元を示したが、多くは高価な機器、高い焼きなまし温度、および最終生成物中の窒素不純物によって制限されていた。その結果、これらの特性のうち、拡張かつ相互接続された炭素網状体の大きい表面積と、内部の高い導電率とを含む特性の組み合わせが、分かりにくいまま残っている。加えて、GOの還元とパターン化との双方の一括ステップを介する大規模な膜パターン化は、困難であることが分かっており、一般的には、最も基本的なパターンとなる光マスク次第であった。したがって、必要とされるのは、高度に調節可能な導電率および電気化学的特性を持つ大きな表面積を有する相互接続された波状炭素系網状体を作製してパターン化する安価な工程である。
[概要]
本開示は、相互接続された波状炭素系網状体を生成する方法を提供する。この生成された相互接続された波状炭素系網状体は、相互接続された炭素層の拡張された網状体の大きい表面積および高い導電率を含む特性の組み合わせを有する。
【0003】
1つの実施形態では、本方法は、パターン化された相互接続された波状炭素系網状体を生成する。この特定の実施形態では、初期ステップは、炭素系酸化物膜を有する基体を受容する。一旦基体が受容されると、次のステップは、炭素系酸化物膜の部分を、相互接続された波状炭素系網状体に還元するのに十分な出力密度を有する光線を生成することを伴う。別のステップは、この光線を、コンピュータ制御システムを介して、炭素系酸化物膜を所定のパターンで横切って方向付け、同時に、所定のパターンと関連付けられた所定の出力密度データにしたがって、光線の出力密度を、コンピュータ制御システムを介して調整することを伴う。
【0004】
1つの実施形態では、基体は、DVD芯出し穴を含むDVDサイズのプレートに取り外し可能に固着されるディスク形状の、デジタルバーサタイルディスク(DVD)サイズの薄いプラスチックシートである。ディスク形状の基体を担持するDVDサイズのプレートは、ダイレクトツーディスク標識化可能な光ディスクドライブ中に装着される。コンピュータ制御システムによって実行されるソフトウエアプログラムは、所定のパターンを定義するデータを読み出す。コンピュータ制御システムは、光ディスクドライブが生成したレーザー光線をディスク形状基体に方向付け、これにより、炭素系酸化物膜の部分を、所定のパターンのデータによって指示される形状、寸法、およびコンダクタンスレベルに適合する導電性の相互接続された波状炭素系網状体に還元する。
【0005】
当業者は、本開示の範囲を認識し、かつそのさらなる態様を、添付図面を関連して次の詳細な説明を読めば理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を形成する添付図面は、本開示のいくつかの態様を図示し、説明とともに、本開示の原理を説明するのに役に立つ。
【
図1】先行技術によるダイレクトツーディスク標識化タイプのCD/DVDディスクのラベル面を示す。
【
図2】先行技術によるダイレクトツーディスク標識化タイプの光ディスクドライブの概略図である。
【
図3】酸化黒鉛(GO)膜を基体上に提供する例示の工程の工程図である。
【
図4】相互接続された波状炭素系網状体をレーザースクライビングし、次に相互接続された波状炭素系網状体から電気部品を製造する工程図である。
【
図5】本実施形態の相互接続された波状炭素系網状体のサンプルの線図である。
【
図6A】回路で覆われた人の頭部のアートワーク画像である。
【
図6B】
図6Aのアートワーク画像が、本開示のレーザースクライビング技法を用いてGO膜上に直接にパターン化された後でのGO膜の写真である。
【
図7】様々なグレースケールレベルを用いて、
図6Aのアートワークをレーザースクライビングして、
図6Bのパターン化されたGO膜を生成することによって、
図6BのGO膜を減少させることによる導電率の変化を比較するグラフである。
【
図8A】画像の左面上の整列された相互接続された波状炭素系網状体と対照を成して、画像の右面に対するレーザー処理の前のGO膜に対する赤外線レーザーの影響を図示する走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図8B】相互接続された波状炭素系網状体が未処理のGO膜のそれと比較して約10倍大きい厚さを有することを示すSEM画像である。
【
図8C】1つのレーザー変換された相互接続された波状炭素系網状体の断面図を示すSEM画像である。
【
図8D】
図8C中の相互接続された波状炭素系網状体内の選択されたエリアのより大きい拡大図を示すSEM画像である。
【
図9】相互接続された波状炭素系網状体の粉末X線回折(XRD)パターンを、黒鉛の回折パターンと酸化黒鉛の回折パターンとの双方と比較する。
【
図10】適用されたボルタメトリック走査速度のlog
10に対するピーク電流のlog
10のプロット図である。
【
図11A】ラマン分光法分析に関連するグラフである。
【
図11B】ラマン分光法分析に関連するグラフである。
【
図11C】ラマン分光法分析に関連するグラフである。
【
図11D】ラマン分光法分析に関連するグラフである。
【
図11E】ラマン分光法分析に関連するグラフである。
【
図12A】GOの薄い膜上に直接パターン化された、6mm×6mmの寸法を持ち、約500μmの間隔で配置された相互接続された波状炭素系網状体で作られた交互嵌合された電極の集合を示す構造式である。
【
図12B】別のタイプの基体上に転写された交互嵌合された電極の集合を示す構造式である。
【
図13】乾燥した空気中で20ppmの亜酸化窒素(NO
2)に曝された相互接続された波状炭素系網状体から作られた交互嵌合された電極のパターン化された可撓性の集合に対するセンサーの反応を示す。
【
図14A】相互接続された波状炭素系網状体から成る骨格上への白金(Pt)のナノ粒子の、0、15、60、および120秒に対応する電着時間に対する成長を示すSEM画像である。
【
図14B】相互接続された波状炭素系網状体から成る骨格上への白金(Pt)のナノ粒子の15秒に対応する電着時間に対する成長を示すSEM画像である。
【
図14C】相互接続された波状炭素系網状体から成る骨格上への白金(Pt)のナノ粒子の60秒に対応する電着時間に対する成長を示すSEM画像である。
【
図14D】相互接続された波状炭素系網状体から成る骨格上への白金(Pt)のナノ粒子の120秒に対応する電着時間に対する成長を示すSEM画像である。
【
図15】50mV/sの走査速度での、GOと、黒鉛と、1.0M KCl溶液に溶解された5mMのK
3[Fe(CN)
6]/K
4[Fe(CN)
6]の等モル濃度の混合物中の相互接続された波状炭素系網状体から成る電極と、のCVプロフィールを比較する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[詳細な説明]
以下に記載する実施形態は、当業者が本開示を実施することを可能とするための必要な情報を表し、本開示を実施する最良のモードを解説する。添付図面を考慮して次の説明を読めば、当業者は、本開示の概念を理解し、本明細書中に特に検討されていないこれらの概念の応用分野を認識するであろう。これらの概念および応用分野は、本開示および添付のクレームの範囲に入ることを理解すべきである。
【0008】
本開示は、高度に調節可能な導電率および電気化学的特性を持つ大表面積に対する厳しい要件を有する相互接続された波状炭素系網状体を作製してパターン化する安価な工程を提供する。本明細書に説明する実施形態は、これらの厳しい要件を満たすだけではなく、相互接続された波状炭素系網状体の導電率およびパターン化に対して直接的な制御を提供し、同時に、単一ステップ工程で可撓性の電子デバイスを作成する。そのうえ、これらの相互接続された波状炭素系網状体の生成は、還元剤または高価な機器を必要としない。したがって、相互接続された波状炭素系網状体を可撓性の基体上に単純にかつ直接的に製造することは、軽量の電子デバイスの開発を単純化する。相互接続された波状炭素系網状体は、プラスチック、金属、およびガラスなどの様々な基体上で合成することが可能である。本明細書では、全有機NO
2気体センサー、急速酸化還元活性電極、および白金(Pt)ナノ粒子の直接的な成長のための骨格を示す。
【0009】
少なくとも1つの実施形態では、相互接続された波状炭素系網状体は、ダイレクトツーディスクラベル書き込み機能を提供するコンパクトディスク/デジタルバーサタイルディスク(CD/DVD)、または光ディスクユニットの内部に嵌め合う一般的で安価な赤外線レーザーを用いて生成される電導膜である。LightScribe(Hewlett Packard Corporationの登録商標)およびLabelFlash(Yamaha Corporationの登録商標)は、CD/DVDディスクの表面上にテキストおよび図形をパターン化する例示のダイレクトツーディスク標識化技術である。LightScribeのDVDドライブは、20ドル前後で市販されており、光線スクライビング工程は、標準のデスクトップコンピュータを用いて制御される。
【0010】
図1は、ラベルエリア12と、芯出し穴16を囲む取り付けエリア14とを含む標準のダイレクトツーディスク標識化タイプのCD/DVDディスク10のラベル面を示す。染料膜18は、ラベルエリア12を覆い、図形20およびテキスト22を含み得る永続的な可視画像を生成するために一般的にラベルエリア12に方向付けられるレーザーエネルギーに敏感である。位置追跡インデイシアム24は、光ディスクドライブ(図示せず)で用いて、光ディスクドライブ内のCD/DVDディスク10の絶対角度位置を正確に突き止め、これで、図形20および/またはテキスト22が再書き込みされてコントラストを増加させることが可能となるようにすることが可能である。そのうえ、位置追跡インデイシアム24は、光ディスクドライブで用いて、さらなる図形および/またはテキストを、図形20および/またはテキスト22を不要に上書きすることなく書き込むことを許容することが可能である。
【0011】
図2は、先行技術によるダイレクトツーディスク標識化タイプの光ディスクドライブシステム26の概略図である。この例示の場合では、CD/DVDディスク10は、断面形状で示されており、CD/DVDスピンドルモーター30で駆動されるスピンドルアセンブリ28に装着されている。ラベルエリア12は、ラベル書き込みレーザー(LWL)34、レンズ36、および焦点アクチュエータ38を含むレーザーアセンブリ32に対面しているところが示されている。LWL34は、一般的には、レーザーダイオードである。LWL34の例示の仕様書は、780nm発光で350mWの最大パルス光出力と、660nm発光で300mWの最大パルス出力と、を含む。LWL34によって放出されたレーザー光線40は、CD/DVDディスク10のラベルエリア12上にレーザー光線40の焦点を維持するために焦点アクチュエータ38によってLWL34に向かって、またこれから離れるように交互に移動されるレンズ36によって焦点合わせされる。レーザー光線40は、一般的には、0.7μm前後〜1μm前後に及ぶ直径に焦点合わせされる。
【0012】
レーザーアセンブリ32は、光ドライブインターフェース(ODI)46を介して制御信号44を提供する制御システム42に応答する。制御システム42は、中央処理装置(CPU)48およびメモリ50をさらに含む。CD/DVDディスク10のラベルエリア12上に書き込まれる永続的な画像を実現するために必要な情報を有するラベル画像データ(LID)は、CPU48によって処理され、すると、このCPUは、LIDストリーム信号52を提供し、この信号が、LWL34をオンとオフに鼓動させて、染料膜18を加熱して、LIDによって画定される画像を実現する。
【0013】
CPU48はまた、ODI46を介してLIDを処理して、位置制御信号54をラジアルアクチュエータ56に提供し、このアクチュエータは、LIDに含まれる位置情報に応答して、ラベルエリア12を基準としてレーザーアセンブリ32を移動させる。本実施形態の一部のバージョンでは、光ディスクドライブシステム26は、受光器(図示せず)でレーザー光線40の焦点を監視し、これにより、ODI46は、焦点アクチュエータ38用の焦点制御信号58を生成することが可能となる。ODI46はまた、CD/DVDスピンドルモーター30用にモーター制御信号60を提供するが、このモーターは、ラベル書き込み工程が進行中の間に、CD/DVDディスク10の適切な回転速度を維持する。
【0014】
光ディスクドライブシステム26の一部のバージョンでは、LWL34は、もっぱら、CD/DVDディスク10のラベルエリア12に対して直接にラベル書き込みするために用いられ、個別のレーザーダイオード(図示せず)は、CD/DVDディスク10のデータ面62に対して/これからデータを書き込むおよび/または読み出すために用いられる。LWL34が、ラベルの書き込みと、データの読み出しおよび/または書き込みとに用いられる光ディスクドライブシステム26のバージョンもある。LWL34がデータの読み出しおよび/または書き込みに用いられるとき、CD/DVDディスク10をひっくり返して、CD/DVDディスク10のデータ面62をレーザー光線40に曝す。LWL34がデータ読み出し/書き込みレーザーとして用いられるバージョンでは、レーザーアセンブリ32は、ビームスプリッタなどの光ピックアップ部品(図示せず)と、少なくとも1つの受光器とを含む。LWL34の出力は、一般的には、データ読み出し動作中では、3mW前後である。
【0015】
高度の調節可能な導電率および電気化学的特性を持つ大表面積を有する相互接続された波状炭素系網状体を作製してパターン化する安価な工程を実現するために光ディスクドライブシステム26を用いるためには、炭素系膜を、染料膜18(
図1)の代わりに導入する。1つの実施形態では、酸化黒鉛(GO)を、修正されたHummerの方法を用いて高純度の黒鉛粉末から合成する。水中へのGOの分散(3.7mg/mL)を次に用いて、様々な基体上にGO膜を作製する。例示の基体には、これには限られないが、ポリエチレンテレフタル酸塩(PET)、ニトロセルロース膜(0.4μmの細孔サイズ)、アルミホイル、炭化されたアルミニウム、銅ホイル、および普通の複写機紙が含まれる。
【0016】
図3を参照すると、工程100は、黒鉛粉末64を提供すすることから始まる。黒鉛粉末64は、修正されたHummerの方法を用いて酸化反応を受けて、GO66になる(ステップ102)。しかしながら、GOを生成する他の酸化方法が利用可能であり、このような方法は本開示の範囲内にあることを理解すべきである。剥離手順は、剥離されたGO68を生成する(ステップ104)。剥離手順は、超音波処理を介して遂行され得る。剥離されたGO68は、部分的剥離の結果得られ、GOの単一層に完全に剥離されるわけではないことを理解すべきである。部分的剥離を用いて、急速なセンサー応答を可能とする急速酸化還元応答を可能とする大きい接触可能な表面積を生じさせる。加えて、GO68の部分的剥離が、次に触媒反応に用いることが可能な金属ナノ粒子を成長させる大きい表面積を提供する。基体70は、剥離されたGO68を基体70上に堆積される堆積手順(ステップ106)によって生成されるGO膜72を担持する。少なくとも一部の実施形態では、GO膜72は、GO分散物を、CD/DVDディスクのサイズである基体70上にドロップ鋳造または真空フィルタリングすることによって作成される。GO膜72は、一般的に、周囲条件下で24時間乾燥される。しかしながら、GO膜72を比較的より低い湿度および比較的より高い温度に曝すように条件を制御することによって、GO膜72は比較的迅速に乾燥される。本明細書ではGOという用語は、酸化黒鉛のことである。
【0017】
図4を参照すると、GO膜(複数可)72の個々を、CD/DVDディスク10(
図1)に類似の寸法を有する基体担体74に固定する(ステップ108)。GO膜72を持つ基体70を担持する基体担体74は、光ディスクドライブシステム26(
図2)中に装着され、これで、GO膜72がLWL34に対面して、レーザー処理を受ける(ステップ110)。この方法では、本実施形態は、染料膜18(
図1)の代わりにGO膜72を用いる。基体担体74は、その上でGO膜72を直接的に製造可能な剛体のまたは半剛体のディスクであり得ると理解すべきである。この場合、基体担体74は、基体70の機能に取って代わる。
【0018】
電気部品78を実現する画像76は、同心円状にパターン化され、基体担体74の中心から外部に移動する(ステップ112)。このレーザー照射工程の結果、酸素種が除去され、sp
2炭素が回復される。これが、>20MΩ/sqの一般的な抵抗値を持つGO膜72の導電率に変化をもたらし、相互接続された波状炭素系網状体80を形成する比較的高度に導電性の複数の拡張かつ相互接続された炭素層になる。GO膜72が何回もレーザー処理される結果、相互接続された波状炭素系網状体80の導電率に著しいかつ制御不可能な変化が起こる。相互接続された波状炭素系網状体80は、炭素層の拡張かつ相互接続された網状体中での高い表面積と高い導電率を含む特性の組み合わせを有する。1つの実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、1400m
2/gより大きい表面積を有する。別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、1500m
2/gより大きい表面積を有する。さらに別の実施形態では、表面積は、約1520m
2/g前後である。1つの実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、約1500S/mより大きい導電率をもたらす。別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、約1600S/mより大きい導電率をもたらす。さらに別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、約1650S/mより大きい導電率をもたらす。さらに別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、約1700S/mより大きい導電率をもたらす。さらに別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、約1738S/m前後の導電率をもたらす。そのうえ、1つの実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、約1700S/mより大きい導電率と、約1500m
2/gより大きい表面積と、をもたらす。別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、約1650S/m前後の導電率と、約1520m
2/g前後の表面積と、をもたらす。
【0019】
デバイス84の製造に用いられる電極82を備える電気部品78は、約1738S/m前後の比較的高い導電率に到達する前に6回レーザー照射される。レーザー照射工程は、1サイクルあたり約20分かかる。その後、相互接続された波状炭素系網状体80と、なんらかの残留するGO膜72と、を担持する基体70は、基体担体74から取り除かれる(ステップ114)。次に、相互接続された波状炭素系網状体80は、電気製品78に製造されて、これがデバイス84になる(ステップ116)。この例示の場合では、基体70上の相互接続された波状炭素系網状体80の部分は、矩形のセクションに切り分けられて、電気製品78となるが、これは、相互接続された波状炭素系網状体80から形成された電極82を含む。
【0020】
相互接続された波状炭素系網状体80は、わずか3.5%という非常に低い酸素含有量を保有する。拡張されかつ相互接続された炭素層の酸素含有量は、約1%前後〜約5%前後に及ぶ実施形態もある。
図5は、単一の波状炭素シート86などの波状炭素層を含む複数の拡張されたかつ相互接続された炭素層から成る相互接続された波状炭素系網状体80のサンプルの線図である。1つの実施形態では、拡張されかつ相互接続された炭素層の各々は、1原子厚である少なくとも1つの波状炭素シートを備える。別の実施形態では、拡張されかつ相互接続された炭素層の各々は、各々が1原子厚である複数の波状炭素シートを備える。相互接続された波状炭素系網状体80の厚さは、断面電子顕微鏡(SEM)および形状測定から測定して、約7.6μm前後であることが分かった。1つの実施形態では、相互接続された波状炭素系網状体80を形成する複数の拡張かつ相互接続された炭素層の厚さの範囲は、約7μm〜8μmである。
【0021】
可能な画像パターン化の多様性の例証として、GOの直接レーザー還元によって形成された複雑な画像を
図6Aおよび6Bに示す。
図6Aは、回路で覆われた人の頭部のアートワーク画像である。
図6Bは、
図6Aのアートワーク画像が、本開示のレーザースクライビング技法を用いてGO膜上に直接にパターン化された後でのGO膜の写真である。本質的に、780nmの赤外線レーザーと直接接触するGO膜のどの部分も、相互接続された波状炭素系網状体に効果的に還元され、還元の量は、GO膜に衝突するレーザー光線の出力密度によって決まる係数であるレーザー強度によって制御される。
図6Bの結果としての画像は、
図6Aの原画像の有効な印刷物である。しかしながら、この場合、
図6Bの画像は、GO膜の様々な還元作用から成る。予期したとおり、最も暗いエリアは、最も強いレーザー強度に対する暴露を示し、より明るい灰色のエリアは、部分的にしか還元されていない。様々な濃淡レベルがレーザー強度と直接に相互関連しているため、生成される相互接続された波状炭素系網状体の電気的特性を、パターン化工程中で用いられる濃淡レベルを単純に変更するだけで、シート抵抗(Ω/sq)で5桁〜7桁の範囲で調節することが可能である。
図7に示すように、シート抵抗、濃淡レベル、およびGO膜がレーザー照射される回数の間には明瞭な関係がある。>20MΩ/sqの一般的なシート抵抗値を持つ完全に絶縁性のGO膜から、約1650S/mの導電率に移行する約80Ω/sqのシート抵抗値を表す導電性の相互接続された波状炭素系網状体に至る導電率の制御は可能である。この方法は、シート抵抗が濃淡レベルのほんの少しの変化でもかなり変化する
図7のグラフに示すように類似の濃淡レベル同士を識別するに十分敏感である。加えて、GO膜が何回もレーザー処理されるため、シート抵抗が著しく、かつ制御不可能に変化する結果となる。さらにレーザー処理される毎に、
図7に示すようにシート抵抗が低下するが、図中、濃淡レベルに対して、膜が一回(黒の正方形)、2回(円形)、および3回(三角形)レーザー照射されている。したがって、膜のシート抵抗は、用いられる濃淡レベルと、他の方法では従来制御が難しかった特性である膜がレーザーで還元される回数との双方を制御することによって調節可能である。
【0022】
走査型電子顕微鏡(SEM)技法は、低エネルギー赤外線レーザーがGO膜の構造的特性に対して有する影響を、相互接続された波状炭素系網状体と未処理の酸化黒鉛GO膜との間の形態学的な差を比較することによって理解するために用いることが可能である。
図8Aは、赤外線レーザーで還元された後で発生する画像の左面上の整列された相互接続された波状炭素系網状体と対照を成して、画像の右面に対するレーザー処理の前のGO膜に対する赤外線レーザーの影響を図示する走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。この画像は、相互接続された波状炭素系網状体と未処理のGO領域との間に明瞭な鮮明度を示すだけではなく、この方法を、GOをパターン化して還元するための手段として用いるときに可能な精度のレベルを示す。レーザー処理の結果得られる相互接続された波状炭素系網状体の領域は、断面SEMによってさらに分析することが可能である。
【0023】
図8Bは、GO膜厚に著しい差を示す、レーザー処理された独立膜と未処理のGO膜の断面図を示すSEM画像である。
図8B中の白い角カッコで示すように、相互接続された波状炭素系網状体は、未処理のGO膜のそれと比較して約10倍厚さが増加する。そのうえ、複数の拡張かつ相互接続された炭素層の厚さの範囲は、7μm前後〜8μm前後である。1つの実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層の平均厚さは、7.6μm前後である。増加した厚さは、レーザー処理中に生成され、放出される気体の急速なガス抜きによるものであるが、これは、これらの気体がGO膜中を急速に通過する際に、還元されたGOを効果的に拡張させて剥離させる熱衝撃に類似している。
図8Cは、本開示の相互接続された波状炭素系網状体の特徴である拡張構造を示す、1つの相互接続された波状炭素系網状体の断面図を示すSEM画像である。
【0024】
図8Dは、
図8C中の波状炭素系網状体内の選択されたエリアのより大きい拡大図を示すSEM画像である。
図8DのSEM画像は、複数の拡張かつ相互接続された炭素層の厚さが5〜10nmの間であると計算されることを許容する。しかしながら、相互接続された波状炭素系網状体を形成する複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数は、100を超える。別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数は、1000より大きい。さらに別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数は、10000より大きい。さらに別の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層中の炭素層の数は、100000より大きい。SEM分析は、赤外線レーザーの放出量はGOによってわずかしか吸収されないとはいえ、十分な出力と焦点(すなわち、出力密度)が、GO膜を効率的に還元し、酸素除去し、拡張し、剥離させるための十分な熱エネルギーをもたらすことが可能であることを示す。そのうえ、相互接続された波状炭素系網状体の表面積は、約1500m
2/gより大きい。
【0025】
炭素層の各々が2630m
2/gの理論的表面積を有するため、1500m
2/gより大きい表面は、炭素層のほとんどすべての表面が接触可能であることを示す。相互接続された波状炭素系網状体は、17S/cmより大きい導電率を有する。相互接続された波状炭素系網状体は、ある波長の光線がGOの表面に衝突するときに形成され、次に吸収されて実質的に即座に熱に変換され、これが二酸化炭素(CO
2)を開放する。例示の光源には、これらに限られないが、780nmレーザー、緑色レーザー、および懐中電灯が含まれる。光源の光線放出は、近赤外線から紫外線の波長に及ぶ。相互接続された波状炭素系網状体の一般的な炭素含有量は、97%より大きく、3%未満の酸素が残留する。相互接続された波状炭素系網状体の一部のサンプルは、レーザー還元工程が空中で実施されたとはいえ、炭素が99%を超える。
【0026】
図9は、波状炭素系網状体の粉末X線回折(XRD)パターンを、黒鉛の回折パターンと酸化黒鉛の回折パターンとの双方と比較する。黒鉛の一般的なXRDパターン、すなわち
図9に示すトレースAは、3.20Åのd間隔で2θ=27.8°の特徴的ピークを表示する。一方、GOのXRDパターン(
図9のトレースB)は、2θ=10.76°の単一ピークを示すが、これは8.22Åの層間d間隔に相当する。GO中の増加したd間隔は、底面同士間で水分子を捕獲する傾向があって、シートを拡大させて分離させる酸化黒鉛中の官能基を含有する酸素のためである。波状炭素系網状体のXRDパターン(
図9のトレースC)は、GO(10.76°2θ)と、3.43Åのd間隔と関連付けられる25.97°2θでの広い黒鉛ピークと、の存在を示す(
図10C)。波状炭素系網状体中でのGOの存在は予測されていたことであり、それは、レーザーが、好ましい侵入深さを有しており、その結果、膜の頂部部分だけが還元され、底部層はレーザーに影響されないからである。GOの存在が取るに足りないことは、膜厚が増すほどより顕著になるが、膜厚が薄くなるほどそうではなくなり始める。加えて、また26.66°2θで部分的に遮られたピークを観察することが可能であるが、これは、25.97°2θピークのそれに類似した強度を示す。これらのピークは双方ともが、底面同士間の互いに異なった2つの格子間隔に関連付けられる黒鉛のピークであると考えられる。
【0027】
ガラス状の炭素電極上でのカーボンナノチューブ(CNT)の不動化の結果、薄いCNT膜となり、これがCNTの変性された電極のボルタメトリック反応に直接的に影響することが既に示されている。フェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元結合において、CNT変性電極で測定されるボルタメトリック電流は、2つのタイプの寄与を有する可能性が高い。薄層効果は、ボルタメトリック電流への明らかな寄与因子である。薄層効果は、ナノチューブ同士間で捕獲されるフェロシアン化物の酸化によって生じる。その他の寄与は、平面的な電極表面に向かうフェロシアン化物の半無限の拡散の結果である。残念ながら、機械論的情報は、容易には解析されず、膜厚の知識を必要とする。
【0028】
対照的に、本開示の相互接続された波状炭素系網状体と関連した薄層効果は観察されない。
図10は、適用されたボルタメトリック走査速度のlog
10に対するピーク電流のlog
10のプロット図である。この場合、このプロット図は、0.53の一貫した勾配およびその線形を有しているため、薄層効果は観察されない。0.53という勾配は、Randles−Sevcik式で決定される半無限の拡散モデルを用いて計算された理論値に比較的近い。
【0029】
【数1】
ラマン分光法を用いて、GO膜のレーザー処理によって引き起こされた構造的変化を特徴付けて比較する。
図11A〜11Eは、ラマン分光法分析に関連するグラフである。
図11Aから分かるように、特徴部D、G、2D、およびS3のピークは、GOと相互接続された波状炭素系網状体との双方に観察される。双方のスペクトルにD帯域が存在することは、炭素sp
3の中心が、還元後でも存在することを示唆する。面白いことに、相互接続された波状炭素系網状体のスペクトルは、D帯域のピークが約1350cm
−1で少し増加していることを示している。この予期しない増加は、構造的エッジ効果の存在がより大きいためであり、より小さい黒鉛ドメインの量の全体的増加を示す。その結果は、レーザー処理によって惹起された剥離済みのアコーディオン状の黒鉛領域(
図5)が、多くのエッジを生じさせるSEM分析と一致する。しかしながら、D帯域もまた、かなりの全体的なピーク狭窄化を示し、相互接続された波状炭素系網状体中の欠陥のタイプの減少を示唆している。G帯域は、狭窄化およびピーク強度の減少ならびに1585から1579cm
−1へのピークシフトを経験する。これらの結果は、sp
2炭素の再確立および底面内の構造的欠陥の減少と一致する。G帯域での全体的変化は、非晶質の炭素状体からより結晶質の炭素状態への遷移を示す。加えて、顕著で、かつ約2730前後から約2688cm
−1前後へのシフト済みの2Dピークが、GOが赤外線レーザーで処理された後に見られ、GO膜のかなりの還元を示し、少数層の相互接続済み黒鉛構造の存在を指し示している。1つの実施形態では、相互接続された波状炭素系網状体に対する2Dラマンピークは、相互接続された波状炭素系網状体が炭素系酸化物から還元された後で、約2700cm
−1前後から約2600cm
−1前後にシフトする。そのうえ、格子の不規則性の結果、D−Gの組み合わせが、約2927cm
−1で現れて、予期したように、赤外線レーザー処理後に不規則性が減少するに連れて減退するS3二次ピークを生成する。一部の実施形態では、複数の拡張かつ相互接続された炭素層は、約2920cm
−1前後〜約2930cm
−1前後に及ぶラマン分光法S3二次ピークの範囲を有する。ラマン分析は、相互接続された波状炭素系網状体を効果的にかつ制御可能に生成するための手段としての赤外線レーザーでGOを処理することの有効性を示している。
【0030】
X線光電子分光法(XPS)を用いて、酸素の官能性に対するレーザー照射の影響を相互関連付けし、GO膜上の構造的変化を監視した。GOと相互接続された波状炭素系網状体との間での炭素対酸素(C/O)比の比較が、単純な低エネルギー赤外線レーザーを用いて達成される還元の範囲の効果的な測定を提供する。
図11Bは、GO膜のレーザー処理前と後のC/O比同士間の著しい相違を示す。レーザー還元の前では、一般的なGO膜は、約72%および38%の炭素/酸素含有量に相当する約2.6:1のC/O比を有する。一方、相互接続された波状炭素系網状体は、96.5%の向上した炭素含有量と、3.5%の減退した酸素含有量とを有し、全体的C/O比は27.8:1となる。レーザー還元工程は周囲条件下で発生するため、相互接続された波状炭素系網状体膜中に存在する酸素の一部は、この環境下で見つけられる酸素との静的相互作用を膜が有する結果であることを前提とする。
【0031】
図11Cは、GOのC1sXPSスペクトルが、290.4eVでの小さいπ〜π
*ピークに加えて、2つの広いピークを示しているが、これらは、一般的にGO表面上に見つけられる官能基に対応する互いに異なった3つの炭素成分に分解されることを示している。これらの官能基は、カルボキシル、エポキシドおよび水酸基の形態を持つsp
3炭素、ならびにsp
2炭素を含むが、これらは、それぞれ約288.1、286.8、および284.6eVの結合エネルギーと関連付けられる。
【0032】
図11Dは、予期された結果、すなわち、GO中での大きい度合いの酸化の結果、GOのC1sXPSスペクトル中に様々な酸素成分が存在すること、を示す。これらの結果は、官能基を含有する酸素のかなりの減少と、C−Cでのsp
2炭素ピークの全体的増加とを示す相互接続された波状炭素系網状体と対照的である。これは、相互接続された波状炭素系網状体中での効率的な脱酸素工程およびC=C結合の再確立を指し示す。これらの結果は、ラマン分析と一致する。したがって、LWL34(
図2)などの赤外線レーザーは、小さい不規則ピークおよび287.6eVでのピークを示すだけの、相互接続された波状炭素系網状体のXPSスペクトル中で明らかなように、酸素官能基の大部分を除去するのに充分強力である。後者は、sp
3タイプの炭素の存在に対応し、少量のカルボキシル基が最終生成物中に残留することを示唆する。加えて、約290.7eVでのπ〜π
*衛星ピークの存在は、非局在化されたπ共役が、相互接続された波状炭素系網状体中ではかなりより強いことを示すが、これは、このピークが、GOのXPSスペクトル中では非常に小さいからである。非局在化されたπピークの出現は、GO膜中での共役がレーザー還元工程中に回復し、sp
2炭素網状体が再確立されたことにたいする支持を加えることを明確に示す。官能基を含有する酸素の減少した強度、優勢なC=C結合ピーク、および非局在化されたπ共役の存在はすべて、低エネルギー赤外線レーザーが、相互接続された波状炭素系網状体の生成に際して有効なツールであることを示す。
【0033】
図11Eは、黒色で示したGOの紫外可視光線の吸収度スペクトルを示す。挿入図は、650〜850nm領域における780nmの赤外線レーザーに対するGOの吸収度を示すボックスに入ったエリアの拡大図を示す。
【0034】
ロールアップディスプレイ、光電池、およびさらにウエアラブルデバイスなどの多機能可撓性電子機器の将来の開発は、軽量で、可撓性のエネルギー直積デバイスの設計および製造に対する新たな挑戦を提示する。
【0035】
本開示の実施形態もまた、他のタイプの電気デバイスおよび電子デバイスを含む。例えば、
図12Aは、GOの薄い膜上に直接パターン化された、6mm×6mmの寸法を持ち、約500μmの間隔で配置された交互嵌合された電極の集合を示す構造式である。パターン化される前に、GO膜は、薄い可撓性の基体、すなわちポリエチレンテレフタレート(PET)上に堆積されて、機械的に可撓性である電極の集合を製造した。頂部の矢印は、黒色の交互嵌合された電極を形成する相互接続された波状炭素系網状体の領域を指し示しており、底部矢印は、未還元の金色のGO膜を指し示している。電極は可撓性の基体上のGO膜上に直接にパターン化されているため、膜を新しい基体に転写するなどの後処理の必要性はない。もっとも、所望しだいでは、剥がして貼り付ける方法を用いて、相互接続された波状炭素系網状体から成る黒色の交互嵌合された電極を、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)で選択的に除去して、それを他のタイプの基体(
図12B)上に転写してもよい。この方法の簡便さは、レーザー強度を制御し、これで各々の膜中での還元の量を制御することによる、パターンの寸法、気体の選択性、および相互接続された波状炭素系網状体の電気的特性に対する実質的な制御を許容する。
【0036】
これらの交互嵌合された電極は、次に、NO
2の方向に対する全有機可撓性気体センサーとして用いることが可能である。
図13は、乾燥した空気中で20ppmのNO
2に曝された相互接続された波状炭素系網状体から作られた交互嵌合された電極のパターン化された可撓性の集合に対するセンサーの反応を示す。このセンサーは、相互接続された波状炭素系網状体をパターン化して活性電極を製造し、これらの電極同士間のエリアを還元して約7775オーム/sqの一貫したシート抵抗を有することによって製造された。このようにして、金属電極の使用を回避して、電極と感知材料の双方を可撓性の基体上に直接的に同時にパターン化することが可能である。プロット図は、NO
2気体に対する暴露をR/R
0に関連付けるが、ここで、R/R
0は、初期状態でのシート抵抗であり、Rは、この気体に暴露された後の相互接続された波状炭素系網状体膜の抵抗である。この膜は、10分間NO
2気体に曝された後で即座に、さらに10分間空気で清浄化された。この工程は、次に、合計で200分間にわたってさらに9回繰り返された。より洗練されかつ最適化されたセンサーより少し感度は低いとはいえ、相互接続された波状炭素系網状体から成る非最適化されたセンサーはそれでも、NO
2に対する良好で、可逆的な感知を示し、それは、製造が容易なため、これらのシステムにとっては極めて利点となるものである。NO
2用の相互接続された波状炭素系網状体から成るセンサーは、安価な層で直接にパターン化された安価な開始材料を用いての低コストでの全有機可撓性センサーデバイスの製造を向上させることに期待を抱かせるものである。
【0037】
複数の拡張活相互接続された炭素層に起因する高い導電率および増加した表面積によって、相互接続された波状炭素系網状体は、金属ナノ粒子に対する不均一触媒に対する支援として用いられる有望な候補となっている。特に、相互接続された波状炭素系網状体上へのPtナノ粒子の直接的な成長は、大表面積で導電性の炭素系の骨格より向上したデバイス性能を示しているメタノール系の燃料電池の向上を支援し得るものである。本開示は、相互接続された波状炭素系網状体が、Ptナノ粒子の制御可能な成長のための有望な骨格であることを示す。様々な時間期間にわたって−0.25Vで0.5MのH
2SO
4で1mMのK
2PtCl
4を電気化学的に還元することによって、相互接続された波状炭素系網状体膜上に電着されるPtの粒径を能動的に制御することが可能である。
図14A〜14Dは、Ptナノ粒子の、0、15、60、および120秒に対応する電着時間に対する成長を示す走査型電子顕微鏡画像を示す。予期したとおり、0秒の電着時間ではPt粒子は存在せず(
図14A)、ちょうど15秒後には少量のPtナノ粒子が明瞭に認められ(
図14B)、そのナノ粒子サイズは10〜50nmに及んだ(
図14Bの挿入図)。電着60秒後では、平均で100〜150nmの粒径を持つ大量のPtナノ粒子が成長している(
図14C)。最後に、120秒後では、200〜300nmの粒子が、相互接続された波状炭素系網状体の表面全体にわたって均一に分布して見受けられる(
図14D)。相互接続された波状炭素系網状体上における制御可能な直径でのPtナノ粒子の活発な成長によって、潜在的に有用なハイブリッド材料を、メタノール燃料電池および気相触媒などの、金属ナノ粒子を必要とする応用分野とし得る。そのうえ、パラジウム(Pd)を堆積されると、相互接続された波状炭素系網状体から成るセンサーを、水素を検出するセンサーまたはSuzuki結合もしくはHeck結合などの触媒反応のために用いられ得る。
【0038】
炭素電極は、様々な電気化学的応用分野に対する著しい関心を引き寄せてきたが、それは、これらの広い電位窓と、多くの酸化還元反応のための良好な電極触媒活性とのためである。その大きな表面積および可撓性ならびに、それが全炭素電極であるという事実を考慮すると、相互接続された波状炭素系網状体は、小型で安全に可撓性のデバイスを作製することによって、電気化学的システムに革命をもたらし得る。本明細書では、相互接続された波状炭素系網状体の電気化学的特性を理解することは、その電気化学的応用分野に対する潜在性を決定するに際して高度に恩典がある。最近では、グラフェンの電極触媒性は、大部分が、その底面ではなくてそのエッジでの効率的な電子移動に由来することがわかっている。事実、グラフェンは、あるシステムでは、エッジ平面の高次数の別分解黒鉛のそれに類似する電極触媒活性を示すことが報告されている。高度に拡張された網状体を有することに加えて、相互接続された波状炭素系網状体もまた、大量のエッジ表面を示し(
図5を戻って参照)、これを、黒鉛系のナノ材料の電気化学性に対するエッジ平面の役割を研究するための理想的なシステムとしている。
【0039】
この点において、酸化還元プローブとして[Fe(CN)6]
3−/4−結合を用いる相互接続された波状炭素系網状体から成る可撓性電極の電子移動と関連付けられる電気化学的挙動を特徴としている。例えば、
図15は、50mV/sの走査速度での、GOと、黒鉛と、1.0MのKCl溶液に溶解された5mMのK
3[Fe(CN)
6]/K
4[Fe(CN)
6]の等モル濃度の混合物中の相互接続された波状炭素系網状体から成る電極と、のCVプロフィールを比較する。GOおよび黒鉛とは異なって、相互接続された波状炭素系網状体から成る電極は、10mV/sの走査速度で59.5mV〜400mV/sの走査速度で97.6mVの低いΔEp(ピークツーピーク電位分離)を持つ完全に可逆性のシステムの挙動に近づく。低いΔEp値は、59mVの計算された理論値に近づく。ΔEpが電子移動定数(k
0obs)に直接関連していることを考慮すれば、ΔEpの低い実験値は、非常に速い電子移動速度を示している。計算されたk
0obs値は、黒鉛の場合の1.266×10
−4cms
−1から変化し、かつ、予期したとおり、相互接続された波状炭素系網状体の場合の1.333×10
−2cms
−1まで増加する。
【0040】
電子移動動力学の評価のために用いられた酸化還元システムは、1.0MのKCl溶液に溶解された5mMのK
3[Fe(CN)
6]/K
4[Fe(CN)
6](1:1モル比)であった。安定した電気化学的応答を保証するために、電極は、実験データを収集する前に少なくとも5回走査するように最初に循環された。不均一電子移動速度定数(k
0obs)は、次式に従ってピーク分離(ΔEp)を無次元動力学パラメータΨに、そして結局k
0obsに関連付けるNicholsonによって開発された方法を用いて決定された。
【0041】
【数2】
ここで、D
OおよびD
Rは、それぞれ酸化種および還元種の拡散係数である。その他の変数には、適用される走査速度のv、反応で移動する電子の数のn、ファラデー定数のF、気体定数のR、絶対温度のT、および移動係数のαが含まれる。酸化種および還元種の拡散係数は一般に類似しており、したがって、項目(D
R/D
O)
α/2は約1である。7.26×10
−6cm
2s
−1が、1.0MのKCl中の[Fe(CN)6]
3−/4−に対して用いられた。
【0042】
相互接続された波状炭素系網状体から成る電極での電子移動速度(黒鉛電極より約2桁速い)の比較的大幅な増加に加えて、ボルタメトリックピーク電流の約268%の増加から分かるような、相互接続された波状炭素系網状体から成る電極の場合にも著しい電気化学的活性がある。これらの劇的な向上は、電気活性な種の効果的な拡散のために大きい空き領域を提供し、かつ、相互接続された波状炭素系網状体表面とのより良好な界面での相互作用を許容する相互接続された波状炭素系網状体膜の拡張されたアーキテクチャのおかげである。加えて、このように、単位質量あたりのエッジ状表面の大きさは、黒鉛よりはるかに高く、したがって、本明細書に見られるようにより高い電子移動速度に貢献すると推測される。相互接続された波状炭素系網状体中で多くのエッジ部位が曝されていることを考慮すれば、それが黒鉛より高いk
0obs値を有するだけではなく、炭素ナノチューブ系の電極のそれと、積層グレフェンのナノ繊維のそれとを上回ることが分かっても驚くにはあたらない。
【0043】
相互接続された波状炭素系網状体から成る電極は、還元されるときに電極と電流コントローラとの双方として機能し、したがってこの特殊な電極を軽量で可撓性とするだけではなく安価なものともするGOで覆われた可撓性のPET基体上に製造されることに注意されたい。加えて、XPS分析を介して示されるような相互接続された波状炭素系網状体中での低い酸素含有量(約3.5%)は、本明細書中に見受けられる電気化学的活性にとって極めて利点となるが、それは、エッジ平面部位での高い酸素含有量は、フェリシアン化物/フェロシアン化物の酸化還元結合の電子移動を制限し、かつ遅速化することが分かっているからである。したがって、本開示の実施形態は、蒸気感知、生体内感知、電極触媒作用、およびエネルギー蓄積における潜在的応用分野用の高度に電気活性な電極を作製する方法を提供する。
【0044】
本開示は、黒鉛系の材料を低コストで生成し、パターン化し、電子的に調節する手軽で、ソリッドステートで、環境的に安全な方法を提供する。相互接続された波状炭素系網状体は、周囲条件下でのGO膜の直接的なレーザー照射によって成功裏に生成され、かつ選択的にパターン化されることが分かっている。回路および複雑なデザインが、マスク、テンプレート、後処理、転写技法、または金属触媒なしで様々な可撓性の基体上に直接にパターン化される。加えて、レーザー強度およびレーザー照射処理法を変化させることによって、相互接続された波状炭素系網状体の電気的特性が5桁にわたって正確に調整されるが、これは、他の方法では困難であることが分かっている特徴である。相互接続された波状炭素系網状体を生成するこの新しいモードは、気体センサーなどの全有機系のデバイスおよび他の電子機器を製造するための新たな場を提供する。相互接続された波状炭素系網状体を生成するこの比較的安価な方法は、それを、金属ナノ粒子の選択的成長のための比較的理想的な不均一な骨格とする。そのうえ、金属ナノ粒子の選択的成長は、メタノール燃料電池の電極触媒作用に将来性を有する。さらにまた、相互接続された波状炭素系網状体から成る膜は、フェロシアン化物/フェリシアン化物酸化還元結合の電子電荷移動で他の炭素系電極を上回る例外的な電気化学的活性を示す。安価なレーザーを用いてのGOの還元とパターン化との同時実施は、新しい技法であり、これは、電子デバイス、全有機デバイス、非対称膜、マイクロ流体装置、統合誘電層、バッテリー、気体センサー、および電子回路の製造にとって著しい多様性を提供する。
【0045】
他の露光技法とは対照的に、この工程は、LightScribe技術で未修正の、市販されているCD/DVD光ディスクドライブ中で低コストの赤外線レーザーを用いて、複雑な画像をGO上にパターン化し、同時にレーザー変換された波状炭素網状体を生成するさらなる恩典を有する。LightScribe技術によるレーザーは、一般的には、5mW前後〜350mW前後の範囲内の出力で780nmの波長で動作される。しかしながら、炭素系酸化物がレーザー放出のスペクトル内に吸収される限り、この工程は所与の出力で任意の波長で達成可能であることを理解すべきである。この方法は、様々な薄膜に対する後処理をなんら必要とすることなく実施可能な、相互接続された波状炭素系網状体を生成する単純で、単一ステップ、低コストで、マスクを必要としないソリッドステート方式である。黒鉛系の材料を生成する他の還元方法とは異なって、この方法は、非化学的経路であり、比較的単純で環境的に安全な工程であって、化学的な還元剤によって限定されない。
【0046】
本明細書に説明する技法は、安価で、大きい装置を必要とせず、膜の導電率および画像のパターン化に対する直接的制御を表示し、可撓性の電子デバイスを製造する単一ステップとして用いることが可能であり、これらは全て、高価なマスクの洗練された位置合わせまたは生成を必要としない。また、用いられる材料の導電性のため、結果得られる導電率を様々なレーザー強度での単純なパターン化によって制御することが可能であり、これは、他の方法ではまだ示されていない特性である。作用回路、電極、キャパシタ、および/または導線は、コンピュータ化されたプログラムを介して正確にパターン化される。この技法は、コストまたは装置によって限定される他の技法とは異なって、様々なパラメータに対する制御を許容し、したがって、デバイス製造を簡略化する場を提供し、縮尺調整される可能性を有する。この方法は、これには限られないが、GO、電導ポリマー、および、炭素ナノチューブなどの他の光熱的に活性な化合物を含むいかなる光熱的に活性な材料にも適用可能である。
【0047】
上述したように、ソリッドステート状の黒鉛膜を還元してパターン化する、手軽で、安価で、汎用性があるだけではなく、単一ステップの環境的に安全な工程である、黒鉛系材料を生成する方法が提供される。単純、低エネルギーで、安価な赤外線レーザーを、GOの効果的な還元、後続の拡張および剥離ならびに微細パターン化のための強力なツールとして用いる。高度に還元されたレーザー変換済みの大面積の黒鉛膜を直接的にパターン化して効果的に生成する能力は別にしても、この方法は様々な他の薄い基体に適用可能であり、全く有機材料から成るデバイスの製造過程を簡略化する可能性を有する。可撓性の全有機センサーが、薄い可撓性のPET上に堆積されたGOのレーザーパターン化によって直接に製造された。相互接続された波状炭素系網状体はまた、簡単な電気化学的工程を介してのPtナノ粒子の成功裏の成長および寸法制御のための効果的な骨格であることが示された。最後に、相互接続された波状炭素系網状体から成る可撓性の電極が製造されたが、これは、フェリシアン化物/フェロシアン化物酸化還元結合同士間での電子移動直前での黒鉛と比較するときに電気化学的活性の約238%の印象的な増加による教科書的な可逆性を示している。この実際に可能であることを示す工程は、バッテリー、センサー、および電極触媒作用を含む本明細書に示した高い電気化学的活性から恩典を得る応用分野を効果的に改善する可能性を有する。
【0048】
当業者は、本開示の実施形態に対する改善および修正を認識するであろう。このような改善および修正は、本明細書に開示する概念およびこれに続くクレームの範囲内にあるものと考慮される。