(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの表面を有し且つ溶接される実世界の部品のシミュレーションを行う溶接クーポン(180)であって、該溶接クーポン(180)は、前記磁石(172)から既知の距離に配置されており、ここで前記溶接クーポン(180)の少なくとも1つの表面は、ソリッド変位層とパドル変位層とを含む二重変位層として仮想現実空間においてシミュレートされ、前記パドル変位層は、前記ソリッド変位層を変更可能である、溶接クーポン(180)をさらに含み、
前記磁石(172)と前記溶接クーポン(80)とを所定の空間的関係でサポートするようなスタンド(170)が提供される、
請求項2に記載の仮想溶接システム。
前記ヘルメット(146)の位置は、前記空間トラッカー(120)により決定されるとともに、前記プログラム可能なプロセッサベースのサブシステム(110)に通信される、
請求項4に記載の仮想溶接システム。
基準点は、溶接される実世界の部品をシミュレートする際の、少なくとも1つの表面を有する溶接クーポン(180)であり、該溶接クーポン(180)は、少なくとも1つの表面を有しており且つ溶接される実世界の部品をシミュレートし、前記溶接クーポン(180)の少なくとも1つの表面は、ソリッド変位層とパドル変位層とを含む二重変位層として、仮想現実空間においてシミュレートされ、前記パドル変位層は、前記ソリッド変位層を変更可能である、
請求項7に記載のモック溶接ツール。
前記インターフェイスは、前記アダプタ(162)内の少なくとも1つの第2の機械的機構に相補的な少なくとも1つの第1の機械的機構を含んでおり、前記ベース(166)に対する各アダプタ(162)の取外し可能な機械的結合を容易にする、
請求項10に記載のモック溶接ツール。
【発明を実施するための形態】
【0011】
参照を添付図面について行う。本発明の特定の実施形態及び更なる利点が、以下の詳細な説明に詳細に説明されるように示される。
ここで図面を参照すると、本発明のいくつかの実施形態又は実装形態は、以下で、図面とともに説明する。ここで、同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を参照するために使用される。本発明の実施形態は、複数のアダプタを収容するためのベースを有するモック溶接ツールを用いる仮想溶接システムを対象としており、ここで、各アダプタは、異なる溶接タイプをシミュレートする。アダプタは、必要なときにベースとの取外し可能なシームレスな結合が可能な共通のサイズを有することができる。様々な例示的な仮想溶接システムを以下に本明細書の文脈で示し且つ説明するが、本発明は、示された例に限定されるものではない。
【0012】
より具体的には、主題となる実施形態は、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムと、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された空間トラッカー(tracker)と、空間トラッカーによって空間的に追跡可能な少なくとも1つのモック(mock)溶接ツールと、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された少なくとも1つのディスプレイ装置とを含むような仮想現実溶接システムに関する。追加の柔軟性を提供するために、モック溶接ツールは、ベースと複数のアダプタとを含んでおり、各アダプタが、異なる溶接タイプをシミュレートするために用いられる。例えば、第1のアダプタはGMAW溶接をシミュレートすることができ、第2のアダプタはSMAW溶接をシミュレートすることができ、第3のアダプタは酸素燃焼溶接をシミュレートすること等ができる。代替的に又は追加的に、ツールは、酸素燃焼又は他の切断トーチ等の切断装置をシミュレートするために用いることができる。アダプタは全て、これらアダプタが共通のベースに接続され及び取り外される際に、シームレスなスイッチの切替えを可能にする標準化されたサイズを有することができる。ポータブルな使用に対応するために、モック溶接ツールと一緒に使用するための空間に溶接クーポンを保持するために、コンパクトに収納可能なスタンドが用いられる。このように、システムは、仮想現実空間における複数の溶接タイプをシミュレートすることが可能であり、溶接パドルは、各溶接タイプに見合ったリアルタイムの溶湯流動性及び熱放散特性を有する。
【0013】
シミュレートされた溶接パドルのリアルタイムの溶湯流動性及び熱放散特性は、表示されるときにモック溶接ツールのユーザにリアルタイムの視覚的フィードバックを提供し、ユーザが、このリアルタイムの視覚フィードバックに応答して、リアルタイムで溶接技術を調整又は維持することが可能になる。表示された溶接パドルは、ユーザの溶接技術や選択された溶接工程及びパラメータに基づいて、実世界で形成されるような溶接パドルを表す。パドル(例えば、形状、色、スラグ、サイズ)を確認することにより、ユーザは、良好な溶接部を形成するために自分の溶接技術を変更し、行うべき溶接のタイプを決定することができる。パドルの形状は、モック溶接ツールの動きに応答する。本明細書で使用される際に、用語「リアルタイム」は、ユーザが実世界の溶接シナリオにおいて知覚し且つ経験するのと同じ方法で、シミュレートされた環境でその時間内に知覚し且つ経験することを意味する。さらに、溶接パドルは、重力を含む物理的な環境の影響に応答し、ユーザが、水平方向の、垂直方向の、及び頭上の溶接並びに様々な角度でのパイプ溶接を含む様々な位置で溶接を現実的に練習することを可能にする。
【0014】
ここで例示的な実施形態を示す目的のために示される図面を参照すると、
図1は、リアルタイム仮想現実環境内でアーク溶接訓練を提供するような仮想溶接システム100のブロック図である。仮想溶接システム100は、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステム(PPS)110を含む。仮想溶接システム100は、サブシステム(PPS)110に動作可能に接続された空間トラッカー(ST)120をさらに含む。仮想溶接システム100は、サブシステム(PPS)110に動作可能に接続された有形の溶接ユーザインターフェイス(WUI)130と、サブシステム(PPS)110及び空間トラッカー(ST)120に動作可能に接続された顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140とを含む。仮想溶接システム100は、サブシステム(PPS)110に動作可能に接続された監視員用ディスプレイ装置(ODD)150をさらに含む。仮想溶接システム100は、空間トラッカー(ST)120及びサブシステム(PPS)110に動作可能に接続された少なくとも1つのモック溶接ツール(MWT)160も含む。仮想溶接システム100は、スタンド170と、このスタンド170に取付け可能な少なくとも1つの溶接クーポン(WC)180とをさらに含む。モック溶接ツール(MWT)160は、複数の異なる溶接タイプをシミュレートするために、1つ以上のアダプタ(図示せず)に結合するベース(図示せず)を含むことができる。
【0015】
図2は、
図1に示されたシステムの一実装形態を表すようなシステム200を示す。顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140を用いて、ユーザが溶接を視覚的に体験するためのシミュレートされた仮想環境を表示する。このシミュレートされた環境の正確なレンダリング(画像の3次元化)を提供するために、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140はサブシステム(PPS)110と通信して、システム200の顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140の空間位置に関するデータを送受信する。通信は、既知の配線接続及び/又はBluetooth(登録商標)、無線イーサネット(登録商標)等の無線技術を利用して容易にすることができる。空間位置データを取得するために、1つ以上のセンサ142が、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140内に及び/又はこれに近接して配置される。センサ142は、次に、磁石172等の、システム200内の特定の基準(データム)に関する空間位置を評価する。磁石172は、既知の基準点に位置付けされており、且つ溶接クーポン180に対して所定の距離178で配置される。この所定の距離178は、スタンド170に関連したフォームファクタ、テンプレート、又は予備構成された構造を利用することによって維持することができる。こうして、磁石172に対するセンサ142の移動は、スタンド170内の溶接クーポン180に対する顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140の位置データを本質的に提供することができる。センサ142は、既知の通信プロトコルを利用して磁石に対する位置を特定するために無線通信することができ、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140をリアルタイムで更新して、ユーザの動きと一致させる。
【0016】
システム200は、ベース166に結合されるアダプタ162を含むような、モック溶接ツール(MWT)160も含む。アダプタ162は、複数のアダプタのうちの1つを単に表しており、各アダプタが特定の溶接タイプをシミュレートすることを認識すべきである。アダプタ162は、ベース166に取外し可能に結合されており、別の代替品として、あるアダプタの取外し及び交換を可能にする。取外し可能な結合は、タブ、ディンプル、スライダ、プッシュボタン等を利用して達成することができ、ユーザがアダプタ162及び/又はベース166を押し下げ、ねじり、又は他に機械的に変更することができる。特定の溶接タイプを正確にシミュレートするために、各アダプタ162は、実際の溶接動作を行うために使用される実世界の等価物を表すようにサイズ決めされる。一旦、特定のアダプタがベースに結合されると、ユーザは使用する際にアダプタのタイプを入力して、PPSがこのPPSに関連する適切な命令セットをロードして実行することを可能にする。このように、各アダプタタイプに見合った正確なレンダリングは、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140上に表示される。
【0017】
1つ以上のセンサ168を、ベース166内に又はこれに近接して配置することができる。顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140と同様に、センサ68は、スタンド170上の磁石172に対する空間位置を無線で判定することができる。このように、アダプタ162及びベース166は、組み合わされて、アダプタ162及びベース166の両方の寸法が既定される際に、磁石172に対する既知の位置及び空間を本質的に有する。システム200は、各アダプタ162を収容するために適切に較正されることを保証するために、ユーザは、(例えば溶接ユーザインターフェイス(WUI)130を介して)サブシステム(PPS)110とインターフェイスして、特定のアダプタが現在使用中であるという表示を示す。一旦このような表示が示されると、サブシステム(PPS)110は、メモリ112からルックアップテーブルを読み出すことができ、このテーブルは、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140を介してユーザが経験したようなシミュレートされた環境を適切にレンダリングするためのルールセットを含む。
【0018】
一実施形態では、サブシステム(PPS)110は、開示されたアーキテクチャを実行するために動作可能なコンピュータである。本発明の様々な態様について追加のコンテキストを提供するために、以下の議論は、本発明の様々な態様を実装するような適切なコンピュータ環境の簡潔で一般的な説明を提供することを意図している。サブシステム(PPS)110は、1つ以上のコンピュータ上で実行され、他のプログラムモジュールと組み合わせて及び/又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして実装されるような、コンピュータ実行可能命令を用いることができる。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行する或いは特定の抽象データタイプを実装するような、ルーチン、プログラム、コンポーネント、データ構造等を含む。例えば、そのようなプログラム及びコンピュータ実行可能命令は、各種のコンピュータ制御パラダイムを使用するロボットを介して処理することができる。
【0019】
さらに、当業者は、本発明の方法が、シングルプロセッサ又はマルチプロセッサ・コンピュータシステム、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータを含む他のコンピュータシステム構成だけでなく、パーソナルコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ装置、マイクロプロセッサベースの又はプログラム可能な家庭用電化製品等と共に実装できることを理解するであろう。各コンピュータは、1つ以上の関連装置に動作可能に接続することができる。本発明の例示の態様は、分散コンピュータ環境で実施することもでき、ここで、特定のタスクが、通信ネットワークを介してリンクされた遠隔処理装置によって実行される。分散コンピュータ環境では、プログラムモジュールは、ローカルメモリ記憶装置及びリモートメモリ記憶装置の両方に配置することができる。
【0020】
サブシステム(PPS)110は、コンピュータを含む本発明の様々な態様を実装するための例示的な環境を利用することができ、コンピュータは、通信目的のためのプロセッサ114、メモリ112及びシステムバスを含む。システムバスは、メモリ112を含むがこれに限定されないシステム・コンポーネントをプロセッサ114に結合する。プロセッサ114は、市販の様々なプロセッサのいずれであってよい。デュアルマイクロプロセッサ及び他のマルチプロセッサ・アーキテクチャも、プロセッサ114として用いることもできる。
【0021】
システムバスは、メモリバス又はメモリコントローラ、周辺バス、及び市販の様々なバスアーキテクチャのいずれかを使用するローカルバスを含むような、複数のタイプのバス構造のいずれかとすることができる。メモリ112は、読み取り専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)を含むことができる。起動中等にサブシステム(PPS)110内の要素同士の間で情報を転送するのに役立つ基本ルーチンを含むような基本入力/出力システム(BIOS)が、ROMに格納されている。
【0022】
サブシステム(PPS)110は、例えばリムーバブルディスクからの読取り又は書込むためのハードディスクドライブや、磁気ディスクドライブ、CD−ROMディスクを読取るため又は他の光媒体からの読取り又は書込むための光ディスクドライブ等をさらに含むことができる。サブシステム(PPS)110は、少なくともいくつかの形態のコンピュータ可読媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータによってアクセスできる任意の利用可能な媒体である。例として、制限するものではなく、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでもよい。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータ等の情報を記憶するための任意の方法又は技術で実装された、揮発性及び不揮発性の、リムーバブル及び非リムーバブル媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又は他の磁気記憶装置、又は所望される情報を格納するために使用され且つサブシステム(PPS)110によってアクセスできる他の任意の媒体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0023】
通信媒体は、典型的に、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又は、搬送波又は他の送信機構等の変調されたデータ信号のデータを具現化し、任意の情報配信媒体を含む。用語「変調データ信号」は、1つ又は複数のその特徴セットを有する信号や、信号内の情報をエンコード化するような方法で変更された信号を意味する。例として、限定するものないが、通信媒体は、有線ネットワークや直接的な有線接続等の有線媒体、又は音響、RF、赤外線及び他の無線媒体等の無線媒体を含む。上述した媒体の任意の組み合わせは、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれる。
【0024】
オペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーション・プログラム、他のプログラムモジュール、及びプログラムデータを含むようないくつかのプログラムモジュールは、ドライブ及びRAMに記憶されてもよい。サブシステム(PPS)110のオペレーティングシステムは、市販の多数のオペレーティングシステムのいずれかとすることができる。
【0025】
さらに、ユーザは、キーボードや、マウス等のポインティング・デバイスを介してコンピュータにコマンド及び情報を入力することができる。他の入力装置は、マイクロフォン、IRリモートコントロール、トラックボール、ペン入力装置、ジョイスティック、ゲームパッド、デジタル化タブレット、衛星放送受信アンテナ、スキャナ等を含んでもよい。これらの入力装置及び他の入力装置は、大抵の場合、システムバスに結合されるが、パラレルポート、ゲームポート、ユニバーサルシリアルバス(USB)、IRインターフェイス、及び/又は様々な無線技術等の他のインターフェイスによっても接続することができるような、シリアルポートインターフェイスを介してプロセッサに接続される。モニタ(図示せず)又は他のタイプのディスプレイ装置は、ビデオアダプタ等のインターフェイスを介してシステムバスに接続してもよい。視覚的出力は、リモートデスクトッププロトコル、VNC、X−Windowシステム等のリモートディスプレイ・ネットワークプロトコルを介して達成することもできる。視覚的出力に加えて、コンピュータは、典型的に、スピーカーやプリンタ等の他の周辺出力装置を含む。
【0026】
監視員用ディスプレイ装置(ODD)150及び溶接ユーザインターフェイス(WUI)130等のディスプレイは、プロセッサから電子的に受信したデータを提示するために、サブシステム(PPS)110と一緒に用いることができる。例えば、ディスプレイは、データを電子的に提示するようなLCD、プラズマ、CRT、モニタ等とすることができる。代替的に又は追加的に、ディスプレイは、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等のハードコピー形式で受信したデータを提示することができる。ディスプレイは、任意のカラーでデータを表示でき、且つ無線又は任意のハードワイヤ(配線接続)のプロトコル及び/又は規格を介してサブシステム(PPS)110からデータを受信することができる。一実施形態では、溶接ユーザインターフェイス(WUI)130は、ユーザが、1つ以上の以前のシミュレーションからの溶接データを検討するようにサブシステム(PPS)110とインターフェイス可能にするタッチスクリーンである。ユーザは、特定の分析(例えば、溶接品質)に関する情報を識別するために、様々なデータパラダイムを検索することもできる。このようなデータは、スコアリング又は他の比較のために、1つ以上のベンチマークについて評価される。
【0027】
コンピュータは、論理的及び/又は物理的な接続を使用するネットワーク環境で、リモートコンピュータ(複数可)等の1つ以上のリモートコンピュータに対して動作することができる。リモートコンピュータ(複数可)は、ワークステーション、サーバコンピュータ、ルータ、パーソナルコンピュータ、マイクロプロセッサベースの娯楽機器、ピア(peer)デバイス、又は他の共通ネットワークノードとすることができ、典型的には、コンピュータに関して説明した多くの又は全ての要素を含むことができる。示される論理接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)及びワイドエリアネットワーク(WAN)を含む。このようなネットワーク環境は、オフィス、企業規模のコンピュータネットワーク、イントラネット、及びインターネットにおいて一般的である。
【0028】
LANネットワーク環境で使用する場合に、コンピュータは、ネットワーク・インターフェイス又はアダプタを介してローカルネットワークに接続される。WANネットワーク環境で使用する場合に、コンピュータは、典型的にはモデムを含むか、LAN上の通信サーバに接続されるか、インターネット等のWAN上で通信を確立する他の手段を有する。ネットワーク環境では、コンピュータ又はその一部に関して示されるプログラムモジュールは、リモートメモリ記憶装置に格納してもよい。本明細書で説明するネットワーク接続は例示的なものであり、コンピュータ間の通信リンクを確立する他の手段を使用してもよい。
【0029】
図3〜
図5は、アダプタ162の非限定的な実施例を示している。
図3は、GMAW溶接ガン300のようなアダプタ162を示す。
図4は、スティック形状溶接ツール400のようなアダプタ162を示す。
図5は、酸素燃焼トーチ500のようなアダプタ162を示す。アダプタは、複数の異なる構成要素を有するものとして本明細書に説明されるが、アダプタの単一要素の及び複数要素の実施形態の両方が、本発明の範囲内に企図されることを理解されたい。最初に
図3を考慮すると、GMAW溶接ガン300は、チューブ312を介してインターフェイス318に接続されたノズル310を含む。溶接ガン300は、実世界での用途で使用される際に、GMAWガンと略同じ重量と寸法を有することができる。ガン300内の各構成要素の寸法は、既知の値であり、この値を用いて、溶接クーポン180及び磁石172を考慮してガンを較正することができる。インターフェイス318は、ベースへのアダプタ300の取外し可能な結合を可能にするような1つ以上の機械的機構を含むことができる。
【0030】
図4は、プレート及びパイプ溶接用のスティック形状溶接ツール400を示しており、この溶接ツールは、ホルダー422とシミュレートされたスティック形状電極410とを含む。一実施形態では、シミュレートされたスティック形状電極410は、実世界のパイプ溶接の際の例えばルートパス溶接手順中に又はプレートを溶接するときに生じる抵抗フィードバックをシミュレートするための触覚抵抗性チップを含むことができる。ユーザが、シミュレートされたスティック形状電極162をこのルートから非常に離れた個所に移動させた場合に、これにより、ユーザは、より小さな抵抗を感じるか、又は感知することができ、こうして現在の溶接工程を調整する及び維持するために使用するフィードバックを導出することができる。インターフェイス418は、スティック形状溶接ツール400のベースへの取外し可能な結合を可能にする。
【0031】
図5は、ノズル510とインターフェイス518とを含む酸素燃焼アダプタ500を示しており、このインターフェイスは、酸素燃焼アダプタ500のベースへの取外し可能な結合を可能にする。この実施形態では、インターフェイス518は、ベースの直径の周りに固定されたカラー522を含む。プッシュボタン520は、ベース上の相補的な機構(例えば、ディンプル)と機械的にインターフェイスする突起や他の機構を含むことができる。このように、アダプタ500は、プッシュボタンが押し下げられる又は他に操作されるかに依存してベースに「ロック」することができる。他の実施形態では、酸素燃焼アダプタは、金属対象物を切断するために使用される切断トーチを表すために使用される。この実施形態では、切断トーチは、この切断トーチが実世界の用途で動作するかのように、仮想溶接システム内に表示される。例えば、サブシステム(PPS)110は、溶接トーチの代わりに、切断トーチの適用を表すコードをロードして実行することができる。
【0032】
本発明の他の実施形態によれば、例えば溶接ガンを介して供給されるワイヤ電極を有するハンドヘルド半自動溶接ガンをシミュレートするようなMWTを含む、他のモック溶接ツールも同様に可能である。さらに、本発明の他のいくつかの実施形態によれば、実世界の溶接ツールは、ツールが仮想溶接システム100において現実のアークを形成するために実際に使用されていない場合であっても、ユーザの手の中のツールの実際の感触をより良くシミュレートするためにモック溶接ツール(MWT)160として使用することができる。また、シミュレートされた研削ツールは、仮想溶接システム100のシミュレートされた研削モードでの使用のために提供してもよい。同様に、シミュレートされた切削ツールは、仮想溶接システム100のシミュレートされた切削モードでの使用のために提供してもよい。さらに、シミュレートされたガスタングステン・アーク溶接(GTAW)トーチ又はフィラー材料は、仮想溶接システム100で使用するために提供してもよい。
【0033】
図6は、GMAWガン300、スティック形状溶接ツール400、酸素燃焼アダプタ500等の1つ以上のアダプタにインターフェイスするために使用されるベース600を示す。ベース600は、本明細書で説明するセンサ168等の1つ以上の電子部品を収容することができるような本体620を含む。一実施形態では、本体620は、例えば、ねじ、ボルト、リベット等の締結具640を介して一緒に保持されるような2つの半体からなる。配線接続ケーブル630は、ベース600とサブシステム(PPS)110との通信を容易にするために、本体620から延びている。
【0034】
インターフェイス610は、ランディング(landing)614と、このインターフェイス610の反対側に配置されたディンプル(dimple)616とを含む。ランディングとディンプルとの組み合わせは、例示的なアダプタ300,400,500のインターフェイス内で相補的な構成要素に対して取外し可能なインターロック(連結装置)として機能することができる。しかしながら、任意の機械的インターフェイスは、実質的に、ベース600へのアダプタの効率的な取外し及び交換を容易にするように企図されている。突起部636内に配置されたプッシュボタン618は、このプッシュボタン618が押し下げられたときに、ユーザがアクティブな溶接モード内にいることを示すために用いられている。少なくともアダプタ400に関して、相補的なフォームファクタが、プッシュボタン618上でスリーブとして嵌合するようにアダプタに含めることができ、ユーザは、アダプタ上のフォームファクタ機構を介してプッシュボタンを押し下げることができる。この目的のために、アダプタのフォームファクタは、ユーザに実世界の外観及び溶接動作の感覚を与えるために、実世界のトリガー又は同様の装置をシミュレートすることができる。
【0035】
図7は、内部に配置されたセンサ652を明らかにするベース600の切欠き斜視図である。センサ652は、ケーブル654を介して1つ以上の異なる構成要素(例えば、サブシステム(PPS)110)と通信し、ベース600内の既定の位置で配置され、且つ締結具658を介して所定の位置で保持される。ベーン(翼)(vane)672は、本体620の全体を通じたベース600の構造的支持を提供する。一実施形態では、センサ652は、静電容量センサ、圧電、渦電流、誘導、超音波、ホール効果、及び/又は赤外線近接センサ技術等の既知の非接触技術を利用する。このような技術は、ヘルメット146で使用されるセンサ142,168と、ベース166とをそれぞれ含むような、本明細書で説明する他のセンサと一緒に用いられる。
図8は、モック溶接ツール800を示しており、ここで、アダプタ400が、仮想溶接システム100内で使用するベース600に取外し可能に結合されている。
【0036】
図9は、磁石710に関して既知の位置の空間に溶接クーポン758を位置付けするために利用されるスタンド700を示す。スタンド700は、直立部722を介して互いに結合されるアーム714及びベース724を含む。一実施形態では、直立部722は、ベース724に取外し可能に係合しており、スタンド700が包装や輸送のために個別の構成要素に分解できるようにする。また、ベース724及び直立部722は、比較的小さい重量を同時に維持するような構成要素に構造的支持体を追加する1つ以上の構造的機構(例えば、ベーン(翼))を有することができる。プランジャ732は、アームから離れる方向に引き込むことができ、繰返し可能な空間位置においてスタンド700上のクーポンの取外しや交換を可能にする。
【0037】
アーム714の寸法と、ランディング738上に配置された磁石710に対する溶接クーポン758の位置は、全て既知であり、溶接クーポン758に近接するモック溶接ツールが、既知の出力及び反復可能な出力を有しており、それによって適切なリアルタイム仮想溶接環境をユーザに提供する。ピン762,764は、スタンド700から取り外すことができ、
図10に示されるように、アーム714がピン764の周りに旋回可能になる。この実施形態では、ピン762は、孔766,768から取外され、それによってアーム714がピン764の周りで第2の位置に回転可能になる。このように、ユーザは、それぞれの平面に関連するニュアンスを学習するために複数の平面(例えば、水平面及び垂直面)内の溶接をシミュレートすることができる。スタンド700の設計は、溶接クーポン758に対する磁石710の空間位置が、リアルタイムシミュレーション環境溶接の形成及び表示のための正確で再現性のある結果を提供するためのいずれかの位置に維持されることを保証するということは注目に値する。
【0038】
図11は、ある場所から他の場所に容易に移送することができるようなモバイル溶接キットを示す。このキットは、バッテリー、A/C、他の電源を含む動力源の近くの任意の位置で実質的にセットアップすることができる。容器810は、溶接装置のハウジングとして実質的に形成することができ、その内部は、複数のシェル、溶接ユーザインターフェイス(WUI)130を収容するためのプラットフォームや他の格納領域、スタンド700、モック溶接ツール800、及びヘルメット900を含む。容器は、容器810の効率的な移送を容易にするために、車輪をさらに含む。
【0039】
図12は、典型的な溶接システムに関連付けられた複数のメトリックを表示する例示的なユーザインターフェイス830を示す。インターフェイス830は、シミュレートされた溶接システムを利用するアダプタのタイプを識別するためにセレクター832を含む。温度計836、電流計838、電圧計842は、溶接動作中にリアルタイムのフィードバックをユーザに提供することができる。同様に、854,856は、追加情報を表示して、ユーザ入力がフィードバックを変更することを可能する。
図13は、実世界のハードウェア溶接システムのインターフェイスをシミュレートするような代替ユーザインターフェイス860を示す。一実施形態では、ユーザは、本明細書に説明されるようなタッチスクリーン又は他の周辺入力方法を使用して、ディスプレイ860に入力を提供することができる。
【0040】
図14及び
図15は、仮想溶接システムを作動させるときに、ユーザが着用するヘルメット900を示す。
図14は、ヘルメット900の正面斜視図を示しており、このヘルメットは、上述したように、実世界のアプリケーションで使用され且つFMDDを含めるように改良された実際の溶接ヘルメットとすることができる。このように、ユーザは、実世界のシナリオと同じように、溶接ヘルメットを着用することができ、仮想環境が、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140を介してリアルタイムでユーザに表示される。
図15は、溶接ヘルメット900内に一体化された顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140の例示的な実施形態を示す。顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140は、有線手段又は無線手段のいずれかを介してサブシステム(PPS)110及び空間トラッカー(ST)120に動作可能に接続される。空間トラッカー(ST)120のセンサ142は、本発明の様々な実施形態によれば、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140又は溶接ヘルメット900に取り付けることができ、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140及び/又は溶接ヘルメット900が、空間トラッカー(ST)120によって形成された3次元空間フレームのリファレンスに対して追跡するのを可能にする。
【0041】
図16は、
図1の仮想溶接システム100のプログラム可能なプロセッサベースのサブシステム(PPS)110のサブシステムのブロック図の例示的な実施形態を示す。サブシステム(PPS)110は、本発明の実施形態によれば、中央処理装置(CPU)111と1つ以上のグラフィック処理装置(GPU)115とを含む。一実施形態では、1つのGPU115は、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140上に単眼視(monoscopic)を提供するために使用される。別の実施形態では、2つのGPU115は、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140上に立体視(stereoscopic)を提供するために使用される。いずれのケースでも、ユーザは、本発明の実施形態によれば、リアルタイムの溶湯流動性及び熱吸収特性及び熱放散特性を有する溶接パドル(別名、溶接プール)の仮想現実シミュレーションを見る。
【0042】
図17は、
図10のサブシステム(PPS)110にけるグラフィック処理装置(GPU)115のブロック図の例示的な実施形態を示す。各GPU115は、データ並列アルゴリズムの実装をサポートする。本発明の実施形態によれば、各GPU115は、2つの仮想現実のビューを提供可能な2つのビデオ出力118,119を提供する。2つのビデオ出力は、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140に送ることができ、溶接者の視点をレンダリングし、第3のビデオ出力は、例えば溶接者の視点又は他のいくつかの視点のいずれかをレンダリングするような監視員用ディスプレイ装置(ODD)150に送ることができる。残りの第4のビデオ出力は、例えばプロジェクタに送ることができる。両方のGPU15は、同じ溶接の物理的計算を実行するが、同じ又は別の観点から仮想現実環境をレンダリングすることができる。GPU115は、コンピュータ統合化デバイスアーキテクチャ(CUDA)116とシェーダ(shader)117とを含む。CUDA116は、業界標準のプログラミング言語を介してソフトウェア開発者にアクセス可能にされたGPU115のコンピュータエンジンである。CUDA116は、並列コアを含み、本明細書で説明する溶接パドルシミュレーションの物理モデルを実行するために使用される。CPU111は、リアルタイムの溶接入力データをGPU115上のCUDA116に提供する。シェーダ117は、シミュレーションの全てのビジュアルの描画及び適用に応答可能である。ビード(bead)やパドルビジュアルは、本明細書に後で説明されるwexel変位マップの状態によって動かされる。本発明の実施形態によれば、物理モデルは、毎秒約30回の割合で、実行され且つ更新される。
【0043】
図18は、
図1の仮想溶接システム100の機能ブロック図の例示的な実施形態を示す。
図12に示されるように仮想溶接システム100の様々な機能ブロックは、サブシステム(PPS)110で実行されるソフトウェア命令及びモジュールを介して主に実装される。仮想溶接システム100の様々な機能ブロックは、物理インターフェイス1201、トーチ及びクランプモデル1202、環境モデル1203、サウンドコンテンツ機能1204、溶接サウンド1205、スタンド/テーブルモデル1206、内部アーキテクチャ機能1207、キャリブレーション機能1208、溶接クーポンモデル1210、溶接物理1211、内部物理調整ツール(微調整をする道具)1212、グラフィカル・ユーザインターフェイス機能1213、グラフ作成機能1214、生徒レポート機能1215、レンダー1216、ビードレンダリング1217、3次元テクスチャ1218、視覚的な手がかり機能1219、スコアリング及び公差機能1220、公差エディタ1221及び空間エフェクト1222を含む。
【0044】
内部アーキテクチャ機能1207は、例えばファイルのロード、情報の保持、スレッドの管理、物理モデルの投入、及びメニューのトリガー等を含むような、仮想溶接システム100のプロセスのより高いレベルのソフトウェア管理(ロジスティクス)を提供する。内部アーキテクチャ機能1207は、本発明の実施形態によれば、CPU111上で実行される。サブシステム(PPS)110への特定のリアルタイム入力は、アーク位置、ガン位置、FMDD又はヘルメットの位置、ガンのオン/オフ状態、及び接触モード状態(はい/いいえ)を含む。
【0045】
グラフィカル・ユーザインターフェイス機能1213は、ユーザが、物理的なユーザインターフェイス130のジョイスティック132を使用する監視員用ディスプレイ装置(ODD)150を介して、溶接シナリオを設定することを可能にする。本発明の実施形態によれば、溶接シナリオのセットアップは、言語の選択、ユーザ名の入力、試しプレート(すなわち、溶接クーポン)の選択、溶接工程(例えば、FCAW、GMAW、SMAW)及び関連する軸方向のスプレー、パルス、又はショートアーク法の選択、ガスタイプ及び流量の選択、スティック形状電極のタイプ(例えば、6010又は7018)の選択、フラックス入りワイヤ(例えば、自己シールド、ガスシールドのタイプ)の選択を含む。溶接シナリオのセットアップは、テーブルの高さ、アームの高さ、アームの位置、スタンド170のアーム回転の選択も含む。溶接シナリオのセットアップは、さらに、環境(例えば、仮想現実空間内のバックグラウンド環境)の選択、ワイヤ送給速度の設定、電圧レベルの設定、アンペア数の設定、極性の選択、特定の視覚的な手がかりのオン又はオフにすることを含む。
【0046】
シミュレートされた溶接シナリオ中に、グラフ作成機能1214は、ユーザの能力パラメータを収集し、グラフ形式で(例えば、監視員用ディスプレイ装置(ODD)150上に)表示するために、ユーザの能力パラメータをグラフィカル・ユーザインターフェイス機能1213に提供する。空間トラッカー(ST)120からの追跡情報は、グラフ作成機能1214に供給される。グラフ作成機能1214は、シンプル分析モジュール(SAM)と、ホイップ(whip)/ウィーブ(weave)分析モジュール(WWAM)とを含む。SAMは、溶接移動角度、移動速度、溶接角度、位置、及び先端を含むユーザ溶接パラメータを分析して、この溶接パラメータをビードテーブルに格納されたデータと比較することにより、一定距離を動かす。WWAMは、ダイム(わずかな)間隔、ホイップ時間、パドル時間を含むユーザのホイップパラメータを分析する。WWAMは、織り幅、織り間隔、織りのタイミングを含むユーザのウィーブ(weave)パラメータを分析する。SAM及びWWAMは、生のデータ入力(例えば、位置及び姿勢データ)を、グラフ作成のために機能的に使用可能なデータに解釈する。SAM及びWWAMによって分析された各パラメータについて、公差ウィンドウは、公差エディタ1221を使用するビードテーブル内の最適な且つ理想的な設定値入力付近に制限するパラメータによって規定され、スコアリング及び公差機能1220が実行される。
【0047】
公差エディタ1221は、材料の使用、電気の使用、及び溶接時間を概算する全て溶接メータ(weldometer)を含む。さらに、いくつかのパラメータが公差範囲外である場合には、不連続な溶接(すなわち、溶接欠陥)が発生することがある。任意の不連続状態の溶接は、グラフ作成機能1214によって処理され、グラフィカル・ユーザインターフェイス機能1213を介してグラフ形式で提示される。このような不連続な溶接は、不適切な溶接サイズ、乏しいビード配置、凹面ビード、過度の凸面、アンダーカット、気孔率、不完全な溶融、スラグ巻き込み、過剰なフィラー、溶け落ち、及び過度のスパッタ等を含む。本発明の実施形態によれば、不連続のレベル又は量は、特定のユーザパラメータが最適な又は理想的な設定点からどれだけ離れているかに依存する。
【0048】
異なるパラメータ制限は、例えば溶接の初心者、溶接の熟練者、及び展示会での人物等、様々なタイプのユーザについて事前に規定してもよい。スコアリング及び公差機能1220は、ユーザが特定のパラメータについてどの位最適(理想)値に近い状態かに依存し、且つ不連続のレベルや溶接部に存在する欠陥に依存して、数値スコアを提供する。最適な値は、実世界のデータから導出される。スコアリング及び公差機能1220、及びグラフ作成機能1214からの情報は、生徒レポート機能1215によって使用され、インストラクター及び/又は生徒の能力レポートを作成する。
【0049】
仮想溶接システム100は、仮想溶接作業の結果を分析して表示することができる。この結果を分析することによって、仮想溶接システム100は、ユーザが溶接工程の許容限界から、溶接パス中のいつの時点で、溶接接合部に沿ったどの箇所で、外れているかを判定することが可能であることを意味する。スコアは、ユーザの能力に起因させてもよい。一実施形態では、スコアは、公差の範囲の間のモック溶接ツール160の位置、方向、速度の偏差の関数であってもよく、この公差は、理想的な溶接パスから限界の又は許容できない溶接作業に及ぶことがある。任意の勾配範囲が、ユーザの能力をスコアリングするために選択されるときに、仮想溶接システム100に組み込むことができる。スコアリングは、数値的に又はアルファベットの順で表示することができる。さらに、ユーザの能力は、溶接接合部に沿った時間及び/又は位置において、モック溶接ツールが溶接接合部にどれ位近接して横断するかをグラフ表示することができる。移動角度、作業角度、速度、及び溶接接合部からの距離等のパラメータは、測定される例であるが、任意のパラメータは、スコアリング目的のために分析することができる。パラメータの公差範囲は、実世界の溶接データから取得され、それによって、ユーザが実世界でどのように実行すべきかについての正確なフィードバックを提供する。別の実施形態では、ユーザの能力に対応した欠点の分析を組み込んで、監視員用ディスプレイ装置(ODD)150上に表示することもできる。この実施形態では、グラフは、仮想溶接作業中にモニタされた各種測定パラメータに起因する不連続のタイプがどのようなものかを示すために描写することができる。閉塞が監視員用ディスプレイ装置(ODD)150に表示されない場合があるが、欠陥が、依然としてユーザの能力の結果に起因して発生し、この結果は、依然として対応して表示される、すなわちグラフ化することができる。
【0050】
視覚的な手がかり機能1219は、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140及び/又は監視員用ディスプレイ装置(ODD)150上に重ねられた色とインジケータを表示することにより、ユーザに即座にフィードバックを提供する。視覚的な手がかりは、位置、先端からワークまでの距離、溶接角度、移動角度、移動速度、及びアーク長(例えば、スティック溶接用)を含む溶接パラメータ151のそれぞれに提供されるが、ユーザの溶接技術のいくつかの態様が既定された限界値や公差に基づいて調整すべき場合には、ユーザに視覚的に指示を示す。視覚的な手がかりは、例えば、ホイップ/ウィーブ技術や溶接ビード「ダイム」間隔のために提供してもよい。視覚的な手がかりは、個別に又は任意の所望の組み合わせで設定してもよい。
【0051】
キャリブレーション機能1208は、実世界の空間の物理的な構成要素(3次元フレームのリファレンス)を、仮想現実空間のビジュアル構成要素に調和させる機能を提供する。溶接クーポン(WC)のそれぞれの異なるタイプは、スタンド170のアーム714にWCを取り付け、且つ(例えば、WCの上に3つのディンプルで示される)既定の位置のWCを、空間トラッカー(ST)120に動作可能に接続されたキャリブレーションスタイラスに接触させることにより、工場で較正される。空間トラッカー(ST)120は、既定の位置での磁場強度を読み取り、位置情報をサブシステム(PPS)110に提供し、サブシステム(PPS)110は、この位置情報を使用して、較正を実行する(すなわち、実世界空間から仮想現実空間へ移行する)。
【0052】
任意の特定のタイプのWCは、同じ反復方法で、非常に厳しい公差内で、スタンド170のアーム714に嵌合する。一例では、アーム714上のクーポン758と磁石710との間の距離は、上述した、
図2で説明したように既知の距離178である。従って、一旦特定のWCタイプが較正されると、そのWCタイプは、再較正しなくてもよい(すなわち、特定のタイプのWCの較正は、1回限りのイベントである)。同じタイプのWCは、互換性がある。キャリブレーションは、溶接工程中にユーザによって知覚された実態的なフィードバックが、仮想現実空間でユーザに表示されるものに調和され、シミュレーションをよりリアルにさせることを保証する。例えば、ユーザがモック溶接ツール(MWT)160の先端を実際の溶接クーポン(WC)180のコーナー部の周りにスライドさせた場合に、ユーザは、このユーザが実際のコーナー部周りにスライドする先端を感じ取るように、顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140上で仮想WCのコーナー部の周りをスライドする先端を見る。本発明の実施形態によれば、モック溶接ツール(MWT)160は、事前に位置決めされたジグ内に配置され、且つこの既知のジグ位置に基づいて同様に較正される。
【0053】
本発明の代替実施形態によれば、例えばクーポンのコーナー部にセンサを有する「スマート」クーポンが提供される。空間トラッカー(ST)120は、「スマート」溶接クーポンのコーナー部を追跡することができ、それによって、仮想溶接システム100は、「スマート」溶接クーポンが実世界の3次元空間でどこに位置しているかを継続的に認識することができる。本発明の更なる代替実施形態によれば、ライセンスキーが、溶接クーポンのロックを解除するために提供される。特定のWCが購入された場合に、ライセンスキーが提供され、ユーザが、そのライセンスキーを仮想溶接システム100に入力して、そのWCに関連するソフトウェアのロックを解除することを可能にする。本発明の別の実施形態によれば、空間的な非標準溶接クーポンは、部品の実世界のCAD図面に基づいて提供される。ユーザは、この部品が実世界で実際に生産される前であっても、CAD部品を溶接する訓練を行うことができる。
【0054】
サウンドコンテンツ機能1204及び溶接サウンド1205は、特定の溶接パラメータが公差範囲内又は公差範囲外であるかによって変化するような、特定のタイプの溶接音を提供する。サウンドは、様々な溶接工程及びパラメータに合わせて調整される。例えば、MIGスプレーアーク溶接工程では、ユーザがモック溶接ツール(MWT)160を正確に配置されていない場合には、パチパチ(crackling)音が提供され、モック溶接ツール(MWT)160が正確に位置決めされている場合に、シューという(hissing)音が提供される。ショートアーク溶接工程では、一定のパチパチ音や油で揚げる際の(frying)音が適切な溶接技術のために提供され、アンダーカットが発生している場合には、シューという音が提供される。これらのサウンドは、適切な及び不適切な溶接技術に対応した実世界の音を模倣する。
【0055】
本発明の様々な実施形態によれば、高い忠実性を有するサウンドコンテンツは、様々な電子的及び機械的手段を使用して実際の溶接の実世界の録音から取得することができる。本発明の実施形態によれば、知覚された音量及び音の指向性は、モック溶接ツール(MWT)160と溶接クーポン(WC)180との間のシミュレートされたアークに対するユーザの頭部の位置、向き及び距離に依存して変更される(ユーザが、空間トラッカー(ST)120によって追跡される顔面装着型ディスプレイ装置(FMDD)140を着用していると仮定する)。サウンドは、例えば、ヘルメット900のイヤホンのスピーカーを介して、コンソール135又はスタンド170内に構成されたスピーカーを介して、ユーザに提供することができる。
【0056】
環境モデル1203は、仮想現実空間内の様々なバックグラウンドのシーン(静止画及び動画)を提供する。このようなバックグラウンド環境は、例えば屋内の溶接工場、屋外のレーストラック、ガレージ等を含むことができ、移動する車、人、鳥、雲、及び様々な環境音を含んでもよい。バックグラウンド環境は、本発明の実施形態によれば、対話型であってもよい。例えば、ユーザは、その環境が溶接のために適切(例えば、安全)であることを保証するために、溶接を開始する前に、バックグラウンド領域を検査しなければならない。例えばガン、スティック形状電極を含むホルダー等を含む各種モック溶接ツール(MWT)160を仮想現実空間内でモデル化するような、トーチ及びクランプ1202モデルが提供される。
【0057】
例えば平板クーポン、T継手クーポン、突き合せ継手クーポン、溝溶接クーポン、パイプクーポン(例えば、直径5.08cm(2インチ)のパイプと直径15.24cm(6インチ)のパイプ)を含む各種溶接クーポン(WC)180を仮想現実空間においてモデル化するような、クーポンモデル1210が提供される。代替的に又は追加的に、溶接クーポンモデルは、マルチバージョンを含むことができ、このクーポンは、単一のフォームファクタの範囲内で一種以上の溶接クーポンを含む。例えば、例示的なマルチ溶接クーポンは、単一の構成要素のT継手、突き合せ継手、溝溶接を含んでもよい。調節可能なアーム714、ベース724、及び調整可能なアームをベースに結合するために使用される直立部174を含むスタンド700の様々な部分を、仮想現実空間で使用されるようにモデル化するような、スタンド/テーブルモデル1206が提供される。溶接ユーザインターフェイス130、コンソール135、及び監視員用ディスプレイ装置(ODD)150の様々な部分を仮想現実空間においてモデル化するような、物理インターフェイスモデル1201が提供される。
【0058】
本発明の実施形態によれば、仮想現実空間における溶接パドル又はプールのシミュレーションが達成され、ここでシミュレートされた溶接パドルは、リアルタイムの溶湯流動性及び熱放散特性を有する。溶接パドルの中心には、本発明の実施形態によれば、シミュレーションは、GPU115上で実行される溶接物理機能1211(別名、物理モデル)である。溶接物理機能は、二重レイヤ変位技術を用いて、動的な流動性/粘度、固体性、熱勾配(熱吸収及び熱放散)、パドルウェイク、及びビード形状を正確にモデル化し、
図14A〜
図14Cに関して本明細書でより詳細に説明される。
【0059】
溶接物理的機能1211は、ビードレンダリング機能1217と通信して、加熱された溶融状態から冷却された固化状態までの全ての状態の溶接ビードをレンダリングする。ビードレンダリング機能1217は、溶接物理的機能からの情報1211(例えば、熱、流動性、変位、ダイム間隔)を使用して、仮想現実空間における溶接ビードをリアルタイムで正確的に且つ現実的にレンダリングする。3次元テクスチャ機能1218は、テクスチャマップをビードレンダリング機能1217に提供して、追加のテクスチャ(例えば、焼付き(scorching)、スラグ、粒)をシミュレートされた溶接ビード上に重ね合せる。例えば、スラグは、溶接工程中に及びこの直後に溶接ビード上にレンダリングされるように示され、その後、下層の溶接ビードを表に出すために取外すことができる。レンダリング機能1216を使用して、スパーク、スパッタ、煙、アークグロー、有害な煙及びガス、及び例えばアンダーカット及び多孔等の特定の不連続を含む空間エフェクトモジュール1222からの情報を使用する様々な特定の非パドル特徴をレンダリングする。
【0060】
内部物理調整ツール1212は、様々な溶接物理パラメータを各種の溶接工程について規定し、更新し、変更することを可能にするような微調整ツールである。本発明の実施形態によれば、内部物理調整ツール1212はCPU111上で実行され、調整された又は更新されたパラメータがGPU115にダウンロードされる。内部物理調整ツール1212を介して調整されるパラメータのタイプは、溶接クーポンに関するパラメータ、溶接クーポンをリセットすることなくプロセスを変更できるようなプロセスパラメータ(第2のパスを行うために可能にする)、全体のシミュレーションをリセットすることなく変更できるような様々なグローバルパラメータ、及びその他の各種パラメータを含む。
【0061】
図19は、
図1の仮想溶接システム100を使用して訓練する方法1300の実施形態のフローチャートである。ステップ1310において、溶接技術に従って、溶接クーポンに対してモック溶接ツールを移動させる。ステップ1320において、仮想現実システムを使用して、三次元空間におけるモック溶接ツールの位置と姿勢とを追跡する。ステップ1330において、シミュレートされたモック溶接ツールが、シミュレートされたモック溶接ツールから放出されたシミュレートされたアークの付近でシミュレートされた溶接パドルを形成することによって、シミュレートされた溶接クーポンの少なくとも1つのシミュレートされた表面上にシミュレートされた溶接ビード材料を堆積する際に、仮想現実空間におけるモック溶接ツール及び溶接クーポンのリアルタイム仮想現実シミュレーションを示す仮想現実溶接システムのディスプレイをビューする。ステップ1340において、ディスプレイ上で、シミュレートされた溶接パドルの、リアルタイムの溶湯流動性及び熱放散特性を確認する。ステップ1350において、シミュレートされた溶接パドルのリアルタイムの溶湯流動性及び熱放散特性の確認に応答して、溶接技術の少なくとも1つの態様をリアルタイムで変更する。
【0062】
方法300は、リアルタイムでの溶湯流動性(例えば、粘度)及び熱放散を含むような、シミュレートされた溶接パドルの様々な特性を確認することに応答して、ユーザが仮想現実空間で溶接パドルを確認し、自分の溶接技術をどのように変更するかを示す。ユーザは、リアルタイムのパドルウェイク及びダイム間隔を含む他の特性を確認して応答する。溶接パドルの特性に対する確認及び応答は、殆どの溶接動作が実世界で実際にどのように行われているかを示す。GPU115上で実行される溶接物理機能1211の二重変位レイヤモデリングによって、リアルタイムの溶湯流動性及び熱放散特性を正確にモデル化することを可能にし、ユーザに提示することができる。例えば、熱放散は、固化時間を決定する(すなわち、wexelが完全に固化するのに、どのくらいの時間がかかるか)。
【0063】
さらに、ユーザは、同じ又は異なる(例えば、第2の)モック溶接ツール及び/又は溶接工程を使用して、溶接ビード材料上に第2のパスを形成することができる。このような第2のパスシナリオでは、シミュレーションは、シミュレートされたモック溶接ツールが、シミュレートされたモック溶接ツールから放出されたシミュレートされたアーク付近に第2のシミュレートされた溶接パドルを形成することにより、第1のシミュレートされた溶接ビード材料と統合される第2のシミュレートされた溶接ビード材料を堆積する際に、シミュレートされたモック溶接ツール、溶接クーポン、及び元のシミュレートされた溶接ビード材料部を仮想現実空間に示す。同じ又は異なる溶接ツールやプロセスを使用する追加の後続のパスは、同様の方法で形成することができる。第2の又はその後のパスでは、以前の溶接ビード材料は、本発明のいくつかの実施形態によれば、新しい溶接パドルが、仮想現実空間において、以前の溶接ビード材料、新たな溶接ビード材料、及び可能性として下層の溶接クーポン材料のいずれかの組み合わせから形成される際に、堆積される新たな溶接ビード材料と統合される。このような後続のパスは、例えば、広い隅肉又は溝溶接を形成する必要があり、以前のパスにより形成された溶接ビードを修復するために行われてもよく、又はパイプ溶接で行われたルートパスの後にホットパスと1つ以上の充填及びキャップパスを含んでもよい。本発明の様々な実施形態によれば、溶接ビード及びベース材料は、軟鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルベース合金、又は他の材料を含んでもよい。
【0064】
図20A〜
図20Bは、本発明の実施形態による、溶接要素(wexel)変位マップ1420の概念を示す。
図20Aは、平坦な上面1410を有する平坦な溶接クーポン(WC)1400の側面図を示す。溶接クーポン1400は、例えばプラスチック部品として実世界に存在し、且つシミュレートされた溶接クーポンとして仮想現実空間にも存在する。
図20Bは、wexelマップ1420を形成する溶接要素(すなわち、wexels)のグリッド又はアレイ内に分割されるシミュレートされたWC1400の上面1410の表現を示している。各wexel(例えば、wexel 1421)は、溶接クーポンの表面1410の小さな部分を規定する。wexelマップは、表面の解像度を規定する。変更可能なチャネルパラメータ値が、各wexelに割り当てられ、各wexelの値がシミュレートされた溶接工程中に、仮想現実溶接空間においてリアルタイムで動的に変更することが可能になる。変更可能なチャネルパラメータ値は、チャネルパドル(溶湯流動性/粘度変位)、熱(熱吸収/熱放散)、変位(固体変位)、追加のもの(エクストラ)(例えば、スラグ、粒、焼付け、未使用金属等の各種追加の状態)に対応する。これらの変更可能なチャネルは、パドル用のPHED、熱、エクストラ及び変位としてそれぞれ本明細書で参照される。
【0065】
図20は、
図1の仮想溶接システム100においてシミュレートされるような、
図14の平坦な溶接クーポン(WC)1400の溶接クーポン空間及び溶接空間の例示的な実施形態を示す。点O,X,Y,Zは、ローカルの3次元溶接クーポン空間を規定する。一般的に、各溶接クーポンタイプは、3次元溶接クーポン空間から2次元仮想現実溶接空間へのマッピングを規定する。
図20のwexelマップ1420は、仮想現実の溶接空間にマップする2次元アレイの値である。ユーザは、
図20に示されるように点Bから点Eに溶接する。点Bから点Eへの軌跡線は、
図20の3次元溶接クーポン空間と2次元溶接空間との両方に示されている。
【0066】
各タイプの溶接クーポンは、マップwexel内の各位置について変位の方向を規定する。
図21の平坦な溶接クーポンについて、変位の方向は、wexelマップ(すなわち、Z方向)の全ての位置において同じある。wexelマップのテクスチャ座標が、マッピングを明確にするために、3次元溶接クーポン空間と2次元溶接空間との両方でS,T(時には、U,Vとも呼ばれる)として示されている。wexelマップは、溶接クーポン1400の矩形領域1410にマッピングされ且つこの領域を表す。
【0067】
図22は、
図1の仮想溶接システム100においてシミュレートされるような、コーナー(T継手)溶接クーポン(WC)1600の溶接クーポン空間及び溶接空間の例示的な実施形態を示す。コーナーWC1600は、
図22に示されるように2次元溶接空間にマッピングされるような、3次元溶接クーポン空間の2つの面1610,1620を有する。ここでも、点O,X,Y,Zは、ローカルの3次元溶接クーポン空間を規定する。wexelマップのテクスチャ座標は、マッピングを明確にするために、3次元溶接クーポン空間と2次元溶接空間との両方において、S,Tとして示されている。ユーザは、
図22に示されるように点Bから点Eに溶接する。点Bから点Eへの軌跡線は、
図22の3次元溶接クーポン空間と2次元溶接空間との両方に示されている。しかしながら、変位の方向は、
図22に示されるように反対側のコーナーに向けて、3次元溶接クーポン空間に示されるように、ラインX’−O’に向かう。
【0068】
図23は、
図1の仮想溶接システム100においてシミュレートされるような、パイプ溶接クーポン(WC)1700の溶接クーポン空間及び溶接空間の例示的な実施形態を示す。パイプWC1700は、
図23に示されるように2次元溶接空間にマッピングされた、3次元溶接クーポン空間の湾曲した面1710を有する。ここでも、点O,X,Y,Zは、ローカルの3次元溶接クーポン空間を規定する。wexelマップのテクスチャ座標は、マッピングを明確にするために、3次元溶接クーポン空間と2次元溶接空間との両方においてS,Tとして示されている。ユーザは、
図23に示されるように湾曲した軌跡に沿って点Bから点Eに溶接する。軌跡曲線及び点Bから点Eへのラインは、
図23において3次元溶接クーポン空間と2次元溶接空間にそれぞれ示されている。変位の方向は、ラインY−Oから離れる方向である(すなわち、パイプの中心から離れる)。
【0069】
テクスチャマップが、幾何学的形状の矩形表面領域にマッピングされるような同様の方法で、溶接可能なwexelマップは、溶接クーポンの矩形表面にマッピングすることができる。溶接可能なマップの各要素は、画像の各要素が画素(画素の縮小)と呼ばれるような、同じ意味でwexelと呼ばれる。画素は、色(例えば、赤、緑、青等)を規定する情報チャネルを含む。wexelは、仮想現実空間における溶接可能な表面を規定する情報チャネル(例えば、P,H,E,D)を含む。
【0070】
本発明の実施形態によれば、wexelの形式は、4つの浮動小数点数を含むPHED(パドル(Puddle)、熱(Heat)、エクストラ(Extra)、変位(Displacement))チャネルとして要約される。エクストラチャネルは、例えば、wexel位置にスラグが存在するか否かのような、wexelに関する論理情報を格納するビットのセットとして扱われる。パドルチャネルは、wexel位置での任意の液化金属についての変位値を格納する。変位チャネルは、wexel位置での固化金属についての変位値を格納する。熱チャネルは、wexel位置での所与の熱の大きさの値を格納する。このように、溶接クーポンの溶接可能な部分は、溶接ビードによる変位、液体金属によるきらめく(shimmering)表面「パドル」、熱による色等を示すことができる。これらの効果の全ては、溶接可能な表面に適用される頂点及びピクセルシェーダ(shader)によって達成される。
【0071】
本発明の実施形態によれば、変位マップと粒子システムとが、粒子が互いに相互作用し且つ変位マップと衝突するような箇所で使用される。粒子は、仮想流体力学粒子であり、溶接パドルの液体挙動を提供するが、直接的にレンダリングされない(すなわち、視覚的に直接見ることができない)。その代わりに、変位マップ上の粒子エフェクトのみが、視覚的に見ることができる。wexelへの熱入力は、近くの粒子の運動に影響を与える。パドルや変位を含むような、溶接パドルのシミュレーションに関わる2つのタイプの変位が存在する。パドルは「一時的」であるが、粒子及び熱が存在する限り(わずかに)持続する。変位は、「永続的」である。パドル変位は、急速に変化する(例えば、きらめく)溶接の液体金属であり、且つ変位の「上部に」あると考えることができる。粒子は、仮想表面の変位マップ(すなわち、wexelマップ)の一部に重ね合される。変位は、最初のベース金属及び固化した溶接ビードの両方を含むような恒久的な固体金属を表す。
【0072】
本発明の実施形態によれば、仮想現実空間におけるシミュレートされた溶接工程は、以下のように動作する。粒子は、薄いコーン(円錐体)内のエミッタ(シミュレートされたモック溶接ツール(MWT)160のエミッタ)から流れる。粒子は、表面がwexelマップによって規定されるような、シミュレートされた溶接クーポンの表面と最初に接触する。粒子が、互いに及びwexelマップと相互作用し、リアルタイムで蓄積する。より多くの熱が追加されると、wexelがエミッタにより近くなる。熱は、アーク点からの距離と熱がこのアークから入力される時間に依存してモデル化される。いくつかのビジュアル(例えば、色、等)は、熱によって動かされる。溶接パドルは、十分な熱を有するwexelsについて仮想現実空間で描画され又はレンダリングされる。その溶接パドルが十分に熱くなっている箇所では、wexelマップは、これらwexel位置については「立ち昇る」ようにパドル変位を引き起こし、液化する。パドル変位は、各wexel位置での「最も高い」粒子をサンプリングすることによって決定される。エミッタが溶接軌跡に沿って移動すると、wexel位置が冷却されながら進む。熱は、特定の割合でwexel位置から取り除かれる。冷却が閾値に達している場合に、wexelマップは固化する。このように、パドル変位は、段階的に変位(すなわち、固化したビード)に変換される。追加された変位は、全体の高さが変化しないように取り除かれたパドルに相当する。粒子の寿命は、固化が完了するまで、持続するように微調整又は調整される。仮想溶接システム100でモデル化される特定の粒子特性は、引力/反発力、速度(熱に関連する)、減衰(熱放散に関連する)、方向(重力に関係する)を含む。
【0073】
図24A〜
図24Cは、
図1の仮想溶接システム100の二重変位(変位と粒子)パドルモデルの概念の例示的な実施形態を示す。溶接クーポンは、少なくとも1つの表面を有する仮想現実空間においてシミュレートされる。溶接クーポンの表面は、固体変位層とパドル変位層とを含む二重変位層として仮想現実空間でシミュレートされる。パドル変位層は、固体変位層を変更することができる。
【0074】
本明細書で説明したように、「パドル」は、wexelマップの領域によって規定され、ここで、パドルの値は、粒子の存在によって引き上げられる。サンプリング工程が、
図24A〜
図24Cに表されている。wexelマップのセクションは、7つの隣接するwexelsを有するように示されている。現在の変位値は、所定の高さ(つまり、各wexelについての所定の変位)の影付きでない長方形バー1910によって表されている。
図24Aでは、粒子1920が、現在の変位レベルと衝突する丸い影付きでないドットとして示されており、積み重ねられている。
図24Bでは、「最も高い」粒子高さ1930が、各wexel位置でサンプリングされる。
図24Cでは、影付きの長方形1940は、粒子の結果として、パドルが、変位の上にどの位追加されたかを示している。溶接パドルの高さは、パドルが熱に基づいて特定の液化速度で追加されるので、サンプリングされた値に瞬時に設定されない。
図24A〜
図24Cには示されていないが、パドル(影付きの長方形形)が段階的に収縮し、変位(影付きでない長方形)がパドルの場所を正確に占めるように下方から段階的に成長する際に、固化過程を視覚化することが可能である。このように、リアルタイムの溶湯流動性特性が正確にシミュレートされる。ユーザが特定の溶接工程練習する際に、ユーザは、仮想現実空間においてリアルタイムで溶接パドルの溶湯流動性特性及び熱放散特性を観察することができ、この情報を使用して、自分の溶接技術を調整又は維持することができる。
【0075】
溶接クーポンの表面を表すwexelsの数が固定されている。さらに、本明細書で説明するように、流動性をモデル化するためにシミュレーションにより生成されたパドル粒子は、一時的なものである。従って、一旦、初期パドルが、仮想溶接システム100を使用するシミュレートされた溶接工程中に、仮想現実空間に生成されると、wexelsとパドル粒子との数は、比較的一定の値を維持する傾向がある。これは、パドル粒子が同様の速度で形成され且つ「崩壊」される(すなわち、パドル粒子は、一時的である)ので、処理されるwexelsの数が固定されており、溶接工程中に存在し且つ処理されるパドル粒子の数が比較的一定の値に維持される傾向がある。従って、サブシステム(PPS)110の処理負荷は、シミュレートされた溶接セッション中に比較的一定に維持される。
【0076】
本発明の別の実施形態によれば、パドル粒子は、溶接クーポンの表面内に又は下に生成される。このような実施形態では、変位は、未使用(すなわち、未だ溶接されていない)の溶接クーポンの元の表面変位に対して正又は負となるようにモデル化することができる。このように、パドル粒子は、溶接クーポンの表面に蓄積されるだけでなく、溶接クーポンに浸透してもよい。しかしながら、wexelsの数は、依然として固定されており、形成され且つ崩壊されるパドル粒子は、依然として比較的一定のままである。
【0077】
本発明の代替実施形態によれば、モデル化される粒子の代わりに、wexel変位マップは、パドルの流動性をモデル化するための複数のチャネルを有するように提供してもよい。又は、粒子をモデル化する代わりに、密度の高いボクセルマップをモデル化してもよい。本明細書で使用されるように、ボクセル(例えば、体積ピクセル)は、3次元空間内の規則的なグリッド上の値を表す、体積要素である。又は、wexelマップの代わりに、サンプリングされ且つ決して消え去ることのない粒子のみをモデル化してもよい。しかしながら、このような代替実施形態は、システムの比較的一定の処理負荷を提供することはできない。
【0078】
さらに、本発明の実施形態によれば、空気の吹き込み(blowthrough)又はキー孔は、材料を取り除くことによってシミュレートされる。例えば、ユーザが長い時間に亘って同じ場所にアークを維持した場合に、実世界では、材料は孔を生じるように焼け落ちる。このような実世界の溶け落ちは、wexelデシメーション(decimation)技術によって仮想溶接システム100によってシミュレートされる。wexelによって吸収された熱量が、仮想溶接システム100によって非常に高いと判断された場合に、そのwexelは、焼け落ちるものであるとフラグ付けされる又は指定することができ、そのようにレンダリングされる(例えば、孔としてレンダリングされる)。しかしながら、その後、wexel再構成は、材料が最初に焼け落ちた後で再び追加されるような特定の溶接工程(例えば、パイプ溶接)について生じる。一般に、仮想溶接システム100は、(材料を取り除く)wexelデシメーションとwexel再構成(すなわち、材料の追加)をシミュレートする。さらに、ルートパス溶接内の材料を取り除くことは、仮想溶接システム100において適切にシミュレートされる。
【0079】
さらに、ルートパス溶接内の材料を取り除くことは、仮想溶接システム100で適切にシミュレートされる。例えば、実世界では、ルートパスの研削は、後続の溶接パスの前に行われる。同様に、仮想溶接システム100は、仮想溶接接合部から材料を取り除く、研削パスをシミュレートすることができる。取り除かれた材料は、wexelマップに負の変位としてモデル化されることが理解されよう。つまり、研削パスは、仮想溶接システム100によってモデル化された材料を取り除き、変更されたビードの輪郭をもたらす、ということである。仮想溶接システム100が材料の所定の厚さを取り除くような研削パスのシミュレーションを自動化することができ、その自動化は、ルートパス溶接ビードの表面に対するそれぞれで行うができる。
【0080】
代替実施形態では、実際の研削ツール、すなわちグラインダーは、モック溶接ツール160又は別の入力装置の起動により、オン/オフするようにシミュレートされる。研削ツールは、実世界のグラインダーに似るようにシミュレートできることに留意されたい。この実施形態では、ユーザは、ルートパスに沿って研削ツールを操作して、その移動に応じて材料を取り除く。ユーザは、非常に多くの材料を取り除くことができることを理解されたい。上述したことと同様に、孔や(上述した)欠陥は、ユーザが非常に多くの材料を研削し過ぎた場合に生じることがある。それでも、ハードリミット又はストップが、実装される、すなわち、ユーザが非常に多くの材料を取り除くことを防止する、或いは非常に多くの材料が取り除かれた表示を示すように、プログラムされる。
【0081】
本明細書で説明する不可視「パドル」粒子に加えて、仮想溶接システム100は、本発明の実施形態によれば、アーク、炎、スパーク効果を表すために他の3つのタイプの目に見える粒子を使用してもよい。これらのタイプの粒子は、他のタイプの粒子と相互作用しないが、変位マップ内でのみ相互作用する。これらの粒子はシミュレートされた溶接面に衝突するが、これらの粒子は互いに相互作用しない。本発明の実施形態によれば、パドル粒子のみが、互いに相互作用する。スパーク粒子の物理的性質は、スパーク粒子が、仮想現実空間で跳ね返り、この空間内で光るドットとしてレンダリングされるようにセットアップされる。
【0082】
アーク粒子の物理的性質は、アーク粒子がシミュレートされた溶接クーポンや溶接ビードの表面に衝突し、しばらく留まるようにセットアップされる。アーク粒子は、仮想現実空間における大きな薄暗い青斑点としてレンダリングされる。これは、視覚的な画像の並べ替えを形成するために重ね合された多くのこのようなスポットを必要とする。最終結果は、青い縁を含む白く輝く後光である。
【0083】
炎粒子の物理的性質は、上方にゆっくり持ち上げられるようにモデル化される。炎粒子は、中間サイズの薄暗い赤黄色の斑点としてレンダリングされる。これは、視覚的な画像の並べ替えを形成するために重ね合された多くのスポットを必要とする。最終結果は、上向きに持ち上げられ且つ次第に暗くなる赤い縁を含む橙赤色の炎の斑点である。本発明の他の実施形態によれば、他のタイプの非パドル粒子を、仮想溶接システム100に実装してもよい。例えば、煙粒子は、炎粒子と同様の方法でモデル化し、シミュレートすることができる。
【0084】
シミュレートされた可視化における最終ステップは、GPU115のシェーダ117によって提供された頂点及びピクセルシェーダによって処理される。頂点及びピクセルシェーダが、パドル及び変位だけでなく、熱によって変更された表面の色及び反射性に適用される。本明細書で以前説明したように、PHEDのwexel形式のエクストラ(E)チャネルは、wexel当たりの使用される追加情報の全てを含む。本発明の実施形態によれば、エクストラ情報は、非未使用ビット(真=ビード、偽=未使用鋼)、スラグビット、アンダーカット値(このwexelにおけるアンダーカット量、ゼロはアンダーカットが存在しないに等しい)、多孔性値(このwexelにおける気孔量、ゼロは気孔が存在しないことに等しい)、及びビードが固化する時間をエンコード化されたビードウェイク値を含む。未使用鋼、スラグ、ビード、及び多孔性を含む異なる溶接クーポンの外観に関連付けられた画像マップのセットが存在する。これらの画像マップは、バンプ(突起)マッピングとテクスチャマッピングとの両方に使用される。これらの画像マップの混合量は、本明細書で説明する各種フラグ及び値によって制御される。
【0085】
ビードウェイク効果が、1次元イメージマップと、ビードの所定のビットが固化する時間をエンコード化するwexel当たりのビードウェイク値とを使用して達成される。一旦、熱いパドルwexel位置が、「パドル」と呼ぶのに十分な熱さを有さなくなると、時間はその位置でセーブされ、「ビードェイク」と呼ばれる。最終結果は、シェーダコードが、1次元のテクスチャマップを使用して、ビードが横たわる方向を表すユニークな外観にビードを与えるような「波紋」を描くこととなる。本発明の代替実施形態によれば、仮想溶接システム100は、仮想現実空間で、シミュレーションをすることが可能であり、シミュレートされた溶接パドルが、溶接軌跡に沿って移動される際に、シミュレートされた溶接パドルのリアルタイムの流動化−固化の移行からもたらされるような、リアルタイムの溶接ビードウェイク特性を有する溶接ビードを表示する。
【0086】
本発明の代替実施形態によれば、仮想溶接システム100は、溶接機のトラブルシューティングを行う方法をユーザに教えることができる。例えば、システムのトラブルシューティングモードは、ユーザが、システムを正しくセットアップできるようにこのユーザを訓練することができる(例えば、ガス流量を修正する、電源コード接続を修正する)。本発明の別の代替実施形態によれば、仮想溶接システム100は、溶接セッション(又は溶接セッションの少なくとも一部、例えばNフレーム)を記録及び再生することが可能である。トラックボールは、ビデオのフレームをスクロールするために設けられており、ユーザ又はインストラクターが溶接セッションを批評することを可能にする。再生が、同様に選択可能な速度で提供される(例えば、全速、半分の速度、1/4の速度)。本発明の実施形態によれば、分割スクリーン再生が提供され、2つの溶接セッションを、例えば監視員用ディスプレイ装置(ODD)150上で2つ並べて見ることを可能にする。例えば、「良好な」溶接セッションは、比較目的のために「不十分な」溶接セッションの横に表示することができる。
【0087】
要約すると、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムと、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された空間トラッカーと、空間トラッカーによって空間的に追跡可能な少なくとも1つのモック溶接ツールと、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された少なくとも1つのディスプレイ装置と、を含むリアルタイム仮想現実溶接装置が開示される。仮想現実溶接装置は、ポータブル用途に適応するように設計されており、コンパクトに収納可能なスタンドを用いて、モック溶接ツールと一緒に使用するための空間に溶接クーポンを保持する。モック溶接ツールは、複数のアダプタを結合する共通のベースを含んでおり、各アダプタは、特定の溶接タイプをシミュレートする。このように、システムは、仮想現実空間で、リアルタイムの溶湯流動性及び熱放散特性を有する溶接パドルをシミュレートすることができる。システムは、リアルタイムでディスプレイ装置にシミュレートされた溶接パドルをさらに表示することができる。
【0088】
上述した例は、本発明の様々な態様のいくつかの可能な実施形態の単なる例示であり、均等な修正及び/又は変更が、本明細書及び添付図面を読み且つ理解することにより、他の当業者に可能になる。具体的には、上述した構成要素(アセンブリ、デバイス、システム、回路等)によって実行される様々な機能に関して、このような構成要素を説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、特に断らない限り、本発明の例示の実装形態の機能を実行するように開示された構造と構造的に等価ではないとしても、説明した構成要素(例えば、それは機能的に均等である)の特定の機能を実行するようなハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせ等の構成要素に対応することを意図している。さらに、本発明の特定の特徴は、いくつかの実装形態のうちの1つのみに関して開示されているが、このような特徴は、所与の又は特定の用途について所望され且つ有利となるように、他の実装形態の1つ以上の特徴と組み合わせることができる。また、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「含む(with)」、又はこれらの活用形を含む用語の範囲は、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲において使用されている。このような用語は、用語「備える、有する、含む(comprising)」と同様の方法で包括されることを意図している。本明細書で利用されるように、用語「データム(基準)」及び「基準点」は、測定が行われるリファレンスを指す。
【0089】
本明細書は、最良の形態を含む、本発明を開示するために例を使用し、当業者が、任意の装置又はシステムを製作し且つ使用し、又は任意の組込まれた方法を実行することを含むように、本発明を実施することを可能にする。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者によって想起される他の例も含むことができる。そのような例は、それらの例が、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合や、又はそれらの例が、特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する等価な構造要素を含む場合に、特許請求の範囲内にあるものとする。