(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、大雨などで吸込水槽に大量の水が急激に流入しても迅速に排水を行うことができる先行待機立軸ポンプが知られている。この先行待機立軸ポンプは、揚水運転(排水運転)ができない低水位の状態から全速運転(気中運転)を開始し、吸込水槽の水位に応じて気中運転、気水混合運転、揚水運転が繰り返し行われる。
【0003】
上記気中運転の状態から吸込水槽の水位が上昇して羽根車入口レベルに達すると、空気と水が混ざった気水混合運転に移行し、さらに水位が上昇すると、通常の揚水運転が行われる。また、揚水運転の状態から水位が低下すると、気水混合運転に移行し、さらに水位が低下すると、揚水(排水)が停止し揚水管内に水が留まるエアロック運転になる。このエアロック運転が継続すると、羽根車によって揚水管内の滞留水が攪拌されるため、滞留水の温度が上昇すると共にポンプに大きな振動が発生してポンプ軸の軸受が損傷するという問題がある。
【0004】
そこでエアロック運転を回避するため、揚水管内の滞留水を強制的に落水させる機能を備えた立軸ポンプが提案されている。電気的制御によらず機械的制御により落水させるものとして、例えば特許文献1には、羽根車上部と吐出管上部とを連通させ、下部に小穴が穿設された落水管と羽根車上部との間に落水弁を設け、吐出管上部と羽根車上部との圧力バランスにより弁開閉を行う技術が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ケーシングの下流に落水口とフラップ弁とを設け、水流の有無によりフラップ弁の開閉を行う技術が記載されている。さらに、特許文献3には、落水弁の開閉にばねの弾力を利用して、羽根車ケーシング内の圧力が高いときには落水弁が閉成し、圧力が低いときには落水弁が開成する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に示される技術は、羽根車上部と吐出管上部との高低差が大きいため、連通させる落水管の長さが長くなり、落水設備が大きなものとなる不都合があった。また、落水管が長いとポンプの振動に伴う落水管の振動も大きくなり、振動による損傷を防止するため落水管の取り付けに労力を要する。また、特許文献2に示される技術は、揚水が停止しても羽根車は回転しているため、揚水管内の滞留水の旋回流れによってフラップ弁が外側に押されて落水口が開口しない恐れがある。さらに、特許文献3には、ポンプの吐出圧とばねの付勢力とを利用して落水弁を開閉する技術が示されるが、落水弁の弁体が落水流路内に突出しているため異物が詰まりやすく、また弁体を付勢するばねにも異物が絡みやすく、落水制御に支障をきたす恐れがある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、落水管が短くて済み、落水設備がコンパクトであると共に、異物も詰まりが生じ難い落水機構を有する立軸ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る立軸ポンプは、回転駆動される羽根車を収納する羽根車ケーシングの外部に落水弁が配設された立軸ポンプであって、前記羽根車ケーシングの前記羽根車近傍に導入口と落水口とが設けられ、前記落水弁が、筒状に形成された弁ケーシングと、前記弁ケーシング内で上下動可能に収納された弁体とを備え、前記弁ケーシングの底部に吐出口が設けられていると共に、前記弁ケーシングの側面に流入口が設けられ、前記弁ケーシングの前記流入口と対向する位置に流出口が設けられ、前記導入口と前記吐出口とが圧力導入管で接続されていると共に、前記落水口と前記流入口とが落水管で接続され、前記羽根車が回転駆動され、吸込水槽の水位の上昇に伴い前記羽根車ケーシング内の圧力が上昇し揚水が開始されると、前記吐出口から前記弁ケーシング内に吐出される圧力水により前記弁体が押し上げられて上方に移動し、前記弁ケーシング内の天面に当接する位置に配されると、前記弁体が前記流入口及び前記流出口を閉塞し、前記吸込水槽の水位の低下に伴い前記羽根車ケーシング内の圧力が低下し揚水が停止されると、前記圧力水の前記弁体に対する付勢力が弱まり前記弁体が下降して前記弁ケーシング内の底部に当接する位置に配されると、前記弁ケーシング内に前記流入口と前記流出口とを連通させる空間が形成されることを特徴とする。
【0010】
この立軸ポンプでは、羽根車が回転駆動され、吸込水槽の水位上昇により羽根車ケーシング内の圧力が上昇し揚水が開始されると、吐出口から弁ケーシング内に吐出される圧力水により弁体が押し上げられて上方に移動し、弁ケーシング内の天面に当接する位置に配されると、弁体が流入口及び流出口を閉塞するので、落水口から流出口までの落水流路の連通を遮断する。また、落水流路の連通が遮断されることによって、揚水運転時に揚水が落水流路から外部に流出することがない。また、吸込水槽の水位低下により羽根車ケーシング内の圧力が低下し揚水が停止されると、圧力水の弁体に対する付勢力が弱まり弁体が自重で下降して弁ケーシング内の底部に当接する位置に配されると、弁ケーシング内に流入口と流出口とを連通させる空間が形成されるので、落水口から流出口まで連通される落水流路が形成される。このように、羽根車の回転駆動と吸込水槽の水位変化に伴う圧力水の圧力変化と弁体の重量とによって弁体が確実に上下動することで、落水流路の連通と遮断とが行われる。しかも、落水口から流出口までの落水流路に介在物や突起物がないため、異物を含む汚水であっても介在物等に異物が絡んで落水流路が閉塞することがなく、揚水管内の滞留水を確実に落水させることができる。また、落水管を上下に長く配管する必要がなく、短くて済み、落水機構を小型化することが可能である。
【0011】
第2の発明に係る立軸ポンプは、第1の発明において、前記弁体が、前記弁ケーシング内の底部に当接する位置に配された状態で、前記流入口と前記流出口とを連通させる貫通孔を有していることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、弁体が、弁ケーシング内の底部に当接する位置に配された状態で、流入口と流出口とを連通させる貫通孔を有しているので、揚水停止時に貫通孔が流入口と流出口との間で落水流路の一部となる。
【0012】
第3の発明に係る立軸ポンプは、第1の発明において、前記弁体が、前記弁ケーシング内の底部に当接する位置に配された状態で、上端面が前記流入口と前記流出口との下端に略一致する位置に配されて、前記上端面と前記弁ケーシング内の天面との間に前記流入口と前記流出口とを連通させる空間が形成されることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、弁体が、弁ケーシング内の底部に当接する位置に配された状態で、上端面が流入口と流出口との下端に略一致する位置に配されて、上端面と弁ケーシング内の天面との間に流入口と流出口とを連通させる空間が形成されるので、揚水停止時に上端面と弁ケーシング内の天面との間の空間が流入口と流出口との間で落水流路の一部となる。また、貫通孔を形成した弁体に比べて、弁体を簡易な構造にすることができると共に小型化することも可能である。
【0013】
第4の発明に係る立軸ポンプは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記弁ケーシングの底部に、前記圧力導入管と連通された突出管状部が鉛直方向上方に突出して設けられ、前記弁体が、底部から鉛直方向上方に延在し前記突出管状部が挿入される挿入穴を有していることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、弁ケーシングの底部に、圧力導入管と連通された突出管状部が鉛直方向上方に突出して設けられ、弁体が、底部から鉛直方向上方に延在し突出管状部が挿入される挿入穴を有しているので、突出管状部から吐出される圧力水の勢いを挿入穴を介して効果的に弁体に伝達することができ、弁体の上方への移動を速やかかつ確実に行うことができる。
【0014】
第5の発明に係る立軸ポンプは、第4の発明において、前記弁体が、前記弁ケーシング内の底部に当接する位置に配された状態で、前記流入口と前記流出口とを連通させる貫通孔を有し、前記突出管状部及び前記挿入穴の水平方向の断面形状が、多角形又は楕円であることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、突出管状部及び挿入穴の水平方向の断面形状が、多角形又は楕円であるので、弁体が円柱形状であっても、軸周りの回転が規制される。したがって、流入口と流出口とが貫通孔で確実に連通されて落水が行われる。
【0015】
第6の発明に係る立軸ポンプは、第4又は第5の発明において、前記弁体が、前記弁ケーシング内の底部に当接する位置に配された状態で、前記流入口と前記流出口とを連通させる貫通孔を有し、前記弁体の軸心と前記突出管状部の軸心とを水平方向にずらしていることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、弁体の軸心と突出管状部の軸心とを水平方向にずらしているので、弁体が円柱形状であっても、軸周りの回転が規制される。したがって、流入口と流出口とが貫通孔で確実に連通されて落水が行われる。
【0016】
第7の発明に係る立軸ポンプは、第1から第6の発明のいずれかにおいて、前記弁ケーシングの上部及び下部に、それぞれ内部と外部とを連通する連通孔が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、弁ケーシングの上部及び下部に、それぞれ内部と外部とを連通する連通孔が形成されているので、弁体の上昇時及び下降時に弁ケーシング内の水や空気を連通孔から速やかに排除又は吸入でき、弁体の上昇と下降をより速やかにかつ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の立軸ポンプによれば、羽根車の回転駆動と吸込水槽の水位変化に伴う圧力水の圧力変化と弁体の重量とによって弁体が確実に上下動することで、落水流路の連通と遮断とを行うことができると共に、異物を含む汚水であっても介在物等に異物が絡んで落水流路が閉塞することがなく、揚水管内の滞留水を確実に落水させることができる。また、落水管が短くて済み、落水機構を小型化することが可能である。さらに、揚水停止時には弁体が自重で下降するため、確実に落水流路を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明における立軸ポンプの第1実施形態を、
図1から
図3に基づいて説明する。
【0020】
本実施形態における立軸ポンプ1は、
図1から
図3に示すように、回転駆動される羽根車8を収納する羽根車ケーシング6の外部に落水機構として落水弁9が配設されたものである。この立軸ポンプ1は、吐出しエルボ2が吸込水槽3の床4に固定され、吐出しエルボ2の下端に揚水管5、羽根車ケーシング6が順次連結されて、吸込水槽3に垂下されている。また、羽根車ケーシング6には、ポンプ軸7の下端に配設された羽根車8が収納されている。なお、図中のWLは吸込水槽3の水位を示す。
【0021】
上記羽根車ケーシング6には、羽根車8近傍に導入口10と落水口11とが設けられている。なお、導入口10は、落水口11よりも下方に配され、より羽根車8の近くに形成されている。
上記落水弁9は、筒状に形成された弁ケーシング17と、弁ケーシング17内で上下動可能に収納された弁体18とを備えている。すなわち、落水弁9は、水平方向の断面形状が正方形の筒形の側面ケーシング14と上部ケーシング15と下部ケーシング16とからなる弁ケーシング17と、弁ケーシング17の内部に収納される弁体18とを有している。
【0022】
上記弁ケーシング17の底部には、吐出口26が設けられていると共に、弁ケーシング17の側面には、流入口20が設けられている。
また、弁ケーシング17の流入口と対向する位置には、流出口21が設けられている。
上記導入口10と吐出口26とは、圧力導入管13で接続されていると共に、落水口11と流入口20とは落水管12で接続されている。
【0023】
この立軸ポンプ1は、
図3に示すように、羽根車8が回転駆動され、吸込水槽3の水位上昇により羽根車ケーシング6内の圧力が上昇して揚水が開始されると、吐出口26から弁ケーシング17内に吐出される圧力水Wにより弁体18が押し上げられて上方に移動し、弁ケーシング17内の天面に当接する位置に配されると、弁体18が流入口20及び流出口21を閉塞する機能を有している。
【0024】
また、立軸ポンプ1は、
図2に示すように、吸込水槽3の水位低下により羽根車ケーシング6内の圧力が低下し揚水が停止されると、圧力水Wの弁体18に対する付勢力が弱まり弁体18が下降して弁ケーシング17内の底部に当接する位置に配されると、弁ケーシング17内に流入口20と流出口21とを連通させる空間を形成する機能を有している。
上記弁体18は、弁ケーシング17内の底部に当接する位置に配された状態で、流入口20と流出口21とを連通させる貫通孔19を有している。すなわち、この貫通孔19は、流入口20と流出口21とを連通させる上記空間となる。この貫通孔19は、弁体18を水平方向に貫通している。
【0025】
弁体18は、適宜な質量を有する金属製(一例としてステンレス製)で中実の正四角柱で形成されており、その外径は側面ケーシング14の内径よりわずかに小さく(一例として2mm小さい)、弁ケーシング17の内部を上下動可能に収納されている。
上記側面ケーシング14には、上記流入口20と、流入口20に対向する位置に上記流出口21とがそれぞれ設けられている。流入口20は、羽根車ケーシング6の落水口11に落水管12で接続され、流出口21には排水管22の一端が接続される。
【0026】
流入口20と流出口21とは貫通孔19で連通され、落水口11から流出口21までの流路が落水流路23として形成されている。この貫通孔19の内径は、流入口20及び流出口21と同径であり、落水流路23には流路を狭窄する突起物や流れを妨げる障害物等の介在物がなく、落水口11を通過した異物は落水流路23を確実に通過できるようになっている。
【0027】
側面ケーシング14の下部には、連通孔24a、24bが穿設され、側面ケーシング14の上部には連通孔25a、25bが穿設され、連通孔24a、24b及び連通孔25a、25bにより弁ケーシング17の内部と外部とが連通されている。
下部ケーシング16の中央部には、吐出口26が設けられ、吐出口26が羽根車ケーシング6の導入口10に圧力導入管13を介して接続されている。
【0028】
この立軸ポンプ1では、羽根車ケーシング6内の圧力が上昇して揚水運転が開始されると、流入口20及び流出口21が開口している落水管12及び落水流路23内の圧力に対して、吐出口26が弁体18で閉塞されている圧力導入管13内の圧力が高くなる。これにより、羽根車ケーシング6内の圧力水Wが吐出口26から弁体18の底部に向けて吐出され、弁体18はその付勢力によって上方に移動する。この弁体18の上方への移動によって、
図3に示すように、流入口20と流出口21とが弁体18で閉塞され、落水流路23の連通が遮断される。また、弁体18が上方に移動する際、弁体18より上方にある空気や水は、連通孔25a、25bから速やかに弁ケーシング17の外部に排出される。
【0029】
次に、羽根車ケーシング6内の圧力が低下して揚水運転が停止すると、吐出口26から弁体18に向けて吐出される圧力水Wの付勢力が低下することによって、弁体18の重量が付勢力より大きくなり、弁体18が下降する。この弁体18の下降によって流入口20と流出口21とが貫通孔19で連通され、落水が開始される。また、弁体18が下降する際、連通孔25a、25bから空気が吸入され、弁体18より下方にある水は連通孔24a、24bから速やかに弁ケーシング17の外部に排出される。
【0030】
このように本実施形態の立軸ポンプ1では、羽根車8の回転駆動と吸込水槽3の水位変化に伴う圧力水Wの圧力変化と弁体18の重量とによって弁体18が確実に上下動することで、落水流路23の連通と遮断とが行われる。しかも、落水口11から流出口21までの落水流路23に介在物や突起物がないため、異物を含む汚水であっても介在物等に異物が絡んで落水流路23が閉塞することがなく、揚水管5内の滞留水を確実に落水させることができる。また、落水管12を上下に長く配管する必要がなく、短くて済み、落水機構全体を小型化することが可能である。さらに、揚水停止時に圧力水Wの圧力が低下することで、弁体18が自重で下降するため、確実に落水流路23を形成することができる。
【0031】
また、弁体18が、弁ケーシング17内の底部に当接する位置に配された状態で、流入口20と流出口21とを連通させる貫通孔19を有しているので、揚水停止時に貫通孔19が流入口20と流出口21との間で落水流路23の一部となる。
さらに、弁ケーシング17の上部及び下部に、それぞれ内部と外部とを連通する連通孔25a,25b及び連通孔24a,24bが形成されているので、弁体18の上昇時及び下降時に弁ケーシング17内の水や空気を連通孔25a,25b及び連通孔24a,24bから速やかに排除又は吸入でき、弁体18の上昇と下降をより速やかにかつ確実に行うことができる。
【0032】
次に、本発明に係る立軸ポンプの第2から第5実施形態について、
図4から
図10を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、弁体18の底部が平坦面であるのに対し、第2実施形態の立軸ポンプでは、
図4及び
図5に示すように、弁ケーシング31の底部に、圧力導入管13と連通された突出管状部41が鉛直方向上方に突出して設けられ、弁体35が、底部から鉛直方向上方に延在し突出管状部41が挿入される挿入穴40を有している点である。
【0034】
この第2実施形態では、落水弁30の弁ケーシング31が、円筒形の側面ケーシング32と上部ケーシング33と下部ケーシング34とからなり、弁ケーシング31の内部に弁体35が上下動可能に収納されている。
また、弁体35には、弁体35を水平方向に貫通する貫通孔36が形成されている。さらに、側面ケーシング32には、流入口37と、流入口37に対向する位置に流出口38とがそれぞれ設けられている。
【0035】
流入口37は、羽根車ケーシング6の落水口11と落水管38とで接続され、流出口38には排水管22の一端が接続されている。流入口37と流出口38とは、貫通孔36で連通され、落水口11から流出口38までの流路が落水流路39として形成されている。
弁体35は適宜な質量を有するセラミックス製で中実の円柱で形成され、その外径は側面ケーシング32の内径よりわずかに小さい。この弁体35には、底部から軸方向に柱体状空洞部である挿入穴40が形成され、挿入穴40に吐出管である突出管状部41が、弁体35が下がっている状態で上端付近まで挿入されている。
【0036】
上記突出管状部41は、吐出口42を介して圧力導入管13と連通しており、下部ケーシング34に鉛直方向に立設固定されている。挿入穴40と突出管状部41とは、水平方向の断面形状が正方形に形成され、これによって弁体35は軸心周りに回転しないように規制される。
上部ケーシング33には、連通孔43a、43bが穿設されていると共に、下部ケーシング34には、連通孔44a、44bが穿設され、それぞれ弁ケーシング31の内部と外部を連通している。
【0037】
吸込水槽3の水位上昇により、羽根車ケーシング6内の圧力が上昇して揚水運転が開始されると、羽根車ケーシング6内の圧力水Wが突出管状部41から挿入穴40の上端に向けて吐出され、弁体35はその付勢力によって上方に移動する。この弁体35の移動によって、
図5に示すように、流入口37と流出口38とが弁体35で閉塞され、落水流路39の連通が遮断される。また、弁体35が上方に移動する際、弁体35より上方の空気及び水は、連通孔43a、43bから速やかに弁ケーシング31の外部に排出される。
【0038】
また、吸込水槽3の水位低下により、揚水運転が停止して羽根車ケーシング6内の圧力が低下すると、突出管状部41から弁体35に向けて吐出される圧力水Wの付勢力が低下することによって、弁体35の重量が付勢力より大きくなり、弁体35が下降する。この弁体35の下降によって流入口37と流出口38とが貫通孔36で連通され、落水流路39が形成されて落水が開始される。また、弁体35が下降する際、連通孔43a、43bから空気が吸入されることによって、弁体35より下方にある水及び空気は、連通孔44a、44bから速やかに弁ケーシング31の外部に排出される。
【0039】
このように第2実施形態の立軸ポンプは、弁体35に挿入穴40を設け、突出管状部41を挿入穴40に挿入したので、突出管状部41から吐出される圧力水Wの勢いが弁体35に効果的に伝達され、弁体35の上昇を速やかかつ確実に行うことができる。なお、本実施形態では、挿入穴40と突出管状部41との水平方向の断面形状を正方形に形成したが、これに限られることはなく、多角形や楕円に形成しても良い。
【0040】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、弁体35の軸心と挿入穴40及び突出管状部41の軸心とが一致しているのに対し、第3実施形態の立軸ポンプでは、
図6に示すように、弁体50の軸心C1と挿入穴40及び突出管状部51の軸心C2とがずれている点である。
すなわち、弁体50の軸心C1と突出管状部51の軸心C2とを水平方向にずらしている。また、第3実施形態では、上部ケーシングに替えてリング状のストッパ52を設けている点でも第2実施形態と相違している。
【0041】
このように第3実施形態の立軸ポンプでは、弁体50が円柱形の場合において、弁体50の軸心C1と突出管状部51の軸心C2を水平方向にずらすことによって、弁体50の軸心周りの回転を規制することができ、弁体50が下降した際に、流入口37と流出口38とが貫通孔36によって確実に連通される。また、弁体50が上昇した際にストッパ52により規制される。
【0042】
次に、第4実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、貫通孔19を有した弁体18を採用し、貫通孔19によって落水流路23を形成するのに対し、第4実施形態の立軸ポンプでは、
図7及び
図8に示すように、弁体65が、貫通孔を有せず、弁ケーシング64内の底部に当接する位置に配された状態で、上端面が流入口66と流出口67との下端に略一致する位置に配されて、上端面と弁ケーシング63内の天面との間に流入口66と流出口67とを連通させる空間が形成される点である。
【0043】
第4実施形態の落水弁60は、円筒形の側面ケーシング61と上部ケーシング62と下部ケーシング63とからなる弁ケーシング64と、弁ケーシング64の内部に収納される弁体65とを有している。この弁体65は、適宜な質量を有する金属製で中実の円柱で形成されており、その外径は側面ケーシング61の内径よりわずかに小さく(一例として2mm小さい)、側面ケーシング61の内部を上下動可能に収納されている。
【0044】
弁体65の上端は、側面ケーシング61に設けられた流入口66及び流出口67の下端レベルと一致している。弁体65の上端を流入口66及び流出口67の下端レベルと一致させることによって、落水口11から流出口67までの流路内に突起物や流れを妨げる障害物等の介在物のない落水流路68が形成される。流入口66は、羽根車ケーシング6に設けられた落水口11と落水管12とに接続されると共に、下部ケーシング63の中央部に設けられた吐出口69と羽根車ケーシング6に設けられた導入口10とが圧力導入管13で接続されている。
【0045】
この第4実施形態では、羽根車ケーシング6内の圧力が上昇して揚水運転が開始されると、羽根車ケーシング6内の圧力水Wが吐出口69から弁体65に向けて吐出され、弁体65はその付勢力によって上方に移動する。この弁体65の移動によって、
図8に示すように、流入口66と流出口67とが弁体65で閉塞され、落水流路68の連通が遮断される。
【0046】
また、羽根車ケーシング6内の圧力が低下して揚水運転が停止すると、吐出口69から弁体65に向けて吐出される圧力水Wの付勢力が低下することによって、弁体65の重量が付勢力より大きくなり、弁体65が下降する。この弁体65の下降によって、
図7に示すように、流入口66と流出口67とが全開し、落水流路68が連通され落水が開始される。
【0047】
このように第4実施形態の立軸ポンプによれば、落水流路68に流路を狭窄する突起物や流れを妨げる障害物等の介在物がないため、落水口11を通過した異物は落水流路68を確実に通過でき、落水弁60が異物によって閉塞することがない。また、落水弁60の構造が貫通孔を有せず、簡易でコンパクトにすることが可能である。
【0048】
次に、第5実施形態と第4実施形態との異なる点は、第4実施形態の弁体65の底部が平坦面であるのに対し、第5実施形態の立軸ポンプでは、
図9及び
図10に示すように、弁ケーシング81の底部に、圧力導入管13と連通された突出管状部91が鉛直方向上方に突出して設けられ、弁体85が、底部から鉛直方向上方に延在し突出管状部91が挿入される挿入穴90を有している点である。
【0049】
第5実施形態では、落水弁80の弁ケーシング81が、円筒形の側面ケーシング82とリング状のストッパ83と下部ケーシング84とからなり、弁ケーシング81の内部に弁体85が上下動可能に収納されている。側面ケーシング82には、流入口86と流出口87とがそれぞれ設けられ、流入口86は、羽根車ケーシング6の落水口11と落水管12で接続されている。そして、落水口11から流出口87までの流路は、落水流路88として形成されている。
【0050】
また、弁体85は、適宜な質量を有するセラミックス製で中実の円柱で形成され、その外径は側面ケーシング82の内径よりわずかに小さい。弁体85には、底部から軸方向に柱体状の挿入穴90が形成され、挿入穴90に突出管状部91が上端付近まで挿入されている。突出管状部91は吐出口92を介して圧力導入管13と連通しており、下部ケーシング84に鉛直方向に立設固定されている。
また、下部ケーシング84には、連通孔93a、93bが穿設され、弁ケーシング81の内部と外部とを連通している。
【0051】
第5実施形態では、羽根車ケーシング6内の圧力が上昇して揚水運転が開始されると、羽根車ケーシング6内の圧力水Wが突出管状部91から挿入穴90の上端に向けて吐出され、弁体85はその付勢力によって上方に移動する。この弁体85の移動によって、
図10に示すように、流入口86と流出口87とが弁体85で閉塞され、落水流路88の連通が遮断される。
【0052】
また、羽根車ケーシング6内の圧力が低下して揚水運転が停止すると、突出管状部91から弁体85に向けて吐出される圧力水Wの付勢力が低下することによって、弁体85の重量が付勢力より大きくなり、弁体85が下降する。この弁体85の下降によって流入口86と流出口87とが全開し、落水流路88が連通される。
【0053】
このように第5実施形態の立軸ポンプでは、弁体85に挿入穴90を設けると共に、突出管状部91を挿入穴90に挿入したので、突出管状部91から吐出される圧力水Wの勢いが弁体85に効果的に伝達され、弁体85の上昇を速やかかつ確実に行うことができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0055】
例えば、上記各実施形態では、いずれも導入口の下流側(上方)に落水口を設けたが、導入口と落水口とは同一レベルでもよく、導入口の上流側に落水口を設けても良い。
また、弁体の軸周りの回転を規制するための手段については、第2実施形態や第3実施形態に示した手段に限られるものではなく、たとえば弁体側面に軸方向に長溝を設け、弁ケーシングの内面に設けた凸部をこの長溝に係合することにより、弁体の上下動を可能な状態として、弁体の回転を規制しても良い。
また、筒状の弁ケーシングと柱体状の弁体との水平方向の断面形状は、円形や正方形に限られるものではなく、三角形や長方形などの多角形や楕円形であっても良い。