(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1、第2、および第3の電極のそれぞれには、前記複数のイオン通過孔が形成された領域よりも外側の領域に前記固定部材を貫通させるための貫通孔が複数設けられており、
前記固定部材が前記第1、第2、および第3の電極の前記貫通孔を貫通して前記第1の環状部材と前記第2の環状部材とを連結することにより、前記固定部材は前記第1の環状部材および前記第2の環状部材に対して固定されていることを特徴とする請求項1に記載のイオンビームエッチング装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1に本実施形態に係るイオンビームエッチング装置の概略図を示す。イオンビームエッチング装置1は、処理室101と、該処理室101内にイオンビームを照射するように設けられたイオンビーム発生装置100とを備える。イオンビーム発生装置100と処理室101とは連結されており、イオンビーム発生装置100から発生されたイオンビームは処理室101内に導入される。
【0014】
処理室101内には、基板111を保持可能な基板ホルダー110が、イオンビーム発生装置100から照射されたイオンビームが入射されるように設けられている。処理室内に設けられた基板ホルダー110は、ESC(Electrostatic Chuck)電極112をイオンビームの入射側に備えている。基板111は、ESC電極112上に載置され、ESC電極112により静電吸着されて保持される。基板ホルダー110は、イオンビームに対して任意に傾斜することができる。また、基板ホルダー110は、基板111をその面内方向に回転(自転)できる構造となっている。
【0015】
また、処理室101には、処理室101内および後述のプラズマ発生室102内を排気可能な排気ポンプ103が設置されている。処理室101内にはニュートラライザ(不図示)が設けられており、該ニュートラライザによりイオンビーム発生装置100から導入されたイオンビームを電気的に中和することができる。よって、電気的に中和されたイオンビームを基板111に照射することができ、該基板111のチャージアップが防止される。また、処理室101にはガス導入部114が設けられており、ガス導入部114により処理室101内にプロセスガスを導入することができる。
【0016】
イオンビーム発生装置100は、プラズマ発生室102を備えている。放電チャンバとしての該プラズマ発生室102は、中空部である内部空間102aおよび開口102bを有する部材としての放電容器104を有しており、内部空間102aが、プラズマ放電が生成される放電空間となる。本実施形態では、
図1に示すように、例えば石英からなる放電容器104を、例えばステンレス等からなる処理室101に取り付けることにより、処理室101とプラズマ発生室102とが連結されている。すなわち、処理室101に形成された開口と放電容器104の開口102b(プラズマ発生室102の開口102b)とが重なるように、放電容器104が処理室101に設けられている。
【0017】
上記内部空間102aは、開口102bを介してその外部の処理室101と連通しており、内部空間102aにて生成されたイオンは開口102bから引き出される。また、プラズマ発生室102には、ガス導入部105が設けられており、該ガス導入部105によりプラズマ発生室102内の内部空間102aにエッチングガスが導入される。また、高周波(RF)場を生成するためのRFアンテナ108が、内部空間102aにプラズマ放電を生成するようにプラズマ発生室102の周囲に配置されている。RFアンテナ108には、整合器107を介して、RFアンテナ108に高周波電力を供給する放電用電源128が接続されている。さらには、プラズマ発生室102の周囲には、電磁コイル106が設けられている。このような構成において、ガス導入部105からエッチングガスを導入し、RFアンテナ108に高周波電力を印加することでプラズマ発生室102内にエッチングガスのプラズマを発生させることができる。
【0018】
本実施形態では、
図1に示すように、処理室101とプラズマ発生室102とが連結されている。イオンビーム発生装置100は、連結された処理室101とプラズマ発生室102との境界に設けられた、内部空間102aにて発生したプラズマからイオンを引き出すための引き出し手段としてのグリッド部109をさらに備えている。本実施形態では、該グリッド部109に直流電圧を印加し、プラズマ発生室102内のイオンをビームとして引き出し、該引き出されたイオンビームを基板111に照射することで基板111の処理が行われる。なお、グリッド部109は、
図1においては不図示の締結部材により装置に取り付けられ、不図示の連結部によりグリッド部109の各電極が連結されている。
【0019】
グリッド部109は、プラズマ発生室102のイオン放出側に形成された開口102bに設けられる。グリッド部109は、少なくとも3つの電極(グリッド)として、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117を備えている。各電極115、116、117は、板状の電極であり、内部空間102aにて発生したイオンを通過させるためのイオン通過孔(グリッド孔)を多数有する。イオン通過孔は、各電極115、116、117において、その一方の主面から他方の主面に貫通するように形成されている。第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117の材料としては、それぞれ例えばモリブデン、チタン、カーボン、鉄ニッケル合金、ステンレス、タングステン等を用いることができる。
【0020】
第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117は、開口102bにおいて、内部空間102aから開口102bの外側に向かって(グリッド部109から引き出されたイオンビームの進行方向に沿って)、互いに離間して平行に配列されている。第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117は、この順で内部空間102aから開口102bの外側に向かって配置されている。このように配置された第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117を有するグリッド部109により、内部空間102aからのイオンがイオン通過孔を通過してプラズマ発生室102の外部へと放出されるようになっている。これら少なくとも3つの電極115、116、117のうち、最も内部空間102a側の電極である第1の電極115が、開口102bにおける放電空間を区画する部材として機能し、各電極115、116、117のイオン通過孔が形成された面が対向している。
【0021】
本実施形態では、グリッド部109は、プラズマ発生室102と処理室101との連結部分であるこれら2つの境界において、プラズマ発生室102の側から外側に向かって順に、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117を備えている。第1の電極115は、グリッド部109におけるグリッドのうち、プラズマ発生室102内に発生するプラズマに最も近いプラズマ側グリッドである。第3の電極117は、グリッド部109におけるグリッドのうち、基板111に最も近い基板側グリッドである。第1の電極115のイオン通過孔の各々、第2の電極116のイオン通過孔の各々、および第3の電極117のイオン通過孔の各々が対向するように、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117は、配列方向Pに沿って配列されている。
【0022】
配列方向Pに沿って配列された第1の電極115は、プラズマ発生室102の開口102bにおいて最も内部空間102a側(最もプラズマ発生室側)に設けられている。第1の電極115は、開口102bにおいて、内部空間102aを区画する部材としても機能する。第2の電極116は、第1の電極115よりも第1の電極115から第3の電極117への配列方向Pに沿った、内部空間102aの外側(第1の電極115よりも処理室101側)に設けられている。第3の電極117は、第2の電極116よりも第1の電極115から上記配列方向Pに沿った、内部空間102aの外側に設けられた電極である。第3の電極117は、グリッド部109の構成要素としての電極115、116、117のうち、上記配列方向Pに沿ったプラズマ発生室102の最も外側に設けられた電極(すなわち、最も処理室101側に設けられた電極)である。
【0023】
本実施形態では、第1の電極115は、第1電源(不図示)と接続されて正の電圧が印加される。第2の電極116は、第2電源(不図示)と接続されて負の電圧が印加される。従って、プラズマ発生室102内にプラズマを発生させ、第1の電極115に正の電圧を印加し、第2の電極116に負の電圧を印加すると、第1の電極115と第2の電極116との電位差によりイオンが加速される。また、第3の電極117は、アース電極とも呼ばれ接地されている。第2の電極116と第3の電極117との電位差を制御することにより、静電レンズ効果を用いてイオンビームのイオンビーム径を所定の数値範囲内に制御することができる。
【0024】
図2は、グリッド部109の近傍を拡大した模式図である。第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117は、一方端と他方端とを有する固定部材121により連結されている。すなわち、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117のそれぞれの、複数のイオン通過孔が形成された領域よりも外側の外周部に形成された貫通孔の各々を、固定部材121が貫通している。また、固定部材121の一方端は、第1の環状部材としての第1のリング119に固定されている。固定部材121の他方端は、第2の環状部材としての第2のリング120に固定されている。
【0025】
図3は、第3の電極117(第1の電極115)および第2のリング120(第1のリング119)を基板側(内部空間102a側)から見たときの様子を示す図である。第3の電極117の、複数のイオン通過孔117aが形成された領域よりも外側の外周部117bには、固定部材121を貫通させるための貫通孔117cが複数設けられている。第2の電極116の、複数のイオン通過孔116aが形成された領域よりも外側の外周部116bには、固定部材121を貫通させるための貫通孔116cが複数形成されている。第1の電極115の、複数のイオン通過孔115aが形成された領域よりも外側の外周部115bには、固定部材121を貫通させるための貫通孔115cが複数設けられている。
【0026】
第2のリング120は、第3の電極117に設けられた多数のイオン通過孔117aが露出されるように上記外周部117bと重なるように設けられている。第2のリング120には、各貫通孔117cを貫通した各固定部材121が連結されている。また、第1のリング119は、第1の電極115に設けられた多数のイオン通過孔115aが露出されるように上記外周部115bと重なるように設けられている。第1のリング119には、各貫通孔115cを貫通した各固定部材121が連結されている。固定部材121は、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117の貫通孔115c、116c、117cを貫通して第1のリング119と第2のリング120とを連結している。
【0027】
このように、本実施形態では、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117を固定部材121により貫通し、該固定部材121の両端を第1のリング119および第2のリング120にそれぞれ連結している。これにより、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117の位置ずれを抑制することができ、それぞれのイオン通過孔の相対的な位置のずれを防止ないしは低減することができる。
【0028】
上記第1のリング119は、
図2に示すように、締結部材122により処理室101の側壁125に取り付けられている。このため、第1のリング119は、第1の電極115よりも上記配列方向Pに沿った内部空間102a側(プラズマ発生室102側)に設けられている。また、第2のリング120は、第3の電極117の、第2の電極116と反対側である、第3の電極117よりも上記配列方向Pに沿った内部空間102aの外側(プラズマ発生室102の外部側、すなわち、処理室側)に設けられている。
【0029】
図4は、本実施形態に係るグリッド部109と第1のリング119および第2のリング120との連結の詳細を示す図である。第1のリング119は、キャップリング119aとボトムリング119bとを備えている。キャップリング119aの材料としては、例えば、ステンレス、またはアルミニウムを用いることができる。また、ボトムリング119bの材料としては、その熱膨張率とグリッド部109の材料の熱膨張率との関係で決定することが好ましい。すなわち、ボトムリング119bの材料は、グリッド部109の材料の熱膨張率、特にボトムリング119bと接触する第1の電極115の材料の熱膨張率と同等の熱膨張率を有する材料であることが好ましい。具体的には、ボトムリング119bの材料として、例えば、モリブデン、チタン、カーボン、鉄ニッケル合金、ステンレス、タングステン等を用いることができる。
【0030】
キャップリング119aは、処理室101の側壁125に取り付けられている。ボトムリング119bは、キャップリング119aに取り付けられている。ボトムリング119bには、固定部材121を貫通するための貫通孔119cが、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117に形成された各貫通孔115c、116c、117cと対応するように形成されている。後述するように、固定部材121が貫通孔119cを貫通した後は、固定部材121の一方端は貫通孔119cに嵌合されていると言える。すなわち、貫通孔119cは、固定部材121が嵌合される開口部である。
【0031】
ボトムリング119bは、貫通孔119cと貫通孔115cとが対向するように第1の電極115に接触している。第2の電極116は、貫通孔116cと貫通孔115cとが対向するように第1の電極115から離間して配置されている。第1の電極115の外周部115bと第2の電極116の外周部116bとの間には、スペーサとしての絶縁体130aが配置されている。また、第3の電極117は、貫通孔117cと貫通孔116cとが対向するように第2の電極116から離間して配置されている。第2の電極116の外周部116bと第3の電極117の外周部117bとの間には、スペーサとしての絶縁体130bが配置されている。これら絶縁体130a、130bの材料としては共に、それらの熱膨張率とグリッド部109の材料の熱膨張率との関係で決定することが好ましい。すなわち、絶縁体130aの材料は、グリッド部109の材料の熱膨張率、特に絶縁体130aと接触する第1の電極115および第2の電極116の熱膨張率と同等の熱膨張率を有する材料であることが好ましい。また、絶縁体130bの材料は、グリッド部109の材料の熱膨張率、特に絶縁体130bと接触する第2の電極116および第3の電極117の熱膨張率と同等の熱膨張率を有する材料であることが好ましい。具体的には、絶縁体130a、130bの材料として、例えば、セラミックス、酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0032】
第2のリング120には、固定部材121が嵌合される開口部としての凹部120aが、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117に形成された各貫通孔115c、116c、117cと対応するように形成されている。第2のリング120は、凹部120aと貫通孔117cとが対向するように第3の電極117に接触している。第2のリング120の材料としては、その熱膨張率とグリッド部109の材料の熱膨張率との関係で決定することが好ましい。すなわち、第2のリング120の材料は、グリッド部109の材料の熱膨張率、特に第2のリング120と接触する第3の電極117の材料の熱膨張率と同等の熱膨張率を有する材料であることが好ましい。具体的には、第2のリング120の材料として、例えば、チタン、ステンレス、タングステン等を用いることができる。
【0033】
なお、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117を貫通した固定部材121が第1のリング119および第2のリング120により固定されていれば、上述した構成に限定されるものではない。この場合において、ボトムリング119b、すなわち第1のリング119と第1の電極115とは接している必要はなく、さらには第2のリング120と第3の電極117も接触している必要はない。
【0034】
上述のように配置されているので、貫通孔119c、貫通孔115c、貫通孔116c、貫通孔117c、および凹部120aは直線上に配列されることになる。本実施形態では、固定部材121は、金属固定ボルト121aと、該金属固定ボルト121aを被覆するように設けられた絶縁体121bとを備えている。このような表面に絶縁体121bを有する固定部材121は、貫通孔119c、貫通孔115c、貫通孔116c、および貫通孔117cを介して凹部120aにねじ込まれている。このとき、絶縁体121bは、貫通孔119c、貫通孔115c、貫通孔116c、貫通孔117c、および凹部120aそれぞれの壁と接触する領域を有している。すなわち、固定部材121は、第1のリング119、第1の電極115、第2の電極116、第3の電極117、および第2のリング120の各々と接触する領域を有している。これにより、上記金属固定ボルト121aは、第1のリング119、第1の電極115、第2の電極116、第3の電極117、および第2のリング120から絶縁されている。また、金属固定ボルト121aは、絶縁キャップ131によってキャップリング119aから絶縁されている。絶縁体121bおよび絶縁キャップ131の材料としては共に、絶縁性の材料であれば良く、例えば、セラミックス、酸化アルミニウムを用いることができる。なお、本実施形態では、固定部材121は、少なくとも表面に絶縁層を有していれば良く、ある程度の剛性を有していれば、絶縁体自身であっても良い。
【0035】
本実施形態では、イオンビーム発生装置100は、プラズマ発生室102の外から第3の電極117を加熱するための加熱手段としてのランプヒータ123をさらに備えている。
図1および
図2に示すように、ランプヒータ123は、開口123aを有するリング状になっている。リング状のランプヒータ123は、第2のリング120の、第3の電極117とは反対側(配列方向Pに沿ってプラズマ発生室102の外側)に設けられている。リング状のランプヒータ123は、開口123a内にグリッド部109が含まれるように配置されている。これにより、グリッド部109から引き出されたイオンビームがリング状のランプヒータ123の開口123aから出射されるようになっている。ランプヒータ123は、処理室101側から、すなわちプラズマ発生室102の外側から第3の電極117を加熱するようになっている。
【0036】
ランプヒータ123と第3の電極117との間には、固定部材121が連結された第2のリング120が設けられている。このため、ランプヒータ123は、固定部材121をも加熱するようになっている。従って、ランプヒータ123は、第3の電極117に加えて固定部材121をも加熱するように設けられているとも言える。
【0037】
本実施形態では、グリッド部109の、プラズマ放電が起こる内部空間102aと反対側に、グリッド部109の第3の電極117を加熱するためのランプヒータ123が設けられている。このため、内部空間102aにプラズマが形成されている時に、ランプヒータ123で第3の電極117を加熱することにより、第3の電極117を所定の温度に設定することができる。従って、第1の電極115がプラズマからの熱によって温度が上昇しても、第1の電極115と第3の電極117との温度差を低減することができる。このため、本実施形態では、第1の電極115と第3の電極117との間の熱膨張量の差を低減することができ、この結果、第1の電極115および第3の電極117のたわみを抑制することができる。よって、基板111側のグリッドである第3の電極117のイオン通過孔(グリッド孔)と、プラズマ側のグリッドである第1の電極115のイオン通過孔(グリッド孔)との位置ずれを低減することができる。また、グリッドである第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117の間のギャップのずれを低減することができる。こうして、本実施形態によれば、基板側とプラズマ側とのグリッド孔の位置ずれやグリッド間のギャップずれを低減することができる。また、固定部材121や第1〜第3の電極115、116、117への、熱膨張量の差に起因する負荷を低減することができる。
【0038】
第1の電極115はプラズマにその大部分が晒されているので、プラズマ発生室102内のプラズマの熱により第1の電極115は加熱される。しかしながら、第1のリング119は、プラズマに晒されている箇所が少なく、第1の電極115程には加熱されない。そして、第2の電極116および第3の電極117に対しては、第1の電極115が熱的な衝立となるため、内部空間102a内のプラズマの熱の影響が少ない。よって、第2の電極116および第3の電極117は、第1の電極115ほどには加熱されない。従って、ランプヒータ123といった第3の電極117をプラズマ発生室102の外部から直接加熱する加熱手段を設けない従来の場合は、第1の電極115の温度と第3の電極117の温度との間に大きな差が生じることがある。この温度差が上記熱膨張量の差を生じる原因となる。これに対して、本実施形態では、内部空間102aにて発生したプラズマの熱によってあまり加熱されない第3の電極117を、ランプヒータ123により上記プラズマの熱とは別に加熱している。従って、プラズマの熱が第3の電極117にあまり作用しない場合であっても、第3の電極117を所定の温度に加熱することができ、プラズマ発生中において、第1の電極115と第3の電極117との温度差を低減することができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、第2のリング120はランプヒータ123に晒されているので、第2のリング120および第2のリング120に連結された固定部材121もランプヒータ123の熱の影響を良く受けることになる。すなわち、第2のリング120および固定部材121は、ランプヒータ123により効率良く加熱される。固定部材121は、第1のリング119、第1の電極115、第2の電極116、第3の電極117、および第2のリング120の各々の少なくとも一部と接触している。このため、ランプヒータ123により加熱された第2のリング120および固定部材121の熱を、第3の電極117のみならず、第2の電極116および第1の電極115に伝導させることができる。従って、ランプヒータ123により、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117の加熱の均一性を向上することができる。
【0040】
本実施形態では、第3の電極117を効率良く加熱する観点から、第3の電極117と第2のリング120とが接触していることが好ましい。このように、第3の電極117と第2のリング120とが接触していることによって、ランプヒータ123から放射された熱に加えて、ランプヒータ123により加熱された第2のリング120からの熱伝導によっても第3の電極117を加熱することができる。これにより、効率よく第3の電極117を加熱することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、第1の電極115の温度を検知し、該検知結果に基づいてランプヒータ123の加熱を制御しても良い。この場合は、例えば、
図5に示すように、プラズマ発生室102内に第1の電極115の温度を検知する温度検知センサ150を設け、第1の電極115の温度を検知する。温度検知センサ150は、該検知結果をランプヒータ123の駆動を制御する制御装置151に送信する。また、処理室101内に第3の電極117の温度を検知する温度検知センサ152を設け、第3の電極117の温度を検知する。温度検知センサ152は該検知結果を制御装置151に送信する。
【0042】
制御装置151は、温度検知センサ150から受信した第1の電極115の温度に関する情報と、温度検知センサ152から受信した第3の電極117の温度に関する情報とにより、ランプヒータ123の加熱を制御する。すなわち、制御装置151は、温度検知センサ152からの検知結果に基づいて現在の第3の電極117の温度をモニタする。制御装置151は、現在の第3の電極117の温度をモニタしながら、温度検知センサ150からの検知結果から得られた現在の第1の電極115の温度を目標温度として、ランプヒータ123の加熱を制御する。制御装置151は、前記モニタにより得られた第3の電極117の温度が目標温度に近づくように、または目標温度とほぼ同じになるように、ランプヒータ123の加熱を制御する。これにより、第1の電極115の温度と第3の電極117の温度との温度差を低減することができる。
【0043】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、プラズマ発生室102の外側から第3の電極117を加熱するための加熱手段として、第2のリング120から離間して配置されたランプヒータ123を用いているが、加熱手段はこれに限定されるものではない。加熱手段は、第3の電極117を加熱できるものであればよく、第2の電極117および固定部材121を加熱できるものであることがより好ましい。上記加熱手段としては、例えば、抵抗加熱方式のもの、誘導加熱方式のもの、誘電加熱方式のもの、放射加熱方式のものなど、所定の部材を加熱できるものであればいずれを用いても良い。本実施形態では、上記加熱手段として、抵抗加熱方式の一例である電熱線を用いた形態について説明する。
【0044】
図6は、本実施形態に係る上記加熱手段を説明するための模式図である。
図6において、電熱線124は、第2のリング120の第3の電極117とは反対側において、該第2のリング120と接するように該第2のリング120の円周方向に沿って設けられている。また、第3の電極117と第2のリング120とは接触している。この電熱線124には、不図示の電源が接続されている。電熱線124から所定の電圧を印加することにより、第2のリング120を加熱することができる。本実施形態では、第2のリング120と第3の電極117とが接しているので、電熱線124により第2のリング120にて生じた熱は、第3の電極117に伝導することになり、該伝導された熱により第3の電極117を加熱することができる。また、第2のリング120と固定部材121とは連結されている。このため、電熱線124により第2のリング120にて生じた熱は、固定部材121を伝導することになり、該伝導された熱により第2の電極116および第1の電極115の双方をも加熱することができる。
【0045】
また、本実施形態では、電熱線124が第2のリング120に接しているので、電熱線124からの熱を効率良く第3の電極117、第2の電極116、および第1の電極115に伝導させることができる。これにより、第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117の温度の分布を小さくすることができ、さらには、それぞれの電極間の温度差も小さくすることができる。
【0046】
また、電熱線124の処理室101側には、処理室101側から電熱線124を覆うように防着カバー127が設けられている。防着カバー127が設けられていない場合、電熱線124にもエッチングされ飛散した物質が付着していくことになる。このため、
図6に示すように電熱線124を覆うように防着カバー127が設けられていると、メンテナンスが容易になる。なお、防着カバー127は必ずしも設けられている必要はない。
【0047】
(第3の実施形態)
第1のリング119および第2のリング120の少なくとも一方に対して固定部材121がスライド可能に構成されていても良い。そのような構成によれば、第1のリング119および第2のリング120の熱膨張率に依らず、固定部材121が自由に伸縮できる。このため、固定部材121ならびに第1の電極115、第2の電極116、および第3の電極117に加わる負荷をより一層低減することが可能となる。
【0048】
図7は、本実施形態に係る、第2のリング120に対して固定部材121をスライド可能とした場合の第2のリング120を示す図である。
図7は第2のリング120を第1のリング119側から見た状態を示している。
【0049】
図7において、第2のリング120の円周上には、第1実施形態における凹部120aに代えて、固定部材121が第2のリング120の半径方向にスライド可能となるように開口部126が形成されている。該開口部126は、固定部材121の他方端を固定するための開口部であり、第3の電極117の貫通孔117cと対向するように設けられている。貫通孔117cを貫通した固定部材121の他方端が開口部126に挿入されることにより、固定部材121は第2のリング120に連結される。
【0050】
本実施形態では、開口部126は、長方形の各角が丸い形状であり、第2のリング120の径方向の幅が、該第2のリング120の周方向の幅よりも長い形状を有する。固定部材121の他方端は、開口部126に挿入され、第2のリング120の径方向に沿ってスライド可能に第2のリング120に連結されている。なお、挿入された固定部材121が、開口部126の径方向に沿った壁面と接しながら該壁面に対して上記径方向に摺動するように、固定部材121の直径と開口部126の周方向の幅とを設定することが好ましい。
【0051】
このような形状により、ランプヒータ123や電熱線124等の加熱により第2のリング120が熱膨張しても、固定部材121が、第2のリング120に対して第2のリング120の径方向に沿ってスライドする。このため、固定部材121や第2のリング120にかかる負荷をより低減することができる。
【0052】
また、第2のリング120と、グリッド部109の各電極(第1の電極115、第2の電極116、第3の電極117)のいずれかと熱膨張率が異なる場合であっても、熱膨張量の差を補償するように固定部材121を開口部126内でスライドできる。このため、固定部材121およびグリッド部109の各電極にかかる負荷をより低減することができる。
【0053】
上記開口部126は、第1のリング119に設けることもできる。この場合、第1のリング119には、第1の実施形態における貫通孔119cに代えて、開口部126が設けられる。第1のリング119に設けられた開口部126は、固定部材121の一方端を固定するための開口部となり、第1の電極115の貫通孔115cと対向するように設けられる。貫通孔115cを貫通した固定部材121の一方端が第1のリング119の開口部126に挿入されることにより、固定部材121は第1のリング119に連結される。固定部材121の一方端は、開口部126に挿入され、第1のリング119の径方向に沿ってスライド可能に第1のリング119に連結される。
【0054】
なお、上記開口部126は、第1のリング119および第2のリング120の双方に設けることもできるし、第1のリング119および第2のリング120のいずれか一方に設けることもできる。