【文献】
李 博 ほか著,車間距離計測のための車載単眼カメラを用いたピッチ角推定,映像情報メディア学会誌,日本,2015年 3月,第69巻, 第4号,p. J169- J176
【文献】
Li, Bo et al.,PITCH ANGLE ESTIMATION USING A VEHICLE-MOUNTED MONOCULAR CAMERA FOR RANGE MEASUREMENT,2014 12th International Conference on Signal Processing,IEEE,2014年10月,p. 1161-1168
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正手段は、前記移動量の積算値の時系列データと、前記積算手段により算出された現時点の前記積算値とに基づいて、現時点における定常状態からの前記画像の垂直方向のずれ量として、補正した現時点の前記積算値を算出する
請求項1から請求項3の何れか1項記載の推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例について詳細に説明する。
【0022】
[第1の実施の形態]
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係る推定装置10Aの構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係る推定装置10Aは、車両12に各々設けられた撮像部14及びコンピュータ20Aを備えている。
【0024】
本実施の形態に係る撮像部14は、一例として、単眼の車載カメラであり、コンピュータ20Aによる制御によって、車両12の前方の画像を所定期間間隔(本実施の形態では、一例として33ミリ秒)で撮像し、撮像した画像を示す画像データをコンピュータ20Aに逐次出力する。なお、撮像部14は、カラー画像を撮像するものであってもよいし、モノクロ画像を撮像するものであってもよい。また、撮像部14は、動画撮像が可能なものであってもよいし、連写での静止画撮像が可能なものであってもよい。
【0025】
本実施の形態に係るコンピュータ20Aは、CPUと、RAMと、後述する推定処理プログラムを記憶したROMと、不揮発性の記憶部とを備え、機能的には以下に示すように構成されている。コンピュータ20Aは、撮像制御部22、移動量算出部24A、移動量積算部26、補正量算出部28A、補正部30、及び推定部32を備えている。なお、撮像部14は、撮像手段の一例であり、移動量算出部24Aは、算出手段の一例である。また、移動量積算部26は、積算手段の一例であり、補正量算出部28A、及び補正部30は、補正手段の一例であり、推定部32は、推定手段の一例である。
【0026】
本実施の形態に係る撮像制御部22は、撮像部14を制御して、車両12の前方の画像を上記所定期間間隔で撮像させる。
【0027】
本実施の形態に係る移動量算出部24Aは、撮像部14により所定期間間隔で出力された画像データを逐次取得する。そして、移動量算出部24Aは、現時点の時刻tに取得した画像データと、現時点から上記所定期間間隔を1つ遡った時刻t−1に取得した画像データと、を用いて後述する移動量δy
tを算出する。以下、
図2を参照して、移動量算出部24Aによる移動量δy
tを算出する処理について詳細に説明する。
【0028】
図2(1)は、移動量算出部24Aにより時刻t−1に取得された画像データにより示される画像I
t−1を示し、
図2(2)は、移動量算出部24Aにより時刻tに取得された画像データにより示される画像I
tを示している。また、
図2(3)は、画像I
t内の領域R
tの領域R
t−1に対する垂直方向(車両12のピッチング方向)の移動量δy
tを示している。
【0029】
まず、
図2(1)に示すように、移動量算出部24Aは、画像I
t−1を示す画像データから、画像I
t−1内の所定の位置を含む所定の大きさの矩形の領域R
t−1内の画像を示す画像データを抽出する。具体的には、本実施の形態に係る移動量算出部24Aは、一例として、全撮像領域の中央部を中心に含む
図2(1)の縦方向及び横方向共に全撮像領域の3分の1の長さの矩形の領域R
t−1内の画像を示す画像データを抽出する。
【0030】
次に、
図2(2)に示すように、移動量算出部24Aは、パターンマッチングにより、画像I
t内の領域R
t−1に対応する領域R
tを探索する。具体的には、本実施の形態に係る移動量算出部24Aは、一例として、画像I
tの
図2(2)の左上端の位置から、領域R
t−1と同じ形状及び大きさの領域の位置を所定の画素数(本実施の形態では、3画素)ずつ右方向に右端までずらしながら、該領域内の画像を示す画像データと、領域R
t−1内の画像を示す画像データとの相関性を示す度合を算出する。また、移動量算出部24Aは、該算出する処理を、所定の画素数(本実施の形態では、2画素)ずつ
図2(2)の下方向に、画像I
tの下端まで繰り返し行う。
【0031】
そして、移動量算出部24Aは、上記相関性を示す度合が最も高い領域を領域R
tと決定する。なお、本実施の形態では、上記相関性を示す度合が最も高い領域として、対応する画素同士の画素値の差分における絶対値の全画素分の和が最小になる領域を適用しているが、これに限定されない。例えば、上記相関性を示す度合が最も高い領域として、2画素×2画素等、対応する複数の画素群毎の所定の位置の画素同士の画素値の差分における絶対値の全画素分の和が最小になる領域を適用してもよい。
【0032】
そして、
図2(3)に示すように、移動量算出部24Aは、移動量δy
tとして、領域R
t−1と領域R
tとの対応する位置(
図2(3)では左上端部の位置)を示す画素位置間の垂直方向(
図2(3)の上下方向)の画素数を算出する。
【0033】
このように、本実施の形態に係る移動量算出部24Aは、上記相関性を示す度合が最も高い画像I
t内の領域を領域R
tと決定しているが、これに限定されない。例えば、移動量算出部24Aは、画像I
t内の領域のうち、上記相関性を示す度合が予め定められた閾値以上の何れかの領域を領域R
tと決定してもよい。
【0034】
この場合、例えば、移動量算出部24Aは、上記探索を開始して、最初に上記相関性を示す度合が上記閾値以上となった領域を領域R
tと決定する形態が例示される。これにより、移動量算出部24Aによる領域R
tの探索精度は低下する可能性はあるものの、移動量算出部24Aにより画像I
tの全範囲に対して上記探索する処理を行わなくてもよくなるため、移動量算出部24Aによる演算量は低減する。
【0035】
本実施の形態に係る移動量積算部26は、次の式(1)を用いて、時刻tにおける移動量δy
tの積算値S
ytとして、移動量算出部24Aにより逐次算出された移動量δy
tの積算値を算出する。
【0037】
図3には、移動量積算部26により算出された積算値S
ytの時系列データの一例が示されている。なお、
図3の縦軸は積算値S
ytを示し、横軸は時刻を示している。
図3に示すように、積算値S
ytは時間の経過と共に、オフセットされた値となる。
【0038】
これは、前述したように、移動量積算部26が、移動量算出部24Aにより逐次算出された移動量δy
tを積算していることによって、移動量δy
tに含まれる誤差も積算されるためである。なお、この誤差は、例えば、移動量算出部24Aによる前述した領域R
tを探索する際の画像処理による影響、及び領域R
t−1内で撮像された被写体自体が時刻t−1から時刻tまでの間に動くことによる影響等によるものである。
【0039】
そこで、本実施の形態に係る補正量算出部28Aは、過去の所定期間内における移動量積算部26により算出された移動量δy
tの積算値S
ytの時系列データに基づいて、上記誤差を補正するための補正量c
tを算出する。以下、
図4を参照して、補正量算出部28Aによる補正量c
tの算出処理について詳細に説明する。なお、
図4には、
図3に示した積算値S
ytの時系列データが破線で示されている。また、
図3と同様に、
図4の縦軸は積算値S
ytを示し、横軸は時刻を示している。
【0040】
図4に示すように、本実施の形態に係る補正量算出部28Aは、次の式(2)を用いて、時刻tにおける補正量c
tとして、過去の所定期間(
図4の時刻t−t1から時刻t−t2までの期間)の上記所定期間間隔毎の各時刻に算出された積算値S
ytの平均値を算出する。
【0041】
【数2】
但し、T1は、時刻t−t1から時刻tまでに積算値S
ytが算出された回数を示し、T2は、時刻t−t2から時刻tまでに積算値S
ytが算出された回数を示す。
【0042】
なお、本実施の形態では、上記過去の所定期間として、車両12の実機を用いた実験や車両12の設計仕様に基づくコンピュータ・シミュレーション等により、後述する車両12のピッチ角の推定精度が許容範囲内となる期間を固定的に適用しているが、これに限定されない。前述したように、上記誤差も積算されるため、上記所定期間として、補正量c
tを算出する時点が遅くなるほど長い期間を適用してもよい。
【0043】
本実施の形態に係る補正部30は、補正量算出部28Aにより算出された補正量c
tを用いて、移動量積算部26により算出された積算値S
ytを補正する。具体的には、補正部30は、次の式(3)を用いて、積算値S
ytから補正量c
tを減算することにより、定常状態における画像内の水平線の垂直方向の位置に対する現時点の時刻tにおける画像内の水平線の垂直方向の位置のずれ量ΔY
tを算出する。なお、ここでいう定常状態としては、例えば、車両12が停止している状態や前述した移動量δy
t≒0の状態が長期間継続している状態等の車両12の垂直方向に対するゆれがほぼ無い状態が挙げられる。
【0045】
図5には、
図3に示した積算値S
ytの時系列データを、上記所定期間間隔毎の各時刻において補正部30により補正して得られたずれ量ΔY
tの時系列データが示されている。なお、
図5の縦軸はずれ量ΔY
tを示し、横軸は時刻を示している。
【0046】
ここで、ずれ量ΔY
tについて詳細に説明する。時刻tにおける撮像部14により撮像された画像における水平線の垂直方向の位置Y
tは、次の式(4)で表される。
【数4】
但し、Y
0は、上記定常状態における水平線の垂直方向の位置を示す。
【0047】
そして、一般的に、時刻tにおける位置Y
tは、定常状態における位置Y
0を中心として変動するため、時刻tまでの各時刻に算出されたずれ量△Y
tの平均値は、ほぼ0(零)に等しくなる。また、積算値S
ytは、移動量δy
tに上記誤差が含まれない場合は、ずれ量△Y
tに等しくなる。すなわち、この場合は、積算値S
ytの平均値も、ほぼ0(零)に等しくなる。
【0048】
しかしながら、前述したように、積算値S
ytには移動量δy
tの上記誤差が含まれる。そこで、本実施の形態では、前述したように、上記誤差の補正に用いる補正量c
tとして、上記所定期間の上記所定期間間隔毎の各時刻に算出された積算値S
ytの平均値を算出している。
【0049】
本実施の形態に係る推定部32は、補正部30により補正された積算値S
yt(=ずれ量△Y
t)に基づいて、車両12のピッチ角を推定する。具体的には、推定部32は、撮像部14の解像度及び焦点距離等の諸元値を用いて、ずれ量△Y
tから撮像部14のピッチ角φ
tを算出する。
【0050】
このピッチ角φ
tは、定常状態の撮像部14の光軸に対する時刻tにおける撮像部14の光軸の角度であるため、推定部32は、定常状態における撮像部14の路面に対する撮像部14の光軸のピッチ角φ
0を算出する。そして、推定部32は、時刻tにおける車両12のピッチ角として、撮像部14の光軸の路面に対する角度であるピッチ角φ
0とピッチ角φ
tとを加算した角度を算出する。
【0051】
ここで、
図6を参照して、上記定常状態におけるピッチ角φ
0の算出処理について説明する。ここでは、錯綜を回避するために、一例として、撮像部14が、光軸の路面に対するピッチ角が0度の場合に、光軸が画像の中心に位置する撮像手段であるものとして説明する。なお、
図6は、上記定常状態において撮像部14により撮像された画像I
0の一例を示している。
【0052】
図6に示すように、推定部32は、2本の白線Wの交点Jを、水平線Hの垂直方向の位置と見なして、定常状態における水平線の位置のずれ量Yとして、交点Jと、車両のピッチ角が0度である場合に対して予め求められた画像I
0の交点J
0との画素位置間の垂直方向(
図6の上下方向)の画素数を算出する。そして、推定部32は、撮像部14の解像度及び焦点距離等の諸元値を用いて、ずれ量Yからピッチ角φ
0を算出する。なお、定常状態におけるピッチ角φ
0の算出処理は、これに限定されず、他の公知の手法を用いてもよい。
【0053】
次に、
図7を参照して、本実施の形態に係る推定装置10Aの作用について説明する。なお、
図7は、例えば車両12のイグニッションスイッチがオン状態とされた際にコンピュータ20AのCPUによって実行される推定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0054】
図7のステップ100において、推定部32は、前述したように、撮像部14を制御して、車両12の前方の画像を撮像させ、該撮像により得られた画像I
0から定常状態におけるピッチ角φ
0を算出する。
【0055】
次のステップ101において、撮像制御部22は、撮像部14を制御して、車両12の前方の画像を撮像させる。次のステップ102において、移動量算出部24Aは、上記ステップ101の処理により撮像部14から出力された画像I
tを示す画像データを取得する。
【0056】
次のステップ104Aにおいて、移動量算出部24Aは、上記ステップ101〜後述するステップ118の繰り返し処理における前回の上記ステップ102の処理により取得された画像データから、該画像データにより示される画像I
t−1の領域R
t−1内の画像を示す画像データを抽出する。なお、本ステップ104Aの処理及び後述するステップ106A〜ステップ116の処理は、本推定処理プログラムの実行を開始してから初回に実行されたタイミングでは実行されない。
【0057】
次のステップ106Aにおいて、移動量算出部24Aは、前述したように、直前の上記ステップ102の処理により取得された画像データにより示される画像I
tにおける上記ステップ104Aの処理により抽出された領域R
t−1に対応する領域R
tを探索する。
【0058】
次のステップ108Aにおいて、移動量算出部24Aは、前述したように、上記ステップ104Aの処理により抽出された領域R
t−1と、上記ステップ106Aの処理により探索された領域R
tとの対応する画素位置に基づいて、移動量δy
tを算出する。
【0059】
次のステップ110において、移動量積算部26は、前述したように、上記式(1)を用いて、上記ステップ108Aの処理により算出された移動量δy
tの積算値S
ytを算出する。
【0060】
次のステップ112Aにおいて、補正量算出部28Aは、上記式(2)を用いて、補正量c
tとして、上記過去の所定期間に上記ステップ110の処理により算出された積算値S
ytの平均値を算出する。
【0061】
次のステップ114において、補正部30は、上記式(3)を用いて、上記ステップ110の処理により算出された積算値S
ytから上記ステップ112Aの処理により算出された補正量c
tを減算することにより、ずれ量ΔY
tを算出する。
【0062】
次のステップ116において、推定部32は、前述したように、撮像部14の諸元値を用いて、上記ステップ114の処理により算出されたずれ量ΔY
tからピッチ角φ
tを算出する。そして、推定部32は、前述したように、該ピッチ角φ
tと上記ステップ100の処理により算出されたピッチ角φ
0とを加算して、車両12のピッチ角を算出する。なお、ここで算出したピッチ角は、例えば、車両12の高度運転支援等で、カメラ等の撮像手段により撮像された車両12の前方の画像内のある物体への距離を推定する場合等の2次元の情報から3次元の情報を推定する場合に用いられる。
【0063】
ステップ118において、推定部32は、所定の終了タイミングが到来したか否かを判定する。この判定が否定判定となった場合は上記ステップ101の処理に戻る一方、肯定判定となった場合は本推定処理プログラムを終了する。なお、本実施の形態では、上記所定の終了タイミングとして、一例として車両12のイグニッションスイッチがオフ状態とされたタイミングを適用している。
【0064】
なお、前述したように、例えば、上記ステップ108Aの処理により算出された移動量δy
tが長期間ほぼ0(零)である状態(すなわち、定常状態)が継続した場合は、積算値S
ytを0(零)にリセットして、ステップ100の処理から本推定処理プログラムを再度実行してもよい。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、過去の所定期間内における積算値S
ytの時系列データに基づいて、現時点の積算値S
ytを補正しているので、車両12の速度が比較的低い場合であっても、単眼の撮像部14を用いて、車両12のピッチ角を精度良く推定することができる。また、本実施の形態によれば、上記並進ベクトル及び回転行列を算出する場合に比較して、少ない演算量で車両12のピッチ角を精度良く推定することができる。
【0066】
[第2の実施の形態]
まず、
図8を参照して、本実施の形態に係る推定装置10Bの構成について説明する。なお、
図8における
図1と同一の機能を有する構成要素については、
図1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
図8に示すように、本実施の形態に係る推定装置10Bは、コンピュータ20Aに代えてコンピュータ20Bを備えている点が上記第1の実施の形態に係る推定装置10Aとは異なっている。また、本実施の形態に係るコンピュータ20Bは、移動量算出部24Aに代えて移動量算出部24Bを備えている点、及び補正量算出部28Aに代えて補正量算出部28Bを備えている点が上記第1の実施の形態に係るコンピュータ20Aとは異なっている。
【0068】
本実施の形態に係る移動量算出部24Bは、撮像部14により所定期間間隔で出力された画像データを逐次取得する。そして、現時点の時刻tに取得した画像データと、現時点から上記所定期間間隔を1つ遡った時刻t−1に取得した画像データと、を用いて移動量δy
tを算出する。以下、
図9を参照して、移動量算出部24Bによる移動量δy
tを算出する処理について詳細に説明する。
【0069】
図9(1)は、移動量算出部24Bにより時刻t−1に取得された画像データにより示される画像I
t−1、及び後述するオプティカルフローV
itの算出に用いる点(以下、「算出点」という。)P
it−1((i=1...N(Nは自然数。本実施の形態では、5)))を示している。また、
図9(2)は、移動量算出部24Bにより時刻tに取得された画像データにより示される画像I
t、及び後述するオプティカルフローV
itを示している。また、
図9(3)は、
図2(3)と同様に、移動量δy
tを示している。
【0070】
まず、
図9(1)に示すように、移動量算出部24Bは、画像I
t−1を示す画像データから、画像I
t−1内の上記所定の大きさの矩形の領域R
t−1内の画像を示す画像データを抽出する。なお、本実施の形態では、領域R
t−1として、車両12のピッチングが発生していない状態で車両12が進行した場合に、遠近法における消失点を含む領域を適用している。これは、該領域が、車両12の進行の影響による動きが比較的少ない領域と見なせる領域であるためである。
【0071】
次に、
図9(1)に示すように、移動量算出部24Bは、領域R
t−1内のN個の予め定められた位置を算出点P
it−1の位置と決定する。なお、本実施の形態では、一例として、算出点P
it−1の位置として、垂直方向(
図9(1)の縦方向)に対しては領域R
t−1の中央の位置で、水平方向(
図9(1)の横方向)に対しては各々互いに同一の間隔を隔てた位置を適用している。このように、本実施の形態では、算出点P
it−1の位置として、予め固定的に定められた位置を適用しているが、これに限定されない。例えば、算出点P
it−1の位置として、Harris operator(「C.Harris and M.Stephens(1988).“A combined corner and edge detector”.“Proceedings of the 4th Alvey Vision Conference”. pp.147-151」参照。)等を用いて、複数の画像間の対応する点の対応が取りやすい位置を適用してもよい。
【0072】
また、
図9(2)に示すように、移動量算出部24Bは、各算出点P
it−1について、時刻tにおけるオプティカルフローV
it(={vx
it、vy
it})を各々算出する。ここで、上記vx
itはオプティカルフローV
itのx成分(水平方向の成分)を表し、上記vy
itはオプティカルフローV
itのy成分(垂直方向の成分)を表す。なお、本実施の形態では、オプティカルフローV
itの算出に用いる手法として、ブロックマッチング法を適用しているが、これに限定されない。例えば、該手法として、lucas-kanade法等の他の手法を適用してもよい。
【0073】
また、移動量算出部24Bは、移動量δy
tとして、オプティカルフローV
itのy成分(vy
it)の平均値を算出する。なお、本実施の形態に係る移動量算出部24Bは、該平均値を算出する際に、オプティカルフローV
itのy成分の値が正常値である範囲として予め定められた範囲外であるオプティカルフローV
it(
図9(2)に示すV
4t)については算入しない。具体的には、例えば、移動量算出部24Bは、上記平均値を算出する際に、他のオプティカルフローV
itのy成分の値の平均値との差が、所定の範囲(例えば、該平均値の±50%の範囲)外であるオプティカルフローV
itについては算入しない。
【0074】
このように、本実施の形態では、移動量δy
tとして、オプティカルフローV
itのy成分の値の平均値を適用しているが、これに限定されない。例えば、移動量δy
tとして、オプティカルフローV
itのy成分の値の中央値を適用してもよい。
【0075】
本実施の形態に係る補正量算出部28Bは、過去の所定期間内における移動量積算部26により算出された移動量δy
tの積算値S
ytの時系列データに基づいて、補正量c
tを算出する。以下、
図10及び
図11を参照して、補正量算出部28Bによる補正量c
tの算出処理について詳細に説明する。なお、
図10には、
図3と同様に、積算値S
ytの時系列データが示されている。また、
図11には、
図4と同様に、
図10に示した積算値S
ytの時系列データが破線で示されている。
【0076】
上記第1の実施の形態で前述した移動量δy
tに含まれる誤差は、一定の値であるとは限らない。そこで、本実施の形態では、
図11に示すように、補正量算出部28Bは、過去の所定期間(
図11の時刻t−t1から時刻t−t2までの期間)の上記所定期間間隔毎の各時刻に算出された積算値S
ytを、例えば最小二乗法等を用いて近似することにより、回帰直線Lを示す一次式を示す一次係数及び定数を算出する。そして、補正量算出部28Bは、該一次式を用いた外挿により、時刻tにおける補正量c
tを算出する。なお、
図12には、
図5と同様に、
図11に示した積算値S
ytの時系列データを、上記所定期間間隔毎の各時刻において補正部30により補正したずれ量ΔY
tの時系列データが示されている。
【0077】
このように、本実施の形態では、積算値S
ytの時系列データを一次式に近似しているが、これに限定されない。例えば、積算値S
ytの時系列データを二次式等に近似してもよいし、過去の所定期間の積算値S
ytの時系列データから時刻tの補正量c
tを外挿により算出可能であれば、近似する手法は限定されない。
【0078】
次に、
図13を参照して、本実施の形態に係る推定装置10Bの作用について説明する。なお、
図13は、例えば車両12のイグニッションスイッチがオン状態とされた際にコンピュータ20BのCPUによって実行される推定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。また、
図13における
図7と同一の処理を実行するステップについては
図7と同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0079】
図13のステップ104Bにおいて、移動量算出部24Bは、上記繰り返し処理における前回のステップ102の処理により取得された画像データから、該画像データにより示される画像I
t−1の領域R
t−1内の画像を示す画像データを抽出する。
【0080】
次のステップ106Bにおいて、移動量算出部24Bは、前述したように、上記ステップ104Bの処理により抽出された画像データにより示される領域R
t−1内のN個の上記予め定められた位置を算出点P
it−1の位置と決定する。そして、移動量算出部24Bは、前述したように、上記ステップ104Bの処理により抽出された画像データ、及び直前の上記ステップ102の処理により取得された画像データを用いて、各算出点P
it−1について、オプティカルフローV
itを算出する。
【0081】
次のステップ108Bにおいて、移動量算出部24Bは、前述したように、移動量δy
tとして、上記ステップ106Bの処理により算出された各算出点P
it−1のオプティカルフローV
itのy成分の平均値を算出する。
【0082】
その後、ステップ112Bにおいて、補正量算出部28Bは、前述したように、過去の所定期間内における移動量算出部24Bにより算出された移動量δy
tの積算値S
ytの時系列データに基づいて、補正量c
tを算出する。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
なお、上記第1の実施の形態において、上記第2の実施の形態のように、領域R
t−1として、上記消失点を含む領域を適用してもよい。また、上記第1の実施の形態において、上記第2の実施の形態のように、オプティカルフローV
itを用いて移動量δy
tを算出してもよい。また、上記第1の実施の形態において、上記第2の実施の形態のように、過去の所定期間内の積算値S
ytの時系列データを近似して、外挿により補正量c
tを算出してもよい。また、上記第2の実施の形態においても、移動量δy
tが長期間ほぼ0(零)である状態が継続した場合は、積算値S
ytを0(零)にリセットして、再度ステップ100の処理から推定処理プログラムを再度実行してもよい。
【0085】
また、上記各実施の形態では、撮像部14により車両12の前方の画像を撮像する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、撮像部14により車両12の後方の画像を撮像する形態としてもよい。この場合、例えば、上記各実施の形態と同様に車両12のピッチ角を算出し、該ピッチ角の正負の符号を反転させた角度を車両12のピッチ角と推定する形態が例示される。
【0086】
また、上記各実施の形態と撮像部14により車両12の後方の画像を撮像する上記形態例とを組み合わせても良い。この場合、上記誤差を補正するための補正量c
tの絶対値が小さいほど、該誤差が小さいと考えられる。そこで、この場合、例えば、車両12の前方と後方とを各々撮像して得られた画像の各々を用いて算出された補正量c
tのうち、絶対値が小さい方の補正量c
tを用いて車両12のピッチ角を算出する形態が例示される。また、例えば、車両12のピッチ角として、車両12の前方と後方とを各々撮像して得られた画像の各々を用いて算出されたピッチ角の平均値を算出する形態も例示される。
【0087】
また、上記各実施の形態では、領域Rの形状として、矩形を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、撮像部14による撮像により得られた画像から、移動量δy
tを算出可能な形状であれば、円形、三角形等の他の形状でもよいことは言うまでもない。