特許第6184451号(P6184451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高塚 美弘の特許一覧 ▶ ものづくりアドバンスソフトウェアサービス株式会社の特許一覧

特許6184451噴流式ハンダ付け装置及び噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法
<>
  • 特許6184451-噴流式ハンダ付け装置及び噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法 図000002
  • 特許6184451-噴流式ハンダ付け装置及び噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法 図000003
  • 特許6184451-噴流式ハンダ付け装置及び噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法 図000004
  • 特許6184451-噴流式ハンダ付け装置及び噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184451
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】噴流式ハンダ付け装置及び噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20170814BHJP
   B23K 1/08 20060101ALI20170814BHJP
   B23K 101/42 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
   H05K3/34 506D
   H05K3/34 506Z
   B23K1/08 320B
   B23K101:42
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-173938(P2015-173938)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2017-50456(P2017-50456A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年10月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515243154
【氏名又は名称】高塚 美弘
(73)【特許権者】
【識別番号】515243176
【氏名又は名称】株式会社ものづくりアドバンス
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】高塚 美弘
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−021965(JP,A)
【文献】 特開平05−293639(JP,A)
【文献】 特開平01−238096(JP,A)
【文献】 特開平09−283912(JP,A)
【文献】 特開2000−022323(JP,A)
【文献】 特開平09−293959(JP,A)
【文献】 特開2004−228227(JP,A)
【文献】 特開平07−336038(JP,A)
【文献】 実開昭56−087258(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
B23K 1/08
B23K 101/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一次噴流ノズルと第二次噴流ノズルとを備え、
第一次噴流ハンダ工程においては前記第一次噴流ノズルから溶融ハンダを噴出してハンダ付けを行うとともに、
第二次噴流ハンダ工程においては前記第二次噴流ノズルから溶融ハンダを噴出してプレート上を流れる溶融ハンダによりハンダ付けを行う噴流式ハンダ付け装置であって、
前記第二次噴流ハンダ工程における前記プレート上には前記第二次噴流ノズルから噴出した前記溶融ハンダを確保しておくための堰が設けられ、前記第二次噴流ノズルから前記堰までの間における前記第二次噴流ハンダ工程の前記溶融ハンダがプリント基板と接する範囲において、前記溶融ハンダの流れを前記プリント基板側に向けるハンダ離脱制御棒が、前記溶融ハンダの流れ方向と直角方向に延在して前記プレート上に設けられており、
前記ハンダ離脱制御棒は、前記溶融ハンダの流れ方向に位置調整可能であることを特徴とする噴流式ハンダ付け装置。
【請求項2】
第一次噴流ノズルと第二次噴流ノズルとを備え、
第一次噴流ハンダ工程においては前記第一次噴流ノズルから溶融ハンダを噴出してハンダ付けを行うとともに、
第二次噴流ハンダ工程においては前記第二次噴流ノズルから溶融ハンダを噴出してプレート上を流れる溶融ハンダによりハンダ付けを行う噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法であって、
前記第二次噴流ハンダ工程における前記プレート上には前記第二次噴流ノズルから噴出した前記溶融ハンダを確保しておくための堰が設けられ、前記第二次噴流ノズルから前記堰までの間における前記第二次噴流ハンダ工程の前記溶融ハンダがプリント基板と接する範囲において、
前記プレート上に、前記溶融ハンダの流れ方向と直角方向に延在するとともに、前記溶融ハンダの流れ方向に位置調整可能なハンダ離脱制御棒を設置し、前記溶融ハンダの流れを前記プリント基板側に向けるようにすることを特徴とする噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流式ハンダ付け装置及び噴流式ハンダ付け装置に取り付けられるハンダ離脱制御棒に関し、詳しくは、ブリッジやツララの発生を抑制することのできる噴流式ハンダ付け装置及び噴流式ハンダ付け装置に取り付けられるハンダ離脱制御棒に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板にハンダ付けされる電気部品には表面実装タイプとリードタイプがある。リードタイプの電気部品は一般的に溶融ハンダ面を動かす噴流式ハンダ付け装置でハンダ付けされる。一般的な噴流式ハンダ付け装置では、特許文献1(特開2000−22323号公報)の図11に示されるように、また、図4Aに示すように、フラックス塗布工程S1、プリント基板Pを加熱する加熱工程S2、吹き上げられた強い波で、チップ部品へのハンダ付けやスルーホールなど細部まで溶融ハンダを侵入させるための第一次噴流ハンダ工程S3、穏やかな噴流でブリッジやツララを再溶融させて不要なハンダを除去する第二次噴流ハンダ工程S4、プリント基板Pを冷やす冷却工程S5が、この順に行われている。
【0003】
第一次噴流ハンダ工程S3では未ハンダを無くすため、溶融ハンダが吹き上げられた強い波となっている。吹き上げられた強い波の溶融ハンダではきれいなハンダ付けができず、リード先端に角状にハンダが付着する所謂ツララや、リード間にハンダが跨がる所謂ブリッジ等のハンダ付け不良が発生してしまう。また、家電業界などではハンダが入りにくいスルーホールは通常70%の深さまでハンダが入れば合格とされるが、更に厳しい品質が要求されるような自動車業界などでは100%の深さが要求される。このため、溶融ハンダをさらに荒れた波にする等して、この要求に応えようとすれば、第一次噴流ハンダ工程S3でブリッジ等のハンダ付け不良の発生が増加する。
【0004】
そこで、次の第二次噴流ハンダ工程S4でブリッジやツララを除去するのであるが、完全にこれらを除去するのは困難であった。ブリッジやツララが残る主な要因として、第2次噴流ハンダ工程S4での加熱時間の不適切がある。加熱時間が少なければ不要なハンダを十分に昇温させることができない。逆に加熱時間が長ければ熱に弱いフラックスが高熱のためにその濡れの効果が低下する。
【0005】
また、2本の近接したリードのハンダ付け部の場合、2本のリード間に付着した溶融ハンダは、表面積を小さくしようとする表面張力が働いており容量の多い方に引かれて表面積の小さな球状になろうとする。そこで、2本のリードの並設方向が溶融ハンダの流れ方向と平行であるときは、2本のリード間に付着した溶融ハンダは、未だ流動ハンダに浸漬されていて溶融ハンダが多量に付着している上流側のリードのハンダに引かれるので、ブリッジが生じにくい。しかしながら、2本の並設方向が溶融ハンダの流れ方向と直角であるときは、表面張力で引かれる溶融ハンダがその外側(上流側)にないために2本のリードの中央に集まってしまい、ブリッジが発生しやすい。そして、ブリッジやツララが発生すれば、短絡やスパークなどの重大な故障原因となる。
【0006】
そこで、ブリッジやツララを抑制する方法が考えられていた。例えば、特許文献2(特開平8−288634号公報)には第二次噴流ハンダ槽から流出する堰の高さを調節可能にする構成を備えることによって、プリント基板が溶融ハンダと接触している時間や流速を最適な値に調節するようにし、ブリッジやツララの発生を低減することが記載されている。そして、ピールバックポイントにおける離間角度を大きくしてブリッジやツララの発生を抑制することも記載されている。また、特許文献3(特開平11−54902号公報)には第二次噴流ハンダ槽から流出するハンダを吸引するベンチュリ通路を設けることにより、プリント基板から離脱する溶融ハンダの流速を急激に早くしブリッジの発生を低減することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−22323号公報
【特許文献2】特開平8−288634号公報
【特許文献3】特開平11−54902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に記載されているような技術もあったが、現実の生産ではブリッジやツララの発生を皆無にすることはできていなかった。
【0009】
また更に、ブリッジやツララが発生し易くなるような社会情勢もあった。2006年7月1日より欧州連合で鉛を有害物として電子・電気機器への使用が原則として禁止された。中国と韓国でも電子・電気機器への鉛の使用を原則として禁止し、日本やアメリカでは自主規制としている。従前の鉛を含む、スズが63%、鉛が37%の共晶ハンダでは、融点が183℃、望ましいプリント基板との離間角度が5度5.5度、プリント基板と溶融ハンダの許容接触時間が2秒5秒である。これに対して、鉛を含まない、スズ(Sn)が96.5%、銀(Ag)が3.0%、銅(Cu)が0.5%の鉛フリーハンダでは、融点が220℃230℃、望ましいプリント基板との離間角度が4.5度5度、プリント基板と溶融ハンダの許容接触時間が3秒6秒である。このように、鉛を含まない鉛フリーハンダは融点が高い。
【0010】
このため、第一次噴流ハンダ工程で付着したハンダの温度を高くするためには、溶融ハンダとの接触時間を長くする必要があるために、離間角度を小さくしなければならない。しかし、離間角度を小さくすると更にブリッジやツララを生じやすくなるという問題がある。つまり、鉛の使用が禁止されたことで、ブリッジやツララの発生がより増加することとなった。このような事情もあり、噴流式ハンダ付け装置におけるブリッジの発生率は、良くても5000ppm10000ppmあるものとされている。
【0011】
また、発明者の検証によると、第二次噴流ハンダ工程でプリント基板から溶融ハンダが離脱する時間は、同一プリント基板内でも早い場所と遅い場所で2秒程度の隔たりがあることが判明している。許容接触時間が3秒6秒であるので、この時間内で2秒程度の隔たりは不均一なハンダ付け品質の要因となり、また、早い離脱は不十分な昇温となってブリッジやツララの発生の大きな要因になっているという問題がある。
【0012】
なお、この隔たりの要因としては、図4Bに示すように、ランドの形状の違い(R1,R2,R3)、リードの形状の違い(L1,L2)、溶融ハンダの流れ方向に対する隣接リードの並び方向の違い(A1,A2)などにより、点在するハンダの形状や溶融ハンダがプリント基板Pから離脱するときの表面張力の掛かり方がそれぞれ異なることによるものと思われる。つまり、ハンダの比重は大きいため、場所によってはハンダの比重が表面張力に早々に勝ってしまうため、早いハンダ離脱が生じてしまうことになる。
【0013】
そこで、本発明は、第二次噴流ハンダ工程での接触時間を許容範囲にしつつ、プリント基板から溶融ハンダが離脱する時間の隔たりを短くして均一なハンダ付け品質にすると共に、早い離脱を防止して十分な昇温にし、離間角度を大きくしてブリッジやツララの発生を抑制する噴流式ハンダ付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の噴流式はんだ付け装置は、第一次噴流ノズルと第二次噴流ノズルとを備え、第一次噴流ハンダ工程においては前記第一次噴流ノズルから溶融ハンダを噴出してハンダ付けを行うとともに、第二次噴流ハンダ工程においては前記第二次噴流ノズルから溶融ハンダを噴出してプレート上を流れる溶融ハンダによりハンダ付けを行う噴流式ハンダ付け装置であって、前記第二次噴流ハンダ工程における前記プレート上には前記第二次噴流ノズルから噴出した前記溶融ハンダを確保しておくための堰が設けられ、前記第二次噴流ノズルから前記堰までの間における前記第二次噴流ハンダ工程の前記溶融ハンダがプリント基板と接する範囲において、前記溶融ハンダの流れを前記プリント基板側に向けるハンダ離脱制御棒が、前記溶融ハンダの流れ方向と直角方向に延在して前記プレート上に設けられており、前記ハンダ離脱制御棒は、前記溶融ハンダの流れ方向に位置調整可能であることを特徴とする。
【0015】
ハンダ離脱制御棒をプレート上に設けることにより、溶融ハンダをプリント基板側に持ち上げることになり、従来ハンダの比重が表面張力に勝って早く離脱していた溶融ハンダが早く離脱することを防止する。離脱時間のばらつきが小さくなって、加熱時間のばらつきが少ない均一のハンダ付け品質となる。さらに、早い離脱で不十分な昇温となって生じるブリッジやツララを抑制することができる。また、流れ方向のハンダ離脱制御棒の終端部では、ハンダ離脱制御棒によってプリント基板方向に加圧された溶融ハンダがハンダ離脱制御棒の高さから落下することになるので、大きな離間角度となる。離間角度が大きくなるとブリッジやツララの発生を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の噴流式ハンダ付け装置においては、前記ハンダ離脱制御棒は、溶融ハンダの流れ方向に位置調整可能であることが好ましい。例えば、ハンダ付けする部品のリードの長さによってプレートの傾斜角度を変えることがある。プレートの傾斜角度が変わると溶融ハンダが離脱する領域が変わる。また、温度、湿度などの環境変化によっても溶融ハンダが離脱する領域や適切な加熱時間が変わる。そこで、ハンダ離脱制御棒を溶融ハンダの流れ方向に位置調整可能にすることにより、プレートの傾斜角度の変化や環境変化などに対応できる。
【0017】
また、本発明の噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法は、第一次噴流ノズルと第二次噴流ノズルとを備え、第一次噴流ハンダ工程においては前記第一次噴流ノズルから溶融ハンダを噴出してハンダ付けを行うとともに、第二次噴流ハンダ工程においては前記第二次噴流ノズルから溶融ハンダを噴出してプレート上を流れる溶融ハンダによりハンダ付けを行う噴流式ハンダ付け装置におけるハンダ離脱制御方法であって、前記第二次噴流ハンダ工程における前記プレート上には前記第二次噴流ノズルから噴出した前記溶融ハンダを確保しておくための堰が設けられ、前記第二次噴流ノズルから前記堰までの間における前記第二次噴流ハンダ工程の前記溶融ハンダがプリント基板と接する範囲において、前記プレート上に、前記溶融ハンダの流れ方向と直角方向に延在するとともに、前記溶融ハンダの流れ方向に位置調整可能なハンダ離脱制御棒を設置し、前記溶融ハンダの流れを前記プリント基板側に向けるようにすることを特徴とする。
【0018】
噴流式ハンダ付け装置は非常に高額であるが、溶融ハンダの流れをプリント基板側に向けるハンダ離脱制御棒を既存の噴流式ハンダ付け装置に取り付けることによって、均一なハンダ付け品質にすると共にブリッジやツララの発生を抑制するという作用効果を低額な投資で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1Aは実施形態の構成を示す噴流式ハンダ付け装置の図であり、図1Bは実施形態の第2次溶融ハンダ付け動作中を示す図である。
図2図2Aは実施形態における溶融ハンダがプリント基板から離脱するタイミングの模式図であり、図2Bは従来における溶融ハンダがプリント基板から離脱するタイミングの模式図である。
図3図3Aはプリント基板が溶融ハンダによって受ける実施形態の圧力を示すグラフであり、図3Bはプリント基板が溶融ハンダによって受ける従来の圧力示すグラフである。
図4図4Aは従来の構成を示す噴流式ハンダ付け装置の図であり、図4Bは溶融ハンダの離脱タイミングがばらつくプリント基板側の要因を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0021】
本発明の実施形態の噴流式ハンダ付け装置の構成を、図1Aを用いて説明する。本実施形態の噴流式ハンダ付け装置1の工程は、その順にフラックス塗布機11を有してフラックスを含む泡12を生成しこれをプリント基板Pのパターン側の面に付着させるフラックス塗布工程S1、加熱機21を有してプリント基板Pを適切な温度まで上昇させる加熱工程S2、第一次噴流ノズル31を有して吹き上げられた強い波で、チップ部品へのハンダ付けやスルーホールなど細部まで溶融ハンダを侵入させる第一次噴流ハンダ工程S3、第二次噴流ノズル41を有して穏やかな噴流でブリッジやツララを再溶融させて不要なハンダを除去する第二次噴流ハンダ工程S4、ファン51を有してプリント基板Pの温度を下げる冷却工程S5、とからなる。そして、プリント基板Pは図示せぬ搬送機によりフラックス塗布工程S1から冷却工程S5まで搬送される。
【0022】
図1A図1Bに示すように、第二次噴流ノズル41の冷却工程S5方向となる下流側にはプレート44が下方に傾斜して配置されている。第二次噴流ノズル41から噴出された溶融ハンダSは、プレート44に沿って流れていく。そして、プレート44の下流端側には、プレート44上に一定量の溶融ハンダSを確保しておくための堰(バックプレート)42が設けられている。そして、この堰42を落下して溶融ハンダSは還流する。第二次噴流ノズル41と堰42との間にはプレート44による十分な距離が確保されている。したがって、プリント基板Pと溶融ハンダSとの離脱位置を調整することで、プリント基板Pと溶融ハンダSとの接触時間を確保することができる。また、堰42の高さが特許文献2のように変更可能となっている。このため、プリント基板Pが溶融ハンダSと接触している大まかな時間を調節することができる。なお、噴流式ハンダ付け装置1では、この堰42を越えて流れる溶融ハンダSは、この堰42の位置ではプリント基板Pと接触することはない。
【0023】
第二次噴流ノズル41と堰42の間のプレート44上には、ハンダ離脱制御棒43が設置されており、溶融ハンダSがプリント基板Pと接触する領域内にハンダ離脱制御棒43が固定されている。ハンダ離脱制御棒43は、断面が四角形(例えば、1辺6mmの正方形)の細長い棒状の金属製部材で形成されている。また、溶融ハンダSが流れる方向に対して直角方向にプレート44の端から端まで延在して配置されている(図2参照)。なお、ハンダ離脱制御棒43は、溶融ハンダSの流れと平行方向に位置を微調整できるような固定手段でハンダ離脱制御棒43の端部が固定されている。また、ハンダ離脱制御棒43を固定するための固定手段は、ハンダ離脱制御棒43自身が備えていても、噴流式ハンダ付け装置1が備えていても、またその両方で固定手段が構成されていても構わない。
【0024】
次に、噴流式ハンダ付け装置1にこのハンダ離脱制御棒43が備わっていることの効果について説明する。まず、図1Aに示すようにプリント基板Pが第二次噴流ハンダ工程S4に差し掛かっていない場合、第二次噴流ノズル41からプレート44上を流れ出る溶融ハンダSはハンダ離脱制御棒43を乗り越えて流れる。これにより、溶融ハンダSはハンダ離脱制御棒43の上方でうねって突出する(突出部U)。なお、図1Aでは、突出する溶融ハンダSを強調して描いている。したがって、実際の噴流式ハンダ付け装置1において溶融ハンダSの表面を観察しても、ハンダの比重が非常に大きいことから、必ずしもこのような明確な溶融ハンダSの突出が観察できるわけではない。
【0025】
次に、図1Bに示すようにプリント基板Pがハンダ離脱制御棒43の上を搬送されると、溶融ハンダSの進路がハンダ離脱制御棒43によってプリント基板Pの方向に向けられるので、プリント基板Pは溶融ハンダSによって上方向に圧力を受ける。
【0026】
ここで、ハンダ離脱制御棒43による効果をイメージし易くするために図2を用いて説明する。図2は、溶融ハンダSがプリント基板Pから離脱するタイミングを従来と比較した模試図である。具体的には、図2Aは本実施形態におけるタイミングを示した模式図であり、図2Bは従来のタイミングを示した模式図である。
【0027】
図2Bに示すプレート44にハンダ離脱制御棒43が設置されていない従来の場合、先にも述べたようにプリント基板Pから溶融ハンダSが離脱する時間はプリント基板P内で異なり、現実には理想とする落下位置で横一線に落下していくことはない。したがって、溶融ハンダSがプリント基板Pから離脱する落下位置Lには大きなばらつきが発生していた。
【0028】
一方、図2Aに示す本実施形態では、従来のばらつきの領域F´に対応する位置に、ハンダ離脱制御棒43による溶融ハンダSのうねりの突出部Uができるよう、ハンダ離脱制御棒43の位置がプレート44上で調整され配置されている。これにより、従来、プリント基板Pから上流側で早々に離脱してしまっていた溶融ハンダSは、このうねりの突出部Uによって突出部Uを過ぎるまで離脱が遅延することになり、下流側で遅延して離脱していた他の溶融ハンダSと共に一斉にプリント基板Pから離脱することになる。つまり、図2Bに示すように従来落下位置Lが領域F´のように大きくばらついていたが、ハンダ離脱制御棒43を配置したことによって、図2Aに示すように、落下位置Lが領域Fのようにハンダ離脱制御棒43の下流側に横一線に揃うことになる。
【0029】
このようにして溶融ハンダSがプリント基板Pに接触する時間のばらつきが無くなるので、第二次噴流ハンダ工程S4において、第一次噴流ハンダ工程S3でプリント基板Pに付着したハンダの昇温が均一となり、ハンダ付け品質が均一になるという作用効果がある。また、不十分な昇温によって生じるブリッジやツララを無くすことができる。
【0030】
ここで、本実施形態の図3Aと従来の図3Bの比較図は発明者が圧力計測したグラフで、縦軸はプリント基板Pが溶融ハンダSによって受ける上方向の圧力であり、横軸は流れ方向の位置である。
【0031】
なお、図3A図3Bの左側に示されているピークは、第一次噴流ハンダ工程S3における第一次噴流ノズル31から噴流した溶融ハンダによってプリント基板Pが受ける圧力である。図3A図3Bの右側に示されているピークは、第二次噴流ハンダ工程S4における第二次噴流ノズル41から噴流した溶融ハンダによってプリント基板Pが受ける圧力である。図からわかるように、第一次噴流ハンダ工程S3の方が、第二次噴流ハンダ工程S4よりも、短期間に強い圧力をプリント基板Pに与えている。
【0032】
ここで、図3Aの丸で囲んだ領域Gがハンダ離脱制御棒43によって変化した圧力である。図3Bの従来の構成においては、プリント基板Pが受ける圧力は徐々に低下していくだけであるが、ハンダ離脱制御棒43を設置することにより、溶融ハンダSがプリント基板Pから離脱していく直前にプリント基板Pに対して上方向の圧力を加えている。
【0033】
なお、実際にはプリント基板Pが受ける圧力は、プリント基板Pと溶融ハンダSとが離脱するとゼロになるが、本実施形態において圧力を計測した計測器の構造に起因し、図3A図3Bで示すプリント基板Pの受ける圧力が0となる位置が、プリント基板Pと溶融ハンダSとが離脱した位置とはなっていない。したがって、例えば、実際には図3Aの領域Gの後でプリント基板Pと溶融ハンダSとは離脱するので、プリント基板Pは圧力を受けることはなくなるが、計測器の構造により領域Gの後で徐々に低下する圧力を示している。
【0034】
また、図1Bに示すように、溶融ハンダSはハンダ離脱制御棒43の高さから流れ落ちるので、プリント基板Pがハンダ離脱制御棒43の上方まで搬送された状態で溶融ハンダSがプリント基板Pから離間する角度θ1は、ハンダ離脱制御棒43が無い従来の離間角度θ2よりも大きくなる。したがって、ブリッジやツララの発生を抑制することができる。
【0035】
本発明者による検証によると、通常、噴流式ハンダ付け装置におけるブリッジの発生率は、良くても5000ppm10000ppmあるものとされているが、ハンダ離脱制御棒43を設けることにより、ブリッジの発生率が1/51/10と大幅に減少した。
【0036】
なお、プレート44上においてハンダ離脱制御棒43の位置を調整することより、プリント基板Pが溶融ハンダSと接触している時間(プリント基板Pの加熱時間)を調節することができる。これにより、堰42でのこの調節は不要となる。
【0037】
このように均一なハンダ付け品質となり、且つブリッジやツララの発生を抑制することができるハンダ離脱制御棒43は既存の噴流式ハンダ付け装置1に追加で簡単に設けることができる。これにより、高額な噴流式ハンダ付け装置を新たに購入することなく、あるいはハンダSが流れるプレート44を含んだノズル部を交換することなく、ハンダ離脱制御棒43のみの追加という低額な設備投資で均一なハンダ付け品質とブリッジやツララの発生の抑制の効果を得ることができる。
【0038】
一方、噴流式ハンダ付け装置の製造業者であれば、第二次噴流ハンダ工程S4の溶融ハンダSが流れるプレート44に一体化したハンダ離脱制御棒43を設けることもできる。このときはプレート44の長さを調整してハンダ離脱制御棒43の位置を調整することもできる。また、ハンダ離脱制御棒43は、プレート44に一体成型により形成しても構わない。
【0039】
なお、上述の実施形態のハンダ離脱制御棒43は断面が四角形であったが、本発明は四角形に限定するものではなく、溶融ハンダSの流れをプリント基板P側に向ける形状であればよい。たとえば断面が台形や半円弧であっても本発明の効果がある。ただし、本発明者の検証によると、ハンダ離脱制御棒43の頂部の面積は広い方が好ましいことがわかっており、ハンダ離脱制御棒43の断面形状は、台形や半円弧に比べ四角形の方が好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1:噴流式ハンダ付け装置
31:第一次噴流ノズル
41:第二次噴流ノズル
43:ハンダ離脱制御棒
44:プレート
F:領域
L:落下位置
P:プリント基板
S:溶融ハンダ
S1:フラックス塗布工程
S2:加熱工程
S3:第一次噴流ハンダ工程
S4:第二次噴流ハンダ工程
S5:冷却工程
図1
図2
図3
図4