(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記給電ケーブル貫通孔を貫通した前記給電ケーブルは、前記板状部材の径方向外側に曲げられて、前記板状部材の径方向外側に延在した状態で2個の前記取付面の間に配置されており、
2個の前記取付面の間における前記給電ケーブルは、2個の前記取付面同士の中央に配置される、請求項1に記載の電動機。
前記端子ボックスを前記板状部材に取り付けるためのボルトが貫通する端子ボックス用ボルト孔が、2個の前記取付面の間を貫通する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電動機。
前記電源ケーブル導入孔は、前記胴部の一方の端部側又は他方の端部側から前記電源ケーブルを前記端子ボックスに導入可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
<電動機の機構>
図1は、本実施形態に係る電動機の構造を示す断面図である。電動機1は、筐体2と、ステーター3と、ローター7とを含む。筐体2は、筒状の胴部2Bと、胴部2Bの一方の端部に取り付けられる板状部材としてのリアフランジ2Rと、胴部2Bの他方の端部に取り付けられる板状部材としてのフロントフランジ2Fとを含む。胴部2Bは、内側、より具体的には内周面2iwにステーター3のステーターコア3Cが取り付けられる。ステーター3の内側、より具体的にはステーターコア3Cの径方向内側には、ローター7が回転可能に配置される。
【0015】
リアフランジ2Rとフロントフランジ2Fとは、いずれも円板形状の部材である。これらは、それぞれボルト10、11によって胴部2Bに締結されて取り付けられる。筐体2は、内部2I、すなわち、リアフランジ2Rとフロントフランジ2Fと胴部2Bとで囲まれる空間に、ステーター3及びローター7を格納する。本実施形態において、筐体2は、胴部2Bと、リアフランジ2Rと、フロントフランジ2Fとを含むが、このような形態に限定されない。例えば、リアフランジ2R又はフロントフランジ2Fのいずれか一方が、例えば、鋳造等によって胴部2Bと一体で形成されるものであってもよい。
【0016】
ステーター3は、ステーターコア3Cと、コイル4とを含む。ステーターコア3Cは、環状の構造体である。ステーターコア3Cは、例えば、複数の電磁鋼板を積層したものである。ステーターコア3Cは、複数のスロット(溝)と、隣接するスロットの間に設けられる複数のティースとが周方向に向かって配置されている。コイル4は、ステーターコア3Cの隣接するスロット間に電線が巻き回されることにより、ステーターコア3Cに取り付けられる。コイル4からは、給電ケーブル6が引き出されている。給電ケーブル6は、コイル4に電力を供給したり、電動機1の回生時にコイル4が発生した電力を電動機1から取り出したりするための電線である。本実施形態において、電動機1は三相電動機なので、給電ケーブル6は、U相のコイルに電力を供給するものと、V相のコイルに電力を供給するものと、W相のコイルに電力を供給するものとの3本がある。
【0017】
リアフランジ2Rは、ステーター3が有するコイル4から引き出された給電ケーブル6が貫通する給電ケーブル貫通孔12を有する。給電ケーブル6は、給電ケーブル貫通孔12を貫通して、筐体2の内部2Iから筐体2の外部に引き出される。
【0018】
ステーター3、より具体的にはステーターコア3Cは、例えば、リアフランジ2R側の開口部から胴部2B内に配置される。胴部2Bの小径部2BTにステーターコア3Cの一端部を当接させ、ステーターコア3Cが有する複数の電磁鋼板の積層方向に貫通した貫通孔にステーター固定用ボルト5を差し込む。そして、ステーター固定用ボルト5を小径部2BTに設けられたボルト穴にねじ込むことにより、ステーターコア3C及びコイル4を有するステーター3を胴部2Bに締結し、固定する。
【0019】
ステーター3の内側に配置されたローター7は、シャフト8に取り付けられており、シャフト8とともに回転中心軸Zrを中心として回転する。このように、ローター7とシャフト8とは、共通の回転中心軸Zrの周りを回転する。ローター7は、円板形状の鋼板(電磁鋼板)を積層した円筒形状の構造体である。ステーターコア3Cの内周面とローター7の外周面とは所定の隙間を介して対向して配置されている。このため、ステーターコア3Cの内周面は、ローター7の外周面に沿った形状となる。
【0020】
本実施形態において、ローター7は、内部に複数の永久磁石を埋め込んでいる。このように、本実施形態において、電動機1は、IPM(Interior Permanent Magnet)であるが、SPM(Surface Permanent Magnet)であってもよい。ローター7に取り付けられたシャフト8は、一方の端部側と他方の端部側とに、それぞれ軸受9R、9Fが取り付けられている。軸受9R、9Fは、例えば外輪と、転動体と、内輪と、保持器とを含む転がり軸受である。本実施形態において、軸受9Rは外輪がリアフランジ2Rに取り付けられ、軸受9Fは外輪がフロントフランジ2Fに取り付けられる。軸受9R、9Fの内輪は、いずれもシャフト8に取り付けられる。リアフランジ2R及びフロントフランジ2Fは胴部2Bに取り付けられているので、シャフト8及びローター7は、電動機1の筐体2の内部2Iに、回転可能に支持され、配置される。
【0021】
シャフト8は、フロントフランジ2Fから筐体2の外部に突出している。シャフト8がフロントフランジ2Fから突出した部分は、電動機1の駆動対象と連結されたり、ギア又はスプロケット等が取り付けられる。シャフト8は、内部に冷却媒体(例えば、油)が通過する冷却媒体通路8Cを有している。冷却媒体通路8Cは、ローター7の内部に設けられた冷却媒体の通路等に接続している。冷却媒体通路8Cに、リアフランジ2Rが有する冷却媒体供給口2RHから冷却媒体を供給することにより、ローター7を冷却する。ローター7を冷却した後の冷却媒体は、ローター7から流出するとともに、ローター7の回転による遠心力で径方向外側に放出されて、コイル4(特に、ステーターコア3Cから回転中心軸Zr方向に突出した部分であるコイルエンド)に衝突し、これを冷却する。このように、電動機1は、筐体2の内部2I及び筐体2の内部に格納されたローター7等が冷却媒体によって冷却される。なお、電動機1は、冷却媒体によってローター7等が冷却されなくてもよい。
【0022】
<端子ボックス>
電動機1は、端子ボックス20を有する。端子ボックス20は、板状部材としてのリアフランジ2Rに取り付けられている。端子ボックス20は、給電ケーブル6が接続された端子24を格納する。端子ボックス20には、リアフランジ2Rに取り付けられる取付部21と、端子24を格納する端子格納部22とが設けられている。本実施形態において、端子ボックス20は、取付部21と端子格納部22とが一体で形成されているが、このようなものに限定されない。例えば、両者を別個の部材として用意し、これらをボルトで締結等してもよい。
【0023】
取付部21は、リアフランジ2Rと接する取付面21Fを2個有している。2個の取付面21F、21Fは、互いに対向し、かつ平行である。それぞれの取付面21F、21Fは、ステーター3のコイル4から引き出され、リアフランジ2Rの給電ケーブル貫通孔12を貫通した給電ケーブル6を通過させる給電ケーブル孔21Hを有する。また、取付面21Fは、端子ボックス20がリアフランジ2Rに取り付けられるときに、リアフランジ2Rと対向する。
【0024】
取付部21は、2個の取付面21F、21Fを貫通する端子ボックス用ボルト孔28を有している。端子ボックス用ボルト孔28にボルト29を貫通させて、リアフランジ2Rにねじ込むことによって、取付部21をリアフランジ2Rに締結し、固定する。その結果、端子ボックス20がリアフランジ2Rに取り付けられる。このとき、一方の取付面21Fがリアフランジ2Rと対向する。なお、取付面21Fとリアフランジ2Rとの間には、封止部材としてのOリング又はガスケットが介在する。このようにすることで、電動機1の筐体2の内部2Iからの冷却媒体が取付面21Fとリアフランジ2Rとの間から漏れる可能性を低減できる。
【0025】
本実施形態において、端子ボックス用ボルト孔28は、それぞれの取付面21F、21F側にそれぞれ座繰り部を有している。座繰り部の深さは、ボルト29のボルト頭の高さよりも大きいことが好ましい。このようにすることで、座繰り部に入り込んだボルト29の頭は、取付面21F、21Fから突出しない。このため、取付面21Fに蓋25を取り付けても、両者の間に隙間が発生することを回避できるので、両者の間を確実に封止することができる。また、座繰り部は、両方の取付面21F、21F側に設けられているので、取付面21Fを入れ替えてリアフランジ2Rに端子ボックス20を取り付けても、座繰り部にボルト29の頭を埋め込むことができる。それぞれの座繰り部の深さは、同一であることが好ましい。このようにすることで、端子ボックス20を反転させてリアフランジ2Rに取り付ける場合でも、同一のボルト29を用いることができるので、部品の共通化及び部品点数の削減を実現することができる。
【0026】
取付部21をリアフランジ2Rに取り付けると、取付部21の給電ケーブル孔21Hと、リアフランジ2Rの給電ケーブル貫通孔12とが重なる。このため、コイル4からの給電ケーブル6は、給電ケーブル貫通孔12を貫通した後、給電ケーブル孔21Hに導かれる。給電ケーブル貫通孔12を貫通した給電ケーブル6は、リアフランジ2Rの径方向外側に向かって約90度曲げられて、リアフランジ2Rの径方向外側に延在する状態となる。給電ケーブル6が延在する方向は、回転中心軸Zrと直交する方向である。曲げられた後の給電ケーブル6は、2個の取付面21F、21Fの間に配置されて端子24に導かれ、これと電気的に接続される。
【0027】
一方の取付面21Fがリアフランジ2Rに取り付けられると、他方の取付面21Fには、給電ケーブル孔21Hが開いた状態となる。両方の取付面21F、21Fの給電ケーブル孔21H、21Hは、取付部21の内部でつながっているので、このままでは電動機1の筐体2の内部2Iと外部とが連通してしまう。このため、他方の取付面21Fの給電ケーブル孔21Hに蓋25を取り付けて、これを閉塞する。蓋25は、取付部21が有する複数の蓋用ボルト穴26にボルト27をねじ込むことによって、取付面21Fに締結され、固定される。取付面21Fと蓋25との間には、封止部材としてのOリング又はガスケットが介在する。このようにすることで、電動機1の筐体2の内部2Iからの冷却媒体が取付面21Fと蓋25との間から漏れる可能性を低減できる。
【0028】
一方の取付面21Fに開口する蓋用ボルト穴26と、他方の取付面21Fに開口する蓋用ボルト穴26とは、両者の間で中心軸が共通することが好ましい。このようにすることで、両方の取付面26の間で蓋25を共通とすることができる。また、それぞれの取付面21Fに開口する蓋用ボルト穴26は、それぞれの深さを同一とすることが好ましい。このようにすることで、端子ボックス20を反転させてリアフランジ2Rに取り付ける場合でも、同一のボルト27を用いることができるので、部品の共通化及び部品点数の削減を実現することができる。
【0029】
端子ボックス20と端子24との間には、絶縁体23が配置される。絶縁体23と端子24とは、異なる部材同士を組み合わせたものであり、両者は接着等がされていないので、分離可能である。絶縁体23は、例えば、ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の絶縁性が高い樹脂、ガラス繊維、ガラス繊維強化プラスチック等を用いることができる。端子ボックス20は金属材料で作られており、導電性が高いため、端子24と端子ボックス20との間に絶縁体23を介在させることで、両者の電気的な絶縁を確保することができる。
【0030】
端子24には、電源からの電力をステーター3が有するコイル4へ供給するための電源ケーブル32が接続される。電源ケーブル32には、電源ケーブル端子30が電気的に接続される。電源ケーブル端子30は、端子格納部22が有する電源ケーブル導入孔22Hから端子格納部22の内部の空間22Iに差し込まれている。電源ケーブル導入孔22Hは、電源ケーブル32を端子に導くものである。電源ケーブル導入孔22Hは、胴部2Bの径方向外側に配置されている。
【0031】
電源ケーブル32は、電源ケーブル端子30を介して、端子24にボルト31で締結され、固定される。このようにして、端子24と電源ケーブル端子30とが電気的に接続される。両者が接続される部分は、端子格納部22の内部の空間22Iに配置される。端子格納部22は、開口部が蓋33で閉じられる。蓋33は、ボルト34で端子格納部22に締結され、固定される。なお、本実施形態において、電源ケーブル32は、端子24にボルト31で締結されて接続されるが、電源ケーブル32と端子24との接続構造はこのようなものに限定されない。例えば、コネクタによって両者を接続してもよい。
【0032】
上述したように、電源ケーブル導入孔22Hは、胴部2Bの径方向外側に配置されている。また、端子ボックス20は、取付部21に2個の取付面21F、21Fを有している。一方の取付面21Fは、他方の取付面21Fの背面に配置されるので、リアフランジ2R側の取付面21Fを、一方から他方に変更することで、電源ケーブル導入孔22Hの開口の向きを180度変更することができる。例えば、電源ケーブル導入孔22Hの開口側の取付面21Fをリアフランジ2Rと対向させて取付部21をリアフランジ2Rに取り付けると、電源ケーブル導入孔22Hの開口側は、フロントフランジ2F側を向くことになる。また、電源ケーブル導入孔22Hの開口側とは反対側の取付面21Fをリアフランジ2Rと対向させて取付部21をリアフランジ2Rに取り付けると、電源ケーブル導入孔22Hの開口側は、フロントフランジ2Fとは反対側を向くことになる。このようにすることで、電動機1は、端子ボックス20から電源ケーブル32が引き出される方向を、180度変更することができる。
【0033】
端子ボックス20の向きを変更した場合に、端子ボックス20が筐体2と接触しないように、
図1に示すように、端子ボックス20の端子格納部22と筐体2の外周面との間には、所定の隙間Sが設けてある。このようにすることで、端子ボックス20の向きを変更して電源ケーブル導入孔22Hの開口の向きを入れ替えても、端子ボックス20と筐体2との接触を回避できる。
【0034】
<ステーター及びリアフランジの回転について>
図2は、
図1のA−A矢視図である。
図3は、リアフランジの正面図である。
図4は、本実施形態に係る電動機の筐体の胴部が有する第1取付部と第2取付部との関係を示す図である。
図5は、ステーターをローターの回転中心軸周りに回転させた状態を示す図である。
図6は、リアフランジをローターの回転中心軸周りに回転させた状態を示す図である。
図2、
図5は、
図1に示すステーター固定用ボルト5をステーター3から取り外した状態を示している。このため、
図2、
図5においては、ステーター3の貫通孔3Hから、ステーター固定用ボルト5がねじ込まれるステーター用ボルト穴42が見えている。
【0035】
リアフランジ2Rは、筐体2の胴部2Bの一端部2TRに設けられる複数のリアフランジ用ボルト穴41に、リアフランジ2Rに設けられた貫通孔43(
図3参照)を貫通したボルト10(
図1参照)がねじ込まれることにより、胴部2Bの一端部2TRに取り付けられる。ステーター3は、胴部2Bに設けられている複数のステーター用ボルト穴42にステーター固定用ボルト5がねじ込まれることにより、胴部2Bの内側に取り付けられる。
【0036】
図2に示すように、本実施形態では、リアフランジ用ボルト穴41が12箇所、ステーター用ボルト穴42が6箇所に設けられている。胴部2Bの周方向において、1個のステーター用ボルト穴42の両側に、2個のリアフランジ用ボルト穴41がステーター用ボルト穴42に隣接して設けられている。この例において、1個のステーター用ボルト穴42に隣接して設けられた2個のリアフランジ用ボルト穴41を第1取付部F1とし、ステーター用ボルト穴42を第2取付部(F2)とする。
【0037】
本実施形態において、電動機1のステーター3とリアフランジ2Rとは、ローター7(又はシャフト8)の回転中心軸Zrを中心に回転可能であるとともに、コイル4から引き出された給電ケーブル6の位置及び給電ケーブル貫通孔12の位置を、胴部2Bの周方向において変更可能な構造としてある。このような構造により、回転中心軸Zrを中心としてリアフランジ2Rを回転させて、リアフランジ2Rに取り付けられた端子ボックス20を胴部2Bの周方向において異なる位置に設定することができる。その結果、電動機1を車両又は機器類等に搭載した場合には、
図1に示す電源ケーブル32の取り回しの自由度が向上する。
【0038】
ステーター3とリアフランジ2Rとを回転中心軸Zrを中心として回転可能にするため、
図4に示すように、複数の第1取付部F1と、複数の第2取付部F2とを、所定のピッチ円PC上に等ピッチで配置して胴部2Bに設ける。より具体的には、複数の第1取付部F1は、胴部2Bの外径Dよりも直径が小さい第1のピッチ円PC1上に等ピッチで配置される。また、複数の第2取付部F2は、胴部2Bの外径Dよりも直径が小さい第2のピッチ円PC2上に等ピッチで配置される。
図4に示す例では、第1のピッチ円PC1の直径d1は、第2のピッチ円PC2の直径d2よりも大きい。第1取付部F1は、隣接するリアフランジ用ボルト穴41、41なので、リアフランジ用ボルト穴41の中心が第1のピッチ円PC1上に配置される。第2取付部F2は、ステーター用ボルト穴42なので、この中心が第2のピッチ円PC2上に配置される。
【0039】
本実施形態において、12個のリアフランジ用ボルト穴41のうち、隣接する2個のリアフランジ用ボルト穴41、41の組合せは、
図4に示すように中心角がαとなる組合せと、中心角がβとなる組合せとがある。本実施形態では中心角がより小さくなる方の組合せを第1取付部F1とする。本実施形態ではα<βなので、中心角がαとなる隣接する2個のリアフランジ用ボルト穴41、41の組合せを第1取付部F1とする。
【0040】
第1取付部F1の隣接するリアフランジ用ボルト穴41、41は、それぞれ、第2取付部F2としてのステーター用ボルト穴42から周方向において反対方向かつ等しい距離に設けられることが好ましい。すなわち、ステーター用ボルト穴42と、回転中心軸Zrと、ステーター用ボルト穴42に対して周方向において一方側のリアフランジ用ボルト穴41とのなす中心角は、ステーター用ボルト穴42と、回転中心軸Zrと、ステーター用ボルト穴42に対して周方向おいて他方側のリアフランジ用ボルト穴41とのなす中心角と等しいことが好ましい。また、前述した一方側のリアフランジ用ボルト穴41における中心角と前述した他方側のリアフランジ用ボルト穴41における中心角とが異なっていても、両方の中心角が、すべての第1取付部F1で同じように異なっていればよい。
【0041】
複数の第1取付部F1が等ピッチで配置されるとは、回転中心軸Zrに対する隣接する第1取付部F1の中心角、すなわち、隣接する第1取付部F1、F1と回転中心軸Zrとで形成される角度(中心角)θ1が、胴部2Bの周方向にわたってすべて等しいことをいう。本実施形態において、隣接する2個のリアフランジ用ボルト穴41、41が第1取付部F1に相当するので、2個のリアフランジ用ボルト穴41、41の中間位置F1bを基準として、隣接する第1取付部F1の中心角θ1を決定する。
【0042】
複数の第2取付部F2が等ピッチで配置されるとは、回転中心軸Zrに対する隣接する第2取付部F2の中心角、すなわち、隣接する第2取付部F2、F2と回転中心軸Zrとで形成される角度(中心角)θ2が、胴部2Bの周方向にわたってすべて等しいことをいう。本実施形態において、胴部2Bの周方向に向かって6個配置されるステーター用ボルト穴42が第2取付部F2に相当するので、それぞれのステーター用ボルト穴42の位置を基準として、隣接する第2取付部F2の中心角θ2を決定する。
【0043】
本実施形態において、電動機1は、第1取付部F1及び第2取付部F2をそれぞれ6個有する。これらが等ピッチで配置されるので、中心角θ1、θ2は、いずれも60度になる。このようにすることで、ステーター3とリアフランジ2Rとは、回転中心軸Zrを中心として、ともに回転可能になる。また、θ1=θ2なので、ステーター3とリアフランジ2Rとは、回転中心軸Zrを中心として、いずれも同一の回転角度(この例ではθ1=θ2=60度)で回転可能となる。このようにすることで、給電ケーブル6(6U、6W、6W)と、リアフランジ2Rが有する給電ケーブル貫通孔12との位置関係を保持したまま、ステーター3及びリアフランジ2Rの位置を胴部2Bの周方向に向かって変更することができる。本実施形態において、6個の第1取付部F1及び第2取付部F2が等ピッチで配置されるので、ステーター3及びリアフランジ2Rの回転は、いずれも60度毎になる。
【0044】
図5、
図6は、
図2、
図3に示す状態から回転中心軸Zrの周りにステーター3及びリアフランジ2Rをそれぞれ60度回転させた状態を示している。このように、電動機1は、リアフランジ2Rとステーター3とを、ともに同じ回転角で胴部2Bの周方向に回転させることにより、回転の前後において、リアフランジ2Rの給電ケーブル貫通孔12と、給電ケーブル6(6U、6W、6W)との位置関係が維持される。このため、リアフランジ2Rの給電ケーブル貫通孔12の移動を考慮して、給電ケーブル6の長さに余裕を持たせておく必要はないので、余分な給電ケーブル6を筐体2内に格納するスペースは不要である。その結果、電動機1の筐体2の寸法増加を抑制することができる。その結果、電動機1の筐体2の寸法増加を抑制しつつ、胴部2Bの周方向における端子ボックス20の位置を変更することができる。
【0045】
また、電動機1の出力が大きい場合、コイル4には大きな電力が供給されるため、給電ケーブル6も太くなる。その結果、給電ケーブル6を曲げることが非常に困難になり、給電ケーブル6の余剰分を筐体2内に格納することが困難になる。電動機1は、リアフランジ2Rとステーター3とを、ともに胴部2Bの周方向に回転させて、端子ボックス20の位置調整をするので、給電ケーブル6は必要最小限の長さでよい。その結果、給電ケーブル6が太くなった場合であっても、胴部2Bの周方向における端子ボックス20の位置を容易に変更することができる。このように、電動機1は、給電ケーブル6が太くなった場合には特に効果的である。
【0046】
図7から
図9は、第1取付部と第2取付部との他の配置例を示す図である。
図7に示す配置は、1個のリアフランジ用ボルト穴41を第1取付部F1とした点が
図4に示す例と異なり、他の点は上述した例と同様である。この例において、第1取付部F1としてのリアフランジ用ボルト穴41は、第1のピッチ円PC1上に、等間隔で6個配置されている。第1取付部F1は、第2取付部F2としてのステーター用ボルト穴42の径方向外側に配置されている。このような配置であっても、
図4に示す配置と同様の作用、効果が得られる。
【0047】
図8に示す例は、同一のピッチ円PC上に、複数の第1取付部F1と複数の第2取付部F2とをそれぞれ等間隔で配置したものである。すなわち、ピッチ円PCが、第1のピッチ円及び第2のピッチ円に相当する。この場合、第1取付部F1と第2取付部F2とは、ピッチ円PCの周方向に向かって交互に配置される。隣接する第1取付部F1、F1の中心角θ1と、隣接する第2取付部F2、F2の中心角θ2とは等しい。また、この例において、隣接する第1取付部F1と第2取付部F2との中心角θ3は、θ1/2=θ2/2である。したがって、複数の第1取付部F1及び複数の第2取付部F2は、すべてピッチ円PC上に等ピッチで配置される。このような配置であっても、
図4に示す配置と同様の作用、効果が得られる。なお、この例においては、θ1とθ2とが等しければ、θ3はθ1/2(=θ2/2)である必要はない。
【0048】
図9に示す例は、
図7に示す例において、第2取付部F2の数を第1取付部F1の数よりも多くしたものである。この例では、第1取付部F1が6個であるのに対し、第2取付部F2は倍の12個である。第1取付部F1及び第2取付部F2は、それぞれ第1のピッチ円PC1及び第2のピッチ円PC2上に等ピッチで配置される。したがって、隣接する第1取付部F1、F1の中心角θ1/2=θ2=30度になる。この例において、ステーター3を胴部2Bに取り付けるための第2取付部F2は12個であるので、ステーター3は、胴部2Bの周方向に向かって30度毎に回転可能である。このため、ステーター3は、胴部2Bの周方向に向かって60度毎に回転可能であるリアフランジ2Rと同じ回転角度で回転可能になる。第1取付部F1を12個とし、第2取付部F2を6個とした場合も、ステーター3とリアフランジ2Rとは、回転中心軸Zrを中心として、いずれも同一の回転角度で回転可能になる。
【0049】
また、第1取付部F1が6個で、第2取付部F2が18個である場合、リアフランジ2Rは60度毎に回転可能であり、ステーター3は20度毎に回転可能である。この場合も、ステーター3とリアフランジ2Rとは、回転中心軸Zrを中心として、いずれも同一の回転角度で回転可能になる。まとめると、本実施形態においては、第1取付部F1が第1のピッチ円上に等ピッチで配置され、第2取付部F2が第2のピッチ円上に等ピッチで配置され、かつ第1取付部F1の数と第2取付部F2の数とは、一方が他方の整数倍となっていればよい。この関係を満たしていれば、ステーター3及びリアフランジ2Rは、回転中心軸Zrを中心として、いずれも同一の回転角度で胴部2Bの周方向に向かって回転可能になる。
【0050】
図9に示すように、第1取付部F1の数と第2取付部F2の数とは異なっていてもよいが、ステーター3及びリアフランジ2Rを同じ回転角度でのみ回転させる場合は、両者の数は同数とすることが好ましい。このようにすれば、第1取付部F1及び第2取付部F2の加工工程が少なくなるという利点がある。また、ステーター3又はリアフランジ2Rのいずれかについて、胴部2Bの周方向における位置をより細かくした場合には、上述した関係を満たした上で、第1取付部F1の数と第2取付部F2の数とを異ならせることが好ましい。
【0051】
図10から
図12は、端子ボックスの向きを変更した場合の例を示す図である。
図10、
図11は、
図1に示す端子ボックス20の電源ケーブル導入孔22Hの向きを変更した例である。
図10に示す例は、電源ケーブル導入孔22Hが、胴部2Bの一方の端部(リアフランジ2R側)から電源ケーブル32を端子ボックス20に導入可能な方向に向いている例である。すなわち、端子ボックス20の電源ケーブル導入孔22Hを、シャフト8が突出している方向とは反対側に向けることにより、リアフランジ2R側から電源ケーブル32を端子ボックス20に導入した例である。
図11は、電源ケーブル導入孔22Hが、胴部2Bの他方の端部側(フロントフランジ2F側)から電源ケーブル32を端子ボックス20に導入可能な方向に向いている例である。すなわち、端子ボックス20の電源ケーブル導入孔22Hを、シャフト8が突出している方向に向けることにより、フロントフランジ2F側から電源ケーブル32を端子ボックス20に導入した例である。このように、電源ケーブル導入孔22Hは、胴部2Bの一方の端部側又は他方の端部側から電源ケーブル32を端子ボックス20に導入可能である。このような構造により、端子ボックス20は、2個の取付面21F、21Fを入れ替えることで電源ケーブル導入孔22Hの向きを変更して電源ケーブル32の導入方向を変更できるので、新たな部品を用意する必要はない。
【0052】
図12に示す例は、2台の電動機1を、例えば、ホイールローダ等の建設機械等の作業車両に並べて配置した場合において、回転中心軸Zrに対して端子ボックス20を異なる方向に傾けた例である。この例では、並べて配置された2台の電動機1の間において、端子ボックス20が所定の軸Znに対して外側に傾けられている。電動機1は、ステーター3とリアフランジ2Rとを、回転中心軸Zrを中心として、ともに回転させることができる。このため、新たな部品を用意することなく、胴部2Bの周方向における端子ボックス20の位置を変更することができる。
【0053】
なお、本実施形態において、電動機1が冷却媒体で冷却される場合には、冷却媒体が給電ケーブル貫通孔12及び給電ケーブル孔21Hを通って端子ボックス20側に移動する可能性がある。端子ボックス20が有する端子格納部22の内部の空間22Iは、蓋33と端子格納部22との間の封止部材、絶縁体23と端子24との間の封止部材、絶縁体23と端子格納部22との間の封止部材及び電源ケーブル導入孔22Hと電源ケーブル32との間の封止部材によって外部から密封されているが、冷却媒体が端子ボックス20側へ移動することは極力回避することが好ましい。この観点から、端子ボックス20は、電動機1の上側に配置されることが好ましい。
【0054】
上述したように、電動機1は、電源ケーブル32の端子ボックス20への導入方向の変更と、端子ボックス20の傾きの変更とを、端子ボックス20の取付け方向の変更と、ステーター3及びリアフランジ2Rの回転とによって実現できる。このため、電源ケーブル32の導入方向又は端子ボックス20の回転中心軸Zr周りにおける傾きを変更するにあたって、電動機1は、端子ボックス20、ステーター3及びリアフランジ2Rの専用部品を準備する必要がない。その結果、電動機1は、同一の端子ボックス20及びステーター3等が一式あればよいので、部品管理を簡略にすることができるとともに、多品種少量の部品を製作しなくてもよいため、電動機1の製造コストを抑制できる。
【0055】
また、電動機1は、端子ボックス20の向き及び回転中心軸Zr周りの傾きを簡易に調整できるので、電源ケーブル32の配置の自由度が向上する。その結果、既存の車両又は機器類に電動機1を搭載する際に電源ケーブル32の配置が大幅に変更できない場合であっても、特別な部品を用意することなく既存の配置に合わせやすくなる。さらに、新たに車両又は機器類を設計する場合も、電動機1は、電源ケーブル32の配置の自由度が高いので、電動機1、電動機1の制御機器、電源ケーブル32又は他の機器類の配置について、設計の自由度が向上する。この場合も、電動機1の端子ボックス20の配置変更に起因するコストアップは考慮しないで済む。また、電動機1を搭載した車両又は機器類の改造等をする際に、電源ケーブル32の端子ボックス20への導入方向が変更されるような状況が発生しても、コストアップなしで容易に対応できる。
【0056】
上記説明では、端子ボックス20の取付面21Fは2個としたが、取付面21Fの数は少なくとも2個であればよい。例えば、取付面21Fを4個とすれば、端子ボックス20への電源ケーブル32の導入方向を4方向に変更することができる。この場合、例えば、対向する2個の取付面21F、21Fを連結する、対向する2個の新たな取付面を設ければよい。
【0057】
以上、本実施形態について説明したが、上述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上述した実施形態の構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更を行うことができる。本実施形態の電動機の適用対象は特に限定されるものではない。本実施形態の電動機は、建設機械、作業車両等に適用することができる。