【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により上記課題は達成され、本発明によれば、タービンエンジン(または包括的にタービンエンジンの回転部分)のタービンロータの減速方法が提供され、タービンロータ(または回転部分)には少なくとも1つの電気モータが結合されており、少なくとも1つの電気モータによってタービンロータ(又は回転部分)に負のトルクを加えるように、制動システムは少なくとも1つの電気モータと結合されており(すなわち、電気モータは制動システムにより制御される)、該方法は、失火後、制動システムは、タービンエンジンにおいて失火後の利用可能な運動エネルギーを少なくとも1つの電気モータを用いて消費することを特徴としている。
【0014】
以下では、回転部分の文脈での記載がタービンロータに関するものである場合、これは全ての回転部分(たとえば、蒸気タービンのロータも)が個別の部分としてまたはタービンロータと接続されて代替的に開示されることを意味している。
【0015】
好ましくは、電気モータは発電機であり、発電機は、好ましくは、タービンエンジンの通常動作中に、高圧ネットワークに電力を供給するために設けられており、制動システムは、発電機によって運動エネルギーを電気エネルギーに変換するために用いられる。多機能設計によって、製造コストを低減し、および、よりコンパクトなタービンエンジンとすることができる。
【0016】
好ましくは、制動システムは、タービンロータの起動回転速度への回転速度上昇のための起動システムに設けられている。この記載において、記載が起動システムに関するものである場合、適切である場合には常に、より一般的な意味における制動システムにも関連しうる。
【0017】
したがって、好ましくは、高圧ネットワークに電力を供給するために設けられた発電機がタービンロータに結合されており、ここで、起動システムはジェネレータとして(ロータに負のトルクを与えるために)、または、起動装置として(タービンロータに正トルクを与えるために)発電機を用いるために、起動システムは発電機に結合されており、失火後の停止スケジュールにおいて、起動システムは、タービンエンジンで利用可能な運動エネルギーを発電機によって消費するために用いることができ、起動システムは失火後のタービンエンジンで利用可能な運動エネルギーを発電機によって電気(制動)エネルギーに変換するために用いられる。
【0018】
本発明にかかる方法は、概して、特にガスタービンの動作の場合に、発電機が系統に接続されていないとき、すなわち、発電機ブレーカが開かれているときには常に、軸トレーンの減速のための起動システムを用いることである。
【0019】
典型的なタービンエンジンは、停止の際の軸トレーン(またはタービンロータ)の減速のためのサイリスタ起動装置(static starting device)(すなわち起動システム)の使用を有利に用いることができるものであるが、このタービンエンジンはたとえば約50〜約300メガワットの電力定格の大型の産業用ガスタービンである。しかし、任意の同様のガスタービンエンジンおよびその使用が、一般的な形で、本発明にかかる動作から有用でありえることが予測される。
【0020】
タービンエンジンの運動エネルギーをいうとき、これは、タービン(すなわち、タービンロータ、または、多軸タービンの場合には複数のタービンロータ)のすべての回転部分、たとえば回転軸の運動エネルギーを意味し、ある場合には、各発電機のロータおよび/または蒸気タービンロータの回転エネルギーが含まれる。
【0021】
制動システムとして使用されうる起動システム、あるいはサイリスタ起動装置は、一方で、一般的に知られているやり方での発電機の動作の逆転による起動回転速度へのタービンの回転速度上昇の加速のために、慣例的に用いられる。したがって、動作逆転された発電機は、タービンロータを駆動するモータとして機能する。これは、ロータが速度を上げる際に、ロータへの力行トルクを加えるためである。換言すれば、逆転モードの発電機はロータに正トルク、すなわち、タービンにとって特定的な好ましい方法で回転速度を上げるためにロータを加速するトルクを与える。
【0022】
他方で、起動システムは、発電機によるロータへの負のトルクまたは制動トルクを与えることによる回生制動のために用いられる。この制動トルクは、一般的にタービンロータの減速割合を上昇させる。しかし、回生制動は、タービンロータ速度が所望の場合にのみ好ましく有効であるべきである。したがって、回生制動は、たとえば補助バスバーに生じる大きな電力動揺を避けるため、たとえば回転速度上昇中は好ましくは遮られる(下記参照)。
【0023】
回生制動の間、起動システムは、発電機によるタービンモータへの所定の負のトルクまたは力を与えることができる。ここで、負のトルクは、好ましくは、タービンロータの回転速度に依存して与えられ、すなわち、負のトルクは、特定のタービンエンジンおよび起動システムに特定的な所定のパターンに従って減速プロセス時に変化する。
【0024】
運動エネルギーの損失が補償されなければ、負のトルクは、当然に空転中のタービンロータの減速をもたらす。負の(制動)トルクは、たとえば、正の(力行)トルクの70%〜90%以下である。タービンエンジンの内蔵式発電機を用いることが有利であるが、しかし、追加の電気モータが、ロータの制動のために、すなわち減速のために設けられても良い。
【0025】
好ましくは、制動システムおよび/または起動システムまたはサイリスタ起動システムは、4象限動作(four-quadrant operation)で動作し、この際、機械がタービン内でゼロ速度であった後の軸の負の回転が一般的に避けるべきであるとき、2つの象限(1つは力行象限、1つは制動象限)が用いられる。力行象限は、回転速度が増大される、回転速度プロットに対するトルクにおける象限として理解されるべきである。制動象限では、回転速度が低減される。
【0026】
上述のように、空転中のタービンロータは、複数の影響によって、比較的低い割合で減速し、しかし、起動(または制動)システム(たとえば、発電機により加えられる、大型ガスタービンのための約1〜10メガワットの制動力を有する起動システム)により与えられる付加的な制動力を用いて、タービンの軸回転の減速割合を大きく高めることができ、これは、事実上、失火時の回転速度から静止への減速時間を大きな係数で低減させる。この係数は、アルストム社のGT13E2のような典型的な産業用ガスタービンの場合には約3倍のオーダである(回生制動の無い約30分の減速時間から回生制動による約10分の減速時間へ。下記参照)。
【0027】
好ましくは、起動システムはすでに一般に用いられている(または既存の装置にすでに内蔵されている)システムである。点火速度(ignition speed)または起動回転速度への回転部分の回転速度上昇のためにサイリスタ起動装置を用いることが知られており、起動装置は、切り離されるか、または、タービンエンジンの通常動作中に発電機により生成される電力から、補助電力を中圧ネットワークに供給するために用いられる。
【0028】
したがって、中圧の系統は、たとえば、潤滑油ポンプ、エンクロージャ換気などのタービンエンジンの補助装置の補助サービスのための電力の需要を満たしうる。
【0029】
タービンエンジンの回転部分、たとえばタービンおよび蒸気タービンのタービンロータの減速をさらに最適化するため、もしあれば、タービンロータに加えられる負のトルクはタービンロータの減速中に、以下の:タービンロータの回転速度、タービンエンジンに接続されたまたはこれに設けられた要素または要素群への振動負荷、制動システムの状態(特に、その温度)、電気モータの状態、または、発電機に接続されたネットワーク(たとえば高圧また中圧の系統)の状態からなる群から選択される少なくとも1つの主要パラメタに基づいて変更される。
【0030】
勿論、制動システムにより回転部分に与えられる制動トルクを変えるため、複数の主要パラメタを用いても良い。1つの例は、振動負荷が高い間に(たとえば、タービンエンジンに接続されたまたは設けられた要素または要素群の振動共振の発生中)、制動システムは、ピーク負荷以下で(すなわち最大負のトルクを与えつつ)動作しうるが、しかし、制動システムがピーク負荷動作に起因する深刻な過熱損傷を受けるリスクがある場合には、負のトルクは、強い振動にもかかわらず当然低減されることとなる。したがって、この場合、たとえば、第1の主要パラメタは振動負荷であり、第2は制動システムの実際の状態(たとえば温度)である。たとえば振動負荷が回転部分の回転速度に直接関係している場合、代替的な第1の主要パラメタはこの回転速度である(さらなる説明については下記参照)。当業者には特定のタービンエンジン設計に依存した種々の主要パラメタを用いて解決策を計画し、作動させることがわかる。
【0031】
回転速度上昇および/または回転速度減少中、タービンエンジンに設けられたまたは接続された回転部分の回転速度が単一要素(たとえばタービンロータ)または要素群の振動共振または共振帯域を経験する際に、高まる振動負荷によってタービンエンジンが損傷するという一般に知られた問題がある。以下では、「共振」の語は、各要素または要素群のねじり振動または曲げ振動として読むことができる。この現象は、ある場合には、たとえば、回転速度が変化する際の特定の時間にわたってエンジン全体が振動を開始するときに、オペレータに聞こえるものである。要素または要素群の共振または共振帯域(または回転速度に対する振動振幅の対応する分布)は、たとえば、オペレータには経験的に知られているか、および/または、有限要素ソフトウェアを用いて計算されており、キャンベル線図として図表で可視化されている。これらの共振は、当然、ロータの回転速度に依存して、全回転速度範囲内(すなわち、失火時の回転速度からゼロ速度までの回転速度範囲)で生じる。振動共振または共振帯域は、本明細書中では、限られた速度範囲(共振速度範囲)にわたって生じる共振として理解されるべきである。たとえば全速度範囲内で生じるいくつかの共振に起因した、タービンエンジンの全速度範囲内のいくつかの明確な共振速度範囲が存在する。振動共振は、タービンエンジン1の単一の要素(たとえば、タービンロータまたはステータ、軸受、…)に関連して生じるか、または、タービンエンジンに接続された単一の要素(たとえば、タービンケーシング、制御ユニット、…)、あるいは、振動共振はこのような要素群に関連して生じうる。このような単一の要素または要素群に関して、いくつかの異なる振動共振が全速度範囲内で生じうる。全体の共振スペクトルは、タービンエンジンおよびこれに接続された部分に依存する。
【0032】
たとえばタービンロータの回転速度が主要パラメタとして用いられる。たとえば少なくとも1つの臨界回転速度範囲が、失火後のタービンロータの全回転速度範囲内に設けられており、当該少なくとも1つの臨界回転速度範囲内で、(増大した)振動負荷が、好ましくは、タービンエンジンに接続されたまたは設けられた要素または要素群の共振周波数の励起によって生じる。タービンロータの回転速度が臨界回転速度範囲内にある(かつ、制動システムがパフォーマンスを向上させる状態にある)場合に、たとえば、制動システムを用いて、タービンロータに加えられる負のトルクを第1のレベルから第2のレベルに増大させる(すなわち、減速割合を増大させるように)。(負荷の)第1のレベルで動作される場合、たとえば制動システムはそのピーク負荷以下で動作する。(負荷の)第1のレベルよりも高い(負荷の)第2のレベルで動作する場合、たとえば制動システムは第1のレベルの動作よりも高い負荷で動作する。負荷の第2のレベルでの制動システムの負荷は、好ましくは、制動システムのピーク負荷であってよい。
【0033】
好ましくは、下限と上限との間で定められる臨界回転速度範囲は、複数の共振速度範囲のうちの1つに含まれるか、または、これに重なっている。臨界回転速度範囲内で、タービンエンジンの要素または要素群の固有のまたは共振周波数の励起に起因して、不所望の振動負荷が生じる。
【0034】
タービンロータの全回転速度範囲内には、複数の臨界回転速度範囲が設けられていてよく、および/または、臨界回転速度範囲におけるタービンロータの減速中に少なくとも一時的に、負のトルクがタービンロータに加えられて制動システムがピーク負荷動作で用いられ、この際、ピーク負荷動作の後でかつ、好ましくは臨界回転速度範囲ではない回転速度範囲における減速中に、(応力緩和または回復のために)制動システムがそのピーク負荷動作以下の負荷動作で用いられる。
【0035】
全速度範囲内に複数の臨界回転速度範囲が設けられている場合、これらはたとえば互いに少なくとも一部重なるように、または、互いに分かれているように選択される。
【0036】
回転速度に対する振動振幅すなわち共振帯域(または略して共振)は、ガウス分布で近似できる。したがって、臨界回転速度の上限は、振動振幅が最大振動振幅のたとえば約5%〜20%、好ましくは約10%である回転速度に設定され、最大振動振幅は、臨界回転速度の上限よりも低い回転速度で生じる。臨界回転速度の下限は、振動振幅がたとえば最大振動振幅の約5%〜20%、好ましくは約10%である回転速度であり、最大振動振幅は、臨界回転速度の下限よりも高い回転速度で生じる。
【0037】
制動システムをできるだけ長期にピーク負荷で、好ましくは、全共振速度範囲内で動作させることが好ましく、これはこのときに減速割合が最大化されるからである。しかし、制動システムは、たとえば、ピーク負荷動作が減速プロセスにおいて一時的にのみ可能であるように設計される。これによって、一般的に、制動システムをより低廉でより小型に設計できる。すなわち、制動システムのピーク負荷動作は、恒久動作に適していない場合があり(起動システムの過負荷のリスク)、負荷を大きく低減する必要の無い冷却期間を絶対に必要とする。換言すれば、たとえば、制動システムまたは制動システムとして動作する起動システムは、過熱した装置からの実際の熱移動および他のパラメタに依存して、減速時間中は限られた時間だけピーク負荷で動作し、その後、失火後の全減速時間よりもより短い時間で回復しなければならない。この短時間ピーク負荷(part-time peak-loading)動作は、能動的制動に使用可能な限られた能力を有する内蔵式起動システムとして必要な場合がある。
【0038】
重ならない複数の臨界回転速度範囲を各共振速度範囲内に設定することができる。これらの重ならない臨界回転速度範囲の中間で、起動システムは、起こりうる過負荷損傷を受けないように、応力緩和できる。共振速度範囲が十分に狭い場合、全体範囲はピーク負荷動作に含まれうる。エンジンが非臨界速度範囲内で回転する間に起動システムが応力緩和できるので、これは有用である。
【0039】
当業者には、特定のタービンエンジンの共振速度範囲を識別することがわかり、さらに、選択した起動システムおよび実際のタービンエンジンのパフォーマンスに依存してこれらの共振速度範囲内に臨界回転速度範囲を設定することもわかる。
【0040】
理想的には、起動システムは回転速度減少の間中、ピーク負荷で動作する(最小の振動、最小の回転速度減少時間)。技術的または経済的あるいは他の理由から、これが不可能な場合、起動システムは、エンジンへの振動負荷を効率的に最少化しつつ起動システムの最高のパフォーマンスを用いることができるように、好ましくは共振速度範囲内で、回転速度減少時間の一部においてピーク負荷で動作する。全共振速度範囲に臨界回転速度範囲がある必要は無いが、起動システムによる能動的回生制動によって回転速度減少時間を短縮しつつ、タービンエンジンへの全振動負荷を低下させるよう、共振速度範囲内に最大の減速を有するようにするのがよい。
【0041】
起動システムは、タービンロータの減速中にこのように用いられ、これにより、タービンロータの回転速度が臨界回転速度の上限以下であるとき、タービンロータに加えられる負のトルクは、好ましくは起動システムがピーク負荷に達するまで増大し、これにより、臨界回転速度範囲、すなわち、共振速度範囲内において減速割合は増大される。この際、タービンロータの回転速度が、好ましくはこれが経過する臨界回転速度範囲の下限以下まで低減されたとき、負のトルクが再度低減される(起動システムを応力緩和させるため)。この過程によって、タービンエンジンへの振動による全体の負荷が低減される。臨界回転速度範囲の幅およびその全速度範囲内での位置は、実際のタービンエンジンの設計および使用に依存する。モデル計算および/または経験値から、一般的なタービンエンジンの典型的な共振速度範囲は既知であり、臨界速度範囲は当業者によって設定される。
【0042】
好ましくは、複数の重ならない臨界回転速度範囲がタービンロータの全回転速度範囲内に設けられ、および/または、臨界回転速度範囲を経過するタービンロータの減速中に少なくとも一時的に、起動システムはピーク負荷動作で用いられ、この際、このピーク負荷動作の後で、好ましくは臨界回転速度範囲ではない回転速度範囲を経過する減速中に、起動システムは、起動システムの過負荷の損傷を防ぐために、そのピーク負荷以下の負荷で用いられる。
【0043】
実際のタービンエンジンに依存して、それは回転部分において利用可能な十分な運動エネルギーであり、これにより、発電機出力が供給状態の高圧ネットワークの要件を満たすとき(たとえば、タービンロータの回転速度が第1の回転速度、典型的には2000rpm超の回転速度より大きいとき)、発電機により生成される電気(制動)エネルギーが高圧ネットワークに供給される。
【0044】
発電機出力が高圧ネットワークの要件を満たさないとき(たとえば、タービンロータの回転速度がこの第1の回転速度以下に降下した後)、たとえば、高圧ブレーカが高圧系統から発電機を切り果たすため開かれる。停止スケジュール中のこの時点では、(回転部分、たとえば、タービンロータ、発電機ロータ、蒸気タービンロータ、または他の部分の)タービンエネルギーに保存された運動エネルギーが未だ存在し、すなわち、能動的制動による発電機出力は他の目的にもさらに用いることができる。
【0045】
発電機出力が供給状態の(in-feed)中圧ネットワークの要件を満たしているときに(たとえば、少なくとも、ロータが第1の回転速度よりも低い、典型的には1500rpm超の第2の回転速度に達するまで)、電気エネルギーは概して中圧ネットワークに供給される。
【0046】
回生制動電力が高圧系統にも供給されている間、または、発電機出力が供給状態の高圧系統の要件を満たさなくなった後、たとえば、タービンロータの回転速度が第1の回転速度以下となった後、回生制動中に生成されたエネルギーのいくらかは中圧系統に供給されうる。
【0047】
概して、本発明の有利な態様では、失火後にタービンエンジンに保存された運動エネルギーは少なくとも一部回収可能であり、これは、エンジンの全体的パフォーマンスを向上させ、様々な環境的および機械的設計に関連する利点がある。
【0048】
自力回転速度減少中(すなわち系統からの供給状態が利用できない)、タービンエンジンはバッテリにより供給された補助電力を消費する。これらのバッテリは発電所に大きなコスト的影響がある。潤滑油ポンプ、エンクロージャ換気、冷却水ポンプ、露点ヒータ、トレースヒータなどからなる群から選択されるタービンエンジンの補助電力消費体の電力需要を満たさなければならない。
【0049】
電気制動エネルギーの少なくとも一部が消費されるように、好ましくは中圧ネットワークを介して、タービンエンジンの外部負荷バンク(またはそのいくつか)に、バッテリ要素に、および/または、補助電力消費体に電気制動エネルギーが供給されてよく、この電気制動エネルギーは、好ましくは、バッテリ要素を再充電することによって、および/または、少なくとも1つの補助電力消費体による補助電力需要を少なくとも一部満たすことによって、消費されてよい。
【0050】
バッテリ要素は典型的には直列接続された鉛蓄電池である。負荷バンクは典型的には電力を熱として発散する電気抵抗である。
【0051】
サイリスタ起動装置または起動システムは、自力安全惰力ダウン(black safe coast down)中、補助電力消費(潤滑油ポンプ、エンクロージャ換気など)を少なくとも一部供給するために用いられてもよい。これによって、非常用電源またはバッテリシステムの小型化が可能となる。
【0052】
発電機出力が中圧系統の要件を満たすとき、電気制動エネルギーは、外部負荷バンク、バッテリ要素、または、少なくとも1つの補助電力消費体に供給されてもよい。
【0053】
最終的に、本発明によれば、たとえば、減速中に第2の回転速度以下に回転速度が降下したとき、発電機出力はシステム特性値以下に低下する場合があり、これは中圧ネットワークからの発電機の切り離しをも必要とする。回転速度減少スケジュール中のこの時点から、ロータの静止への減速中、負荷バンクはさらに発電機出力を消費しうる。当業者はそれに相応するタービンエンジンに関するしきい値を決定できることがわかる。本発明の方法は一軸形タービンロータに適しており、ここで、ガスタービン、および、ある場合には、対応する蒸気タービンの、発電機ロータの、ならびに/あるいは、タービンロータからの、タービンエンジンにおいて利用可能な運動エネルギーが消費される。
【0054】
本方法は二軸形タービンエンジンにも適しており、両方のタービンモータからの、および、ある場合には、対応する蒸気タービンのエネルギーの、タービンエンジンで利用可能なエネルギーが、本発明によれば、消費される。
【0055】
本方法は、タービンエンジンの起動に失敗した後に、タービンロータを点火速度に減速し、タービンエンジンをその後できる限り速やかに再起動すべき場合に特に適している。
【0056】
本発明の方法を、産業用ガスタービンエンジンまたは別のタービンエンジンの停止のために、あるいは、タービンロータを起動回転速度まで減速するために用いることは、上述の多くの問題および/または課題が解決または緩和されるため、有利である。より詳細には、本発明の方法は、以下の少なくとも1つを可能とする。
【0057】
(i)空転するロータに保存された運動エネルギーは能動的に、より高速に消費可能であるため、タービンエンジンはより早く回転速度が減少される。典型的な産業用ガスタービン(たとえば、約150〜170メガワットの電力定格のアルストム社のGT13E2タービン)では、約0.5メガワット/時の運動エネルギーが利用可能であると推定される。対応するタービンロータは、静止まで減速するのにおおよそ30分を要する場合がある。しかし、ロータが能動的に、本発明によって、たとえば約4メガワットの電力定格の起動システムによって減速される場合、その約90%が典型的には制動目的で利用可能であり、ロータはわずか1/3の時間、すなわち、約10分で減速される。したがって、停止過程はより高速であり、タービンエンジンはより高速な(温態(hot))再起動が可能である。タービンのアベイラビリティは、失火からより短時間で次回の起動の準備ができることにより、改善される(通常はエンジン速度に基づいた開放基準(release criteria)が存在する)。これは、頻繁に起動するタービンエンジン(いわゆるピーカ(peaker))および一般に任意の中間負荷動作の市場(intermediate load operation market)にとって特に重要である。本発明は全般的に効率を改善し、したがって、経済的および環境的視点で有益である。
【0058】
(ii)翼配列または他の部分の共振帯域で、すなわち、エンジンタービンの要素または要素群、たとえば、タービンもしくは発電機の翼または他の部分の固有周波数または共振周波数で、エンジンが動作する期間が短くなり、すなわち、回転速度減少中のこれらの部分の負荷サイクル数が減少される。これにより、複数回の停止後の起こりうる損傷は回避または低減され、これはまた経済的にも技術的にも有利である。
【0059】
(iii)本発明によれば、構造的エンジン部分の冷却が低減され、これにより、回転速度減少中の熱損失が低減され、エンジンは、停止後より長期間に温かく、これは、再起動中のより低い熱機械的応力、および、より信頼性の高い(温態)再起動過程を生じさせる。
【0060】
(iv)本発明によって、上述の、タービンエンジンの個々の部分の異なる収縮、および、静止部分と非静止部分との間の起こりうるブロッキングの問題は、熱遷移がより少なくなるので、低減される。すなわち、エンジンの全体のパフォーマンスが向上される。さらに、本発明の方法によれば、回転速度減少中の静翼キャリアにおける摩擦の低減が実現され、これから、再調整コストの低減およびロータのブロッキングの結果のリスクの低減が可能となる。
【0061】
さらに、系統(または高圧ネットワーク)への、中圧ネットワークへの、負荷バンクへの、バッテリ要素への、および/または、補助電力消費体への、失火後の減速中の電力の供給は、エンジンの全体のパフォーマンスをさらに向上させる。
【0062】
本発明によれば、タービンエンジンは起動に失敗した後に再起動状態へとより早く戻ることができる。起動の信頼性が向上される。
【0063】
一般的に、既存のタービンエンジンもこの回生制動オプションによってアップグレードされ、特に、サイリスタ起動システムにすでに依存したタービンエンジンがこのGT制御システムによりプログラムされまたは制御されてもよい。
【0064】
起動システムの4象限動作は大型ガスタービンに用いられる典型的システムにおける標準の設計特徴である。製造コストはあまり増加しないと予測される。制御システムへの適用は当業者(GT制御エンジニア)には自明である。
【0065】
本発明の他の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0066】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して以下でより詳細に記載されているが、図面は、本発明の現在好ましい実施形態を示すためのものであり、これを限定するものではない。