【氏名又は名称】ヘレーウス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはマイクロエレクトロニクスにおけるボンディングのためのワイヤであって、a. 表面を有する銅コアと、b. 前記銅コアの表面上に重ね合わせられた被覆層とを含む前記ワイヤにおいて、前記被覆層がアルミニウムを含み、被覆層の厚さ対銅コアの直径の比が0.05〜0.2の範囲内であり、銅コアの直径の標準偏差対銅コアの直径の比が0.005〜0.05の範囲内であり、且つ、被覆層の厚さの標準偏差対被覆層の厚さの比が0.05〜0.4の範囲内であり、前記ワイヤは100μm〜600μmの範囲の直径を有する、前記ワイヤに関する。本発明はさらに、ワイヤの製造方法、前記方法によって得られるワイヤ、少なくとも2つの構成要素と少なくとも上述のワイヤとを含む電気装置、前記電気装置を含む推進装置(propelled device)、および2つの構成要素を上述のワイヤを通じてウェッジボンディングによって接続する方法に関する。
【0002】
ボンディングワイヤは、半導体素子の製造において、半導体素子の製造の間に集積回路およびプリント回路板を電気的に相互接続するために使用される。さらには、ボンディングワイヤは、パワーエレクトロニクス用途において、トランジスタ、ダイオードおよびその種のものを、パッドまたはハウジングのピンと電気的に接続するために使用される。当初は、ボンディングワイヤは金から製造されていたが、最近はより安価な材料、例えば銅またはアルミニウムが使用されている。銅ワイヤは非常に良好な導電性および熱伝導性をもたらす一方で、銅ワイヤのウェッジボンディングはアルミニウム製のワイヤと比べて問題を有する。さらには、銅ワイヤは、ワイヤの酸化の影響を受けやすい。
【0003】
ワイヤの形状に関しては、円形の断面のボンディングワイヤ、および多かれ少なかれ角形の断面を有するボンディングリボンが最も一般的である。両方の種類のワイヤの形状は、それらを特定の用途のために有用にするという利点を有する。従って、両方の種類の形状が市場におけるシェアを有する。例えば、ボンディングリボンは、特定の断面については、より大きな接触面積を有する。しかしながら、リボンの曲がりは限定的であり、且つ、ボンディングに際して、リボンと、それに結合される構成要素との間の受け容れ可能な電気的接触を達成するようにリボンの配向を観察しなければならない。ボンディングワイヤについては、より柔軟性のある曲がりを有する。しかしながら、ボンディングは、ボンディング工程におけるはんだ付けまたはワイヤのより大きな変形を必要とし、そのことは、結合先であるボンディングパッドおよび構成要素の下方の電気的な構造を害するか、もしくは破壊すらしかねない。
【0004】
いくつかの最近の開発は、コアおよびシェル、例えば被覆層を有するボンディングワイヤに関している。コア材料として、銅または金を、高い導電性に基づき選択できる。被覆層に関して、アルミニウムがより一般的な選択肢の1つである。これらのコアシェルボンディングワイヤは、銅ワイヤの利点のいくつかと、アルミニウムワイヤの利点のいくつかを兼ね備える。最近の業績は、かかるアルミニウム被覆銅ワイヤのための標準的なウェッジボンディング工程の使用を可能にしている。それにもかかわらず、ボンディングワイヤ技術を、ボンディングワイヤ自体およびボンディング工程に関してさらに改善することについては継続的なニーズがある。
【0005】
従って、本発明の課題は、改善されたワイヤを提供することである。
【0006】
従って、本発明の他の課題は、良好な加工特性を有し、且つ相互接続に際して特別な要請がない、つまり、費用を節約するワイヤを提供することである。
【0007】
また、本発明の課題は、優れた導電性および熱伝導性を有するワイヤを提供することである。
【0008】
本発明のさらなる課題は、改善された信頼性を示すワイヤを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる課題は、優れたボンディング性を示すワイヤを提供することである。
【0010】
本発明の他の課題は、腐食および/または酸化に対する耐性が改善されたワイヤを提供することである。
【0011】
他の課題は、標準的なチップおよびボンディング技術を用いて使用するための新規のワイヤであって、従来のワイヤよりも延長された寿命が確保される前記新規ワイヤを提供することである。
【0012】
さらなる課題は、特にパワーエレクトロニクスのための改善された電気装置であって、電気的な構成要素が標準的なアルミニウムワイヤによって相互接続されている従来の装置と比較して延長された寿命を有する前記電気装置を提供することである。
【0013】
他の課題は、特にパワーエレクトロニクスのための改善された電気装置であって、ボンディングがアルミニウムワイヤに基づく従来の素子よりも高い電流で稼働する前記電気装置を提供することである。
【0014】
本発明の他の課題は、上述の従来の装置と同一の寸法および類似したチップ設計を有する、改善された電気装置を提供することである。他の課題は、元々は従来の電気装置の製造のために設計された生産ラインにおいて、前記の改善された電気装置を製造するための手段を提供することである。これは、改善された技術を実施するためのコストを最小化し得る。
【0015】
さらなる課題は、意図されていない内部の電気的橋絡の可能性が、従来の電気装置と比較して低減された、改善された電気装置を提供することである。さらには、特に、電気装置における意図されていない内部の橋絡に関する防止策を単純化、さらには省略すらできるようにすることが課題である。
【0016】
意外なことに、本発明のワイヤは、上述の課題の少なくとも1つを解決することが判明した。さらには、それらのワイヤを製造するための方法は、ワイヤの製造の問題の少なくとも1つを解消することが判明した。さらには、本発明のワイヤを含む、半導体を用いた装置は、本発明によるワイヤと他の電気的構成要素、例えばプリント回路板、パッド/ピン等との間の界面でより信頼性が高いことが判明した。
【0017】
特許請求の範囲の主題は、上記課題の少なくとも1つを解決するために寄与し、その際、特許請求の範囲の従属の下位請求項は本発明の好ましい態様を示し、その主題は同様に、上述の課題の少なくとも1つを解決するために寄与する。
【0018】
本発明の第一の態様は、
a. 表面(15)を有する銅コア(2)、および
b. 前記銅コア(2)の表面(15)上に重ね合わせられた被覆層(3)
を含むワイヤであって、
被覆層(3)がアルミニウムを含み、
被覆層(3)の厚さ対銅コア(2)の直径の比が0.05〜0.2、好ましくは0.05〜0.15、または0.1〜0.15の範囲内であり、
銅コア(2)の直径の標準偏差対銅コア(2)の直径の比が0.1未満、好ましくは0.05未満、または0.03未満、または0.03〜0.001であり、
被覆層(3)の厚さの標準偏差対被覆層(3)の厚さの比が0.05〜0.4、好ましくは0.1〜0.3の範囲内であり、
前記ワイヤは100μm〜600μmの範囲、好ましくは150μm〜550μmまたは230μm〜500μmの範囲の直径を有する、
前記ワイヤである。
【0019】
該ワイヤは好ましくはマイクロエレクトロニクスにおけるボンディングのためのボンディングワイヤである。該ワイヤは好ましくは一体型の物体である。上述の断面図および直径についての基準は、ワイヤの長手方向の延び(longitudinal extension)の少なくとも80%、好ましくは90%内で満たされなければならない。
【0020】
本願に関する用語「断面図」とは、切断面がワイヤの長手方向の延びに対して垂直であるワイヤの切断図に関する。前記断面図は、ワイヤの長手方向の延びにおける任意の位置であってよい。
【0021】
ワイヤの断面を通じた「最長のパス」とは、断面図の面内においてワイヤの断面を通じて存在し得る最長の弦のことである。
【0022】
ワイヤの断面を通じた「最短のパス」とは、上記で定義された断面図の面内で最長のパスに対して垂直な最長の弦のことである。
【0023】
ワイヤが完全な円形の断面を有している場合、最長のパスと最短のパスとは区別がつかず、且つ、同一の値を共有する。
【0024】
「直径」との用語は、全ての面がワイヤの長手方向の延びに対して垂直である任意の面および任意の方向における全ての幾何学的直径の算術平均である。
【0025】
本発明に関して、「重ね合わせられた」との用語は、第一の要素、例えば銅コアの、第二の要素、例えば被覆層に対する相対的な位置を記載するために使用される。場合によっては、さらなる要素、例えば中間層を第一の要素と第二の要素との間に配置してもよい。好ましくは、第二の要素は、第一の要素の表面上の少なくとも部分的、例えば、第一の要素の全表面に対して少なくとも30%、50%、70%または少なくとも90%、重ね合わせられている。
【0026】
本発明に関する「厚さ」との用語は、銅コアの長軸に対して垂直方向における層のサイズを定義するために使用され、前記層は少なくとも部分的に銅コア表面上に重ね合わせられている。
【0027】
本発明に関する「中間層」との用語は、銅コアと被覆層との間のワイヤの領域である。この領域においては、コアにおける材料も被覆層における材料も、一緒になって、例えば少なくとも1つの金属間化合物相の形態で存在する。
【0028】
本発明に関する「金属間化合物相」との用語は、2つまたはそれより多くの金属の相を定義するために使用され、ここで、異なる元素は構造内の異なるサイトに配列され、前記サイトは別途の局所的な環境を有し、且つ多くの場合、よく定義され固定された化学量論組成比を有する。このことは、異なる元素がランダムに分布されている合金に関しては異なる。
【0029】
上述の長さの寸法の全て、例えば厚さ、直径、最長のパス、最短のパスは、上記で定義された断面図において測定される。
【0030】
被覆されていない銅ワイヤの銅コアの「表面」は、ワイヤ/空気の界面である。
【0031】
被覆された、場合によりアニールされたワイヤの銅コアの「表面」は、その中心部周辺の銅コアの事実上の境界であると定義され、前記の事実上の境界とは、Cuの濃度がワイヤ中心部でのCu濃度から9.9質量%より多くずれるところであり、前記中心部は、上記で定義された最短のパスと最長のパスとの交差部によって定義される。
【0032】
好ましくは本発明のワイヤは、ワイヤの断面図において実質的に円形の領域を有する。
【0033】
本発明による銅コアは、純度が少なくとも99.9%のCuの元素銅(Cu)を、各々、銅コアの総質量に対して少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%含む。好ましくは、銅コアの純度は少なくとも99.99%、または99.999%、または99.9999%である。
【0034】
アルミニウムを含む被覆層は、好ましくは、アルミニウム、アルミニウム合金またはその2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
好ましいアルミニウムは純度が少なくとも99.9%のAlの元素アルミニウム(Al)であり、より好ましくは、アルミニウムの純度は少なくとも99.99%のAlまたは99.999%のAlである。通常、かかる被覆層が、アルミニウムと空気との界面でアルミニウム酸化物の薄層を形成する。
【0036】
好ましくは、被覆層は、純度99.9%、より好ましくは純度99.99%のアルミニウムを、各々被覆層の総質量に対して少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%含む。
【0037】
アルミニウム合金の好ましい例は、マグネシウムとの合金(AlMg)、およびアルミニウムと、合金の総量に対して1質量%のケイ素との合金(AlSi1)である。
【0038】
本発明の他の態様によれば、銅コアの直径は、各々、ワイヤの断面図内で測定して70〜500μm、好ましくは150〜400μm、または200〜300μm、または230〜250μmの範囲内である。
【0039】
本発明の他の態様によれば、被覆層の厚さは、各々、ワイヤの断面図内で測定して10〜60μm、好ましくは20〜50μm、好ましくは20〜40μm、または25〜35μmの範囲内である。被覆層の厚さについての上述の基準は、ワイヤの長手方向の延びの少なくとも80%、好ましくは90%において満たされなければならない。
【0040】
本発明の他の態様によれば、中間層がコアと被覆層との間に配置される。中間層は好ましくは、コアの材料と被覆層の材料とを含む少なくとも1つの金属間化合物相を含む。中間層は、含まれる材料の各々について濃度勾配を示す。金属間化合物相は、両方の材料が金属である場合に形成される。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、中間層は、コアと被覆層との間に配置され、その際、中間層は銅コアに隣接し且つ被覆層に隣接する。
【0042】
ワイヤの中間層は銅コアと被覆層との間のワイヤの領域であって、中間層の総質量に対して、Cu濃度が、銅コアにおけるCu濃度(銅コアの総質量に対する)から、5質量%より多くずれ、且つ、中間層の総質量に対して、Al濃度が、被覆層におけるAl濃度(被覆層の総質量に対する)から、5質量%より多くずれる領域であると定義される。
【0043】
上述の寸法、即ち、被覆層の厚さ、中間層の厚さ、および銅コアの直径を、ワイヤの断面図において、例えば光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡を使用して測定できる。光学顕微鏡において、銅コアは銅赤色をしており、且つ、被覆層は銀白色であり、且つ、中間層は灰色である。上述された銅およびアルミニウムの濃度は、一体型SEM/EDX(走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光)を使用して測定できる。
【0044】
本発明の他の態様によれば、ワイヤの任意の断面図において中間層の面積の占める割合は、各々ワイヤの断面の総面積に対して0.4〜15%、好ましくは0.8〜8.5%の範囲内である。
【0045】
本発明の他の態様によれば、中間層の厚さは、0.1〜5μm、好ましくは0.5〜3μmの範囲内である。中間層の厚さについての上述の基準は、ワイヤの長手方向の延びの少なくとも80%、好ましくは90%内で満たされなければならない。場合により、中間層の不完全性、例えば孔に起因して、中間層の厚さのずれが生じることがある。
【0046】
本発明の他の態様によれば、中間層の厚さの標準偏差は、0.1〜5μm、好ましくは0.4〜4μm、または0.5〜3μmの範囲内である。
【0047】
本発明の他の態様によれば、本発明によるワイヤについての散逸仕事は、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについての散逸仕事よりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍高い。好ましくは、20000〜120000試験サイクルの範囲での1試験サイクルにおいて、本発明によるワイヤについての散逸仕事は、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについての散逸仕事よりも、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍高い。より好ましくは、20000〜120000試験サイクルの範囲での全ての試験サイクルにおいて、本発明によるワイヤについての散逸仕事は、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについての散逸仕事よりも、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍高い。しかしながら、いくつかの場合においては、本発明によるワイヤについての散逸仕事は、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤの散逸仕事の10倍以下である。このリファレンス用ワイヤは、50ppmのニッケルでドープされた純度99.999%のアルミニウム製であるアルミニウムワイヤであり(Heraeus/ドイツによって「AL−H11 CR」として販売)、且つ、本発明のワイヤと同じ断面積を有する。
【0048】
本発明の他の態様によれば、本発明によるワイヤについての最大歪みは、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについての最大歪みよりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍高い。好ましくは、20000〜120000試験サイクルの範囲での1試験サイクルにおいて、本発明によるワイヤについての最大歪みは、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤによる最大歪みよりも、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍高い。より好ましくは、20000〜120000試験サイクルの範囲での全ての試験サイクルにおいて、本発明によるワイヤについての最大歪みは、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについての最大歪みよりも、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍高い。しかしながら、いくつかの場合においては、本発明によるワイヤについての最大歪みは、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤの最大歪みの10倍以下である。このリファレンス用ワイヤは、50ppmのニッケルでドープされた純度99.999%のアルミニウム製であるアルミニウムワイヤであり(Heraeus/ドイツによって「AL−H11 CR」として販売)、且つ、本発明のワイヤと同じ断面積を有する。
【0049】
本発明の他の態様によれば、20000〜120000試験サイクルの範囲での1試験サイクルにおいて、本発明によるワイヤについてのパワーサイクリング試験における同一条件下でのサイクル数は、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについてのパワーサイクリング試験よりも、少なくとも3倍、好ましくは少なくとも4倍高い。より好ましくは、20000〜120000試験サイクルの範囲での全ての試験サイクルにおいて、本発明によるワイヤについて、パワーサイクリング試験における同一条件下でのサイクル数は、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについてのパワーサイクリング試験よりも、少なくとも3倍、好ましくは少なくとも4倍高い。しかしながら、いくつかの場合においては、パワーサイクリング試験における同一の条件下でのサイクル数は、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤの散逸仕事の50倍以下である。このリファレンス用ワイヤは、50ppmのニッケルでドープされた純度99.999%のアルミニウム製であるアルミニウムワイヤであり(Heraeus/ドイツによって「AL−H11 CR」として販売)、且つ、本発明のワイヤと同じ断面積を有する。
【0050】
本発明の他の態様によれば、本発明によるワイヤについてのワイヤのワイヤボンドシェアは、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤと少なくとも同等の高さである。この試験は以下に記載されている。このリファレンス用ワイヤは、50ppmのニッケルでドープされた純度99.999%のアルミニウム製であるアルミニウムワイヤであり(Heraeus/ドイツによって「AL−H11 CR」として販売)、且つ、本発明のワイヤと同じ断面積を有する。
【0051】
本発明の他の態様によれば、該ワイヤについてのワイヤのワイヤプルは、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについてよりも、少なくとも10%高く、好ましくは少なくとも20%高い。このリファレンス用ワイヤは、50ppmのニッケルでドープされた純度99.999%のアルミニウム製であるアルミニウムワイヤであり(Heraeus/ドイツによって「AL−H11 CR」として販売)、且つ、本発明のワイヤと同じ断面積を有する。
【0052】
本発明の他の態様によれば、本発明のワイヤは、上述の試験条件、つまり、散逸仕事、最大歪み、パワーサイクリング試験、ワイヤボンドシェアおよびウェッジプルの少なくとも2つ、または全てを満たす。
【0053】
本発明の他の態様は、ワイヤの製造方法であって、少なくとも以下の段階
a. 表面を有する銅コア、および前記銅コアの表面上に重ね合わせられた被覆層(3)を含むワイヤプリフォームを準備する段階であって、
前記被覆層はアルミニウムを含み、
被覆層の厚さ対銅コアの直径の比が、0.05〜2、好ましくは0.05〜0.15、または0.1〜0.15の範囲内であり、
銅コアの直径の標準偏差対銅コアの直径の比が、0.1未満、好ましくは0.05未満、または0.03未満、または0.03〜0.001であり、
被覆層の厚さの標準偏差対被覆層の厚さの比が、0.05〜0.4、好ましくは0.1〜0.3の範囲内であり、
ワイヤプリフォームは0.5〜5mmの範囲の直径を有する、前記段階
b. 前記ワイヤプリフォームを成形する段階、
c. 前記ワイヤプリフォームをアニールし、ワイヤを得る段階であって、
前記ワイヤは100μm〜600μmの範囲内、好ましくは150μm〜550μm、または230μm〜500μmの範囲内の直径を有する、前記段階
を有する、前記製造方法である。
【0054】
段階aにおけるようなワイヤプリフォームを、アルミニウム被覆層を銅ワイヤの表面の少なくとも一部の上に形成することによって得ることができる。好ましくは、アルミニウム層は、各々銅ワイヤの総面積に対して100%、または80〜100%、または60〜80%の銅ワイヤの表面上に形成される。銅表面上、特に銅ワイヤ上にアルミニウム層を形成するための多数の技術が公知である。好ましい技術はめっき、例えば電気めっきおよび無電解めっき、気相からのアルミニウムの堆積、例えばスパッタリング、イオンめっき、真空蒸着および化学気相堆積、および溶融物からのアルミニウムの堆積である。
【0055】
表面粗さを適合させるために、且つ/または銅ワイヤ表面にパターンを付与するために、銅ワイヤの前処理を採用してもよい。銅ワイヤの表面を適合させるための多数の技術が公知である。好ましい技術は、冷間ロール成形、研削および電気化学的研削である。
【0056】
ワイヤプリフォームを成形するための多数の技術が公知である。好ましい技術は、圧延、スエージ加工、ダイドローイングまたはその種のものであり、その中でダイドローイングが特に好ましい。より好ましくは、ワイヤプリフォームは3〜20段階で引き抜かれ、その際、各々の段階において、長さに関して6〜18%のワイヤプリフォームの伸長が行われる。スリップ剤を用いてもよい。適したスリップ剤は沢山あり、且つ、当業者に公知である。
【0057】
ワイヤをアニールするための多数の手順が当該技術分野において公知であり、例えば、ワイヤのアニールを連続的な方法または断続的な方法のいずれでも実施することができる。特別な用途においては、連続的な方法と断続的な方法とを組み合わせてもよい。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、ワイヤプリフォームを140〜400℃、好ましくは160〜350℃、または200〜300℃、または220〜280℃の範囲の温度に加熱し、且つ、その温度を30分〜5時間、好ましくは30分から3時間保持することによって、アニールを実施する。その後、ワイヤプリフォームのアニールによって得られたワイヤを室温に冷却する。冷却を様々な方法で実施することができる。1つの適した方法は、ワイヤを加熱領域から取り出した際に周囲温度で周囲空気にさらすことである。上述の手順によるワイヤの室温(T=20℃)への冷却は、通常、24時間以内で達成できる。例えば冷水およびその種のものに浸漬させることによるワイヤの急冷は回避すべきである。従って、他の態様は、加熱ゾーンから取り出した際のワイヤの冷却が、ワイヤの急冷によって実施されない方法である。
【0059】
本発明の他の態様によれば、アニールは連続的な方法で、より好ましくは管状炉内で実施される。さらにより好ましくは、ワイヤは、ワイヤプリフォームを準備し、且つ成型し、且つアニールする段階から、単独のドローイング機によって引き抜かれる。
【0060】
管状炉内でのアニールの間の引き抜き速度は管状炉の管の長さに依存する。管が長いほど、より速い引き抜き速度でワイヤの部分への特定のエネルギー曝露をもたらすことが可能になる。管状炉の管の好ましい長さは、0.8〜2.5メートル、または1〜2メートル、または1.5〜2.5メートルの範囲内である。
【0061】
炉の管内の温度は、引き抜き速度に合わせることができる、または独立して測定できる。管内の好ましい温度は、150〜600℃、または200〜600℃、または250〜550℃の範囲内である。一般に、温度は、少なくとも1つの成分、または少なくとも2つの成分の混合物がワイヤ中で液化されて存在する温度よりも低くなるように選択される。例えば、部分的に可溶性または不溶性の二成分または他成分系合金をアニールする場合、炉内の温度は合金の共融温度を上回るべきではない。
【0062】
本発明の他の態様によれば、炉内の温度は、ワイヤの少なくとも1つの成分、または少なくとも2つの成分の混合物が液化する温度よりも、少なくとも30℃、または50℃、または80℃低くなるように選択される。
【0063】
本発明の他の態様によれば、アニール速度は、1〜20メートル/分、または1〜16メートル/分、または2〜18メートル/分の範囲内で選択される。
【0064】
本発明の他の態様によれば、管状炉内のアニールを不活性雰囲気または還元性雰囲気中で実施できる。これは、連続的な方法および断続的な方法におけるアニールの両方に当てはまる。多数の不活性雰囲気並びに還元性雰囲気が当該技術分野において公知である。公知の不活性雰囲気の中で、窒素が好ましい。公知の還元性雰囲気の中で、水素が好ましい。さらに、好ましい還元性雰囲気は窒素と水素との混合物である。好ましくは、窒素と水素との混合物は、各々混合物の総体積に対して、90〜98体積%の窒素および10〜2体積%の水素の範囲内であることが好ましい。好ましい混合物の窒素/水素は、各々混合物の総体積に対して93/7、95/5および97/3体積%/体積%である。ワイヤ表面のいくつかの部分が空気の酸素により酸化されやすい場合、例えばワイヤの銅が表面に露出している場合、アニールに際して還元性雰囲気を適用することが特に好ましい
本発明の他の態様によれば、中間層がアニールの間に形成される。
【0065】
本発明の他の態様は、上記で定義された方法によって得られるワイヤである。
【0066】
本発明の他の態様によれば、ワイヤは以下の特徴の少なくとも1つによって特徴付けられる:
a. 本発明によるワイヤについての散逸仕事が、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについての散逸仕事よりも少なくとも2倍高い、
b. 本発明によるワイヤについての一軸サイクル試験における最大歪みが、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについての最大歪みよりも少なくとも2倍高い、
c. 本発明によるワイヤについてのパワーサイクリング試験が、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについてのものよりも少なくとも3倍高い、
d. 本発明によるワイヤのワイヤボンドシェアが、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤと同等の高さである、
e. 本発明によるワイヤのワイヤプルが、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤについてのものよりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%高い、
f. 本発明によるワイヤの導電率が、純粋なAl製のリファレンス用ワイヤの導電率よりも20%〜55%の範囲内で高い。
【0067】
上述の純粋なAl製のリファレンス用ワイヤは、50ppmのニッケルでドープされた純度99.999%のアルミニウム製であるアルミニウムワイヤであり(Heraeus/ドイツによって「AL−H11 CR」として販売)、且つ、本発明のワイヤと同じ断面積を有する。
【0068】
本発明の他の態様は、2つの構成要素および少なくとも1つの上記で定義されたワイヤまたは上述のとおりに製造されたワイヤを含む電気装置である。
【0069】
本発明の他の態様によれば、電気装置内の少なくとも1つのワイヤは、ウェッジボンディングによって、好ましくは超音波ウェッジ・ウェッジボンディングによって電気装置の他の構成要素に接続される。
【0070】
本発明の他の態様によれば、構成要素の少なくとも1つは、基板、IGBT(即ち、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、集積回路、トランジスタ、ダイオード、例えば発光ダイオード、フォトダイオードからなる群から選択される。
【0071】
本発明の他の態様は、上述のワイヤの使用、または上述の方法によって製造されたワイヤの、制御ユニットと制御される素子との間のウェッジ−ウェッジボンディングの相互接続における使用である。
【0072】
本発明の他の態様は、推進装置、好ましくは推進車両、太陽電池または風力タービンであり、前記の推進装置は、少なくとも1つの上述の電気装置を含む。
【0073】
本発明の他の態様は、電気装置の製造方法であって、
a. 少なくとも2つの構成要素を準備する段階、
b. 2つの構成要素を上述のワイヤによって接続する段階であって、前記接続の少なくとも1つはウェッジボンディングによって実施される段階
を含む前記製造方法である。
【0074】
ウェッジボンディング技術は当該技術分野において公知であり、且つ、文献、例えばShankara K. Prasad、「Advanced Wirebond Interconnection Technology」、Kluwer Academic Publishers, 2004, ISBN 1−4020−7762−9、特に第I章(introduction)および第IV章(process technology)において広範に記載されている。
【0075】
本発明の対象を図に例示する。しかしながら、図面は、本発明の範囲または特許請求の範囲をいかようにも限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図2】
図2はワイヤ1の断面図を示す。断面図において、銅コア2は該断面図の中央にある。銅コア2は、被覆層3によって覆われている。銅ワイヤ2の境界に、銅コアの表面15が位置する。ワイヤ1の中心23を通るラインLにおいて、銅コア2の直径は、ラインLと表面15との交差部の間の端から端までの距離として示される。ワイヤ1の直径は、中心23を通るラインLとワイヤ1の外側の境界との交差部の間の端から端までの距離である。さらに、被覆層3の厚さが図示される。
【
図3】
図3は銅コア2、中間層7および被覆層3を有するワイヤ1が図示する。
図2に記載される要素の他に、中間層7の厚さが示される。
【
図5】
図5は2つの構成要素11およびワイヤ1を含む電気装置を図示する。ワイヤ1は2つの構成要素11を電気的に接続する。
【
図6】
図6は他の電気装置10を図示する。4つの構成要素11が3本のワイヤ1によって電気的に接続されている。
【
図7】
図7は電気装置10を含む推進装置16、この場合は車を図示する。
【
図8】
図8は本発明によるワイヤの一部の断面図を示す。
【
図9】
図9は本発明によるワイヤの長手方向の切断面を示す。
【
図10】
図10はワイヤ1の拡大図を図示する。下から上に、銅コア2の部分、中間層7が示され、その両者の間に銅コアの表面15が示される。中間層7の上部に、被覆層3がある。被覆層3に隣接する上部の黒い領域はバックグラウンドであり、この例の一部ではない。
【
図11】
図11は歪み−一軸サイクル試験の例示的なグラフを図示する。延びはx軸に%で示される。応力[MPa]がy軸に示される。実験から得られる曲線はヒステリシスループである。Aで示される曲線は、本発明によるワイヤによって記録され、曲線Bは純粋なアルミニウム製のリファレンス用ワイヤを用いて記録された。Δε
p1およびΔwは、試験方法において記載されるとおりに測定される。
【
図12】
図12は
図11について記載された複数の測定の、散逸仕事についての結果をまとめてグラフで示す。丸い点で示される値は、本発明によるワイヤによって記録され、四角い点で示される値は純粋なアルミニウム製のリファレンス用ワイヤを用いて記録された。
【
図13】
図13は
図11について記載された複数の測定の、塑性歪みについての結果をまとめてグラフで示す。丸い点で示される値は、本発明によるワイヤによって記録され、四角い点で示される値は純粋なアルミニウム製のリファレンス用ワイヤを用いて記録された。
【
図14】
図14はパワーサイクリング試験の結果をまとめたグラフを示す。サイクルの開始時の温度とサイクルの停止時の温度の間の差異であるΔTがx軸に示される。y軸には破壊までのサイクル数が示される。このグラフにおいて、純粋なアルミニウムの試料についての曲線が示される(明るい四角い点を通るカーブフィッティング)。さらには、本発明によるワイヤについての曲線が示される(暗い四角い点を通るカーブフィッティング)。該グラフによれば、本発明のワイヤについて、破壊までのサイクル数は純粋なアルミニウムのリファレンスよりも少なくとも3倍高い。
【
図15】
図15はワイヤプル試験の略図を示す。基板20に、ワイヤ1が結合部21において45°の角度19でボンディングされている。プルフック17がワイヤ1を引っ張る。プルフック17がワイヤ1を引っ張る際に形成される角度22は90°である。
【0077】
試験方法
全ての試験および測定は、T=20℃、および相対湿度50%で行われた。
【0078】
導電率
試験試料、即ち長さ1.0mのワイヤの両端を、定電流I=10mAを供給する電源に接続した。電圧を測定するための装置を用いて電圧を記録した。この構成を少なくとも4つの試験試料について繰り返した。以下に示す計算のために、4つの測定の算術平均を使用した。
【0079】
抵抗RをR=U/Iに従って計算した。
【0080】
比抵抗率ρを、ρ=(R×A)/lによって計算し、ここでAはワイヤの平均断面積であり、lは電圧を測定するための装置の2つの測定点の間のワイヤの長さである。
【0081】
比導電率σをσ=1/ρによって計算した。
【0082】
層厚
被覆層の厚さ、中間層の厚さ、およびコアの直径を測定するために、ワイヤの最も長い方向に対して垂直にワイヤを切断した。柔らかい材料、例えばAlのスミアリングを避けるために、切断部を注意深く研削し、且つ、研磨した。光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)によって写真を撮影し、その際、ワイヤの断面の全体が示されるように倍率を選択した。
【0083】
この手順を少なくとも15回繰り返した。全ての値は、少なくとも15回の測定の算術平均としてもたらされる。
【0084】
ウェッジ・ウェッジボンディング パラメータの定義
AlSi1でめっきされたCuSn6製基板(Heraeus/ドイツから入手可能)へのワイヤのボンディングを20℃で実施し、その際、ボンディングをAlSi1表面に適用した。ワイヤと基板との間に45°の角度で第一のウェッジボンディング部を形成した後、第二の端部でワイヤを基板にウェッジボンディングする。ワイヤの2つの端部の間のボンディング部の距離は、5〜20mmの範囲内であった。この距離はワイヤと基板との間の角度が45°であることを確実にするために選択された。ウェッジボンディングの間、60〜120kHzの範囲の周波数の超音波を、40〜500ミリ秒の間、ボンディング器具に適用した。
【0085】
次に、アルミニウム製の標準的なワイヤのリファレンス用試料AL−H11 CRを上述のとおりにウェッジボンディングした。ボンディングされたワイヤの変形の度合いを、基板上のワイヤの接触面積(A
c ref)を測定することによって評価した。
【0086】
本発明によるワイヤを使用して作製された、試験される試料に関して、ウェッジボンディングのパラメータ、即ち、印加される力、周波数および超音波に曝露される時間は、基板上の本発明によるワイヤの接触面積(A
c inv)においてA
c refがA
c invと等しくなるように適合されなければならない。アルミニウムを含む被覆層を有する銅ワイヤに関しては、与えるエネルギーは増加されなければならない、即ち、与えられる力、超音波の周波数、および超音波に曝露される長さのパラメータの1つが増加されなければならない。
【0087】
ワイヤプル
ワイヤプル試験を、MIL−STD−883G Method 2011.7 (1989)、Condition Dに準拠し、XYZTEC Condor 150機において行った。AlSi1でめっきされたCuSn6製アルミニウム基板(Heraeus/ドイツから入手可能)上にワイヤを角度45°でボンディングし、その際、ボンディングをAlSi1表面に適用した。ワイヤの2つの端部の間のボンディング部の距離は、5〜20mmの範囲内であった。この距離はワイヤと基板との間の角度が45°であることを確実にするために選択された。ループを、引張速度2500μm/sで、ループの中央で引っ張った。プルフックの直径は、ワイヤの直径の少なくとも2倍であった。
【0088】
ワイヤボンドシェア試験
ワイヤボンドシェア試験を、AEC−Q101−003 Rev−A (07.2005)に準拠し、XYZTEC Condor 150機において実施した。AlSi1でめっきされたCuSn6製アルミニウム基板(Heraeus/ドイツから入手可能)にワイヤを角度45°でボンディングし、その際、ボンディングをAlSi1表面に適用した。その後、シェア器具を速度50μm/sで基板まで下げて、高さがゼロであるところを定義した。次にシェア器具を基板から、ボンディングされたワイヤの直径の10%の距離まで引いた。その後、剪断を速度250μm/sで行った。ボンディングのせん断破壊モードも記録した: (1)ボンディングのリフト、(2)ボンディングの剪断、(3)へこみ、(4)ボンディング表面のリフト(下にある基板からのボンディング表面の分離)。
【0089】
歪みおよび散逸仕事 一軸サイクル試験
直線のワイヤの試料を機械にはさみ、機械的歪みを与えた(引張および圧縮)。機械的試験に供されるワイヤの長さは1.0mmである。試料のサイクリングを歪み速度1%/sで、試料が破壊される(ワイヤが破損する)まで実施した。該機械は試料によって伝達される力を記録した。塑性歪み振幅(Δε
p1)および散逸仕事(Δw)を各々、破壊までのサイクル数(N)に対してプロットする。
【0090】
Δε
p1は、応力ゼロでの、ヒステリシスループの増加経路と減少経路との歪みの差として定義される。
【0091】
Δwは1つのヒステリシスループの積分として定義される。
【0092】
パワーサイクリング試験
ダイオードEMCON 4 High Power Chip (INFINEON Technologies AG、Munich、ドイツから入手可能)を、試験すべきワイヤを使用して台板にウェッジボンディングすることによって試料を製造した。上述のとおり、ウェッジボンディングのパラメータを、ワイヤと台板との間で、結合されたワイヤの全てが同じ接触面積(A
c ref)を確実に示すように、適切に選択した。市販の台板の中で、試験の間、ダイ装着物(ダイオード)を保持する台板を選択した。全ての試料を同一の台板を使用して製造した。
【0093】
パワーサイクリング試験を、Integrated Technology Corporation、Tempe、AZ85281、米国製のITC5230において実施した。試験のために、試料を冷却パッド上に搭載し、そのことによって、冷却パッドの入口で温度20℃を有する流体を使用して一定の流量で永続的に試料を冷却した。試料によって散逸された熱の一定の輸送を確実にするために、試料と冷却パッドとの間に熱伝導性フィルムを配置した。ITC5230の電極をダイオードおよび台板に接続した。
【0094】
ボンディング後の電気的欠陥
上述のウェッジ−ウェッジボンディング手順によって同一の条件下で作製した150の試料のセットを、電気的欠陥に関して評価した。各々の試料は9つのボンディング部を有し、ボンディング部は合計1350個になる。欠陥の数に依存して、各々のセットを表2における++、+、0、−または−−でランク付けする。
【0095】
++ = 0
+ =< 2%
0 = 2〜5%
− = 5〜10%
−− => 10%。
【0096】
パワーサイクリング試験に先立ち、プリセット電圧(V
0)での電流(I
0)量および試料の温度を開始時の温度の40℃から175℃に上げるために必要な時間を測定した。この時間がサイクルのオン時間である。その後、試料に電流を流さずに、試料が175℃から40℃へと冷える冷却時間を評価した。この時間がオフ時間である。1回のオン時間、続く1回のオフ時間のシーケンスが、1回のパワーサイクルを規定する。
【0097】
その後、連続的に上述のパワーサイクルを適用することによってパワーサイクリング試験を実施した。プリセット電流I
0で、パワーサイクルのオン時間の間の電圧(V
t)を記録した。オン時間の間に電圧V
tが電圧V
fを上回った際に、パワーサイクリング試験を終了させた。V
f=(V
0+10%)。