(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184491
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】エラストマー材料及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 23/22 20060101AFI20170814BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20170814BHJP
C08K 5/41 20060101ALI20170814BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
C08L23/22
C08K5/3445
C08K5/41
C08K3/04
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-522039(P2015-522039)
(86)(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公表番号】特表2015-522688(P2015-522688A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013064465
(87)【国際公開番号】WO2014012819
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】102012212422.5
(32)【優先日】2012年7月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500525405
【氏名又は名称】ライプニッツ−インスティチュート フュア ポリマーフォルシュング ドレスデン エーファウ
【氏名又は名称原語表記】Leibniz−Institut fuer Polymerforschung Dresden e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】プラブ カヴィマニ ナガール
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ユアク
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヴェアナー シュテッケルフーバー
(72)【発明者】
【氏名】アミット ダス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ロイテリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】バスダム アディカリ
【審査官】
三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−530619(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0173115(US,A1)
【文献】
特表2007−530776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチルゴム及び/又はハロブチルゴム又はそれらの混合物を含有するエラストマー材料であって、ゴム成分を基準として1〜20phrの少なくとも1種の液体イミダゾリウム塩及び1〜40phrの黒鉛構造を有する少なくとも1種のフィラーを含有する、ブチルゴム及び/又はハロブチルゴム又はそれらの混合物を含有するエラストマー材料。
【請求項2】
液体イミダゾリウム塩として、ブチル−3−メチル−イミダゾリウム−ビス−(トリフルオロメチルスルホニル)−イミド、例えば1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム−ビス−(トリフルオロメチルスルホニル−イミド)が存在している、請求項1に記載のエラストマー材料。
【請求項3】
1〜5phrの液体イミダゾリウム塩が存在している、請求項1に記載のエラストマー材料。
【請求項4】
1〜20phrの黒鉛構造を有するフィラーが存在している、請求項1に記載のエラストマー材料。
【請求項5】
黒鉛構造を有するフィラーとして、グラフェンが存在している、請求項1に記載のエラストマー材料。
【請求項6】
低い乃至極めて低いガス透過性を有するエラストマー材料のための、請求項1に記載のエラストマー材料の使用。
【請求項7】
車両タイヤ用インナーライナーとしての、請求項6に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー化学の分野に関し、かつ例えば車両タイヤ用にインナーライナー材として使用可能であるようなエラストマー材料及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両タイヤは、多数の構成要素からなっている。車両タイヤの主要な構成要素はいわゆるカーカスであり、これは走行ベルトと強度支持体として作用する織物下部構造とからなっている。このカーカスの内側には放射状にエラストマー層、いわゆるインナーライナー層又はインナーライナーが施与されており、これはチューブレス車両タイヤに導入されたタイヤガスをできるかぎり十分に閉じ込めるためのものであり、それにより、リムとタイヤとの間に閉じ込められたタイヤガスが車両タイヤ材を通じて外側へとできるかぎり拡散できないように、また非常にゆっくりとしか拡散できないようにする。特に、タイヤにおける圧力低下は、タイヤの転がり摩擦やそれに付随する高められた燃料消費だけではなく走行安全性やタイヤの耐久性にもマイナスの影響を及ぼすという理由からも、インナーライナーのガス透過性はできるだけ低いことが望ましい。さらにインナーライナーは、例えばカーカスやスチールベルトといった他のタイヤ部品を空気や湿分から保護するのに役立つ。
【0003】
インナーライナー用エラストマー材料として、一般には合成ゴム、例えばブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)又はブロモブチルゴム(BIIR)が使用されており、これらはすでに低いガス透過性を有している。例えば機械的特性の改善やコスト削減を達成するため、部分的にこのブチルゴムは他のジエンゴムとブレンドして使用される。さらに、前記材料のガス透過性は、ゴムマトリックス中へのフィラー粒子の混入によっても改善されうる。特に、例えば層状ケイ酸塩やグラフェンの層状粒子の混和は、ガス分子の拡散路(曲がりくねり)の延長によって、前記材料のガス透過性を低減させる。
【0004】
US2006/0,229,404号の記載により、膨張黒鉛を含有するエラストマーからジエンモノマーを10phr以上(ゴム100部当たりの部)の膨張黒鉛の存在で重合させ、それにより該黒鉛にエラストマーをインターカレートさせる、エラストマー混合物の製造方法が知られている。
【0005】
US6,548,585号から、冷媒配管内の内管を製造するためのゴム材料も知られている。前記ゴム材料は、臭素化コポリマーゴム(これは例えばポリ[イソブチレン−co−p−メチルスチレン](BIMSM)であってよい)と、無機層状フィラー(これは例えば黒鉛、リン酸ジルコニウム、カルコゲナイド、タルク、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、雲母又はクロライトであってよい)とから製造される。
【0006】
US2010/0,036,023号の記載により、好ましくはグラフェンナノ粒子である黒鉛ナノ粒子からのエラストマー材料が知られている。このようなエラストマー材料は、タイヤチューブにおいてインナーライナーとして使用される。
【0007】
さらに、US2005/0215693号から、層状ケイ酸塩/ゴム−系の加硫特性を改善させる方法が知られている。前記方法の場合、層状ケイ酸塩はイオン液体の添加により膨張され、その後、ゴム混合物に添加される。界面活性イオン液体は、前記層状ケイ酸塩と前記ゴムとを相容化させ、かつ実質的に加硫特性を妨害することなくそのガス透過性を低減させる。
【0008】
イオン液体とは、一般に専らイオンからなる液体と解釈される。一般に高融点、高粘性でかつ大抵は極めて腐食性の高い媒体である溶融塩の古典的な概念と区別して、イオン液体はすでに低温(100℃未満)で液体でかつ比較的低粘性である(DE10243181号A1)。イオン液体はすでに1914年から公知であったが、ここ10年でようやく有機合成における溶剤及び/又は触媒として集中的に研究されるようになった(J. Chem. Technol. Biotechnol. 68(1997), 351-356におけるK. R. Seddonによる概論)。
【0009】
US7,572,855号B2から、カチオン性相容化剤を含有するナノコンポジットも知られている。前記カチオン性相容化剤は、疎水基と複素環式カチオン性単位とからなる。前記ナノコンポジットは、ゴム材料及びタイヤ材料において、改善されたガス透過性、改善された加硫特性及び/又は改善された機械的特性を達成するために使用されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、より低いガス透過性を有するエラストマー材料を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、請求項に記載した本発明により解決される。好ましい実施形態は、引用形式請求項の対象である。
【0012】
本発明によるエラストマー材料は、1〜20phrの少なくとも1種の液体イミダゾリウム塩及び1〜40phrの黒鉛構造を有する少なくとも1種のフィラーを含有する、ブチルゴム及び/又はハロブチルゴム又はそれらの混合物を含有する。
【0013】
また好ましくは、液体イミダゾリウム塩として、ブチル−3−メチル−イミダゾリウム−ビス−(トリフルオロメチルスルホニル)−イミド、さらに好ましくは1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム−ビス−(トリフルオロメチルスルホニル−イミド)が存在している。
【0014】
さらに好ましくは、前記エラストマー材料中に、1〜5phrの液体イミダゾリウム塩が存在している。
【0015】
同様に好ましくは、前記エラストマー材料中に、1〜20phrの黒鉛構造を有するフィラーが存在している。
【0016】
黒鉛構造を有するフィラーとしてグラフェンが存在している場合も好ましい。
【0017】
本発明によれば、前記エラストマー材料は、低い乃至極めて低いガス透過性を有するエラストマー材料のために使用される。
【0018】
好ましくは、前記エラストマー材料は、車両タイヤ用インナーライナーとして使用される。
【0019】
本発明による解決法により、従来技術による他のエラストマー材料よりも明らかに低いガス透過性を有するエラストマー材料を初めて示すことができる。このことは本質的に、前記エラストマー材料が、ブチルゴム及び/又はハロブチルゴム又はそれらの混合物に加えてさらに、1〜20phrの少なくとも1種の液体イミダゾリウム塩及び1〜40phrの黒鉛構造を有する少なくとも1種のフィラー、特にグラフェンを有することにより達成される。
【0020】
エラストマー材料への層状フィラーの混入は、一般にはそのガス透過性を、ゴムマトリックス中でのガス分子の輸送路(曲がりくねり)の延長によって低下させる。しかしながらその際、ガス透過性を低下させるためには個々のフィラープレートレットが極めて十分に前記ゴムマトリックス中に分散されていなければならないことが重要である。公知の通り、グラフェンは強い凝集傾向を示すため、エラストマー材料においてグラフェンを使用すると、該エラストマー材料のガス透過性が著しく上昇してしまう。
【0021】
本発明によれば、少なくとも1種の液体イミダゾリウム塩と黒鉛構造を有する前記フィラーとが前記エラストマー材料中に一緒に添加されかつ存在することにより、前記欠点が一掃され、かつ前記エラストマー材料中での前記フィラー粒子の良好乃至極めて良好な分散が達成される。それにより、またもやガス分子の輸送路又は拡散路が明らかに延長され、従ってガス透過性がさらに低下される。
【0022】
その際さらに、改善された分散は、前記液体イミダゾリウム塩及び前記フィラーを本発明により定められた量で添加することでしか達成されないことが本発明の本質であることが判明した。液体イミダゾリウム塩及び黒鉛構造を有するフィラーを、より少なく又はより多く添加すると、またもやフィラー粒子が凝集し、かつガス透過性が上昇してしまう。
【0023】
前記液体イミダゾリウム塩は前記フィラー粒子表面とも相互作用し、それにより表面変性がもたらされ、これによってまたもや、前記フィラーと前記エラストマー材料との相容化、及び前記フィラー粒子の明らかに改善された分散がもたらされる。
【0024】
本発明による解決法により、例えば本発明によるエラストマー材料からのインナーライナー層を有する車両タイヤのガス透過性を明らかに低下させることができる。このことは、前記インナーライナー層の層厚の低減、ひいては材料及び質量の削減が可能となることにもつながりうる。
【0025】
以下に、本発明を実施例につき詳説する。
【実施例】
【0026】
実施例1
第1表による組成のゴム混合物を、全ての成分を一緒に混合することにより製造した。
【0027】
【表1】
【0028】
ラマン分光法を用いた試験により、前記エラストマー材料の加硫後に、前記液体イミダゾリウム塩と前記グラフェンナノプレートレットの表面との間の相互作用を検出することができ、その際、純粋なGnPと比較して、GnP−FI混合物においてGバンドの明らかなシフトが認められた。
【0029】
第2表は、第1表による、グラフェン及び液体イミダゾリウム塩なしのエラストマー材料(従来技術)と、異なる含分のグラフェン(GnP)及び液体イミダゾリウム塩(FI)を含有するエラストマー材料について実施したガス透過測定の結果(ミュンヘン在Brugger Feinmechanik GmbH社製ガス透過性試験装置GDP-C)を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
液体イミダゾリウム塩の使用により、前記グラフェン表面との相互作用を生じさせることができ、それにより前記グラフェン表面が変性されることが認められた。これにより、前記グラフェンと前記エラストマーとの改善された相容化、及び前記グラフェン粒子の明らかに改善された解凝集及び分散がもたらされる。前記グラフェン粒子の改善された分散によって、ガス分子が前記エラストマー材料を透過する際に該ガス分子の著しく高められた拡散路がもたされる。