特許第6184492号(P6184492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184492
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】カムシャフト
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/04 20060101AFI20170814BHJP
   F16H 53/02 20060101ALI20170814BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170814BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20170814BHJP
【FI】
   F01L1/04 E
   F16H53/02 A
   F16H53/02 B
   B23K26/00 G
   B23K26/352
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-522092(P2015-522092)
(86)(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公表番号】特表2015-525848(P2015-525848A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2013065141
(87)【国際公開番号】WO2014013001
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年2月17日
(31)【優先権主張番号】102012212627.9
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルクス レットマン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ リーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ファルク シュナイダー
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−111741(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/077880(WO,A1)
【文献】 特開昭57−51202(JP,A)
【文献】 特開平8−74870(JP,A)
【文献】 特表2004−528521(JP,A)
【文献】 特開平03−181654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/04
F16H 53/02
B23K 26/00、26/352
B23P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(2)と、シャフトに特に熱的に接合され、かつ構成要素側接合面(5)によりシャフト側接合面(6)に接続された少なくとも1つの構成要素(3)とを備えた内燃機関用のカムシャフト(1)であって、
上記構成要素側接合面(5)及び/又はシャフト側接合面(6)はレーザー(11)によって形成されて硬化された凹凸部(7)を有し、
上記凹凸部(7)は、独立したレーザースポット(20)で構成された軌跡(21)を有し、その軌跡(21)において、個々のレーザースポット(20)の中心点(22)は互いにずれて配列され、かつ個々のレーザースポット(20)は互いに重なるように配列されていることを特徴とするカムシャフト。
【請求項2】
請求項1に記載のカムシャフトにおいて、
上記構成要素(3)、特にカム(4)は、上記凹凸部(7)を炭素との結合により硬化させるために、少なくとも0.4重量%の炭素を含有するカーボンリッチ金属で形成されている一方、シャフト(2)はそれよりも炭素の含有量が低いことを特徴とするカムシャフト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカムシャフトにおいて、
上記シャフト(2)は、レーザー(11)によって凹凸部(7)が形成される前に該凹凸部(7)を硬化させるために炭素と結合される処理が行われている金属か、又は少なくとも0.4重量%の炭素を含有するカーボンリッチ金属からなることを特徴とするカムシャフト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のカムシャフトにおいて、
上記シャフトはE335鋼(NF規格)又はC60E(DIN規格)で形成され、カム(4)はC60(DIN規格)、100Cr6鋼(DIN規格)又は焼結材料で形成されていることを特徴とするカムシャフト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のカムシャフトにおいて、
上記凹凸部(7)は、おおよそRz2〜25の粗さであることを特徴とするカムシャフト。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のカムシャフトにおいて、
上記構成要素(3)は、信号伝達ホイール、チェーン/ベルトホイール、プラグ、ギヤホイール、駆動又は出力要素、ツールインターフェイス、設置要素、配列要素、部品補助要素、ベアリングリング又はブッシュであることを特徴とするカムシャフト。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のカムシャフトにおいて、
上記軌跡(21)はカムシャフト軸(8)に対し平行方向、直交方向、又は斜め方向を向き、かつ/又は、
上記構成要素側接合面(5)と上記シャフト側接合面(6)とは、特に異なるレーザー出力で造られた異なる凹凸部(7)を有することを特徴とするカムシャフト。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のカムシャフトにおいて、
構造部材(16)が構成要素(3)に取り付けられ、
構成要素側接合面(5′)が構成要素(3)に、かつ/又は、構造部材側接合面(17)が構成部材(16)上に、構造部材(16)が構成要素(3)に取り付けられたときに互いに接触するように配列され、
構成要素側接合面(5′)及び/又は構造部材側接合面は凹凸部(7)を有し、
該凹凸部(7)は、レーザー(11)により形成されて硬化され、かつ独立したレーザースポット(20)で構成された軌跡(21)を有し、個々のレーザースポット(20)の中心点(22)は互いにずれて配列され、かつ個々のレーザースポット(20)は互いに重なるように配列されていることを特徴とするカムシャフト。
【請求項9】
請求項8に記載のカムシャフトにおいて、
構成要素側接合面(5,5′)及び/又はシャフト側接合面(6)及び/又は構造部材側接合面(17)は、それぞれの要素の端面上又は周面上に配置されていることを特徴とするカムシャフト。
【請求項10】
構成要素(3),特に請求項1〜9のいずれか1つに記載のカムシャフト(1)用のカム(4)であって、
上記構成要素側接合面(5)はレーザー(11)によって形成されて硬化された凹凸部(7)を有し、該凹凸部(7)は独立したレーザースポット(20)で構成された軌跡(21)を有し、個々のレーザースポット(20)の中心点(22)は互いにずれて配列され、かつ独立したレーザースポット(20)は互いに重なるように配列されていることを特徴とするカム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に係るカムシャフト及びそのカムシャフト用のカムに関する。
【背景技術】
【0002】
カムシャフトは内燃機関の常設部分である。該カムシャフトは(中空の)シャフトを有し、このシャフトに少なくとも1つのカムが接合される。熱接合法がシャフトとカムの接合によく用いられる。そのとき、シャフトとカムとの接合は、カム孔に配置されたカム側接合面とシャフト側接合面とによって確保される。この接合の欠点は、カムシャフトを介して伝達可能なトルクが、カム側接合面とシャフト側接合面との間の摩擦によって制限されてしまうということである。
【0003】
特許文献1には、内燃機関のバルブ制御用カムシャフトの製造方法について開示されており、その製造方法は、各々メインカムプレーンに垂直な方向に延びる円形の中心孔を有する複数の円板状のカムを、カムの中心孔が互いに軸方向に離れて互いに一直線に整列するように、一列に整列する工程と、カムに合わせた丸い外形の中空シャフトを、過冷却の中空シャフトの外径がカムの孔の内径より小さく、非過冷却の中空シャフトの外径がカムの孔の内径より大きくなるように過冷却する工程と、過冷却の中空シャフトを、整列したカムの孔に取り付ける工程と、カムシャフトを形成するために中空シャフトとカムとが永久に結合されるように、中空シャフトとカムとの間で温度を均等にする工程と、を備え、カムの孔の内周面及び/又は中空シャフトの外周面は、取付時にカムの孔によって取り囲まれる部分にレーザーによるアブレーションによって造られた凹凸パターンを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009060352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に低い製造費用で製造可能である、一般的なカムシャフトの改良された又は少なくとも代替可能な形態を特定する問題に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、本発明によれば独立請求項の主旨によって解決される。有利な形態は従属請求項の主旨を形成している。
【0007】
本発明は、構成要素とシャフトとの間の接合を改良するという一般的な概念、例えば、特に熱接合プロセスに加えて構成要素側接合面及び/又はシャフト側接合面に凹凸を設けることにより、カムとカムシャフトとの間でトルクの伝達が可能となるように接合する、という一般的な概念に基づいている。本発明によると、構成要素側接合面及び/又はシャフト側接合面は凹凸部を有し、この凹凸部はレーザーによって形成されて硬化されて、個々のレーザースポットで構成された軌跡を有する。個々のレーザースポットの中心点は互いにずれて配列され、かつ個々のレーザースポットは互いに重なるように配列されている。本発明において、レーザースポット又はレーザースポットの軌跡のみで構成要素側及び/又はシャフト側接合面に凹凸を設けることにより、凹凸部を設ける費用及びサイクルタイムを大幅に削減することができ、これにより、カムシャフトの組立を促進することができる。例えばレーザー等では、接合面全体に凹凸を設ける必要はなく、接合面の一部にだけ凹凸を設ければよく、その結果、凹凸構造形成プロセス自体が効率化されることにより、サイクルタイムが削減される。レーザースポットの境界はとげのような役割を果たし、対面側の接合面の部材にひっ掛かり又は食い込むため、レーザースポット又は個々のレーザースポットで構成される軌跡により、伝達可能なトルクを大幅に増加させることができる。凹凸部がシャフトに設けられる場合は、シャフトは低カーボン素材であるため、最初に、例えばレーザーによって炭化されかつ硬化される。その硬化は凹凸部が設けられる前又は設けられている間に行われる。
【0008】
勿論、カムシャフトに接続された構成要素は、カムの代わりに、信号伝達ホイール、プラグ、ギヤホイール、駆動又は出力要素、ツールインターフェイス、設置要素、配列要素、部品補助要素、ベアリング又はブッシュとして形成されていても良い。上述した構成要素が、特にカムシャフト用には形成されていない一般のシャフトに接合されることは想像できることである。明細書中、「カムシャフト」は、毎回、「シャフト」に置き換えられるか一般化されることができる。さらに「カム」は、毎回、「構成要素」に置き換えられるか一般化されることができる。
【0009】
本発明に係る解決手段を有利に発展させたものとして、凹凸部を、およそRz2〜25の粗さに予め決めたものがある。粗さを正確に設定することにより、伝達可能なトルクを設定することができる。同時に、カムを熱するホールド時間及びサイクルタイムも、この凹凸部により削減される。
【0010】
レーザーの軌跡は、便宜上、カムシャフトの軸に対し平行方向、直交方向又は斜め方向に整列されている。加えて又は代わりに、構成要素側接合面とシャフト側接合面とが異なる凹凸部を有し、特に異なるレーザー出力により造られていることが想像できる。特に、凹凸部の軌跡がカムシャフトの軸に対し平行に並べられている場合、レーザービームにより凹凸部が形成されかつそれと同時に硬化された軌跡への押圧がより簡単に起きる。未加工のカムシャフトや一般的なシャフトの使用も同時に想像できる。この方法では、トルクを伝達している間は負荷の方向が変化するため、軸方向により良く接合されるにも拘わらず、カムとシャフトとの間に高いトルクが伝達される。レーザーは凹凸部の領域において比較的硬い粒子を実現することができ、それにより、特に軟らかい構成要素やシャフトをより硬い表面構造とすることができ、この表面構造は高いトルクを伝達するために設計される。上記より硬い表面構造は、さらにレーザー後の比較的早い冷却により促進される。また、構成要素側の硬い表面構造がより軟らかいシャフトに食い込むこと、これにより噛合効果が生じることも想像できる。
【0011】
凹凸部とそれによる伝達可能なトルクとは、レーザー出力によって造り出される。レーザー出力の種類や威力に加えて、加工軌跡や加工領域の複合レーザーも想像でき、このことで必要な硬さを特に正確に設定することができる。チェック、ダイヤモンド、長方形パターンなどの加工パターンが上記軌跡によって造り出される。
【0012】
本発明に係る解決手段を発展させたものでは、構成要素は、圧力接合及び/又は熱接合によってカムシャフトに接続されている。後者の場合はカムが加熱される。従来の熱接合では、シャフトは通常冷やされ、かつ/又はカム又は構成要素が加熱される。しかし、この場合は、構成要素のみ、特定の場合はカムのみが加熱され、対応するシャフト又はカムシャフトに押し付けられる。勿論、加熱による前処理無しに圧力接合することも考えられる。
【0013】
本発明のさらに重要な特徴や有利な点は、従属項、図面、及び図面に関連した説明から得られる。
【0014】
上記の特徴及び以下で説明する内容は、述べられた組み合わせで使用できるだけでなく、本発明の範囲を逸脱しない他の組み合わせや単独で使用できることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るカムシャフトの分解模式図である。
図2】構造部材が端部に配置されたカムシャフトの模式図である。
図3】レーザーによって形成されて硬化され、かつ個々のレーザースポットで構成されたトラックを有し、個々のレーザースポットは互いにずれて配列されかつ個々のレーザースポットは互いに重なって配列されている凹凸部の模式図である。
図4】回転方向が軌跡に平行なときの図3と同様の模式図である。
図5図4から軌跡が途切れた形態における詳細図である。
図6】凹凸部のレーザースポットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施形態は図面に概略的に示され、以下の説明で詳細に説明される。同一の符号は同一、類似又は機能的に同一の要素と関係している。
【0017】
図1によると、本発明に係る図示していない内燃機関用のカムシャフト1は、シャフト2と、これに熱的に接合された少なくとも1つの構成要素3、この場合はカム4とを有し、この構成要素3は構成要素側接合面5によりシャフト側接合面6に接続されている。本発明によると、構成要素側接合面5及び/又はシャフト側接合面6は凹凸部7を有している。この凹凸部7はレーザー11により形成されて硬化されたもので、独立したレーザースポット20から成り、かつ/又は個々のレーザースポット20で構成された軌跡21を有する。個々のレーザースポット20の中心点22は互いにずれて配列され、かつ個々のレーザースポット20が互いに重なるように配列されている(例えば図3図5も参照)。形成された凹凸部7はRz2〜Rz25の粗さの間である。
【0018】
一般的に、構成要素3は、この場合のようにカム4として構成されている。勿論、構成要素3が、信号伝達ホイール、プラグ、ベアリングリング、チェーン/ベルトホイール、ギヤホイール、駆動又は出力要素、ツールインターフェイス、設置要素、配列要素、部品補助要素、ベアリング又はブッシュとして構成されていてもよい。カム側接合面5及び/又はシャフト側接合面6は、さらに、好ましくはカム隆起部14の領域に凹凸を有し、このカム隆起部14の領域はカム頂点及び/又は反対側の基礎円15である。凹凸部7は、カム隆起部14の領域では、およそ20°から140°以上、好ましくは50°から120°以上の円周角度で広がっており、基礎円15の領域では、20°から140°以上、好ましくは20°から90°以上の円周角度で広がっている。これにより、接合面5,6の全てに凹凸を設ける必要がなくなり、一部にのみ設ければよいので、時間と費用とを抑えることができる。
【0019】
カムシャフト1とカム4との接続又はシャフト2と構成要素3との接続は、一般的に単純な圧力接合又は熱接合により行われる。熱接合のとき、カム4つまり構成要素3が予め熱せられる。全てのシャフト2又はカムシャフト1については、完全に機械によって加工されるか又は全く処理されない。
【0020】
軌跡21はカムシャフト軸8に対して平行方向、直交方向又は斜め方向を向いている。また、構成要素側接合面5とシャフト側接合面6とは、特に異なるレーザー出力により造られた異なる凹凸部を有してもよい。一般的に、凹凸部7は相互摩擦部の一方又は両方つまり構成要素3とシャフト2との両方に配置されている。そこでは、同一の又は異なる凹凸部7が形成されていてもよい。
【0021】
一般的に、構成要素3はカム4として構成され、さらに、内側に旋回した(internally turned)カムシートとして構成された接合面5を有し、その表面には凹凸部7がレーザー構造の形で形成されている。内側に旋回したカム内部シートは旋回軌跡(旋回経路)を有し、これは周方向を向いていて、限界内で設定された深さや幅を有している。そのような切削加工により造られた基本構造上に凹凸部7が旋回経路に対して横方向(旋回経路に対して0から90°)に形成されているとすると、外形に多くの頂点を有するチェック、ダイヤモンド、長方形のパターンが造りだされる。旋回経路に対する角度、軌跡21のスペースと深さとはプロセスごとに変えることができる。軌跡21は互いに平行になっている必要はなく、例えば交差していてもよい。一般的に、そのような外形により、カムが設置された際に、より良くトルクが伝達される。実際の接触範囲は小さいため、圧力接合による表面圧は増加する。凹凸部7を点状構造にすると、対面側の接合面により良く「引っ掛ける」ことができる。
【0022】
図2を見ると、構造部材16が構成要素3に取り付けられているように見える。構成要素側接合面5′が構成要素3に配置されかつ/又は構造部材側接合面17が構造部材16に配置され、これらは構造部材16が構成要素3に取り付けられたときに互いに接触する。構成要素側接合面5′及び/又は構造部材側接合面17は凹凸部7を有する。構造部材16と構成要素3とはネジ接続部19を介して互いに接続されている。構成要素側接合面5,5′及び/又はシャフト側接合面6及び/又は構造部材側接合面17はそれぞれの要素2,3,16の端面又は周面に配置されている。
【0023】
レーザーは、特に軟らかいシャフト2又は構成要素3に、より硬い表面構造を得る微小硬化を造り出す。これにより、より高いトルクを伝達することができる。より高い微細硬化は、例えば高速冷却により促進される。
【0024】
一般的に、構成要素3、特にカム4は、少なくとも0.4重量%の炭素が含有された金属で形成される一方、シャフトはそれより低い炭素含有量である。特に、100Cr6,C60,C45(DIN規格)のような容易に硬化可能な鋼や、A1100,1200,1300,1500のような焼結体、EN GJL 250,EN GJS 700のような鋳造物質が、カム4や構成要素3用の材料として一般に考えられる。空気焼入れ鋼も構成要素3によく用いられる。しかし、シャフト2用としては、凹凸部7を形成する箇所に炭素を含ませなければならないE335(NF規格)やC60E(DIN規格)のような鋼が考えられる。
【0025】
図3では、シャフト2の回転方向23は軌跡21の方向と直交している。この場合、軌跡21の境界/角部24が、回転のための最大可能トルクに特に影響する。しかし、図4では、シャフト2の回転方向23は軌跡21の方向と平行である。これにより、さらに高い滑り抵抗と、さらに大きなトルク伝達とが達成可能となる。シャフト2と構成要素3との間のトルク伝達容量、及びこれによる滑り抵抗は、レーザースポットが造られた際(図3図6参照)に産出される境界24が影響している。この境界24は、通常、構成要素3又はカム4に配置され、シャフト2が構成要素3又はカム4に接合される際にシャフト2に食い込む。構成要素3の材料と比べ、シャフト2の材料は軟らかいため、このような食い込みが可能となる。
【0026】
図3図6では、凹凸部7、例えばレーザースポット20は、常に構成要素3又はカム4に形成されている。勿論、レーザースポットがシャフト2に造られ、それにより境界24がシャフト2に造られていてもよい。シャフト2は、レーザースポットを形成している間に硬化できるように真っ先に炭素と結合されている必要がある。炭素との結合は、シャフト2がC60Eのようなカーボンリッチの材料で造られている場合は、省略可能である。これは、一つの構成要素、すなわちシャフト2だけを加工する必要があり、多数の構成要素3やカム4はその必要が無いという利点がある。実験では、回転のためのトルクは、レーザースポットがシャフト2側に造られた場合は、およそ135Nmから225Nmに増加し、レーザースポットが構成要素3に造られた場合は325Nmにまで増加する。これは100%以上の増加に相当する。回転のためのトルクとはシャフト2上の構成要素3が滑り始める値のことをいう。
【0027】
カムシートのレーザー加工構造(シャフト側及び/又はカム側)は、カム4とシャフト2とが熱接合した場合に、回転のためのトルクを大きく増加させる見込みがある方法である。さらなる研究での焦点は、コスト効果を改良する一方で、同時に回転のためのトルクを増大させることに置かれた。回転のためのより高いトルクは、唯一カム4がレーザー11によって加工された場合のみ到達できることが分かった。カム4では無く、シャフト2が加工された場合、従来の単純な熱接合の場合と比較して、より高いトルクに到達できるが、カム4にレーザー加工をした場合ほど高くはならない。これは対で使用されるカム/シャフト材料に起因するものである。カーボンリッチ鋼(例えばC60又は100Cr6)は、通常シャフトに使用される炭素含有量の低いE335鋼よりも炭素含有量が高い原因により容易に硬化することから、カム4の材料として使用される。レーザー加工の間、膨大なエネルギーが局所的に導入され、このエネルギーにより、産出された加工領域、特に境界24に正確に微小硬化が確保される。これにより、カム4を加工している間に造られた境界24(産出部)が、逆の場合よりもシャフト2に食い込む。シャフト2が硬化され、かつそれがレーザーによる加工である場合も、この効果が観測される。シャフトの硬化構造がカムの周面に食い込むのである。
【0028】
さらに、独立したレーザースポット20又は互いに部分的に重なったレーザースポット20(図3図6参照)は、連続的な「レーザー軌跡」と比べ、より多くのとげ構造が表面に形成され、この構造が対向の周面に食い込むため、回転のためのトルクが増加することが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6