(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ログブックデータベースは、前記スケジュールされる輸送の前記現在位置を示す前記データを含まない前記第2の要求に応答して、前記第1の時間差について問い合わせられる、請求項1に記載の方法。
前記ログブックデータベースから得られる前記第1の時間差に基づいて、前記スケジュールされる輸送が前記現在位置にあるであろう前記実時間と、前記スケジュールされる輸送が前記現在位置にあるであろう前記予定時間との間の前記第2の時間差を決定するステップは、
前記保存された第1の時間差における傾向を評価するために、前記ログブックデータベース内の複数の保存された第1の時間差を補外するステップと、
前記傾向に基づいて前記第2の時間差を決定するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
前記スケジュールされる輸送が前記現在位置にあるであろう前記実時間と、前記スケジュールされる輸送が前記現在位置にあるであろう前記予定時間との間の前記第2の時間差を決定するステップは、前記ログブックデータベース内の直近に保存された第1の時間差を受信するステップと含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2から
図13を参照して詳細な説明に目を向ける前に、最初に、一部の一般的態様を
図1に基づいて示す。
【0013】
本発明は、一般に、特定の時刻表に従って定期的に移動する定期輸送手段に関する。そのような定期輸送手段は、例えば、電車(国際、高速、国内又は地域又は近郊の電車)、バス、シャトル・カー、飛行機、船又はフェリー、トラム或いは任意の他の公共輸送手段とすることができる。
【0014】
時刻表は、通常、輸送手段の運営者によって作成、発行される。例えば、SCNFは、フランスで運行する全てのTGVに関する時刻表を作成、発行している一方で、ドイツ鉄道は、ドイツで運行するICEの時刻表を作成、発行している。運営者は、一般の人々、特には駅にいる乗客に対して、インターネットを介して又は輸送手段自体において/輸送手段自体内で入手可能な時刻表を作成している。輸送手段の時刻表は、通常、輸送手段の起点及び最終目的地並びに中間駅を示す。更に、時刻表は、通常、起点駅の出発時刻及び最終目的地の到着時刻、並びに中間駅の出発時刻及び任意選択で到着時刻を示す。
【0015】
このことにより、運営者の時刻表は、定期輸送手段をそれらの経路及び移動時間に関して論理的にグループ化する。同一時刻に同一経路を進む輸送手段を以下、特定の「関係」(connection)に属する輸送手段と呼ぶ。例えば、ニース発パリ行きの毎日10時に運行する全ての電車は、そのような関係を形成する。一方、用語「経路」は、時刻表に従った、起点駅から最終目的地までの定期輸送手段の進路を指す。例えば、上述の関係に属する電車(即ちニース発パリ行きの毎日10時のTGV)の場合、経路は、ニース・パリ間の線路によって示される。更に、一般に、定期輸送手段の経路は、区間から構成される。以下では、用語「区間」は、時刻表に掲載された2つの続く駅の間の経路部分を指す。例外的に、経路は、時刻表が起点駅と最終目的地との間に中間停止駅を何も規定しない場合、ただ1つの区間からなる。しかし、経路は、通常複数の区間に分割される。例えば、時刻表が起点と最終目的地との間に6つの中間駅を示す場合、経路は7つの区間に細分される。
【0016】
通常、乗客は、運営者の時刻表によって設定された、輸送手段の計画到着時刻及び計画出発時刻のみならず、乗客が使用するつもりの又は現在使用している特定の輸送手段の実際の進行にも興味をもっている。例えば、待ち時間を最小にする又は適切な接続輸送手段を選択するために、乗客は自分の輸送手段が現在完全に定刻通りか、予定より遅れているか、又は更にはスケジュールより前であるかどうかの知識を有することが有益である。この点において、用語「遅延」は、本明細書ではこうした可能性の3つの全てを含むために使用される。したがって、遅延は、輸送手段がスケジュールより遅れており、おそらくは次の駅には時刻表が示すよりも遅く到着する場合、プラスである。遅延は、輸送手段が定刻通りでありおそらく次の駅に時刻表が示す時刻に到着する場合、ゼロである。輸送手段がスケジュールより早い、したがっておそらく次の駅に時刻表が示すよりも早く到着する場合、遅延はマイナスである。
【0017】
このニーズに対処するために、輸送手段の現在の遅延を計算するように構成したユーザ・デバイスが従来技術において公知である。一例は、既に上述した特許文献1である。しかし、該公報で開示された遅延計算は、目的地情報を手入力し、ユーザの現在位置を例えば全地球測位システム(GPS)の利用によって提供する必要がある。したがって、GPS有効範囲が不十分又は存在しない状況では、このシステムは適切に動作しない。更に、特許文献1で記載した手法は、予定到着時刻を現在の時刻と、目的地位置を現在位置と単に比較することに基づいている。明らかに、ユーザの直線進行が想定されている。このことは、通常は非直線である現実世界の進行と相関しない。したがって、特許文献1で提案される手法は、本質的に不正確である。
【0018】
従来技術のこうした問題に対処することが本発明の目的である。本明細書で提示する遅延情報方法/システムにより、位置決定機能を備えない又は位置決定が可能ではない状況にあるユーザ・デバイスに実時間遅延情報を提供することが可能になる。更に、遅延情報方法/システムは、遅延情報の正確さを改善することを目的とする。
【0019】
一方では、本発明の遅延決定は、輸送手段の運営者が発行した時刻表よりも詳細な参照スケジュール4に基づく。上記で概説したように、こうした運営者の時刻表は、輸送手段の停車駅又は駅に関する目標時刻を単に含むだけである。しかし、この情報は、本発明では中間駅の間の位置、即ち区間内の位置に関する参照情報を何も提供しないため不十分であるとみなされている。運営者の時刻表を補う1つの可能性は、中間駅の間の輸送手段の直線進行を仮定し、それに応じて直線補間により時刻表を「埋める」ことである。しかし、本発明では詳細参照スケジュール4を導入し、この詳細参照スケジュール4は、中間駅の間のスケジュール通りの輸送手段の実際の現実世界進行をより正確に反映することを目的とする。この目的で、詳細参照スケジュール4は、それぞれの運営者の時刻表から取得できる中間駅における目標時刻情報に加えて、経路に沿ったあらゆる任意の場所に対する目標時刻情報を含む。言い換えれば、詳細参照スケジュール4は、運営者が規定した駅の到着時刻及び出発時刻のみを示すだけでなく、具体的には、定刻通りである輸送手段の更なるタイムスタンプ付き参照位置も含み、この位置は、任意、即ち停車駅又は駅とは無関係である。本明細書で提示する遅延決定に従って動作する発展システムでは、詳細参照スケジュール・データは、本発明の遅延決定により含まれる各関係のために存在することになる。例えば、既に述べたTGVの例を再度参照すると、毎日10時ニース発のニース発パリ行きTGVのための詳細参照スケジュール・データ、及び毎日正午ニース発のニース発パリ行きTGVのための更なる詳細参照スケジュール・データがあることになる。そのような詳細参照スケジュール4を確立するいくつかの可能性があり、以下で更に説明する。1つの可能性は、定刻通りであった輸送手段に関連する位置基準要求からのデータを収集することによる、いわゆる「社会的手法」である。この詳細参照スケジュール4は、予定停車駅のみを参照データとして使用する時刻表基準(timetable−based)手法と比較して参照データの細分性を増大させることにより、輸送手段の遅延のより厳密な決定を可能にする。
【0020】
一方、本発明の遅延決定方法は、当該輸送手段についての実時間遅延情報を収集するログブック5を利用する。ログブック5は、以下のように実施される位置基準遅延決定により生成した実時間遅延情報で記入される(
図1の左手の分岐により可視化される)。
【0021】
輸送手段上に位置する又は輸送手段にいる乗客は、携帯電話、スマートフォン、ラップトップ、タブレット・コンピュータ等のモバイル・ユーザ・デバイス1を備える。ユーザ・デバイス1は、輸送手段の実時間遅延に関する要求を生成する。要求には、輸送手段の現在位置と同一である、ユーザ・デバイス1の少なくとも現在位置を含む。現在位置は、サーバに発行されるか、或いはキャッシュ機構を使用してユーザ・デバイス1でローカルに処理できる(これは、以下でより詳細に説明する)。次に、要求は、サーバによって受信されるか、又はユーザ・デバイス1の内部で受信される。次に、要求は、輸送手段の遅延を計算するために処理される。要求内に示された現在位置、及び更には要求に関連するタイムスタンプに基づいて、詳細参照スケジュール4が調べられ、定刻通りの輸送手段に関するそれぞれのタイムスタンプ付き参照位置を使用して輸送手段の実時間遅延を計算する(
図1の囲み12)。遅延計算の詳細は、以下で更に説明する。得られた遅延情報は、
図1の囲み8で、(再度、サーバによって又はユーザ・デバイス1内部で)ユーザ・デバイス1に返送される。しかし更に、計算した遅延情報は、ログブック5内に記録、保存される。
【0022】
位置基準決定により入手した遅延情報を記入したログブック5は、純粋な時間基準決定を促進し(
図1の右手の分岐に示す)、この純粋な時間基準決定は、ユーザ・デバイス1による位置決定を何も伴わずに機能する。位置基準要求を以前に発行したユーザ・デバイスと同じであっても、別であってもよいユーザ・デバイス1は、時間基準要求を生成し、この時間基準要求は、上記した位置基準要求とは対照的に、ユーザ・デバイス1の現在位置の表示を含まない。その理由は、デバイス1が以下の理由によりその現在位置を決定できないという可能性がある:デバイス1が位置決定手段を全く備えていないため、デバイス1が本発明の遅延決定の目的では不十分である不正確な位置決定手段しか備えていないため、或いは例えば有効範囲がない、人工衛星へのフリー・ライン・オブ・サイトがない、輸送手段から離れている(例えば関心をもっているユーザが家にいる)等が原因で要求の時点で位置決定が不可能であるため、のいずれかである。ユーザの輸送手段に関連するログブック・データをこの時間基準要求に基づいて決定できるという条件で、輸送手段の遅延を決定し(
図1の囲み7)、ログブック5内で利用可能な実時間遅延入力に基づき、輸送手段に関する遅延情報を返送する(再度、
図1の囲み8)ことが可能である。
【0023】
このようにして、輸送手段に関する実時間遅延情報は、乗客のユーザ・デバイス1上に表示される。実時間遅延情報には、例えば運営者の時刻表による駅、具体的には次の駅(現在の区間の終了点)への輸送手段の予定到着時刻、輸送手段の現在の時間遅延、並びに次の目的地及び/又は最終目的地におけるそれぞれの起こり得る実到着を含むことができる。
【0024】
上記で概説したように、位置関連要求及び時間関連要求の両方は、タイムスタンプに関連する。このタイムスタンプを使用して、輸送手段が要求の時間に位置すると思われる区間を決定し、実時間遅延を計算する。基本的には、タイムスタンプを生成するには2つの方法がある。1つの可能性は、ユーザ・デバイス1による要求内にタイムスタンプを直接含めることである。したがって、このオプションにより、要求はタイムスタンプを実際に含む。もう1つの可能性は、要求の受信時にのみタイムスタンプを生成することである。このオプションは、(以下で更に説明するキャッシュ機構を使用してユーザ・デバイス1で要求をローカルに処理するのとは反対に)サーバが要求を中央で処理する場合、特に有用である。タイムスタンプをサーバで生成すると、全ての要求が1つの同じサーバ側クロックによりタイムスタンプ付けされるので、一貫した時間管理が保証される。また、(要求内にタイムスタンプを含める)最初のオプションを使用する場合、即ちユーザ・デバイス1が信頼できるクロックと同期する場合も同様の一貫した時間管理が可能である。
【0025】
既に上記で示したように、詳細参照スケジュール4を確立し、移動手段の必要な任意のタイムスタンプ参照位置を作成する仕方のいくつかのオプションがある。上記の始めで既に説明したように、こうしたタイムスタンプ付き参照位置は、輸送手段の駅又は停車駅とは無関係な経路上のあらゆる場所を指すので「任意」である。詳細参照スケジュール4を確立する1つの可能性は、輸送手段運営者の協働とは無関係な、いわゆる「社会的手法」である。したがって、参照スケジュールは、運営者の輸送手段のネットワーク及び時期条件について詳細データを配信する運営者の善意を当てにする必要がなく利用できる。社会的手法は、輸送手段上に位置するユーザ・デバイス1が発行した実位置基準要求を利用する。こうした要求のそれぞれが輸送手段の位置及び関連するタイムスタンプ(即ちタイムスタンプ+位置ペア)をもたらすので、これらは、一般に有益なデータベースを提供する。詳細参照スケジュール4の入力が参照タイムスタンプ付き位置として働くと同時に、収集したデータの検証が実施される。全部の数の収集したタイムスタンプ+位置ペアのうち、定刻通りであった輸送手段(即ち運営者の時刻表に従って進行した輸送手段)に属するペアをシークし、定刻通りではなかった輸送手段による残りのデータ・セットを破棄する。この分類は、運営者が参照時刻を設定した駅付近の位置を有するタイムスタンプ+位置ペアを見ることによって実施できる。駅付近の位置を有するペアが運営者の時刻表が規定した時刻に対応する場合、それぞれの輸送手段は定刻通りであったとみなされ、この輸送手段から収集した全てのタイムスタンプ+位置ペアは有効であるとみなされ、詳細参照スケジュール4内に含められる。
【0026】
詳細参照スケジュール4を確立するための更なる任意選択の代替形態は、輸送手段上の専門職員によって生成されることができる人為的な要求、輸送手段の運営者によるそれぞれのデータのシミュレーション又はプロビジョンである。
【0027】
ログブック5は、輸送手段の現在位置を示さない要求への応答時、基本的に2つの方法で利用される(
図1の囲み7)。1つの方法は、要求中のユーザ・デバイス1にログブック5内の輸送手段に関する直近の実時間遅延入力を単に返送することである。このオプションは、ログブック5内のこの直近の入力が最新であり、したがって輸送手段の現在の実時間遅延を正確に反映する場合、特に適している。ログブック5内の最終入力の最新さは、例えばログブック入力のタイムスタンプと要求に関連するタイムスタンプとの比較により決定される。これら2つのタイムスタンプ間の差異が所与の閾値を下回る、例えば5分若しくは10分未満である場合、又は依然として輸送手段の現在の区間内にある場合、最終ログブック入力の正確さが想定され、この直近のログブック入力の遅延情報が返送される。輸送手段の現在位置を表示しない要求に対してログブック5を利用するもう1つの方法は、遅延の傾向を評価するためにログブック入力を補外することである。補外は、直近のログブック入力がかなり古く(例えば最終入力のタイムスタンプと要求のタイムスタンプとの差異が前述の所与の閾値を上回る)、したがってタイムスタンプが古くなっているようであり、輸送手段の実際の実時間遅延を正確に反映しないおそれがある場合に適切であると考えることができる。適切に適用できる補外技法は、指数平滑法である。補外の結果は、ユーザ・デバイス1に返送される。
【0028】
同様に、輸送手段の現在位置を示す要求への応答時の実時間遅延計算(
図1の囲み12)に関して様々なオプションがある。例えば、詳細参照スケジュール4が、要求内に示された輸送手段の現在位置に対応するタイムスタンプ付き参照位置を含む場合、詳細参照スケジュール4内のその位置に関連する参照タイムスタンプと、要求に関連するタイムスタンプとの差異を計算すれば十分である。2つのタイムスタンプ間の差異は、輸送手段の正確な実時間遅延であり、ユーザ・デバイス1に返送される(
図1の囲み8)。一方で、詳細参照スケジュール4が要求内に示される位置と対応する参照位置を含まない場合、2つの更なるオプションがある。要求内に示される位置に最も近い参照位置を求めて詳細参照スケジュール4を探索すること、及び直前で説明したように(即ち詳細参照スケジュール4内のその位置に関連する参照タイムスタンプと要求に関連するタイムスタンプとの間の差異を計算することによって)実時間遅延を計算することのいずれかである。しかし、このことは、一定の不正確さをもたらし、この不正確さは、2つの位置(即ち詳細参照スケジュール4内の位置及び要求内の位置)が互いにずれるほどたくさんになる。この不正確さを最小にするために、代替的に、要求内に示される位置付近の詳細参照スケジュール4内のタイムスタンプ付き位置に対して直線補間技法を利用できる。
【0029】
詳細参照スケジュール・データが、適用される各関係及び輸送手段に対して存在することは上記で既に簡単に概説した。したがって、正確な輸送手段又はそれぞれの関係及び対応する詳細参照スケジュール・データをユーザ・デバイスの要求から演繹する必要がある。要求と輸送手段/関係/詳細参照スケジュール・データとの間を関連付ける1つのオプションは、要求内に含まれる識別符号であり、この識別符号が輸送手段の識別を可能にする。そうすると、この識別符号は、正確な時刻表データ、(要求内に含まれる地理的位置の使用による)現在の区間、及び詳細参照スケジュール4内の関連データに対して結論付けることが可能である。1つの実装例では、この識別符号は、乗客の旅程情報に関するPNRデータベースに問い合わせることを可能にするパッセンジャー・ネーム・レコード(PNR)識別子である。この旅程情報は、乗客が現在使用している輸送手段の関係に関する情報を含むことができる。代替的に、PNR識別子以外の識別符号は、要求内に含まれる。例えば、ユーザ・デバイス1は、現在使用している輸送手段及び関係それぞれの入力をユーザに促すことができ、乗客がこの情報を手入力すると、次にこの情報は要求内に含まれる。
【0030】
任意選択の実装形態では、位置基準決定は、要求中のユーザ・デバイス1における詳細参照スケジュール4のキャッシュ化を含む。例えば、ユーザ・デバイス1は、特定の輸送手段に関する最初の位置基準要求を遅延決定サーバに誘導する。サーバは、乗客が現在使用している輸送手段の関係に関連するデータを含む詳細参照スケジュール4を維持する。ユーザ・デバイス1の位置基準要求は、上記のように遅延決定サーバによって処理され、計算した実時間遅延は、ユーザ・デバイス1に返送される。しかし、キャッシュ化を使用する任意選択の実装形態では、乗客の現在の輸送手段に属する詳細参照スケジュール・データも、実時間遅延情報と共に、又は実時間遅延情報がサーバにより返送される前若しくは返送された後個別のメッセージでユーザ・デバイス1に転送される。次に、詳細参照スケジュール・データをユーザ・デバイス1のキャッシュ・メモリ内にバッファリングする。したがって、同じユーザ・デバイス1によるその後の位置基準要求は、位置基準要求を遅延決定サーバに送信する必要性を何も伴わずにユーザ・デバイス1でローカルに処理できる。このようにして、ユーザ・デバイス1が外部通信リンクを何も起動する必要なしに位置基準遅延計算が可能になり、したがって例えば、無線有効範囲外の領域で実施できる。
【0031】
この結果、ユーザ・デバイス1に無線リンクがないためにキャッシュ化詳細参照スケジュール4を使用して位置基準遅延決定がユーザ・デバイス1でローカルに実施された場合は、ローカルで計算した実時間遅延情報を遅延決定サーバ内に維持できるログブック5内に保存できない。このことが生じた場合、ローカルで計算した実時間遅延情報も、ユーザ・デバイス1のローカル・ログブック内でローカルにバッファリングすることになる。より後の時点で再度無線リンクが利用可能である場合、ユーザ・デバイス1は、バッファリングした実時間遅延情報を遅延決定サーバに送信し直し、すると情報が(中央のサーバ側)ログブック5内に導入される。
【0032】
ユーザ・デバイス1におけるキャッシュ化は、乗客が現在使用している輸送手段の詳細参照スケジュール・データに限定されなく、他の情報にも有用に拡大できる。例えば、更なる詳細参照スケジュール・データは、乗客が使用しそうな将来の輸送手段に関係する可能性があり、そのような接続輸送手段も、同様にユーザ・デバイス1でキャッシュ化できる。ユーザ・デバイス1で利用可能なバッファ・スペース及びユーザ・デバイス1が利用可能な通信リンク帯域幅に鑑みて実行可能である場合、将来の乗客に関連し得る、より多くの又は全ての詳細参照スケジュール・データがユーザ・デバイス1に転送され、そこでローカルの位置基準遅延決定用に保存される。更に、ユーザ・デバイス1による最初の位置基準要求への応答時、サーバ側ログブック5もユーザ・デバイス1に転送され、そこでキャッシュ化できる。このキャッシュ化したログブックは、時代遅れになるので、より長い時間期間で更新しない場合は重要性を失うが、遅延決定サーバを調べる必要性を何も伴わずにユーザ・デバイス1で時間基準決定をローカルに実施することを可能にする。データがユーザ・デバイスでキャッシュ化される程度は、ユーザ・デバイスの利用可能なリソース(例えば空いているバッファ・スペース、通信リンクの質)とキャッシュ化データにより達成可能な起こり得る改良事項との兼ね合いである。
【0033】
上記で概説した基本的手法、即ち位置基準遅延要求及びそれらの計算結果の収集によってログブック5に実時間遅延情報を記入することは、更なる適用例に活用できる。例えば、ログブック5が維持する情報は、駅のディスプレイ、インターネットを介してアクセス可能なウェブサイト又はウェブ・サービス、RSS又はSMSのようなプッシュ・サービス、或いはあらゆる他のブロードキャスト型情報配信チャンネルに転送できる。したがって、それぞれの輸送手段上で移動していない他の人々は、自分の現在位置とは無関係に本発明の実時間遅延決定機構から恩恵を受けることができる。
【0034】
更に、輸送手段の実時間遅延についての情報を得ることを必ずしも対象としないメッセージによる実時間遅延システム及びログブック5を供給することは、本明細書で提示する手法の範囲内である。むしろ、そのようなメッセージは、遅延を実際に要求することなく輸送手段の現在の遅延をシステムに通知する目的を純粋に務める可能性がある。例えば、駅職員、実際の若しくは潜在的な旅行者のような人々又は関心がある他の人々は、例えばGSM、SMSを使用してメッセージを遅延決定サーバに送信でき、それにより特定の輸送手段の場所及び現在の遅延を示す。そのようなメッセージに応答して、遅延決定サーバは、情報の検証を実施し、情報が有効である可能性が高いことがわかった場合、ログブック5に遅延の表示を追加する。
【0035】
次に、より詳細な説明に目を向けると、
図2は、本発明の実時間遅延決定のより具体的な例を示す。
図1と同様に、
図2の左手分岐は、位置基準遅延決定を示す一方で、右手側の分岐は、時間基準遅延決定を指す。
【0036】
図2の例では、ユーザ・デバイス1は、ローカルにインストールされた遅延決定アプリケーションを備えるスマートフォンであり、この遅延決定アプリケーションは、遅延決定要求を生成するように構成される。スマートフォンは、情報をユーザに表示するようにし、またユーザが本発明の遅延決定を始動させたい場合にユーザ入力を可能にするように構成したグラフィカル・ユーザ・インターフェースを有する。スマートフォンは、2G、3G及び/又は4G送受信器、並びに/或いはWiFi IEEE802.11等の他の移動通信規格に対し動作する送受信器による移動通信インターフェースも備える。こうした通信インターフェースは、移動通信、具体的には遅延決定要求の送信及び実時間遅延情報の受信を促進する。
【0037】
更に、スマートフォンは、GPS送受信器を備え、したがってGPS衛星への通信リンクが確立できるという条件でその場所を決定できる。GPSが何らかの理由で利用可能ではない場合、スマートフォン1は、三角測量又は観測時間差技法等他の位置決定方法を利用できる。位置決定が可能である場合、スマートフォン1は、ユーザからのそれぞれの入力コマンドの後、位置基準遅延決定を開始する。スマートフォン1は、その位置を決定し、得られた地理的位置を要求内に含める。更に、現在時刻を示すタイムスタンプをスマートフォン1が生成した要求内に含める。代替的に、上記で説明したように、タイムスタンプは、要求内に含まれないが、全体的な時間整合性の理由でサーバ側でのみ取得される。最後に、PNR識別を要求内に含める。ユーザにPNR識別の入力を促すか、それぞれの情報がスマートフォン1でローカルに入手可能な場合はPNR識別が自動的に生成されるかのいずれかである。スマートフォン1が位置基準要求を作成し終わると、位置基準要求を適切な移動通信リンクにより遅延決定サーバ47に送信する(サーバは
図2に示されておらず、全体的なシステムの高レベル構造は、
図10を参照して以下で更に説明する)。
【0038】
要求がサーバにより受信された後、要求内に含まれる地理的位置及びPNR識別を利用して、ユーザが現在位置する輸送手段(より正確には輸送手段の関係)、より具体的には輸送手段が現在位置する経路の現在の区間を決定する。この目的で、遅延決定サーバ47は、PNRデータベース2等の旅行情報システムに適切に接続される。PNRデータベース2の概略図を
図3により示す。PNRデータベース2は、ユーザの移動の旅程情報を含む。移動は、A発B行きのフライト及びB発C行きの接続電車の移動等、いくつかの区分から構成できる。区分のうち1つは、ユーザが位置し遅延決定要求が関連する現在の輸送手段により形成される。以下において、例示的な理由でB発C行きの電車移動の例に言及するが、この例は輸送手段の種類に関していかなる限定ももたらさないものとする。要求が関連する輸送手段を発見する本発明の目的で、PNRデータベース2に保持されるそれぞれの識別情報は、最も関心があるもの、即ちユーザが旅程に従ってB発C行きの移動のために乗るはずである電車のIDである(
図3を参照)。
【0039】
電車ID(例えば「Tr1」)を入手した後、サーバ47も利用可能である電車運営者の正確な時刻表3を参照することが可能である。時刻表3の一例を
図4により示す。時刻表は、いくつかのパラメータ、中でも電車ID、駅ID(「stID」)、駅の地理的位置(「lat」は緯度、「lng」は経度の略であり、度で示す)並びに出発時刻(「ArrTD」)及び到着時刻(「DepTD」)を含むことができる。したがって、
図4の非常に単純な例によれば、電車Tr1の起点駅はlat43.55度、lng7.02度に位置するSt1である。電車は、St1から7:30に出発すると想定される。次の停車駅は、lat43.59度、lng7.12度に位置する中間駅St2である。この電車は、中間駅St2に8分後の7:38に到着し、2分間の滞在後7:40に出発する。最終目的地は、lat43.70度、lng7.28度に位置する駅St3であり、8:01に到着すると想定される。更に、時刻表3は、駅の地理的位置情報及び駅間の距離情報、即ち区間の長さを含むことができる(
図4には示さない)。時刻表3に問い合わせる目的は、輸送手段が現在位置する区間(言い換えれば運営者の時刻表3による次の計画停車駅)を決定することである。したがって、要求内に含まれる地理的位置は、時刻表3への問合せの引数として渡され、現在の区間を抽出する。したがって、工程は、(要求内に当初から含まれる)地理的位置、(要求内に含まれるか又はサーバによる要求の受信時に設定した)タイムスタンプ及び(直前に説明したPNRデータベース2及び時刻表3の調査により決定される)区間に更に進む。
【0040】
次のステップは、詳細参照スケジュール4の更新である(
図2の囲み10)。上記で既に詳細に説明したように、詳細参照スケジュールは、任意のタイムスタンプ付き参照位置、即ち運営者の時刻表3に従って定刻通りである輸送手段のタイムスタンプ+位置ペアを含む。詳細参照スケジュール4の一例を
図5により示す。詳細参照スケジュール4は、電車ID(例えばTr1、Tr2)、区間ID、タイムスタンプ及び位置(lat、lng)を含む。
図5の例によれば、電車Tr1は、7:35に座標lat43.56度、lng7.11度にあり、7:36に座標lat43.57度、lng7.11度にあることが想定され、以下同様である。任意のタイムスタンプ付き参照位置をこのように収集すると、移動手段の運動曲線を形成し(
図7を参照)、この運動曲線は、検証したタイムスタンプ付き参照位置データを含めば含むほどより正確になる。
【0041】
上記のように、詳細参照スケジュール表4を確立し、充実させるための1つの手法は、実際に発生した位置基準ユーザ要求を収集し詳細参照スケジュール表内に保存する、いわゆる「社会的手法」である。詳細参照スケジュール表4の更新ステップ10は、まさにこの目的の役割を果たす。更新ステップ10は、既に十分な有効データが詳細参照スケジュール表4内に存在する場合には必要ではないので、概して任意選択なステップである。更新10とは、地理的位置とタイムスタンプとのペアが詳細参照スケジュール表に参照データとして追加されることを意味する。しかし、この任意選択の追加が実施された場合、続いて、更なる処理、即ち検証11が実行される。追加されたタイムスタンプ付き参照位置は、実際に参照位置の役割を果たすのに適切であることを保証するために検証する必要がある。追加されたタイムスタンプ付き参照位置は、輸送手段(即ち本例では電車Tr1)が実際に定刻通りである場合にのみ、適切である。上記で既に説明したように、特定のTr1が定刻通りであるか否かの決定は、詳細参照スケジュール表に追加された任意のタイムスタンプ付き位置を時刻表3の参照データと一致させることにより行うことができる。検証を実施していない限り、フラグ「有効」内の対応する評価は、「No」に設定される(
図5を参照)。まだ検証されていない入力が有効であることがわかると、「有効」フラグの評価は、「Yes」に変更される。入力が無効である(即ち電車が定刻通りではなかった)ことがわかると、その入力は、詳細参照スケジュール表4から削除される。
【0042】
次に、位置基準遅延決定は、詳細参照スケジュール表4内のタイムスタンプ付き参照位置の検証済み入力に基づく遅延の実際の計算に進む(
図2の囲み12)。スマートフォン1による要求から発生した地理的位置を詳細参照スケジュール表4に対して試験する。詳細参照スケジュール表4が、要求の地理的位置と完全一致する参照位置を含む場合、参照時刻は詳細参照スケジュール表4から単純に取得できる。別様には、この地理的位置に関する参照時刻は、要求の地理的位置の直前及び直後の、詳細参照スケジュール表4内の参照位置に関連する時間を直線補間することにより計算される。また、詳細参照スケジュール4が、現在の区間に対して非常に少数のタイムスタンプ付き参照位置しか含まない又は停車駅/駅を除き全く入力を含まないことを考慮に入れる。このことは、特に、本発明の遅延決定の展開の初期段階、又は(電車の時刻表に例えば1年に2回生じる)基礎をなす時刻表を変更した後のケースであり得る。この場合、詳細参照スケジュール4は、運営者の時刻表から取得できるデータを少なくとも含み、遅延は、時刻及び地理的位置表示の直線補間を使用することにより計算される。
【0043】
詳細参照スケジュール4が出発駅St1(7:30に出発)及び終着駅St3(08:01に到着)に関する参照時刻のみを含むことを仮定する一例を
図6により示す。2つの駅の間の距離は、時刻表に存在するか(
図4を参照)、又は以下の式:
距離(Stl,St3)=円弧(cos(lat_Stl−lat_St3)cos(lng_Stl)cos(lng_St3)+sin(lng_Stl)sin(lng_St3))
[注意:正弦・余弦式の引数はラジアンで示される。]
km単位の距離=距離(Stl,St3)×6372.795477598
の使用による駅の地理的位置から推定される。
【0044】
ユーザ・デバイス1から受信した位置基準要求内に示される現在の地理的位置と、次の駅又は詳細参照スケジュール4内の参照位置との間の距離も同様に計算される。次に、直線補間を以下の三の法則を使用して実施する:
Tp=TI×Dp/DI
式中、Tpは、輸送手段の直線進行を仮定する次の参照位置に到達するのに必要な時間であり、TIは、輸送が以前の参照位置から次の参照位置まで移動を完了するのに必要な参照時刻であり、Dpは、現在の場所と次の参照位置との間の距離であり、DIは、2つの参照位置間の距離である(
図6に示す特定の例示的な数字を参照)。したがって、
図6の例では、要求内に示された地理的位置及び詳細参照スケジュール4に含まれるデータによる計算から得られた参照時刻である7:42、25秒(8:01−17分35秒)において、電車Tr1は、要求内に示されるlat43.65度;lng7.15度の参照位置に位置すべきである。
【0045】
得られたこの参照時刻と要求に関連するタイムスタンプとの差異が計算され、これが電車Tr1の要求された実時間遅延である。
【0046】
位置基準要求による遅延計算12の一例を
図7を参照して示す。
図7は、詳細参照スケジュール表4によって規定される電車Tr1の参照運動曲線を示す。位置は図のX軸上に描かれ、時間はY軸上に描かれる。前述のように、この運動曲線は、例えばタイムスタンプ+位置ペアの収集によって確立され、このタイムスタンプ+位置ペアは、定刻通りであったまさにその関係に属する輸送手段に関連する位置基準要求内に含まれる。より多くの入力が生成され、詳細参照スケジュール4内に収集されるほど、より正確で完全な運動曲線になる。この運動曲線を使用すると、電車Tr1の参照時刻が、入力パラメータとして要求内に含まれる地理的位置により決定される。例えば、運動曲線によれば、lat43.65度、lng7.25度の地理的位置は、7:52の参照時刻に対応する。次に、この参照時刻を要求に関連するタイムスタンプの実際の時刻と比較する。このタイムスタンプが8:12を示す場合、実時間遅延は、20分である。
【0047】
図2に戻って参照すると、位置基準遅延決定工程は、ログブック表5の更新に進む(囲み13)。既に上記で説明したように、ログブック表5の目的は、要求と共に位置情報を提供できない乗客に実時間遅延情報を入手可能にすることである。詳細なログブック表5の一例を
図8により示す。ログブック表5は、電車ID(例えばTr1、Tr2)、詳細参照スケジュール表4(例えば「計画時刻」)からの参照情報、及び時刻表3(出発駅[「stDep」]、次の到着駅[「stArr」]、計画出発時刻[「planDep」]、及び計画到着時刻[「planArr」])を含む。具体的には、ログブック表5は、要求及び遅延計算からの実時間情報を含み、即ち要求内に示された地理的位置(「lat、lng」)、要求に関連するタイムスタンプ(「実時間」)、遅延(「遅延」)及び推定される次の駅への到着(「realArr」)を含む。
【0048】
最後に、次の到着駅等の要求された実時間遅延情報、及び実時間遅延値は、移動通信インターフェースを介してスマートフォン1に返送される(
図2のステップ8)。次に、スマートフォン1にインストールされたクライアント・ソフトウェアは、情報を乗客に表示する。
【0049】
次に、
図2の右側に示す時間基準遅延決定を参照すると、スマートフォン1は、GPS信号が微弱すぎる又はGPSリンクが全く利用可能ではない状況では、その現在位置を示さずに時間基準要求を生成する。したがって、時間基準要求は、タイムスタンプ(代替的にはサーバ側にだけ追加した可能性がある)及びPNR識別のみを含む。要求は、サーバ47に送信される。PNRデータベース2及び時刻表3は、位置基準決定に関して前に述べたように電車IDを判断するために調べられる。このように電車IDを判断した後、ログブック表5に電車IDを使用して問い合わせて、以前の位置基準遅延決定により生成した、存在する可能性のある実時間遅延情報をシークするようにする。例えば、ログブック表5が乗客の電車の現在の区間に対する入力を含むことが判断された場合、その入力に関連する遅延が選ばれる。
【0050】
図8の例では、電車Tr1は、駅St2とSt3との間の第2の区間上にあると仮定される。時刻表によれば、電車Tr1は、駅St2を7:40に出発し、St3に8:01に到着したはずである(
図4及び
図5も参照)。その移動の途中で、2つの位置基準要求が生じ、処理され、計算した実時間遅延は、ログブック表5内に保存されている。Tr1がSt1とStとの間のその第1の区間に依然としてある間に第1の位置基準要求が7:46で生じた。10分の遅延が検出された。後に、Tr1がSt2とSt3との間の第2の区間に進行したとき、8:12で別の位置基準要求を受信し、20分の更に増大した遅延が決定された。ここで、8:15で時間基準要求をサーバ47が受信したと仮定すると、ログブック5が調べられ、わずか3分前の電車Tr1の現在の区間に関する8:12の入力が発見される。この入力の遅延値、即ち20分の遅延が決定される(
図2の囲み7)。次に、遅延及び例えば次の到着駅St3は、乗客に情報を表示するスマートフォン1に返送される。
【0051】
以下では、上記で既に概説したキャッシュ化機能を含む位置基準決定及び時間基準遅延決定の実装例を
図9a、
図9b及び
図9cの流れ図を参照してより詳細に説明する。
図9aは、遅延決定に関する要求が発行されるまでのユーザ・デバイス1で進行する工程を示す。
図9bは、サーバ47における要求の処理を示す。最後に、
図9cは、遅延決定結果がサーバ47により返送された後のユーザ・デバイス1側での動作を再度可視化する。
【0052】
一般に、関連するデータ・フローは、以下の条件に従って分類できる:
(i)位置決定機能及び移動通信リンクの両方がユーザ・デバイス1で利用可能である。
(ii)位置決定機能が利用可能である。しかし、移動通信リンクは利用可能ではない。
(iii)位置決定機能を実装しないか又は一時的に利用不可能である。しかし、移動通信リンクは、利用可能である。
(iv)位置決定機能も、移動通信リンクも利用可能ではない。
【0053】
(i)(位置決定機能及び移動通信リンクが利用可能である)の場合のデータ・フローは、以下の通りである。
【0054】
19で開始した後、工程は、ユーザ・デバイス1内に存在するか又はユーザが手入力したPNR識別の検証チェック20を始める。次に、21で移動通信リンクの利用可能性をYesと確認した後、29でユーザ・デバイス1はキャッシュを検証する。キャッシュが空である場合、移動通信リンクを利用し、PNR識別により参照した輸送手段に関する詳細参照スケジュール・データ及び現在の遅延情報をダウンロードするようにする。この目的で、30でキャッシュ更新メッセージがサーバ47に送信される。キャッシュ更新メッセージに応答して、サーバ47は、そのデータベース(即ちPNRデータベース2、時刻表3、詳細参照スケジュール4及びログブック5)に問い合わせ、対応するデータをユーザ・デバイス1に返送する。ユーザ・デバイス1は、これらのデータをそのキャッシュに保存する。すると、キャッシュは、例えば現在の輸送手段に関する時刻表データ、具体的には、次の到着駅、現在の輸送手段の詳細参照スケジュール・データ、及びログブック5内で入手可能な現在の輸送手段の最近の電車遅延情報を含む。これらの情報は、位置決定機能及び/又は移動通信リンクがない場合の現在の輸送手段の実時間遅延の計算又は推定には十分である。
【0055】
更に、27でユーザ・デバイス1はGPS信号が利用可能かどうかを確認しYesの結果がもたらされる。次に、28でユーザ・デバイス1は位置基準要求を生成し、これをサーバ47に送信する。サーバ側(
図9b)では、31でサーバ47は乗客が現在使用している輸送手段に関連する時刻表3が既に利用可能かどうかを確認する。そうでない場合には、32で輸送手段の運営者によるそれぞれの時刻表情報を抽出できる。これらのデータをできるだけ迅速に含めることができるように、サーバ47は、適切には運営者及び運営者の時刻表データベースへの通信リンクを有する。
【0056】
33でユーザ・デバイス1が受信した要求が地理的位置を含むことをYesと決定した後、サーバ47は、要求内に含まれる地理的位置の検証を任意選択で実施する(
図9bには示さない)。この検証機能は、要求内に含まれた地理的位置がPNRにより示される電車の経路と一致することを保証することである。この検証を実施するために、電車経路のその地理的位置に関する記述は、サーバ47が利用可能である。次に、要求内に示された地理的位置は、経路の地理的位置参照情報と比較される。要求の地理的位置が「経路範囲内」であると判断された場合、即ち要求の地理的位置が経路上の場所に一致する、又はその場所に少なくともほぼ一致する場合、要求の地理的位置は有効であるとみなされる。経路の地理的位置参照情報は、輸送手段の運営者、外部の地図サービスから入手でき、サーバ47のオペレータにより推定でき、及び/又は受信した相当数の位置基準要求によって収集しこれらから演繹できる。更に、経路上又は経路に近いが電車の実位置から実質的に離れている地理的位置を示す要求(例えば次の駅で既に待機している将来の乗客又は前の駅で既に電車を離れた以前の乗客によって生成された要求)は、要求の地理的位置やタイムスタンプ・ペアと詳細参照スケジュール4及び/又はログブック5内に既に含まれている情報とを適合させることによって除外できる。例えば、電車が既に通り過ぎた地理的位置を示す要求は、ログブック5が経路を既に遠くに離れている地理的位置に関する入力を含む場合除外できる(そのような古くなった要求は、ログブック5に基づいて依然として処理でき、例えばログブック5内に含まれる最新の実時間遅延を返送できる)。別の例として、ログブック5の入力を考慮することにより電車がまだ到着するはずがない将来の地理的位置を示す要求も除外できる(同様に、そのような要求への応答時、最新の実時間遅延情報をやはり返送できる)。概して、要求により示された地理的位置を電車の現在位置に関連しないように判断する場合、そのような要求は、時間基準要求と同様に処理される。即ち、地理的位置は存在ないとみなされ、実時間情報はログブック5を利用して返送できる。
【0057】
この任意選択の検証ステップに続いて、サーバ47は、位置基準遅延決定を実行する(
図9bの右手側に示す)。
図2を参照して既に上記で詳細に説明したように、この方法は:
−41で、ユーザ・デバイスの要求内に含まれる地理的位置を使用して時刻表3に問い合わせることによって現在の区間を決定すること;
−42で、区間及び地理的位置を有する詳細参照スケジュール4に問い合わせ、適用可能な場合は、詳細参照スケジュール4内に保持されるタイムスタンプ付き参照位置を補間すること;
−43で実時間遅延を計算し、44で次の駅への対応する推定到着時刻を計算すること;並びに
−45で、少なくともタイムスタンプ(「実時間」)、計算した実時間遅延(「遅延」)及び次の駅(「stArr」)への推定実到着時刻(「realArr」)を有するログブック5を更新すること
を含む。
【0058】
次に、40でサーバ47は次の到着駅、推定実到着時刻及び計算した実時間遅延等、得られた実時間遅延情報をユーザ・デバイス1に返送する。移動通信リンクを介してそれぞれのメッセージを受信した後(
図9c)、46でユーザ・デバイス1はこうした情報で、ユーザ・デバイス1自体のキャッシュを更新し、その情報をグラフィカル・ユーザ・インターフェースを介してユーザに提示する。48で工程は終了する。
【0059】
(ii)(位置決定機能は利用可能−移動通信リンクは利用不可能)の場合のデータ・フローは、以下の通りである。
【0060】
移動通信リンクが利用できないことが既に21の初めで決定された場合、22でユーザ・デバイス1はユーザにより示された輸送手段に関連するキャッシュ化情報が利用可能かどうかを確認する。これがYesである場合、23で遅延決定はユーザ・デバイス1でローカルに可能である。キャッシュ化データがユーザの輸送手段に関する詳細参照スケジュール・データを含むという条件で、位置基準要求を生成し、ユーザ・デバイス1によって内部で、移動通信リンクが利用可能であった場合にサーバ47によって処理したのと同様に処理する。基本的な唯一の差異は、45でサーバが実施したであろうログブック5の更新が移動通信リンクなしではユーザ・デバイス1には不可能であることである。したがって、ユーザ・デバイス1は、関連データをローカル・ログブック内にバッファリングし、後で再度移動通信リンクが利用可能になったときにサーバ側ログブック5を更新する(この動作は
図9aには示さない)。ユーザ・デバイス1がローカルに計算した遅延情報をユーザに提示し、24で工程は終了する。
【0061】
(iii)(移動通信リンクは利用可能、位置決定機能は利用不可能)の場合のデータ・フローは、以下の通りである。
【0062】
この場合、時間基準遅延決定が実施される。この工程は、データ・フロー・ケース(i)を参照して上記で説明したように、ステップ19から21、29及び30を伴ってユーザ・デバイス1で再度開始される。27でユーザ・デバイス1はGPS信号が利用可能ではないことを決定する。次に、25で移動通信リンクの存在を再検証する。
【0063】
例え移動通信リンクがその間はなかったとしても、一般に、この場合遅延決定はステップ22及び23でローカルに可能である。というのは、キャッシュがステップ29及び30で以前に更新されており、必要な参照データ及びログブック・データはキャッシュ内にローカルに存在するはずであるからである。現在のシナリオでは、現在位置がユーザ・デバイス1にとって未知であるので、ローカルの遅延決定は、ログブック・データが入手可能であるという条件で(
図9bを参照して次に説明するように)サーバ47が実施したような時間基準遅延決定に対応する。或いは、(例えば事前に、輸送手段の現在の移動に関する位置基準要求が何もなかったので)ログブック・データがキャッシュ化されない場合、時刻表3内に含まれる少なくとも参照データをユーザに表示できる。この分岐では、次に、24で工程は終了する。
【0064】
25で再検証により移動通信リンクが依然として存在又は利用可能であることを確認した場合、26でユーザ・デバイス1は時間基準要求を生成する。要求は、PNR識別及び現在時刻のタイムスタンプを含む(上述したように、タイムスタンプはサーバ47が要求を受信したときにサーバ47によって後で追加するだけであることも可能である)。サーバ側では(今度は再度
図9bを参照して)、ステップ31及び32を前に説明したように実行する。33での決定は要求が地理的位置を含まないこと、即ち要求が時間基準要求であることを示す。したがって、サーバ47は、
図9bの左手に視覚化した時間基準遅延決定を実施する。
【0065】
34で、サーバ47はPNR識別により示された輸送手段がログブック5内に存在するかどうかを確認する。そうでない場合には、ステップ35及び37で、サーバは時刻表情報を少なくとも抽出しようとし、39で例えば次の到着駅及び予定到着をユーザ・デバイス1に返送する。このことは予定到着時刻にすぎず、実到着時刻ではないことを強調する警告又は注意を含めることが可能である。時刻表3内に含まれる予定到着情報が何らかの理由でアクセス可能ではない場合であっても、38でエラー・メッセージがユーザ・デバイス1に返送されることになる。
【0066】
34のテストによりユーザの現在の輸送手段に関する実時間遅延情報がログブック5内で入手可能であることが判明した場合、36で時間基準遅延計算が実施される。輸送手段の現在の区間に関係するログブック5内の入力は、制約条件、実時間≦タイムスタンプ≦realArrを適用することによって抽出される。パラメータ「実時間」及び「realArr」は、ログブック入力の一部である(
図8を参照)。「実時間」値は、ログブック5の入力に誘導された以前の位置基準要求のタイムスタンプに対応する。「realArr」値は、以前の実時間遅延決定により推定された、次の駅の実到着を指す。したがって、現在の時間基準要求に関連するタイムスタンプの値以下である「実時間」値を有するログブック入力は、以前の遅延決定の結果を含む。現在の時間基準要求に関連するタイムスタンプ値以上である「realArr」の値を有するログブック入力は、おそらく、ユーザの輸送手段が位置する現在の区間を指す。しかし、「realArr」が要求のタイムスタンプよりも小さい場合、それぞれの入力が以前の区間を指し、輸送手段が既に次の到着駅に到着していることを想定できる。このことは、この入力が示した遅延がもはや最新ではないことの指摘である可能性がある。
【0067】
実時間遅延の計算方法は、ログブック入力回数及びそれらの時間値によって異なる。例えば、ログブック5が輸送手段の現在の区間に言及する1回の入力を含む場合、そのログブック入力の次の到着駅(「stArr」)、推定到着時刻(「realArr」)及び遅延値(「遅延」)は、36で抽出され、40でユーザ・デバイス1に返送される。一方、ログブック入力のいずれもが上記の条件(即ち実時間≦タイムスタンプ≦realArr)を満たさない場合、38でエラー・メッセージのみを返送できる。代替的に、少なくとも予定される情報(次の到着駅、予定到着)は、時刻表3から抽出でき、ユーザ・デバイス1に返送できる。しかし、ログブック5が以前の区間のみに関連するいくつかの入力を含む場合(即ちタイムスタンプ≧realArr)、こうしたより古い入力の遅延値に対して補外を実施でき、得られた遅延値を大まかな推定として返送できる。この場合、やはり、遅延情報が不正確であり得るという警告又は注意を追加する可能性がある。最後に、工程はユーザ・デバイス1に戻る(
図9c)。実現可能な場合(即ち実時間遅延情報がサーバ47により提供された場合)、46でユーザ・デバイス1はそのキャッシュを更新し、48で工程は終了する。
【0068】
最後に、(iv)(位置決定も移動通信リンクも利用可能ではない)の場合のデータ・フローは、以下の通りである。
【0069】
21でユーザ・デバイス1が移動通信リンクを利用できないことを既に最初に決定した場合、ローカルの時間基準決定は、ログブック・データが以前にキャッシュ化されている場合又は少なくとも時刻表データをユーザに提示できる場合に可能とすることができる。この場合、ケース(ii)を参照して上記で示したステップ22及び23の説明に言及できる。ログブック及び/又は時刻表データがキャッシュ内で利用可能ではない、したがって22での確認がNoである場合、24で工程は終了する。
【0070】
しかし、移動通信リンクが21で利用可能である場合、29及び30でキャッシュが更新される。次に、移動通信リンクがその後解除され、25で通信リンクのないことが決定された場合、22及び23で時間基準遅延決定が可能であるはずである。このことは、ケース(iii)を参照して詳細に説明したサーバによる時間基準遅延決定と同様である。この場合、同様に24で工程は終了する。
【0071】
図10は、本発明の遅延決定システムの可能な構成の高レベル概観を示す。この例では、ユーザ・デバイス1は、GPS送受信器50の形態の位置決定機能を含む。キャッシュ化機能を実装するために、ユーザ・デバイス・メモリ(揮発性RAM又はフラッシュ・メモリ等の不揮発性メモリのいずれか)の特定部分をキャッシュ53として利用する。本発明の遅延決定のクライアント関連機能は、遅延決定移動体アプリケーション51によって実装される。ユーザ/乗客とのコミュニケーションは、タッチ・スクリーン等のグラフィカル・ユーザ・インターフェースを介して可能である。グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、とりわけユーザがPNR番号等自分の旅程情報又は輸送手段関係情報を入力し、実時間遅延情報を表示させるために使用される。
【0072】
一方、サーバ側47は、ウェブ・サービスをユーザ・デバイス1に提供する。サーバ側47は、基礎をなすデータ、具体的には時刻表3、詳細参照スケジュール4及びログブック5を維持するインフラストラクチャを備える。電車の実時間遅延計算を対象とする例では、サーバ側インフラストラクチャは、レール・ディストリビューション・プラットフォーム54(RDP)、レールITサーバ55及びデータベース56を備える。
【0073】
図11及び
図12は、例示的スマートフォン1のグラフィカル・ユーザ・インターフェースの一例を視覚化しており、スマートフォン1により、スマートフォン1上にインストールしたソフトウェアが、決定した実時間遅延情報をユーザに表示する。
図11により示すメイン画面は、輸送手段の識別情報(「インターシティ12345」)、次の計画停車駅(「ピサ」)、この次の駅に関連する予定される情報(「予定到着2011年10月19日、20:10」)、その駅への推定実到着(「実到着2011年10月19日、20:15」)及び遅延(「遅延:5分」)を示す。更にその下に、輸送手段の実位置及び特定の主要停車駅(「ナポリ」、「ローマ」、「トリノ」)が示される。輸送手段が定刻通りであった駅は、例えば緑色の背景色によって特に強調される。輸送手段が遅延した、又はおそらくは遅延する駅は、例えば赤色の背景色によって異なる様式で強調できる。例えば「スケジュール詳細」と表示されたボタンは、表形式概観の主要駅に関する予定到着/出発時刻及び計算した到着/出発時刻(
図12により示す)にユーザを誘導する。追加又は代替として、予定到着/出発時刻及び計算した到着/出発時刻と共に区間の完全なリスト及び次の到着駅が提示される。
【0074】
最後に、
図13は、ユーザ・デバイス1の内部構造の模式図である。ユーザ・デバイス1は、本明細書で論じた方法のうちいずれかをユーザ・デバイス1に実施させる1組の命令を実行するように構成される。移動通信デバイスは、プロセッサ121、メイン・メモリ122及びワイヤレス・ネットワーク・インターフェース123(Wi−Fi及び/又はBluetoothインターフェース等)並びに/又は2G/3G/4G移動ネットワーク・インターフェース・デバイス(図示せず)を含み、これらは全てバス124を介して互いに通信する。移動通信デバイスは、スタティック・メモリ125、例えば取り外しができないフラッシュ・ドライブ若しくはソリッド・ステート・ドライブ、又は取り外し可能Micro SDカード若しくはMini SDカードを更に含み、これら取り外し可能Micro SDカード若しくはMini SDカードは、ユーザ・デバイス1がローカル遅延決定機能を実行可能にしサーバ側インフラストラクチャ47と通信可能にするソフトウェアを永続的に保存する。更に、移動通信デバイスは、ディスプレイ127、好ましくはタッチ・スクリーン、ユーザ・インターフェース(タッチ・スクリーン)制御モジュール129及び任意選択で追加の(非仮想)英数字・カーソル入力デバイス128(そのような入力デバイスが存在する場合)を含む。ワイヤレス・ネットワーク・インターフェース・デバイス123は、ユーザ・デバイス1をサーバ側インフラストラクチャ47に接続する。任意選択のGPS送受信器126は、位置決定を可能にする。上記した方法のいずれか1つ又は全てを具現化する1組の命令(即ちソフトウェア)130は、完全に又は少なくとも部分的にスタティック・メモリ125中に常駐する。それぞれの命令及び/又はデータは、実行時メイン・メモリ122及び/又はプロセッサ121内に常駐する。ソフトウェア130は、伝播信号132として、ワイヤレス・ネットワーク・インターフェース・デバイス123又は2G/3G/4G移動ネットワーク・インターフェースを介して或いはインターネットを介して
図10により示したサーバ側インフラストラクチャ内のサーバに更に送信/サーバから受信できる。
【0075】
サーバ側インフラストラクチャ47は、これらの構成要素の一部又は全部がワイヤレス・ネットワーク・インターフェース及びGPSモジュールのいずれももたない場合があることを除いて同様に構築される。
【0076】
本発明の教示に従って構築される特定の製品及び方法を本明細書で説明してきたが、本特許が包含する範囲は、それらに限定されるものではない。反対に、本特許は、文字通り又は等価物の原理下、添付の特許請求の範囲内に適正に入る本発明の教示の全ての実施形態を包含する。