特許第6184528号(P6184528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184528自動車の変位部材用のスピンドル駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184528
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】自動車の変位部材用のスピンドル駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   F16H25/20 F
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-560694(P2015-560694)
(86)(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公表番号】特表2016-513778(P2016-513778A)
(43)【公表日】2016年5月16日
(86)【国際出願番号】EP2014054374
(87)【国際公開番号】WO2014135646
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】102013003830.8
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
【氏名又は名称原語表記】Brose Fahrzeugteile GmbH & Co. KG, Bamberg
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ザクスシュテッター
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−242839(JP,A)
【文献】 特開平06−321013(JP,A)
【文献】 実開平06−061543(JP,U)
【文献】 特開2012−225444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の変位部材(1)用のスピンドル駆動装置であって、駆動ユニット(2)と、駆動技術的に該駆動ユニット(2)の下流側に接続された、駆動装置の直線運動を生ぜしめるためのスピンドル−スピンドルナット伝動装置(3)とが設けられており、該スピンドル−スピンドルナット伝動装置(3)は、スピンドル(8)と、該スピンドル(8)に噛み合うスピンドルナット(9)とを有しており、当該スピンドル駆動装置は、モータによる変位に際して伸縮するように互いに内外に延びている2つの駆動装置部分(10,11)を有しており、前記スピンドル(8)は、一方の駆動装置部分(10)に対応配置されており、前記スピンドルナット(9)は、他方の駆動装置部分(11)に対応配置されており、前記両駆動装置部分(10,11)は、相対回動防止を意図してトルク伝達式に結合されているものにおいて、
モータによる変位に際して前記スピンドルナット(9)は、スピンドル側の前記駆動装置部分(10)のガイド管(15)内のスピンドル軸線(7)に沿って移動すると共に、前記ガイド管(15)に対して相対回動防止されており、
横断面で見て、前記ガイド管(15)内の少なくとも1つの加工成形部(16)は、前記スピンドルナット(9)の領域に対応配置された対応加工成形部(17)と、相対回動を防止してトルクを伝達するように係合しているか、又は係合させられるようになっており、互いに対応配置された前記両加工成形部(16,17)は、前記トルク伝達のために、半径方向の力成分を形成しつつ、くさび式に協働し、
駆動装置の直線運動をガイドする2つの接続部(12,13)が設けられており、一方の接続部(12)は、前記スピンドル側の駆動装置部分(10)に結合されており、他方の接続部(13)は、前記スピンドルナット側の駆動装置部分(11)に結合されており、前記スピンドルナット(9)は、スピンドルナット管(14)を介して、前記スピンドルナット側の接続部(13)に結合されており、前記スピンドルナット管(14)は、少なくとも部分的に、前記スピンドル側の駆動装置部分(10)の前記ガイド管(15)内に進入しており、
前記スピンドルナット(9)は、前記スピンドルナット管(14)に設けられた少なくとも1つの開口(20)を半径方向に貫通して突出しており、前記スピンドルナット(9)の貫通突出部分は、前記スピンドルナット側の加工成形部(17)の少なくとも一部を相対回動防止するものであることを特徴とする、自動車の変位部材(1)用のスピンドル駆動装置。
【請求項2】
前記相対回動防止と、相応してトルクを伝達する係合とは、両回動方向で有効に形成されている、請求項1記載のスピンドル駆動装置。
【請求項3】
横断面で見て、前記ガイド管側の加工成形部(16)又は前記スピンドルナット側の対応加工成形部(17)は凸状に形成されており、これに相応して前記スピンドルナット側の対応加工成形部(17)又は前記ガイド管側の加工成形部(16)は凹状に形成されている、請求項1又は2記載のスピンドル駆動装置。
【請求項4】
横断面で見て、前記ガイド管側の加工成形部(16)及び/又は前記スピンドルナット側の対応加工成形部(17)は、少なくとも部分的に湾曲されて形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項5】
横断面で見て、前記ガイド管側の加工成形部(16)及び/又は前記スピンドルナット側の対応加工成形部(17)は、50°未満くさび角が生じるように、なだらかに形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項6】
前記ガイド管側の加工成形部(16)と、前記スピンドルナット側の加工成形部(17)とは、それぞれ複数設けられている、請求項1から5までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項7】
前記ガイド管側の複数の加工成形部(16)及び/又は前記スピンドルナット側の複数の対応加工成形部(17)は、前記スピンドル軸線(7)を中心として均等に配分されて配置されている、請求項6記載のスピンドル駆動装置。
【請求項8】
横断面で見て、前記ガイド管側の加工成形部(16)及び/又は前記スピンドルナット側の対応加工成形部(17)は閉じられており、断面で見て、前記ガイド管側の加工成形部(16)及び/又は前記スピンドルナット側の対応加工成形部(17)は、閉じられた1つの環状輪郭の構成部分である、請求項1から7までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項9】
記スピンドルナット(9)は、前記スピンドルナット管(14)内であって、前記スピンドルナット管(14)の一方の端部に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項10】
記開口(20)を貫通して突出している前記スピンドルナット(9)の部分は、前記開口(20)の縁部(20a)を越えて側方に延びている、請求項1から9までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項11】
求項1から10までのいずれか1項記載の、自動車の変位部材(1)用のスピンドル駆動装置であって、駆動ユニット(2)と、駆動技術的に該駆動ユニット(2)の下流側に接続された、駆動装置の直線運動を生ぜしめるためのスピンドル−スピンドルナット伝動装置(3)とが設けられており、該スピンドル−スピンドルナット伝動装置(3)は、スピンドル(8)と、該スピンドル(8)に噛み合うスピンドルナット(9)とを有しており、当該スピンドル駆動装置は、モータによる変位に際して伸縮するように互いに内外に延びている2つの駆動装置部分(10,11)を有しており、前記スピンドル(8)は、一方の駆動装置部分(10)に対応配置されており、前記スピンドルナット(9)は、他方の駆動装置部分(11)に対応配置されており、前記両駆動装置部分(10,11)は、相対回動防止を意図してトルク伝達式に結合されているものにおいて、
モータによる変位に際して前記スピンドルナット(9)は、スピンドル側の前記駆動装置部分(10)のガイド管(15)内のスピンドル軸線(7)に沿って移動すると共に、前記ガイド管(15)に対して相対回動防止されており、
横断面で見て、前記ガイド管(15)内の少なくとも1つの加工成形部(16)は、前記スピンドルナット(9)の領域に対応配置された対応加工成形部(17)と、相対回動を防止してトルクを伝達するように係合しているか、又は係合させられるようになっており、
前記スピンドルナット(9)は、プラスチック射出成形部材として形成されており、前記スピンドルナット(9)及び前記スピンドルナット側の加工成形部(17)は、相対回動を防止するために、前記スピンドルナット管(14)の内部若しくは前記スピンドルナット管(14)に接してプラスチック射出成形法で射出成形されている、求項1から10までのいずれか1項記載の、自動車の変位部材(1)用のスピンドル駆動装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の特徴を備える、請求項11記載のスピンドル駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、自動車の変位部材用のスピンドル駆動装置、並びに請求項11の上位概念に記載の相応するスピンドル駆動装置に関する。
【0002】
「変位部材」という概念は、本発明では広く解釈され得るものであり、例えば自動車のテールゲート、トランクリッド、エンジンフード、サイドドア、フロアパネル、サンルーフ等が含まれる。以下は自動車のテールゲートをモータにより変位させる適用分野が中心となっているが、これに限定されるものではない。
【0003】
テールゲートのモータ操作の枠内では、ここ数年でスピンドル駆動装置が有利であることが分かった。本発明では、高いコンパクト性並びに小さな重量が中心となる。
【0004】
本発明の起点となる公知のスピンドル駆動装置(独国実用新案第202005000559号明細書)は、一般に2つの駆動装置部分を有しており、そのうち一方の駆動装置部分はスピンドルに対応配置されており、且つ他方の駆動装置部分は、スピンドルと噛み合うスピンドルナットに対応配置されている。
【0005】
両駆動装置部分には、駆動装置の直線運動をガイドする各1つの接続部が対応配置されている。これらの接続部が、幾何学的なスピンドル軸線を中心として回動させられないようにするためには、両駆動装置部分の相対回動が防止されている。
【0006】
スピンドルナットは、公知のスピンドル駆動装置では、スピンドルナット管を介してスピンドルナット側の接続部に結合されている。スピンドルナット側の接続部からは、外側のケーシング管が、スピンドル側の接続部に向かって延びている。スピンドル側の接続部から出発して、やはり1つのケーシング管がスピンドルナット側の接続部に向かって延びており、スピンドル側のケーシング管は、スピンドルナット側のケーシング管に進入している。
【0007】
公知のスピンドル駆動装置の場合、回動防止部は、両ケーシング管から成るケーシングに統合されている。詳細には、両ケーシング管は、相対回動を防止してトルクを伝達するように、互いに結合されている。このことは、例えば溝−キー結合により行われる。
【0008】
公知のスピンドル駆動装置における欠点は、ケーシングの重量削減型の設計が、回動防止に結びつく荷重に基づき、狭い範囲でしか可能でない、という事実である。
【0009】
本発明の根底を成す課題は、公知のスピンドル駆動装置を改良して、スピンドル駆動装置の機能範囲を損なうこと無しに、ケーシングに関する構造上の制約を減らすことにある。
【0010】
この課題は、請求項1の上位概念に記載のスピンドル駆動装置において、請求項1の特徴部に記載の特徴により解決される。
【0011】
まず構造的に重要なのは、スピンドル側の駆動装置部分に対応するガイド管が設けられており、該ガイド管内で、スピンドルナットがスピンドルナット管と共にガイドされている点である。
【0012】
更に重要なのは、上述した両駆動装置部分間の回動防止を保証するために、スピンドルナット若しくはスピンドルナット管と、ガイド管との間の係合が利用される点である。このために、横断面で見てガイド管の内側領域に少なくとも1つの加工成形部が、スピンドルナット及び/又はスピンドルナット管の外側領域に対応配置された対応加工成形部を備えて設けられている。
【0013】
提案に基づき回動防止部を内側に移動させたことにより、必然的に回動防止部は比較的大きな力を加えることになる。溝−キー結合の場合、このことは相応して、溝の延在部に対して横方向の大きな剪断応力を生ぜしめることになっていた。そこで、提案に基づく第3の観点の解決手段が投じられる。つまり詳細には、互いに対応配置された両加工成形部が、回動を防止してトルクを伝達するために半径方向の力成分を形成しつつ、くさび式に協働するようになっている。つまり、回動防止はくさび面を介したねじりモーメントの支持に基づくものである。極端な場合には溝−キー結合の破壊につながることがある剪断応力は、この提案による解決手段では全く、又は僅かにしか発生しない。支持のために必要とされる力の少なくともかなりの部分が、くさび面を介して半径方向の力に「方向転換させられる」。
【0014】
「くさび式の協働」という概念は、本発明では広義に解釈され得るものであり、ねじりモーメントの支持が、半径方向の力成分に基づき支持の少なくとも一部を変換する何らかの性質を持った面を介して行われることを意味する。この面は、相応する力の方向転換が前記のようにくさび式に行われる限り、広い意味でのくさび面である。
【0015】
指摘しておくと、「半径方向」及び「接線方向」という概念は常に、幾何学的なスピンドル軸線に対するものである。「横断面」は、本発明では常に、スピンドル軸線に対して横方向の断面を意味する。
【0016】
請求項3記載の特に好適な構成では、ガイド管側の加工成形部と、対応配置されたスピンドルナット側の対応加工成形部とが互いに相補的に形成されていることにより、両加工成形部の内外での形状接続的な係合が達成されており、このことはねじりモーメントの支持において、特に均等な力配分を生ぜしめる。
【0017】
請求項4記載の別の好適な構成では、前記加工成形部は、少なくとも部分的に湾曲されて形成されている。これにより、不都合なノッチ効果が小さな手間で低下され得る。
【0018】
1つの好適な態様において、まさに半径方向の力成分は、構造的に簡単な手段で吸収可能であることがわかったので、当該ユニットは容易に浅いくさび角で設計され得る(請求項5)。
【0019】
請求項8記載の特に好適な構成では、加工成形部が、横断面で見て閉じられた輪郭を形成していることによって、構造的に極めて安定的な構成が実現され得る。上述した浅いくさび角に基づき、回動防止部の半径方向の所要スペースは小さくなるので、特にガイド管において複数の半径方向の開口を省くことができる。
【0020】
独立した意義を有する、請求項11記載の別の教示では、スピンドルナットがプラスチック射出成形部材として形成されており、この場合、スピンドルナットは、スピンドルナット側の加工成形部と共に相対回動を防止するために、スピンドルナット管の内部若しくはスピンドルナット管に接してプラスチック射出成形法で射出成形されている。この場合、前記加工成形部間のくさび式の協働は、かならずしも重要ではない。
【0021】
むしろこの別の教示において重要なのは、スピンドルナットがスピンドルナット側の加工成形部と共に、特に簡単に製造され得る点である。これに関連して特に強調すべきは、スピンドルナット若しくはスピンドルナット側の加工成形部の取付けステップが完全に省かれる、という事実である。その他の点においては、前記第1の教示に基づくスピンドル駆動装置に関する記載を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】提案によるスピンドル駆動装置を備えた自動車のリヤの概略側面図である。
図2図1に示した、提案によるスピンドル駆動装置であって、a)は組み立てられた状態、b)は部分的に分解された状態を示す図である。
図3図2a)に示したスピンドル駆動装置を、断面線III−IIIに沿って断面した図である。
【0023】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0024】
図示のスピンドル駆動装置は、テールゲートとして形成された自動車の変位部材1を、モータにより変位させるために用いられる。更に、以下で詳細に説明するように、提案によるスピンドル駆動装置の別の適用分野が考えられる。
【0025】
スピンドル駆動装置には一般に、駆動ユニット2と、駆動技術的に駆動ユニット2の下流側、即ち出力側に接続された、駆動装置の直線運動を生ぜしめるためのスピンドル−スピンドルナット伝動装置3とが装備されている。この場合、駆動ユニット2は、本実施形態において好適には管状の、特に一体の駆動ユニットケーシングと、駆動ユニットケーシングに内蔵された駆動モータ5と、駆動技術的に駆動モータ5の下流側(出力側)に接続された中間伝動装置6とを有している。駆動モータの構成に応じて、中間伝動装置6は省かれてもよい。
【0026】
駆動ユニット2と、スピンドル−スピンドルナット伝動装置3とが、幾何学的なスピンドル軸線7上に連続的に配置されていることにより、特に細長い構成が得られる。
【0027】
ここで再度指摘しておくと、「半径方向」及び「接線方向」という概念は常に、スピンドル−スピンドルナット伝動装置3の幾何学的なスピンドル軸線7に対するものである。分かりやすい説明という意味で、以下、同様の明確な指摘は省く。
【0028】
スピンドル−スピンドルナット伝動装置3には一般に、スピンドル8とスピンドルナット9とが装備されており、この場合、スピンドルナット9はスピンドル8と噛み合っている。
【0029】
スピンドル駆動装置は2つの駆動装置部分10,11を有しており、これらの駆動部分10,11は、モータによる変位に際して伸縮するように互いに内外に延びており且つ相対回動を防止されている。この場合、スピンドル8は駆動装置部分10に対応配置されており、スピンドルナット9は駆動装置部分11に対応配置されている。
【0030】
駆動装置の直線運動をガイドするために、2つの接続部12,13が設けられており、このうち一方の接続部12は、スピンドル側の駆動装置部分10に結合されており、且つ他方の接続部13は、スピンドルナット側の駆動装置部分11に結合されている。図2b)には、スピンドルナット9がスピンドルナット管14を介して、スピンドルナット側の接続部13に結合されていることが示されている。
【0031】
まず最初に重要なのは、スピンドルナット9がスピンドルナット管14と共に幾何学的なスピンドル軸線7に沿って、スピンドル側の駆動装置部分10のガイド管15内でガイドされており、この場合、スピンドルナット9若しくはスピンドルナット管14と、ガイド管15との間で相対回動が防止されている点である。詳細には、幾何学的なスピンドル軸線7に対して横方向の横断面で見てガイド管15の内側領域に設けられた少なくとも1つの加工成形部16が、スピンドルナット9、本実施形態では好適にはスピンドルナット管14、の外側領域に対応配置された対応加工成形部17と、相対回動防止されてトルクが伝達されるように係合している。加工成形部16と対応加工成形部17とは最終的に形状接続部(形状的な束縛、例えば係合による結合部)を形成し、この形状接続部により相対回動が防止される。更に説明するように、本実施形態では好適には複数の加工成形部16と対応加工成形部17とが設けられている。
【0032】
特に重要なのはまず、横断面で見て互いに対応配置された各2つの加工成形部16,17が、前記トルク伝達のために半径方向の力成分を形成しつつ、くさび式に協働する、という事実である。既に指摘したが、「くさび式」とは、半径方向の力成分が、場合により生じ得るねじりモーメントの支持に関与することを意味している。このために加工成形部16,17は、くさび面、延いてはくさび式の協働が得られるように形成されている。このことは図3に示す断面図から最も良く看取され得る。
【0033】
それぞれ対応配置された加工成形部16,17の、提案によるくさび式の協働は、上述したように、特にコンパクトであると同時に、加工成形部16,17に接線方向で作用する極小さな剪断応力に基づき摩耗の少ない変形部をもたらす。
【0034】
図3には、加工成形部16,17に関して、それぞれ楔面18,19が示されている。この場合は理想的な、なだらかなくさび面18,19を備えた理想的なくさびユニットではない、ということが明らかになる。本発明ではむしろ、ユニットの幾何学形状から、提案による加工成形部16,17間のくさび式の協働が得られる、ということを問題にしている。更に図3では、加工成形部16,17の対称性に基づき、両回動方向に回動防止されていることが明らかになる。
【0035】
図3において、スピンドルナット側の駆動装置部分11に対してスピンドル側の駆動装置部分10を左に回動させるためには、加工成形部16の一部16aが、対応加工成形部17の一部17aに係合させられる。図3からは、この場合、接線方向の支持力Ftのみならず、半径方向の支持力Frも発生することが看取され得る。図3の記載は、ガイド管側の加工成形部16と、対応配置されたスピンドルナット側の対応加工成形部17とが互いに相補的に形成されていることにより、両加工成形部16,17は実質的に形状接続的に、互いに内外で係合し合う、という点においても重要である。図3に示した好適な実施形態では、横断面で見て対応配置された加工成形部16,17により形成された輪郭は、それぞれ少なくとも部分的に極めて類似して形成されている。
【0036】
詳細には本実施形態において好適には、ガイド管側の加工成形部16は凸状に形成されており、これに相応してスピンドルナット側の対応加工成形部17は凹状に形成されている。このユニットは、特にガイド管15の制限された壁厚さに関して有利である。但し基本的には、ガイド管側の加工成形部16が凹状に形成されており、これに相応してスピンドルナット側の対応加工成形部17が凸状に形成されていることが想定されていてもよい。「凸状」及び「凹状」という概念は広義に理解され得るものであり、屈曲した延在部に限定されるものではない。
【0037】
図3に示した実施形態では更に、横断面で見て、ガイド管側の加工成形部16と、スピンドルナット側の対応成形部17とは、それぞれ部分的に湾曲されて形成されている、という事実が特に有利である。これにより、上で述べたようなノッチ効果は大幅に低下され得る。基本的には、両加工成形部16,17のうちの一方だけが適宜に湾曲されて形成されていることも考えられる。
【0038】
提案によれば、互いに対応配置された両加工成形部16,17は、くさび式に、つまりくさび角αを形成するくさび斜面18,19を介して協働する。好適には、横断面で見て得られるくさび角αは50°未満であり、好適には45°未満である。詳細には、くさび角αは30°〜35°の範囲にあると好適である。この小さなくさび角は、ガイド管側の加工成形部16と、スピンドルナット側の対応加工成形部17とが、それぞれなだらかに形成されていることによって実現され得る。但し基本的には、このようなくさび角αを実現するためには、両加工成形部16,17のうちの一方だけがなだらかに形成されていれば十分である。
【0039】
本発明ではほぼ一貫して、ガイド管側の1つの加工成形部16と、スピンドルナット側の1つの対応加工成形部17とについてのみ言及している。但し図3には、ガイド管側の複数の加工成形部16と、スピンドルナット側の複数の対応加工成形部17とが設けられていることが示されている。単一のガイド管側の加工成形部16と、単一のスピンドルナット側の対応加工成形部17とについての全ての記載は、複数の加工成形部16,17についても同様に当てはまる。
【0040】
均等な力配分を得るために、1つの好適な実施形態では、ガイド管側の複数の加工成形部16と、スピンドルナット側の複数の対応加工成形部17とが、幾何学的なスピンドル軸線7を中心として均等に配分されて配置されている。これに相応して、ガイド管側の加工成形部16も、スピンドルナット側の対応加工成形部17も、互いに120°の角度で間隔をおいて配置されている。
【0041】
加工成形部16,17のくさび式の協働に基づき、ガイド管15において複数の開口を容易に省くことができる。これに相応して加工成形部16,17は、横断面で見て閉じられた輪郭を形成している。特に好ましい構成において、好適には、横断面で見てガイド管側の加工成形部16と、スピンドルナット側の対応加工成形部17とはそれぞれ、1つの閉じられた環状輪郭の構成部分である。基本的にこのことは、両加工成形部16,17のうちの一方だけに当てはまっていてもよい。
【0042】
スピンドルナット9の構成は、図示の好適な実施形態では特に重要である。まず最初に重要なのは、スピンドルナット9が、スピンドルナット管14、本実施形態では好適にはスピンドルナット管14の一方の端部、に配置されている点である。これにより、物理的に可能な限り、スピンドル駆動装置は離間可能であることが保証される。
【0043】
そこで重要なのが、スピンドルナット9は、スピンドルナット管14に設けられた少なくとも1つの開口20を半径方向に貫通して突出しており、スピンドルナット9の貫通突出部分9aは、スピンドルナット側の対応加工成形部17の少なくとも一部を、回動防止している、という事実である。図3には更に、本実施形態では好適には、開口20を半径方向に貫通して突出しているスピンドルナット9の部分9aが、側方に、つまり半径方向に対して垂直な方向に、開口20の縁部20aを越えて延びていることが示されている。このことは、スピンドルナット9がプラスチック射出成形部材として形成されており、且つスピンドルナット9が、回動防止用のスピンドルナット側の対応加工成形部17と共に、スピンドルナット管14内に、若しくはスピンドルナット管14に接して、プラスチック射出成形法で射出成形されていることによって、最良に実現され得る。これに関連して、スピンドルナット管14を射出成形型に挿入し、スピンドルナット9をスピンドルナット側の対応加工成形部17と共に、単一の射出成形過程において製造することが考えられる。
【0044】
これに関連して、スピンドルナット9は第1のプラスチック材料から射出成形されており、少なくとも1つのスピンドルナット側の対応加工成形部17は第2のプラスチック材料から射出成形されていることも考えられる。この場合、第2のプラスチック材料は、好適には第1のプラスチック材料よりも柔軟であり、これにより、両加工成形部16,17の協働の緩衝特性が改善される。
【0045】
前記のようにプラスチック射出成形法で製造された、スピンドルナット管14内に配置されたスピンドルナット9を備える前記スピンドル駆動装置は、独立した意義を有する別の教示に関するものである。加工成形部16,17のくさび式の協働の実現は、この別の教示では必ずしも重要ではない。その他の点については、第1の教示に関して上述したあらゆる記載を参照されたい。
【0046】
最後に指摘しておくと、ガイド管15は、特に好適な構成では、プラスチックから形成されている。これはとりわけ、互いに対応配置された加工成形部16,17のくさび式の協働に基づき、ねじりモーメントの少なからぬ部分が、半径方向の力成分によって支持され得ることによって可能である。
図1
図2
図3