特許第6184564号(P6184564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6184564
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】水門装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20170814BHJP
   E02B 7/36 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   E02B7/20 109
   E02B7/36
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-152834(P2016-152834)
(22)【出願日】2016年8月3日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241290
【氏名又は名称】豊国工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】下見 広司
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−101739(JP,A)
【文献】 特開2012−251404(JP,A)
【文献】 実開昭58−090222(JP,U)
【文献】 特開2000−027164(JP,A)
【文献】 実開昭50−006922(JP,U)
【文献】 特開2001−311130(JP,A)
【文献】 特開2003−147752(JP,A)
【文献】 実開平06−056130(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20、7/22
E02B 7/26、7/32
E02B 7/36、7/40
E02B 7/42
E02B 3/04−3/14
E04H 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側にローラを有する扉体が、左右一対の円弧状の戸当りに沿って、前記ローラが前記戸当りの内部を転動する態様で、開閉装置により巻き取られるチェーンを介して昇降する水門装置であって、
前記扉体は、左右両側の、前記ローラよりも昇方向側の位置に、前記扉体に固定された軸を回転軸として回転し、前記戸当りの内部に配置される動スプロケットを備え、該動スプロケットに前記チェーンが巻き掛けられていることを特徴とする水門装置。
【請求項2】
前記チェーンは、前記戸当りの、前記扉体昇方向側の端部に固定される固定側端部と、前記開閉装置により巻き取られる巻取側端部とを備え、前記固定側端部から前記動スプロケットまでの部位の少なくとも一部が、前記戸当りの円弧中心側の内面に当接することを特徴とする請求項1記載の水門装置。
【請求項3】
前記チェーンの巻取側端部は、回転自在に固定設置された転向スプロケットを介して、前記開閉装置により巻き取られることを特徴とする請求項2記載の水門装置。
【請求項4】
前記チェーンの固定側端部が力点側に接続される梃部材と、該梃部材の作用点側に作用する力に基づいて、前記チェーンの過負荷及び緩みを検出する緩み過負荷検出装置と、を備えることを特徴とする請求項2又は3項記載の水門装置。
【請求項5】
前記転向スプロケットが取り付けられる取付台と、該取付台を少なくとも部分的に支持するための支持台と、該支持台に加わる前記取付台の荷重に基づいて、前記チェーンの過負荷及び緩みを検出する緩み過負荷検出装置と、を備えることを特徴とする請求項3記載の水門装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円弧状の戸当りに沿って昇降する扉体を有する水門装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
景観の観点や、上部に送電線等の障害物がある等の理由で、扉体を高く引き上げることができない場合、円弧状の戸当りに沿って扉体を昇降させることで、全開時の扉体を傾斜させ、鉛直に昇降させる場合よりも扉体位置を低く抑えた水門設備が利用される。このような水門設備として、例えば、特許文献1の発明が提案されている。この発明は、円弧状の戸当りを有する水門装置において、開閉装置として採用されている油圧シリンダ方式の景観等の課題を、チェーン方式を採用することで解決するものであった。一方、特許文献2には、チェーンを利用した水門設備において、チェーンの緩み及び過負荷を検出する検出装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−101739号公報
【特許文献2】特開2015−129390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の発明は、戸当り内にチェーンを1条しか設けることができない構成であった。このため、チェーン1条あたりの負担荷重の限界から、その適用範囲が限られ、油圧シリンダ方式に比較して、大荷重に対応できないという課題があり、更に、特許文献2に開示されたような検出装置が設置できなかった。又、特許文献1の発明は、戸当り内に配設された軌条によってチェーンが案内されるが、大荷重に適した水門用のチェーンとして主に採用されているのは、ローラが設けられていないブッシュドチェーンであるため、チェーンが摺動した場合にチェーンや戸当り内面に摩耗が発生する虞がある。一方、ブッシュドチェーンに代えて、ローラが設けられたローラチェーンを採用すると、サイズアップやコストアップが問題となる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チェーンを利用して開閉する水門装置において、開閉荷重の上限を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)左右両側にローラを有する扉体が、左右一対の円弧状の戸当りに沿って、前記ローラが前記戸当りの内部を転動する態様で、開閉装置により巻き取られるチェーンを介して昇降する水門装置であって、前記扉体は、左右両側の、前記ローラよりも昇方向側の位置に、前記扉体に固定された軸を回転軸として回転し、前記戸当りの内部に配置される動スプロケットを備え、該動スプロケットに前記チェーンが巻き掛けられている水門装置(請求項1)。
【0008】
本項に記載の水門装置は、円弧状に設けられた左右一対の戸当りに沿って、チェーンを介して昇降する扉体を有する水門装置であり、扉体の左右両側には、戸当りの内部を転動するローラが取り付けられている。更に、扉体の左右両側には、ローラが取り付けられた位置よりも昇方向側の位置に、動スプロケットが取り付けられている。この動スプロケットは、戸当りの内部において、扉体に固定された軸を回転軸として回転するものであり、開閉装置によって巻き取られるチェーンが巻き掛けられている。このため、扉体は、左右両側の各々において、動スプロケットに巻き掛けられることで実質的に2条となるチェーンを介して、昇降することになる。これにより、1条のチェーンを介して扉体を昇降する場合と比較して、チェーンにかかる荷重が約1/2に低減されるため、扉体の開閉荷重の上限が約2倍に向上されるものとなる。しかも、チェーンが巻き掛けられる動スプロケットは、ローラよりも扉体の昇方向側の位置に設けられるため、ローラがチェーンに干渉することはないものである。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記チェーンは、前記戸当りの、前記扉体昇方向側の端部に固定される固定側端部と、前記開閉装置により巻き取られる巻取側端部とを備え、前記固定側端部から前記動スプロケットまでの部位の少なくとも一部が、前記戸当りの円弧中心側の内面に当接する水門装置(請求項2)。
【0010】
本項に記載の水門装置は、扉体の昇降に利用されるチェーンが、固定側端部と巻取側端部とを備えており、固定側端部は、戸当りの、扉体が上昇する側の端部に固定され、巻取側端部は、開閉装置により巻き取られる。更に、チェーンは、固定側端部から動スプロケットまでの部位の少なくとも一部が、円弧状の戸当りの円弧中心側の内面に当接している。このため、チェーンの固定側端部から動スプロケットまでの部位は、扉体の上昇に伴い、戸当りの円弧中心側の内面に当接した状態から、徐々に動スプロケットを介して巻き取られることになる。一方、チェーンの同部位は、扉体の下降に伴い、動スプロケットを介して、戸当りの円弧中心側の内面に徐々に展張され、戸当りの内部にコンパクトに収容される。すなわち、扉体が上昇又は下降する何れの場合であっても、チェーンが戸当りの円弧中心側の内面に対して大きく摺動することはない。このため、このようなチェーンの摺動に起因する、チェーンや戸当り内面の摩耗や損傷が抑制されることとなる。
【0011】
(3)上記(2)項において、前記チェーンの巻取側端部は、回転自在に固定設置された転向スプロケットを介して、前記開閉装置により巻き取られる水門装置(請求項3)。
本項に記載の水門装置は、チェーンの巻取側端部が、例えば、戸当りの、扉体が上昇する側の端部の上方等に、回転自在に固定設置された転向スプロケットを介して、開閉装置により巻き取られるものである。この際、転向スプロケットの設置位置は、チェーンの動スプロケットから転向スプロケットまでの部位が、戸当りの円弧中心側と反対の内面と、チェーンの固定側端部から動スプロケットまでの部位との、何れにも接触しないような位置とする。すなわち、特に扉体が最も下降した状態(全閉状態)では、戸当りの内部を比較的長い距離にわたってチェーンが延在することになるため、このような状態であっても、チェーン同士の接触や、戸当りの内面に対するチェーンの接触を回避できるような位置に、転向スプロケットを設置する。この際、円弧状の戸当りの円弧半径や、戸当りの円弧中心側の内面とこれに対向する内面との間の幅等を考慮すると共に、これらの設計値を見直してもよい。これにより、チェーン同士の干渉や、チェーンの戸当り内面に対する接触が防止されることとなる。
【0012】
(4)上記(2)(3)項において、前記チェーンの固定側端部が力点側に接続される梃部材と、該梃部材の作用点側に作用する力に基づいて、前記チェーンの過負荷及び緩みを検出する緩み過負荷検出装置と、を備える水門装置(請求項4)。
本項に記載の水門装置は、梃部材と、チェーンの過負荷及び緩みを検出する緩み過負荷検出装置とを備えるものである。ここで、この水門装置は、上記(1)項に記載したように、扉体に設けた動スプロケットにチェーンを巻き掛けているため、チェーンの固定側端部において、例えばバネ式の緩み過負荷検出装置が利用できる。しかしながら、バネ式の検出装置をチェーンの固定側端部に直接接続した場合、扉体の昇降に伴って変動する開閉荷重が、チェーンの固定側端部からバネに直接作用することになる。このため、バネが伸縮すると、チェーンが数センチ程度移動、すなわち、戸当り内面に対してチェーンが摺動することとなり、チェーンや戸当り内面を傷つける虞がある。
【0013】
そこで、本項に記載の水門装置は、チェーンの固定側端部に緩み過負荷検出装置を直接接続するのではなく、梃部材の力点側にチェーンの固定側端部を接続すると共に、梃部材の作用点側に緩み過負荷検出装置を接続する。すなわち、梃部材は、戸当りの、扉体昇方向側の端部に設置されることになり、又、支点から力点までの長さよりも、支点から作用点までの長さの方が大きい。これにより、過負荷や緩みに起因するチェーンの張力変化は、より大きな変位量となって緩み過負荷検出装置に伝わり、これとは逆に、緩み過負荷検出装置のバネの伸縮量は、より小さくなってチェーンの固定側端部に伝わることになる。従って、チェーンの摺動による摩耗や損傷が小さく抑えられ、チェーンの寿命が延びることとなる。更に、緩み過負荷検出装置にチェーンを直接接続する場合と比較して、緩み過負荷検出装置に伝わる荷重が軽減されるため、その荷重に応じた小さな型式の緩み過負荷検出装置を使用すればよく、省スペース化となる。なお、特に信頼性の観点から、左右両側のチェーンの緩みや過負荷を検出するように、左右両側の各々に緩み過負荷検出装置を設けることとする。
【0014】
(5)上記(3)項において、前記転向スプロケットが取り付けられる取付台と、該取付台を少なくとも部分的に支持するための支持台と、該支持台に加わる前記取付台の荷重に基づいて、前記チェーンの過負荷及び緩みを検出する緩み過負荷検出装置と、を備える水門装置(請求項5)。
本項に記載の水門装置は、上記(4)項の水門装置と同様に、チェーンの過負荷及び緩みを検出する緩み過負荷検出装置を備えているが、上記(4)項の水門装置と異なり、チェーンの固定側端部においてチェーンの緩みや過負荷を検出するのではなく、開閉装置により巻き取られるチェーンが通過する転向スプロケットを利用して、チェーンの緩みや過負荷を検出するものである。
【0015】
具体的には、転向スプロケットが取り付けられる取付台と、この取付台を少なくとも部分的に支持するための支持台とを備え、支持台に加わる取付台の荷重に基づいて、緩み過負荷検出装置によりチェーンの緩みや過負荷を検出する。すなわち、緩みや過負荷に起因してチェーンの張力が変化すると、転向スプロケットが取り付けられた取付台の荷重が変化して、支持台に加わる取付台の荷重も変化するため、その変化する荷重に基づいてチェーンの緩みや過負荷を検出する。支持台に加わる取付台の荷重は、例えば、支持台に固定した緩み過負荷検出装置に接続したバネによって、取付台を少なくとも部分的に支持することで、容易に検出される。更に、チェーンの固定側端部においてチェーンの緩みや過負荷を検出するものではないため、緩み過負荷検出装置のバネの影響等により、チェーンの固定側端部から動スプロケットまでの部位が、戸当りの内面に対して摺動することはない。従って、チェーンの塗装剥離や摩耗が抑制され、チェーンの長寿命化が期待できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のような構成であるため、チェーンを利用して開閉する水門装置において、開閉荷重の上限を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る水門装置を正面方向から示しており、(a)は概略的な正面図、(b)は左右の開閉装置を連結する連動軸に沿った位置でのイメージ図である。
図2】本発明の実施の形態に係る水門装置の概略的な側面図である。
図3図2の水門装置の戸当りを、延在方向と直交する断面で示したイメージ断面図であり、(a)は戸当り内部にローラが配置されている状態、(b)は戸当り内部に動スプロケットが配置されている状態を示している。
図4】本発明の実施の形態に係る水門装置に設置された、緩み過負荷検出装置の近傍を示す側面イメージ図である。
図5】本発明の実施の形態に係る水門装置の図4とは異なる位置に設置された、緩み過負荷検出装置の近傍を示す側面イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は同一符号で示しており、従来技術と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る水門装置10を概略的に示している。図示のように、水門装置10は、水路の左右両岸夫々の側壁12に設けられた戸当り30と、戸当り30に沿って昇降することで水路を開閉する扉体14と、扉体14を昇降するためのチェーン式の開閉装置40とを備えている。開閉装置40は、図1(b)に示されているように、左右両岸の側壁12に設けられた架台上に設置されると共に、一方が駆動側の開閉装置40A、もう一方が従動側の開閉装置40Bとして構成され、連動軸42によって連結されている。そして、駆動側の開閉装置40Aに含まれる減速器付モータ(図示省略)により、連動軸42を介して従動側の開閉装置40Bが回転駆動されることによって、左右一対のチェーン70、70の巻き取り又は繰り出し動作が同期するようになっている。なお、図1(a)及び図2には、全閉状態の扉体14を実線で示し、全開状態の扉体14´を二点鎖線で示している。
【0019】
戸当り30の各々は、側壁12を正面視する方向(図2参照)から見て、円弧状を成しており、この戸当り30の内部を、扉体14の左右両側に設けられたローラ20(本実施例では、上下一対のローラ20、20)が転動する態様で、扉体14が戸当り30に沿って昇降する。すなわち、図3(a)で確認できるように、側壁12に設けられた戸当り30の内部を、扉体14に固定された軸20aを回転軸として回転するローラ20が、扉体14の昇降に伴って上方又は下方へ向かって転動する。ここで、戸当り30には、扉体14に作用する水圧荷重がローラ20を介して伝達されるので、十分な強度を確保するためにH桁の鋼構造36が配置され、周囲に打設されるコンクリートと一体となって荷重を支持する。更に、扉体14の左右両側には、扉体14の左右岸方向の位置精度を保持するために、サイドローラ22が上下1対ずつ設けられており、扉体14を戸当り30の水路面側においてガイドする構造になっている。
【0020】
又、扉体14の左右両側の夫々には、上下一対のローラ20、20よりも上方、すなわち昇方向側に、動スプロケット24が設けられている。この動スプロケット24は、ローラ20と同様に、戸当り30の内部に配置され、チェーン式の開閉装置40から延びたチェーン70が巻き掛けられている。チェーン70の開閉装置40とは反対側の端部72は、戸当り30の、扉体14の昇方向側の端部30a近傍に固定されている。このため、チェーン70の固定側端部72から動スプロケット24までの部位(以下、「固定側部位」ともいう。)70aは、少なくとも一部が、円弧状の戸当り30の円弧中心側の内面32に当接する態様となる。
【0021】
更に、図1(a)及び図2に示されているように、戸当り30の扉体昇方向側端部30aの上方に、転向スプロケット50が設置されている。この転向スプロケット50は、転向スプロケット台52の上部に、回転自在に固定設置されており、チェーン70の、動スプロケット24から延びて開閉装置40により巻き取られるまでの部位(以下、「巻取側部位」ともいう。)70bが、転向スプロケット50に巻き掛けられている。又、転向スプロケット50の設置位置は、戸当り30内部に配置されている動スプロケット24が、常に直線的に見通せる位置になるように、例えば転向スプロケット台52の高さ等が調整される。更に、戸当り30の幅(内面32と内面34との間の距離)が十分に確保されると共に、図2の例では、円弧状の戸当り30の、円弧中心側の内面32の円弧半径Rが、扉体14の揚程Hの1.5倍程度に設定されている。
【0022】
ここで、図3(b)には、戸当り30の内部に配置された動スプロケット24を図示している。動スプロケット24は、扉体14に固定された軸24aを回転軸として回転するものであり、上述したようにチェーン70が巻き掛けられている。このため、図3(b)には、チェーン70の固定側部位70aと巻取側部位70bとの双方が図示されており、更に、固定側部位70aは、便宜上、動スプロケット24に巻き掛けられた部分と、戸当り30の円弧中心側の内面32に当接した部分とが図示されている。なお、戸当り30の内面32は、チェーン70が巻き取られた状態では、図3(a)に示したようにローラ20が接触するローラレールとして機能するが、チェーン70の収納に支障がないように、フラットな面に形成されている。又、図3(a)、(b)に示したローラ20及び動スプロケット24は、両者とも大きな荷重を伝達する必要があることから、扉体14の内部に十分に深く挿入された軸20a及び24aを介して、扉体14に取り付けられている。
【0023】
次に、チェーン70の構成及び動作について、より詳細に説明する。上述したように、チェーン70は、戸当り30の内部において、扉体14の動スプロケット24に巻き掛けられた状態で、固定側端部72が、戸当り30の扉体昇方向側端部30aに固定され、固定側端部72と反対の巻取側端部74が、開閉装置40によって巻き取られる。固定側端部72には、チェーン張力が作用するので、その張力を確実に支持するために、開閉装置架台や転向スプロケット台52等に強固に固定され、十分な強度を有する構造になっている。そして、固定側端部72から動スプロケット24までのチェーン70の固定側部位70aは、戸当り30の円弧中心側の内面32に当接しており、動スプロケット24から開閉装置40までの巻取側部位70bは、転向スプロケット50に巻き掛けられている。
【0024】
上記のような構成により、チェーン70は、扉体14の昇動作のために開閉装置40により巻き取られる際、動スプロケット24及び転向スプロケット50を介して、巻取側端部74の方から徐々に巻き取られていく。動スプロケットを利用した2条方式であるため、開閉装置40により巻き取られるチェーンの巻き取り量は、1条方式と比較して約2倍となる。そこで、本実施形態では、巻き取られたチェーン70がコンパクトに収納されるように、チェーン70に所定長さ毎にフックピンを設ける共に、チェーン格納部44内にハンガー46を設けることで、チェーン格納部44内にチェーン70が折り畳まれて格納される構造になっている。そして、扉体14が全開(二点鎖線で示す扉体14´の状態)になると、開閉装置40の減速器付モータの回転軸がロックされる。一方、扉体14が閉鎖される際は、開閉装置40の減速器付モータの回転軸のロックが解除されることで、扉体14が自重で降下する。このとき、開閉装置40は、チェーン70を繰り出す動作を行い、チェーン70は、転向スプロケット50及び動スプロケット24を介して、戸当り30の円弧中心側の内面32上に展張される。
【0025】
続いて、図4及び図5を参照して、本発明の実施の形態に係る水門装置10に設置する、緩み過負荷検出装置60、60´について説明する。水門装置において安全機構は無くてはならない要素であり、チェーン70で開閉する水門装置10においては、チェーン70の緩み及び過負荷を検出することが必須である。又、本発明の実施の形態に係る水門装置10のように、左右両岸で別々のチェーン70を利用して扉体14を昇降させる場合、左右両岸で独立して、チェーン70の緩み及び過負荷を検出する必要がある。そこで、本水門装置10では、水門の特性を考慮した確実性の高い安全機構として、バネ62を利用した機械的な検出装置である、緩み過負荷検出装置60、60´を使用することとする。長期間に渡って高い信頼性が求められ、比較的使用頻度が低いという特徴を有する水門装置では、電子素子を利用する電気的な検出方法よりも、バネ62を利用した機械的な検出方法の方が、信頼性が高いとされている。
【0026】
具体的に説明すると、まず図4には、チェーン70の固定側端部72を利用して、チェーン70の緩み及び過負荷を検出する緩み過負荷検出装置60を示している。緩み過負荷検出装置60は、そのロッド66がバネ62を介して梃部材58に接続されており、梃部材58にはチェーン70の固定側端部72も接続されている。詳しくは、梃部材58は、その支点部58cを軸として揺動自在に、開閉装置架台や転向スプロケット台52等に設置されており、この梃部材58の一端58aに、チェーン70の固定側端部72が接続され、他端58bに、バネ62及びロッド66を介して緩み過負荷検出装置60が接続されている。又、図4の例において、梃部材58は、支点部58cから一端58aまでの距離と、支点部58cから他端58bまでの距離との比が、約1:5になっており、一端58aが梃の力点側として、他端58bが梃の作用点側として作用する。すなわち、チェーン70の張力が、固定側端部72から梃部材58の力点側58aに加わると、それが梃部材58の作用点側58bへ伝わり、更にバネ62を介して、緩み過負荷検出装置60へと伝わるものである。
【0027】
他方、図5には、転向スプロケット50を利用して、チェーン70の緩み及び過負荷を検出する緩み過負荷検出装置60´を示している。すなわち、図5の例では、転向スプロケット50が、支持ピン54aを軸として揺動する取付台54に取り付けられており、この取付台54のアーム54bに、バネ62及びロッド66を介して緩み過負荷検出装置60´が接続されている。より詳しくは、取付台54は、転向スプロケット台52上に設置された支持ピン54aによって一端側が軸支されると共に、他端側から延びるアーム54bが、緩み過負荷検出装置60´からバネ62を介して垂下しているロッド66によって吊り下げ支持されている。緩み過負荷検出装置60´は、開閉装置架台上等に設けられた支持台64に設置されている。これにより、チェーン70に緩みや過負荷が生じると、チェーン70の張力の変化に応じて、取付台54が支持ピン54aを軸として揺動し、取付台54のアーム54bを支えるロッド66に設置されたバネ62が伸縮する。このようにして、バネ62を介して緩み過負荷検出装置60´に伝わる取付台54の荷重の変化から、チェーン70の緩み及び過負荷を検出するものである。
【0028】
図5の例では、支持ピン54aが支点、取付台54の転向スプロケット50を取り付けた部位が力点、そして、アーム54の先端が作用点として作用する、梃の原理を利用した構造になっている。更に、取付台54を、支持ピン54aによる軸支と、ロッド66による吊り下げ支持とで分割支持して、バネ62に加わる荷重を検出する構造であるが、これに限定されるものではなく、例えば、取付台54に作用する全荷重を検出するような構造であってもよい。
なお、上述した緩み過負荷検出装置60、60´は、何れも、左右両岸の夫々に設置されるチェーン70毎に設置され、チェーン70の緩みや過負荷を、左右両岸で独立して検出するようになっている。
【0029】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る水門装置10は、図1及び図2に示すように、円弧状に設けられた左右一対の戸当り30に沿って、チェーン70を介して昇降する扉体14(14´)を有するものであり、扉体14の左右両側には、戸当り30の内部を転動するローラ20が取り付けられている。更に、扉体14の左右両側には、ローラ20が取り付けられた位置よりも昇方向側の位置に、動スプロケット24が取り付けられている。この動スプロケット24は、戸当り30の内部において、扉体14に固定された軸24a(図3(b)参照)を回転軸として回転するものであり、開閉装置40によって巻き取られるチェーン70が巻き掛けられている。このため、扉体14は、左右両側の各々において、動スプロケット24に巻き掛けられることで実質的に2条となるチェーン70を介して、昇降することになる。これにより、1条のチェーンを介して扉体14を昇降する場合と比較して、チェーン70にかかる荷重を約1/2に低減できるため、扉体14の開閉荷重の上限を約2倍に向上することができる。しかも、チェーン70が巻き掛けられる動スプロケット24は、ローラ20よりも扉体14の昇方向側の位置に設けられるため、ローラ20がチェーン70に干渉することを防止することができる。
【0030】
又、本発明の実施の形態に係る水門装置10は、扉体14の昇降に利用されるチェーン70が、固定側端部72と巻取側端部74とを備えており、固定側端部72が、戸当り30の、扉体14が上昇する側の端部30aに固定され、巻取側端部74が、開閉装置40により巻き取られるものである。更に、チェーン70は、固定側端部72から動スプロケット24までの部位(固定側部位)70aの少なくとも一部が、円弧状の戸当り30の円弧中心側の内面32に当接している。このため、チェーン70の固定側部位70aは、扉体14の上昇に伴い、戸当り30の円弧中心側の内面32に当接した状態から、徐々に動スプロケット24を介して巻き取られることになる。一方、チェーン70の固定側部位70aは、扉体14の下降に伴い、動スプロケット24を介して、戸当り30の円弧中心側の内面32に徐々に展張され、戸当り30の内部にコンパクトに収容される。すなわち、扉体14が上昇又は下降する何れの場合であっても、チェーン70が戸当り30の円弧中心側の内面32に対して大きく摺動することはない。このため、このようなチェーン70の摺動に起因する、チェーン70や戸当り内面32の摩耗や損傷を抑制することができる。
【0031】
更に、本発明の実施の形態に係る水門装置10は、チェーン70の巻取側端部74が、図2の例では、戸当り30の端部30aの上方に、回転自在に固定設置された転向スプロケット50を介して、開閉装置40により巻き取られるものである。この際、転向スプロケット50の設置位置は、チェーン70の動スプロケット24から転向スプロケット50までの部位が、戸当り30の円弧中心側と反対の内面34と、チェーン70の固定側端部72から動スプロケット24までの部位との、何れにも接触しないような位置とする。すなわち、特に扉体14が最も下降した状態(全閉状態)では、戸当り30の内部を比較的長い距離にわたってチェーン70が延在することになるため、このような状態であっても、チェーン70同士の接触や、戸当り30の内面34に対するチェーン70の接触を回避できるような位置に、転向スプロケット50を設置する。この際、円弧状の戸当り30の円弧半径Rや、戸当り30の円弧中心側の内面32とこれに対向する内面34との間の幅等を考慮すると共に、これらの設計値を見直してもよい。これにより、チェーン70同士の干渉や、チェーン70の戸当り内面34に対する接触を防止することが可能となる。
【0032】
又、本発明の実施の形態に係る水門装置10は、図4に示すように、梃部材58と、チェーン70の過負荷及び緩みを検出する緩み過負荷検出装置60とを備えるものである。ここで、本発明の実施の形態に係る水門装置10は、上述したように、扉体14に設けた動スプロケット24にチェーン70を巻き掛けているため、チェーン70の固定側端部72において、例えばバネ式の緩み過負荷検出装置が利用できる。しかしながら、バネ式の検出装置をチェーン70の固定側端部72に直接接続した場合、扉体14の昇降に伴って変動する開閉荷重が、チェーン70の固定側端部72からバネに直接作用することになる。このため、バネが伸縮すると、チェーン70が数センチ程度移動、すなわち、戸当り30の内面32に対してチェーン70が摺動することとなり、チェーン70や戸当り30の内面32を傷つける虞がある。
【0033】
そこで、図4に示す本発明の実施の形態に係る水門装置10は、チェーン70の固定側端部72に緩み過負荷検出装置60を直接接続するのではなく、梃部材58の力点側58aにチェーン70の固定側端部72を接続すると共に、梃部材58の作用点側58bに、バネ62を介して緩み過負荷検出装置60を接続する。すなわち、梃部材58は、戸当り30の、扉体昇方向側の端部30aに設置されることになり、又、支点部58cから力点側58aまでの長さが、支点部58cから作用点側58bまでの長さの、図4の例では1/5になっている。これにより、過負荷や緩みに起因するチェーン70の張力変化は、より大きな変位量となって緩み過負荷検出装置60に伝わり、これとは逆に、緩み過負荷検出装置60のバネ62の伸縮量は、より小さく(図4の例では1/5)なってチェーン70の固定側端部72に伝わることになる。従って、チェーン70の摺動による摩耗や損傷を小さく抑えることができ、チェーン70の寿命を延ばすことが可能となる。更に、緩み過負荷検出装置60にチェーン70を直接接続する場合と比較して、緩み過負荷検出装置60に伝わる荷重が軽減される(図4の例では1/5)ため、その荷重に応じた小さな型式の緩み過負荷検出装置60を使用することができ、省スペース化となる。
【0034】
他方、図5に示す本発明の実施の形態に係る水門装置10は、図4に示した水門装置10と同様に、チェーン70の過負荷及び緩みを検出する緩み過負荷検出装置60´を備えているものの、チェーン70の固定側端部72においてチェーン70の緩みや過負荷を検出するのではなく、開閉装置40により巻き取られるチェーン70が通過する転向スプロケット50を利用して、チェーン70の緩みや過負荷を検出するものである。具体的には、転向スプロケット50が取り付けられる取付台54と、この取付台54を少なくとも部分的に支持するための支持台64とを備え、支持台64に加わる取付台54の荷重に基づいて、緩み過負荷検出装置60´によりチェーン70の緩みや過負荷を検出する。図5の例では、転向スプロケット台52上に設置した支持ピン54aによる軸支と、支持台64に設置した緩み過負荷検出装置60´によるバネ62を介した吊り下げ支持とで、転向スプロケット50を取り付けた取付台54を支えている。
【0035】
上記のような構成により、緩みや過負荷に起因してチェーン70の張力が変化すると、転向スプロケット50が取り付けられた取付台54の荷重が変化して、支持台64に加わる取付台54の荷重、すなわち、支持台64から取付台54を吊り下げているロッド66に設置されたバネ62に加わる取付台54の荷重も変化する。このため、バネ62に接続された緩み過負荷検出装置60´により、バネ62に加わる変化する荷重に基づいて、チェーン70の緩みや過負荷を容易に検出することができる。更に、チェーン70の固定側端部72においてチェーン70の緩みや過負荷を検出するものではないため、緩み過負荷検出装置60´のバネ62の影響等により、チェーン70の固定側端部72から動スプロケット24までの部位が、戸当り30の内面32に対して摺動することはない。従って、チェーン70の塗装剥離や摩耗を抑制することができ、チェーンの長寿命化が期待できる。又、図5の例は、支持ピン54aが支点、取付台54の転向スプロケット50の取り付け部位が力点、ロッド66が接続されたアーム54bの先端が作用点として作用する、梃の原理を利用した構造になっている。このため、緩み過負荷検出装置60´にかかる荷重を軽減することができ、図4の例と同様に、緩み過負荷検出装置60´の容量規格を小さくすることができる。
【0036】
なお、図1図5に示した水門装置10は、本発明の実施の形態に係る水門装置10の一例であり、本発明の実施の形態に係る水門装置10を限定するものではない。例えば、戸当り30の円弧中心側の内面32の円弧半径R、戸当り30の内面32と内面34との間の幅、及び、転向スプロケット50の設置位置は、図2に示した例に限定されるものではなく、扉体14が全閉状態の場合であっても、チェーン70の巻取側部位70bが、戸当り30の内面34と、チェーン70の固定側部位70aとの双方に接触しない配置になればよいものである。又、チェーン70の固定側端部72を利用して、チェーン70の緩みや過負荷を検出する場合は、チェーン70の固定側端部72のズレを抑制するような梃部材58を利用していれば、図4に示した構成に限定されるものではない。同様に、転向スプロケット50を利用して、チェーン70の緩みや過負荷を検出する場合は、転向スプロケット50に伝わるチェーン70の張力変化が、取付台54を介して緩み過負荷検出装置60´に伝わる構成であれば、図5に示した構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
10:水門装置、14、14´:扉体、20:ローラ、24:動スプロケット、24a:軸、30:戸当り、30a:扉体昇方向側の端部、32:円弧中心側の内面、40(40A、40B):開閉装置、50:転向スプロケット、54:取付台、58:梃部材、58a:力点側、58b:作用点側、60、60´:緩み過負荷検出装置、64:支持台、70:チェーン、72:固定側端部、74:巻取側端部
【要約】
【課題】チェーンを利用して開閉する水門装置で開閉荷重の上限を向上させる。
【解決手段】水門装置10は、円弧状に設けられた戸当り30に沿って、チェーン70を介して昇降する扉体14を有し、扉体14の左右両側には、戸当り30の内部を転動するローラ20が取り付けられ、ローラ20よりも昇方向側の位置に、動スプロケット24が取り付けられている。動スプロケット24は、戸当り30の内部で扉体14に固定された軸を回転軸として回転するものであり、開閉装置40によって巻き取られるチェーン70が巻き掛けられている。このため、扉体14は、動スプロケット24に巻き掛けられることで実質的に2条となるチェーン70を介して、昇降することになる。これにより、1条のチェーンを介して扉体14を昇降する場合と比較して、チェーン70にかかる荷重を約1/2に低減できるため、扉体14の開閉荷重の上限を約2倍に向上することができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5