特許第6184594号(P6184594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184594
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】青果物把持具
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B25J15/06 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-519901(P2016-519901)
(86)(22)【出願日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2015071204
(87)【国際公開番号】WO2017017750
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135254
【氏名又は名称】株式会社ニレコ
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】飯野 信輔
(72)【発明者】
【氏名】林 眞治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇人
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−165708(JP,A)
【文献】 特開2000−226118(JP,A)
【文献】 特開2009−28862(JP,A)
【文献】 特開2013−219069(JP,A)
【文献】 特開2009−144660(JP,A)
【文献】 特開2007−252695(JP,A)
【文献】 特開2008−168413(JP,A)
【文献】 特開2011−108879(JP,A)
【文献】 特開2011−138948(JP,A)
【文献】 特開2013−179137(JP,A)
【文献】 特開平08−2509(JP,A)
【文献】 特開昭63−92537(JP,A)
【文献】 特開昭62−251094(JP,A)
【文献】 特開2011−161529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
B65B 35/00−35/58
H01L 21/68−21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアを下面の周囲から噴射することにより下面中央部に負圧領域を生成する非接触チャックと、上端部が前記非接触チャックの周囲に密着するように前記非接触チャックに装着され下端部が開放された筒状体と、で構成された青果物把持具であって、
前記非接触チャックは、圧縮エアが注入されるエア注入口が上面に形成され、前記下面の前記周囲に複数個のエア噴射口が斜め下方向で周方向を向くように形成され、前記エア注入口から前記各エア噴射口の間にそれぞれ内部通路が形成され、
前記筒状体は、内壁に上部から下部にかけて螺旋形状に連続する蛇腹形状に溝が形成され、且つ内側横断面積が前記上部よりも前記下部が大きく設定された非通気性の柔軟性材質で形成され、
前記非接触チャックの前記エア噴射口から噴出した前記エアが、前記筒状体の前記内壁に形成された溝でガイドされて旋回して下方に至るようにしたことを特徴とする青果物把持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミカン、ナス、キュウリ、イモ、ピーマンなどの青果物を把持する青果物把持具に関する。
【背景技術】
【0002】
集荷したミカンなどの青果物Aは、選果場において図9に示すような青果物選別装置100に投入される。青果物選別装置100では、ベルトコンベア110に投入されて搬送される青果物Aを照明装置120で照明しながら撮像装置130で撮像し、この撮像によって得られる青果物Aの画像を処理装置140で処理することで、腐敗した腐敗青果物あるいは規格外の大きさや形状の規格外青果物が判別される。そして、その判別結果がロボットコントローラ150に送られ、そのロボットコントローラ150によってロボット160が制御されることで、腐敗青果物や規格外青果物が屈伸アーム161の下端部に取り付けた青果物把持具162によってピックアップされ、排果ボックス170に投入される。これにより、それらの腐敗青果物や規格外青果物が下流工程に流されないようにしている。180は操作部、190は画像確認や操作確認用のモニタである。
【0003】
このロボット160の把持具162には、先端に吸着パッドを備えた真空吸着型のものが使用されている。このような真空吸着型の把持具162は、特許文献1〜4に示すように真空ポンプによって吸着パッド内のエアを吸引してそこに負圧を生成し、青果物を吸着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08− 02509号
【特許文献2】特開平09−123080号
【特許文献3】特開平11−165708号
【特許文献4】特開2012−232823号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアを吸引して負圧を生成する真空吸引式の把持具162は、図10(a)に示すように、吸着パッド1621を青果物Aとの間に隙間がないように密着させる必要があり、図10(b)に示すように、青果物Aに凹凸が存在する場合は完全に密着することができない。青果物Aの多くは表面に凹凸が多く存在するので、必要な吸着力を得るために吸引力を高める必要がある。
【0006】
また、この把持具162はエアを吸引するため、図10(c)に示すように、青果物Aに付着しているゴミBなどを吸着すると目詰まりが生じて吸着力が低下する。
【0007】
また、吸着パッド1621は青果物Aの一部(上部)を吸着するので、柔らかい腐敗部位を吸着すると、その腐敗部位の腐敗片を分離して吸い込むことがあり、同様に目詰まりの問題が発生する。
【0008】
本発明の目的は、エアを噴射することで負圧領域を生成する非接触チャックを利用して、青果物の表面に凹凸があっても安定して青果物を把持することができ、またゴミや青果物の腐敗片による目詰まりが発生することもないようにした青果物把持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明の青果物把持具は、エアを下面の周囲から噴射することにより下面中央部に負圧領域を生成する非接触チャックと、上端部が前記非接触チャックの周囲に密着するように前記非接触チャックに装着され下端部が開放された筒状体と、で構成された青果物把持具であって、前記非接触チャックは、圧縮エアが注入されるエア注入口が上面に形成され、前記下面の前記周囲に複数個のエア噴射口が斜め下方向で周方向を向くように形成され、前記エア注入口から前記各エア噴射口の間にそれぞれ内部通路が形成され、前記筒状体は、内壁に上部から下部にかけて螺旋形状に連続する蛇腹形状に溝が形成され、且つ内側横断面積が前記上部よりも前記下部が大きく設定された非通気性の柔軟性材質で形成され、前記非接触チャックの前記エア噴射口から噴出した前記エアが、前記筒状体の前記内壁に形成された溝でガイドされて旋回して下方に至るようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の青果物把持具によれば、エアを噴射することで負圧領域を生成する非接触チャックの下面周辺が、柔軟性材質の筒状体で囲まれているので、青果物の表面に凹凸があって隙間が生じていても把持を行うことができる。また、青果物にゴミが付着していたり、腐敗部位が発生しているときであっても、それらを吸引することはなく、目詰まりが生じることもない。このため、表面に凹凸が多数あり、形状がまちまちで、敗れや穴や腐敗部位がある青果物であっても、安定して把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施例の青果物把持具の縦断面図である。
図2】(a)は第1の実施例の青果物把持具の上面図、(b)は下面図である。
図3】(a)は第1の実施例の青果物把持具で青果物を把持した状態を示す縦断面図、(b)は(a)のb−b線に沿った断面図である。
図4】第1の実施例の青果物把持具でゴミ付きの青果物を把持した状態を示す縦断面図である。
図5】第1の実施例の青果物把持具の駆動装置の説明図である。
図6】(a)は本発明の第2の実施例の青果物把持具の縦断面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(a)のc−c線断面図である。
図7】本発明の第3の実施例の青果物把持具の縦断面図である。
図8】本発明の第4の実施例の青果物把持具の縦断面図である。
図9】青果物選別装置の構成の説明図である。
図10】(a),(b),(c)は真空吸着型の青果物把持具で青果物を把持する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施例>
図1に本発明の第1の実施例の青果物把持具10を示す。青果物把持具10は、円盤形状の非接触チャック11と、その非接触チャック11の周囲に上端部が密着するように装着された筒状体12とで構成されている。
【0020】
非接触チャック11は、上面11aと下面11bと外周面11cを備え、上面11aの中央には、エアホース20(図3図5)から供給される圧縮エアを注入するエア注入口11dが図2(a)に示すように形成されている。また、下面11bには、図2(b)に示すように、その縁部の周方向にエア注入口11dに連通するエア噴射口11eが所定ピッチで離間して複数個形成されている。
【0021】
この非接触チャック11は、エア注入口11dから複数のエア噴射口11eに至るそれぞれの内部通路が、下面11bから見て例えば反時計回り方向に湾曲して形成され、エア噴射口11eが斜め下方向を向いているとき(図示せず)は、エア注入口11dから圧縮エアを注入すると、エア噴射口11eからエアが、図2(b)に示すように、下面11bから見て反時計回り方向に噴射し、筒状体12の内壁を旋回して下方に至る。この結果、非接触チャック11の下面11bの中央部分に、サイクロン方式による負圧領域が生成される。
【0022】
なお、この非接触チャック11が、エア注入口11dから複数のエア噴射口11eに至るそれぞれの内部通路が放射方向に形成され、エア噴射口11eが斜め下方向外側を向いているとき(図示せず)は、エア注入口11dから圧縮エアを注入すると、エア噴射口11eからエアが放射方向に噴射する。この結果、非接触チャック11の下面11bの中央部分に、ベルヌーイ方式による負圧領域が生成される。
【0023】
筒状体12は、ゴム等の非通気性の柔軟性材質により形成され、その上端部12aはリング形状であり、その内周面が非接触チャック11の外周面11cに密着している。筒状体12の上端部12a以外は、上下方向(軸方向)に沿って内面と外面の凹凸面が複数回繰り返される蛇腹形状に形成され、下端部12bは開放され拡開している。
【0024】
青果物把持具10の非接触チャック11のエア注入口11dから圧縮エアを注入すると、エア噴射口11eから噴射したエアが、筒状体12の内周部を旋回しながら下端部12bから外部に噴出されることによって、非接触チャック11の下面11bの中央部分に前記した負圧領域が生成される。
【0025】
このため、青果物把持具10を青果物Aに対して下降して近接させ、筒状体12の下端部12bの内側でその青果物Aを囲むようにすれば、その負圧領域の負圧によって、図3に示すように、青果物Aが上方に吊り上げられる。このとき、青果物Aは、その上部中央部分が吊り上げられ、周辺部分が噴射エアによって下方に押し下げられる形で、一部が筒状体12の内壁に当接した状態となり、青果物把持具10の内部に非接触チャック11に非接触状態で把持される。
【0026】
なお、非接触チャック11は、非接触で青果物Aを保持できるものであるが、青果物Aの周辺に噴出エアを下方に逃がすので、その青果物Aの最上部の一部が非接触チャック11の下面中央に当接することもある。
【0027】
以上のように、青果物Aの周囲に凹凸があり筒状体12との間に隙間があっても、青果物Aは筒状体12内に吊下げられ把持される。この吊下げ力の発揮時はエアを吸引しないため、青果物Aの周囲にゴミなどが付着していたり、腐敗部などの柔らかい部位が存在していても、それらのゴミや腐敗片Bを吸い込むことはなく、図4に示すように、それらは真空領域に漂うだけとなる。このため、吸引力の低下が生じることはなく、目詰まりが発生することはない。
【0028】
非接触チャック11のエア注入口11dに注入する圧縮エアを停止すれば、裏面11cの中央に生成していた負圧領域は消滅するので、青果物Aは自重によって自然落下する。同時にゴミや腐敗部片Bも自然落下する。
【0029】
図5に青果物把持具10を駆動する装置構成を示す。20はエアホース、30は圧縮エアを作成するエアコンプレッサ、40はそのコンプレッサ30で作成された圧縮エアの圧力を調整する減圧弁、50はその減圧弁40から出力する圧縮エアの青果物把持具10への流通をオン/オフする電磁弁である。この電磁弁50は制御装置60により制御される。
【0030】
制御装置60によってその電磁弁50をオンさせると、圧縮エアが青果物把持具10に注入されることで、青果物Aをその青果物把持具10で把持することができる。また、その電磁弁50をオフにすると、青果物把持具10は把持している青果物Aの把持を停止し、青果物は自重で落下する。
【0031】
なお、筒状体12は、その蛇腹形状を内壁に形成される溝12cが上部から下部にかけて螺旋形状に連続するようにしておけば、非接触チャック11のエア噴射口11eから噴出されたエアが下方に向かって旋回する場合に、そのエアの旋回をガイドすることができる。これによって、エア噴射口11eから噴出されたエアに対する抵抗成分を削減でき、非接触チャック11の下面中央に生成される負圧を高めることができる。
【0032】
<第2の実施例>
図6に第2の実施例の青果物把持具10Aを示す。本実施例の青果物把持具10Aは、2個の非接触チャック11を横に並べて組み合わせて構成した非接触チャック群11Aと、その非接触チャック群11Aの外周面に2個のスペーサ13を介在させて装着した1個の筒状体12Aとで構成している。筒状体12Aの横断面は、スペーサ13を含む非接触チャック群11Aの平面形状に対応した楕円形状となっている。
【0033】
このように、非接触チャック11を2個横に並べて組み合わせた非接触チャック群11Aは、個々の非接触チャック11毎に負圧領域を互いに独立して生成することができるため、青果物Aが細長く不定の形状の場合(ナス、キュウリ、イモなど)であっても、その青果物Aを確実に把持することができる。
【0034】
非接触チャック群11Aを構成する非接触チャック11の組み合わせ数は、2個に限られるものではなく、3個以上でも可能であり、数が多いほど把持力を高くすることができる。また、スペーサ13を使用しないときは、筒状体12Aの平面形状は非接触チャック11の組み合わせ形状に対応した形状となる。例えば、2個の非接触チャック11を組み合わせる場合は、メガネ形となる。
【0035】
<第3の実施例>
図7に第3の実施例の青果物把持具10Bを示す。本実施例の青果物把持具10Bは、非接触チャック11の外周面11cに対して、上側が狭く下側が広くなった筒状体12Bの上端部12aを装着した構成である。
【0036】
青果物選別場で把持すべき青果物Aの外形のサイズはまちまちである場合が多いが、青果物把持具10を青果物Aのサイズに応じて取り換えると、大きな手間となる。
【0037】
そこで、筒状体として、図7に示したように、上側が狭く下側が広くなった内部形状の筒状体12Bを採用すると、外形サイズが小さい青果物A1は筒状体12Aの上側内部で把持し、外形サイズが大きい青果物A2は下側内部で把持することができ、いろいろなサイズの青果物Aを1個の筒状体12Bによって把持することができる。
【0038】
<第4の実施例>
図8に第4の実施例の青果物把持具10Cを示す。本実施例の青果物把持具10Cは、非接触チャックとして、ファン141と、円筒カップ142と、ファン141を高速回転させるモータ143と、保護ネット144とで構成された非接触チャック14を使用する。筒状体12は図1で説明したものと同じであるが、図7で説明した筒状体12Bを使用することもできる。円筒カップ142は、天面の周方向に複数のエア注入孔142aが形成され、下面が開放されている。
【0039】
ファン141がモータ143によって高速回転されると、エア注入孔142aから注入されたエアがファン141の回転によって高速で下方周方向に噴射されることで、ファン141の中央下面に負圧領域が生成され、これによって吸引力が発生する。
【0040】
この青果物把持具10Cでは、把持すべき青果物Aとしては、比較的軽量なピーマン等が好適である。
【0041】
本実施例の青果物把持具10Cは、非接触チャック14自体で高速エアを作成して負圧領域を生成するので、実際の使用に当たっては、エアホース20、コンプレッサ30、減圧弁40、電磁弁50などが必要ない利点がある。
【0042】
<その他の実施例>
以上説明した非接触チャック11は平面形状が円形であり、非接触チャック14も円筒カップ142を用いた円形であったが、非接触チャックの平面形状は円形に限られるものではなく、楕円形状、あるいは三角形状や四角形状などの多角形状であってもよい。この例では、筒状体12,12A,12Bの形状はこれらの非接触チャックの外形に応じた形状を採用すればよい。
【0043】
また、筒状体12,12A,12Bは蛇腹が形成されていない形状であってもよい。さらに、筒状体12,12A,12Bは上下方向の上部周方向のみ、中央部周方向のみ、下部周方向のみが柔軟性材質で形成され、他の部分は非柔軟性材質で形成されていてもよい。つまり、上下方向の少なくとも1部の周方向が柔軟性材質で形成されていればよい。
【符号の説明】
【0044】
10,10A,10B,10C:青果物把持具
11:非接触チャック、11A:非接触チャック群、11a:上面、11b:下面、11c:外周面、11d:エア注入口、11e:エア噴射口
12,12A,12B:筒状体、12a:上端部、12b:下端部、12c:溝
13:スペーサ
14:非接触チャック、141:ファン、142:円筒カップ、143:モータ、144:保護ネット
20:エアホース、30:エアコンプレッサ、40:減圧弁、50:電磁弁、60:制御装置
100:青果物選別装置、110:ベルトコンベア、120:照明装置、130:撮像装置、140:処理装置、150:ロボットコントローラ、160:ロボット、161:屈伸アーム、162:青果物把持具、1621:吸着パッド、170:排果ボックス、180:操作部、190:モニタ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10