特許第6184596号(P6184596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184596
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】強化ポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20170814BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C08L23/12
   C08L53/00
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-521389(P2016-521389)
(86)(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公表番号】特表2016-525587(P2016-525587A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】US2013047267
(87)【国際公開番号】WO2014209256
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】イー・ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム・エル・ウォルトン
(72)【発明者】
【氏名】エドムンド・エム・カーナハン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・アール・マーチャンド
(72)【発明者】
【氏名】シューミン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ディー・ヴァインホルト
(72)【発明者】
【氏名】ジャージー・クロシン
(72)【発明者】
【氏名】エイ・ワイレム・デグルート
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ピー・フォンテーヌ
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−503467(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0082249(US,A1)
【文献】 特開平09−111090(JP,A)
【文献】 特開平09−183877(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/058255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
53/00−53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
ポリプロピレンと、
前記組成物の重量に基づき18重量%〜25重量%の、多峰性分子量分布のエラストマーと、
前記組成物の重量に基づき6重量%〜9重量%の、ブロック複合体と、
任意に充填剤と
を含み、
前記多峰性分子量分布のエラストマーが、高分子量画分および低分子量画分、ならびに0.9g/cm未満の総合密度を有し、前記低分子量画分が5kg/モル〜50kg/モルの分子量を有し、前記多峰性分子量分布のエラストマーが18〜36のI10/I、および7.04〜13.81のMw/Mnを有し、
前記ブロック複合体が、軟性コポリマー、硬性ポリマー、ならびに軟性セグメント及び硬性セグメントを有するブロックコポリマーを含み、前記ブロックコポリマーの前記硬性セグメントが前記ブロック複合体の前記硬性ポリマーと同一の組成物であり、前記ブロックコポリマーの前記軟性セグメントが前記ブロック複合体の前記軟性コポリマーと同一の組成物である、
前記組成物。
【請求項2】
前記高分子量画分が、75kg/モル〜600kg/モルの分子量を有する、請求項に記載の前記組成物。
【請求項3】
前記高分子量画分が、前記低分子量画分のものより少なくとも10重量%高いコモノマー含有量を有する、請求項に記載の前記組成物。
【請求項4】
前記多峰性分子量分布のエラストマーが、前記多峰性分子量分布のエラストマーの重量に基づき18.4〜38.4重量%の前記低分子量画分を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記組成物。
【請求項5】
前記ポリプロピレンが、ポリプロピレンホモポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー及びブロック複合体を含む強化ポリプロピレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
組成物の衝撃強さを向上させる、または他の特性を向上させながらその衝撃強さを維持しようと、多くの異なるポリマー及び材料がポリマー組成物に添加されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,118,753号(Hikasaら)は、低い硬度、ならびに優れた可撓性及び機械的特性を有すると言われる、油展オレフィン系コポリマーゴムとオレフィン系プラスチックとの混合物から本質的になる熱可塑性エラストマー組成物を開示している。オレフィン系プラスチックは、ポリプロピレン、またはポリプロピレンと2個以上の炭素原子のアルファオレフィンとのコポリマーである。その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Modern Plastics Encyclopedia/89,mid October 1988 Issue,Volume 65,Number 11,pp.110−117もまた、衝撃改質に有用な様々な熱可塑性エラストマー(TPE)の使用を開示している。これらには、エラストマーアロイTPE、エンジニアリングTPE、オレフィン系TPE(熱可塑性オレフィンまたはTPOとしても既知である)、ポリウレタン系TPE、及びスチレン系TPEが含まれる。
【0003】
熱可塑性オレフィン(TPO)は、エチレン系ランダムコポリマー、エチレン/プロピレンゴム(EPM)またはエチレン/プロピレンジエンモノマーターポリマー(EPDM)、及びアイソタクチックポリプロピレン等のより硬質な材料等のエラストマー材料のブレンドから生成されることが多い。他の材料または成分は、用途に応じて、油、充填剤、及び架橋剤を含む配合物に添加されてもよい。TPOは多くの場合、剛性(弾性率)と低温衝撃との均衡、良好な耐化学性、及び広範な使用温度を特徴とする。これらのような特徴により、TPOは、自動車用計器盤ならびにワイヤ及びケーブル成分、硬質包装、成形物品、及び計器板等を含む多くの用途で使用される。
【0004】
ポリプロピレン(PP)ホモポリマーまたはPPランダムコポリマーは、多くの用途について望ましい剛性及び透明性を提供するが、高いTg(ホモポリマーPP、hPPについては0℃)のために不良な衝撃特性に悩まされる場合がある。この欠陥を克服するために、PPホモポリマーはPPコポリマー及び/またはエラストマーとブレンドされてその靱性を改善するが、多くの場合その透明性及び弾性率を犠牲にする。
【0005】
理想的には、エラストマーまたは相溶化剤が、ブレンドの弾性率に悪影響を及ぼすことなく衝撃性能を改善するために、最小限の体積を必要とするのに十分に小スケールのエラストマー粒子を促進または生成しなければならない。
【0006】
さらなる改善によって、透明性または他の好ましい特性に悪影響を及ぼすことなく衝撃性能を改善するエラストマーが発生するだろう。理想的には、PP/プロピレン含有エラストマーブレンド生成物の弾性率及び透明性は、PPホモポリマーのそれに相当するべきである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ポリプロピレン、二峰性または多峰性分子量分布特徴及び任意に二峰性または多峰性組成特徴を持つエラストマー、相溶化剤としてのブロック複合体、ならびにタルク等の任意の充填剤を含む組成物を提供する。
なお、本発明には、以下の態様が含まれることを付記する。
[1]
ポリプロピレンと、
多峰性分子量分布のエラストマーと、
ブロック複合体と、
任意に充填剤と、を含む、組成物。
[2]
前記多峰性分子量分布のエラストマーが、高分子量画分及び低分子量画分を有する、[1]に記載の前記組成物。
[3]
前記高分子量画分が、75kg/モル〜600kg/モルの分子量を有する、[2]に記載の前記組成物。
[4]
前記低分子量画分が、5kg/モル〜50kg/モルの分子量を有する、[2]に記載の前記組成物。
[5]
前記高分子量画分が、前記低分子量画分のものより少なくとも10重量%高いコモノマー含有量を有する、[2]に記載の前記組成物。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1についてのデコンボリューションされたGPC曲線を示す。
図2】実施例1についてのデコンボリューションされたGPC曲線を示す。
図3】実施例1についてのデコンボリューションされたGPC曲線を示す。
図4】指定されたポリマーについての粘度曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ポリプロピレン
衝撃改質組成物は、エラストマー組成物でブレンドすることによって靭化されたマトリックスポリマーを含む。一実施形態では、マトリックスポリマーはポリプロピレンである。本明細書で開示されるポリマーブレンドを調製するために、当業者に既知の任意のポリプロピレンが使用されてもよい。ポリプロピレンの非限定的な例としては、低密度ポリプロピレン(LDPP)、高密度ポリプロピレン(HDPP)、高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)、耐衝撃性ポリプロピレン(HIPP)、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)、及びシンジオタクチックポリプロピレン(sPP)等、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0010】
ポリマーブレンド中のポリプロピレンまたは組成物の量は、ポリマーブレンドの総重量の約0.5〜約99重量%、約10〜約90重量%、約20〜約80重量%、約30〜約70重量%、約5〜約50重量%、約50〜約95重量%、約10〜約50重量%、または約50〜約90重量%であり得る。一実施形態では、ポリマーブレンド中のポリプロピレンの量は、ポリマーブレンドの総重量に対して約50重量%、60重量%、70重量%、または80重量%である。
【0011】
ポリプロピレンは概して、ホモポリマーポリプロピレンのアイソタクチック型であるが、ポリプロピレンの他の型もまた使用することができる(例えば、シンジオタクチックまたはアタクチック)。しかしながら、ポリプロピレンインパクトコポリマー(例えば、エチレンをプロピレンと反応させる二次共重合ステップで用いられるもの)及びランダムコポリマー(同様に、プロピレンで共重合された1.5〜7重量%のエチレンを通常含有する、修正された反応器)もまた、本明細書で開示されるTPO配合に使用することができる。様々なポリプロピレンポリマーの完全な考察は、Modern Plastics Encyclopedia/89,mid October 1988 Issue,Volume 65,Number 11,pp.86−92に含有されており、その全体の開示は参照により本明細書に組み込まれる。本発明で使用するためのポリプロピレンの分子量及びそれ故の溶融流量は、用途に応じて変化する。本明細書内で有用なポリプロピレンの溶融流量は概して、約0.1グラム/10分(g/10分)〜約200g/10分、好ましくは約0.5g/10分〜約150g/10分、及び特に約4g/10分〜約100g/10分である。プロピレンポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーであってもよく、もしくはそれはランダムコポリマーまたは(ゴム相を既に含有する)インパクトコポリマーでさえあってもよい。かかるプロピレンポリマーの例としては、インパクトコポリマー、LyondellBasell PolyolefinsからのProfax Ultra SG583またはBraskemからのINSPIRE 114、ホモポリマー、BraskemからのH110NまたはD221.00、ランダムコポリマー、Braskemからの6D43、(ExxonMobilによって作製された)VISTAMAXX(商標)等のランダムプロピレン−エチレンプラストマー及びエラストマー、ならびに(The Dow Chemical Co.からの)VERSIFY(商標)が挙げられる。
【0012】
多峰性分子量分布(MMWD)エラストマー
多峰性分子量分布(MMWD)エラストマーは、少なくとも高分子量(HMW)画分及び低分子量画分(LMW)を含み、重合型のエチレン及びα−オレフィンコモノマーを含む。エラストマーの生成に使用するための好適なコモノマーには、スチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、ノルボルネン、1−デセン、1,5−ヘキサジエン、またはそれらの組み合わせが含まれる。好ましくは、MMWDエラストマーは2つの画分を有する。各画分は、1.5〜3の間の分子量分布(MWD)を有する。HMW画分は、100Kg/モルを超える、好ましくは150Kg/モルを超える、より好ましくは200Kg/モルを超えるMを有する。高MW画分のMwは、75Kg/モル以上でなければならない。HMW画分分子量に好適な範囲には、75kg/モル〜600kg/モル、100kg/モル〜400kg/モル、及び150kg/モル〜300kg/モルが含まれる。低MW画分は、50Kg/モル未満、好ましくは25Kg/モル未満の分子量Mを有する。低MW画分のMwは、5Kg/モル以上でなければならない。LMW画分分子量に好適な範囲には、5kg/モル〜50kg/モル、7kg/モル〜25kg/モル、10kg/モル〜20kg/モルが含まれる。高MW画分は、30重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜80重量%、及びより好ましくは50重量%〜70重量%の総エラストマーである。低MW画分は、10〜最大70重量%、好ましくは20〜最大60重量%、及びより好ましくは30重量%〜50重量%の総エラストマーである。このエラストマーは、I10/I>8、より好ましくは>15を特徴とするせん断減粘性を有する。I10/Iは、好ましくは8〜120、より好ましくは15〜60、なおより好ましくは25〜45である。
【0013】
このエラストマーは、総合密度<0.90g/ccを有する。高MW画分は、低MW画分と同等またはそれよりも高いコモノマー含有量を有することが好ましい。とりわけ、好ましくはHMW画分は、LMW画分のものよりも少なくとも10重量%高い、好ましくは少なくとも15重量%高い、及びより好ましくは少なくとも20重量%高いコモノマー含有量を有する。上述のエラストマーは、衝撃改質のためのPP及び最適なMWDにおける分散についての最適な流動学を提供するだろう。
【0014】
好ましくは、エラストマーは、50重量%を超えるHMW画分を含み、HMW画分とLMW画分との間に少なくとも10重量%のコモノマー含有量の差異を有する二峰性分子量分布を有する。
【0015】
MMWDエラストマーを、単一の反応器内の原位置を含むまたは反応器を連続してカスケードする任意の数の手法によって、もしくは後の反応器でのブレンドによって製造することができる。溶液、スラリー、またはガス相を含む任意の重合媒体を利用してもよい。多峰性分布エラストマーは、反応器内ブレンドポリプロピレン系インパクトコポリマーを生成する、連続した反応器のカスケードの一部であってもよい。好ましくは、2つの後のメタロセン触媒を使用して単一の反応器内でそれを作製して、1つはLMW画分を生成し、もう1つはHMW画分を生成する。MMWDエラストマーを生成する方法は、例えば、国際出願公開第WO2002/074816号に見出される。好適な触媒は、例えば、国際出願公開第WO2012/027448号及び米国特許出願公開第2011/0282018号に開示される。
【0016】
好ましくは、エラストマーは、組成物の総重量に基づいて、15重量%〜30重量%、好ましくは16重量%〜27重量%、及びより好ましくは18重量%〜25重量%の量で存在する。
【0017】
ブロック複合体相溶化剤
用語「ブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」は、ペンダントまたはグラフト式よりもむしろ、直線様式で結合された2つ以上の化学的に別個の区域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマー、つまり重合官能性については末端から末端に結合(共有結合)される化学的に異なる単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態では、ブロックは、本明細書に組み込まれるコモノマーの量または種類、密度、結晶の量、結晶の種類(例えば、ポリエチレン対ポリプロピレン)、かかる組成物のポリマーに特有の結晶サイズ、立体規則性の種類または度合(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、レジオレギュラリティまたはレジオイレギュラリティ、長鎖分岐またはハイパーブランチを含む分岐の量、均質性、もしくは任意の他の化学的または物理的特性が異なる。本発明のブロックコポリマーは、好ましい実施形態において触媒と組み合わせたシャトリング剤の効果により、ポリマーの多分散性(PDIまたはMw/Mn)及びブロック長の分布の両方の独特の分布を特徴とする。
【0018】
用語「ブロック複合体」は、軟性コポリマーと、コモノマー含有量が10モル%超及び90モル%未満、好ましくは20モル%超及び80モル%未満、最も好ましくは33モル%超及び75モル%未満である重合単位と、モノマーが90モルパーセント超、好ましくは93モルパーセント超、より好ましくは95モルパーセント超、最も好ましくは98モルパーセント超の量で存在する硬性ポリマーと、ブロックコポリマーと、好ましくは軟性セグメント及び硬性セグメントを有するジブロックとを含むポリマーを指し、ブロックコポリマーの硬性セグメントは本質的にブロック複合体中の硬性ポリマーと同一の組成物であり、ブロックコポリマーの軟性セグメントは本質的にブロック複合体の軟性コポリマーと同一の組成物である。ブロックコポリマーは、直線状または分岐状であってもよい。より具体的には、連続的な方法で生成される場合、ブロック複合体は望ましくは、1.7〜15、好ましくは1.8〜3.5、より好ましくは1.8〜2.2、及び最も好ましくは1.8〜2.1のPDIを有する。バッチまたは半バッチ方法で生成される場合、ブロック複合体は望ましくは、1.0〜2.9、好ましくは1.3〜2.5、より好ましくは1.4〜2.0、及び最も好ましくは1.4〜1.8のPDIを有する。かかるブロック複合体は、例えば、全て2011年4月7日に公開され、ブロック複合体、それを作製する方法、及びそれを分析する手法についての参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第US2011−0082257号、米国特許出願公開第US2011−0082258号、及び米国特許出願公開第US2011−0082249号において説明される。とりわけ、コモノマーがエチレンである場合は、それは好ましくは10モル%〜90モル%、より好ましくは20モル%〜80モル%、及び最も好ましくは33モル%〜75モル%パーセントの量で存在する。好ましくは、コポリマーは、90モル%〜100モル%のプロピレンである硬性セグメントを含む。硬性セグメントは、90モル%を超える、好ましくは93モル%を超える、及びより好ましくは95モル%を超えるプロピレン、及び最も好ましくは98モル%を超えるプロピレンであってもよい。かかる硬性セグメントは、80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは115℃以上、及び最も好ましくは120℃以上である対応する溶融点を有する。加えて、ブロック複合体は好ましくは、100℃を超える、好ましくは120℃を超える、及びより好ましくは125℃を超えるTmを有する。ブロック複合体のMFRは好ましくは、0.1〜1000dg/分、より好ましくは0.1〜50dg/分、及びより好ましくは0.1〜30dg/分である。さらに、本発明の本実施形態のブロック複合体は、10,000〜約2,500,000、好ましくは35000〜約1,000,000、及びより好ましくは50,000〜約300,000、好ましくは50,000〜約200,000の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0019】
「硬性」セグメントは、モノマーが90モルパーセントを超える、好ましくは93モルパーセントを超える、より好ましくは95モルパーセントを超える、及び最も好ましくは98モルパーセントを超える量で存在する重合単位の高結晶性ブロックを指す。換言すると、硬性セグメント中のコモノマー含有量は、最も好ましくは2モルパーセント未満、及びより好ましくは5モルパーセント未満、ならびに好ましくは7モルパーセント未満、及び10モルパーセント未満である。いくつかの実施形態では、硬性セグメントは、全てのまたは実質的に全てのプロピレン単位を含む。一方で「軟性」セグメントは、コモノマー含有量が10モル%超及び90モル%未満、好ましくは20モル%超及び80モル%未満、ならびに最も好ましくは33モル%超及び75モル%未満である重合単位の非結晶性、実質的に非結晶性、またはエラストマーのブロックを指す。
【0020】
ブロック複合体及び結晶性ブロック複合体ポリマーは、好ましくは、付加重合可能なモノマーまたは付加重合条件下でのモノマーの混合物を、少なくとも1つの付加重合触媒、共触媒、及び鎖シャトリング剤と接触させることを含む方法によって調製され、該方法は、定常状態の重合条件下で動作する2つ以上の反応器内、またプラグフロー重合条件下で動作する反応器の2つ以上の領域内において、異なる方法条件下で成長ポリマー鎖のうちの少なくともいくつかを形成することを特徴とする。好ましい実施形態では、本発明のブロック複合体は、ブロック長の最も可能性のある分布を有するブロックポリマーの画分を含む。
【0021】
ブロック複合体及び結晶性ブロック複合体を生成するのに有用な好適な方法を、例えば、2008年10月30日に公開された、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0269412号において見出すことができる。とりわけ、重合は望ましくは、触媒成分、モノマー、ならびに任意に溶媒、アジュバント、捕捉剤、及び重合助剤が、1つ以上の反応器または領域に連続的に供給されて、ポリマー生成物がそこから連続的に除去される、連続重合、好ましくは連続溶液重合として実行される。経時的に、方法全体が実質的に連続的となるように、反応物質を間欠的に添加して、小さい定期または不定期間隔で生成物を除去するこれらの方法は、この文脈において使用される場合の用語「連続的な」及び「連続的に」の範囲内である。さらに、前に説明されたように、第1の反応器もしくは領域で、第1の反応器の出口または出口の僅か手前で、または第1の反応器もしくは領域と第2のまたはいずれかの後続の反応器もしくは領域との間でといった、重合中の任意の点で鎖シャトリング剤が添加されてもよい。連続して接続される反応器もしくは領域のうちの少なくとも2つの間でのモノマー、温度、圧力の差異、または重合条件における他の差異に起因して、コモノマー含有量、結晶化度、密度、立体規則性、レジオレギュラリティ、または他の化学的もしくは物理的差異等の同一の分子内の異なる組成物のポリマーセグメントが、異なる反応器もしくは領域内で形成される。各セグメントまたはブロックのサイズは、連続的なポリマー反応条件によって決定されて、好ましくはポリマーサイズの最も可能性のある分布である。
【0022】
好ましくは、ブロック複合体は、組成物の総重量に基づいて、3重量%〜15重量%、好ましくは5重量%〜10重量%、及びより好ましくは6重量%〜9重量%の量で存在する。
【0023】
添加剤及び充填剤
抗酸化剤(例えば、ヒンダードフェノール系(例えば、Irganox(商標)1010)、ホスファイト(例えば、Irgafos(商標)168))、粘着性添加剤(例えば、PIB)、抗ブロック添加剤、顔料、及び充填剤(例えば、タルク、珪藻土、ナノ充填剤、粘土、金属粒子、ガラス繊維もしくは粒子、カーボンブラック、他の強化繊維等)等の添加剤もまた、配合物内に含まれ得る。好ましくは、組成物は、ポリマーの総重量に基づいて、0重量%〜35重量%、1重量%〜25重量%、及びより好ましくは5重量%〜25重量%の量でタルクを含む。他の添加剤は、0.01重量%〜1重量%の量で存在してもよい。
【0024】
用途及び最終使用
有用な加工物品または部品を、様々な射出成形方法(例えば、Modern Plastics Encyclopedia/89,Mid October 1988 Issue,Volume 65,Number 11,pp.264−268,“Introduction to Injection Molding”及びpp.270−271,“Injection Molding Thermoplastics”において開示されるものであり、この開示は参照により本明細書に組み込まれる)及びブロー成形方法(例えば、Modern Plastics Encyclopedia/89,Mid October 1988 Issue,Volume 65,Number 11,pp.217−218,“Extrusion−Blow Molding”において開示されるものであり、この開示は参照により本明細書に組み込まれる)、ならびに異形押出を含む様々な方法を使用して、本明細書で開示される配合物から作製することができる。加工物品のいくつかには、燃料タンク、屋外用家具、パイプ、自動車用コンテナ用途、自動車用バンパー、計器盤、ホイールカバー及びグリル、ならびに例えば、冷凍コンテナ等を含む他の家庭用及び個人用物品が含まれる。当然ながら、当業者もまた、ポリマーを組み合わせて屈折率を有利に使用し、冷凍コンテナ等の最終使用物品の透明性を改善または維持することもできる。
【0025】
試験法
ASTM D 792によって、密度が測定される。
【0026】
示差走査熱量測定(DSC)が、TA Instruments Q100またはQ1000 DSC及び圧着密封された(crimp−sealed)Perkin Elmerパンを使用して、圧縮成形された標本上で実施される。試料は、−90℃で5分間平衡されて、次いで10℃/分で180℃まで加熱され(「第1の加熱DSC曲線」を捕捉する)、5分間保持され、次いで10℃/分で−90℃まで冷却され(「結晶化曲線」を捕捉する)、5分間保持され、次いで10℃/分で180℃まで加熱される(「第2の加熱DSC曲線」を捕捉する)。データは、泳動完了後にTA Universal Analysisソフトウェアを使用して分析される。
【0027】
試料の溶融流量は、ASTM D1238、条件230℃、2.16kgを使用して測定される。メルトインデックスまたはIは、ASTM D1238、条件190℃、2.16kgを使用して測定される。試料の溶融流量は、ASTM D1238、条件230℃、10kgを使用して測定される。メルトインデックスまたはI10は、ASTM D1238、条件190℃、10kgを使用して測定される。
【0028】
13C NMR分析
試料は、およそ3gのテトラクロロエタン−d/オルトジクロロベンゼンの50/50の混合物を、10mmのNMR管中の0.4gの試料へ添加することによって調製される。試料は、管及びその含有物を150℃まで加熱することによって溶解され、均質化される。データは、100.5MHzの13C共振周波数に対応する、JEOL Eclipse(商標)400MHz分光器またはVarian Unity Plus(商標)400MHz分光器を使用して収集される。データは、6秒のパルス繰り返し遅延を伴うデータファイル当たり4000トランジェントを使用して取得される。定量分析のための最小限の信号対ノイズ比を達成するために、複数のデータファイルが一緒に追加される。スペクトル幅は、32Kのデータポイントの最小限のファイルサイズを伴う25,000Hzである。試料は、10mmの広帯域プローブ内で、130℃で分析される。コモノマーの組み込みは、Randallのトライアド法(Randall,J.C.;JMS−Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29,201−317(1989)を使用して決定され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
HTLC
高温液体クロマトグラフィー(HTLC)は、2009年12月21日に出願された米国特許出願公開第2010−0093964号及び米国特許出願第12/643111号において開示される手法に従って実施され、その両方が参照により本明細書に組み込まれる。試料は、下に説明される方法論によって分析される。
【0030】
Waters GPCV2000高温SECクロマトグラフは、HT−2DLC計測器具を組み立てるように再構成された。2つのShimadzu LC−20ADポンプは、バイナリミキサーを通じて、GPCV2000内でインジェクタ弁に接続された。第1の寸法(D1)のHPLCカラムは、インジェクタと10ポート切換弁(Valco Inc)との間で接続された。第2の寸法(D2)のSECカラムは、10ポート弁及びLS(Varian Inc.)と、IR(濃縮及び組成)と、RI(屈折率)と、IV(固有粘度)検出器との間で接続された。RI及びIVは、GPCV2000内に組み立てられた検出器であった。IR5検出器は、PolymerChar,Valencia,Spainによって提供された。
【0031】
カラム:D1カラムは、Thermo Scientificから購入した高温Hypercarbグラファイトカラム(2.1×100mm)であった。D2カラムは、Varianから購入したPLRapid−Hカラム(10×100mm)であった。
【0032】
試薬:HPLCグレードのトリクロロベンゼン(TCB)を、Fisher Scientificから購入した。1−デカノール及びデカンは、Aldrichからのものであった。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(イオノール)もまた、Aldrichから購入した。
【0033】
試料調製:0.01〜0.15gのポリオレフィン試料は、10mLのWatersオートサンプラーバイアル内に配置された。200ppmのイオノールを伴う7mLの1−デカノールまたはデカンのいずれかが、その後にバイアルへ添加された。試料バイアルにヘリウムを約1分間分散した後、試料バイアルは、160℃に設定された温度に加熱された振盪器上に置かれた。溶解は、バイアルをその温度で2時間振盪させることによって完了した。バイアルは、次いで射出のためにオートサンプラーへ移動された。溶液の実際の体積は、溶媒の熱膨張により7mLを超えたことに留意していただきたい。
【0034】
HT−2DLC:D1流量は、0.01mL/分であった。移動相の組成物は、泳動の最初の10分間は、100%の薄い溶離液(1−デカノールまたはデカン)であった。組成物は、次いで489分以内に60%の濃い溶離液(TCB)まで増大した。データは、未処理のクロマトグラムの期間として489分間収集された。10ポート弁は、489/3=163のSECクロマトグラムをもたらしながら3分毎に切り換わった。その後の泳動勾配は、489分のデータ取得時間の後に、次の泳動のためにカラムを浄化して平衡させるのに使用された。
浄化ステップ:
1.490分:流=0.01分、//0.01mL/分の一定の流量を0〜490分維持する
2.491分:流=0.20分、//0.20mL/分まで流量を増大させる
3.492分:%B=100、//移動相組成物を100%TCBまで増大させる
4.502分:%B=100、//2mLのTCBを使用してカラムを洗浄する
平衡ステップ:
5.503分:%B=0、//移動相組成物を100%の1−デカノールまたはデカンに変更する
6.513分:%B=0、//2mLの薄い溶離液を使用して、カラムを平衡させる
7.514分:流=0.2mL/分、//0.2mL/分の一定流を491〜514分維持する
8.515分:流=0.01mL/分、//流量を0.01mL/分まで低下させる
ステップ8の後、流量及び移動相組成物は、泳動勾配の初期条件と同一であった。
【0035】
D2流量は2.51mL/分であった。2つの60μLのループが、10ポート切換弁上に導入された。D1カラムからの30μLの溶離液は、弁の切り換えを全て伴いながらSECカラム上へ荷重された。
【0036】
IR、LS15(15°での光散乱信号)、LS90(90°での光散乱信号)、及びIV(固有粘度)信号が、SS420Xアナログデジタル変換ボックスを通じたEZChromによって収集された。クロマトグラムは、ASCII形式でエクスポートされ、データ低減のために自家製のMATLABソフトウェアへインポートされた。分析されるブロック複合体中に含有される硬性ブロック及び軟性ブロックの類似する性質であるポリマーの、ポリマー組成物及び保持体積の適切な較正曲線を使用すること。較正ポリマーは、組成において(分子量及び化学的組成物の両方で)精密であり、分析中に対象の組成物を網羅する合理的な分子量範囲に及ぶべきである。生データの分析は、以下のように計算されて、第1の寸法のHPLCクロマトグラムは、(カットの総IR SEC クロマトグラムからの)全てのカットのIR信号を溶離液体積の関数としてプロットすることによって再構築された。IR対D1の溶離液体積は、総IR信号によって正規化することで、重量画分D1溶離液体積のプロットを得た。IRメチル/測定比は、再構築されたIR測定及びIRメチルクロマトグラムから得られた。比率は、SEC実験から得られた(NMRによる)PP重量%対メチル/測定の較正曲線を使用して組成物へ変換された。MWは、再構築されたIR測定及びLSクロマトグラムから得られた。比率は、PE標準を使用して、IR及びLS検出器の両方の較正の後にMWへ変換された。
【0037】
HT GPC
PolymerChar Inc(Valencia,Spain)からの赤外線濃度検出器(IR−4)からなる高温ゲル浸透クロマトグラフィーシステム(GPC IR)が、分子量(MW)及び分子量分布(MWD)決定のために使用された。担体溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)であった。オートサンプラーコンパートメントは、160℃で動作され、カラムコンパートメントは150℃で動作された。使用されたカラムは、13ミクロンのカラムである4つのPolymer Laboratories Olexisであった。クロマトグラフィーの溶媒(TCB)及び試料調製溶媒は、250ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及び分散された窒素を伴う同一の溶媒源からのものであった。試料はTCB中で2mg/mLの濃度で調製された。ポリエチレン試料は、160℃で2時間静かに振盪された。射出体積は、200μlであり、流量は1.0ml/分であった。
【0038】
GPCカラムセットの較正は、21の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施された。標準の分子量は580〜8,400,000g/モルの範囲であり、個々の分子量の間で少なくとも10回分離しながら、6つの「カクテル」混合物内に配列された。
【0039】
ポリスチレン標準のピーク分子量は、(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)で説明されるような)以下の等式を使用して、ポリエチレン分子量へ変換された。
ポリエチレン=A(Mポリスチレン(1)
ここでBは、1.0の値を有し、Aの実験的に決定された値はおよそ0.39である。
【0040】
一次多項式が、等式(1)から得られたそれぞれのポリエチレン相当の較正点を、ポリスチレン標準の観察された溶離液体積に適合させるために使用された。
【0041】
数平均分子量、重量平均分子量、及びz平均分子量は、以下の等式に従って計算された。
【0042】
【化1】
【0043】
式中、Wfは、i次成分の重量画分であって、Mは、i次成分の分子量である。
【0044】
MWDは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率として表された。
【0045】
正確なA値は、等式(3)を使用して計算されたMwと、対応する保持体積の多項式とが、標準の直線状ポリエチレンホモポリマー基準の115,000g/モルの既知のMw値に合致するまで、等式(1)中のA値を調整することによって決定された。
【0046】
GPCデコンボリューション
GPCデータは、デコンボリューションされて、2つの分子量成分に最も可能性のある適合をもたらす。商業的に、ならびに文献において利用可能ないくつかのデコンボリューションアルゴリズムがある。これらは、使用される仮説に応じて異なる回答を導くことができる。ここで要約されるアルゴリズムは、2つの最も可能性のある分子量分布(調整可能な誤差項を含めて)のデコンボリューション問題のために最適化される。マクロマー組み込み及び反応器条件(すなわち、温度、濃度)の微少な変動に起因した基礎となる分布の変化を可能にするため、基底関数が修正されて、正規分布項を組み込んだ。この項により、各成分のための基底関数が「スミア」されて、分子量軸に沿って度合を変化させることが可能となる。利点は、制限(低LCB、完璧な濃度、及び温度制御)の中で、基底関数が、単純で最も可能性のあるFlory分布となることである。
【0047】
3つの成分(j=1,2,3)は、調節可能な誤差項である三次成分(j=3)によって導出される。GPCデータは、正規化されて、重量画分対Log10分子量のベクトルへ正常に変形される必要がある。換言すると、デコンボリューションについての各潜在的な曲線は、高さベクトルhからなるべきであって、その高さはLog10分子量の既知の間隔で報告されて、hは、溶離液体積ドメインからLog10分子量ドメインへ正常に変形されて、hは正規化される。加えて、これらのデータはMicrosoft EXCEL(商標)アプリケーションで利用可能にしなければならない。
【0048】
デコンボリューションにおいて、いくつかの仮説が立てられる。各成分jは、パラメータσを使用して正規またはガウス広がり関数とコンボリューションされる最も可能性のあるFlory分布からなる。結果として得られる3つの基底関数を、カイ二乗Xの最小化ルーチンに使用して、GPCデータベクトルであるh内のn点に最も適合するパラメータを配置する。
【0049】
【化2】
【0050】
変数CumNDj,kは、以下のように設定されたパラメータを持つEXCEL(商標)関数「NORMDIST(x、平均、標準偏差、累積)」を使用して計算される。
x=μ+(k−10)*σ/3
平均=μ
標準偏差=σ
累積=TRUE
【0051】
下の表Iは、これらの変数及びその定義を要約する。EXCEL(商標)ソフトウェアアプリケーションSolverの使用は、この作業に適当である。正常な最小化を保証するために、Solverへ制約が課せられる。
【0052】
【表I】
【0053】
カイ二乗最小化から導出される8つのパラメータは、μ、μ、μ、σ、σ、σ、w、及びwである。項wは続いて、3つの成分の合計が必ず1に等しいため、w及びwから導出される。表IIは、EXCELプログラムに使用されるSolverの制約の概要である。
【0054】
【表II】
【0055】
理解されるべきさらなる制約には、μ>0のみが許可される制限が含まれ、Solverが正常に初期化される場合であっても、Solverルーチンはμのいずれも約0.005未満の値へ移動させないため、この制約は入力される必要がない。同様に、wは全て正数であると理解される。この制約を、Solver以外で扱うことも可能である。wが、間隔0.0<P<P<1.0、したがってw=P、w=P−P、及びw=1.0−P、に沿った2つの点の選択に起因すると理解される場合、制約するP1及びP2は次いで、wについて上で必要とされる制約と同等である。
【0056】
表IIIは、オプションタブ下でのSolver設定の概要である。
【0057】
【表III】
【0058】
μ、μ、w、及びwの値についての第1の予想値を、観察されたGPC分布についての観察された重量平均分子量、数平均分子量、及びz平均分子量をもたらす2つの理想的なFlory成分を仮定することによって得ることができる。
【0059】
【化3】
【0060】
次いで、μ、μ、w、及びwの値が計算される。これらを慎重に調整することで、誤差項wを僅かなものにして、最小化ステップのためにSolverへ入力する前に表IIの制約を満たすことを可能にしなければならない。σの開始値は、全て0.05に設定される。
【0061】
HT GPC IRからのオクテン含有量の決定
オクテン含有量は、Polymer Char IncからのIR−5組成物検出器を使用して決定された。組成物検出器は、0〜40のオクテン重量%及び1つのポリオクテン(PO)ホモポリマー(100重量%のオクテン)を持つエチレン/オクテン(EO)コポリマーを生成された11のメタロセン溶液を使用して較正された。全てのポリマーは、それぞれおよそ40Kまたは100KのMwを有する。ピーク位置での信号は、較正に使用された。オクテン重量%とIR−5メチル/メチレン信号比の直線関係は、これらのEOコポリマー及びPOポリマーに組み立てられた。
【0062】
樹脂のオクテン重量%分布は、IR−5メチル/メチレン信号、ならびにオクテン重量%及びIR−5メチル/メチレン信号比の直線較正を使用して得られた。ポリマー鎖端の作用は、ビニル鎖端として訂正された。
【0063】
二峰性の樹脂について、各画分中のオクテンの重量%が以下のように計算された。高重量画分(主ピーク)について、オクテン重量%は、主ピーク面積での分布曲線のプラトーを使用して計算された。低重量画分面積(小ピーク)について、主ピークの汚染及び溶離液の低濃度の末端でのオクテン重量%信号の散乱を回避するために、オクテン重量%は、狭いMW範囲内(log MW尺度で0.3)で計算された。
【0064】
アイゾット衝撃試験
ノッチ付きアイゾット衝撃試験が、62mm×19mm×3.175mmの寸法を有するために引張試験片から切断された、射出成形されたASTM標本上で完了した。試料は、ノッチャーを使用してノッチ付けされて、ASTM D256に従ってノッチ深さ10.16±0.05mmを生成した。各試料の5つの標本が、23℃でASTM D256を使用して試験された。KJ/mでのエネルギー値が報告されたとき、報告されたKJ/mでのエネルギー値は、ft−lbs/inでのエネルギー値を5.25の換算係数と乗じることによって導き出された。
【0065】
曲げ弾性率
曲げ弾性率試験は、73°F及び50%の相対湿度で40時間慣らした後、5カ所のUnitedフレックスフレームの2.5インチの全長を利用して、毎分2mmのISO 178に従って実施された。弦弾性率は、0.5での応力値及び25%の歪度を利用して報告された。平均偏差及び標準偏差が報告された。
【0066】
粘度及び粘度比(P)
材料の動的機械的スペクトル(DMS)は、TA InstrumentsからのARES IIレオメータを使用して得られた。レオメータは、直径25mmの平行板を装備し、その板の間の隙間は2mmに設定された。全ての測定は、10%の歪度で100〜0.1rad/秒に変化される周波数を用いて、190℃で実施された。Pは、100秒−1でのPPマトリックス相の粘度によって導出された、分散された100秒−1でのエラストマー相の粘度として定義される。
【0067】
原子間力顕微鏡法(AFM)−面積加重平均径(Da)(ミクロン)測定
各ブレンドの圧縮成形プラークが、AFM撮像に使用された。圧縮成形プラークの僅か一部が、−120℃の極低温条件下でミクロトームにかけられ、光沢のあるブロック面を生成した。Dimension 3100 DI/Veeco原子間力顕微鏡は、相検出を伴うタッピングモードで動作された。動作するソフトウェアは、v7.30である。全ての走査に使用されるチップは、約170khzの共振周波数及び40N/mのばね定数を持つMikroMasch NCS#16である。画像分析は、5つの60×60mm走査上で実施されて、各ブレンドについての粒径分布を得た。面積加重平均径(D):
【0068】
【化4】
【0069】
式中、Aは各粒子の面積であり、Dは各粒子の直径である。
【実施例】
【0070】
MMWDエラストマー実施例1〜3及び比較実施例C1及びC2
実施例1〜3及び比較実施例1〜2について、近似式[(C14−1827−35CHN][B(Cを有する、共触媒であるビス(水素化タローアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが、触媒と共に1.2対1のモル比で用いられた。この共触媒は、Boulder Scientificから購入され、さらなる精製なしで使用された。触媒Aは、ジメチル[[2’,2’’’−[1,3−プロパンジイルビス(オキシ−κO)]ビス[3−[3,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−9H−カルバゾール−9−イル]−5’−フルオロ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]−ハフニウムであり、国際公開第WO2012027448号の実施例1で説明されるように調製されてもよい。触媒Bは、ジメチル[[2’,2’’’−[1,3−プロパンジイルビス(オキシ−κO)]ビス[3−[3,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−9H−カルバゾール−9−イル]−3’,5’−ジフルオロ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]−ハフニウムであり、米国第20110282018号の実施例1に従って調製されてもよい。触媒Cは、ジメチル[[2’,2’’’−[1,3−プロパンジイルビス(オキシ−κO)]ビス[3−[3,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−9H−カルバゾール−9−イル]−5’−フルオロ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]−ジルコニウムであり、国際公開第WO2012027448号に開示されるリガンドQ1、及び触媒Aの合成に類似する様式のZrClから調製されてもよい。全ての実施例について、共触媒が1.2対1のモル比で触媒に用いられる。
【0071】
比較実施例3、4、及び5は、それぞれ1.6%のBSA(ENGAGE 8407)、ENGAGE 8200、及びENGAGE 8100である。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
ブロック複合体の調製
触媒−1([[rel−2’,2’’’−[(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジイルビス(メチレンオキシ−κO)]ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)−5−メチル[1,1’−ビフェニル]−2−オラト−κO]](2−)]ジメチル−ハフニウム)、ならびに共触媒−1である、長鎖トリアルキルアミン(Akzo−Nobel,Inc.から入手可能なArmeen(商標)M2HT)の反応によって調製された、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートのメチルジ(C14−18アルキル)アンモニウム塩と、実質的に米国特許第5,919,983号の実施例2に開示されるようなHCl及びLi[B(C]との混合物が、Boulder Scientificから購入され、さらなる精製なしで使用される。
【0077】
CSA−1(ジエチル亜鉛またはDEZ)及び共触媒−2(変性メチルアルモキサン(MMAO))は、Akzo Nobelから購入され、さらなる精製なしで使用された。重合反応のための溶媒は、ExxonMobil Chemical Companyから取得できる炭化水素混合物(ISOPAR(登録商標)E)であり、使用前に13−X分子ふるいの床を通じて精製される。
【0078】
本実施例のブロック複合体は、指定されたBCである。これは、連続して接続される2つの連続撹拌槽型反応器(CSTR)を使用して調製される。第1の反応器は、体積中でおよそ12ガロンである一方で、第2の反応器は、およそ26ガロンであった。各反応器は、液圧で充満し、定常状態条件で動作するように設定される。モノマー、溶媒、水素、触媒−1、共触媒−1、共触媒−2、及びCSA−1は、表2に略述される方法条件に従って第1の反応器へ供給される。表2に説明されるような第1の反応器含有量は、連続して第2の反応器へ流動する。追加のモノマー、溶媒、水素、触媒−1、共触媒−1、及び任意に共触媒−2が、第2の反応器へ添加される。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
他の成分
【0082】
【表7】
【0083】
C3−ENGAGE 8407POEのBSA(アジドカーボンアミド(azidocarbonamide))変性
ENGAGE 8407 POE(ポリオレフィンエラストマー)のBSA結合は、100RPMの速さにて30mmのCoperion WP−30ZSK同方向二軸押出器上で溶融ブレンドすることによって完了する。溶融ブレンド中の鎖切断を低減するために、分子溶融(DPO−BSA)粉末がBSAの源として使用された。これは、3.3質量部のIRGANOX 1010及び1質量部のBSAの比率を有する。1.6重量%の分子溶融は、上の方法を使用することによってENGAGE 8407と溶融ブレンドされて、MI1.1を持つBSA変性POEをもたらす。
【0084】
ブレンド
PP/MWMDエラストマー/BC試料の化合及び射出成形
全ての成分は、タンブラー乾燥され、Leistritz micro−18二軸押出器またはZSK−25二軸押出器のいずれかを使用して直接ブレンドされる。射出成形されたASTM D−638 Type I引張試験片は、機械的試験のためにArburg 370 C射出成形器を使用して得られた。
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】
図1、2、及び3は、発明の実施例1、2、及び3のデコンボリューションHT−GPCプロットを示す。見られるように、これらの発明のエラストマーは、別個の二峰性分子量分布及び組成分布を示す。試験方法で上述したように、GPC曲線をデコンボリューションして、各形態のそれぞれの平均分子量分布及び画分を近似させることができる。表3は、このデコンボリューション方法論から決定された、結果として生じる分子量を示す。示されるように、各発明の実施例についての各形態の分子量及び分布の範囲がある。実施例として、発明の実施例1は、132,291ダルトンのMwを有する81.6重量%の高分子量画分を含有した。一方で、発明の実施例3は、216,526ダルトンのMwを有する61.6重量%の高分子量画分を含有した。実施例1〜3において、より高い分子量形態は、多数の組成物であり、より高いコモノマー1−オクテン含有量を有した。さらに、LMW形態とHMW形態との間のコモノマー1−オクテン含有量の差異は少なくとも20重量%であった。比較実施例C1は、本質的に単峰性分子量及び組成分布を示す。比較実施例C2は、二峰性分子量及び組成分布を示す。しかしながら、2つの形態の間でのコモノマー1−オクテン含有量の差異は、10重量%未満であった。さらに、HMW形態は、30重量%未満の総組成物からなった。
【0089】
比較実施例C3〜C5は、標準的な市販の単一の触媒、単一の反応器製造を介して生成され、本質的に単峰性分子量分布を示した。
【0090】
表9に見られるように、発明の実施例ブレンド1〜ブレンド3のブレンドに使用される発明の実施例1、2、及び3は、同等のレベルのポリプロピレンで単独でブレンドされたときに、実施例ブレンドC1〜ブレンドC5の比較ブレンドに使用される比較実施例C1〜C5に対して、同様のまたは僅かに良好な衝撃靱性を示した。しかしながら、ブロック複合体BCと組み合わせられたときに、実施例ブレンド1−BC〜ブレンド3−BCの発明のブレンドに使用される発明の耐衝撃改質剤の実施例1〜3を使用して、強い相乗靭化作用が観察され、比較ブレンド実施例ブレンドC1−BC〜ブレンドC5−BCに使用される比較実施例C1〜C5のものをはるかに超えた。さらに、表9に示されるように、我々はエラストマー対マトリックスポリプロピレンの粘度比Pを評価し、一般的傾向は、エラストマー粒径Daが合理的に非常に粘度比Pと関係していることを提示した。したがって、一般的な規則として、より低いPが、より低いエラストマー粒径Daをもたらした。ブロック複合体BCがブレンド組成物の一部としてこれらのエラストマーに添加されたときに、実質的な粒径の変化が観察された。これは、米国公開特許出願第US2011/0082257号において以前に示されている。しかしながら、エラストマー粒径は必ずしも衝撃靱性と関係していないことを見ることができる。実施例について、比較実施例C3及びC3−BCは、それぞれ発明の実施例1、2及び1−BC、2−BCよりも低い粒径を示した。実施例C3及びC3−BCは、それぞれ発明の実施例3及び3−BCと比較されるように、相当する粒径を示した。
【0091】
衝撃強さの結果について、比較実施例ブレンドC3は実施例ブレンド1及び2、ならびに3よりも高い衝撃靱化を示した。しかしながら、ブロック複合体BCとブレンドされたときに、発明の実施例ブレンド1−BC、2−BC、及び3−BCは全て、比較実施例ブレンドC3−BCよりも実質的に高い衝撃靱化をもたらした。いずれの理論にも囚われることを望まないが、実質的に低いエラストマー粒径Daにおいて、エラストマー耐衝撃改質剤の高分子量画分が衝撃靱化において重要な役割を果たし得ると考えられる。この場合、発明の実施例1、2、及び3の低い分子量(LMW)画分によって、エラストマーは、低いエラストマー粒径Daを達成するための二軸押出器等の化合装置内でのブレンドで観察された、最小限のせん断率(100rad/秒)における十分に低い粘度を示すことができた。我々が表3を観察して、HMW重量%を100から減算する場合、我々はLMW重量%画分の近似値を得る。差異としては、実施例1、2、及び3のLMW重量パーセントが、計算されて18.4、30.3、及び38.4パーセントとなった。LMWの増加は、低減されたP及びより低いDaをもたらす。ブロック複合体BCの追加によって、表9に示されるように、さらにDaを低減することが可能となった。表2から、我々は、発明の実施例1、2、及び3のMw及びMzを比較する場合に、それらが比較実施例C3よりも実質的に高く、実施例1から実施例3までの値が増加したことに留意する。さらに、我々は表3から、発明の実施例エラストマー内のHMW画分のMw及びMzが、実施例1から実施例3にわたって増加したことに留意する。したがって、我々は、実施例3のブロック複合体BCとブレンドされたときに、本発明の実施例のいずれかの最も高いLMW画分ならびに最も高いMw及びMzを有することで、表8のいずれかの組成物の最も高い衝撃強さを示した発明の実施例ブレンド3−BCがもたらされたことに留意する。表10で、発明の実施例3は、実施例ブレンド3が使用されたときに、比較実施例ブレンドC3及びC5ポリプロピレンに使用されるときの比較実施例C3またはC5に対して、同様か、または僅かに高い衝撃靱化を示した。ブロック複合体BCと組み合わせられたときに、これは発明のブレンド3−BCをもたらし、比較ブレンドC3−BC−1またはC5−BCの2倍を超える衝撃強さを示した。比較ブレンドC3−BC−2は、比較ブレンドC3 BC−1の繰り返しであり、比較ブレンドC3−BC−1の衝撃結果を再生成した。発明の実施例3の性能は、タルクと組み合わせられたときにさらに例証される。実施例3−Tに使用される発明の実施例3の性能は、実施例ブレンドC3−Tに使用される比較実施例C3と比較して同様の性能と、実施例ブレンドC5−Tに使用される比較実施例C5よりもいくらか高い性能とを示した。しかしながら、ブロック複合体BCと組み合わせられるときに、結果として生じる発明のブレンド3−BC−T−1は、比較ブレンドC3−BC−Tまたは比較ブレンドC5−BC−Tのいずれかのもののおおよそ2倍である衝撃性能を示した。発明のブレンド3−BC−T−2は、発明のブレンド3−BC−T−1の繰り返しであり、発明のブレンド3−BC−T−1の衝撃結果を再生成した。
図1
図2
図3
図4