【実施例】
【0018】
図1は実施例のシューズアッパーを示し、図示しない靴底を取り付けると靴となる。4は甲、5はインナーソールで、インナーソール5は設けなくても良い。6はタン、8,8はタン6の両側の袋状部分で、表編地と裏編地とから成る袋状編地であり、靴紐12を通して支持するための孔10を複数備えている。靴の種類は、スポーツシューズ、スニーカー、トレッキングブーツ、ニットブーツ等、任意である。
【0019】
図2は袋状部分8の構造を示し、14はシューズアッパーの表面に現れる表編地、15は表面に現れない裏編地である。表裏の編地14,15が閉じられていることにより、袋状部分8は袋状になっている。なおシューズアッパー2の全体が表裏の編地を備えていても、袋状部分8のみが表裏の編地を備えていても良い。袋状部分8の内部には、熱融着性樹脂が融着して生じ、あるいは熱硬化性樹脂が硬化して生じた構造体16があり、構造体16は表裏の編地14,15に付着して、孔10を補強すると共に、靴紐12に接触して支持する。熱融着性樹脂は例えば、耐熱性の高い繊維から成る芯を、軟化温度もしくは重合温度が芯よりも低くかつ熱可塑性もしくは熱硬化性の樹脂の繊維の鞘で包んだ糸状の樹脂である。熱硬化性樹脂は例えばポリウレタン樹脂で、例えば軟質のポリウレタン樹脂では構造体16は弾力性が高い発泡体状であり、硬質ポリウレタン樹脂では構造体16はより硬くなり、エラストマー状のポリウレタン樹脂では、構造体16は膨らみが失われてフィルムないし板に近い状態になる。なお、シューズアッパー2の編糸よりも低融点の、熱可塑性樹脂を構造体16に用いても良いが、加熱により袋状部分8が軟化するおそれがある。充填材は糸状、繊維状に限らず、ビーズ状、粉体状でも良く、熱融着性の樹脂及び熱硬化性樹脂以外に、他の繊維材料等を含んでいても良い。
【0020】
図3,
図4は最適実施例のシューズアッパー30を示し、例えば前後少なくとも一対の針床を有する横編機上で、編み出し部L1,L2から、即ちシューズアッパーの踵側から,2個のキャリアを用いてエリア32,33を編成する。ラインL3から例えばキャリアを1個にし、残るエリア34を爪先まで編成する。この間、減らし目と増目とを行い、シューズアッパー30の形状に従って編成し、両面編み(インターロック編み)、スムース編み等の伸び難い編み方を用いる。なおエリア32〜34以外に、タンを同時に編成しても良く、またタンを別途に編成して縫製等により結合しても良い。
【0021】
カラー35、紐通し部36,伸び止め部37は袋状で、カラー35,紐通し部36はエリア32,33の端部にあり、例えばカラー35を
図4のようにして編成するが、紐通し部36も同様である。両面編みによりエリア32を編成し、天竺編みにより袋状のカラー35を編成する。伸び止め部37は、例えば前針床の針で袋の一面を、後針床の針で袋の他の面を編成する。
【0022】
図5は袋状部分8と構造体16の製造工程を示し、ステップS1で袋状部分8を編成し、この時、例えば
図6のようにして紐通し用の孔10を設ける。ステップS2で、
図8の充填機80等を用い、
図7に示す注入口22から熱融着性樹脂を含む充填材を注入する。ステップS3で、熱処理により熱融着性樹脂を袋状部分の編地に融着させると共に構造体16を設けて、紐通し用の孔10を補強する。なお靴紐12はステップS1とステップS2の間に、孔10に通しておく。
【0023】
図6は紐通し用の孔10の編成を示し、1)では、袋状部分8の表編地14(破線)と裏編地15(実線)とを、例えば前後一対の針床を有する横編機で、編糸64により編成する。用いる針にA〜H及びa〜hの符号を付す。2)で、孔10の周囲の針C,c,F,fに、例えば、表編地の針d,eの編目を裏編地の針C,Fの編目にそれぞれ重ね、裏編地の針D,Eの編目を表編地の針c,fの編目にそれぞれ重ねて、4個の二重目68を形成することにより、孔10の両側を編糸64で塞ぐ。3)で、4個の掛目69を孔10内の針D,d,E,eに渡糸がX字状にクロスするように形成し、4)で掛目69上に通常の編目を形成して孔10の編成を完了する。なお孔10の編成方法は任意である。
【0024】
図7は袋状部分8の構造を示し、袋状部分8の長手方向(筒の軸方向)はタン6の長手方向に平行で、例えば複数個の区画21に分割部20によって、袋状部分8は長手方向に沿って区分されている。そして区画21毎にメッシュ組織等の注入口22が設けられている。分割部20は、表編地と裏編地とを閉じる部分、あるいは結合する部分で、例えば表編地の編糸と裏編地の編糸をクロスさせると、表編地と裏編地とを閉じることができる。また表編地と裏編地とをタック等により接続すると、表編地と裏編地とを結合することができる。分割部20は充填材を注入する範囲を区画21内に制限するためのもので、充填材を注入する範囲を制限できる程度に袋状部分8を分割できていれば良い。また分割部20と区画21とは袋状部分8が膨らみすぎることを抑制する効果がある。なおまた袋状部分8の表裏を接続するように、多数の渡糸をスペーサファブリック状に配置しても、袋状部分8が膨らみすぎることを抑制できる。なお複数のノズルを有する充填機を用いると、袋状部分8へ充填材を均一にかつ短時間で充填できる。この場合、分割部20と区画21は設けなくても良い。メッシュ組織でのメッシュの孔から成る注入口22を、例えば袋状部分8の裏面等の目立たない個所に設ける。これは充填機のノズルを挿入するための孔で、袋状部分8で編目間に隙間がある場合、注入口22は設けなくても良いが、裏編地など目立たないところに設けることが好ましい。
【0025】
図8は充填機80の例を示し、82はノズルで、空気パイプ84からは圧縮された空気が供給され、充填材供給部86からは糸状、繊維状、ビーズ状、粉体状等の充填材が供給されて空気と混合され、ノズル82から噴射される。充填材は熱融着性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましいが、単なる熱可塑性樹脂でも良く、また熱融着性樹脂あるいは熱硬化性樹脂と、ニットアッパーの編糸と同程度以上の耐熱性を有する繊維、との混合物、等でも良い。なお熱融着性樹脂の糸は、耐熱性の高い繊維の芯を熱可塑性で軟化温度が低い繊維の鞘で囲んだものである。芯と鞘の構造とせずに、単に耐熱性の高い繊維と、重合開始温度あるいは耐熱温度がニットアッパーの編糸の耐熱温度よりも低い繊維とを混合して、充填しても良い。
【0026】
図9は、実施例のシューズアッパー90の要部を模式的に示し、92は甲、94は紐通し部で、袋状の紐通し部94は膨らみがある。紐通し部94の袋の内部に、注入口22から熱融着性樹脂あるいは熱硬化性樹脂が充填されて、融着あるいは熱硬化し、紐通し部44を補強している。また紐通し部94は、区画21で仕切られ、区画21毎に注入口22が設けられているが、区画21及び注入口22は設けなくても良い。
【0027】
実施例には以下の特徴がある。
1) 袋状部分8を設けて、紐通し用の孔10を補強するように構造体16を設ける。複数回のポリマーコーティング等は不要で、異種の材料でコーティングせず、充填材は袋状部分8から浸み出さないので、編地本来のテクスチャーを保つことができる。
2) 袋状部分8は、強度の他に、厚さと弾力性とを有し触感が良い。
3) 熱硬化性樹脂の充填材による構造体16は、日射等で軟化しない。
4) 袋状部分8を複数の区画21に分割すると、充填材を容易に均一に充填できる。
5) メッシュ組織等の注入口22を設けると、袋状部分8の編地を傷つけずに、ノズル82を挿入できる。
6) カラーと紐通し部と伸び止め部とを有するシューズアッパーを容易に編成できる。
7) カラーに弾力性を付与すると共に、紐通し部と伸び止め部とに強度を付与し、靴紐に繰り返し引かれることによる割れや変形を防止できる。