(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オルガノポリシロキサンが、一分子中に重合性不飽和結合を有する基を複数有する不飽和結合含有オルガノポリシロキサンに加えて、一分子中に水素原子と直接結合しているケイ素原子を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有する請求項1に記載のシリコーンゴム組成物。
前記アナターゼ型酸化チタンの含有量が、前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部以上、0.9質量部以下である請求項1または2に記載のシリコーンゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<シリコーンゴム組成物>
本実施形態のシリコーンゴム組成物は、オルガノポリシロキサンと、平均一次粒径が10〜50nmのアナターゼ型酸化チタンと、架橋剤とを含有し、
前記オルガノポリシロキサンが、一分子中に重合性不飽和結合を有する基を複数有する不飽和結合含有オルガノポリシロキサンを含み、
前記アナターゼ型酸化チタンの含有量が、前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であるものである。
【0015】
本実施形態で用いるオルガノポリシロキサンは、シリコーンゴムの主個骨格を構成するものであり、オルガノシロキサン構造を有する化合物であればよいが、本実施形態においては、一分子中に重合性不飽和結合を有する基を複数有する不飽和結合含有オルガノポリシロキサンを少なくとも含有する。不飽和結合含有オルガノポリシロキサンに含まれる重合性不飽和結合を有する基が、架橋反応に寄与することで、シリコーンゴム組成物を架橋可能な組成物とすることができる。
【0016】
不飽和結合含有オルガノポリシロキサンとしては、重合性不飽和結合を有する基が、不飽和結合含有オルガノポリシロキサンを構成するケイ素原子に結合した構成であるものが好ましい。また、ケイ素原子には、重合性不飽和結合を有する基以外の基が結合していてもよく、重合性不飽和結合を有する基以外の基としては、有機基および水素原子のいずれでもよい。このような不飽和結合含有オルガノポリシロキサンとしては、公知のものが適宜使用できる。
【0017】
不飽和結合含有オルガノポリシロキサンに含まれる、重合性不飽和結合を含有する基としては、炭素原子間に不飽和結合を有する基であることが好ましく、炭素−炭素二重結合を有する基であることが好ましく、アルケニル基を有する基であることがより好ましい。アルケニル基を有する基としては、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)、1−プロペニル基等が挙げられる。なお、不飽和結合含有オルガノポリシロキサンは、重合性不飽和結合を含有する基を複数有するものであるが、重合性不飽和結合を含有する基としては、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみが異なっていてもよい。
【0018】
不飽和結合含有オルガノポリシロキサンとしては、たとえば、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものが好ましく挙げられる。
【化1】
【0019】
上記一般式(1)中、R
1は、重合性不飽和結合を含有する基であり、好ましくは、炭素原子間に不飽和結合を有する基であり、より好ましくは、炭素−炭素二重結合を有する基であり、さらに好ましくは、アルケニル基を有する基である。アルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)、1−プロペニル基などが挙げられる。また、上記一般式(1)中、pは2以上の任意の整数であり、そのため、一般式(1)において、R
1は複数存在することとなるが、複数のR
1は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
不飽和結合含有オルガノポリシロキサンの重合性不飽和結合を含有する基の割合は0.3〜5モル%であることが好ましい。この場合、重合性不飽和結合を含有する基の割合が0.3モル%未満である場合に比べて、機械特性がより向上する。一方、重合性不飽和結合を含有する基の割合が5モル%を超える場合に比べて、柔軟性をより向上させることができる。また重合性不飽和結合を含有する基は1分子中に二個以上含まれることが好ましい。
【0020】
上記一般式(1)中、R
2、R
3、R
4は、互いに独立に、任意の有機基である。有機基としては、置換基を有していてもよいアルキル基およびアリール基が挙げられる。
【0021】
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれでもよいが、直鎖状および分岐鎖状のものとしては、炭素数が1〜10のものが好ましく、また、環状のものとしては、炭素数が3〜10のものが好ましい。直鎖状または分岐鎖状のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。これらのなかでも、メチル基が好ましい。
【0022】
また、環状のアルキル基としては、単環状および多環状のいずれでもよく、たとえば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基などが挙げられる。
【0023】
アリール基としては、単環状および多環状のいずれでもよく、炭素数が6〜15のものが好ましく用いられる。アリール基としては、たとえば、フェニル基、o−トリル基(2−メチルフェニル基)、m−トリル基(3−メチルフェニル基)、p−トリル基(4−メチルフェニル基)、1−ナフチル基、2−ナフチル基等などが挙げられる。
【0024】
また、上述したアルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよい。具体的には、アルキル基およびアリール基を構成する一つ以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換されているものであってもよいし、あるいはアルキル基およびアリール基を構成する一つ以上の炭素原子が、炭素原子以外の基で置換されているものであってもよい。
【0025】
アルキル基およびアリール基の水素原子を置換する置換基としては、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、アルキルアリールオキシ基、水酸基(−OH)、シアノ基(−CN)及びハロゲン原子などが挙げられる。
【0026】
また、アルキル基およびアリール基を構成する炭素原子は、カルボニル基(−C(=O)−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−NH−C(=O)−)、ヘテロ原子などで置換されていてもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ホウ素原子などが挙げられる。
【0027】
また、上記一般式(1)中、pおよびqは2以上の任意の整数であり、そのため、一般式(1)において、R
2、R
3、R
4は、それぞれ複数存在することとなるが、複数のR
2、R
3、R
4は、それぞれ互いに同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、オルガノポリシロキサンとして、上述した不飽和結合含有オルガノポリシロキサンに加えて、一分子中に水素原子と直接結合しているケイ素原子を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンをさらに含有することが好ましい。不飽和結合含有オルガノポリシロキサンに加えて、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用することにより、引裂き強度をより高めることができる。
【0029】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、一分子中に水素原子と直接結合しているケイ素原子を複数有し、オルガノポリシロキサン構造を有するものであればよいが、たとえば、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有するものが好ましく挙げられる。
【化2】
【0030】
上記一般式(2)中、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立に、水素原子または任意の有機基であり、このような有機基としては、上記一般式(1)のR
2、R
3、R
4と同様のものが挙げられる。また、上記一般式(2)中、rおよびsは2以上の任意の整数であり、そのため、一般式(2)において、R
5、R
6、R
7は、それぞれ複数存在することとなるが、複数のR
5、R
6、R
7は、それぞれ互いに同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0031】
不飽和結合含有オルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを併用する場合において、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの水素原子と直接結合しているケイ素原子が、不飽和結合含有オルガノポリシロキサンの重合性不飽和結合を含有する基に対して、モル比で1.2倍以上となるような割合にて含まれていることが望ましい。この場合、水素原子と直接結合しているケイ素原子が重合性不飽和結合を含有する基に対してモル比で1.2倍未満の時に比べて、引裂強度が向上する。
【0032】
また、本実施形態で用いるオルガノポリシロキサンとしては、加工性の観点(特に、後述するアナターゼ型酸化チタンなどの配合剤を配合する際における、加工性の観点)より、室温(25℃)で固形であるミラブル型のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、不飽和結合含有オルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを併用する場合においては、これらを混合した状態において、室温(25℃)で固形状を示せばよく、不飽和結合含有オルガノポリシロキサンおよびオルガノハイドロジェンポリシロキサンのいずれか一方については、室温(25℃)で液状のものを用いてもよい。
【0033】
また、本実施形態のシリコーンゴム組成物は、上述したオルガノポリシロキサンに加えて、平均一次粒径が10〜50nmのアナターゼ型酸化チタン(以下、適宜、「アナターゼ型酸化チタン」と略記する。)を含有する。本実施形態によれば、平均一次粒径が10〜50nmのアナターゼ型酸化チタンを含有させることにより、シリコーンゴム組成物を、破断強度、破断伸びおよび引裂強度が良好であり、かつ、優れた耐熱性を備えるものとすることができる。特に、本実施形態によれば、種々の熱老化条件、具体的には、高温短時間の熱老化条件および長時間の熱老化条件のいずれにおいても、優れた耐熱性を実現できるものである。
【0034】
本実施形態において、アナターゼ型酸化チタンを配合することで、耐熱性の向上が可能となる理由は、必ずしも明らかでないが、アナターゼ型酸化チタンが、加熱環境下において発生したラジカルを捕捉することで、ラジカルに起因するオルガノポリシロキサンの連鎖的な劣化を抑制できることによると考えられる。なお、酸化チタンとしては、アナターゼ型の他、ルチル型も存在するが、本発明者の知見によると、ルチル型の酸化チタンでは、このような耐熱性の向上効果を十分に得ることができない。
【0035】
本実施形態で用いるアナターゼ型酸化チタンは、平均一次粒径が10〜50nmであり、好ましくは15〜40nmm、さらに好ましくは18〜30nmである。平均一次粒径が小さすぎると、アナターゼ型酸化チタンの凝集力が高くなってしまい、シリコーンゴム組成物中において、二次凝集が発達しやすくなり、オルガノポリシロキサンとアナターゼ型酸化チタンとの界面に応力が集中し易くなり、結果として、引裂強度が低下してしまうこととなる。一方、平均一次粒径が大きすぎると、アナターゼ型酸化チタンによるラジカル捕捉能が低下してしまい、耐熱性の向上効果が得られなくなってしまう。なお、アナターゼ型酸化チタンの平均一次粒径は、たとえば、アナターゼ型酸化チタンについて、TEM(透過型顕微鏡)観察を行い、TEM像から、任意の視野中に存在する100個の粒子について一次粒径を測定し、これを平均することにより求めることができる。
【0036】
本実施形態のシリコーンゴム組成物中における、アナターゼ型酸化チタンの含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下である。アナターゼ型酸化チタンの含有量が少なすぎると、耐熱性の向上効果が得られなくなる。また、アナターゼ型酸化チタンの含有量が多すぎても、耐熱性が低下してしまう。なお、オルガノポリシロキサン100質量部に対する、アナターゼ型酸化チタンの含有量は、引裂強度をより高めることができるという観点より、好ましくは0.1質量部以上、0.9質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上、0.8質量部以下である。
【0037】
また、本実施形態のシリコーンゴム組成物は、上述したオルガノポリシロキサン、およびアナターゼ型酸化チタンに加えて、架橋剤を含有する。架橋剤としては、不飽和結合含有オルガノポリシロキサン中に含まれる重合性不飽和結合を架橋反応させることのできるものであればよく、特に限定されない。
【0038】
架橋剤としては、たとえば、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル等の有機過酸化物、白金等の金属触媒などが挙げられる。これらのなかでも、成形品製造時に、160℃以上の温度で加熱することにより、分解物ガスとして容易に除去できるという観点より、有機過酸化物が好ましい。
【0039】
ジアルキルパーオキサイドとしては、たとえば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ジ(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイドとしては、たとえば、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(2−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタールとしては、たとえば、n−ブチル 4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バリレート、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
パーオキシエステルとしては、たとえば、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0040】
本実施形態のシリコーンゴム組成物中における、架橋剤の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは0.3〜0.7質量部である。架橋剤の含有量が上記範囲であると、オルガノポリシロキサンの架橋反応を十分に進行させることができ、かつ、得られる成形品の特性を良好なものとすることができる。
【0041】
また、本実施形態のシリコーンゴム組成物には、オルガノポリシロキサン、アナターゼ型酸化チタン、および架橋剤以外に、本発明の効果を妨げない範囲内において、さらにその他の成分を含有していてもよい。
【0042】
その他の成分としては、公知のものが適宜使用でき、たとえば、シリカ、カーボンブラックなどのアナターゼ型酸化チタン以外の充填材、添加剤、補強剤、顔料、老化防止剤等が挙げられる。
【0043】
本実施形態のシリコーンゴム組成物は、オルガノポリシロキサン、アナターゼ型酸化チタン、および架橋剤、ならびに、必要に応じて使用されるその他の成分を配合することで製造することができる。各成分の配合時には、各成分同士を各種手段により充分に混合することが好ましい。この際、各成分を順次添加しながら混合してもよいし、全成分をまとめて添加してから混合してもよい。
【0044】
各成分の混合方法は特に限定されず、たとえば、撹拌翼、ボールミル、ロールミル、超音波分散機、混錬機等を使用して、常温または加熱条件下で所定時間混合する公知の方法を適用すればよい。また、シリコーンゴム組成物の製造後に直ちにこれを混錬し、加熱成形して成形品を製造したい場合には、シリコーンゴム組成物の製造を兼ねて混錬を行ってもよい。
【0045】
<成形品>
本実施形態の成形品は、上述した本実施形態のシリコーンゴム組成物を架橋および成形することにより得られるものである。本実施形態の成形品は、上述した本実施形態のシリコーンゴム組成物を用いる点以外は、従来のシリコーンゴムの成形品と同様の方法で製造することができる。
【0046】
本実施形態の成形品を製造する際においては、架橋と成形とを別々に行ってもよいし、架橋と成形とを同時に行ってもよい。架橋反応は公知の方法で行えばよく、たとえば、150〜180℃で5〜20分間反応させることで、加熱架橋させる方法などが挙げられる。
【0047】
本実施形態の成形品は、各種生活用品、あるいは工業用品、またはこれらに使用される部材の被覆あるいは保護を目的として、これらへの装着用として好適である。本実施形態の成形品は、破断強度、破断伸びおよび引裂強度が良好であり、かつ、優れた耐熱性を備えるため、本実施形態の成形品が装着された製品、または部材には、高い保護作用が得られ、長期間に渡って安定した機能を発揮できる。
【0048】
本実施形態の成形品の形状は、特に限定されず、シート状、筒状等、目的に応じて任意に選択できる。たとえば、筒状の成形品とした場合は、各種ケーブルを被覆するための被覆層として好適であり、特に、本実施形態の成形品は、破断強度、破断伸びおよび引裂強度が良好であり、かつ、優れた耐熱性を備えるため、このような特性を活かし、電線を被覆するための被覆層として特に好適に用いることができる。
【0049】
成形品の厚さは、目的に応じて任意に設定でき、たとえば、シート状の成形品の厚さは、3.0mm以下であることが好ましい。また、筒状の成形品を、シート状の成形品が中空状に丸まったものと捉えることが可能な場合、このシートの厚さは3.0mm以下であることが好ましい。
【0050】
成形方法は、射出成形法、押出成形法、金型成形方等、公知の方法でよく、目的に応じて適宜選択すればよい。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0052】
[実施例1〜15、比較例1〜11]
<シリコーンゴム組成物および成形品の製造>
表1に示す配合にて、オルガノポリシロキサン、酸化チタン、および架橋剤を配合し、室温(25℃)でオープンロールにて混練することで、シート状のシリコーンゴム組成物を得た。
そして、得られたシート状のシリコーンゴム組成物について、160℃、10分間のプレス加工により、架橋および成形を行うことで、20cm×20cm×1mmのシート状の成形品を得て、下記の各評価を行った。
【0053】
なお、表1、表2において、各成分としては具体的に以下のものを使用した。
(1)「ミラブル型オルガノポリシロキサンA」:ミラブル型オルガノポリシロキサン(商品名「TSE2627U」、モメンティブ社製、一分子中に重合性不飽和結合を有する基を複数有する不飽和結合含有オルガノポリシロキサンと、一分子中に水素原子と直接結合しているケイ素原子を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有。)
(2)「ミラブル型オルガノポリシロキサンB」:ミラブル型オルガノポリシロキサン(商品名「TSE221−7U」、モメンティブ社製、一分子中に重合性不飽和結合を有する基を複数有する不飽和結合含有オルガノポリシロキサンを含有。)
(3)「アナターゼ型酸化チタン(7nm)」:アナターゼ型酸化チタン(商品名「ST−01」、石原産業社製、平均一次粒径7nm)
(4)「アナターゼ型酸化チタン(21nm)」:アナターゼ型酸化チタン(商品名「AEROXIDE P25」、日本アエロジル社製、平均一次粒径21nm)
(5)「アナターゼ型酸化チタン(50nm)」:アナターゼ型酸化チタン(商品名「TAF−500SA」、富士チタン工業社製、平均一次粒径50nm)
(6)「アナターゼ型酸化チタン(100nm)」:アナターゼ型酸化チタン(商品名「TAF−520S」、富士チタン工業社製、平均一次粒径100nm)
(7)「アナターゼ型酸化チタン(200nm)」:アナターゼ型酸化チタン(商品名「ST−41」、石原産業社製、平均一次粒径200nm)
(8)「アナターゼ型酸化チタン(590nm)」:アナターゼ型酸化チタン(商品名「TA−100」、富士チタン工業社製、平均一次粒径590nm)
(9)「ルチル型酸化チタン(260nm)」:ルチル型酸化チタン(商品名「TIPAQUE R−820」、石原産業社製、平均一次粒径260nm)
(10)「過酸化物系架橋剤」:2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(商品名「TC−8」、モメンティブ社製)
【0054】
<引張試験>
得られた20cm×20cm×1mmのシート状の成形品から、第3号ダンベル状試験片を打ち抜き、得られた試験片を用いて、JIS C3005に準拠して引張試験を行った。引張試験は、引張速度500mm/min、標線間隔20mmの条件にて行い、破断強度(MPa)および破断伸び(%)を測定した。
【0055】
<熱老化試験(耐熱性試験)>
得られた20cm×20cm×1mmのシート状の成形品から、第3号ダンベル状試験片を打ち抜き、得られた試験片をギヤーオーブン中にて250℃、48時間(高温短時間)の条件にて熱老化させた。そして、熱老化後の試験片を用いて、上記引張試験と同様にして、破断強度(MPa)および破断伸び(%)を測定した。
また、同様の試験を、熱老化条件を220℃、96時間(長時間)の条件として行い、同様にして、破断強度(MPa)および破断伸び(%)を測定した。
なお、本実施例では、250℃、48時間(高温短時間)の条件にて熱老化試験を行った際の破断伸びが200%以上、220℃、96時間(長時間)の条件にて熱老化試験を行った際の破断強度が6.0MPa以上、破断伸びが200%以上を合格とした。
【0056】
<引裂試験>
得られた20cm×20cm×1mmのシート状の成形品から、クレセント型引裂試験片を打ち抜き、得られた試験片を用いて、JIS K6252に準拠して引裂試験を行った。引裂試験は、引張速度500mm/min、切込み深さ1mmの条件にて行い、引裂試験強度(N/mm)を測定した。
なお、実施例1〜11、比較例1〜7については、同じオルガノポリシロキサンを使用し、かつ、アナターゼ型酸化チタンを配合していない比較例7の引裂試験強度の値を100%とした指数で、結果を示した。また、同様に、実施例12〜15、比較例8〜11についても、同じオルガノポリシロキサンを使用し、かつ、アナターゼ型酸化チタンを配合していない比較例11の引裂試験強度の値を100%とした指数で、結果を示した。
本実施例では、アナターゼ型酸化チタンを配合していない比較例7、比較例11の測定値を100%とした場合に、それぞれ80%以上となるものを合格とした。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
<評価>
表1、表2に示すように、不飽和結合含有オルガノポリシロキサンを含有するオルガノポリシロキサンと、平均一次粒径が10〜50nmのアナターゼ型酸化チタンと、架橋剤とを含有し、アナターゼ型酸化チタンの含有量が、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であるシリコーン組成物を架橋および成形することにより得られた実施例1〜15の成形品は、破断強度および破断伸びが良好であり、しかも、250℃、48時間(高温短時間)の条件にて熱老化試験を行った際の破断伸びが200%以上であり、220℃、96時間(長時間)の条件にて熱老化試験を行った際の破断強度が6.0MPa以上、破断伸びが200%以上であり、いずれも良好な結果であった。また、引裂強度も、アナターゼ型酸化チタンを配合していない場合に対して、80%以上を維持しており、良好であった。なお、表1、2の結果より、より高い引裂強度を維持するという観点からは、アナターゼ型酸化チタンの含有量を、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部以上、0.9質量部以下であることが好ましいといえる。
【0060】
一方、アナターゼ型酸化チタンとして、平均一次粒径が10nm未満のものを用いた比較例1、比較例8においては、アナターゼ型酸化チタンを配合しない場合と比較して、引裂強度が大きく低下し、引裂強度に劣るものであった。
アナターゼ型酸化チタンとして、平均一次粒径が50nmを超えるものを用いた比較例2〜4、比較例9においては、250℃、48時間(高温短時間)の条件にて熱老化試験を行った際における、破断伸びが200%未満となり、耐熱性(特に、高温短時間の熱老化条件における耐熱性)に劣るものであった。
また、ルチル型酸化チタンを使用した比較例5、および酸化チタンを配合しなかった比較例7、比較例11においては、250℃、48時間(高温短時間)の条件にて熱老化試験を行った際における、破断伸びが200%未満となり、さらには、220℃、96時間(長時間)の条件にて熱老化試験を行った際における、破断伸びが200%未満となり、耐熱性(高温短時間の熱老化条件および長時間の熱老化条件における耐熱性)に劣るものであった。
さらに、オルガノポリシロキサン100質量部に対する、アナターゼ型酸化チタンの配合量を1質量部超とした比較例6、比較例10においては、220℃、96時間(長時間)の条件にて熱老化試験を行った際における、破断強度が6.0MPa未満となり、耐熱性(特に、長時間の条件における耐熱性)に劣るものであった。
【0061】
なお、比較例3〜5,7においては、250℃、48時間(高温短時間)の条件にて熱老化試験を行った際における、破断強度が比較的高い値となっているが、これら比較例3〜5,7においては、破断伸びが低い結果となっていることからも明らかなように、熱劣化の進行により、ゴム弾性が失われる一方で硬度が上昇し、そのため、引張試験において、引張力を上げても低伸長となり、結果として破断伸びまで到達した際における、破断強度が比較的高い値となったに過ぎないものである。
【解決手段】オルガノポリシロキサンと、平均一次粒径が10〜50nmのアナターゼ型酸化チタンと、架橋剤とを含有し、前記オルガノポリシロキサンが、一分子中に重合性不飽和結合を有する基を複数有する不飽和結合含有オルガノポリシロキサンを含み、前記アナターゼ型酸化チタンの含有量が、前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であるシリコーンゴム組成物を提供する。