(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特徴量ベクトル取得手段は、前記差分波形取得手段が取得した差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正側の波形と基準線とで囲まれた領域である正面積の値」、「負側の波形と前記基準線とで囲まれた領域である負面積の値」の5つの特徴量を抽出し、5次元の特徴量ベクトルを取得し、
前記特徴量空間作成手段は、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した5次元の特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義手段が定義したクラスタ数に基づいて特徴量空間を作成し、
前記記憶制御手段は、前記特徴量空間作成手段が作成した特徴量空間を記憶手段に記憶し、
前記クラスタリング手段は、前記記憶制御手段が前記特徴量空間を記憶手段に記憶した後、排泄検知処理の開始が指示されると、前記差分波形取得手段は前記入力手段から入力された前記検知信号の差分波形を取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段は前記差分波形取得手段が取得した差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正側の波形と基準線とで囲まれた領域である正面積の値」、「負側の波形と前記基準線とで囲まれた領域である負面積の値」の5つの特徴量を抽出して5次元の特徴量ベクトルを取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した前記5次元の特徴量ベクトルを前記記憶手段に記憶された特徴量空間に照合して分類し、
前記排泄判定手段は、前記クラスタリング手段による分類に基づいて排泄判定を行い、
前記報知手段は、前記排泄判定手段が判定した排泄状況を報知することを特徴とする請求項1又は2に記載の排泄検知システム。
前記特徴量ベクトル取得ステップは、前記差分波形取得ステップにて取得した差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正側の波形と基準線とで囲まれた領域である正面積の値」、「負側の波形と前記基準線とで囲まれた領域である負面積の値」の5つの特徴量を抽出して5次元の特徴量ベクトルを取得し(n=5)、
前記特徴量空間作成ステップは、前記特徴量ベクトル取得ステップが取得した5次元の特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義ステップにて定義されたクラスタ数kに基づいて特徴量空間を作成して前記記憶手段に記憶し、
前記排泄検知ステップの
前記クラスタリングステップは、前記特徴量空間が前記記憶手段に記憶された後に、排泄検知処理の開始が指示されると、前記ガスセンサユニットからの検知信号を入力し、入力された前記検知信号の差分波形を取得し、取得された差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正側の波形と基準線とで囲まれた領域である正面積の値」、「負側の波形と前記基準線とで囲まれた領域である負面積の値」の5個(n=5)の特徴量を抽出して5次元の特徴量ベクトル(n=5)を取得し、前記記憶手段に記憶された特徴量空間に、前記5次元の特徴量ベクトルを照合して分類し、
前記排泄判定ステップは、前記クラスタリングステップによる分類に基づいて排泄判定を行い、
前記報知ステップは、前記排泄判定ステップにて判定した排泄状況を報知することを特徴とする請求項6又は7に記載の排泄検知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際の介護現場においては、現状、決まった時間に被介護者のおむつ交換を行う定時交換、又は、おむつが汚れたら交換をおこなう随時交換を行っている。しかし、定時交換の場合には、時間が来ても被介護者がすぐに対応できないこともある。また、おむつ開けてみたが、汚れていないという空振りのケースも多い。随時交換は、被介護者本人の訴えに頼る場面も多く、被介護者が訴えることができなければ、介護者が気付くまでおむつ交換が行われないという危険性がある。
【0005】
そこで、被介護者ごとに排泄パターン表を作成し、被介護者ごとの排泄の周期パターンを把握しようとする取り組みもある。しかし、排泄パターン表を作成するためには、おむつ内を1時間に1回確認をし、排泄の有無を記録する作業を1〜2週間続けなければならず、施設内入居者全員の排泄パターン表を作成するには多くの労力が必要となり、現実的でない。
また、ガスセンサを用いた排泄検知判定もあるが、ガスセンサ個体差のばらつきが大きく、一定の閾値により排泄を判定できないという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、このような問題等に鑑みて、個人ごとの排泄パターンを認識して排泄を正確に検知することができる排泄検知システム及び排泄検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排泄検知システムは、被介護者又は乳幼児の排泄を検知する排泄検知システムにおいて、排泄物から発生するガスであって、前記被介護者又は前記乳幼児が寝ている寝具から吸引されたガスを検知するガスセンサを有するガスセンサユニットと、ガスセンサユニットからの検知信号を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された前記検知信号の差分波形を取得する差分波形取得手段と、前記差分波形取得手段が取得した差分波形に基づいて所定数n(nは1以上の自然数)の特徴量を抽出し、n次元の特徴量ベクトルを取得する特徴量ベクトル取得手段と、排泄検知に用いる特徴量空間のクラスタ数をk(kは1以上の自然数)と定義するクラスタ数定義手段と、前記特徴量ベクトル取得手段が取得したn次元の特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義手段が定義したクラスタ数kに基づいて特徴量空間を作成する特徴量空間作成手段と、前記特徴量空間作成手段が作成した特徴量空間を記憶手段に記憶する記憶制御手段と、前記記憶制御手段が前記特徴量空間を記憶手段に記憶した後、排泄検知処理の開始が指示されると、前記差分波形取得手段は前記入力手段から入力された前記検知信号の差分波形を取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段は前記差分波形取得手段が取得した差分波形に基づいてn次元の特徴量ベクトルを取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した前記n次元の特徴量ベクトルを前記記憶手段に記憶された特徴量空間に照合して分類するクラスタリング手段と、前記クラスタリング手段による分類に基づいて排泄状況の判定を行う排泄判定手段と、前記排泄判定手段が判定した排泄状況を報知する報知手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記クラスタ数定義手段は、排泄検知に用いる特徴量空間のクラスタ数kを2又は3又は4と定義し、前記特徴量空間作成手段は、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した前記特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義手段が定義したクラスタ数k(k=2又は3又は4)に基づいて特徴量空間を作成し、前記記憶制御手段は、前記特徴量空間作成手段によって作成されたクラスタ数k(k=2又は3又は4)の特徴量空間を記憶手段に記憶し、前記クラスタリング手段は、前記記憶制御手段が前記特徴量空間を記憶手段に記憶した後、排泄検知処理の開始が指示されると、前記差分波形取得手段は前記入力手段から入力された前記検知信号の差分波形を取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段は前記差分波形取得手段が取得した差分波形に基づいてn次元の特徴量ベクトルを取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した前記n次元の特徴量ベクトルを前記記憶手段に記憶された特徴量空間に照合して分類し、前記排泄判定手段は、前記クラスタリング手段による分類に基づいて排泄判定を行い、前記報知手段は、前記排泄判定手段が判定した排泄状況を報知するよう構成してもよい。
【0009】
前記特徴量ベクトル取得手段は、前記差分波形取得手段が取得した差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正側の波形と基準線とで囲まれた領域である正面積の値」、「負側の波形と前記基準線とで囲まれた領域である負面積の値」の5つの特徴量を抽出し、5次元の特徴量ベクトルを取得し、前記特徴量空間作成手段は、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した5次元の特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義手段が定義したクラスタ数に基づいて特徴量空間を作成し、前記記憶制御手段は、前記特徴量空間作成手段が作成した特徴量空間を記憶手段に記憶し、前記クラスタリング手段は、前記記憶制御手段が前記特徴量空間を記憶手段に記憶した後、排泄検知処理の開始が指示されると、前記差分波形取得手段は前記入力手段から入力された前記検知信号の差分波形を取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段は前記差分波形取得手段が取得した差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正側の波形と基準線とで囲まれた領域である正面積の値」、「負側の波形と前記基準線とで囲まれた領域である負面積の値」の5つの特徴量を抽出して5次元の特徴量ベクトルを取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した前記5次元の特徴量ベクトルを前記記憶手段に記憶された特徴量空間に照合して分類し、前記排泄判定手段は、前記クラスタリング手段による分類に基づいて排泄判定を行い、前記報知手段は、前記排泄判定手段が判定した排泄状況を報知するよう構成してもよい。
【0010】
前記クラスタ数定義手段は、クラスタ数kを、「排泄あり」と「排泄なし」をそれぞれ意味する2(k=2)と定義するか、又は、前記クラスタ数定義手段は、クラスタ数kを、「排便あり」と、「排尿あり、かつ、排便なし」と、「排泄なし」と、をそれぞれ意味する3(k=3)と定義するか、又は、
前記クラスタ数定義手段は、クラスタ数kを、「排便あり」と、「排尿あり、かつ、排便なし」と、「放屁あり、かつ、排便なし、かつ、排尿なし」と、「放屁なし、かつ、排便なし、かつ、排尿なし」と、をそれぞれ意味する4(k=4)と定義し、前記特徴量空間作成手段は、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した前記特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義手段が定義したクラスタ数k(k=2又は3又は4)に基づいて特徴量空間を作成し、前記記憶制御手段は、前記特徴量空間作成手段によって作成されたクラスタ数k(k=2又は3又は4)の特徴量空間を記憶手段に記憶し、前記クラスタリング手段は、前記記憶制御手段が前記特徴量空間を記憶手段に記憶した後、排泄検知処理の開始が指示されると、前記差分波形取得手段は前記入力手段から入力された前記検知信号の差分波形を取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段は前記差分波形取得手段が取得した差分波形に基づいてn次元の特徴量ベクトルを取得し、次いで、前記特徴量ベクトル取得手段が取得した前記n次元の特徴量ベクトルを前記記憶手段に記憶された特徴量空間に照合し、前記クラスタ数kが2の場合には前記特徴量ベクトルを「排泄あり」又は「排泄なし」に分類し、前記クラスタ数kが3の場合には前記特徴量ベクトルを「排便あり」又は「排尿あり、かつ、排便なし」又は「排泄なし」に分類し、前記クラスタ数kが4の場合には前記特徴量ベクトルを「排便あり」又は「排尿あり、かつ、排便なし」又は「放屁あり、かつ、排便なし、かつ、排尿なし」又は「放屁なし、かつ、排便なし、かつ、排尿なし」に分類し、前記排泄判定手段は、前記クラスタリング手段による分類に基づいて排泄判定を行い、前記報知手段は、前記排泄判定手段が判定した排泄状況を報知するよう構成してもよい。
【0011】
前記報知手段は、前記排泄判定手段が排泄があったと判定した場合にのみ報知するよう構成してもよい。
【0012】
本発明の排泄検知方法は、被介護者又は乳幼児の排泄を検知する排泄検知方法において、排泄検知に用いる特徴量空間を作成する特徴量空間作成ステップと、前記特徴量空間作成ステップにて作成された前記特徴量空間を用いて、排泄検知を行う排泄検知ステップと、を有し、前記特徴量空間作成ステップは、排泄物から発生するガスであって、前記被介護者又は前記乳幼児が寝ている寝具から吸引されたガスを検知するガスセンサを有するガスセンサユニットからの検知信号を入力するステップと、入力された前記検知信号の差分波形を取得する差分波形取得ステップと、前記差分波形取得ステップにて取得された前記差分波形に基づいて所定数n(nは1以上の自然数)の特徴量を抽出し、n次元の特徴量ベクトルを取得する特徴量ベクトル取得ステップと、前記特徴量空間のクラスタ数をk(kは1以上の自然数)と定義するクラスタ数定義ステップと、前記特徴量ベクトル取得ステップにて取得されたn次元の特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義ステップにて定義されたクラスタ数kに基づいて特徴量空間を作成して記憶手段に記憶するステップと、を有し、前記排泄検知ステップは、前記特徴量空間が前記記憶手段に記憶された後に、排泄検知処理の開始が指示されると、前記ガスセンサユニットからの検知信号を入力し、入力された前記検知信号の差分波形を取得すし、取得された前記差分波形に基づいて所定数nの特徴量を抽出しn次元の特徴量ベクトルを取得し、前記記憶手段に記憶された特徴量空間に、前記n次元の特徴量ベクトルを照合して分類するクラスタリングステップと、前記クラスタリングステップによる分類に基づいて判定を行う排泄判定ステップと、前記排泄判定ステップにて判定した排泄状況を報知する報知ステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
前記クラスタ数定義ステップは、排泄検知に用いる特徴量空間のクラスタ数kを2又は3又は4と定義し、前記特徴量空間作成ステップは、前記特徴量ベクトル取得ステップにて取得した前記特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義ステップが定義したクラスタ数k(k=2又は3又は4)に基づいて特徴量空間を作成して前記記憶手段に記憶するよう構成してもよい。
【0014】
前記特徴量ベクトル取得ステップは、前記差分波形取得ステップにて取得した差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正側の波形と基準線とで囲まれた領域である正面積の値」、「負側の波形と前記基準線とで囲まれた領域である負面積の値」の5つの特徴量を抽出して5次元の特徴量ベクトルを取得し(n=5)、前記特徴量空間作成ステップは、前記特徴量ベクトル取得ステップが取得した5次元の特徴量ベクトルと、前記クラスタ数定義ステップにて定義されたクラスタ数kに基づいて特徴量空間を作成して前記記憶手段に記憶し、前記排泄検知ステップの前記クラスタリングステップは、前記特徴量空間が前記記憶手段に記憶された後に、排泄検知処理の開始が指示されると、前記ガスセンサユニットからの検知信号を入力し、入力された前記検知信号の差分波形を取得し、取得された差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正側の波形と基準線とで囲まれた領域である正面積の値」、「負側の波形と前記基準線とで囲まれた領域である負面積の値」の5個(n=5)の特徴量を抽出して5次元の特徴量ベクトル(n=5)を取得し、前記記憶手段に記憶された特徴量空間に、前記5次元の特徴量ベクトルを照合して分類し、前記排泄判定ステップは、前記クラスタリングステップによる分類に基づいて排泄判定を行い、前記報知ステップは、前記排泄判定ステップにて判定した排泄状況を報知するよう構成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガスセンサを用いて、個人ごとの排泄パターンを認識して排泄を正確に検知することができる排泄検知システム及び排泄検知方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の排泄検知システムは、被介護者又は乳幼児に適用できる。本実施形態では、被介護者に適用した場合を例に説明する。
図1は、本実施形態における排泄検知システムSの構成を示すブロック図である。
図1において被介護者を破線にて示す。
本実施形態の排泄検知システムSは、被介護者が載置される布団又はベッド上に敷かれるガス吸引シート100と、当該ガス吸引シート100内部に通じるチューブからガス吸引シート100内部の空気を吸引し、ガス吸引シート100に寝ている被介護者の排泄物(便、尿、屁)から発生するにおいを検知するガスセンサを備えたガスセンサユニット200と、ガスセンサユニット200からの検知信号に基づいて排泄状況を介護者に報知する排泄検知装置300と、を備える。
【0018】
より具体的には、排泄検知システムSは、排泄物から発生するガスであって、被介護者が寝ている寝具の例えば臀部付近から吸引されたガスを検知するガスセンサを有するガスセンサユニット200を備え、さらに、ガスセンサユニット200からの検知信号を入力する入力手段16と、入力手段16から入力された検知信号の差分波形を取得する差分波形取得手段と、差分波形取得手段が取得した差分波形に基づいて所定数n(nは1以上の自然数)の特徴量を抽出し、n次元の特徴量ベクトルを取得する特徴量ベクトル取得手段と、排泄検知に用いる特徴量空間のクラスタ数をk(kは1以上の自然数)と定義するクラスタ数定義手段と、特徴量ベクトル取得手段が取得したn次元の特徴量ベクトルと、クラスタ数定義手段が定義したクラスタ数kに基づいて特徴量空間を作成する特徴量空間作成手段と、特徴量空間作成手段が作成した特徴量空間を記憶手段12に記憶する記憶制御手段(制御部11)と、記憶制御手段が特徴量空間を記憶手段12に記憶した後、排泄検知処理の開始が指示されると、差分波形取得手段は入力手段16から入力された検知信号の差分波形を取得し、次いで、特徴量ベクトル取得手段は差分波形取得手段が取得した差分波形に基づいてn次元の特徴量ベクトルを取得し、次いで、特徴量ベクトル取得手段が取得したn次元の特徴量ベクトルを記憶手段12に記憶された特徴量空間に照合して分類するクラスタリング手段と、クラスタリング手段による分類に基づいて排泄状況の判定を行う排泄判定手段と、排泄判定手段が判定した排泄状況を報知する報知手段と、により構成される。
【0019】
ガス吸引シート100は、例えば、敷布状に構成され、被介護者が載置される布団又はベッド上の少なくとも被介護者の下半身が載置される位置に敷かれる。
排泄検知装置300は、演算機能を有するCPU、作業用RAM、各種データ及びプログラムを記憶するROM等から構成された制御部11、作成した特徴量空間を記憶するメモリ等を備える記憶手段12、モニタ等の表示画面を備える表示部13、排泄検知装置300を操作する介護者、システム担当者等の指示を受け付け当該指示に応じた指示信号を制御部11に対して与える操作部(例えば、操作パネル(タッチパネルを含む)等)14、各種ネットワーク(LAN(Local Area Network)を含む)を介して介護管理室のコンピュータ、介護士が携帯するタブレット端末等に排泄があったことを報知するための報知手段としての通信部15、増幅部及びA/D変換部等を備えガスセンサユニット200からの検知信号を排泄検知装置300内部に入力する入力インターフェースとしての入力手段16を備えて構成されている。各構成部材はバスを介して相互に接続されている。
制御部11は、他の部材と協動して本発明の入力手段、差分波形取得手段、特徴量ベクトル取得手段、クラスタ数定義手段、特徴量空間作成手段、記憶制御手段、クラスタリング手段、排泄判定手段、報知手段として機能する。
【0020】
制御部11は、被介護者がベッドに寝ている着床状態か、ベッド等から完全に離床して所謂離床状態であるかを判別する(離着床判定)。例えば、ベッドに圧力センサを備えた薄型マットなどを布団やベッド上に敷き、圧力センサ検知信号を入力手段16から受信して離着床を判別する。そして、制御部11は、入力手段16から入力されるガスセンサユニット200からの検知信号のうち、被介護者が着床状態のときの検知信号のみを特徴量空間作成処理及び排泄検知処理に採用する。
【0021】
ガスセンサユニット200からの検知信号は、入力手段16を介して制御部11内部に取り込まれる。この際に、所定のノイズ除去処理を行なう。温度センサや湿度センサに比べて、排泄によるガスセンサのデータ波形は、変化の速度が遅い。したがって、高周波成分は、ノイズとみなし除去することが好ましい。本実施形態では、まず、ガスセンサユニット200内にて、ガスセンサユニット200内部に備えたローパスフィルタ(不図示)によりセンサハードのノイズ除去を行った後に、入力手段16へ検知信号を送る。そして、制御部11は、入力手段16から入力された検知信号に対し、移動平均処理によってローパスフィルタリングノイズ除去を行う。以上の処理により、比較的簡易に高周波成分を抑制することができる。
【0022】
さらに、本実施形態では、移動平均処理の後に間引き処理を行い、時系列点数を減少させる(間引き移動平均処理)。例えば、移動平均処理を行った後、100msごとに1回、信号数約100個毎に1個の信号値(検知信号)を取得する。これにより、排泄検知の処理速度を向上させることができる。
図2は間引き移動平均処理後の信号値(検知信号)の一例であり、
図3は、間引き移動平均処理を説明する表である。
図3では、図示を簡略するため、信号数3個毎に1個の信号値(センサ出力信号値(V))を取得した場合の例を示す。実際には、間引き移動平均処理後の信号値(
図2)のうち、一定時間分の解析窓が用意され、解析窓に収まる範囲内の検知信号について解析が行われる。
図4は、間引き移動平均処理後の検知信号の出力波形の一例を示す図である。次に制御部11は、差分波形取得手段として機能し、間引き移動平均処理後の検知信号の出力波形について差分処理により差分波形を取得する。
図5は、
図4の出力波形の差分波形の一例を示す図である。
【0023】
〈特徴量空間作成手順〉 排泄検知処理の前処理として、特徴量空間作成処理を行なう。 制御部11は、特徴量ベクトル取得手段として機能し、間引き移動平均処理後の検知信号の差分波形から、任意の特徴量を任意数nだけ抽出し、取得したn次元の特徴量ベクトルを取得する(nは自然数)。 本実施形態では、差分波形から抽出する任意の特徴量の一例として、差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正面積の値」、「負面積の値」の5つ(n=5)の特徴量を抽出し、5次元の特徴量ベクトルを取得する。
図6は、特徴量の説明図である。差分波形の正面積とは、正側の差分波形と基準線とで囲まれる領域の面積値であり、差分波形の負面積とは、負側の差分波形と基準線とで囲まれる領域の面積値である。本実施形態では、差分値がゼロの線を基準線とする。
【0024】
次に、制御部11は、取得した任意数nの特徴量を用いて、k-means法によりクラスタリングを行う。k-means法は、所定のパラメータに関する複数のデータを、所望数k個(kは自然数)のクラスタに分類する手法の一つである。 本実施形態で用いるk-means法を用いたクラスタリングのアルゴリズムについて説明する。なお、パラメータ及びテクニカルタームの用語の意味は以下の通りである。
n:特徴量の個数
特徴量ベクトル: 特徴量をまとめたn次元のベクトル
特徴空間: 特徴量ベクトルの存在するn次元空間
m:測定して得られた特徴量ベクトルの全個数(特徴量空間にm個のベクトルが存在することになる)
k:求めたいクラスタの個数(自由に設定可能)
【0025】
まず、n次元特徴量空間の適当な位置にk個の重心(セントロイドp
i)を配置する.これらセントロイドを中心として特徴量ベクトルのクラスタC
iを形成する(Step1)。
次に、特徴空間上に存在するj番目の特徴量ベクトルx
jとk個のセントロイドとの距離を計算する。最小となったセントロイドをp
i*とすると、特徴量ベクトルx
jはクラスタC
i*に属することとする(Step2)。
【数1】
そして、全特徴量ベクトルxについてStep2の処理が終了した後、各クラスタ内の全特徴量ベクトルの平均ベクトルを計算する。その平均ベクトルを、新たな
【数2】
とする(Step3)。
【数3】
ここで、l
iはクラスタC
iに含まれるベクトルの数である。
このStep2とStep3により、セントロイドやクラスタの割当てが変化しなくなったら、前処理を終了し(Step4)。変化するようであればStep2に戻り、Step2、Step3の処理を繰り返し行う。
【0026】
制御部11は、クラスタ数定義手段として機能し、n個の特徴量を用いて、n次元の特徴量ベクトルの存在するn次元空間に、任意数k個(kは自然数)の重心(セントロイドp
i)を配置する。
例えば、所望する排泄検知が、「排泄(排尿又は排便)あり」と「排泄なし(異常なし)」を区別して検知したい場合には、「排泄(排尿又は排便)あり」、「排泄なし(異常なし)」を意味する2個のクラスタ(k=2)の重心を配置する。
所望する排泄検知が、「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」、「排泄なし(異常なし)」を区別して検知したい場合には、これら「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」、「排泄なし(異常なし)」を意味する3個のクラスタ(k=3)の重心を配置する。
所望する排泄検知が、「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」、「放屁あり、かつ、排泄(排便及び排尿)なし」、「放屁なし、かつ、排便なし、かつ、排尿なし(異常なし)」を区別して検知したい場合には、これら「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」、「放屁あり、かつ、排泄(排便及び排尿)なし」、「放屁なし、かつ、排便なし、かつ、排尿なし(異常なし)」を意味する4個のクラスタ(k=4)の重心を配置する。
【0027】
例えば、差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、「正面積」、「負面積」の5個の特徴量(n=5)を用いて、5次元の特徴量ベクトルの存在する5次元空間に、3個(k=3)の重心(セントロイドp
i)を配置させる。3個の重心を配置させたということは、つまり、それぞれ「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」、「排泄なし(異常なし)」のクラスタを意味し、「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」、「排泄なし(異常なし)」を区別した検知を可能にする。後の排泄検知処理において、ガスセンサユニット200から取得した検知信号が、学習データに基づいて作成した特徴量空間において3つのクラスタに基づいてクラスタリングされることとなる。
【0028】
図7は、特徴量空間に12個(m=12)の5次元特徴量ベクトルが存在する様子をあらわす概念図である。なお、本実施形態による特徴量空間は5次元空間であって、正確な図示は困難であるため、
図7の概念図にて図示する。
図8は、実際の12個(m=12)の5次元特徴量ベクトル値の一例である。12個(m=12)の5次元特徴量ベクトルが、A、B、Cの3種類(k=3)にクラスタリングされた例である。
【0029】
以上の特徴量空間作成処理により、例えば、数時間〜数日間の間のガスセンサユニット200からの検知信号の差分波形形状から抽出したn次元の特徴量ベクトルに基づいたk個のクラスタと、実際におむつを開けて得たk種の排泄状況(例えば、排泄なし、排便、排尿、放屁等)と、を照合した結果を学習データとすることで、n次元の特徴量ベクトルを排泄状況に応じたk個のクラスタに分類可能な特徴量空間を作成する。実際の排泄状況は、例えば、介護者又はシステム担当者等が操作部14の操作により実績値として入力する。
図9は、ガスセンサユニット200から取得した検知信号の差分波形形状を、3つのクラスタに分類した特徴量空間上に模式的に表した一例を示す図である。
図9に示した特徴量空間の例は、変動が大きい差分波形形状(変動大部)が集合する領域を「排便判定」、変動が小さい差分波形形状(変動小部)が集合する領域を「排尿判定」、変動がない差分波形形状(異常なし)が集合する領域を「排泄無し判定」と定義できるという特質を有する。なお、実際の特徴量空間は差分波形形状の5次元の特徴量ベクトルに基づいて作成されるが、
図9では特徴量を抽出した元となる差分波形形状にも特徴が見て取れるということを示すため、差分波形形状そのものを示した。
以上の手法で、被介護者ごとに作成された特徴量空間を、制御部11が記憶制御手段として機能し、記憶手段12に記憶する。
【0030】
〈排泄検知手順〉
特徴量空間が作成された後、介護者又はシステム担当者等が操作部14の操作により排泄検知処理の開始が指示されることにより、制御部11は、排泄検知処理を開始する。
制御部11は、ガスセンサユニット200から取得した検知信号の差分波形からn次元の特徴量ベクトルを抽出する。そして、記憶手段12に記憶された特徴量空間に抽出したn次元の特徴量ベクトルを照合してk個のクラスタのいずれかに分類し、排泄判定を行う。
制御部11は報知手段として機能し通信部15を通じて、介護士が携帯するタブレット端末等に排泄状況を報知する。例えば、排泄があったと判定した場合にのみ、排泄があったことを報知するよう構成してもよい。
【0031】
〈排泄検知装置300の具体的処理動作例〉
図10は、排泄検知装置300の制御部11による特徴量空間作成処理を示すフローチャートである。
まず、制御部11は、入力手段16と共に本発明の入力手段として機能し、ガスセンサユニット200からガスセンサの検知信号を取得(入力)する(Step10)。次いで、被介護者の離着床を判定し(Step11)、離床中の場合には(Step11:No)、Step10の処理に戻り、着床中の場合(Step11:Yes)には、ステップS10で取得した検知信号に対して間引き移動平均処理を行う(Step12)。
【0032】
次に、制御部11は、差分波形取得手段として機能し、ステップS12の間引き移動平均処理後の検知信号の出力波形について差分処理により差分波形を取得する(Step13)。そして、制御部11は、特徴量ベクトル取得手段として機能し、ステップS13で取得した差分波形からn個の特徴量を抽出し、n次元の特徴量ベクトルを取得する(Step14)。
【0033】
次に、制御部11は、クラスタ数定義手段、特徴量空間作成手段として機能し、クラスタ数をkと定義し、n次元の特徴量空間を作成する(Step15)。特徴量空間の作成が完了したか否かを判定し(Step16)、特徴量空間の作成を完了していない場合にはStep10に戻り、検知信号を引き続き取得して特徴量空間を作成するまでStep10〜Step16の処理を繰り返し行う。例えば、検知信号取得開始から所定時間(例えば、数時間〜数日間)経過したときに、特徴量空間の作成を完了したと見なしてもよい。
【0034】
そして、制御部11は、記憶制御手段として機能し、作成した特徴量空間を記憶手段12に保存(記憶)して処理を終了する(Step17)。
以上のように被介護者ごとに特徴量空間を作成する。
【0035】
次に、この特徴量空間を使用した排泄検知処理の手順を説明する。
図11は、排泄検知装置300の制御部11による排泄検知処理を示すフローチャートである。
制御部11は、ガスセンサユニット200からガスセンサの検知信号を受信する(Step20)。次いで、被介護者の離着床を判定し(Step21)、離床中の場合には(Step21:No)、Step20の処理に戻り、着床中の場合(Step21:Yes)には、Step20で受信した検知信号に対して間引き移動平均処理を行う(Step22)。
【0036】
次に、制御部11は、間引き移動平均処理後の検知信号の出力波形について差分処理により差分波形を取得する(Step23)。そして、制御部11は、Step23で取得した差分波形からn個の特徴量を抽出し、n次元の特徴量ベクトルを取得する(Step24)。
【0037】
そして、制御部11は、クラスタリング手段として機能し、Step24で取得したn次元の特徴量ベクトルを、先の特徴量空間作成処理のStep17にて記憶手段12に記憶した特徴量空間に照合して分類する(Step25)。そして、制御部11は排泄判定手段及び報知手段として機能し、排泄状況を判定し、判定した排泄状況を報知する。ここでは、排泄があった場合にのみ報知する例を示す。具体的には、判定結果が「排便」の場合には(Step26:排便)、通信部15を通じて、介護士が携帯するタブレット端末等に排便を報知する(Step27)。判定結果が「排尿」の場合には(Step26:排尿)、通信部15を通じて、介護士が携帯するタブレット端末等に排尿を報知する(Step28)。排泄無しの場合(Step26:排泄なし)、又は、「排便」「排尿」の報知後は、排泄検知の終了が指示される(Step29:Yes)まで、Step20〜Step29の処理を繰り返し行う。ステップS26の排泄判定では、特徴量空間で定義されているクラスタ数k分の判定が行われる。例えば、「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」、「放屁あり、かつ、排泄(排便及び排尿)なし」、「放屁なし、かつ、排便なし、かつ、排尿なし(異常なし)」を区別した検知を所望し、クラスタ数k=4の特徴量空間を作成している場合には、ステップS26において、「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」、「放屁あり、かつ、排泄(排便及び排尿)なし」、「放屁なし、かつ、排便なし、かつ、排尿なし(異常なし)」の判定が行われることとなる。このうち、「排便あり」、「排尿あり、かつ、排便なし」を報知の対象とすることもできるし、「放屁あり、かつ、排泄(排便及び排尿)なし」を報知の対象とすることもできる。
【0038】
以上のように、ガスセンサの差分波形から取得した任意数の特徴量を用いて作成した任意次元の特徴量空間を用いて、予めクラスタ数kを定義したクラスタリングにより、排泄状況を正確に判定することができる。しかも、被介護者ごとにいわばオリジナルの特徴量空間を作成するため、個人の排泄パターンを反映させることができ、より正確な排泄検知を行うことができる。さらに、ガスセンサの個体差による出力信号のばらつきの影響を受けることなく排泄検知を行うことができる。
特に、上述した実施形態のように、ガスセンサの差分波形から、差分波形の「標準偏差」、「最大値」、「最小値」、正側の波形と基準線とで囲まれた領域である「正面積の値」、負側の波形と基準線とで囲まれた領域である「負面積の値」の5つの特徴量を抽出し、5次元の特徴量ベクトルを使用すれば、比較的簡易に特徴量ベクトルを取得できる。
【0039】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、被介護者又は乳幼児に非接触で、かつ、個人ごとの排泄パターンを認識して排泄を正確に検知することができる排泄検知システムに対し、広く適用することができる。
排泄物から発生するガスであって、被介護者等が寝ている寝具から吸引されたガスを検知するガスセンサを有するガスセンサユニット200と、ガスセンサユニット200からの検知信号を入力する手段と、入力された前記検知信号の差分波形を取得する差分波形取得手段と、取得した差分波形からn個の特徴量を抽出しn次元の特徴量ベクトルを取得する手段と、排泄検知に用いる特徴量空間のクラスタ数kを定義する手段と、取得したn次元の特徴量ベクトルと、定義されたクラスタ数kに基づいて特徴量空間を作成する。そして、排泄検知処理の開始が指示されると、特徴量空間に取得したn次元の特徴量ベクトルを照合して分類し、排泄判定を行う手段と、排泄を判定した場合に排泄を報知する手段と、を有する。