(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような格納式オットマンにおいては、格納位置にある足受け部分が、前方に勢いよく飛び出ると危険である。このため、格納式オットマンにおいては、格納位置にある足受け部分のロックが解除されてから、使用位置となるまでの間に要する時間(以下、「(格納式オットマンの)展開時間」と呼ぶことがある。)は、0.5秒以上とすることが好ましい。
【0005】
この点、格納式オットマンの展開時間は、展開付勢手段として付勢力の弱いものを使用すると、長くすることができる。しかし、この場合には、足受け部分が使用位置まで前方回動できなくなる虞がある。というのも、展開付勢手段は、通常、足受け部分が格納位置から使用位置に移動するにつれてその付勢力が弱くなるように設けられるところ、展開付勢手段として付勢力の弱いものを使用すると、使用位置に達する直前で足受け部分が止まってしまいやすくなるからである。
【0006】
このような実状に鑑みて、本発明者は、格納式オットマンの展開付勢手段として、ある程度付勢力の強いものを使用するとともに、足受け部分が格納位置から使用位置まで前方回動する際の途中の区間においてのみ、足受け部分の前方回動にブレーキトルク(前方回動と逆方向のトルク。以下同じ。)が付与されるようにすることで、足受け部分が使用位置の直前で止まるのを防止しながらも、展開時間を長くすることに思い至った。このようなブレーキトルクの付与は、例えば、油圧式ロータリーダンパーを使用すると可能である。
【0007】
しかし、上記のように一部の区間においてのみブレーキトルクを付与できる構造の油圧式ロータリーダンパーは、機構が複雑で高価である。また、油圧式ロータリーダンパーは、気温によってそのブレーキトルクが変化するという問題も有している。例えば、油圧式ロータリーダンパーを格納式オットマンのブレーキユニットとして組み込んで、夏場における展開時間が0.5〜1.0秒となるように設定したところ、冬場における展開時間が2.0〜2.5秒となることが確認された。
【0008】
このように、季節によって格納式オットマンの展開時間が変化すると、故障したと誤解される虞が生じる。また、いずれかの季節においては、足受け部分が適切な速度で前方回動したとしても、他の季節においては、足受け部分が勢いよく飛び出て危険であったり、逆に、足受け部分がなかなか使用位置まで移動せず、使用者がイライラしたりする虞がある。格納式オットマンの展開時間は、いくらでも長くすればよいというわけではなく、2秒以下に抑えることが好ましい。
【0009】
よって、本発明者は、その付勢力が気温に影響されにくいバネ式ロータリーダンパーで、上記のような動作(一部の区間においてのみブレーキトルクを付与する動作)を行うことができるものを探した。しかし、そのようなバネ式ロータリーダンパーは、見当たらなかった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、回動範囲の途中の区間においてのみブレーキトルクを付与できるものでありながら、そのブレーキトルクが気温によって変化しにくいバネ式ロータリーダンパーを提供するものである。また、このバネ式ロータリーダンパーを用いた格納式オットマンを提供することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、
第一部材と、
第二部材と、
第一部材及び第二部材を相対的に回動可能な状態で連結する連結軸と、
その巻回中心が連結軸の中心に略一致するように配されたダンパー用コイルバネと、
を備え、
第一部材又は第二部材が一の方向に回動する際に、ダンパー用コイルバネによってその回動にブレーキトルクが付与されるようにした
バネ式ロータリーダンパーであって、
第一部材に、当接部α
1が設けられ、
第二部材に、バネ支持部β
1、バネ固定部β
2及び解除カム部β
3が設けられ、
ダンパー用コイルバネの一端が、バネ固定部β
2に固定された固定端とされ、
ダンパー用コイルバネの他端が、中心側又は遠心側に折り曲げられた折曲部γ
1を有し、その折曲部γ
1の片側をバネ支持部β
1によって支持された自由端とされ、
第一部材又は第二部材が始点Aから前記一の方向に回動していき、中途点Bに達したときに、折曲部γ
1における、バネ支持部β
1によって支持された側に、当接部α
1が当接して、その当接部α
1が、折曲部γ
1をダンパー用コイルバネの巻き締め方向又は巻き戻し方向に押圧することによって、ダンパー用コイルバネが作用するようになり、
中途点Bから前記一の方向にさらに回動していき、別の中途点Cに達したときに、折曲部γ
1における、当接部α
1が当接している側とは逆側に、解除カム部β
3が当接することによって、当接部α
1と折曲部γ
1とが当接した状態が解除されることにより、ダンパー用コイルバネが作用しなくなり、
その後、終点Dとなるまで、前記一の方向に回動する
ようにしたことを特徴とするバネ式ロータリーダンパー
を提供することによって解決される。
【0012】
これにより、始点Aから中途点B及び中途点Cを経て終点Dまでが回動範囲となるロータリーダンパーにおいて、その一部の区間である区間BCにおいてのみ、ダンパー用コイルバネによるブレーキトルクが付与されるようにする(厳密には、中途点Cは、ダンパー用コイルバネが作用しなくなり始める(当接部α
1と折曲部γ
1との当接が解除され始める)位置であるため、中途点Bから、中途点Cを超えた中途点C’までの区間BC’においてのみ、ダンパー用コイルバネによるブレーキトルクが付与される)ことが可能になる。換言すると、区間AB及び区間CD(厳密には区間C’D)においては、ダンパー用コイルバネによるブレーキトルクが付与されないようにすることが可能になる。また、本発明のバネ式ロータリーダンパーは、上記の油圧式ロータリーダンパーと比較して、気温によるブレーキトルクの変化が少ないという利点や、構造が簡素で低コストであるという利点も有している。
【0013】
以下においては、説明の簡略化のため、「区間BC」と記載したときは、特に断りのない限り、厳密には「区間BC’」を意味しているものとする。同様に、「区間CD」と記載したときは、特に断りのない限り、厳密には「区間C’D」を意味しているものとする。
【0014】
本発明のバネ式ロータリーダンパーにおいて、第一部材及び第二部材は、相対的に回動するものであれば、その回動態様を限定されない。すなわち、第一部材が第二部材に対して回動するようにしてもよいし、第二部材が第一部材に対して回動するようにしてもよいし、第一部材及び第二部材の双方がそれぞれ第二部材及び第一部材に対して回動するようにしてもよい。
【0015】
本発明のバネ式ロータリーダンパーにおいては、
第一部材又は第二部材が中途点Bから中途点Cに向かって回動するときの当接部α
1が、折曲部γ
1をダンパー用コイルバネの巻き締め方向に押圧するようにするとともに、
ダンパー用コイルバネの内側に、ダンパー用コイルバネが巻き締められて縮径したときにダンパー用コイルバネの内周部に部分的に当接する縮径規制部を設ける
ことも好ましい。
また逆に、
第一部材又は第二部材が中途点Bから中途点Cに向かって回動するときの当接部α
1が、折曲部γ
1をダンパー用コイルバネの巻き戻し方向に押圧するようにするとともに、
ダンパー用コイルバネの外側に、ダンパー用コイルバネが巻き戻されて拡径したときにダンパー用コイルバネの外周部に部分的に当接する拡径規制部を設ける
ことも好ましい。
【0016】
これにより、ダンパー用コイルバネによるブレーキトルクを大幅に増大させることが可能になる。ダンパー用コイルバネの内周部又は外周部に縮径規制部又は拡径規制部が当接する区間は、区間BCの全体であってもよいし、区間BCに含まれる一部の区間であってもよい。後者の場合には、区間BCにおいて、ダンパー用コイルバネによるブレーキトルクを多段階に変化させることも可能になる。ブレーキトルクの多段階変化は、縮径規制部又は拡径規制部を複数箇所に設け、一の縮径規制部又は拡径規制部の高さと、他の縮径規制部又は拡径規制部の高さとを異なるようにしておく(一の縮径規制部又は拡径規制部がダンパー用コイルバネの内周部又は外周部に当接するタイミングと、他の縮径規制部又は拡径規制部がダンパー用コイルバネの内周部又は外周部に当接するタイミングとをずらす)ことによっても、実現することができる。
【0017】
本発明のバネ式ロータリーダンパーにおいて、解除カム部による当接部α
1と折曲部γ
1との当接の解除態様は、特に限定されない。例えば、解除カム部β
3を押上解除カム(折曲部γ
1をダンパー用コイルバネの伸長方向に押し上げることによって、当接部α
1と折曲部γ
1とが当接した状態を解除するカム)とすることができる。この構成は、ダンパー用コイルバネが、隣り合う巻線が密着した密着巻きのものである場合と、隣り合う巻線間に隙間を有する非密着巻きのものである場合とのいずれの場合においても採用することができる。
【0018】
また、本発明のバネ式ロータリーダンパーにおいては、解除カム部β
3を押下解除カム(折曲部γ
1をダンパー用コイルバネの収縮方向に押し下げることによって、当接部α
1と折曲部γ
1とが当接した状態を解除するカム)とすることもできる。この構成は、ダンパー用コイルバネが非密着巻きのものである場合にのみ採用することができ、密着巻きのものである場合には採用することができない。
【0019】
本発明のバネ式ロータリーダンパーにおいて、解除カム部β
3は、それにおける折曲部γ
1に当接する面(カム面)の傾斜角度が一定のものであってもよいが、カム面の傾斜角度が、段階的又は連続的に大きくなるように設定することも好ましい。
【0020】
というのも、解除カム部β
3は、ダンパー用コイルバネによるブレーキトルクを増大させるように作用するところ、この解除カム部β
3のカム面の傾斜角度を上記のように変化させることによって、折曲部γ
1が解除カム部β
3から受ける抵抗力(ダンパー用コイルバネによるブレーキトルク)を、折曲部γ
1が解除カム部β
3に当接し始めてから脱落するまでの間に亘って、段階的又は連続的に大きくなるようにすることができ、ダンパー用コイルバネによるブレーキトルクの変化態様をさらに変化に富んだものとすることが可能になるからである。
【0021】
本発明のバネ式ロータリーダンパーは、その用途を特に限定されるものではなく、例えば、移動棚等の家具における回動部分のブレーキユニット等、各種装置で採用することができる。なかでも、本発明のバネ式ロータリーダンパーは、格納式オットマンに用いると好ましい。具体的には、格納式オットマンにおける足受け部分を前方回動させる際のブレーキユニットとして、本発明のバネ式ロータリーダンパーを組み込むと好ましい。
【0022】
これにより、足受け部分が格納位置から使用位置へと確実に前方回動しながらも、その展開時間が、気温にかかわらず適切な範囲(例えば0.5〜1.0秒の範囲)に保たれて、安全性や操作性に優れた格納式オットマンを提供することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によって、回動範囲の途中の区間においてのみブレーキトルクを付与できるものでありながら、そのブレーキトルクが気温によって変化しにくいバネ式ロータリーダンパーを提供することが可能になる。また、このバネ式ロータリーダンパーを用いた格納式オットマンを提供することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のバネ式ロータリーダンパーの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、2つの実施態様(第一実施態様及び第二実施態様)を例に挙げて、本発明のバネ式ロータリーダンパーの説明をする。しかし、本発明のバネ式ロータリーダンパーの技術的範囲は、これらの実施態様に限定されることなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0026】
1.第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー
まず、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパーについて説明する。
図1は、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100を分解した状態を示した斜視図である。
図2は、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100を組み立てた状態を示した斜視図である。以下においては、特に断りのない限り、
図1(後述する第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では
図7)における紙面上側を「上」側とし、
図1(後述する第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では
図7)における紙面下側を「下」側として説明する。これは、説明の便宜を考慮してのものであり、バネ式ロータリーダンパー100を使用する向き等を限定するものではない。
【0027】
第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100は、
図1に示すように、第一部材110と、第二部材120と、連結軸130と、ダンパー用コイルバネ140とで構成されている。第一部材110と第二部材120は、相対的に回動可能となる状態で、連結軸130によって連結される。ダンパー用コイルバネ140は、
図2に示すように、その巻回中心が連結軸130の中心に略一致するように配される。このダンパー用コイルバネ140は、第一部材110又は第二部材120が回動する際に、その回動にブレーキトルク(前方回動とは逆方向のトルク)を付与するためのものとなっている。
【0028】
図3は、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100において、第一部材110に対して第二部材120を回動させているときの様子を段階ごとに示した図であり、
図3(a)〜(d)は、バネ式ロータリーダンパー100を連結軸130の中心線Lに平行な方向から見た状態を、
図3(e)〜(h)は、バネ式ロータリーダンパー100を連結軸130の中心線Lに垂直な方向から見た状態をそれぞれ示している。
図4は、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100において、第一部材110に対して第二部材120を回動させているときの様子を段階ごとに、回動方向に展開した状態で示した図である。
図3(a)、
図3(e)及び
図4(a)は、第二部材120が始点Aにあるときを、
図3(b)、
図3(f)及び
図4(b)は、第二部材120が中途点Bにあるときを、
図3(c)、
図3(g)及び
図4(c)は、第二部材120が中途点Cにあるときを、
図3(d)、
図3(h)及び
図4(d)は、第二部材120が終点Dにあるときをそれぞれ示している。
【0029】
既に述べたように、第一部材110と第二部材120は、少なくとも一方が他方に対して回動可能であれば、その回動態様を、特に限定されない。第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図3(a)〜(d)に示すように、第一部材110に対して第二部材120が回動するようになっている。第一部材110は、図示省略の他の部材に固定された固定部材となっている。このため、以下においても、この回動態様に基づいて説明する。第二部材120は、
図3(a)の始点Aから、
図3(b)の中途点Bと
図3(c)の中途点Cとを経て、
図3(d)の終点Dまで回動できるようになっている。
【0030】
1.1 第一部材
第一部材110は、
図1に示すように、円板状を為す基部111と、基部111の外周部から基部111の径方向に突出して設けられた帯板状を為すアーム部112と、基部111の外周部から上向きに起立して設けられた円弧状を為す起立壁部113とが一体的に形成された金属製の部品となっている。基部111の中心には、連結軸130の下端部を挿通するための貫通孔(連結軸挿通孔)が設けられている。また、アーム部112には、第一部材110を他の部材に取り付けるボルト等を通すための貫通孔(取付孔)が設けられている。起立壁部113の一方の端面は、後述する当接部α
1として機能する部分となっている。
【0031】
1.2 第二部材
第二部材120は、
図1に示すように、円板状を為す基部121と、基部121の外周部から基部121の径方向に突出して設けられた帯板状を為すアーム部122と、基部121の外周部から上向きに起立して設けられた円弧状を為す起立壁部123と、アーム部122の中央部分を切り起こすことによって設けられた板状の切起部123とが一体的に形成された金属製の部品となっている。第一部材110の基部111と同様、第二部材120における基部121の中心にも、連結軸130の下端部を挿通するための貫通孔(連結軸挿通孔)が設けられている。また、第一部材110のアーム部112と同様、第二部材120におけるアーム部122にも、第二部材120を他の部材に取り付けるボルト等を通すための貫通孔(取付孔)が設けられている。さらに、切起部124にも、貫通孔が設けられている。この切起部124の貫通孔は、ダンパー用コイルバネ140の固定端(後述する折曲部γ
2)を嵌め込んで固定するためのバネ固定部β
2として機能する部分となっている。
【0032】
第二部材120の起立壁部123における上端縁は、その中央区間が下側に凹んだ状態に形成されている。換言すると、起立壁部123における上端縁の両側には、一対の突起が形成されている。この一対の突起のうち、一方の突起の内向端面(他方の突起を向く側の端面)は、後述するバネ支持部β
1として機能する部分となっており、他方の突起の内向端面(前記一方の突起を向く側の端面)は、後述する解除カム部β
3として機能する部分となっている。バネ支持部β
1として機能する端面は、第二部材120の回動方向に対して略垂直になっており、解除カム部β
3として機能する端面は、第二部材120の回動方向に対して傾斜している。
【0033】
1.3 連結軸
連結軸130は、
図1に示すように、抜け止めのため(上記の第一部材110や第二部材120の連結軸挿通孔に挿通された連結軸130が抜けないようにするため)の拡径部が設けられた軸状の金属部材となっている。連結軸130の外周面には、連結軸130の長手方向に沿って外方に突出した状態に設けられた凸条131,132が複数箇所に設けられている。これらの凸条131,132は、後述する縮径規制部として機能する部分となっている。
【0034】
縮径規制部(凸条)131,132の数や配置は、特に限定されない。第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100においては、計4個の縮径規制部131,132(2個の縮径規制部131と2個の縮径規制部132)を、連結軸130の中心線に対して回転対称となるように配置している。2個の縮径規制部131は、互いに対向する箇所で逆向きに配されており、2個の縮径規制部132も、互いに対向する箇所で逆向きに配されている。縮径規制部131の高さ(突出高さ)は、縮径規制部132の高さ(突出高さ)よりも大きく設定されている。縮径規制部131,132をこのように構成したことによる作用等については、後で詳しく説明する。
【0035】
1.4 ダンパー用コイルバネ
ダンパー用コイルバネ140は、第一部材110に対して第二部材120が回動する際であって、第一部材110に対する第二部材120の角度が所定範囲にあるときに、第二部材120の回動にブレーキトルクを付与するものとなっている。ダンパー用コイルバネ140は、隣り合う巻線が密着した密着巻きのコイルバネと、隣り合う巻線間に隙間を有する非密着巻きのコイルバネとのいずれを用いてもよいが、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100においては、密着巻きのコイルバネを用いている。
【0036】
図1に示すように、ダンパー用コイルバネ140の一端(下端)は、遠心側に折り曲げられた折曲部γ
2となっており、他端も、遠心側に折り曲げられた折曲部γ
1となっている。折曲部γ
2は、上記の第二部材120に設けられたバネ固定部β
2に嵌め込まれて固定される。このため、ダンパー用コイルバネ140における折曲部γ
2側の端部は、第二部材120に固定された固定端となっている。一方、折曲部γ
1は、その片側を、上記の第一部材110のバネ支持部β
1によって支持される。ただし、バネ支持部β
1に支持された折曲部γ
1は、バネ支持部β
1とは逆側への移動が規制されない状態となっている。このため、ダンパー用コイルバネ140における折曲部γ
1側の端部は、第一部材110に対して移動可能な自由端となっている。
【0037】
1.5 第一実施態様のバネ式ロータリーダンパーの動作
続いて、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100の動作について説明する。第一実施態様のバネ式ロータリーダンパーにおいては、第二部材120が始点Aにある状態(
図3(a)に示す状態)から、第二部材130が中途点Bにある状態(
図3(b)に示す状態)と、第二部材130が中途点Cにある状態(
図3(c)に示す状態)とを経て、第二部材130が終点Dとなる状態(
図3(d)に示す状態)となるまで、第一部材110に対して第二部材120が回動するようになっている。既に述べたように、ダンパー用コイルバネ140は、その一端が第二部材120に固定された固定端となっており、第二部材120に対して固定された状態となっているため、第一部材110に対して第二部材120を回動させると、ダンパー用コイルバネ140も、第二部材120とともに回動するようになっている。
【0038】
第二部材120が始点Aにあるときには、
図3(a)に示すように、第一部材110に対する第二部材120の角度がθ
Aとなっている。この状態においては、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1は、その片側(
図3(a)においては右側)を、第二部材120のバネ支持部β
1によって支持された状態となっている。ダンパー用コイルバネ140は、自然状態よりも巻き締め方向に巻き増しされた状態となっており、折曲部γ
1は、ダンパー用コイルバネ140の弾性力によってバネ支持部β
1に押し当てられた状態となっている。またこのときには、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1は、第一部材110の当接部α
1から離れた状態となっている。
【0039】
第二部材120が、始点Aにある状態(
図3(a)に示す状態)から、一の方向(
図3(a)に示す反時計回り方向)に回動していくと、第二部材120は、
図3(b)に示す中途点Bに達し、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1における、バネ支持部β
1によって支持された側に、第一部材110の当接部α
1に当接した状態となる。第二部材120が中途点Bにあるときには、第一部材110に対する第二部材120の角度がθ
Bとなっている。第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100においては、角度θ
Bは、角度θ
Aよりも小さくなるようになっている。
【0040】
第二部材120が始点A(
図3(a))から中途点B(
図3(b))まで回動する間(以下においては、この間に第二部材120が回動する範囲を「初動区間」と呼ぶことがある。)は、第一部材110と第二部材120との間で、ダンパー用コイルバネ140の弾性力が作用しないようになっている。このため、初動区間においては、ダンパー用コイルバネ140の弾性力に起因するブレーキトルクが発現しない状態で、第一部材110に対して第二部材120を回動させることが可能となっている。
【0041】
一方、第二部材120が、中途点Bにある状態(
図3(b)に示す状態)から、前記一の方向(反時計回り方向)にさらに回動していくと、第二部材120とともに、バネ支持部β
1及びダンパー用コイルバネ140も前記一の方向に回動するようになるが、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1は、上記の中途点B以降、第一部材110の当接部α
1が当接した状態となっている。このため、ダンパー用コイルバネ140の本体部は、第二部材120とともに回動しても、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1は、当接部α
1に当接した状態のまま、回動できない状態となっている。したがって、ダンパー用コイルバネ140は、巻き締められて縮径していき、ダンパー用コイルバネ140の弾性力に起因するブレーキトルクが、第二部材120の回動方向とは逆向きに作用するようになる。
【0042】
第二部材120が、中途点Bにある状態(
図3(b)に示す状態)から、前記一の方向(反時計回り方向)に回動し続けると、第二部材120は、
図3(c)に示す中途点Cに達し、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1における、当接部α
1が当接している側とは逆側に、解除カム部β
3が当接した状態となる。この解除カム部β
3によって、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1は、
図3(g)に示すように、ダンパー用コイルバネ140の伸長方向に押し上げられて、当接部α
1から外れた状態となり、
図3(c)及び
図3(g)において破線で示す位置(第二部材120のバネ支持部β
1によって支持される位置)まで弾性復帰する。この解除カム部β
3は、上記の「押上解除カム」に該当するものとなっている。
【0043】
このため、第二部材120が中途点Bから後述する中途点Cまで回動する間(以下においては、この間に第二部材120が回動する範囲を「中途区間」と呼ぶことがある。)には、第二部材120の回動の抵抗力(ブレーキトルク)として作用していたダンパー用コイルバネ140の弾性力が、第二部材120が中途点Cから後述する終点Dまで回動する間(以下においては、この間に第二部材120が回動する範囲を「終盤区間」と呼ぶことがある。)では、作用しない状態となる。換言すると、終盤区間においては、初動区間と同様、ダンパー用コイルバネ140の弾性力に起因するブレーキトルクが発現しない状態で、第一部材110に対して第二部材120を回動させることが可能になる。
【0044】
第二部材120が、中途点Cにある状態(
図3(c)に示す状態)から、前記一の方向(反時計回り方向)に回動し続けると、第二部材120は、
図3(d)に示す終点Dに達する。終点Dに到達した第二部材120は、前記一の方向とは逆向き(時計回り方向)に回動させることによって、
図3(a)に示す始点Aまで復帰させることができる。第二部材120が終点Dから始点Aまで回動する間(以下においては、この間に第二部材120が回動する範囲を「復帰区間」と呼ぶことがある。)においても、ダンパー用コイルバネ140の弾性力に起因するブレーキトルクが発現しない状態で、第一部材110に対して第二部材120を回動させることが可能である。
【0045】
ところで、上記の「1.3 連結軸」の欄では、連結軸130に、高さ(突出高さ)の異なる縮径規制部131,132を設けることについて述べたが、そのようにした理由について、
図5を用いて説明する。
図5は、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100で用いた連結軸130の縮径規制部131,132を説明する図である。
【0046】
すなわち、高さ(突出高さ)の異なる縮径規制部131,132を連結軸130に設けることによって、
図5(a)に示すように、連結軸130の、縮径規制部131の配置方向における外径D
1と、縮径規制部132の配置方向における外径D
2とを異ならせることができる。第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100においては、縮径規制部131を、縮径規制部132よりも高くしており、連結軸130の、縮径規制部131の配置方向における外径D
1の方が、縮径規制部132の配置方向における外径D
2よりも大きくなっている。これにより、バネ式ロータリーダンパー100の用途や仕様等に応じて、第二部材120が回動する際のブレーキトルクを、より複雑に変化させることができる。
【0047】
というのも、ダンパー用コイルバネ140は、上記の中途区間(中途点Bと中途点Cとの間の区間)において、巻き締められて縮径していく。このため、ダンパー用コイルバネ140の内側に配される連結軸130の外周部に縮径規制部131,132を設けておくと、ダンパー用コイルバネ140の内周部に、縮径規制部131,132の先端が当接して、ダンパー用コイルバネ140の縮径が規制された状態となり、縮径規制部131,132が存在しない場合と比較して、第二部材120が回動する際のブレーキトルクを増大させることができる。この点、縮径規制部131の高さと縮径規制部132の高さとを異ならせておけば、
図5(b)に示すように、縮径規制部131の先端がダンパー用コイルバネ140の内周部に当接するタイミングと、縮径規制部132の先端がダンパー用コイルバネ140の内周部に当接するタイミングとを異ならせ、第二部材120が回動する際のブレーキトルクの増加速度を段階的に増大させていくことができるからである。
【0048】
図5(b)においては、縮径規制部131の先端は、ダンパー用コイルバネ140の内周部に当接しているものの、縮径規制部132の先端は、ダンパー用コイルバネ140の内周部に当接していない。この
図5(b)に示す状態からダンパー用コイルバネ140がさらに巻き締められて縮径していくと、ダンパー用コイルバネ140は、断面真円状から断面菱形状に変形し、縮径規制部132の先端も、ダンパー用コイルバネ140の内周部に当接した状態となる。
【0049】
図6は、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100における、第一部材110に対する第二部材120の角度と、第二部材120が回動する際のブレーキトルクとの関係を示したグラフである。
図6において、目の細かい網掛けハッチングで示した部分は、連結軸130に縮径規制部131,132を設けていない場合の変化を示しており、目の大きい網掛けハッチングで示した部分は、連結軸130に縮径規制部131,132を設けた場合の変化を示している。また、
図6において、角度θ
B1は、縮径規制部131がダンパー用コイルバネ140の内周部に当接する角度であり、角度θ
B2は、縮径規制部132がダンパー用コイルバネ140の内周部に当接する角度である。
【0050】
図6を見ると、連結軸130に縮径規制部131,132を設けていない場合には、第一部材110に対する第二部材120の角度がθ
Bからθ
Cとなるまでの間(上記の中途区間に相当)は、ブレーキトルクが直線的に増加していくものの、連結軸130に縮径規制部131,132を設けた場合には、第一部材110に対する第二部材120の角度がθ
Bからθ
Cとなるまでの間において、ブレーキトルクが折線的に増加していることが分かる。すなわち、第一部材110に対する第二部材120の角度がθ
Bからθ
B1となるまでのグラフの傾き(ブレーキトルクの増大速度)よりも、同角度がθ
B1からθ
B2となるまでのグラフの傾き(ブレーキトルクの増大速度)の方が大きくなっている。また、第一部材110に対する第二部材120の角度がθ
B1からθ
B2となるまでのグラフの傾き(ブレーキトルクの増大速度)よりも、同角度がθ
B2からθ
Cとなるまでのグラフの傾き(ブレーキトルクの増大速度)の方がさらに大きくなっている。
【0051】
なお、
図6において、第一部材110に対する第二部材120の角度がθ
Cからθ
C’となるまでの範囲において、ブレーキトルクが急激に増大しているのは、上記の解除カム部β
3による抵抗力が、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1に作用するためである。第一部材110に対する第二部材120の角度がθ
Cからθ
C’となるまでの範囲におけるブレーキトルクの増大速度は、解除カム部β
3のカム面の傾斜角度を異なる値に設定すれば、小さくすることも大きくすることもできる。解除カム部β
3のカム面の傾斜角度は、一定としてもよいが、段階的又は連続的に大きくなるように設定することも好ましい。
【0052】
1.6 小括
以上のように、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100は、回動範囲の途中の区間においてのみブレーキトルクを付与できるものとなっている。また、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100は、コイルバネ(ダンパー用コイルバネ140)によって回動にブレーキトルクを付与するものであるため、そのブレーキトルクが気温によって変化しにくいものとなっている。さらに、ダンパー用コイルバネ140の巻き線の太さや巻き数を変えるという比較的容易な設計変更によって、ブレーキトルクの増大速度(
図6のグラフの傾き)を変更することも可能である。
【0053】
そして、上記の初動区間は、第二部材120が始点Aにあるときの当接部α
1とバネ支持部β
1との間隔を狭くすると短くすることができ、当該間隔を広くすると長くすることができる。また、上記の中途区間は、バネ支持部β
1と解除カム部β
3との間隔を狭くすると短くすることができ、当該間隔を広くすると長くすることができる。このように、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、当接部α
1やバネ支持部β
1や解除カム部β
3等の相対的位置関係を変えるという比較的容易な設計変更によって、ブレーキトルクが発生する範囲等を変更することも可能である。
【0054】
2.第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー
続いて、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパーについて説明する。第二実施態様のバネ式ロータリーダンパーについては、主に、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパーと異なる構成について説明し、その他の構成についての説明は割愛する。第二実施態様のバネ式ロータリーダンパーで特に言及しない構成については、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパーで述べたものと同様の構成を採用することができる。
【0055】
図7は、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100を分解した状態を示した斜視図である。
図8は、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100を組み立てた状態を示した斜視図である。
図9は、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100において、第一部材110に対して第二部材120を回動させているときの様子を段階ごとに、回動方向に展開した状態で示した図である。
図9(a)は、第二部材120が始点A(
図3(a)を参照)にあるときを、
図9(b)は、第二部材120が中途点B(
図3(b)を参照)にあるときを、
図9(c)は、第二部材120が中途点C(
図3(c)を参照)にあるときを、
図9(d)は、第二部材120が終点D(
図3(d)を参照)にあるときをそれぞれ示している。
【0056】
既に述べた第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図1に示すように、ダンパー用コイルバネ140として、密着巻きのコイルバネを使用しており、ダンパー用コイルバネ140における自由端側の折曲部γ
1と固定端側の折曲部γ
2とを、遠心側に折り曲げていた。これに対し、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図7に示すように、ダンパー用コイルバネ140として、隣り合う巻線間に隙間を有する非密着巻きのコイルバネを使用しており、ダンパー用コイルバネ140における自由端側の折曲部γ
1と固定端側の折曲部γ
2とを、中心側に折り曲げている。
【0057】
このため、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図2に示すように、第一部材110の起立壁部113の全体と、第二部材120の起立壁部123の全体とが、ダンパー用コイルバネ140の外側に位置するようになっていたのに対し、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図8に示すように、第一部材110の起立壁部113の上端部を折り返した折返部113aと、第二部材120の起立壁部123の全体とが、ダンパー用コイルバネ140の内側に位置するようになっている。当接部α
1は、折返部113aの一方の端面に設けられている。
【0058】
また、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図1に示すように、第二部材120における四分円弧状の起立壁部123の上縁部に、バネ支持部β
1及び解除カム部β
3を設けていたのに対し、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図7に示すように、円環状の起立壁部123に開口部123aを設け、この開口部123aの内向端面に、バネ支持部β
1及び解除カム部β
3を設けている。
【0059】
さらに、第一実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図3及び
図4に示すように、解除カム部β
3は、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1をダンパー用コイルバネ140の伸長方向に押し上げる押上解除カムとなっていたのに対し、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100では、
図9に示すように、解除カム部β
3は、ダンパー用コイルバネ140の折曲部γ
1をダンパー用コイルバネ140の収縮方向に押し下げる押下解除カムとなっている。
【0060】
第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100のように構成しても、
図6に示すような動作を実現することが可能である。ただし、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100においては、連結軸130とダンパー用コイルバネ140との間に、第二部材120の起立壁部123等が配されるため、連結軸130の外周部に縮径規制部131,132(
図1)を設けても、ダンパー用コイルバネ140の縮径を規制することができない。このため、第二実施態様のバネ式ロータリーダンパー100において、ダンパー用コイルバネ140として、上記の中間区間において縮径する(巻き増しされる)ものを用い、且つ、縮径規制部131,132に相当する部分を設ける場合には、第二部材120の起立壁部123の外周面とダンパー用コイルバネ140の内周面との隙間に、縮径規制部131,132に相当する部分を設けるとよい。また、ダンパー用コイルバネ140として、上記の中間区間において拡径する(巻き戻される)ものを使用すれば、縮径規制部131,132に相当する部分(この場合には拡径規制部)を、ダンパー用コイルバネ140の外側に設けることもできる。
【0061】
3.最後に
本発明のバネ式ロータリーダンパーは、その用途を特に限定されるものではなく、移動棚等の家具における回動部分のブレーキユニット等として採用することもできるが、格納式オットマンに用いると好ましい。具体的には、格納式オットマンにおける足受け部分を前方回動させる際のブレーキユニットとして、本発明のバネ式ロータリーダンパーを組み込むと好ましい。なかでも、自動車等の移動体のシートに備える格納式オットマンのブレーキユニットとして好適に採用することができる。というのも、本発明のバネ式ロータリーダンパーは、構造が簡素であり、軽量であるため、軽量化等に対する要求が強い自動車等の移動体の装備として好適であるからである。
【0062】
図10は、本発明のバネ式ロータリーダンパー100を組み込んだ格納式オットマンを示した図である。これにより、足受け部分が格納位置から使用位置まで確実に移動するようにしながらも、その展開時間を0.5秒以上として、格納位置にある足受け部分が前方に勢いよく飛び出ないようにする一方、その展開時間を2.0秒以下に抑えて、使用者のイライラを防止することも可能になる。また、その展開時間を、気温等によらず、略一定に保つことも可能である。