(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184660
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ブロー成形装置及び容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/46 20060101AFI20170814BHJP
B29C 49/12 20060101ALI20170814BHJP
B67C 3/02 20060101ALI20170814BHJP
B29L 22/00 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
B29C49/46
B29C49/12
B67C3/02 Z
B29L22:00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-18599(P2012-18599)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154603(P2013-154603A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年8月29日
【審判番号】不服2016-11115(P2016-11115/J1)
【審判請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 澄人
(72)【発明者】
【氏名】田村 信之
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 猛
【合議体】
【審判長】
小柳 健悟
【審判官】
上坊寺 宏枝
【審判官】
守安 智
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/076167(WO,A1)
【文献】
特開2000−43129(JP,A)
【文献】
特表2009−533290(JP,A)
【文献】
特表2013−541448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
B67C 3/00- 3/34
B65B 3/00- 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に口筒部(32)を起立設した有底筒状のプリフォーム(31)のブロー成形装置であって、
ブロー成形用の金型(1)と、前記プリフォーム(31)を金型(1)に装着した状態で前記口筒部(32)に密に連通するブローノズル(4)を有し、
前記ブローノズル(4)に挿通するようにロッド(8)を配設し、前記ロッド(8)の先端部を前記プリフォーム(31)内に挿入させた状態で、前記ブローノズル(4)と前記ロッド(8)で形成される筒状の導入路(Fi)を介して前記プリフォーム(31)内に供給される加圧液体(L)により前記金型(1)のキャビティに沿って膨張状に容器(41)を賦形する構成とし、
前記容器(41)が賦形され、加圧液体(L)の供給が停止された状態で前記ロッド(8)を前記容器(41)内から脱挿入する構成とし、前記ロッド(8)の先端部の形状及び挿入位置により液体(L)を充填した状態で成形された前記容器(41)におけるヘッドスペース(Hs)を所定の量に制御する構成とし、
前記ブローノズル(4)の周壁に、該ブローノズル(4)の外部と内部を連通するための通気孔(6b)を開閉可能に配設し、
前記容器(41)が賦形され、加圧液体(L)の供給を停止した後、前記ロッド(8)を前記容器(41)内から脱挿入する際に、前記通気孔(6b)を開状態として前記ブローノズル(4)の外部と内部を連通状態として、前記ロッド(8)の脱挿入に起因する前記容器(41)内の減圧状態を緩和する構成としたブロー成形装置。
【請求項2】
前記ブローノズル(4)の先端に前記プリフォーム(31)の口筒部(32)に嵌入する嵌入筒片(5)を配設し、該嵌入筒片(5)の外周壁に先端に向かって縮径する周段部(5a)を周設し、該周段部(5a)と前記口筒部(32)の上端面のシール部材(7a)を介した当接により、前記ブローノズル(4)を口筒部(32)に密に連通する構成とした請求項1記載のブロー成形装置。
【請求項3】
前記プリフォーム(31)を縦延伸するための延伸ロッド(8a)を、前記ロッド(8)とした請求項1または2記載のブロー成形装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のブロー成形装置を使用した合成樹脂製容器の製造方法であって、
有底筒状のプリフォーム(31)の口筒部(32)を外部に突出させた状態でブロー成形用の金型(1)に装着し、
前記ロッド(8)の先端部を前記プリフォーム(31)内に挿入し、
加圧液体(L)を、前記導入路(Fi)を介して前記口筒部(32)から前記プリフォーム(31)内に供給し、該加圧液体(L)により前記金型(1)のキャビティ(2)の形状に沿って容器(41)を膨張状に賦形し、
前記容器(41)が賦形された後、加圧液体(L)の供給を停止し、
前記ロッド(8)の先端部を前記容器(41)内から脱挿入し、
液体(L)を充填した状態で成形された前記容器(41)におけるヘッドスペース(Hs)を所定の量に制御するとともに、
前記容器(41)が賦形され、加圧液体(L)の供給を停止した後、前記ロッド(8)を前記容器(41)内から脱挿入する際、前記通気孔(6b)を開状態として前記ブローノズル(4)の外部と内部を連通状態として、前記ロッド(8)の脱挿入に起因する前記容器(41)内の減圧状態を緩和する構成としたことを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
縦延伸するための延伸ロッド(8a)を前記ロッド(8)とし、該延伸ロッド(8a)で前記プリフォーム(31)を縦方向に延伸すると共に、加圧液体(L)を前記導入路(Fi)を介して前記口筒部(32)から前記プリフォーム(31)内に供給し、該加圧液体(L)により前記金型(1)のキャビティ(2)の形状に沿って前記容器(41)を膨張状に賦形する構成とした請求項4記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製プリフォームのブロー成形装置、及びこの装置を使用した容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製のブロー成形壜体(所謂、ペットボトル)が、数多くの優れた特性を発揮することから、壜体容器として多方面で使用されている。
この種の容器は、有底筒状に射出成形されたプリフォームを、延伸効果を発現させることのできる温度に加熱した状態で、膨張状に延伸変形させて成形されるのが一般的である。
【0003】
すなわち、
図8(特許文献1の
図12に相当する。)に示すように、延伸効果が発現する温度に加熱されたプリフォーム31を、口筒部32を上方に突き出させ、プリフォーム31の口筒部32の外周面下端に一体周設したネックリング33をネック支持鍔部103に係止させた状態でブロー金型101に装着し、
ブローノズル105の先端部であるガイド筒部110をプリフォーム31の口筒部32に緩く嵌入した状態で、
ブローノズル105の中央に貫通形成された挿通孔111を通して挿通される延伸ロッド116により軸方向に延伸すると共に、挿通孔111を通して加圧流体であるブローエアにより径方向に延伸して、壜体41への成形を達成する。
【0004】
また、特許文献2には加圧流体としてブローエアの替わりに液体を使用してプリフォームをブロー成形する方法に係る発明が記載されている。
このような成形方法では、液体として製品に最終的に充填される内容液を使用すれば、充填工程を省略することができ生産ラインを簡略化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−251685号公報
【特許文献2】特開2000−43129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献2に記載されるようにブロー成形において加圧液体を使用する場合には、容器の成形後に容器中に液体が充満し、ブローノズルを口筒部から脱嵌入する際、液体が口筒部から周辺外部に散乱し、内容液のヘッドスペースを一定量に制御することが難しく、製品ごとにヘッドスペースがまちまちになり、商品性に係る問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は加圧流体として飲料、化粧品、薬品等の、最終的に製品に充填される液体を使用するブロー成形装置において、成形と同時に内容液が充填された容器におけるヘッドスペースを所定の量に制御することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明のうち、ブロー成形装置に係る主たる構成は、
上端に口筒部を起立設した有底筒状のプリフォームのブロー成形装置において、
ブロー成形用の金型と、プリフォームを金型に装着した状態で口筒部に密に連通するブローノズルを有し、
ブローノズルに挿通するようにロッドを配設し、
ロッドの先端部をプリフォーム内に挿入させた状態で、ブローノズルとロッドで形成される筒状の導入路を介してプリフォーム内に供給される加圧液体により金型のキャビティに沿って膨張状に容器を賦形する構成とし、
容器が賦形され、加圧液体の供給が停止された状態でロッドを容器内から脱挿入する構成とし、
ロッドの先端部の形状及び挿入位置により液体を充填した状態で成形された容器におけるヘッドスペースを所定の量に制御する構成と、
ブローノズルの周壁に、該ブローノズルの外部と内部を連通するための通気孔を開閉可能に配設し、
容器が賦形され、加圧液
体の供給を停止した後
、ロッ
ドを容器内から脱挿入する際に
、通気
孔を開状態とし
てブローノズ
ルの外部と内部を連通状態とする構成と
して、ロッドの脱挿入に起因する容器内の減圧状態を緩和する、と云うものである。
【0009】
上記構成の装置によれば、
容器が賦形され、加圧液体の供給が停止された状態で、導入路から容器内部にかけての領域に予め決められた量、すなわち最終的に容器内に充填される量の液体を残留させ、この状態で容器内からロッドの先端部を脱挿入、すなわち引き抜くことにより、導入路に残留する液体を全て、口筒部から周辺外部に散乱させることなく容器内に流入させることができ、ヘッドスペースの量を再現良く調整することができる。
すなわち、全ての液体が容器内に流入し、上部にヘッドスペースが形成された状態でブローノズルを口筒部から脱嵌入することができ、ブローノズルの脱嵌着に伴う液体の周辺外部への散乱の問題を解消することができ、またヘッドスペースの量を再現良く調整することができる。
【0010】
ここで、上記構成のロッドは導入路から容器内部にかけての領域に残留する液体の液面を調整する機能を発揮するものであり、ロッドの挿入位置と先端部の径等の形状により容器内に挿入されている先端部分の体積を予め設定しておくことにより、容器におけるヘッドスペースを所定の量に制御することが可能となる。
また、ロッドの挿入位置についてはサーボ機構を使用すれば高精度に設定することができる。
また、同じ容器でも製品によってヘッドスペースを変える必要がある場合、さらに異なる形状の容器を成形する場合にも、装置を大幅に変更することなく、ロッドの先端部の形状を変更したり、先端部の挿入量を変更したりすることで容易に対応することが可能である。
【0011】
そして、上記のような作用効果により、成形と同時に内容液が充填された容器におけるヘッドスペースを所定の量に制御することができ、製品に最終的に充填される飲料、化粧品、薬品等の液体を加圧してブローエアの替わりに使用するブロー成形において従来問題であった、液体が口筒部から周辺外部に散乱し、液体のヘッドスペースを一定量に制御することが難しいと云う問題を解決することができる。
【0013】
前述した本発明の主たる構成を有する成形装置では、容器が賦形され、加圧液体の供給が停止された状態でロッドを容器内から脱挿入する際に容器の内部が減圧状態になり、場合によっては賦形された容器が減容状に変形する恐れがあるが、上記構成によれば、容器が賦形され、加圧液体の供給を停止した後、ロッドを容器内から脱挿入する際、通気孔を開状態としてブローノズルの外部と導入路を連通状態とすることにより、容器内の減圧状態を緩和して上記したような容器の変形を効果的に防ぐことが可能となる。
【0014】
本発明のブロー成形装置に係るさらに他の構成は、上記主たる構成において、ブローノズルの先端にプリフォームの口筒部に嵌入する嵌入筒片を配設し、この嵌入筒片の外周壁に先端に向かって縮径する周段部を周設し、この周段部と口筒部の上端面のシール部材を介した当接により、ブローノズルを口筒部に密に連通する構成とする、と云うものである。
【0015】
上記構成は、ブローノズルを口筒部に密に連通するためのシール方法に係るものであるが、上記構成によりシンプルな構成でシール性を確実に保持することができ、またプリフォームの装着、脱装着についても高速で実施でき、さらにシール部材の交換を含む保守管理も容易に実施することができる。
勿論、上記シール方法に関する構成は一例であり、シール性、生産性等を考慮して適宜のシール方法を採用することができる。
【0016】
本発明のブロー成形装置に係るさらに他の構成は、上記主たる構成において、プリフォームを縦延伸するための延伸ロッドをロッドとする、と云うものである。
【0017】
上記構成は、プリフォームを縦延伸するための延伸ロッドをブローノズルに挿通するように配設したブロー成形装置に係り、この延伸ロッドを、ヘッドスペースを調整するためのロッドとして利用するものである。
【0018】
本発明のうち、容器の製造方法に係る主たる構成は、
上述した本発明のブロー成形装置を使用した合成樹脂製容器の製造方法であって、次のような(1)〜(4)の工程を順次実施するものである。
(1)有底筒状のプリフォームの口筒部を外部に突出させた状態でブロー成形用の金型に装着する。
(2)ロッドの先端部をプリフォーム内に挿入する。
(3)加圧液体を、導入路を介して口筒部からプリフォーム内に供給し、この加圧液体により金型のキャビティの形状に沿って容器を膨張状に賦形する。
(4)容器が賦形された後、加圧液体の供給を停止し、ロッドの先端部を容器内から脱挿入し、液体を充填した状態で成形された容器におけるヘッドスペースを所定の量に制御するとともに、容器が賦形され、加圧液体の供給を停止した後、ロッドを容器内から脱挿入する際、通気孔を開状態としてブローノズルの外部と内部を連通状態と
して、ロッドの脱挿入に起因する容器内の減圧状態を緩和する。
【0019】
本発明の容器の製造方法に係る他の構成は、上記主たる構成において、
プリフォームを縦延伸するための延伸ロッドをロッドとして利用するものであり、上記(3)の工程を、
延伸ロッドでプリフォームを縦方向に延伸すると共に、加圧液体を、導入路を介して口筒部からプリフォーム内に供給し、この加圧液体により金型のキャビティの形状に沿って容器を膨張状に賦形する構成とするものである。
【0020】
ここで、上記製造方法はブロー成形の中の、2軸延伸ブロー成形に相当するものであり、この場合、容器を賦形した後のロッド(延伸ロッド)の挿入位置は賦形した容器の底部に達する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のブロー成形装置は、上記した構成となっており、
容器を賦形後、容器内からロッドの先端部を脱挿入、すなわち引き抜くことにより、その分、導入路に残留する液体を全て、口筒部から周辺外部に散乱させることなく容器内に流入させることができ、ヘッドスペースの量を再現良く調整することができる。
すなわち、全ての液体が容器内に流入し、上部にヘッドスペースが形成された状態でブローノズルを口筒部から脱嵌入することができ、ブローノズルの脱嵌着に伴う液体の周辺外部への散乱の問題を解消することができ、またヘッドスペースの量を再現良く調整することができる。
【0023】
また、同じ容器でも製品によってヘッドスペースの量を変える必要がある場合、さらに異なる形状の容器を成形する場合にも、装置を大幅に変更することなく、ロッドの先端部の形状を変更したり、先端部の挿入量を変更したりすることで容易に対応することができる。
【0024】
さらに、ブローノズルの周壁に通気孔を開閉可能に配設する構成を有するものにあっては、容器が賦形され加圧液体の供給を停止した後、ロッドを容器内から脱挿入する際、通気孔を開状態としてブローノズルの外部と内部を連通状態とすることにより、ロッドの脱挿入に起因する容器内の減圧状態を緩和することができ、減圧による容器の変形を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のブロー成形装置の全体的な構成の一例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1の装置による成形工程のうち、プリフォームを金型に装着した状態を示す断面図である。
【
図3】
図1の装置による成形工程のうち、ブローノズルをプリフォームの口筒部に連通させた状態を示す断面図である。
【
図4】
図1の装置による成形工程のうち、ロッドの先端部をプリフォーム内に挿入した状態を示す断面図である。
【
図5】
図1の装置による成形工程のうち、加圧液体によりプリフォームを膨張状に延伸して容器を賦形した状態を示す断面図である。
【
図6】
図5の状態からロッドを脱挿入した状態を示す断面図である。
【
図7】
図1の装置において、プリフォームの縦延伸に使用する延伸ロッドをロッドとして利用する装置による成形工程のうち、延伸ロッドでプリフォームを縦延伸した状態を示す断面図である。
【
図8】従来のブロー成形装置の一例の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のブロー成形装置の実施形態の全体的な構成の一例を示す概略説明図であり、金型1に装着された状態のプリフォーム31を二点鎖線で、このプリフォーム31から成形される壜体状の容器41を実線で示している。
【0027】
使用するプリフォーム31の形状は全体として有底円筒の試験管状で、上端部に口筒部32を起立設し、この口筒部32の下端部にはネックリング33が配設されており、口筒部32を外部に(
図1中では上方に)突出させた状態で金型1内に装着されている。
【0028】
この装置の主要部は金型1、隔壁部材11、ブローノズル4を有し、付属設備として加圧装置21、加圧液体供給部22、加圧気体供給部23を配置している。
図1と同様な状態を示す
図4も参照しながら主要部についてみると、隔壁部材11は、金型1の上方に突出したプリフォーム31の口筒部32の外周面を、空間Sを介して囲繞するように金型1の上方に配設されている。また隔壁部材11の下端部に周設した支持鍔片12をプリフォーム31のネックリング33に上方から密に当接させて、プリフォーム31の装着姿勢を保持するようにしている。
【0029】
ブローノズル4はシール部材7bにより密に連結される嵌入筒片5と導入筒部6から構成されている。
嵌入筒片5は全体として筒状で、内部に円柱状の中空部を有し、
図4に示されるように外周壁には先端に向かって縮径する周段部5aが周設されており、円筒状の先端部がプリフォーム31の口筒部32に嵌入し、周段部5aと口筒部32の上端面のシール部材(Oリング)7aを介した当接により、ブローノズル4と口筒部32が密に連通状に連結するようにしている。
【0030】
導入筒部6は全体としては、内部が円柱状の中空部を有する部材で、
図1に示されるように所定の高さ位置に周壁を貫通状に横断するように、加圧液体Lの供給路となる貫通流路6aが形成、配設成されており、電磁バルブVaにより加圧液体Lの供給と停止ができるようにしている。
また、この貫通流路6aの下方位置に導入筒部6の外部と内部を連通するための通気孔6bが形成、配設されており電磁バルブVbによりこの連通状態の開閉ができるようにしている。
なお、本実施例では貫通流路6aに電磁バルブVaを、また通気孔6bに電磁バルブVbを配設する構成としているが、勿論、他のタイプのバルブを配設することもできる。
【0031】
上記のように嵌入筒片5と導入筒部6から構成されるブローノズル4中には、後述するように、液面を調整する機能を発揮するための円柱状のロッド8が同軸心状に挿通、配設されている。
このロッド8はサーボモータを使用したサーボ機構(図示省略)により、図中では上下方向に移動可能に、また所定の位置で高精度に停止できるように構成されている。そして、ブローノズル4とロッド8によりブローノズル4内に円筒状の導入路Fiが形成されている。
【0032】
次に、付属設備についてみると、
加圧装置21は、従来からブロー成形では必須の設備であり、加圧ポンプやコンプレッサー等の大型の設備である。
この加圧装置21から、配管P1を介してブロー成形に使用する加圧液体Lを供給する加圧液体供給部22に、また配管P3を介して加圧気体Aを供給する加圧気体供給部23に加圧流体が供給される。
加圧液体供給部22、加圧気体供給部23はプランジャーポンプ状であるが、その動力源は上記した加圧装置21からの加圧流体を利用するものである。
勿論、装置の全体的なレイアウト、制御のし易さ等を考慮してたとえば加圧気体供給部23のための加圧装置を別途配設することもできる。
また、加圧液体供給部22、加圧気体供給部23には、図示したプランジャー等ポンプ状のものの他にも2部屋を有するピストン内蔵のシリンダー等のものを使用することができる。
【0033】
そして、加圧液体供給部22から供給される加圧液体Lは配管P2、電磁バルブVaを介して導入筒部6の貫通流路6aと縦方向に延設される導入路Fiを経てプリフォーム31の内部に供給される。
【0034】
また、
図1に示す装置では加圧気体Aを供給する加圧気体供給部23を配設しているが、加圧液体Lをプリフォーム31に供給した際に、その圧力により口筒部32が拡径変形するような場合には、この加圧気体Aを、配管P4を介して隔壁部材11内に導入し、プリフォーム31の口筒部32の外周面を囲繞する空間Sを加圧することにより、このような拡径変形を効果的に抑制することができる。
【0035】
次に、
図2〜6は
図1に示す装置を使用した本発明の合成樹脂製容器の製造方法の一例についてその成形工程を順次示すものであり、これら
図2〜6を参照しながら本発明の合成樹脂製容器の製造方法、すなわちブロー成形方法について説明する。
ブロー成形は次の(1)〜(5)に記載した工程を順次、実施する。
(1)
図2に示すように口筒部32を除く部分を延伸ブロー成形に適した温度に加熱したプリフォーム31を、口筒部32を上方に突出させた状態でブロー成形用の金型1に装着し、型締めする。
(2)
図3に示すように、組付け固定した隔壁部材11とブローノズル4をロッド8と共に口筒部32の上方から下降させ嵌合筒片5の先端部を口筒部32に嵌入する。
【0036】
次に、
(3)
図4に示すようにロッド8の先端部を所定の長さD、プリフォーム31内に挿入する。(
図4の例では、プリフォーム31の底部近傍にまで挿入した状態としている。)
(4)
図1の加圧液体供給部22から、
図5に示すように導入筒部6の貫通流路6aを介して、導入路Fiを経てプリフォーム31内に加圧液体Lを供給し、プリフォーム31を膨張状に延伸し、金型1のキャビティ2に沿って容器41を賦形する。
(5)上記のように容器41が賦形され後に、加圧液体Lの供給を、電磁バルブVaを閉状態にして停止し、
図6に示されるように、ロッド8の先端部を容器41内から脱挿入し、
図3の位置まで引き上げる。
そして、組付け固定した隔壁部材11とブローノズル4を
図2に示される位置まで、口筒部32の上方に上昇させ、さらに金型1を型開きして液体Lが充填した容器41を取り出し、口筒部32をキャップ(図示省略)でシールし製品とする。
【0037】
ここで、
図5から
図6の状態に至る(5)の工程では、ロッド8先端部の脱挿入に伴って、導入路Fiに残存する液体Lは全て容器41内に流入し、さらに容器41内で液面Lsが下降し、
図6に示されるように完全に脱挿入した状態で、予め設定した所定のヘッドスペースHsに調整することができる。
【0038】
また、(5)の工程におけるロッド8の先端部の容器41内から脱挿入動作の際に、電磁バルブVbを開状態として、ブローノズル4の外部と内部に形成される導入路Fiを連通状態として、ロッド8の脱挿入に起因する容器41内の減圧状態を緩和することができ、減圧による容器41の変形を効果的に防ぐことができる。
さらに電磁バルブVbを介して外部から内部に加圧した気体を供給することもできる。
【0039】
次に、
図7は本発明のブロー成形装置および製造方法のバリエーションの他の例を説明するためのもので、プリフォーム31を縦延伸するための延伸ロッド8aを備えた2軸延伸ブロー成形装置による容器41の製造方法の中、縦延伸工程の概略説明図であり、この例は延伸ロッド8aをヘッドスペースHsの調整機能を発揮するロッド8として利用するものである。
【0040】
そして、前述した(1)〜(5)の工程の中、(3)の工程において、
図4に示すように延伸ロッド8aの先端部をプリッフォーム31内に挿入し、さらに
図7に示すように、延伸ロッド8aによりプリフォーム31を縦延伸し、次に、この縦延伸から少し遅らせて(4)の工程で縦延伸したプリフォーム31内に加圧液体Lを供給し容器41を賦形する。
なお、加圧液体Lにより膨張状に延伸する(4)の工程は、延伸ロッド8aによる縦延伸工程と略同時に実施することもできる。
【0041】
また、上記の例のような場合には延伸ロッド8a(ロッド8)の挿入位置は
図7に見られるように容器の底部にまで達し、挿入する長さが長くなるが、その分、延伸ロッド8aの径を細めに設定等、調整することにより、予め設定した所定のヘッドスペースHsにすることができる。
【0042】
なお、延伸ロッド8aをヘッドスペースHsの調整機能を発揮するロッド8として利用する場合、上記のように延伸ロッド8aをプリフォーム31の底部まで挿入した状態で、加圧液体Lを供給して容器41を賦形し、加圧液体Lの供給を電磁バルブVaを閉状態にして停止した後に、延伸ロッド8aの先端部を容器41内から脱挿入する方法の他にも、
容器41の賦形後に、延伸ロッド8aを、その先端が容器41内の所定高さ位置になるまで引き上げ、この延伸ロッド8aを引き上げた分さらに加圧液体Lを供給した後に加圧液体Lの供給を電磁バルブVaを閉状態にして停止し、その後、延伸ロッド8aの先端部を容器41内から完全に脱挿入する方法も採用することができ、このような方法によれば、延伸ロッド8aの径を特に細めに設定する必要はない。
【0043】
以上、本発明のブロー成形装置およびこの装置を使用した容器の製造方法の実施形態の例について説明したが、勿論、本発明は上記した実施形態の例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明の、加圧液体を使用するブロー成形装置は、容器の賦形と同時に飲料、化粧品、薬品等の最終的に製品に充填される液体のヘッドスペースを所定の量に容易に、再現良く、また確実に調整することができるものであり、ブロー成形の分野での幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0045】
1 ;金型
2 ;キャビティ
4 ;ブローノズル
5 ;嵌入筒片
5a;周段部
6 ;導入筒部
6a;貫通流路
6b;通気孔
7a、7b;シール部材
8 ;ロッド
8a;延伸ロッド
11;隔壁部材
12;支持鍔片
21;加圧装置
22;加圧液体供給部
23;加圧気体供給部
A ;加圧気体
Fi;導入路
Hs;ヘッドスペース
L ;(加圧)液体
Ls:液面
P1〜P4;配管
S ;空間
31;プリフォーム
32;口筒部
33;ネックリング
41;容器
101;金型
103;ネック支持鍔部
104;組付け凹部
105;ブローノズル
110;ガイド筒部
111;挿通孔
116;ロッド