特許第6184670号(P6184670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184670吸収体、および、これを用いた吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184670
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】吸収体、および、これを用いた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20170814BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20170814BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61F13/534 100
   A61F13/535 200
   A61F13/537 200
   A61F13/537 330
   A61F13/537 400
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-192186(P2012-192186)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46021(P2014-46021A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(72)【発明者】
【氏名】太田 義久
(72)【発明者】
【氏名】西田 素子
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−229071(JP,A)
【文献】 特開2004−001355(JP,A)
【文献】 特開2011−019896(JP,A)
【文献】 特開平02−060645(JP,A)
【文献】 特開2006−057075(JP,A)
【文献】 特開2008−237430(JP,A)
【文献】 特開2012−024206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二以上の層を有する吸収体であって、
吸水性樹脂粉末が配置された吸水領域と、厚み方向に貫通する開口領域とを備える吸水層と、
前記吸水層の下層として、荷重下通液速度が15秒以下である粒状の拡散性向上材が配置された拡散領域を備える層を有し、
前記下層には、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に、前記拡散領域が設けられており、
前記粒状の拡散性向上材の粒子径が、0.8mm〜10mmであることを特徴とする吸収体。
【請求項2】
前記下層の拡散領域の平面視形状が、円形状、楕円形状、多角形状、角丸多角形状または、スリット状に形成されている請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記吸水層と前記拡散領域を備える層の平面視形状が略同一である請求項1または2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記下層が、拡散領域のみを有する拡散層である請求項1に記載の吸収体。
【請求項5】
前記拡散層が、吸水層の開口領域と吸水領域の下方の全域にわたって設けられている請求項4に記載の吸収体。
【請求項6】
前記開口領域が、スリット状に形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体。
【請求項7】
前記吸水層におけるスリット状の開口領域が、吸収層の長手方向全幅にわたって連続に形成されている請求項6に記載の吸収体。
【請求項8】
前記吸水層が、下記要件を満足する吸水性樹脂粉末を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収体。
吸収倍率:50g/g以上
保水量:25g/g以上
【請求項9】
前記下層の下側に、さらに開口領域を備えない吸水層を備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収体。
【請求項10】
前記下層の下側に、さらに、吸水性樹脂粉末が配置された吸水領域と、厚み方向に貫通する開口領域とを備える吸水層と、前記吸水層の下層として、荷重下通液速度が15秒以下である拡散性向上材が配置された拡散領域を備える層を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収体。
【請求項11】
前記粒状の拡散性向上材は、ポリプロピレン粒子、ポリスチレン粒子、または、ABS(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂粒子である請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸収体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸収体を有する吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品に使用される吸収体に関し、特に吸収体の吸収性能の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、身体から排泄される尿や経血などの体液を吸収、保持する吸収体を有している。前記吸収体は、一般に吸水性樹脂粉末を含有しており、体液等は吸収体内部において吸水性樹脂粉末に吸収されて保持される。このような吸水性物品において、吸収体への体液等の吸収速度を向上させたものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配された吸収性コアとを有する吸収性物品であって、前記トップシートと前記吸収性コアとの間に、中空繊維を有する不織布からなるセカンドシートが配されていることを特徴とする吸収性物品が提案されている。
【0004】
特許文献2には、(a)第1の表面、前記第1の表面に一般的に平行で前記第1の表面から離間した第2の表面、および前記第1の表面と前記第2の表面を互いに流体連通状態に置くように前記第1の表面と前記第2の表面との間に伸びる複数の流体通過経路を有する開孔されたポリマーフィルムウエブであって、前記ウエブは少なくとも1層のバルク変性層を備えるポリマーフィルムで形成され、前記バルク変性層はポリマー材料の中に疎水性添加剤の実質的に均質の安定化された分散物を含むウエブを具備するトップシート、(b)前記トップシートに周囲で結合するバックシート、および(c)前記トップシートの第2の表面と前記バックシートとの間に位置する吸収性コアを具備する吸収製品が提案されている。
【0005】
特許文献3には、吸収性物品において、トップシートと、バックシートと、トップシートとバックシートとの間に位置する中間層とが設けられており、トップシート、バックシート又は中間層のうちの少なくとも1つが、少なくとも350cc/mの雄側空隙容積を備える三次元の真空成形されたフィルムを含み、吸収性物品が、Third Insult Testにおける少なくとも8゜Fの温度の最初の1分の減少を有することを特徴とする吸収性物品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−055959号公報
【特許文献2】特表2002−528302号公報
【特許文献3】特表2006−524112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、吸水性物品の体液等の吸収速度を向上させるために使用されている、不織布、ポリマーフィルムウエブ、空隙容積を備える三次元の真空成形されたフィルム(特許文献1〜3参照)は、いずれも荷重下通液性に劣るものであった。そのため、吸水性物品に荷重が負荷されている状態では、体液等の吸収速度が不十分であった。また、特に、特許文献2、3で使用されているような、穴を有するフィルムでは、フィルム内の空隙に液残りしやすく、カブレの原因になるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、体液等の吸収速度および体液等を吸収した後のドライ性に優れた吸収体、ならびに、このような吸収体を用いた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸収体は、少なくとも二以上の層を有する吸収体であって、吸水性樹脂粉末が配置された吸水領域と、厚み方向に貫通する開口領域とを備える吸水層と、前記吸水層の下層として、荷重下通液速度が15秒以下である拡散性向上材が配置された拡散領域を備える層を有し、前記下層には、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に、前記拡散領域が設けられていることを特徴とする。
【0010】
吸水層が開口領域を有し、かつ、この開口領域の下の少なくとも一部に拡散領域を有することで、体液等の一部は前記開口領域を通って拡散領域へと取り込まれる。拡散領域に取り込まれた体液等は、拡散領域において平面方向へと拡散し、吸水層の下面(外面)側から吸収される。つまり、体液等は、吸水層の上面および下面の両方から吸収されることとなり、吸収面積が増大する。そのため、本発明の吸収体は、吸収速度が早くなる。また、吸水層の下面側から吸収された体液等は、吸水層内を通り上面(肌面)側へ液戻りすることがない。よって、本発明の吸収体は、体液等を吸収した後のドライ性にも優れる。
【0011】
前記下層の拡散領域の平面視形状は、円形状、楕円形状、多角形状、角丸多角形状または、スリット状が好適である。また、前記下層が、拡散領域のみを有する拡散層であることも好ましい。前記開口領域は、スリット状に形成されていることが好ましい。前記吸水層は、下記要件を満足する吸水性樹脂粉末を有することが好ましい。
吸収倍率:50g/g以上
保水量:25g/g以上
【0012】
本発明には、上記吸収体を有する吸収性物品も含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸収体および吸収性物品は、体液等の吸収速度および体液等を吸収した後のドライ性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好ましい実施形態1の吸収体の模式的斜視図。
図2図1におけるX−X線断面図。
図3】本発明の好ましい実施形態2の吸収体の模式的斜視図。
図4図3におけるY−Y線断面図。
図5】本発明の好ましい実施形態3の吸収体の模式的斜視図。
図6図5におけるZ−Z線断面図。
図7】吸水層における開口領域の形成態様を示す平面図。
図8】本発明の好ましい実施形態の吸収性物品の模式的平面図。
図9図8におけるV−V線断面図。
図10】拡散性向上材の荷重下通液速度の測定方法を説明する模式図。
図11】実施例における吸収体No.1の模式的断面図。
図12】実施例における吸収体No.2の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の吸収体は、少なくとも二以上の層を有し、吸水性樹脂粉末が配置された吸水領域と、厚み方向に貫通する開口領域とを備える吸水層と、前記吸水層の下層として、荷重下通液速度が15秒以下である拡散性向上材が配置された拡散領域を備える層を有し、前記下層には、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に、前記拡散領域が設けられていることを特徴とする。
【0016】
吸水層が開口領域を有し、かつ、この開口領域の下の少なくとも一部に拡散領域を有することで、体液等の一部は前記開口領域を通って拡散領域へと取り込まれる。拡散領域に取り込まれた体液等は、拡散領域において平面方向へと拡散し、吸水層の下面(外面)側から吸収される。つまり、体液等は、吸水層の上面および下面の両方から吸収されることとなり、吸収面積が増大する。そのため、本発明の吸収体は、吸収速度が早くなる。また、吸水層の下面側から吸収された体液等は、吸水層内を通り上面(肌面)側へ液戻りすることがない。そのため、本発明の吸収体は、体液等を吸収した後のドライ性が非常に優れる。よって、本発明の吸収体は、吸収性物品における使用者の肌面側のドライ性を向上できるため、敏感肌用の吸収性物品に好適である。
【0017】
吸水性樹脂粉末
まず、本発明で使用する吸水性樹脂粉末について説明する。前記吸水性樹脂粉末は、少なくとも吸水層に配置されており、拡散領域を備える層に含まれていてもよい。本発明で使用する吸水性樹脂粉末は、アクリル酸を主構成成分とする(A)架橋重合体であって、そのカルボキシ基の少なくとも一部が中和されているものが好ましい。架橋重合体を構成するアクリル酸成分の含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。アクリル酸成分の含有率が前記範囲内であれば、得られる吸水性樹脂粉末が、所望の吸収性能を発現しやすくなる。
【0018】
(A)架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部を中和する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンなどを挙げることができる。これらの中でも、架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部が、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。なお、架橋重合体のカルボキシ基の中和は、重合して得られる架橋重合体のカルボキシ基を中和するようにしてもよいし、予め、中和された単量体を用いて架橋重合体を形成するようにしてもよい。
【0019】
架橋重合体のカルボキシ基の中和度は、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましい。中和度が低すぎると、得られる吸水性樹脂粉末の吸収性能が低下する場合があるからである。また、中和度の上限は、特に限定されず、カルボキシ基のすべてが中和されていてもよい。なお、中和度は、下記式で求められる。
中和度(モル%)=100×「架橋重合体の中和されているカルボキシ基のモル数」/「架橋重合体が有するカルボキシ基の総モル数(中和、未中和を含む)」
【0020】
前記架橋重合体は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または加水分解により(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する(a2)加水分解性モノマーと、(b)内部架橋剤とを含有する不飽和単量体組成物を重合して得られるものが好ましい。
【0021】
(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、少なくとも1個の水溶性置換基とエチレン性不飽和基とを有するモノマー等が使用できる。水溶性モノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つモノマーを意味する。また、(a2)加水分解性モノマーとは、50℃の水、必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により、加水分解されて、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する。(a2)加水分解性モノマーの加水分解は、架橋重合体の重合中、重合後、および、これらの両方のいずれでもよいが、得られる吸水性樹脂粉末の分子量の観点等から重合後が好ましい。
【0022】
水溶性置換基としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、スルホオキシ基、ホスホノ基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、または、これらの塩、並びに、アンモニウム塩が挙げられ、カルボキシ基の塩(カルボキシレート)、スルホ基の塩(スルホネート)、アンモニウム塩が好ましい。また、塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。アンモニウム塩は、第1級〜第3級アミンの塩または第4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。これらの塩のうち、吸収特性の観点から、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
【0023】
前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数3〜30の不飽和カルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、クロトン酸および桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸および/またはその塩;マレイン酸、マレイン酸塩、フマル酸、シトラコン酸およびイタコン酸などの不飽和ジカルボン酸および/またはその塩;マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステルおよび/またはその塩などが挙げられる。なお、本発明の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。
【0024】
スルホ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数2〜30のスルホン酸および/またはその塩が好ましい。スルホ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、および、α−メチルスチレンスルホン酸などの脂肪族又は芳香族ビニルスルホン酸;(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、および、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリロイル含有アルキルスルホン酸;及びアルキル(メタ)アリルスルホコハク酸エステルなどが挙げられる。
【0025】
スルホオキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの硫酸エステル;ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレートの硫酸エステルなどが挙げられる。
【0026】
ホスホノ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸モノエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸ジエステル、および、(メタ)アクリル酸アルキルホスホン酸などが挙げられる。
【0027】
水酸基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アリルアルコール、および、(メタ)プロペニルアルコールなどの炭素数3〜15のモノエチレン性不飽和アルコール;炭素数2〜20のアルキレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリアルキレン(炭素数2〜4)グリコール(重量平均分子量100〜2000)などの2〜6価のポリオールのモノエチレン性不飽和カルボン酸エステル又はモノエチレン性不飽和エーテル等が含まれる。これらの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ−オキシエチレン−オキシプロピレンモノ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
カルバモイル基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド;N−メチルアクリルアミドなどのN−アルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−又はi−プロピルアクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(アルキルの炭素数1〜8)アクリルアミド;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド;N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アミドからなる基を有する不飽和モノマーとしては、これらの他に、炭素数5〜10のビニルラクタム(N−ビニルピロリドン等)等も使用できる。
【0029】
アミノ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、モノエチレン性不飽和モノ−又はジ−カルボン酸のアミノ基含有エステルおよびモノエチレン性不飽和モノ−又はジ−カルボン酸のアミノ基含有アミドなどが挙げられる。モノエチレン性不飽和モノ−又はジ−カルボン酸のアミノ基含有エステルとしては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジ(ヒドロキシアルキル)アミノアルキルエステル及びモルホリノアルキルエステル等が使用でき、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、 ジメチルアミノエチルフマレートおよびジメチルアミノエチルマレート等が挙げられる。モノエチレン性不飽和モノ−又はジ−カルボン酸のアミノ基含有アミドとしては、モノアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、これらの他に、4−ビニルピリジンおよび2−ビニルピリジンなどのビニルピリジンも使用できる。
【0030】
加水分解により(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する(a2)加水分解性モノマーとしては、特に限定されないが、加水分解により水溶性置換基となる加水分解性置換基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和モノマーが好ましい。加水分解性置換基としては、酸無水物を含む基、エステル結合を含む基およびシアノ基などが挙げられる。
【0031】
酸無水物を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数4〜20の不飽和ジカルボン酸無水物等が用いられ、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。エステル結合を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルなどのモノエチレン性不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル;および、酢酸ビニル、酢酸(メタ)アリルなどのモノエチレン性不飽和アルコールのエステルが挙げられる。シアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、および、5−ヘキセンニトリルなどの炭素数3〜6のビニル基含有のニトリル化合物が挙げられる。
【0032】
(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、および、特開2005−975759号公報に記載のものを用いることができる。(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーはそれぞれ、単独で、または、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0033】
不飽和単量体組成物は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーの他に、これらと共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーを用いることができる。共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーとしては、疎水性ビニルモノマー等が使用できるが、これらに限定されるわけではない。(a3)その他のビニルモノマーとしては下記の(i)〜(iii)のビニルモノマー等が用いられる。
【0034】
(i)炭素数8〜30の芳香族エチレン性モノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2〜20の脂肪族エチレンモノマー;
エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセンおよびオクタデセンなどのアルケン;並びに、ブタジエンおよびイソプレンなどのアルカジエン。
(iii)炭素数5〜15の脂環式エチレンモノマー;
ピネン、リモネン及びインデンなどのモノエチレン性不飽和モノマー;並びに、シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネンなどのポリエチレン性ビニル重合性モノマー。
【0035】
(a3)その他のビニルモノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、および、特開2005−975759号公報に記載のものを用いることができる。
【0036】
本発明では、アクリル酸を主構成成分とする架橋重合体を得るという観点から、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または加水分解により(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する(a2)加水分解性モノマーとして、(a1)アクリル酸またはアクリル酸塩、あるいは、加水分解によりアクリル酸またはアクリル酸塩を生成する(a2)加水分解性モノマーを使用することが好ましい。(A)架橋重合体を形成する不飽和単量体組成物中の(a1)アクリル酸またはアクリル酸塩、あるいは、加水分解によりアクリル酸またはアクリル酸塩を生成する(a2)加水分解性モノマーの含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
【0037】
(b)内部架橋剤としては、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤、(b2)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、且つ、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する内部架橋剤、および、(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤などを挙げることができる。
【0038】
(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤としては、炭素数8〜12のビス(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アクリレート、炭素数2〜10のポリアリルアミン及び炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられる。これらの具体例としては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(重合度2〜5)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びジグリセリンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0039】
(b2)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、且つ、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する内部架橋剤としては、炭素数6〜8のエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、炭素数4〜8の水酸基を有するエチレン性不飽和化合物及び炭素数4〜8のイソシアナト基を有するエチレン性不飽和化合物などが挙げられる。これらの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びイソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤としては、多価アルコール、多価グリシジル、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネートなどを挙げることができる。多価グリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。多価アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミンなどが挙げられる。多価アジリジン化合物としては、日本触媒化学工業社製のケミタイト(登録商標)PZ−33{2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス(3−(1−アジリジニル)プロピネート)}、ケミタイトHZ−22{1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア}およびケミタイトDZ−22{ジフェニルメタン−ビス−4、4’−N、N’−ジエチレンウレア}などが挙げられる。多価イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの内部架橋剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0041】
(b)内部架橋剤としては、吸収性能(特に吸収量及び吸収速度等)等の観点から、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤が好ましく、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルがより好ましく、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタンまたはペンタエリスリトールトリアリルエーテルがさらに好ましく、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが最も好ましい。
【0042】
(b)内部架橋剤としては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、および、特開2005−975759号公報に記載のものを用いることができる。
【0043】
(A)架橋重合体の重合形態としては、従来から知られている方法等が使用でき、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法が適応できる。また、重合時の重合液の形状として、薄膜状及び噴霧状等であってもよい。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法及び等温重合法などが適用できる。重合方法としては、溶液重合法が好ましく、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、水溶液重合法がより好ましい。
【0044】
重合によって得られる含水ゲル{架橋重合体と水とからなる}は、必要に応じて細断することができる。細断後のゲルの大きさ(最長径)は、50μm〜10cmが好ましく、100μm〜2cmがより好ましく、1mm〜1cmがさらに好ましい。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性がさらに良好となる。
【0045】
細断は、公知の方法で行うことができ、例えば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機およびロール式粉砕機などの従来の細断装置を使用して細断できる。
【0046】
重合に溶媒(有機溶媒、水等)を使用する場合、重合後に溶媒を留去することが好ましい。溶媒に水を含む場合、留去後の水分(質量%)は、架橋重合体の質量(100質量%)に対して、0質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜10質量%、さらに好ましくは2質量%〜9質量%、最も好ましくは3質量%〜8質量%である。水分(質量%)が、前記範囲内であると、吸収性能及び乾燥後の吸水性樹脂粉末の壊れ性がさらに良好となる。
【0047】
なお、有機溶媒の含有率及び水分は、赤外水分測定器{(株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W}により加熱したときの加熱前後の測定試料の質量減量から求められる。
【0048】
溶媒(水を含む。)を留去する方法としては、80℃〜230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100℃〜230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等が適用できる。
【0049】
(A)架橋重合体は、乾燥後に粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定されず、例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機などの通常の粉砕装置が使用できる。粉砕された(A)架橋重合体は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。
【0050】
必要によりふるい分けした場合の(A)架橋重合体の重量平均粒子径(μm)は、100μm〜800μmが好ましく、より好ましくは200μm〜700μm、さらに好ましくは250μm〜600μm、特に好ましくは300μm〜500μm、最も好ましくは350μm〜450μmである。(A)架橋重合体の重量平均粒子径(μm)が、前記範囲内であれば、吸収性能がさらに良好となる。
【0051】
なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、並びに受け皿の順等に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の質量を秤量し、その合計を100質量%として各ふるい上の粒子の質量分率を求め、この値を対数確率紙{横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が質量分率}にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、質量分率が50質量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0052】
(A)架橋重合体は、さらに(B)表面改質剤で処理されてもよい。(B)表面改質剤としては、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物などの多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのポリカチオン化合物;無機微粒子;(B1)炭化水素基を含有する表面改質剤;(B2)フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する表面改質剤;及び、(B3)ポリシロキサン構造をもつ表面改質剤などが挙げられる。
【0053】
前記無機微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、および、酸化ジルコニウムなどの酸化物、炭化珪素および炭化アルミニウムなどの炭化物、窒化チタンのような窒化物、および、これらの複合体(例えば、ゼオライトおよびタルクなど)などが挙げられる。これらのうち、酸化物が好ましく、さらに好ましくは酸化ケイ素である。無機微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜5000nmが好ましく、より好ましくは30nm〜1000nm、さらに好ましくは50nm〜750nm、最も好ましくは90nm〜500nmである。なお、体積平均粒子経は、動的光散乱法により、溶媒中で測定される。具体的には、日機装株式会社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(光源:He-Neレーザー)を用いて、溶媒シクロヘキサン中で、25℃の温度で測定される。
【0054】
(B1)炭化水素基を含有する表面改質剤としては、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂誘導体、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂誘導体、ワックス、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸およびその塩、長鎖脂肪族アルコール、並びにこれらの2種以上の混合物等が含まれる。
【0055】
(B2)フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する表面改質剤としては、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルケン、パーフルオロアリール、パーフルオロアルキルエーテル、パーフルオロアルキルカルボン酸またはその塩、パーフルオロアルキルアルコール、および、これらの2種以上の混合物等が含まれる。
【0056】
(B3)ポリシロキサン構造をもつ表面改質剤としては、ポリジメチルシロキサン;ポリオキシエチレン変性ポリシロキサン、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)変性ポリシロキサンなどのポリエーテル変性ポリシロキサン;カルボキシ変性ポリシロキサン;エポキシ変性ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン;アルコキシ変性ポリシロキサン、および、これらの混合物などが挙げられる。
【0057】
(B)表面改質剤としては、吸収特性の観点から、(B3)ポリシロキサン構造をもつ表面改質剤、および、無機微粒子が好ましく、アミノ変性ポリシロキサン、カルボキシ変性ポリシロキサン、および、シリカがより好ましい。
【0058】
(A)架橋重合体を(B)表面改質剤で処理する方法としては、(B)表面改質剤が(A)架橋重合体の表面に存在するように処理する方法であれば、特に限定されない。しかし、(B)表面改質剤は、(A)架橋重合体の含水ゲル又は(A)架橋重合体を重合する前の重合液ではなく、(A)架橋重合体の乾燥体と混合されることが表面の(B)表面改質剤の量をコントロールする観点から好ましい。なお、混合は、均一に行うことが好ましい。
【0059】
吸水性樹脂粉末の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0060】
架橋重合体は、必要に応じてさらに表面架橋を行うことができる。表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、(b)内部架橋剤と同じものが使用できる。表面架橋剤としては、吸水性樹脂粉末の吸収性能等の観点から、(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤が好ましく、より好ましくは多価グリシジル、さらに好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリセリンジグリシジルエーテル、最も好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0061】
表面架橋する場合、表面架橋剤の含有率(質量%)は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または(a2)加水分解性モノマー、(b)内部架橋剤、並びに必要により使用する(a3)その他のビニルモノマーの合計質量(100質量%)に対して、0.001質量%〜7質量%が好ましく、より好ましくは0.002質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.003質量%〜4質量%である。すなわち、この場合、表面架橋剤の含有率(質量%)の上限は、(a1)及び/又は(a2)、(b)並びに(a3)の合計質量に基づいて、7質量%が好ましく、より好ましくは5質量%、さらに好ましくは4質量%であり、同様に、下限は0.001質量%が好ましく、より好ましくは0.002質量%、さらに好ましくは0.003質量%である。表面架橋剤の含有率が、前記範囲内であれば、さらに吸収性能が良好となる。表面架橋は表面架橋剤を含む水溶液を吸水性樹脂粉末に噴霧又は含浸させた後、加熱処理(100〜200℃)する方法等により達成できる。
【0062】
前記吸水性樹脂粉末には、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末及び有機質繊維状物などの添加剤を含むことができる。添加剤としては、特開2003−225565号公報、特開2006−131767号公報等に例示されているものを挙げることができる。これらの添加剤を含有させる場合、添加剤の含有率(質量%)は、(A)架橋重合体(100質量%)に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.05質量%〜1質量%、最も好ましくは0.1質量%〜0.5質量%である。
【0063】
前記吸水性樹脂粉末の吸収倍率は、50g/g以上が好ましく、より好ましくは53g/g以上、さらに好ましくは55g/g以上であり、70g/g以下が好ましく、より好ましくは65g/g以下、さらに好ましくは60g/g以下である。前記吸収倍率が50g/g以上であると、少量の吸水性樹脂粉末によって吸収容量を所定のレベルに保つことができ、薄型の吸収体を製造するのが容易になる。前記吸収倍率は、液漏れを防止する観点から、大きければ大きいほど好ましいが、70g/g以下であると吸水性樹脂粉末の尿に対する安定性が向上する。
【0064】
前記吸水性樹脂粉末の保水量は、25g/g以上が好ましく、より好ましくは27g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは40g/g以上であり、60g/g以下が好ましく、より好ましくは57g/g以下、さらに好ましくは55g/g以下である。前記保水量が25g/g以上であると、少量の吸水性樹脂粉末によって体液の保持容量を所定のレベルに保つことができ、薄型の吸収体を作製することが容易になる。前記保水量は、液漏れを防止する観点から大きければ大きいほど好ましいが、60g/g以下であると、吸水性樹脂粉末の尿に対する安定性が向上する。
【0065】
拡散性向上材
次に、本発明で使用する拡散性向上材について説明する。拡散性向上材とは、吸収体中での体液等の拡散性を向上させる材料であり、特に荷重下における拡散性を向上させるものである。前記拡散性向上材は、荷重下通液速度が15秒以下であり、好ましくは12秒以下、より好ましくは10秒以下、特に好ましくは8秒以下である。拡散性向上材の荷重下通液速度が15秒以下であれば、排尿後の液だまりを抑制できる。前記荷重下通液速度の下限は特に限定されない。なお、荷重下通液速度の測定方法は後述する。
【0066】
前記拡散性向上材の形態は特に限定されず、例えば、粒状、シート状などが挙げられる。
粒状の拡散性向上材としては、例えば、ポリプロピレン粒子、ポリスチレン粒子、ABS(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂粒子などの樹脂粒子が挙げられる。なお、これらの樹脂粒子は、実質的に吸水性を有さない。
【0067】
粒状の拡散性向上材の粒子径は、0.05mm以上が好ましく、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.8mm以上であり、10mm以下が好ましく、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。粒子径が上記範囲内であれば、拡散性が良好となり、かつ、装着時の違和感が低減される。
【0068】
シート状の拡散性向上材としては、空隙を有する三次元構造体が挙げられる。このような三次元構造体としては、例えば、乾燥へちまなどの天然品;樹脂繊維の三次元絡合体(例えば、東洋紡社製のブレスエアー(登録商標));樹脂繊維の三次元立体編物(例えば、旭化成せんい社製のフュージョン(登録商標))などが挙げられる。なお、従来、吸収性物品に使用されている不織布等は、繊維が細いため、荷重が負荷されると空隙が潰されてしまう。そのため、荷重下通液速度は15秒を大きく上回るものであり、本発明で使用する拡散性向上材に該当しない。
【0069】
吸収体の構成
本発明の吸収体の構成としては、少なくとも二以上の層を有し、吸水性樹脂粉末が配置された吸水領域と、厚み方向に貫通する開口領域とを備える吸水層と、前記吸水層の下層として、荷重下通液速度が15秒以下である拡散性向上材が配置された拡散領域を備える層を有し、前記下層には、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に、前記拡散領域が設けられている。
【0070】
前記吸水層は、吸水領域と開口領域を有する。前記吸水領域は、吸水性樹脂粉末、吸水性繊維などの吸水性材料により構成される。前記吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維、セルロース繊維、レーヨン、アセテート繊維が挙げられる。前記吸水領域は、吸水性樹脂粉末に加えて、繊維基材を含有してもよい。前記繊維基材としては、熱融着繊維などを挙げることができる。熱融着性繊維は、保形性を高めるために使用される。熱融着繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維や複合繊維などが用いられる。
【0071】
前記開口領域は、吸水層において吸水性樹脂粉末が配置されていない部分である。開口領域は、吸水層の厚み方向に貫通するものであれば、開口領域の大きさ、形状は特に限定されない。前記開口領域の平面視形状としては、例えば、円形状、楕円形状、多角形状(例えば、矩形状、三角形状)、角丸多角形状(多角形の頂点が丸められた形状)、スリット状(例えば、直線スリット、波型スリット)などが挙げられる。また、開口領域の数は、特に限定されず、1つでもよいし、複数(2つ以上)形成してもよい。
【0072】
開口領域を1つのみ形成する場合には、吸収体の幅方向中央線を跨ぐように開口領域を形成することが好ましい。また、開口領域の平面視形状が楕円形状、長方形状である場合、これらの長軸方向、長辺方向を吸水層の長手方向と略平行とすることが好ましい。開口領域がスリット状である場合、スリットの長手方向を吸水層の長手方向と略平行とすることが好ましい。
【0073】
開口領域を複数形成する場合、その配置は特に限定されない。平面視形状が、円形状、楕円形状、多角形状(例えば、矩形状)、角丸多角形状の開口領域の配置は、例えば、千鳥状、格子状などが挙げられる。スリット状の開口領域の配置は、例えば、それぞれを並行に配置する態様、交差するように配置する態様が挙げられる。
【0074】
前記吸水層において、前記開口領域の吸水層表面に占める面積割合は、5%以上が好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは40%以上であり、70%以下が好ましく、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。前記面積割合が5%以上であれば、体液等を拡散領域へと取り込みやすくなり、拡散性がより向上し、70%以下であれば、相対的に吸水領域の面積割合が大きくなり、吸水量が大きくなる。
【0075】
前記吸水層は、ティッシュペーパーなどの紙シートまたは液透過性不織布シートに吸水性材料等を固定することで形成してもよいし、あるいは吸水性材料等をティッシュペーパーなどの紙シートまたは液透過性不織布シートで包み、所望とする形状に成形してもよい。なお、紙シート、液透過性不織布シートを用いる場合、これらのシートが前記開口領域の上側および/または下側に存在してもよいし、これらのシートの開口領域に当たる部分を切り抜いていてもよい。
【0076】
前記荷重下通液速度が15秒以下である拡散性向上材が配置された拡散領域を備える層としては、例えば、拡散領域のみを有する拡散層;拡散領域と吸水領域とを有する拡散吸水層;が挙げられる。
【0077】
前記拡散層は、主に、体液等を拡散する機能を有する。前記拡散層をシート状の拡散性向上材で形成する場合、その厚さは0.5mm以上が好ましく、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上であり、15mm以下が好ましく、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは7mm以下である。シート状の拡散性向上材から形成される拡散層の厚さが上記範囲内であれば、風合いを損ねず拡散性を向上させることができる。前記拡散層を粒子状の拡散性向上材で形成する場合、その厚さは0.05mm以上が好ましく、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上であり、10mm以下が好ましく、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。粒子状の拡散性向上材から形成される拡散層の厚さが上記範囲内であれば、風合いを損ねず拡散性を向上させることができる。
【0078】
前記拡散層の平面視形状は、開口領域を有する吸水層の平面視形状と略同一でもよいし、吸水層の平面視形状よりも小さくてもよい。拡散層は、吸水層の開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に設けられていればよいが、開口領域の下方の全域に設けられていることが好ましい。拡散層は、前記開口領域に隣接する吸水領域の下にまで、延設されていることが好ましい。
【0079】
前記拡散層は、この拡散層の上方の直近に配置される開口領域を有する吸水層の平面視形状に対する面積割合が、5%以上が好ましく、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。前記拡散層の面積割合が5%以上であれば、拡散性がより向上し、体液等の吸収速度が一層早くなる。前記拡散層の面積割合の上限は特に限定されないが、100%である。
【0080】
前記拡散吸水層は、拡散領域によって体液等を層の厚み方向および平面方向に拡散させ、かつ、吸水領域にて体液を吸収する機能を有する。前記拡散吸水層において、拡散領域の大きさ、形状は特に限定されない。前記拡散吸水層表面における拡散領域の平面視形状としては、例えば、円形状、楕円形状、多角形状(例えば、矩形状、三角形状)、角丸多角形状(多角形の頂点が丸められた形状)、スリット状(例えば、直線スリット、波型スリット)などが挙げられる。また、拡散領域の数は、特に限定されず、1つでもよいし、複数(2つ以上)形成してもよい。
【0081】
前記拡散領域および吸水領域は、ティッシュペーパーなどの紙シートまたは液透過性不織布シートに拡散性向上材、吸水性材料等を固定することで形成してもよいし、あるいは拡散性向上材、吸水性材料等をティッシュペーパーなどの紙シートまたは液透過性不織布シートで包み、所望とする形状に成形してもよい。
【0082】
本発明の吸収体では、前記下層には、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に、前記拡散領域が設けられている。すなわち、吸収体を肌面(上面)側から平面視したとき、開口領域の下側(外面側)には、少なくとも一部に拡散領域が設けられている。前記下層において、前記開口領域の下に位置する部分のすべてに、拡散領域が設けられていることも好ましい。また、開口領域の平面視形状と、その下に設けられる拡散領域の平面視形状とは、略同一であってもよいが、拡散領域の平面視形状の方が大きいことが好ましい。すなわち、開口領域の下に設けられた拡散領域が、前記開口領域に隣接する吸水領域の下にまで、延設されていることが好ましい。このように構成すれば、拡散領域に取り込まれた体液等は、拡散領域を通じて吸水領域の下面(外面)側へと吸収されやすくなる。
【0083】
前記拡散吸水層において、前記拡散領域の拡散吸水層表面に占める面積割合は、5%以上が好ましく、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上であり、70%以下が好ましく、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。前記面積割合が5%以上であれば、体液等の吸収速度がより向上し、70%以下であれば、相対的に吸水領域の面積割合が大きくなり、吸水量が大きくなる。
【0084】
前記拡散吸水層における拡散領域部分の厚さは、前記拡散層と同様に、拡散領域を形成する材料に応じて適宜調整すればよい。シート状の拡散性向上材および粒子状の拡散性向上材を用いる場合の拡散領域の厚さの好適範囲は、前記拡散層と同様である。
【0085】
本発明の吸収体において、拡散層、拡散吸水層、吸水層の形状は特に限定されず、例えば、長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型などが挙げられる。吸収体は、拡散層、拡散吸水層の下側(外面側)に、さらに開口領域を備えない吸水層を有していてもよい。このような吸水層を有することで、吸収体の保水量が一層向上する。また、吸収体は、前記拡散層、拡散吸水層、吸水層の他に、不織布層、拡散性向上材や吸水性樹脂粉末を固定するための接着剤層を有していてもよい。
【0086】
さらに、吸収体の最も下側には、不透液性シートを配置してもよい。不透液性シートとしては、例えば、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用され、不透液性シートに到達した排泄物の水分等が、吸収性物品の外側にしみ出すのを防止する。不透液性シートにプラスチックフィルムが利用される場合、ムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0087】
本発明の吸収体の構成としては、例えば、(1)開口領域を備える吸水層と、拡散層とを有し、前記拡散層が、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に設けられている構成;(2)開口領域を備える吸水層と、拡散領域と吸水領域とを有する拡散吸水層とを有し、前記拡散吸水層には、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に、前記拡散領域が設けられている構成;が挙げられる。
【0088】
前記(1)の構成において、前記拡散層の平面視形状は、開口領域を有する吸水層の平面視形状と略同一でもよいし、吸水層の平面視形状よりも小さくてもよい。拡散層は、吸水層の開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に設けられていればよいが、開口領域の下方の全域に設けられていることが好ましい。拡散層は、前記開口領域に隣接する吸水領域の下にまで、延設されていることが好ましい。また、前記(1)の構成では、拡散層の下(外面側)に、開口領域を備えない吸水層を有していてもよい。このような吸水層を有することで、吸収体の保水量が一層向上する。
【0089】
前記(2)の構成において、拡散吸水層の平面視形状は、開口領域を有する吸水層の平面視形状と略同一でもよいし、吸水層の平面視形状よりも小さくてもよい。拡散吸水層において、拡散領域は、吸水層の開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に設けられていればよいが、開口領域の下方の全域に設けられていることが好ましい。拡散領域は、前記開口領域に隣接する吸水領域の下にまで、延設されていることも好ましい。また、前記(2)の構成では、拡散吸水層の下(外面側)に、開口領域を備えない吸水層を有していてもよい。このような吸水層を有することで、吸収体の保水量が一層向上する。
【0090】
前記(1)および(2)の構成において、吸収体は、開口領域を備えた吸水層、ならびに拡散層または拡散吸水層を、それぞれ複数層有していてもよい。吸水層を複数有する場合、少なくとも最も上側(肌側)に配置される吸水層(以下、最上吸水層)は開口領域を備える。そして、最上吸水層の下側(外面側)の直近に拡散層が配置される場合、拡散層が開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に設けられる。また、最上吸水層の下側の直近に拡散吸水層が配置される場合、拡散吸水層には開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に拡散領域が設けられる。
【0091】
吸水層を複数有する場合、最上吸水層以外の吸水層は開口領域を備えなくともよい。なお、吸水速度を向上させる観点から、拡散層または拡散吸水層の上側(肌面側)に配置される吸水層は、開口領域を備えることが好ましい。そして、開口領域を備えた吸水層の下側(外面側)の直近に配置される拡散層または拡散吸水層には、この開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に拡散領域が設けられることが好ましい。開口領域を備える吸水層を複数有する場合、それぞれに形成される開口領域の位置、大きさ、数は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0092】
以下、図面を参照しながら、本発明の吸収体の好ましい実施態様について説明するが、本発明は図示された態様に限定されるものではない。
【0093】
吸水層における開口領域の形成態様の具体例を、図7を参照して説明する。図7は、吸水層を肌面側から見た平面図であり、符号2は吸水領域を示し、符号3は開口領域を示し、一点鎖線Lは、吸水層の幅方向中央線を示す。なお、図中の網掛け部分が開口領域である。開口領域を備える吸水層の態様としては、例えば、直線スリット状の開口領域3を1つ形成する態様(図7(a));波型スリット状の開口領域3を1つ形成する態様(図7(b));複数の円形状の開口領域3を格子状配列で形成する態様(図7(c));複数の円形状の開口領域3を千鳥状配列で形成する態様(図7(d));直線スリット状の開口領域3を複数並行に形成する態様(図7(e));波型スリット状の開口領域3を複数並行に形成する態様(図7(f));などが挙げられる。なお、図7(a)〜(d)では、開口領域3は、吸水層の幅方向の中央線Lを跨ぐように形成されている。
【0094】
本発明の吸収体の好ましい実施態様としては、例えば、開口領域を備える吸水層と、拡散層とをそれぞれ一層有し、前記拡散層が、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に設けられている態様(実施態様1);開口領域を備える吸水層と、拡散領域と吸水領域とを有する拡散吸水層とをそれぞれ一層有し、前記拡散吸水層には、前記開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に、前記拡散領域が設けられている態様(実施態様2);開口領域を備える吸水層と、拡散層とをそれぞれ二層ずつ有し、各拡散層が、各拡散層の上側の直近に配置された吸水層の開口領域の下に位置する部分の少なくとも一部に設けられている態様(実施態様3);が挙げられる。
【0095】
図1、2は、本発明の吸収体の実施態様1を示す模式図であり、図1は肌面側から見た斜視図、図2図1におけるX−X線断面図である。図3、4は、本発明の吸収体の実施態様2を示す模式図であり、図3は肌面側から見た斜視図、図4図3におけるY−Y線断面図である。図5、6は、本発明の吸収体の実施態様3を示す模式図であり、図5は肌面側から見た斜視図、図6図5におけるZ−Z線断面図である。なお、図1〜6において、紙面のC方向の上側が肌面側であり、下側が外面側である。
【0096】
実施態様1
前記実施態様1は、吸水領域2と開口領域3とを備える吸水層4と、この吸水層4の下に配置された拡散層5との二層からなる吸収体1である。
【0097】
図1に図示した吸収体1では、吸水層4および拡散層5のいずれもが、長手方向Aと短手方向Bとを有する長方形状であり、吸水層4と拡散層5とは平面視形状が略同一である。すなわち、拡散層5は、開口領域3と吸水領域2の下方の全域にわたって設けられている。吸水層4には、吸収体の長手方向に伸びる直線スリット状の開口領域3が、一つ形成されており、その幅方向両側に吸水領域2が形成されている。前記開口領域3は、吸収体1(吸水層4)の幅方向Bの中央線Lを跨ぐように形成されており、かつ、スリットの長手方向が吸水体1の長手方向Aと略平行となるように形成されている。
【0098】
図1において、吸水層4および拡散層5の形状は長方形に図示しているが、これらの形状は、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型などでもよい。また、拡散層5の平面視形状は、吸水層4の平面視形状よりも小さくしてもよい。ただし、開口領域3の下に位置する部分の少なくとも一部には、拡散層5が設けられている必要がある。図1では、吸水層4に直線スリット状の開口領域3を1つ形成した態様を図示したが、スリットの数は2以上でもよい。また、スリットの形状は波線のような曲線にしてもよい。図1では、吸水層4と拡散層5との二層からなる吸収体を図示しているが、吸水層4と拡散層5の間に不織布層や接着剤層が挿入されていてもよい。また、拡散層5の下側に、開口領域を備えない吸水層を配置してもよい。
【0099】
実施態様2
前記実施態様2は、吸水領域2と開口領域3とを備える吸水層4と、この吸水層4の下に配置されたスリット状の拡散領域6が形成されている拡散吸水層7との二層からなる吸収体1である。
【0100】
図3に示した吸収体1では、吸水層4および拡散吸水層7のいずれもが、長手方向Aと短手方向Bとを有する長方形状であり、吸水層4と拡散吸水層7とは平面視形状が略同一である。吸水層4には、吸収体の長手方向に伸びる直線スリット状の開口領域3が、一つ形成されており、その幅方向両側に吸水領域2が形成されている。前記開口領域3は、吸収体1(吸水層4)の幅方向Bの中央線Lを跨ぐように形成されており、かつ、スリットの長手方向が吸水体1の長手方向Aと略平行となるように形成されている。
【0101】
拡散吸水層7には、前記開口領域3の下に位置する部分に拡散領域6が形成されている。前記拡散領域6は、前記開口領域3よりも幅広に形成されており、前記開口領域3に隣接する吸水領域2の下にまで延設されている。
【0102】
図3において、吸水層4および拡散吸水層7の形状は長方形に図示しているが、これらの形状は、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型などでもよい。また、拡散吸水層7の平面視形状は、吸水層4よりも小さくしてもよいし、大きくしてもよい。図3では、吸水層4に直線スリット状の開口領域3を1つ形成した態様を図示したが、スリットの数は2以上でもよい。また、スリットの形状は波線のような曲線にしてもよい。図3では、吸水層4と拡散吸水層7との二層からなる吸収体を図示しているが、吸水層4と拡散吸水層7の間に不織布層や接着剤層が挿入されていてもよい。また、拡散吸水層の下側に、開口領域を備えない吸水層を配置してもよい。
【0103】
実施態様3
前記実施態様3は、吸水領域21と開口領域31とを備える第一吸水層41と、この第一吸水層41の下に配置された第一拡散層51と、この第一拡散層51の下に配置された吸水領域22と開口領域32とを備える第二吸水層42と、この第二吸水層42の下に配置された第二拡散層52との四層からなる吸収体1である。
【0104】
図5に図示した吸収体1では、第一吸水層41、第二吸水層42、第一拡散層51および第二拡散層52のいずれもが、長手方向Aと短手方向Bとを有する長方形状であり、すべての層の平面視形状が略同一である。すなわち、第一拡散層51は、第一吸水層41の開口領域31と吸水領域21の下方の全域にわたって設けられている。また、第二拡散層52は、第二吸水層42の開口領域32と吸水領域22の下方の全域にわたって設けられている。
【0105】
第一吸水層41および第二吸水層42には、吸収体の長手方向に伸びる直線スリット状の開口領域31、32が、それぞれ一つ形成されており、それらの幅方向両側に吸水領域21、22が形成されている。第一吸水層41および第二吸水層42に備えられた開口領域31、32は、いずれも吸収体1(第一吸水層41または第二吸水層42)の幅方向Bの中央線Lを跨ぐように形成されており、かつ、スリットの長手方向が吸水体1の長手方向Aと略平行となるように形成されている。また、前記開口領域31および32は、平面視形状が略同一に形成されており、それぞれの形成位置も略同一である。
【0106】
図5において、第一吸水層41、第二吸水層42、第一拡散層51および第二拡散層52の形状は長方形に図示しているが、これらの形状は、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型などでもよい。また、第一拡散層51の平面視形状は、第一吸水層41の平面視形状よりも小さくしてもよいし、第二拡散層52の平面視形状は、第二吸水層42の平面視形状よりも小さくしてもよい。ただし、開口領域31の下に位置する部分の少なくとも一部には第一拡散層51が設けられ、開口領域32の下に位置する部分の少なくとも一部には第一拡散層52が設けられている必要がある。図5では、第一吸水層41および第二吸水層42に直線スリット状の開口領域31、32をそれぞれ1つ形成した態様を図示したが、スリットの数は2以上でもよい。また、スリットの形状は波線のような曲線にしてもよい。図5では、第一吸水層41、第二吸水層42、第一拡散層51および第二拡散層52の四層からなる吸収体を図示しているが、各層の間に不織布層や接着剤層が挿入されていてもよい。また、第二拡散層52の下側に、開口領域を備えない吸水層を配置してもよい。
【0107】
吸収性物品
次に、本発明の吸収性物品の具体的な適用例について説明する。本発明の吸収性物品としては、例えば、失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、母乳パッドなどの人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品が挙げられる。
【0108】
前記吸収性物品が、失禁パッド、生理用ナプキンである場合、これらは、例えば、トップシートとバックシートとの間に、吸収体が配置される。失禁パッド、生理用ナプキンの形状としては、略長方形、砂時計型、ひょうたん型などが挙げられる。
【0109】
前記吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつとしては、例えば、後背部または前腹部の左右に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するテープ型使い捨ておむつ;前腹部と後背部とが接合されることによりウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつ;などが挙げられる。
【0110】
吸収性物品が、使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、内側シートと外側シートとからなる積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなるおむつ本体を形成し、前記股部に、トップシートとバックシートとの間に吸収体が配置されていてもよい。また、使い捨ておむつは、例えば、トップシートとバックシートとの間に、吸収体が配置された積層体からなり、この積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを有していてもよい。なお、前腹部、後背部、股部とは、使い捨ておむつを着用の際に、着用者の腹側に当てる部分を前腹部と称し、着用者の尻側に当てる部分を後背部と称し、前腹部と後背部との間に位置し着用者の股間に当てる部分を股部と称する。前記内側シートは、親水性または撥水性であることが好ましく、前記外側シートは、撥水性であることが好ましい。
【0111】
吸収性物品には、吸収体の両側縁部に沿って、立ち上がりフラップが設けられていることが好ましい。立ち上がりフラップは、例えば、吸収体の上面の幅方向両側縁部に設けられてもよく、吸収体の幅方向両外側に設けられてもよい。立ち上がりフラップを設けることにより、尿等の排泄物の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートの内方端が立ち上げられて、形成されてもよい。前記立ち上がりフラップおよびサイドシートは、撥水性であることが好ましい。
【0112】
次に、本発明の吸収性物品について、失禁パッドを例に挙げ、図8、9を参照して説明する。図8は、失禁パッドの平面図を表す。図9は、図8の失禁パッドのV−V断面図を表す。なお、図では、矢印Bを幅方向とし、矢印Aを長手方向と定義付ける。また、矢印A,Bにより形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。
【0113】
失禁パッド11は、液透過性のトップシート12と、液不透過性のバックシート13と、これらの間に配置された吸収体1とを有している。図9に失禁パッド11の断面図を示す。この図では、吸収体1として、前記態様1の吸収体を図示しているが、吸収体の構成はこれに限られるものではない。
【0114】
トップシート12は、着用者の股部の肌に面するように配置され、尿等の液体の排泄物を透過する。トップシート12を通過した尿等の排泄物は、吸収体1に取り込まれ、拡散層5で平面方向に拡散し、その後吸水層6に移行して吸収される。従って、失禁パッド11は、排泄物を速やかに吸収でき、吸水層6に含まれる吸水性樹脂粉末の全体が、排泄物の吸収に効果的に寄与できるようになる。バックシート13は、排泄物が外部へ漏れるのを防いでいる。
【0115】
トップシート12の幅方向Bの両側縁には、失禁パッド11の長手方向Aに延在するサイドシート16が接合している。サイドシート16は、液不透過性のプラスチックフィルムや撥水性不織布等により構成される。サイドシート16には、失禁パッド11の幅方向内方端に起立用弾性部材17が設けられている。失禁パッド11の使用時には、起立用弾性部材17の収縮力によりサイドシート16の内方端が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより尿等の排泄物の横漏れが防止される。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0117】
[評価方法]
(吸収倍率の測定方法)
吸収倍率の測定は、JIS K 7223(1996)に準拠して行う。目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1:2000)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製する。測定試料1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。試料の入ったナイロン袋を、生理食塩水に浸漬させる。浸漬開始から60分後にナイロン袋を生理食塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、試料の質量F1(g)を測定する。また、試料を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量F0(g)を測定する。そして、これら質量F1、F0および試料の質量から、次式に従って、目的とする吸収倍率を算出する。
吸収倍率(g/g)=(F1−F0)/試料の質量
【0118】
(保水量の測定方法)
保水量の測定は、JIS K 7223(1996)に準拠して行う。目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1:2000)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製する。測定試料1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。試料の入ったナイロン袋を、生理食塩水に浸漬させる。浸漬開始から60分後にナイロン袋を生理食塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、遠心脱水器(コクサン(株)製、型式H−130C特型)を用いて脱水する。脱水条件は、143G(800rpm)で2分間とする。脱水後の質量R1(g)を測定する。また、試料を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量R0(g)を測定する。そして、これら質量R1、R0および試料の質量から、次式に従って、目的とする保水量を算出する。
保水量(g/g)=(R1−R0−試料の質量)/試料の質量
【0119】
(ボルテックス法による吸水速度の測定方法)
100mLのガラスビーカーに、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水)50mLとマグネチックスターラーチップ(中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mmで、表面がフッ素樹脂コーティングされているもの)を入れ、ビーカーをマグネチックスターラー(アズワン製HPS−100)に載せる。マグネチックスターラーの回転数を600±60rpmに調整し、生理食塩水を撹拌させる。試料2.0gを、撹拌中の食塩水の渦の中心部で液中に投入し、JIS K 7224(1996)に準拠して該吸水性樹脂粉末の吸水速度(秒)を測定する。具体的には、試料である吸水性樹脂粉末のビーカーへの投入が完了した時点でストップウォッチをスタートさせ、スターラーチップが試験液に覆われた時点(渦が消え、液表面が平らになった時点)でストップウォッチを止め、その時間(秒)を吸水速度として記録する。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、これらの測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後に測定する。
【0120】
(吸湿ブロッキング率)
試料10.0gを底面の直径52mm、高さ22mmのアルミニウムカップ(東洋エコー株式会社、ホイルコンテナー、品番107)に均一に入れ、40℃、相対湿度80%RHの恒温恒湿槽中で3時間静置する。その後12メッシュの金網(目開き1.4mm)で軽く篩い、吸湿によりブロッキングして12メッシュをパスしない測定サンプルの粉末状物の質量、および12メッシュをパスした試料の質量を測定し、次式に従って目的とする吸湿ブロッキング率を算出する。
吸湿ブロッキング率(%)=100×(放置後の12メッシュをパスしない試料の質量)/(放置後の12メッシュをパスしない試料の質量+放置後の12メッシュをパスした試料の質量)
測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、測定は23±2℃、湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後で測定する。
【0121】
(荷重下通液速度の測定方法)
100mLのガラスビーカーに、試料である吸水性樹脂粉末0.32±0.005gを生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)100mLに浸して60分間放置する。別途、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm、株式会社三商販売のバイオカラム焼結ステンレスフィルター30SUS)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意し、コックを閉鎖した状態で円筒管内に、膨潤した測定試料を含む前記ビーカーの内容物全てを投入する。次いで、目開きが150μmで直径が25mmである金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入して、金網と測定試料とが接するようにし、更に測定試料に2.0kPaの荷重が加わるようおもりを載せる。この状態で1分間放置した後、コックを開いて液を流し、濾過円筒管内の液面が60mLの目盛り線から40mLの目盛り線に達する(つまり20mLの液が通過する)までの時間(T)(秒)を計測する。計測された時間T(秒)を用い、次式から2.0kPaでの荷重下通液速度を算出する。なお、式中、T(秒)は、濾過円筒管内に測定試料を入れないで、生理食塩水20mlが金網を通過するのに要する時間を計測した値である。
荷重下通液速度(秒)=T−T
【0122】
拡散性向上材
(荷重下通液速度の測定方法)
図10は、拡散性向上材の荷重下通液速度の測定方法を説明するための模式図である。図10(a)に示すように、試料となる拡散性向上材20を、平面視形状が一辺100mm超の正方形状となるように配置した。なお、粒子状の拡散性向上材の場合、拡散性向上材を固定するための枠21を設け、この枠21内に拡散性向上材を配置した。この際、粒子状の拡散性向上材は厚さ方向に一層となるようにし、かつ、平面方向の粒子間の隙間ができる限り小さくなるように配置した。シート状の拡散性向上材の場合、実際に吸収体に使用するシートを、平面視形状が一辺100mm超の正方形状となるように切り出した。その後、枠内の拡散性向上材を生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)に浸して60分間放置した。
【0123】
図10(b)に示すように、測定治具22は、ステンレス板22a(100mm×100mm)の中央に開口(内径25.4mm)が設けられ、この開口部分に垂直に円筒22b(内径25.4mm)が取り付けられている。この測定治具22を、前記拡散性向上剤20の上に設置した。測定試料に2.0kPaの荷重が加わるように、測定治具22の上におもり23を載せた後、この状態で1分間放置した。その後、生理食塩水150mlを円筒に注入し、生理食塩水の注入開始から円筒内の液がなくなるまでの時間(T)(秒)を測定し、これを荷重下通液速度とした。測定はn=5測定し、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、これらの測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後で測定した。
【0124】
[吸収体の作製]
吸収体1−1
ポリエチレンフィルム上にスパンボンド不織布を積層した。このスパンボンド不織布の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、全面に均一に拡散性向上材としてABS樹脂粒子(粒子径:6mm、荷重下通液速度:10秒)を散布し、拡散領域のみを有する拡散層を形成した。拡散層の平面視形状は長方形であり、長手方向の長さが30cm、幅方向の長さが15cm、厚さが0.8cmとした。前記拡散性向上材の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、全面を覆うようにスパンボンド不織布を積層した。
【0125】
拡散性向上材上のスパンボンド上に、さらにスパンボンド不織布を積層し、その上にパルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標) DS560」)を混合した状態で散布し、吸水領域のみを有する吸水層を形成した。吸水層の平面視形状は長方形であり、長手方向の長さが30cm、幅方向の長さが15cmとした。この吸水層の一部を、一筋の直線スリット状にくり抜き、開口領域を形成した。直線スリットは、吸収層の長手方向全幅にわたって連続に形成し、かつ、吸収体の幅方向中央線を跨ぐように形成した。スリットの幅方向の長さは3cm(吸水層全体に占める面積割合:20%)とした。なお、吸水性樹脂粉末の物理的性質は、吸水倍率60g/g、保水量42g/g、ボルテックス法による吸水速度38秒、吸湿ブロッキング率0.1%、荷重下通液速度5秒であった。
【0126】
開口領域を有する吸水層上にスパンボンド不織布を積層し、その上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、エアスルー不織布を積層し、得られた積層体をプレスして、吸収体1−1を作製した。吸収体は、平面視形状が長方形であり、長手方向の長さが30cm、幅方向の長さが15cm、総厚さが0.8cmとなった。
【0127】
得られた吸収体No.1の構成を、図11を参照して説明する。図11は吸収体No.1の模式的断面図である。吸収体No.1は、下側(外面側)から順に、ポリエチレンフィルム8、接着剤層9、スパンボンド不織布10、接着剤層9、拡散層5、接着剤層9、スパンボンド不織布10、スパンボンド不織布10、開口領域3を備える吸水層4、スパンボンド不織布10、接着剤層9およびエアスルー不織布18を有する。吸収体No.1では、吸水層4の開口領域3の上側および下側にスパンボンド不織布10が存在している。
【0128】
吸収体2−1
ポリエチレンフィルムの上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末を混合した状態で散布し、吸水領域のみを有する第一吸水層を形成した。第一吸水層の平面視形状は長方形であり、長手方向の長さが30cm、幅方向の長さが15cmとした。
【0129】
この第一吸水層の上面の一部に、スパンボンド不織布を積層し、その上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、均一に拡散性向上材としてABS樹脂粒子(粒子径:6mm、荷重下通液速度:10秒)を散布し、拡散領域のみを有する拡散層を形成した。拡散層の平面視形状は長方形であり、長手方向の長さが25cm、幅方向の長さが5cm、厚さが0.8cmとした。また、拡散層は、この拡散層の幅方向中央線と、前記第一吸水層の幅方向中央線とが一致するように形成した。拡散性向上材の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、拡散性向上材の全面を覆うようにスパンボンド不織布を積層した。
【0130】
次に、拡散層が形成されている部分では、拡散層上のスパンボンド不織布の上に、拡散層が形成されていない部分では、第一吸水層の上に、パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標) DS560」)を混合した状態で散布し、吸水領域のみを有する第二吸水層を形成した。第二吸水層の平面視形状は長方形であり、長手方向の長さが30cm、幅方向の長さが15cmとした。この第二吸水層の一部を、一筋の直線スリット状にくり抜き、開口領域を形成した。直線スリットは、第二吸収層の長手方向全幅にわたって連続に形成し、かつ、吸収体の幅方向中央線を跨ぐように形成した。スリットの幅方向の長さは3cm(第二吸水層全体に占める面積割合:20%)とした。
【0131】
開口領域を有する第二吸水層上に、合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、エアスルー不織布を積層し、得られた積層体をプレスして、吸収体2−1を作製した。吸収体2−1は、開口領域を備える第二吸水層と、この第二吸水層の下に配置された拡散層と、この拡散層の下に配置された第一吸水層を各一層有し、少なくとも前記開口領域の下には、前記拡散層が設けられている。なお、拡散層は、第二吸水層の吸水領域の下にまで延設されている。吸収体は、平面視形状が長方形であり、長手方向の長さが30cm、幅方向の長さが15cm、総厚さが0.8cmとなった。また、第二吸収層に対する拡散層の面積割合は、27%である。
【0132】
得られた吸収体2−1の構成を、図12を参照して説明する。図12は吸収体2−1の模式的断面図である。吸収体2−1は、下側(外面側)から順に、ポリエチレンフィルム8、接着剤層9、吸水層4、スパンボンド不織布10、接着剤層9、拡散層5、接着剤層9、スパンボンド不織布10、開口領域3を備える吸水層4、接着剤層9およびエアスルー不織布18を有する。吸収体2−1では、吸水層4の開口領域3の上側および下側にスパンボンド不織布10が存在している。
【0133】
吸収体2−2、2−3
拡散層の長さ、幅を変更したこと以外は、吸収体2−1の作製と同様にして、吸収体2−2、2−3を得た。吸収体2−2の拡散層は、幅:10.5cm、長さ:15.0cm、面積割合:35%である。吸収体2−3の拡散層は、幅:15.0cm、長さ:15.0cm、面積割合:50%である。
【0134】
比較吸収体1
スパンボンド不織布の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末を混合した状態で散布し吸水領域のみを有する吸水層を形成した。
吸水層上にエアスルー不織布を積層し、得られた積層体をプレスして、一層の吸水層からなる比較吸収体1を得た。
【0135】
比較吸収体2
スパンボンド不織布の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末を混合した状態で散布し、その一部を平面視略矩形状(吸水層全体に占める面積割合:20%)にくり抜いた。くり抜いた部分に、吸水性樹脂粉末を散布することにより吸水層を形成した。吸水層上にエアスルー不織布を積層し、得られた積層体をプレスして、一層の吸水層からなる比較吸収体2を得た。
【0136】
比較吸収体3
スパンボンド不織布の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末を混合した状態で散布し、吸水領域のみを有する第一吸水層を形成した。この第一吸水層の上にスパンボンド不織布を積層し、その上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、吸水性樹脂粉末を散布して、第二吸水層を形成した。第二吸水層上にスパンボンド不織布を積層し、合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、エアスルー不織布を積層し、得られた積層体をプレスして、吸水層を2層有する比較吸水体3を得た。
【0137】
得られた吸収体1、2および比較吸収体No.1〜3について、人口尿の吸収速度、ドライネス値を測定し、結果を表1に示した。測定は下記のとおり行った。
【0138】
<人口尿の吸収速度、SDME法による表面ドライネス値>
人工尿(塩化カリウム0.03重量%、硫酸マグネシウム0.08重量%、塩化ナトリウム0.8重量%及び脱イオン水99.09重量%)の中に吸収体を浸し、60分放置して調製し、十分に湿らせた吸収体を作製した。また、吸収体を80℃、2時間加熱乾燥して、十分に乾燥させた吸収体を作製した。十分に湿らせた吸収体の上(幅方向中央かつ長さ方向中央)に、SDME(Surface Dryness Measurement Equipment)試験器(WK system社製)の検出器を置き、100%ドライネス値を設定した。次に、十分に乾燥させた吸収体の上(幅方向中央かつ長さ方向中央)に、SDME試験器の検出器を置き0%ドライネスを設定し、SDME試験器の校正を行った。次に、測定する吸収体の中央に金属リング(内径70mm、長さ50mm)をセットし、人工尿20mlを注入し、人工尿を吸収し終えるまでの時間を測定し吸収速度を求めた。吸収し終えた後、直ちに金属リングを取り去り、吸収体の中央にSDME検出器を3つ載せて、表面ドライネス値の測定を開始し、測定開始から1分後の値を表面ドライネス値とした。30分放置後2回目の人工尿を注入した。操作は、1回目と同様の操作を行い、2回目の吸収速度、及び2回目の表面ドライネス値を求めた。測定は3回行い(n=3)、3回の平均値を測定値とした。なお、人工尿、測定雰囲気及び放置雰囲気は、25±5℃、65±10%RHで行った。
【0139】
【表1】
【0140】
表1からわかるように、吸水層が開口領域を有し、この開口領域の下に拡散領域が形成されている吸収体1−1、2−1〜2−3は、吸収速度が早く、かつ、ドライ性に優れている。これは拡散性向上材を散布することにより、吸収体への人口尿の拡散性が改善されたことによるものと考えられる。
【0141】
一方、比較吸収体1〜3は、拡散領域が形成された層を有さない場合であるが、これらは吸収速度が遅く、かつ、ドライ性に劣っている。比較吸収体1〜3は、拡散領域が形成された層を有していないため、吸水性樹脂粉末が吸水によりゲルブロッキングを生じやすく、吸収体への浸透性や、ドライ性が改善されにくい。そのため、1回目の吸収速度、2回目の吸収速度、並びに、2回目以降のドライ性が劣るものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の吸収体は、例えば、人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品に好適に使用でき、特に失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、母乳パッドなどの吸収性物品に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0143】
1:吸収体、2:吸水領域、3:開口領域、4:吸水層、5:拡散層、6:拡散領域、7:拡散吸水層、8:ポリエチレンフィルム、9:接着剤層、10:スパンボンド不織布、11:失禁パッド(吸収性物品)、12:トップシート、13:バックシート、16:サイドシート、17:起立用弾性部材、18:エアスルー不織布
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12