(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乳母車用のシートは、前記布状材と接続された第2布状材をさらに備え、 前記第2布状材は、乳幼児に面する側の表面をなす第3生地と、前記第3生地とは反対側の表面をなす第4生地と、前記第3生地と前記第4生地との間に配置された綿と、を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乳母車。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0022】
図1〜
図5は本発明による乳母車の一実施の形態を説明するための図である。このうち、
図1には、乳母車の全体構成が示されている。図示された乳母車10は、折り畳み可能な乳母車本体11と、乳母車本体11に装着されたシート50と、を有している。
図2には、シート50が取り外された状態で乳母車本体11が示されており、
図3には、シート50が示されている。図示された乳母車本体11は、一対の前脚22および一対の後脚24を有するフレーム部20と、フレーム部20に揺動可能に接続された手押しハンドル36と、を有している。乳母車本体11の各前脚22の下端には、車輪(前輪)16が保持され、乳母車本体11の各後脚24の下端には、車輪(後輪)18が保持されている。
【0023】
本実施の形態の乳母車本体11においては、ハンドル36がフレーム部20に対して揺動可能となっている。ハンドル36は、
図1に実線で示す背面押し位置(後方位置)と、図示しない対面押し位置(前方位置)と、に固定され得る。ハンドル36をフレーム部材20に対して揺動可能とする構成は、既知の構成、例えば、JP2008−254688Aに開示された構成を、採用することができる。
【0024】
また、本実施の形態において、乳母車本体11は、広く普及しているように、シート50の背当て部57の傾斜角度が変化し得る構成、すなわちリクライニング可能に構成されている。シート50は、後述するように柔軟性を有した素材を用いて形成されており、乳母車本体11のリクライニング動作にともなって変形可能となっている。また、本実施の形態における乳母車本体11は、シート50の座面部55と背当て部57とが互いに接近するようにして折り畳み可能に構成されている。まず、主に
図2を参照して乳母車本体11の構成の一具体例について説明し、その後に、シート50について詳述する。
【0025】
乳母車本体11(乳母車10)は、全体的に、前後方向に沿って延びる幅方向中心面を中心として概ね対称な構成となっている。
図2に示すように、本実施の形態におけるフレーム部20は、それぞれ左右に配置された一対の前脚22と、それぞれ左右に配置された一対の後脚24と、それぞれ左右に配置された一対のアームレスト28と、それぞれ左右に配置された一対の第1リンク材26と、を有している。前脚22の上方端部および後脚24の上方端部は、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト28に回動可能(揺動可能)に接続されている。また、第1リンク材26の上方部分が、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト28の後方部分に回動可能(揺動可能)に接続されている。
【0026】
フレーム部20は、左前脚22と左第1リンク材26とを連結する左第2リンク材32、および、右前脚22と右第1リンク材26とを連結する右第2リンク材32をさらに有している。各第2リンク材32は、その前方部分を前脚22の中間部分に回動可能に接続され、その後方部分を第1リンク材26の下方部分に回動可能に接続されている。なお、
図2に示す例では、各第2リンク材32は、U字状の座面部支持枠41の前脚22および後脚24の間を延びる部分と、座面部支持枠41の当該部分と接続され且つ前脚22に回動可能に接続された接続材33と、座面部支持枠41の当該部分の後方端部に保持され且つ第1リンク材26に回動可能に接続された枠連結材43と、から構成されている。
【0027】
また、フレーム部20は、左後脚24と左第1リンク材26とを連結する左第3リンク材34、および、右後脚24と右第1リンク材26とを連結する右第3リンク材34と、をさらに有している。各第3リンク材34は、その一部分において後脚24の中間部分に回動可能(揺動可能)に接続され、他の部分において第1リンク材26の下方部分に回動可能に接続されている。
【0028】
このような構成からなるフレーム部20に対し、ハンドル36が揺動可能に接続されている。ハンドル36は、U字の両端部を、対応する側の第3リンク材34に回動可能(揺動可能)に接続されている。また、乳母車10の横方向(幅方向)に延びる部材として、一対の前脚22の間を連結するフットレスト17と、一対の後脚24の間を連結する後方連結材19と、が設けられている。なお、ハンドル36の第3リンク材34に対する回動軸線(揺動中心)は、第3リンク材34と第1リンク材26との回動軸線、および、第1リンク材26と第2リンク材32との回動軸線と一致している。
【0029】
図示された乳母車本体11は、シート50を支持するためのシート支持機構40を有している。シート支持機構40は、上述した座面部支持枠41と、枠連結材43を介して座面部支持枠41に対して揺動可能に接続された背当て部支持枠42と、座面部支持枠41および背当て部支持枠42に張設されたベースシート44と、を有している。背当て部支持枠42は、座面部支持枠41と同様に、枠連結材43に両端を接続されたU字状の形状を有している。
【0030】
背当て部支持枠42の上端部分に、上部プレート46が揺動可能に支持されている。この上部プレート46は、座面部支持枠41の枠連結材43から離間した上方側に位置している。また、上部プレート46と左右の枠連結材43との間には、それぞれ、左右の側部プレート45が設けられている。側部プレート45は、リンク材として機能し、背当て部支持枠42が座面部支持枠41に対して倒れている場合に上部プレート46を背当て部支持枠42から起立させる。一方、背当て部支持枠42が座面部支持枠41に対して立ち上がっている場合には、上部プレート46が背当て部支持枠42によって画成される面に概ね沿って延びるように、上部プレート46を傾倒させる。左右の側部プレート45および上部プレート46は、座面部支持枠41および背当て部支持枠42とともに、シート支持機構40を構成している。
【0031】
なお、背当て部支持枠42の背面側には、左右の第1リンク材26に固着されたリクライニング調節ベルト48が配設されている。そして、リクライニング張設ベルト48の長さを調節することにより、シート50の背当て部57を支持する背当て部支持枠42が、シート50の座面部55を支持する座面部支持枠41に対して傾斜する角度、すなわち、リクライニング角度を調節することができる。
【0032】
以上のような全体構成を有した乳母車10は、各構成部材を互いに回動させることにより、折り畳むことができる。具体的には、背面押し位置に配置されたハンドル36をいったん後上方に引き上げ、その後、下方に押し下げることによって、第3リンク材34を後脚24に対し
図2において時計回り方向に回動させる。この操作にともなって、アームレスト28および第2リンク材32は、第1リンク材26に対し
図2において時計回り方向に回動する。この操作により、側面視においてハンドル36と前脚22とが接近して略平行に配置されるとともに、ハンドル36の配置位置が下げられるようになる。この折り畳み動作時に、座面部支持枠41と背当て部支持枠42とが互いに接近するようになり、結果として、乳母車本体11の折り畳み動作にともなって、シート50の座面部55と背当て部57とが互いに接近するようになる。以上のようにして、乳母車10(乳母車本体11)を折り畳むことができ、乳母車10の前後方向および上下方向に沿った寸法を小型化することができる。一方、乳母車10(乳母車本体11)を折り畳み状態から展開するには、上述した折り畳み操作と逆の手順を踏めばよい。
【0033】
なお、本明細書中において、乳母車10、乳母車本体11およびシート50に対する「前」、「後」、「上」および「下」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車10に乗車する乳幼児を基準とした「前」、「後」、「上」および「下」を意味する。したがって、乳母車10の「前後方向」とは、
図1および
図2における紙面の左下と右上とを結ぶ方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、乗車した乳幼児が向く側であり、
図1における紙面の左下側が乳母車10の前側となる。一方、乳母車10の「上下方向」とは前後方向に直交するとともに乳母車10の接地面に直交する方向である。したがって、乳母車10の接地面が水平面である場合、「上下方向」とは垂直方向をさす。また、「横方向」および「幅方向」とは、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。さらに、「右」および「左」についても、それぞれ、乳母車10に乗車する乳幼児を基準とした横方向または幅方向における「右」および「左」のことを意味する。
【0034】
次に、主に、
図1及び
図3〜
図5を参照しながら、乳母車本体11に支持されるシート50について説明する。
図3によく示されているように、シート50は、全体的に、前後方向に沿って延びる幅方向中心面を中心として概ね対称な構成となっている。
【0035】
図1及び
図2に示すように、シート50は、座面部55と、座面部55と接続されて座面部55の後方に位置する背当て部57と、座面部55および背当て部57の少なくとも側方に位置する側壁部53を有している。座面部55は、乳母車10に乗車する乳幼児の臀部を主として支持するようになる。一方、背当て部57は、乳幼児の背中に対面する位置に配置されるようになる。側壁部53は、座面部55から両側方に延び出た左右の第1側部60と、背当て部57から延び出た左右の第2側部67と、を含んでいる。また、シート50は、背当て部57の座面部55から離間した上方となる位置に接続された上方部69をさらに有している。
図3に示すように、上方部69は、左右の第2側部67を連結しており、ヘッドレストとして機能する。
【0036】
シート50を洗浄することを考慮すると、シート50は、乳母車本体11に取り外し可能に固定され得ることが好ましい。シート50の乳母車本体11への固定は、シート50の各位置に取り付けられたボタン等の公知の固定具を用いて実現され得る。
【0037】
上述したように、座面部55は、主として、シート支持機構40の座面部支持枠41および座面部支持枠41に保持されたベースシート44によって支持される。
図3に示すように、座面部55は、平面視において、概ね、台形形状と、楕円を長軸に沿って分断してなる半楕円形状とを、台形形状の幅広の下底と半楕円の長軸とが接続するようにして、組み合わせた平面形状となっている。
図3に示すように、座面部55は、台形形状の幅狭の上底によってなされるその後縁部において、背当て部57と接続されており、また、台形形状の一対の側辺によってなされるその一対の側縁部において、それぞれ対応する側の第1側部60と接続されている。
【0038】
一方、背当て部57は、主として、シート支持機構40の背当て部支持枠42および背当て部支持枠42に保持されたベースシート44によって支持される。
図3に示すように、背当て部57は、平面視において、概ね、矩形形状の一方の短辺を曲線状となるように面取りしてなる形状となっている。背当て部57は、この曲線状に整形された縁部が座面部55から後方または上方に離間するようにして、配置されている。
【0039】
背当て部57は、矩形形状の他方の短辺によってなされる下縁部において、座面部55の後縁部と接続されている。背当て部57と座面部55は、例えば、縫い付けることによって互いに接続され、この場合、背当て部57と座面部55との接続箇所は、線状に延びる縫製ラインによって画成される。乳母車本体11のリクライニング動作や折り畳み動作にともなって、シート50の座面部55および背当て部57は互いに接近するようになる。この際、座面部55および背当て部57は、縫製ラインからなる線状の接続箇所を揺動軸線として、相対的に揺動することになる。
【0040】
背当て部57の直線状の一対の側縁部には、各第2側部67が接続されている。また、背当て部57の曲線状の上縁部には、ヘッドレストとして機能する上方部69が接続されている。一対の第2側部67は、シート支持機構40の側部プレート45に支持され、上方部69は、シート支持機構40の上部プレート46によって支持される。
図3に示された例では、一対の第2側部67および上方部69は、同一の材料によって一体的に構成されている。この例において、一対の第2側部67および上方部69は、例えば、縫い付けることによって背当て部57に接続されている。この場合、第2側部67および上方部69と背当て部57との接続箇所は、略U字状に延びる縫製ラインによって画成される。
【0041】
上述したように、上部プレート46は、背当て部支持枠42に対して揺動可能となっている。上部プレート46の背当て部支持枠42に対する揺動にともなって、上方部69は、縫製ラインからなる線状の接続箇所を揺動軸線として、背当て部57に対して揺動することになる。
【0042】
一方、
図1および
図2から理解され得るように、側部プレート45は、リクライニング動作によらず、背当て部支持枠42によって画成される面に対して起立した状態に維持されている。したがって、リクライニング動作によらず、側部プレート45に支持される第2側部67は、背当て部57にもたれかかる乳幼児の側方に起立している。
図3に示された例において、各第2側部67は、背当て部57の対応する側の側縁部の全域から延び出している。第2側部67は、乳幼児の頭部の側方に位置するようになる上方において広い幅を有している。一方、第2側部67は、座面部55に接近する下方において狭い幅を有しており、座面部55と背当て部57との接近を阻害しないように構成されている。
【0043】
また、
図3に示すように、側壁部53は、背当て部57および第1側部60に接続された連結部63を有している。図示する例では、左側の連結部63は、背当て部57の左側の側縁部に接続され、右側の連結部63は、背当て部57の右側の側縁部に接続されている。この例において、各連結部63は、例えば、縫い付けることによって背当て部57および対応する第1側部60に接続されている。この場合、各連結部63と背当て部57との接続箇所において、各連結部63は、背当て部57の対応する側の側縁部および対応する側の第2側部67の両方と重ねて縫着されていてもよい。
【0044】
なお、第1側部60が、内側に倒れ込むことや、幅方向に変形して幅方向に広がることをより効果的に防止する観点から、連結部63は、第1側部60よりも変形しやすくなっていることが好ましい。一例として、連結部63を、第1側部60よりも変形しやすい布地を用いて形成することができる。
【0045】
加えて、
図3に示すように、シート50は、第2側部67および上方部69の背当て部57から離間した外縁部から延び出たカバー70をさらに有している。
図1に示されているように、カバー70は、背当て部57、第2側部67および上方部69の乳幼児とは反対側の表面の一部を覆い隠すようになっている。
【0046】
ところで、シート50は、主として乳母車10に乗車した乳幼児を、乳母車本体11に快適に着座させて保護することを主目的として設けられている。このためシート50には柔軟性やクッション性が要望される。さらに、折り畳み動作を阻害しない観点からも、シート50には柔軟性やクッション性が求められる。また、比較的長い時間に亘って乳幼児がシート50に着座していると、乳幼児とシート50との間に熱や湿気が溜まりやすくなる。このため、シート50には通気性も要望される。このような要望に応えるとともに、外観においても魅力的なデザインとなり得るよう、シート50は、次のような層構成からなる布状材70を採用している。
【0047】
図4に、布状材70の構成の一例を示す。
図4に示すように、布状材70は、表面70aをなす第1生地71と、不織布72と、第1生地71と不織布72との間に配置された綿73と、第1生地71とは反対側の表面70bをなす第2生地75と、を有している。本実施の形態では、第1生地71は、表生地として機能し、乳幼児に面する側の表面70aをなしている。従って、布状材70は、第1生地71と、綿73と、不織布72と、第2生地75とを、乳幼児に面する側の表面70aからこの順で並べられている。一方、第2生地75は、裏生地として機能し、乳幼児とは反対側の表面70bをなしている。なお、以下に説明する形態では、第1生地71が乳幼児に面する側の表面70aをなしている例を用いて説明するが、このような例に限定されず、第1生地は、乳幼児とは反対側の表面をなしていてもよい。
【0048】
先ず、第1生地71について説明する。本実施の形態では、第1生地71は、乳幼児と直接接触し得る領域に位置している。このため、第1生地71には、肌触りの良さが求められると共に、乳幼児と第1生地71との間に熱や湿気が溜まることがないよう高い通気性が求められる。また、第1生地71は、シート50の外観を構成する部分でもあり、デザイン性に優れていることが好ましい。これらの機能を発揮する第1生地71として、本実施の形態では、Wラッセル生地を採用している。Wラッセル生地は、弾力のある繊維を柱状になるように織り込んで作られ、通気性が高く蒸れにくいという特性を有している。
【0049】
一方、綿73は、乳幼児を快適に着座させて保護するために、柔軟性やクッション性を布状材70に付与する層として機能する。ここでいう綿73とは、撚って糸状にされていない状態のものをいう。綿73は、とりわけ優れた柔軟性やクッション性を発揮し、市場で安価に入手可能である。このため、綿73を採用すると、シート50の製造原価を低減することに大きく寄与する。
【0050】
ところが、綿73はちぎれ易く、その一部が布状材70の表面から飛び出すおそれがある。このため、綿73を採用すると、綿73のちぎれおよび飛び出しを防止する機能を布状材70に付与しなければならない。このような機能を有する素材として、Wラッセル生地やリップ生地が知られている。このうち、Wラッセル生地は、通気性に優れるため、前述したように第1生地71に採用され得る。つまり、Wラッセル生地を第1生地71に採用することにより、綿73が乳幼児に面する側の表面70aから外部に抜け出ることも防止している。
【0051】
一方、Wラッセル生地は高価な生地であるため、表生地71とは反対側の表面をなす第2生地75にWラッセル生地を採用すると、シート50の製造原価を低減することが困難になる。このため、従来では、第2生地75として、Wラッセル生地に比べて安価なリップ生地を採用していた。しかし、リップ生地は、通気性が極めて低い。また、リップ生地は、目が非常に細かい生地であり、通気性を全く連想させることもない。このため、第2生地75としてリップ生地を採用すると、上述したように、乳母車の使用者は視覚的にも通気性に関して安心感を抱くことはない。
【0052】
そこで、本実施の形態では、綿73が表生地71とは反対側の表面70bから外部に抜け出ることがないよう、不織布72を綿73と第2生地75との間に介在させている。
【0053】
不織布72は、周知の通り、微細な繊維を密に集合させた繊維の集合体であり、より具体的には、繊維を撚らずに、熱、機械的または化学的な処理によって接合または絡み合わせた布である。不織布72は、繊維の集合体であるため、通気性を確保した上で綿73の飛び出しを防止することができる。また、不織布72は、繊維を撚らないため市場で安価に入手可能である。従って、不織布72を綿73と第2生地75との間に介在させることで、少なくとも布状材70の製造原価を大幅に増加させてしまうことはなく、さらに、後述するように第2生地75の材料選択によっては、リップ生地からなる第2生地(裏生地)を用いた場合と比較して、布状材70の製造原価を低下させることすら可能となり、同時に、綿73が乳幼児とは反対側の表面70aから外部に抜け出ることを防止することができる。
【0054】
また、不織布72は、微細な繊維を密に集合させた集合体からなるため、ある程度の防塵性を有している。これにより、乳幼児とは反対側の表面70bから布状材70に進入する塵や埃が、乳幼児側の表面70aに向けて通過することを効果的に抑制することができる。この結果、乳母車10に乗車した乳幼児を衛生面でも保護することができる。
【0055】
また、不織布72が、視認され得る場合、例えば、第2生地75の繊維の隙間から視認され得る場合には、不織布72に印刷処理や着色を施こしてもよい。これにより、シート50のデザイン性を向上させることができる。
【0056】
このような不織布72が表面に露出していると、ベースシート44や利用者の手との擦れにより、不織布72が破けてしまうおそれがある。このため、本実施の形態の布状材70は、乳幼児とは反対側の表面70bをなし、不織布72よりも摩擦強度に優れた第2生地75を有している。この第2生地75は、シート50の外観を構成する部分でもあり、デザイン性に優れていることが好ましい。もっとも、不織布72として、摩擦強度に優れ、擦れに対する十分な耐性を有するタイプのものを用いる場合には、第2生地75を設けずに、不織布72が乳幼児とは反対側の表面70bをなしてもよい。
【0057】
前述したように、従来のシートでは、柔軟性およびクッション性を布状材70に付与する層として綿を採用していたため、綿のちぎれや飛び出しを防止すべく、第2生地としてリップ生地を不可避的に採用していた。このため、従来のシートにおいて、第2生地は、通気性をほとんど有していなかった。一方、本実施の形態では、綿のちぎれや飛び出しを防止すべく、上述した不織布72を綿73と第2生地75との間に介在させている。従って、本実施の形態の第2生地75は、綿の飛び出しを防止する目的でリップ生地を採用する必要がなく、優れた通気性を確保し得るように構成することができる。第2生地75が通気性を有することにより、乳幼児とは反対側の表面70bから乳幼児側の表面70aに、あるいは、乳幼児側の表面70aから乳幼児とは反対側の表面70bに、空気が通過し易くなり、シート50に着座した乳幼児の快適性を大幅に改善することができる。また、乳母車の使用者は、視覚的に通気性に対する安心感も抱き、この点において、魅力的な商品となる。
【0058】
このような第2生地75として、本実施の形態では、メッシュ材を採用している。とりわけ、メッシュ材は、摩擦強度および通気性の点で優れている。上述したように、第2生地75は、綿のちぎれや飛び出しを防止する機能を布状材70に付与する必要がない。この点から、第2生地75として、比較的に目が粗い安価なメッシュ材を採用することもできる。そして、第2生地75としてメッシュ材を採用した場合には、メッシュ材の孔が通気性を思い浮かばせるため、乳母車10に乗車する乳幼児の保護者に安心感を抱かせ、この点において、乳母車10が魅力的な商品となる。
【0059】
以上のような構成からなる布状材70は、シート50のうちの任意の部分に適用可能である。本実施の形態では、座面部55および背当て部57が布状材70からなる。前述したように、座面部55は、乳幼児の臀部に接触して当該臀部を支持する。背当て部57は、乳幼児の背中に接触して当該背中を支持する。座面部55および背当て部57の少なくとも一部が、好ましくは座面部55および背当て部57の両方が、クッション性および通気性に優れた布状材70で構成されていることにより、乳母車10に優れた通気性が付与され、乳母車10に乗車した乳幼児の快適性を大幅に改善することができる。
【0060】
また、座面部55及び背当て部57の乳幼児とは対面しない側の面は、乳母車10の通常の使用状態において、鉛直方向における下方側に面している。このため、地面からの塵や埃が、乳幼児とは対面しない側の面を介して布状材70内部に進入し易い。本実施の形態では、座面部55及び背当て部57の乳幼児とは対面しない側の面が、メッシュ材からなる布状材70の第2生地75で形成されていたとしても、第2生地75に隣接して不織布72が配置されているため、メッシュ材からなる第2生地75から布状材70に進入する塵や埃が乳幼児に面する側の面に向けて通過してしまうことを効果的に防止され得る。
【0061】
一方、一体に形成された第2側部67および上方部69は、
図5に示す、布状材70に接続された第2布状材80で構成されている。
図5に、第2布状材80の構成の一例を示す。
図5に示すように、第2布状材80は、乳幼児に面する側の表面80aをなす表生地としての第3生地81と、第3生地81とは反対側の表面80bをなす裏生地としての第4生地85と、第3生地81と第4生地85との間に配置された綿83と、を有している。すなわち、第2布状材80は、第3生地81と、綿83と、第4生地85とを、乳幼児に面する側の表面80aからこの順で並べられている。このうち、第3生地81は、布状材70の第1生地71と略同様に構成され、Wラッセル生地からなる。一方、第4生地85は、綿83に隣接して配置されていることから、綿83のちぎれや飛び出しを防止し得る材料から構成されており、この点において、布状材70の第2生地75とは異なる。すなわち、本実施の形態では、第4生地85として、メッシュ材とは異なる素材、具体的にはリップ生地を採用している。
【0062】
図1に示すように、一対の第2側部67および上方部69は、乳幼児の上方を覆っているため、雨から乳幼児を保護する必要もある。この点において、第2布状材80の第4生地85として、優れた防水性や優れた撥水性を有し得るリップ生地が適している。
【0063】
加えて、第2側部67の乳幼児に対面しない側の面は、横方向における両外方を向いている。すなわち、第2側部67をなす第2布状材80の第2生地85が、乳母車10の走行中に、横方向における両外方に露出することになる。そして、この第2生地85が、目が細かく滑り性の良いリップ生地からなれば、乳母車10の走行中にシート50の第2側部67が周囲のものに引っ掛かってしまうことを効果的に防止することができ、また、乳母車10の使用者に対して視覚的に安心感を与え得る。
【0064】
なお、第1側部60は、座面部55から起立した姿勢に保持され、乳母車10に乗車した乳幼児に側方から対面する。この点から、乳幼児に接触し得る第1側部60が、クッション性を有した材料を用いて形成されていることが好ましい。また、図示された例において、第1側部60は、シート支持機構40によって直接支持されることなく、座面部55から起立した状態に保持されることが期待されている。この点において、第1側部60は、例えば、クッション性を有したスポンジ等の材料を二つの布地で挟んでなる布材等、自立性を有した布材を用いて構成されていることが好ましい。
【0065】
ところで、
図2に示すように、乳母車10のベースシート44には、通気のための通気領域49が形成されている。通気領域49は、ベースシート44のうちの優れた通気性を確保し得る領域であり、例えば、通気孔が設けられた領域として、あるいは、メッシュ材等の優れた通気性を示す材料からなる領域として、画成され得る。
図3に示された例において、ベースシート44に複数の通気孔が形成されており、ベースシート44のうちの通気孔が形成されている領域によって通気領域49が形成されている。通気領域49は、シート50がベースシート44に支持された状態において、ベースシート44のうちのシート50の座面部55に対面するようになる領域、および、ベースシート44のうちの背当て部57に対面するようになる領域、の両方に形成されている。従って、シート50がベースシート44に支持された状態において、座面部55および背当て部57を構成する布状材70の少なくとも一部は、通気領域49に対面するようになる。このような形態によれば、ベースシート44に通気領域49が形成されているため、シート50とベースシート44との間の通気性を更に高めることができる。また、シート50がベースシート44に支持された状態において、シート50の布状材70は、ベースシート44の通気領域49を介して視認され得る。このため、乳母車の使用者は視覚的に通気性に対する安心感を抱くことができ、この点において、更に魅力的な商品となる。
【0066】
以上のように、本実施の形態によれば、表面70aをなす第1生地71と、不織布72と、第1生地71と不織布72との間に配置された綿73と、を有する布状材70を備えている。この場合、安価な綿73によって、優れた柔軟性およびクッション性が布状材70に付与されると共に、布状材70の製造原価が低減される。加えて、布状材70は、安価な不織布72によって、通気性を確保した上で綿73が表生地71とは反対側の表面70bから外部に抜け出ることを防止することができる。これにより、布状材70が表生地71とは反対側の表面70bをなす第2生地75を有する場合であっても、第2生地75が綿73の飛び出しを防止する機能を有する必要がなくなり、第2生地75に通気性を有する安価な素材を選択することができる。従って、布状材70を備えるシート50によれば、優れたクッション性および通気性を乳母車用のシート50に付与することができるとともに、当該シート50の製造原価を低減することができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、第1生地71は、乳幼児に面する側の表面70aをなす。この場合、不織布72によって、通気性を確保した上で綿73が乳幼児とは反対側の表面70bから外部に抜け出ることを防止される。これにより、布状材70が乳幼児とは反対側の表面70bをなす第2生地75を有する場合であっても、第2生地75に、通気性を有する安価な素材を選択することができる。従って、このような形態によれば、従来、ほとんど通気性を有していなかった乳幼児とは反対側の表面70bの通気性を確保した上で、当該シート50の製造原価を低減することができる。
【0068】
加えて、本実施の形態によれば、布状材70は、第1生地71とは反対側の表面70bをなす第2生地75をさらに有する。このような形態によれば、不織布72が、利用者の手や使用時に接触し得る他の部材と擦れることにより破けることを効果的に抑制することができる。
【0069】
また、第2生地75は、綿のちぎれや飛び出しを防止する機能を有していなくてもよいため、リップ生地以外の素材を採用することによって通気性を確保することができる。第2生地75が通気性を有することにより、乳幼児とは反対側の表面70bから乳幼児側の表面70aに、あるいは、乳幼児側の表面70aから乳幼児とは反対側の表面70bに、空気が通過し易くなり、シート50に着座した乳幼児に更なる快適性を提供することができる。このような第2生地75として、メッシュ材が適している。とりわけ、メッシュ材は、摩擦強度および通気性の点で優れている上に、第2生地75として、比較的に目が粗い安価なメッシュ材を採用すれば、シート50の製造原価を大幅に低減することができる。加えてメッシュ材は、通気性を連想させる素材であり、乳母車の使用者は視覚的に通気性に対する安心感を抱くことができ、この点において、魅力的な商品となる。
【0070】
また、シート50は、その位置に応じて求められる機能が異なってくる。例えば、座面部55および背当て部57は、乳幼児に対して優れたクッション性および通気性を発揮することが期待され、第2側部67および上方部69は、雨から乳幼児を保護する機能も期待される。この点、本実施の形態によれば、布状材70と接続された第2布状材80をさらに備え、第2布状材80は、乳幼児に面する側の表面80aをなす第3生地81と、乳幼児とは反対側の表面80bをなす第4生地85と、第3生地81と第4生地85との間に配置された綿83と、を有する。このような形態によれば、布状材70とは異なる特性を有する第2布状材80をシート50に部分的に適用することができるため、布状材70のみからなる場合に比べて、シート50の位置に応じた適切な機能を付与することができる。その一方で、第2布状材80も安価な綿83によって優れた柔軟性およびクッション性を付与される。従って、シート50が第2布状材80を含んでいても、シート50の製造原価を増大させることはない。
【0071】
また、本実施の形態によれば、布状材70は、第1生地71、綿73、不織布72および第2生地75のみからなる積層体である。このような形態によれば、布状材70を極めて安価に構成することができ、この結果、シート50の製造原価を大幅に低減することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、第2布状材80は、第3生地81、綿83および第4生地85のみからなる積層体である。このような形態によれば、第2布状材80を極めて安価に構成することができ、この結果、シート50の製造原価を大幅に低減することができる。
【0073】
≪変形例≫
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0074】
上述した実施の形態では、
図4に示すように、布状材70が第1生地71、綿73、不織布72および第2生地75からなる積層体である例を示したが、布状材70の構成は、上述した例に限定されない。
図6に、布状材70’の層構成の他の例を示す。
図6に示す例では、布状材70は、第1生地71’と綿73との間に配置された第2不織布76をさらに有し、第1生地71’はメッシュ材からなる。このような形態によれば、第2不織布76によって、通気性を確保した上で綿73が乳幼児に面する側の表面70aから外部に抜け出ることを防止することができる。このため、第1生地71としてラッセル生地よりも安価なメッシュ材を採用することができ、布状材70の製造原価を更に低減することができる。また、第2不織布76の防塵性によって、綿73側から乳幼児側の表面70aに向けて、塵や埃が通過することを効果的に抑制することができる。
【0075】
また、第1生地71’は、通気性に優れたメッシュ材からなるため、シート50に着座した乳幼児を快適に保護することができる。加えて、第1生地71’として、比較的に目が粗い安価なメッシュ材を採用すれば、シート50の製造原価を更に大幅に低減することができる。
【0076】
また、上述した実施の形態では、
図3に示すように、乳幼児の側方に位置する側壁部53が、座面部55から両側方に延び出た左右の第1側部60と、背当て部57から延び出た左右の第2側部67と、を有している例を示したが、側壁部53の構成は、上述した例に限定されない。側壁部は、座面部および背当て部の少なくとも側方に配置されるそれ自体既知の任意の構成を採用することができる。一例として、側壁部は、座面部および背当て部の両方に接続され、当該座面部および背当て部から両側方に延び出るように形成された、単一の部材で形成されていてもよい。