特許第6184710号(P6184710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184710磁気共鳴システムにおいて使用するための材料、材料の製造方法及び磁気共鳴システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184710
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】磁気共鳴システムにおいて使用するための材料、材料の製造方法及び磁気共鳴システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170814BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61B5/05 390
   G01N24/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-55232(P2013-55232)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2013-192942(P2013-192942A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2016年1月25日
(31)【優先権主張番号】10 2012 204 570.8
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ビーバー
(72)【発明者】
【氏名】イヴォンヌ カンディドゥス
(72)【発明者】
【氏名】フベルツス フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト グライナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クントナー
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−290839(JP,A)
【文献】 特開2009−028506(JP,A)
【文献】 特開2008−295884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/055
G01R33/38
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体材料(2)定められた割合で混加された磁性ドーピング材料(3)及び別の割合で混加された別の磁性ドーピング材料(4)を含み、
1mm3より小さい体積(10)内に、前記基体材料(2)前記ドーピング材料(3)及び前記別のドーピング材料(4)の均一な混和が存在し、
前記別のドーピング材料(4)の磁化率の符号が前記ドーピング材料(3)の磁化率の符号に等しくない、磁気共鳴システムに使用するための材料。
【請求項2】
前記ドーピング材料(3)の粒度(20)が200μmより小さい請求項1記載の材料。
【請求項3】
前記ドーピング材料(3)は磁性のナノ粒子を含み、前記ドーピング材料(3)の粒度(20)が1μmより小さい請求項1又は2記載の材料。
【請求項4】
前記磁性のナノ粒子は強磁性である請求項3記載の材料。
【請求項5】
前記ドーピング材料の割合は0.1%〜80%の範囲にある請求項1から4のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
前記基体材料(2)はアクリロニトリル-ブタジエン-スチロール(ABS)合成物質である請求項1から5のいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
前記基体材料(2)は、熱可塑性物質、熱可塑性エラストマー、エラストマー、熱硬化性物質、発泡プラスチックの群から選ばれる請求項1から6のいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
前記ドーピング材料(3)は、成分としてグラファイト、ビスマスを含む反磁性材料の第一の群から選択されるか、又は成分として白金、クロム、タングステン、フェリチンを含む常磁性材料の第二の群から選択される請求項1から7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項9】
前記材料(1)は、水、組織、有機材料または空気の磁化率に等しい巨視的磁化率を有する請求項1から8のいずれか1項に記載の材料。
【請求項10】
前記材料(1)は、水、組織、有機材料及び空気の少なくとも1つの磁化率に等しくない巨視的磁化率を有する請求項1から8のいずれか1項に記載の材料。
【請求項11】
前記体積(10)中の前記材料(1)核スピンのT2*緩和時間を有し、前記緩和時間は前記基体材料(2)の対応するT2*緩和時間の1/2以下である、請求項1から10のいずれか1項に記載の材料。
【請求項12】
前記別のドーピング材料(4)の粒度が100μmより小さい請求項1から10のいずれか1項に記載の材料。
【請求項13】
磁気共鳴システムに使用するための材料(1)を製造するために、
合成物質からなる基体材料(2)を押出成形機により融解し、
1mm3より小さい体積(10)内に均一な混和が存在するように、前記基体材料磁性ドーピング材料(3)及び前記磁性ドーピング材料(3)と磁化率の符号が等しくない別の磁性ドーピング材料(4)の混加を行う、磁気共鳴システムに使用するための材料の製造方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の材料(1)を製造するために使用される請求項13記載の方法。
【請求項15】
感度領域内で画像形成のための磁気共鳴データを検出し、
前記画像形成のために感度領域内に構成要素(41、42、43)を含んでおり、
前記構成要素(41、42、43)が請求項1〜12のいずれか1項に記載の材料(1)を含む磁気共鳴システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴設備において使用するための材料、その材料の製造方法及びその材料からなる構成要素を含む磁気共鳴設備に関する。特に、本発明は磁気共鳴画像形成における減ぜられた可視化性を有する材料に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴(以下MRという)画像形成は、医学の多くの領域において検査及び診断のために使用される画像形成方法である。核スピン共鳴の物理的効果が基礎を形成する。MR信号を取り出すため、基本磁場磁石を用いて検査領域内で基本磁場が当てられ、その基本磁場は核、例えば水素原子核H−1又は窒素原子核N−14の磁気モーメントを整列させる。
【0003】
高周波(以下HFという)パルスの照射によって、核スピンは整列した位置から基本磁場に平行に、すなわち静位置に、又は他の状態にそらされ得る、もしくは励起され得る。静位置への緩和の期間中に崩壊信号が生じ、この信号は1つ又は複数のHF受信パルスを用いてMR信号として誘導検出され得る。例えば、核スピンの適切なディフェイジング及びリフェイジングは、適切にスイッチングされた傾斜磁場によってMR信号を得ることができる。そのような効果は、いわゆるグラディエントエコー・MR撮像シーケンスにおいて使用される。
【0004】
高周波パルスの照射の際にスライス選択グラディエントを添えることによって、検査対象の1つのスライスにおける核スピンのみが励起され、そのスライスにおいては局所的磁場強度に基く共鳴条件が満たされている。他の空間エンコーディングが、読取期間中少なくとも1つの位相エンコーディンググラディエント、および周波数エンコーディンググラディエントを添えることによって行うことができる。それによって、被検者の複数のスライスから空間分解的にMR信号を得ることが可能である。適切な表示方法を用いて、そのように被検者の特定の領域の3次元(以下3dという)画像を診断のために利用することが可能である。その際MR画像形成の典型的な空間分解能は、3空間方向のすべてにおいて例えば1mmの値をとることができる。そのような局所的に広がった画像形成点はボクセルと呼ばれる。
【0005】
MR画像形成のため、少なくとも寝台又はテーブル上の患者が基本磁場磁石の内部へ運び込まれる。さらに、MR画像形成の改善のためHF局所コイルが用いられ、このコイルは患者のすぐ傍に位置される。それによって、画像形成の空間内には、患者のみならず、例えば寝台やコイルのような、種々の材料で作られた他の部分も存在する。しかしながら、これらの材料はMR画像形成に対しても用いられる核を含んでいるから、それらの材料も同じように画像形成されている可能性がある。
【0006】
MR画像形成に用いられる検査領域内に存在する材料の画像形成特性は、MR画像にアーチファクトを生じさせる可能性がある。そのようなアーチファクトは、不正確な診断に導いたり、或は画像を診断上使用不可能にする可能性がある。経験的なテストにおいて、MR画像形成における減ぜられた可視化性を有する比較的わずかな材料のみが知られている。MR画像形成における減ぜられた可視化性と並んで、MR設備内の利用可能性にとってなお他の基準、例えば導電率が0か又は低いこと、さらに磁化率が0か低いことが決定的であるので、使用し得る材料の数は限られている。
【0007】
例えばあきらかにコストが比較的安い合成物質は使用することができないので、このことはMR設備に使用するための構成要素の製造におけるコストの上昇を結果としてもたらす。さらに、例えば柔らかく可撓性の合成物質は、日常生活の種々の領域から知られているものであるが、MR画像形成における減ぜられた可視化性を持たないから、バルク材料として使用することができない。このことは、MR設備に使用するための構成要素の使用もしくは製造の際に快適性を減ぜられること、デザインの自由度を制限されることを結果としてもたらすことになる。さらに、特に良好に加工可能な又は特に強靭もしくは安定な材料を使用することができない可能性がある。このことは、MR設備に使用するための構成要素の信頼性が減ぜられること、もしくは寿命が減ぜられることを結果としてもたらす可能性がある。
【0008】
例えば、常磁性体及び反磁性体の少なくともいずれか一方の物質を混合することによって、基体材料の磁化率をあらかじめ決定した固定値に整合させることが可能な技術が知られている(例えば特許文献1)。しかしながらそこに開示された技術は、磁化率誤整合の減少に関し、その結果において静磁場は数センチメートルの長さスケール上で変化し、基本磁場の所望の値からずれる。それによって、例えばMR画像におけるずれもしくは位置空間ひずみが発生するか、またはスペクトル脂肪飽和技術の品質が負に影響される可能性がある。しかしながらMR画像形成における材料の可視化性は制御されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7604875B2明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故、MR設備の構成要素に使用するため、かつ上述の欠点がなく、しかも減ぜられたMR可視化性を持つ材料を供給することが可能な技術を提供する必要が存在する。特に減ぜられた可視化性を持った種々の基体材料を供給する技術を提供する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、磁気共鳴設備に使用するための材料が、基体材料と定められた割合で混加された磁性ドーピング材料とを含み、前記材料の1mm3より小さい体積内に、前記基体材料と前記ドーピング材料との実質的に均一な混和が存在する磁気共鳴設備に使用するための材料によって解決される(請求項1)。
磁気共鳴設備に使用するための材料に関する本発明の有利な実施態様は次の通りである。
・前記ドーピング材料の粒度が、約200μmより小さい、好ましくは約10μmより小さい(請求項2)。
・前記ドーピング材料は磁性のナノ粒子を含み、前記ドーピング材料の粒度が約1μmより小さい、好ましくは100nmより小さい(請求項3)。
・前記磁性のナノ粒子は強磁性である(請求項4)。
・前記ドーピング材料の割合は0.1%〜80%の範囲、好ましくは1%〜20%の範囲、特に好ましくは9〜11%の範囲にある(請求項5)。
・前記基体材料はアクリロニトリル-ブタジエン-スチロール(ABS)合成物質である(請求項6)。
・前記基体材料は次の群の熱可塑性物質、熱可塑性エラストマー、エラストマー、熱硬化性物質、発泡プラスチックから選ばれる(請求項7)。
・前記ドーピング材料は成分としてグラファイト、ビスマスを含む反磁性材料の第一の群から選択されるか、又は成分として白金、クロム、タングステン、フェリチンを含む常磁性材料の第二の群から選択される(請求項8)。
・前記材料は、水または組織または有機材料または空気の磁化率にほぼ等しい巨視的磁化率を有する(請求項9)。
・前記材料は、水及び組織及び有機材料及び空気の少なくとも1つの磁化率に等しくない巨視的磁化率を有する(請求項10)。
・前記材料は前記体積中に核スピンのT2*緩和時間を有し、前記緩和時間は前記基体材料の対応するT2*緩和時間より1/2倍、好ましくは1/4倍小さい(請求項11)。
・前記材料は、別の割合で混加された別の磁性ドーピング材料を含み、前記体積内には前記基体材料及び前記ドーピング材料及び前記別のドーピング材料の均一な混和が存在し、前記別のドーピング材料の磁化率の符号が前記ドーピング材料の磁化率の符号に等しくない(請求項12)。
・前記別のドーピング材料の粒度が100μmより小さい、好ましくは10μmより小さい(請求項13)。
・前記ドーピング材料の割合と前記別のドーピング材料の別の割合とは異なり、巨視的磁化率が定められた値に等しい(請求項14)。
【0012】
この課題は、本発明によれば、磁気共鳴設備に使用するための材料を製造するために、
合成物質からなる基体材料を押出成形機により融解し、
1mm3より小さい体積内に基体材料とドーピング材料との均一な混和が存在するように磁性ドーピング材料の割合の混加を行う
磁気共鳴設備に使用するための材料の製造方法によって解決される(請求項15)。
磁気共鳴設備に使用するための材料の製造方法に関する本発明の実施態様は次の通りである。
・本発明による材料を製造するために使用される(請求項16)。
さらに、前記課題は、本発明によれば、感度領域を有する磁気共鳴設備が、感度領域内で画像形成のための磁気共鳴データを検出するために構成されており、磁気共鳴設備が画像形成のために感度領域内に構成要素を含んでおり、前記構成要素が本発明による材料を含む磁気共鳴設備によっても解決される(請求項17)。
【0013】
1つの視点に従って磁気共鳴(MR)設備に使用するための材料が提供される。その材料は、基体材料と定められた割合で混加された磁性ドーピング材料とを含み、材料の1mm3より小さい体積内に基体材料とドーピング材料との実質的に均一な混和が存在する。
【0014】
例えば、磁性ドーピング材料は反磁性、常磁性または強磁性であってよい。そのドーピング材料は、基体材料の磁化率とは異なる磁化率を持っていることができる。例えば、基体材料はすなわち非磁性、つまり磁化率を持たないか又は極めてわずかの磁化率を持つものであってよい。しかしまた、基体材料は磁性であることも可能である。
【0015】
実質的に均一な混和とは、例えば、任意に配置され1mm3より小さい大きさの適切な(テスト)体積内に、常に定められた割合のドーピング材料が存在することを意味し得るものである。ドーピング材料の混加の際、不均一および濃度における局所的もしくは微視的な差異が生じ得る。このことは、そこに局所的な領域またはクラスターが存在し得る場合であり、そこではドーピング材料が平均値に対し高められた濃度で存在している、ないしはそこでは基体材料が平均値に対し高められた濃度で存在している。しかしながら、混加は精確ないし一様であり得るので、そのような不均一は体積について平均された観察においては存在しない。言い換えれば、ドーピング材料の濃度勾配は、微視的な長さスケール上では、もしくは1mmより小さい長さスケール上では0とは異なる値を取り得るが、一方1mm又はそれより長い長さにわたる特定のないしは平均化された濃度勾配は0に等しいかそれに近い値をとる。
【0016】
磁化率χ≠0を有する磁性ドーピング材料の混加によって、MR設備の基本磁場内へ材料が持ち込まれる際、材料内で磁場は局所的に基本磁場強度からずれることが生じる。これは例えば磁性ドーピング材料の減磁効果に基き起こり、この効果は外部磁場を強めたり弱めたりする。静磁場の対応する物理現象は当業者に知られており、それ故この関連においては詳細に討議することは必要としない。
【0017】
したがって局所的に変化する磁化率に基いて、磁場の微視的不均一が発生する。特に混和の精緻さ及びドーピング物質の(微視的)幾何学的形状に関連する代表長さ(characteristic length ;”特性長”または”特性長さ”とも呼ばれている)上の磁場が変化する。すなわち、例えば体積の大きさから生じる1mmより小さい代表長さを持ったものである。1mmより小さい長さスケール上のそのような均一な混和は、スピンがより速くディフェイジングするから、すなわちより短いT2*緩和時間が達成されるから、材料がMR画像形成において減ぜられた可視化性を有することをもたらし得る。例えば、すなわち典型的なMR設備の空間分解能すなわちボクセルの大きさは約1mmのオーダをも有し得る。このことは、例えば1mm3の対応する画像形成体積についてMR信号が検出される際、平均化されないしは積分されることを意味する。この体積内で磁化率及びしたがって局所磁場が変わると、信号に寄与する核スピンをディフェイジングする割合が局所的に異なり得る。例えばグラディエントエコーシーケンスを使用する場合、このことは異なるエコー時点を生じさせ得る。信号強度は減少し得る。このことは、MR可視化性を減じ得る。例えばさらに材料は体積中の核スピンのT2*緩和時間を有することができ、この緩和時間は基体材料の対応するT2*緩和時間よりファクター2だけ、好ましくはファクター4だけ小さい、すなわち1/2倍、好ましくは1/4倍小さい。
【0018】
ここで材料とは、基体材料とドーピング材料とを含む材料を意味する。T2*緩和時間は、磁場不均一性に関して当業者に知られており、静位置に垂直な核スピンのディフェイジングに関係する(スピン−スピン緩和)。T2*緩和時間は、例えば1回限りの90°HFパルス後の時間を意味し得るもので、その時間後横磁化はその出発値の37%に戻されている。例えばグラディエントエコー・MR撮像シーケンスにおいては、T2*時間は信号強度ないし信号対雑音比に対し決定的であり得るもので、いわゆるT2*強調画像形成がそれである。
【0019】
これに関して、混加されるドーピング材料に基くMR画像形成における例えば磁化率の局所的変化ないし可視化性は、ドーピング材料の粒度及び粒の形状に特徴的に左右され得る。ドーピング材料の粒度は、200μmより小さく、好ましくは10μmより小さくあってよい。特に粒度は例えば約100μmの範囲にあってよい。用語「粒度」は例えば平均粒度を意味する。ドーピング材料は、特に粒度について例えばガウス曲線によって描くことのできる分布を有することができる。対応するシナリオは当業者に知られている。粒度がわずかなことは、例えば、材料のさらに別の特性、例として頑丈性、伝導率、脆性等に関して利点をも持ち得る。
【0020】
これに関して、ドーピング材料は磁性のナノ粒子を含み、ドーピング材料の粒度は約1μmより小さい、好ましくは約100nmより小さいことが可能である。例えば、磁性のナノ粒子として強磁性のものが知られている。典型的には、磁性のナノ粒子は特にわずかな粒度、例えば20〜50nmの範囲の大きさを有することができる。そのような場合には、明らかに1mm3より小さい体積、例えば1μm3の大きさの体積、においても特に均一な混和を達成することが可能となり得る。
【0021】
強磁性のナノ粒子は特に大きな磁化率を有することができ、そのようにして局所磁場の特に強い変化を生じさせることが可能である。そのようにして、核スピンの局所的ディフェイジングにおける差異が特に大きい結果となり、かつMR画像形成における可視化性が特に強く減ぜられることが可能である。言い換えれば、強磁性のナノ粒子を使用することによって、基体材料のT2*緩和時間が特にわずかという結果になることが可能である。
【0022】
例えば、割合は0.1%〜80%の範囲、好ましくは1%〜20%の範囲、特に好ましくは9%〜11%の範囲にあり得る。例えば、このパーセントは重量パーセント又は体積パーセントを意味し得る。
【0023】
特に、割合は、材料の巨視的磁化率、すなわち材料の大きな部分に対し平均されて測定される磁化率と直接関連し得る。そうであるから、ドーピング材料のより大きい割合が、材料の巨視的磁化率がより大きな絶対値をとるという結果をもたらす。それ故、一方ではドーピング材料の大きな割合を基体材料に混加することが望ましくあり得る。他方では、混加されるドーピング材料の割合が大き過ぎることによって悪化せしめられるかもしれない、材料の特定の、例えば電気的及び機械的な材料特性を維持することが望ましくあり得る。例えば、特に頑丈な材料を得ることが望ましいが、ドーピング材料の大き過ぎる割合の混加によって脆くなる。
【0024】
これに関して、基体材料は例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチロール(ABS)合成物質であってよい。そのような合成物質は、テルラン合成物質(Terluran、BASF社商品名)としても知られている。特に好ましい実施様式においては、基体材料は例えばABS GP22であってよい。
【0025】
一般に、基体材料は、次の要素、すなわち熱可塑性物質、熱可塑性エラストマー、エラストマー、熱硬化性物質、発泡プラスチックを含む群から選ばれることができる。そのような材料は、強度、弾性、耐熱性、わずかな導電率、磁気特性等に関して好ましい特性を有する。基体材料としてはレキサン合成物質を使用することもできる。
【0026】
それに応じて、ドーピング材料は例えば反磁性(磁化率<0)または常磁性(磁化率>0)のいずれかであってよい。例えば、ドーピング材料は成分としてグラファイト、ビスマスを含む反磁性材料の第一の群から選択されることが可能である。しかしまた、ドーピング材料は、成分として白金、クロム、タングステン、フェリチンを含む常磁性材料の第二の群から選択されることも可能である。特にそのような、磁化率の比較的大きな値を持った材料を用いることができ、その結果磁気共鳴設備における基本磁場の値からの磁場の局所的なずれが特に大きくなる。それに応じて、核スピンの局所的ディフェイジングは著しく異なるようになり、その結果T2*緩和時間の値は特にわずかな結果になり得る。ドーピング材料はパラジウムであるか、または炭素ナノチューブを含むことも可能である。
【0027】
例えば、材料は、水または組織または有機材料または空気の磁化率に実質的に等しい巨視的磁化率を有することができる。巨視的磁化率は、例えば、材料の大きな部分の特殊な事例において、従って巨視的な規模で測定されるような磁化率の値を意味し得る。そのような部分に対しては、種々の磁気特性(反磁性、常磁性、強磁性)を有する基体材料および1つ又は複数のドーピング材料の平均化された混和が存在する。例えば、その部分は体積に等しいかそれより大きい規模を有し得る。上述の大きさの磁化率に対する値は当業者に知られており、例えば、水ないし組織に対してはχ=9×10-6、または有機材料に対してはχ=6×10-6、または空気に対してはχ=0.38×10-6である×。
【0028】
先に詳述されたように、本発明のそこで討議された視点に従えば、材料は、基体材料とドーピング材料との細かい混和に基いて磁化率が局所的に変化する効果を持つことができる。それによって、T2*緩和時間は特にわずかな結果となり、材料はMR画像形成において減ぜられた可視化性を有することができる。さらになお、材料が上述の値の1つを持つ巨視的の平均化された磁化率を有する場合に対しては、この減ぜられたMR可視化性の効果のかたわらへ、磁化率整合の別の効果が歩み寄る。すなわち、例えば、空気−組織の境界面に磁化率勾配が現れ得る、すなわち磁化率の変化が場所の関数として現れ得る。例えば、皮膚表面において磁化率の値がχ=0.38×10-6からχ=9×10-6へ変化する。このことは、局所的な磁場の値がこの領域内及び領域の周りでMR設備の基本磁場の値からずれることをもたらし得る。そうすればMR画像形成はこの領域においていわゆる磁化率アーチファクト、例えばMR画像におけるずれ等を有し得る。
【0029】
しかしながら材料が相応にマッチングした値を有する場合には、例えば体の近傍に存在する例えばHPコイルまたはシムパッドのようなMR設備の構成要素に対し材料が用いられると、材料−組織の境界面に著しい磁化率勾配は現れないことが達成され得る。言い換えれば、磁化率のミスマッチングは、MR画像形成に寄与しない領域へ移され得る。それによって、MR画像における磁化率アーチファクトは減ずることが可能になる。
【0030】
しかしまた、材料は水または組織または空気または有機材料の上述のこれらの値からずれた磁化率を有することも可能である。このことは例えば、特に減ぜられたMR可視化性を達成するために有利であり得る。そうすれば、材料特性の最適化は換言すればMR可視化性の低減に関して行われ得るものであり、そのことはまず第一に磁化率の微視的場所依存性が関係し、一方巨視的磁化率はさして重要ではない。
【0031】
例えば特に、材料は、別の割合で混加された別の磁性ドーピング材料を含み、体積内に基体材料とドーピング材料とさらに別のドーピング材料との均一な混和が存在可能であり、また別のドーピング材料の磁化率の符号がドーピング材料の磁化率の符号に等しくなくてよい。したがって、例えばドーピング材料は常磁性であり、別のドーピング材料は反磁性である(またはその逆)ことが可能である。ドーピング材料又は別のドーピング材料は強磁性であることも可能である。
【0032】
そのような場合、微視的磁化率勾配は特に大きな値をとり、ないしはMR画像形成のボクセル内には多くの異なる局所的磁場強度が存在するから、たとえば特にわずかなT2*緩和時間の効果が達成され得る。同時に、ドーピング材料の割合及び別のドーピング材料の別の割合をそれらの両ドーピング材料の磁化率に依存して適切に選択することによって、材料の巨視的磁化率の値を適切に設定することが可能である。
【0033】
一般に、基体材料(磁化率χB)にそれぞれ磁化率χnを有するN個のドーピング材料を混加することができる。その結果巨視的磁化率χmは次式のようになる。
【数1】
ここでVB、VDnは基体材料及びドーピング材料のそれぞれの体積割合である。それ故次式が成立する。
【数2】
例えば、式1から、2つのドーピング材料、すなわちグラファイト粉末χD1=−205×10-6及びパラジウム粉末χD2=−806×10-6に対しそれぞれVD1=5.20%及びVD2=0.20%について非磁性χB=0の基体材料に混ぜ合わされることで、χm=−9×10-6の結果が得られる。これは人の組織の値に対応する。この場合基体材料は例えばABS GP22であってよい。
【0034】
例えばまた、この基体材料にVD1=5%のグラファイト及びVD2=0.50%又はVD2=1.00%のパラジウムを混加することも可能であり、それは−6.6ppmないし−2.6ppmの巨視的磁化率をもたらす。
【0035】
上述の例は純粋に説明用のものである。一般にドーピング材料の割合と別のドーピング材料の別の割合とは異なっていてよく、その結果巨視的磁化率は特定の定められた値に等しい。特に、材料の巨視的磁化率は、ドーピング材料及び別のドーピング材料を混加することによって例えば水、空気、組織又は有機材料の値に等しくあることが可能である。特に、別のドーピング材料の粒度は例えば200μmより小さい、ないしは好ましくは10μmより小さくあることも可能である。一般に、別のドーピング材料についての対応する要求もしくは同じ要求が設定され得ることは、ドーピング材料に関して先に述べられたと同様である。
【0036】
さらに別の視点に従えば、本発明は磁気共鳴設備に使用するための材料の製造方法に関し、その方法は、合成物質からなる基体材料を押出成形機により融解し、1mm3より小さい体積内において均一な混和が存在するような割合の磁性ドーピング材料の混加を行うことを含む。そのような方法は、本発明の別の視点に従う磁気共鳴設備に使用するための材料を得るために用いることができる。
【0037】
別の視点に従えば、本発明は感度領域を有する磁気共鳴設備に関し、その磁気共鳴設備は、感度領域内で画像形成のために磁気共鳴データを検出するために構成されており、磁気共鳴設備は画像形成のため感度領域内に構成要素を含む。磁気共鳴設備は、構成要素が先に討議された本発明の視点に従う磁気共鳴設備における使用のための材料を含むことを特徴とする。例えば、構成要素は、高周波コイルに関係し、患者をMR設備へ運び入れるためのテーブルまたは寝台又はシムパッドが関係する。そのような構成要素を製造するために本発明の視点に従う材料が使用されると、これらの構成要素はMR画像形成における減ぜられた可視化性を有することができる。これらの構成要素はまた有利に周辺の磁化率にマッチングした磁化率を有することができ、その結果MR画像形成における磁化率アーチファクトが減ぜられ得る。
【0038】
当然に、はじめに記述された実施形態の特徴及び本発明の視点は相互に結合することができる。特に、特徴は記述された組合せにおいてのみならず、他の組合せにおいても、または独自に選び取られて、本発明の分野から逸脱することなく、使用されることが可能である。
【0039】
この発明の上述の特性、特徴及び利点並びにこれらのものが達成される方法は、図面と関連して詳細に説明される実施例の以下の記述と関連してより明確、明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】基体材料と混加されるドーピング材料とを有する材料を示す図である。
図2】ドーピング材料の粒度分布を示す図である。
図3】磁化率のミスマッチングに基く第一の代表長さスケール上の磁場変化を示す図である。
図4】微視的磁化率勾配に基く第二の代表長さスケール上の磁場変化を示す図であり、その第二の代表長さスケールは図3の代表長さスケールより小さい。
図5】基体材料と混加されるドーピング材料と別のドーピング材料とを有する材料を示す図である。
図6】MR設備の構成要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下本発明を有利な実施形態に基づいて図面を参照して詳細に説明する。図において同一符号は同一又は類似の要素を表わす。
【0042】
図1は、基体材料2と混加されたドーピング材料3とから構成されている材料1を表わす。そのドーピング材料は粒ないしクラスター(集合体)状に基体材料2内に埋め込まれて示されている。粒度20が表示されている。
【0043】
図2において、粒度分布21、すなわち種々異なる粒度の頻度が例によって示されている。粒度分布21の最大値は例えば粒度20を示すことができる。図2において、粒度分布21はガウス曲線によって描かれている。例えば、粒度20は200μmより小さく、好ましくは100μmより小さく、特に好ましくは10μmより小さくあってよい。
【0044】
再び図1に関して、ドーピング材料ないし基体材料の、濃度の巨視的平均値からの濃度ずれが存在することが明らかである。このことは、ドーピング材料3の粒ないしクラスターに起因する。均一の混和、したがって基体材料及びドーピング材料の濃度が極端な場合大きな体積の巨視的値に合致する混和は、1mm3の大きさを持った体積(ボリューム)10に対して達成される。言い換えれば、関与される材料2、3の濃度は、約1mmの代表長さで微視的に変化する。より大きい長さにわたって平均化されると、値は巨視的平均値に等しい値が得られる。
【0045】
そのようなパラメータは例えば製造プロセスに関係する。そのように、ドーピング材料の下準備がより小さな粒度及びそのように特に均一で細かい混和をもたらすことができる。例えば、基体材料2は合成物質、例えばABS GP22であってよい。例えば合成物質を融解するための2軸押出機の使用は、特に細かく均一な混和を可能にすることができる。
【0046】
ドーピング材料3は磁性材料であり、すなわち0に等しくない磁化率を有する。ドーピング材料3は例えば強磁性、反磁性または常磁性であってよい。ドーピング材料3は特に、基体材料2の磁化率と異なる磁化率を有することができる。これにより、上述の代表長さスケール上に、すなわち体積(ボリューム)10内に、磁化率変化、すなわち磁化率の局所的変動が現れる。これは、体積10内に位置(場所)に依存して異なる磁化率値が存在することを意味する。例えば、ドーピング材料3はグラファイトまたは炭素ナノチューブまたはビスマスまたはパラジウムまたは白金またはクロムまたはタングステンまたはフェリチンであってよい。ドーピング材料は例えば5〜15重量%ないし体積%の割合に混ぜ合わされ得る。
【0047】
例えば、材料1はMR設備内の構成要用に使用することができる。そこでは典型的に核スピンを偏極させるための基本磁場が存在する。体積10内の局所的に異なる磁化率に基いて、基本磁場は体積10内で異なる。それ故体積10内の異なる位置における核スピンは異なる速さでディフェイジングする。MR設備がMR画像形成のため体積10について積分すると、T2*緩和時間が短縮されているから、材料1は減ぜられた可視化性を有することになる。特にこのことは、いわゆるグラディエントエコーMR撮像シーケンスに該当し得るものであり、このシーケンスは当業者に知られているところである。体積10(いわゆるボクセル)についてのMR画像形成のための積分は、例えばMR設備の限定された空間分解能によって引き起こされ得るものであり、ないしは信号対雑音比を高めるため相応に蓄積された測定値を検出するために必要とする限定された感度に基き必要であり得る。
【0048】
材料1の比較的低い均一性の混和の場合、例えば特にMR設備の空間分解能より大きい代表長さスケール上にある材料の混和の場合には、比較的わずかに短縮されたT2*緩和時間が存在し得ることが理解されるべきであろう。そうすれば、すなわち体積10内に磁場強度の比較的にわずかな変化が存在し得るので、核スピンに対する異なるディフェイジング条件は存在しない。
【0049】
種々の言及した代表長さスケールは図3及び図4に示されている。図3において、局所的磁化率31(実線、右方スケール)の急な跳躍に対して磁場30(破線、左方スケール)の値が位置32の関数として示されている。図3から明らかなように、磁化率跳躍の周りの領域における磁場30の値は一定値(例えばMR設備における基本磁場の値)から外れる。例えば、跳躍は空気から人の組織へ移行する場合、したがって皮膚表面に現れ得る。
【0050】
図3の典型的な長さスケール、すなわちその上で磁場30の値が変化する長さスケールはセンチメートル、約5〜10cmである。しかしながら、ボクセルないし典型的なMR設備の空間分解能は著しく小さい。なお典型的なMR設備においては1mmの空間分解能が達成される。対応する体積10の側長は長さI−I’として示されている。しかしそのような長さスケール上で、磁場30は図3の場面では変化しないか又はただほんのわずか変化するだけである。それ故ボクセル内では実質的に均一な磁場が存在することになり、減ぜられたMR可視化性は達成されないか、又はわずかに減ぜられた可視化性が達成されるだけであろう。
【0051】
対応して図4においては上側に磁場30の値が磁化率31に対し場所32の関数として示され、その磁化率は著しく短い長さスケール上で変化する。同じ長さI−I’がそれぞれ図3及び図4に示されている。位置32の関数としての磁化率のそのような変化は、例えば本発明の視点に従う材料1に対し、1mm3より小さい体積10内の基体材料及びドーピング材料2、3の混和が均一であるとき、したがって特に細かい混和が存在するとき達成される。例えば、長さI−I’は1mmの長さを表わし得る。図4から明らかなように、磁場30はMR画像形成のボクセル内で異なる値を取ることができ、その結果材料1のT2*緩和時間は、例えば基体材料2のT2*緩和時間に対しファクター2または4だけ短縮される、すなわち1/2倍または1/4倍に短縮される。
【0052】
図4の下側において、磁場の向き30aが示されている。ドーピング材料3(図1参照)の粒の磁化は実質的に異なって配向され得るから、代表長さスケール上の磁場の向き30aも変化し得る。このこともT2*緩和時間への影響を持ち得る。
【0053】
図5には、ドーピング材料3のほかにさらに別のドーピング材料4を含む材料1が示されている。この別のドーピング材料4も磁性であってよい。特に別のドーピング材料4は、ドーピング材料3の磁化率に対し異なる符号を持った磁化率を有することができる。言い換えれば、例えばドーピング材料3は常磁性または強磁性(反磁性)であり、一方別のドーピング材料4は反磁性(常磁性または強磁性)であってよい。
【0054】
材料1を使用することによって2つの効果をもたらすことができる。すなわち、まず第一に、体積10内の磁化率の場所依存性が特に強い結果になり得る。それによって、局所的磁場が特に強く変りやすくなり、その結果核スピンのT2*緩和時間が特に強く短縮され得る。材料1はしたがってMR画像形成における減ぜられた可視化性を有し得る。第二に、ドーピング材料3、4の割合をそれらの磁化率に基づいて適切に選択することによって、材料1の巨視的磁化率が予め決められた値に等しい、例えば空気、水、組織または有機材料に等しいことが達成される。このことは、上記の式1及び2によって説明される。このことは、MR画像形成における磁化率アーチファクトを減ずることを可能にし得る。磁化率アーチファクトは、磁場強度30の局所的ずれによって、図3において説明されているように、生じ得る。しかしながら、これら両効果に対し決定的な長さスケールは異なるオーダを有することが理解されるべきで、それは図3及び図4に関して先に説明されたとおりである。
【0055】
図6には模範的に構成要素41、42、43が図解されており、それらは部分的にまたは主として材料1から製造されていることが可能である。患者を載せてMR設備へ運び入れることのできるテーブルまたは寝台41が示されている。さらに、MR信号を検出するため、ないしHFパルスの照射によって磁化を励起するために使用することのできるHF局所コイル42が示されている。シムパッド43も認められる。シムパッド43は特定の磁化率、ほぼ人の組織の磁化率を有する。シムパッドがMR画像形成中人体の近傍に置かれると、図3に図解されているように磁化率の跳躍がMR画像形成の部分でない場所に(例えば空気−シムパッドの境界面に)現れる。それによって、例えば皮膚近傍の磁化率アーチファクトは減ぜられ得る。
【0056】
したがって、MR画像形成の基体材料に、磁性ないし弱磁性であって例えばミクロ又はナノ粒子として製作されているドーピング材料3、4をドーピングすることによって、材料1のMR可視化性の減少が達成される。このことは特に、すべての慣用されている材料、例えば従来の合成物質をMR設備の画像形成ボリュームにおいても使用することを可能にする。それによって、コストが節約され、新しい機械的機能、例えばフレキシブルなコイル、合成物質継ぎ手を有するコイル、より軽くした患者テーブル等が実現され、また患者の快適性が改善される。基体材料2としては、特に熱可塑性物質、熱可塑性エラストマー、エラストマー、熱硬化性物質、発泡スチロールが適している。ドーピング材料3としては、反磁性材料、特にグラファイト及びビスマスのような強い反磁性原材料、並びに全多様な常磁性原材料が適している。ドーピング材料3ないし別のドーピング材料4は、1〜80重量%の範囲、好ましくは5〜15重量%の範囲、特に好ましくは9〜11重量%の範囲で加えることができる。粒度は例えば100μmとする、好ましくは10μmより小さくすることができる。特に100nmより小さい粒度を有するナノ粒子の場合には、強磁性原料を使用することができる。
【0057】
基体材料2とドーピング材料3、4との混合の調製においては、二軸押出機を使用すると、特に細かく均一な分布がしかも材料2、3、4の混合によって達成されるので有利である。
【0058】
本発明は有利な実施例によって詳細に図解され説明されたが、本発明は開示された例によって制限されるものではなく、それらから別の変形が当業者によって本発明の保護範囲を逸脱することなく導き出されることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 材料
2 基体材料
3 ドーピング材料
4 別のドーピング材料
10 体積
20 粒度
21 粒度分布
30 磁場
30a 磁場の向き
31 磁化率
32 位置
41 構成要素(テーブルまたは寝台)
42 構成要素(高周波局所コイル)
43 構成要素(シムパッド)
図1
図2
図3
図4
図5
図6