【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、磁気共鳴設備に使用するための材料が、基体材料と定められた割合で混加された磁性ドーピング材料とを含み、前記材料の1mm
3より小さい体積内に、前記基体材料と前記ドーピング材料との実質的に均一な混和が存在する磁気共鳴設備に使用するための材料によって解決される(請求項1)。
磁気共鳴設備に使用するための材料に関する本発明の有利な実施態様は次の通りである。
・前記ドーピング材料の粒度が、約200μmより小さい、好ましくは約10μmより小さい(請求項2)。
・前記ドーピング材料は磁性のナノ粒子を含み、前記ドーピング材料の粒度が約1μmより小さい、好ましくは100nmより小さい(請求項3)。
・前記磁性のナノ粒子は強磁性である(請求項4)。
・前記ドーピング材料の割合は0.1%〜80%の範囲、好ましくは1%〜20%の範囲、特に好ましくは9〜11%の範囲にある(請求項5)。
・前記基体材料はアクリロニトリル-ブタジエン-スチロール(ABS)合成物質である(請求項6)。
・前記基体材料は次の群の熱可塑性物質、熱可塑性エラストマー、エラストマー、熱硬化性物質、発泡プラスチックから選ばれる(請求項7)。
・前記ドーピング材料は成分としてグラファイト、ビスマスを含む反磁性材料の第一の群から選択されるか、又は成分として白金、クロム、タングステン、フェリチンを含む常磁性材料の第二の群から選択される(請求項8)。
・前記材料は、水または組織または有機材料または空気の磁化率にほぼ等しい巨視的磁化率を有する(請求項9)。
・前記材料は、水及び組織及び有機材料及び空気の少なくとも1つの磁化率に等しくない巨視的磁化率を有する(請求項10)。
・前記材料は前記体積中に核スピンのT2
*緩和時間を有し、前記緩和時間は前記基体材料の対応するT2
*緩和時間より1/2倍、好ましくは1/4倍小さい(請求項11)。
・前記材料は、別の割合で混加された別の磁性ドーピング材料を含み、前記体積内には前記基体材料及び前記ドーピング材料及び前記別のドーピング材料の均一な混和が存在し、前記別のドーピング材料の磁化率の符号が前記ドーピング材料の磁化率の符号に等しくない(請求項12)。
・前記別のドーピング材料の粒度が100μmより小さい、好ましくは10μmより小さい(請求項13)。
・前記ドーピング材料の割合と前記別のドーピング材料の別の割合とは異なり、巨視的磁化率が定められた値に等しい(請求項14)。
【0012】
この課題は、本発明によれば、磁気共鳴設備に使用するための材料を製造するために、
合成物質からなる基体材料を押出成形機により融解し、
1mm
3より小さい体積内に基体材料とドーピング材料との均一な混和が存在するように磁性ドーピング材料の割合の混加を行う
磁気共鳴設備に使用するための材料の製造方法によって解決される(請求項15)。
磁気共鳴設備に使用するための材料の製造方法に関する本発明の実施態様は次の通りである。
・本発明による材料を製造するために使用される(請求項16)。
さらに、前記課題は、本発明によれば、感度領域を有する磁気共鳴設備が、感度領域内で画像形成のための磁気共鳴データを検出するために構成されており、磁気共鳴設備が画像形成のために感度領域内に構成要素を含んでおり、前記構成要素が本発明による材料を含む磁気共鳴設備によっても解決される(請求項17)。
【0013】
1つの視点に従って磁気共鳴(MR)設備に使用するための材料が提供される。その材料は、基体材料と定められた割合で混加された磁性ドーピング材料とを含み、材料の1mm
3より小さい体積内に基体材料とドーピング材料との実質的に均一な混和が存在する。
【0014】
例えば、磁性ドーピング材料は反磁性、常磁性または強磁性であってよい。そのドーピング材料は、基体材料の磁化率とは異なる磁化率を持っていることができる。例えば、基体材料はすなわち非磁性、つまり磁化率を持たないか又は極めてわずかの磁化率を持つものであってよい。しかしまた、基体材料は磁性であることも可能である。
【0015】
実質的に均一な混和とは、例えば、任意に配置され1mm
3より小さい大きさの適切な(テスト)体積内に、常に定められた割合のドーピング材料が存在することを意味し得るものである。ドーピング材料の混加の際、不均一および濃度における局所的もしくは微視的な差異が生じ得る。このことは、そこに局所的な領域またはクラスターが存在し得る場合であり、そこではドーピング材料が平均値に対し高められた濃度で存在している、ないしはそこでは基体材料が平均値に対し高められた濃度で存在している。しかしながら、混加は精確ないし一様であり得るので、そのような不均一は体積について平均された観察においては存在しない。言い換えれば、ドーピング材料の濃度勾配は、微視的な長さスケール上では、もしくは1mmより小さい長さスケール上では0とは異なる値を取り得るが、一方1mm又はそれより長い長さにわたる特定のないしは平均化された濃度勾配は0に等しいかそれに近い値をとる。
【0016】
磁化率χ≠0を有する磁性ドーピング材料の混加によって、MR設備の基本磁場内へ材料が持ち込まれる際、材料内で磁場は局所的に基本磁場強度からずれることが生じる。これは例えば磁性ドーピング材料の減磁効果に基き起こり、この効果は外部磁場を強めたり弱めたりする。静磁場の対応する物理現象は当業者に知られており、それ故この関連においては詳細に討議することは必要としない。
【0017】
したがって局所的に変化する磁化率に基いて、磁場の微視的不均一が発生する。特に混和の精緻さ及びドーピング物質の(微視的)幾何学的形状に関連する代表長さ(characteristic length ;”特性長”または”特性長さ”とも呼ばれている)上の磁場が変化する。すなわち、例えば体積の大きさから生じる1mmより小さい代表長さを持ったものである。1mmより小さい長さスケール上のそのような均一な混和は、スピンがより速くディフェイジングするから、すなわちより短いT2
*緩和時間が達成されるから、材料がMR画像形成において減ぜられた可視化性を有することをもたらし得る。例えば、すなわち典型的なMR設備の空間分解能すなわちボクセルの大きさは約1mmのオーダをも有し得る。このことは、例えば1mm
3の対応する画像形成体積についてMR信号が検出される際、平均化されないしは積分されることを意味する。この体積内で磁化率及びしたがって局所磁場が変わると、信号に寄与する核スピンをディフェイジングする割合が局所的に異なり得る。例えばグラディエントエコーシーケンスを使用する場合、このことは異なるエコー時点を生じさせ得る。信号強度は減少し得る。このことは、MR可視化性を減じ得る。例えばさらに材料は体積中の核スピンのT2
*緩和時間を有することができ、この緩和時間は基体材料の対応するT2
*緩和時間よりファクター2だけ、好ましくはファクター4だけ小さい、すなわち1/2倍、好ましくは1/4倍小さい。
【0018】
ここで材料とは、基体材料とドーピング材料とを含む材料を意味する。T2
*緩和時間は、磁場不均一性に関して当業者に知られており、静位置に垂直な核スピンのディフェイジングに関係する(スピン−スピン緩和)。T2
*緩和時間は、例えば1回限りの90°HFパルス後の時間を意味し得るもので、その時間後横磁化はその出発値の37%に戻されている。例えばグラディエントエコー・MR撮像シーケンスにおいては、T2
*時間は信号強度ないし信号対雑音比に対し決定的であり得るもので、いわゆるT2
*強調画像形成がそれである。
【0019】
これに関して、混加されるドーピング材料に基くMR画像形成における例えば磁化率の局所的変化ないし可視化性は、ドーピング材料の粒度及び粒の形状に特徴的に左右され得る。ドーピング材料の粒度は、200μmより小さく、好ましくは10μmより小さくあってよい。特に粒度は例えば約100μmの範囲にあってよい。用語「粒度」は例えば平均粒度を意味する。ドーピング材料は、特に粒度について例えばガウス曲線によって描くことのできる分布を有することができる。対応するシナリオは当業者に知られている。粒度がわずかなことは、例えば、材料のさらに別の特性、例として頑丈性、伝導率、脆性等に関して利点をも持ち得る。
【0020】
これに関して、ドーピング材料は磁性のナノ粒子を含み、ドーピング材料の粒度は約1μmより小さい、好ましくは約100nmより小さいことが可能である。例えば、磁性のナノ粒子として強磁性のものが知られている。典型的には、磁性のナノ粒子は特にわずかな粒度、例えば20〜50nmの範囲の大きさを有することができる。そのような場合には、明らかに1mm
3より小さい体積、例えば1μm
3の大きさの体積、においても特に均一な混和を達成することが可能となり得る。
【0021】
強磁性のナノ粒子は特に大きな磁化率を有することができ、そのようにして局所磁場の特に強い変化を生じさせることが可能である。そのようにして、核スピンの局所的ディフェイジングにおける差異が特に大きい結果となり、かつMR画像形成における可視化性が特に強く減ぜられることが可能である。言い換えれば、強磁性のナノ粒子を使用することによって、基体材料のT2
*緩和時間が特にわずかという結果になることが可能である。
【0022】
例えば、割合は0.1%〜80%の範囲、好ましくは1%〜20%の範囲、特に好ましくは9%〜11%の範囲にあり得る。例えば、このパーセントは重量パーセント又は体積パーセントを意味し得る。
【0023】
特に、割合は、材料の巨視的磁化率、すなわち材料の大きな部分に対し平均されて測定される磁化率と直接関連し得る。そうであるから、ドーピング材料のより大きい割合が、材料の巨視的磁化率がより大きな絶対値をとるという結果をもたらす。それ故、一方ではドーピング材料の大きな割合を基体材料に混加することが望ましくあり得る。他方では、混加されるドーピング材料の割合が大き過ぎることによって悪化せしめられるかもしれない、材料の特定の、例えば電気的及び機械的な材料特性を維持することが望ましくあり得る。例えば、特に頑丈な材料を得ることが望ましいが、ドーピング材料の大き過ぎる割合の混加によって脆くなる。
【0024】
これに関して、基体材料は例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチロール(ABS)合成物質であってよい。そのような合成物質は、テルラン合成物質(Terluran、BASF社商品名)としても知られている。特に好ましい実施様式においては、基体材料は例えばABS GP22であってよい。
【0025】
一般に、基体材料は、次の要素、すなわち熱可塑性物質、熱可塑性エラストマー、エラストマー、熱硬化性物質、発泡プラスチックを含む群から選ばれることができる。そのような材料は、強度、弾性、耐熱性、わずかな導電率、磁気特性等に関して好ましい特性を有する。基体材料としてはレキサン合成物質を使用することもできる。
【0026】
それに応じて、ドーピング材料は例えば反磁性(磁化率<0)または常磁性(磁化率>0)のいずれかであってよい。例えば、ドーピング材料は成分としてグラファイト、ビスマスを含む反磁性材料の第一の群から選択されることが可能である。しかしまた、ドーピング材料は、成分として白金、クロム、タングステン、フェリチンを含む常磁性材料の第二の群から選択されることも可能である。特にそのような、磁化率の比較的大きな値を持った材料を用いることができ、その結果磁気共鳴設備における基本磁場の値からの磁場の局所的なずれが特に大きくなる。それに応じて、核スピンの局所的ディフェイジングは著しく異なるようになり、その結果T2
*緩和時間の値は特にわずかな結果になり得る。ドーピング材料はパラジウムであるか、または炭素ナノチューブを含むことも可能である。
【0027】
例えば、材料は、水または組織または有機材料または空気の磁化率に実質的に等しい巨視的磁化率を有することができる。巨視的磁化率は、例えば、材料の大きな部分の特殊な事例において、従って巨視的な規模で測定されるような磁化率の値を意味し得る。そのような部分に対しては、種々の磁気特性(反磁性、常磁性、強磁性)を有する基体材料および1つ又は複数のドーピング材料の平均化された混和が存在する。例えば、その部分は体積に等しいかそれより大きい規模を有し得る。上述の大きさの磁化率に対する値は当業者に知られており、例えば、水ないし組織に対してはχ=9×10
-6、または有機材料に対してはχ=6×10
-6、または空気に対してはχ=0.38×10
-6である×。
【0028】
先に詳述されたように、本発明のそこで討議された視点に従えば、材料は、基体材料とドーピング材料との細かい混和に基いて磁化率が局所的に変化する効果を持つことができる。それによって、T2
*緩和時間は特にわずかな結果となり、材料はMR画像形成において減ぜられた可視化性を有することができる。さらになお、材料が上述の値の1つを持つ巨視的の平均化された磁化率を有する場合に対しては、この減ぜられたMR可視化性の効果のかたわらへ、磁化率整合の別の効果が歩み寄る。すなわち、例えば、空気−組織の境界面に磁化率勾配が現れ得る、すなわち磁化率の変化が場所の関数として現れ得る。例えば、皮膚表面において磁化率の値がχ=0.38×10
-6からχ=9×10
-6へ変化する。このことは、局所的な磁場の値がこの領域内及び領域の周りでMR設備の基本磁場の値からずれることをもたらし得る。そうすればMR画像形成はこの領域においていわゆる磁化率アーチファクト、例えばMR画像におけるずれ等を有し得る。
【0029】
しかしながら材料が相応にマッチングした値を有する場合には、例えば体の近傍に存在する例えばHPコイルまたはシムパッドのようなMR設備の構成要素に対し材料が用いられると、材料−組織の境界面に著しい磁化率勾配は現れないことが達成され得る。言い換えれば、磁化率のミスマッチングは、MR画像形成に寄与しない領域へ移され得る。それによって、MR画像における磁化率アーチファクトは減ずることが可能になる。
【0030】
しかしまた、材料は水または組織または空気または有機材料の上述のこれらの値からずれた磁化率を有することも可能である。このことは例えば、特に減ぜられたMR可視化性を達成するために有利であり得る。そうすれば、材料特性の最適化は換言すればMR可視化性の低減に関して行われ得るものであり、そのことはまず第一に磁化率の微視的場所依存性が関係し、一方巨視的磁化率はさして重要ではない。
【0031】
例えば特に、材料は、別の割合で混加された別の磁性ドーピング材料を含み、体積内に基体材料とドーピング材料とさらに別のドーピング材料との均一な混和が存在可能であり、また別のドーピング材料の磁化率の符号がドーピング材料の磁化率の符号に等しくなくてよい。したがって、例えばドーピング材料は常磁性であり、別のドーピング材料は反磁性である(またはその逆)ことが可能である。ドーピング材料又は別のドーピング材料は強磁性であることも可能である。
【0032】
そのような場合、微視的磁化率勾配は特に大きな値をとり、ないしはMR画像形成のボクセル内には多くの異なる局所的磁場強度が存在するから、たとえば特にわずかなT2
*緩和時間の効果が達成され得る。同時に、ドーピング材料の割合及び別のドーピング材料の別の割合をそれらの両ドーピング材料の磁化率に依存して適切に選択することによって、材料の巨視的磁化率の値を適切に設定することが可能である。
【0033】
一般に、基体材料(磁化率χ
B)にそれぞれ磁化率χ
nを有するN個のドーピング材料を混加することができる。その結果巨視的磁化率χ
mは次式のようになる。
【数1】
ここでV
B、V
Dnは基体材料及びドーピング材料のそれぞれの体積割合である。それ故次式が成立する。
【数2】
例えば、式1から、2つのドーピング材料、すなわちグラファイト粉末χ
D1=−205×10
-6及びパラジウム粉末χ
D2=−806×10
-6に対しそれぞれV
D1=5.20%及びV
D2=0.20%について非磁性χ
B=0の基体材料に混ぜ合わされることで、χ
m=−9×10
-6の結果が得られる。これは人の組織の値に対応する。この場合基体材料は例えばABS GP22であってよい。
【0034】
例えばまた、この基体材料にV
D1=5%のグラファイト及びV
D2=0.50%又はV
D2=1.00%のパラジウムを混加することも可能であり、それは−6.6ppmないし−2.6ppmの巨視的磁化率をもたらす。
【0035】
上述の例は純粋に説明用のものである。一般にドーピング材料の割合と別のドーピング材料の別の割合とは異なっていてよく、その結果巨視的磁化率は特定の定められた値に等しい。特に、材料の巨視的磁化率は、ドーピング材料及び別のドーピング材料を混加することによって例えば水、空気、組織又は有機材料の値に等しくあることが可能である。特に、別のドーピング材料の粒度は例えば200μmより小さい、ないしは好ましくは10μmより小さくあることも可能である。一般に、別のドーピング材料についての対応する要求もしくは同じ要求が設定され得ることは、ドーピング材料に関して先に述べられたと同様である。
【0036】
さらに別の視点に従えば、本発明は磁気共鳴設備に使用するための材料の製造方法に関し、その方法は、合成物質からなる基体材料を押出成形機により融解し、1mm
3より小さい体積内において均一な混和が存在するような割合の磁性ドーピング材料の混加を行うことを含む。そのような方法は、本発明の別の視点に従う磁気共鳴設備に使用するための材料を得るために用いることができる。
【0037】
別の視点に従えば、本発明は感度領域を有する磁気共鳴設備に関し、その磁気共鳴設備は、感度領域内で画像形成のために磁気共鳴データを検出するために構成されており、磁気共鳴設備は画像形成のため感度領域内に構成要素を含む。磁気共鳴設備は、構成要素が先に討議された本発明の視点に従う磁気共鳴設備における使用のための材料を含むことを特徴とする。例えば、構成要素は、高周波コイルに関係し、患者をMR設備へ運び入れるためのテーブルまたは寝台又はシムパッドが関係する。そのような構成要素を製造するために本発明の視点に従う材料が使用されると、これらの構成要素はMR画像形成における減ぜられた可視化性を有することができる。これらの構成要素はまた有利に周辺の磁化率にマッチングした磁化率を有することができ、その結果MR画像形成における磁化率アーチファクトが減ぜられ得る。
【0038】
当然に、はじめに記述された実施形態の特徴及び本発明の視点は相互に結合することができる。特に、特徴は記述された組合せにおいてのみならず、他の組合せにおいても、または独自に選び取られて、本発明の分野から逸脱することなく、使用されることが可能である。
【0039】
この発明の上述の特性、特徴及び利点並びにこれらのものが達成される方法は、図面と関連して詳細に説明される実施例の以下の記述と関連してより明確、明白になる。