(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図面では同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付され、下記説明では重複説明が省略される。また、各図面は模式的に示されたものであり、例えば、各図面における表示物のサイズおよび位置関係等は必ずしも正確に図示されたものではない。
【0029】
<第1実施形態>
<1.熱処理装置の構成>
図1および
図2は本発明にかかる熱処理装置の構成を示す側断面図である。この熱処理装置は、キセノンフラッシュランプからの閃光(フラッシュ光)によって円形の半導体ウェハー等の基板の熱処理を行う装置である。
【0030】
この熱処理装置は、透光板61、底板62および一対の側板63、64からなり、その内部に半導体ウェハーWを収納して熱処理するためのチャンバー65を備える。チャンバー65の上部を構成する透光板61は、例えば、石英等の赤外線透過性を有する材料から構成されており、光源5から出射された光を透過してチャンバー65内に導くチャンバー窓として機能している。また、チャンバー65を構成する底板62には、後述するサセプタ73および加熱プレート74を貫通して半導体ウェハーWをその下面から支持するための支持ピン70が立設されている。
【0031】
また、チャンバー65を構成する側板64には、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための開口部66が形成されている。開口部66は、軸67を中心に回動するゲートバルブ68により開閉可能となっている。半導体ウェハーWは、開口部66が開放された状態で、図示しない搬送ロボットによりチャンバー65内に搬入される。また、チャンバー65内にて半導体ウェハーWの熱処理が行われるときには、ゲートバルブ68により開口部66が閉鎖される。
【0032】
チャンバー65は光源5の下方に設けられている。光源5は、複数(本実施形態においては30本)のキセノンフラッシュランプ69(以下、単に「フラッシュランプ69」とも称する)と、リフレクタ71とを備える。複数のフラッシュランプ69は、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が水平方向に沿うようにして互いに平行に列設されている。リフレクタ71は、複数のフラッシュランプ69の上方にそれらの全体を覆うように配設されている。
【0033】
このキセノンフラッシュランプ69は、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設されたガラス管と、該ガラス管の外局部に巻回されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このキセノンフラッシュランプ69においては、予め蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし10ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。
【0034】
光源5と透光板61との間には、光拡散板72が配設されている。この光拡散板72は、赤外線透過材料としての石英ガラスの表面に光拡散加工を施したものが使用される。
【0035】
フラッシュランプ69から放射された光の一部は直接に光拡散板72および透光板61を透過してチャンバー65内へと向かう。また、フラッシュランプ69から放射された光の他の一部は一旦リフレクタ71によって反射されてから光拡散板72および透光板61を透過してチャンバー65内へと向かう。
【0036】
チャンバー65内には、加熱プレート74とサセプタ73とが設けられている。サセプタ73は加熱プレート74の上面に貼着されている。また、サセプタ73の表面には、半導体ウェハーWの位置ずれ防止ピン75が付設されている。チャンバー65内にて半導体ウェハーWは直接にはサセプタ73によって略水平姿勢にて保持される。
【0037】
加熱プレート74は、半導体ウェハーWを予備加熱(アシスト加熱)するためのものである。この加熱プレート74は、窒化アルミニウムにて構成され、その内部にヒータと該ヒータを制御するためのセンサとを収納した構成を有する。一方、サセプタ73は、半導体ウェハーWを位置決めして保持するとともに、加熱プレート74からの熱エネルギーを拡散して半導体ウェハーWを均一に予備加熱するためのものである。このサセプタ73の材質としては、窒化アルミニウムや石英等の比較的熱伝導率が小さいものが採用される。
【0038】
サセプタ73および加熱プレート74は、モータ40の駆動により、
図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置と
図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置との間を昇降する構成となっている。
【0039】
すなわち、加熱プレート74は、筒状体41を介して移動板42に連結されている。この移動板42は、チャンバー65の底板62に釣支されたガイド部材43により案内されて昇降可能となっている。また、ガイド部材43の下端部には、固定板44が固定されており、この固定板44の中央部にはボールネジ45を回転駆動するモータ40が配設されている。そして、このボールネジ45は、移動板42と連結部材46、47を介して連結されたナット48と螺合している。このため、サセプタ73および加熱プレート74は、モータ40の駆動により、
図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置と
図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置との間を昇降することができる。
【0040】
図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置は、図示しない搬送ロボットを使用して開口部66から搬入した半導体ウェハーWを支持ピン70上に載置し、あるいは、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWを開口部66から搬出することができるように、サセプタ73および加熱プレート74が下降した位置である。すなわち、昇降自在のサセプタ73および加熱プレート74には貫通孔が形成されており、底板62に固定して立設された支持ピン70がサセプタ73および加熱プレート74に対して挿通自在とされている。そして、サセプタ73および加熱プレート74が上記搬入・搬出位置まで下降すると、
図1に示す如く支持ピン70の上端部がサセプタ73の上面から突き出て半導体ウェハーWを載置することができる状態となる。
【0041】
一方、
図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置は、半導体ウェハーWに対して熱処理を行うために、サセプタ73および加熱プレート74が支持ピン70の上端より上方に上昇した位置である。サセプタ73および加熱プレート74が上記熱処理位置まで上昇すると、
図2に示す如く支持ピン70の上端部がサセプタ73の上面よりも低くなり、支持ピン70に載置されていた半導体ウェハーWはサセプタ73に受け取られる。すなわち、モータ40は、
図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置と
図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置との間にてサセプタ73および加熱プレート74を支持ピン70に対して相対的に昇降させているのである。
【0042】
サセプタ73および加熱プレート74が
図2の熱処理位置から
図1の搬入・搬出位置に下降する過程においては、サセプタ73に支持された半導体ウェハーWは支持ピン70に受け渡される。逆に、サセプタ73および加熱プレート74が
図1の搬入・搬出位置から
図2の熱処理位置に上昇する過程においては、支持ピン70に載置された半導体ウェハーWがサセプタ73によって受け取られ、その下面をサセプタ73の表面に支持されて上昇し、チャンバー65内の透光板61に近接した位置に水平姿勢にて保持される。
【0043】
半導体ウェハーWを支持するサセプタ73および加熱プレート74が熱処理位置に上昇した状態においては、それに保持された半導体ウェハーWと光源5との間に透光板61が位置することとなる。なお、このときのサセプタ73と光源5との間の距離についてはモータ40の回転量を制御することにより任意の値に調整することが可能である。
【0044】
また、チャンバー65の底板62と移動板42との間には筒状体41の周囲を取り囲むようにしてチャンバー65を気密状体に維持するための伸縮自在の蛇腹77が配設されている。サセプタ73および加熱プレート74が熱処理位置まで上昇したときには蛇腹77が収縮し、サセプタ73および加熱プレート74が搬入・搬出位置まで下降したときには蛇腹77が伸長してチャンバー65内の雰囲気と外部雰囲気とを遮断する。
【0045】
チャンバー65における開口部66と反対側の側板63には導入路78が形成されている。この導入路78はガス配管82を介して図外のガス供給源と連通接続されている。ガス配管82には開閉弁80およびマスフローコントローラ89が介挿されている。開閉弁80を開放することによって、導入路78の先端からチャンバー65内に処理に必要なガス、例えば不活性な窒素ガスを供給することができる。チャンバー65内に供給する窒素ガスの流量はマスフローコントローラ89によって制御されている。このときに窒素ガスはほぼ水平方向に沿って吐出される。サセプタ73および加熱プレート74が熱処理位置に上昇しているときに導入路78から窒素ガスを供給すると、
図2に示すように、加熱プレート74と底板62との間に窒素ガスが供給されることとなる。すなわち、チャンバー65の底部に不活性な窒素ガスが供給されるのである。
【0046】
一方、側板64における開口部66には排出路79が形成されている。この排出路79は排気管83を介して図外の排気手段と連通接続されている。排気管83には開閉弁81が介挿されている。開閉弁81を開放することによって、チャンバー65内の気体は開口部66を経由して排出路79から排出されることとなる。また、排気管83は大径管と小径管との二叉に分岐されており、図示省略の切替弁によっていずれかに切り替えられる。チャンバー65から大流量の排気を行うときには大径管が選択され、小流量の排気を行うときには小径管が選択される。
【0047】
さらに、移動板42にも排出路84が形設されている。排出路84の先端部は蛇腹77と筒状体41との間の空間に連通しており、排出路84の基端部は排気管86を介して図外の排気手段と連通接続されている。排気管86には開閉弁85が介挿されている。開閉弁85を開放することによって、チャンバー65内の気体は蛇腹77と筒状体41との間の空間を経由して排出路84から排出されることとなる。すなわち、
図2に示すように、排出路84はチャンバー65の底部からチャンバー65内の空間の気体を排気するのである。
【0048】
また、側板63には、側板63を貫通する導入路91がさらに形成されている。導入路91の両端部分のチャンバー65側には、内部に導入路を有する筒状のプローブ92が、反対側には、測定部50が、それぞれ設けられている。測定部50には、投光部51、受光部52などが設けられた測定室が内部に形成されており、該測定室内の測定空間は、導入路91およびプローブ92を介してチャンバー65内の処理空間と連通接続されている。また、測定部50の測定室には、排出路93が形成されており、排気管94を介して図外の排気系統と連通接続されている。測定部50の排気を行う排出路93の内径は、チャンバー65内の排気を行う排出路79、84の内径よりも細い。排気管94には、開閉弁95が介挿されている。そして、開閉弁95を開放することによって、窒素ガスの導入などにより与圧されたチャンバー65内の処理空間中の気体が、測定部50の測定室内に略一定の流量で導入される。また、該測定室内にチャンバー65内の処理空間以外から気体が入り込まないように、測定部50の測定空間は、側板63における導入路91の開口部の外縁部分によって密閉されている。プローブ92は、処理される基板により近い部分の気体を測定部50に導入するために設けられているが、チャンバー65内の処理空間の何れの部分の気体が測定部50の測定室に導入されたとしても本発明の有用性を損なうものではない。従って、プローブ92は、必須の要素ではない。
【0049】
測定部50は、光散乱粒子計数装置(OPC:Optical Particle Counter)として構成されており、その測定室に導入されたチャンバー65内の気体中のパーティクル濃度(「気中パーティクル濃度」)を測定する。測定部50は、投光部51、受光部52、および制御演算部53を主に備えて構成されている。投光部51には、図示しない半導体レーザ等のレーザ光源と投光光学系などが設けられている。受光部52には、図示しない受光光学系と、フォトダイオード等の検出素子を備えた処理回路などが設けられている。レーザ光源から照射されたレーザ光は、投光光学系により集光されて投光部51と受光部52との間の流路に照射される。該流路には、チャンバー65内の処理空間から測定部50の測定室内に導入された気体が流れており、レーザ光が、該気体中のパーティクルに当たると散乱光が生ずる。該散乱光は、受光光学系により処理回路の検出素子に結像される。そして、処理回路からは、検出素子に入射した各散乱光ごとに電気パルス信号が出力されて制御演算部53に供給される。
【0050】
制御演算部53は、例えば、CPUが所定のプログラムを実行することなどにより実現され、投光部51および受光部52の動作を制御するとともに、受光部52の処理回路から供給されたパルス信号を処理する。該パルス信号の波高値は、散乱光量に比例する。また、散乱光量とパーティクルの粒径との間には、散乱理論に基づく相関関係があり、パルス信号の波高値からパーティクルの粒径が算定される。制御演算部53は、受光部52から供給された各電気パルス信号ごとにパーティクルの粒径を算定するとともに、制御演算部53のメモリ内に予め記憶された所定サイズ(粒径)に基づいて、算定された粒径が該所定サイズ以上であるか、該所定サイズ未満であるかを判定する。
【0051】
制御演算部53は、判定結果に基づいて、それぞれ一定時間内に測定された該所定サイズ以上の粒径のパーティクルの個数と、該所定サイズ未満のパーティクルの個数とをそれぞれ計数する。そして、制御演算部53は、メモリ内に予め記憶された投光部51と受光部52との間の流路を単位時間当りに通過する気体の流量に基づいて、該所定サイズ以上の粒径と所定サイズ未満の粒径をそれぞれ有するパーティクルについてパーティクル濃度をそれぞれ算定することにより2種類のパーティクル濃度を測定する。なお、制御演算部53は、コントローラ10からの制御に応じて該2種類のパーティクル濃度のうち何れか一方の濃度のみを測定することもできる。制御演算部53が測定した各パーティクル濃度は、コントローラ10に供給され、コントローラ10によって基板上のパーティクル数への変換や、パーティクル濃度が所定のレベルであるか否かの判定などに使用される。
【0052】
また、測定部50が、例えば、チャンバー65内の排気を行う排出路79、84の内部に設けられた場合には、排出路79、84の加工時などに排出路内に付着した金属粒子などの各種の残留パーティクルの影響により、パーティクル濃度の測定結果が、チャンバー65内における実際のパーティクル濃度よりも高くなる場合がある。しかしながら、本実施形態に係る熱処理装置では、測定部50の排気専用の排出路93が設けられて、排出路93による排気によって測定部50の測定室内に導入された気体の気中パーティクル濃度が測定される。従って、通常の排出路79,84内の汚れによるパーティクル濃度の測定誤差を抑制することができる。
【0053】
また、上記熱処理装置は、モータ40等の各機構部を制御するためのコントローラ10を備えている。
図3は、コントローラ10の構成を示すブロック図である。コントローラ10のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、コントローラ10は、各種演算処理を行うCPU11、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM12、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM13および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク14をバスライン19に接続して構成されている。
【0054】
バスライン19には、表示部21および入力部22が電気的に接続されている。表示部21は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部22は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部21に表示された内容を確認しつつ入力部22からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部21と入力部22とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
【0055】
また、バスライン19には、熱処理装置のモータ40、測定部50、図示を省略するフラッシュランプ69のランプ電源回路および開閉弁80、81、85、および95が電気的に接続されている。さらに、バスライン19には、排気管83の切替弁およびガス配管82のマスフローコントローラ89も接続されている。コントローラ10のCPU11は、磁気ディスク14に格納された所定のソフトウェアを実行することにより、フラッシュランプ69の点灯タイミングを制御するとともに、モータ40を制御してサセプタ73および加熱プレート74の高さ位置を調整する。さらに、CPU11は、各開閉弁を制御してチャンバー65および測定部50の測定室への給排気をも制御する。また、CPU11は、測定部50の動作を制御するとともに、測定部50から供給されるパーティクル濃度に基づいて、チャンバー65に収容された基板に付着するパーティクルの個数を算定する。
【0056】
図4は、該気中パーティクル濃度とチャンバー65に収容される基板上のパーティクル個数との相関関係の一例をグラフで示す図である。
図4に示されるように、チャンバー65の処理空間における気中パーティクル濃度とチャンバー65に収容された基板に付着するパーティクルの個数との間には相関関係があり、通常、基板上のパーティクル個数は、気中パーティクル濃度に比例する。このような相関関係は、予め実験やシミュレーションによって求めることができる。該相関関係を示す相関情報は、予め特定されて磁気ディスク14に記憶されている。該相関情報としては、該相関関係を示すテーブルや、数式その他の各種情報が一例としてあげられる。CPU11は、該相関情報と測定部50が測定した気中パーティクル濃度a1に基づいて、チャンバー65に収容される予定の基板に付着するパーティクルの個数b1を算定する。また、逆に、CPU11は、該相関情報に基づいて、例えば、目標とする基板上のパーティクル個数b1に対応する気中パーティクル濃度a1を算定することもできる。さらに、CPU11は、測定した気中パーティクル濃度が磁気ディスク14に記憶された所定の基準値以下であるか否かの判定も行う。CPU11は、該判定に相当する判定を、気中パーティクル濃度を基板上のパーティクル個数に変換することにより行うこともできる。
【0057】
また、磁気ディスク14には、上述した相関情報の他に、クリーニング処理におけるフラッシュ発光の回数や時間間隔、パーティクルの粒径のサイズ判定の基準となる所定サイズ(粒径)、パーティクル濃度の基準濃度など、装置のメンテナンス後の立ち上げ処理に用いられる各種の情報も記憶されている。また、上記のパーティクルの所定サイズは、測定部50の制御演算部53におけるメモリ等に供給されて測定部50により使用される。
【0058】
<2.熱処理装置の処理内容>
次に、本発明に係る熱処理装置の処理について説明する。
図5〜
図7は、本発明に係る熱処理装置の処理のフローチャートを示す図である。
図5および
図6は、熱処理装置に対してメンテナンスを行ったときの装置の立ち上げ処理の処理フローS100を示し、
図7は、チャンバー65内のクリーニング処理(清浄処理)に係るステップS120(
図5)の詳細を示している。なお、
図7のクリーニング処理はコントローラ10の指示に従ってランプ電源回路等の各機構部が作動することにより実行されるものである。
【0059】
まず、ステップS110にて装置のメンテナンスを行う。このメンテナンスは定期的に行うものであっても良いし、チャンバー65内で半導体ウェハーWの破損が生じたときなどに行う不定期なものであっても良い。いずれの場合であっても、メンテナンスは光源5を取り外してチャンバー65の内部を外気に開放した状態にて行う。従って、メンテナンス中に外部からチャンバー65内にパーティクルを巻き込むとともに、半導体ウェハーWの破損が生じてメンテナンスを行うような場合はその破片からもパーティクルが発生する。
【0060】
やがて、所定のメンテナンス作業が終了すると、ステップS120に進み、チャンバー65の上部に光源5を取り付けて(
図1の状態にして)チャンバー65内のクリーニング処理を行う。このクリーニング処理では、チャンバー65内に基板を搬送する搬送ロボットやゲートバルブ68は駆動されない。そして、チャンバー65内の、例えば、粒径0.8umなど所定のサイズ(粒径)未満の粒径を有するパーティクルが、主として除去される。
【0061】
クリーニング処理を行うときには、まず、処理対象となる半導体ウェハーWの搬入を禁止してサセプタ73および加熱プレート74を
図2の熱処理位置まで上昇させる(ステップS21)。よって、クリーニング処理時にはチャンバー65内に半導体ウェハーWは搬入されておらず、サセプタ73は何も載置しない状態で熱処理位置まで上昇する。また、加熱プレート74の内部のヒータはONとされて、加熱プレート74の加熱が開始される。
【0062】
サセプタ73および加熱プレート74が熱処理位置まで上昇した後、チャンバー65内に窒素ガスの気流を形成する(ステップS22)。具体的には、開閉弁80,81,85を開放して導入路78から排出路79,84へと向かう窒素ガスの気流を形成するのである。なお、開閉弁81は閉鎖したままでも良いが、開閉弁85は必ず開放する。これにより、
図2中の矢印にて示すようなチャンバー65の底部を通過して排出されるような気流を形成するのである。
【0063】
また、チャンバー65内のクリーニング処理が完了したときに再度クリーニングを行う必要があるか否かを正確に判定する観点から、測定部50の測定室内には、クリーニングが完了してチャンバー65内の処理空間のパーティクル濃度が略均一になった状態の気体を導入することが好ましい。また、開閉弁95が開放されている場合には、フラッシュランプ69の点灯が開始されると、チャンバー65の底部等からパーティクルが舞い上がって局所的にパーティクル濃度が高い状態の気体が測定部50に導入されることによりパーティクル濃度の測定結果が不正確になる恐れがある。従って、排気管94に開閉弁95が設けられないとしても本発明の有用性を損なうものではないが、排気管94が設けられて、フラッシュランプ69の点灯を開始する前に開閉弁95が閉鎖されることがより好ましい。
【0064】
しかる後、フラッシュランプ69を点灯して、チャンバー65内に閃光を照射する。このときのフラッシュランプ69の点灯時間は、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の時間である。フラッシュランプ69においては、予め蓄えられていた静電エネルギーがこのように極めて短い光パルスに変換されることから、極めて強い閃光がチャンバー65内に照射されることになる。そして、フラッシュランプ69からの閃光照射によってチャンバー65内の気体や構造部材が加熱され、チャンバー65内に瞬間的な気体膨張・収縮が生じ、その結果チャンバー65内にパーティクルが巻き上がって飛散することとなる。チャンバー65の底部(底板62の上面)には特にパーティクルが堆積しやすいが、本実施形態のように加熱プレート74を熱処理位置まで上昇させて閃光照射を行えば、そのような底部に堆積したパーティクルも容易に巻き上がることとなる。
【0065】
このようにして飛散したパーティクルは窒素ガスの気流によってチャンバー65の外部に排出される。上記のように、チャンバー65の底部近傍では特にパーティクルが飛散し易いが、本実施形態ではチャンバー65の底部を通過して排出されるような気流が形成されているため、該底部近傍で飛散したパーティクルも効率良くチャンバー65の外部に排出されることとなる。
【0066】
フラッシュランプ69を点灯した後、所定時間が経過したか否かがコントローラ10によって判断される(ステップS24)。つまり、1回のフラッシュ照射を行った後、所定時間パーティクル排出を行うのである。なお、このような所定時間が経過している間もチャンバー65の底部を通過して排出されるような窒素ガスの気流は形成され続けている。該所定時間としては、例えば、1分間が設定される。
【0067】
やがて、所定時間が経過すると相当量のパーティクルがチャンバー65の外部に排出されるものの、一部のパーティクルは再びチャンバー65の底部に堆積することとなる。そして、フラッシュランプ69の点灯が所定回数行われたか否かがコントローラ10によって判断される(ステップS25)。該所定回数としては、50回から100回が採用される。フラッシュランプ69の点灯回数が所定数に達していない場合には、ステップS23に戻って再度フラッシュランプ69が点灯される。フラッシュランプ69の点灯による閃光照射によって再び堆積したパーティクルを巻き上げて飛散させ、それを窒素ガスの気流によってチャンバー65の外部に排出するのである。一方、フラッシュランプ69の点灯回数が所定数に到達している場合には、クリーニング処理を終了する。
【0068】
図5に戻り、チャンバー65内のクリーニング処理が完了した後、ステップS130に進んで気中パーティクル濃度の測定が行われる。気中パーティクル濃度の測定前に、開閉弁95は開放されて、測定部50の測定室内にチャンバー65内の気体が導入される。そして、測定部50は、所定サイズ(粒径)以上と未満のそれぞれの粒径を有するパーティクルのパーティクル濃度のうち、少なくとも所定サイズ未満の粒径についてのパーティクル濃度を測定し、測定結果をコントローラ10に供給する。
【0069】
そして、ステップS140において、コントローラ10は、所定サイズ未満のパーティクル濃度が所定の基準値以下であるか否かを判定する。該判定の結果、パーティクル濃度が基準値より高ければ処理はステップS120へと戻されて、再度、チャンバー65内のクリーニングが行われる。該判定の結果、パーティクル濃度が基準値以下であれば、ステップS150に進み、チャンバー65内の新たなクリーニングが行われる。この新たなクリーニング処理では、あたかもチャンバー65内に基板が搬送されているかのように搬送ロボットの搬送動作や、ゲートバルブ68の開閉動作などが行われつつ処理が行われる。また、処理中のフラッシュランプ69の点灯は、例えば、1分間隔で25回から50回繰り返して行われる。ステップS150では、これらの相違を除いて、ステップS120の処理と同様にクリーニング処理が行われる。このクリーニング処理により、チャンバー65内の、例えば、粒径0.8umなど所定サイズ(粒径)以上の粒径を有するパーティクルが主として除去される。すなわちステップS150の処理では、ステップS120におけるクリーニングで主として除去されるパーティクルよりも粒径が大きなパーティクルが、主として除去される。
【0070】
ステップS150におけるチャンバー65内のクリーニング処理が完了した後、ステップS160に進んで、開閉弁95が開放されて、ステップS130における測定と同様にして、気中パーティクル濃度の測定が行われる。ただし、ステップS160の測定では、測定部50は、所定サイズ(粒径)以上と未満のそれぞれの粒径を有するパーティクルの何れについてもパーティクル濃度を測定し、測定結果をコントローラ10に供給する。
【0071】
そして、
図6のステップS170において、コントローラ10は、供給された所定サイズ以上のパーティクル濃度が所定の基準値以下であるか否かを判定する。該判定の結果、パーティクル濃度が基準値より高ければ処理はステップS150へと戻されて、再度、チャンバー65内のクリーニングが行われる。該判定の結果、パーティクル濃度が基準値以下であれば、ステップS180に進んで、コントローラ10は、所定サイズ未満のパーティクル濃度が基準値以下であるか否かを判定する。該判定の結果、パーティクル濃度が基準値より高ければ処理はステップS120へと戻されて、再度、チャンバー65内のクリーニングが行われる。該判定の結果、パーティクル濃度が基準値以下であれば、ステップS190のパーティクルテストが行われる。該パーティクルテストでは、既述したように、実際にダミーウェハーがチャンバー65内に収容されて、処理対象となる半導体ウェハーWに対するのと同様の加熱処理が行われる。そして、ダミーウェハーがチャンバー65から取り出されて、別設の測定機に搬送されて基板上に付着したパーティクル個数が、例えば、粒径が0.8umなど所定サイズ以上のパーティクルと、該所定サイズ未満のパーティクルとの両方について実測される。
【0072】
基板上のパーティクル個数が測定されると、ステップS200において、粒径が所定サイズ未満のパーティクルの個数が、例えば、10個などの基準数以下であるか否かが判定される。該判定の結果、パーティクルの個数が基準数より多ければ、処理は、ステップS120に戻されて、チャンバー65内のクリーニングが再度行われる。該判定の結果、パーティクルの個数が基準数以下であれば、ステップS210の判定が行われて、粒径が所定サイズ以上のパーティクルの個数が、例えば、20個などの基準数以下であるか否かが判定される。該判定の結果、パーティクルの個数が基準数より多ければ、処理は、ステップS150に戻されて、チャンバー65内のクリーニングが再度行われる。該判定の結果、パーティクルの個数が基準数以下であれば、熱処理装置のメンテナンス後の立ち上げ処理は終了される。
【0073】
熱処理装置のメンテナンス後の立ち上げ処理が完了した後には、半導体ウェハーWの熱処理が行われる。この熱処理装置において処理対象となる半導体ウェハーWは、イオン注入後の半導体ウェハーである。
【0074】
熱処理工程においては、サセプタ73および加熱プレート74が
図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置に配置された状態にて、図示しない搬送ロボットにより開口部66を介して半導体ウェハーWが搬入され、支持ピン70上に載置される。半導体ウェハーWの収容が完了すれば、開口部66がゲートバルブ68により閉鎖される。しかる後、サセプタ73および加熱プレート74がモータ40の駆動により
図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置まで上昇し、半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持する。また、開閉弁80,81,85を開いてチャンバー65内に窒素ガスの気流を形成する。
【0075】
サセプタ73および加熱プレート74は、加熱プレート74に内蔵されたヒータの作用により予め所定温度に加熱されている。このため、サセプタ73および加熱プレート74が半導体ウェハーWの熱処理位置まで上昇した状態においては、半導体ウェハーWが加熱状態にあるサセプタ73と接触することにより予備加熱され、半導体ウェハーWの温度が次第に上昇する。
【0076】
この状態においては、半導体ウェハーWはサセプタ73により継続して加熱される。そして、半導体ウェハーWの温度上昇時には、図示しない温度センサにより、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1に到達したか否かを常に監視する。
【0077】
なお、この予備加熱温度T1は、例えば200℃ないし600℃程度の温度である。半導体ウェハーWをこの程度の予備加熱温度T1まで加熱したとしても、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンが拡散してしまうことはない。
【0078】
やがて、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1に到達すると、フラッシュランプ69を点灯してフラッシュ加熱を行う。このフラッシュ加熱工程におけるフラッシュランプ69の点灯時間は、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の時間である。このように、フラッシュランプ69においては、予め蓄えられていた静電エネルギーがこのように極めて短い光パルスに変換されることから、極めて強い閃光が照射されることになる。
【0079】
このようなフラッシュ加熱により、半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に温度T2に到達する。この温度T2は、1000℃ないし1100℃程度の半導体ウェハーWのイオン活性化処理に必要な温度である。半導体ウェハーWの表面がこのような処理温度T2にまで昇温されることにより、半導体ウェハーW中に打ち込まれたイオンが活性化される。
【0080】
このとき、半導体ウェハーWの表面温度が0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の極めて短い時間で処理温度T2まで昇温されることから、半導体ウェハーW中のイオン活性化は短時間で完了する。従って、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンが拡散することはなく、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンのプロファイルがなまるという現象の発生を防止することが可能となる。なお、イオン活性化に必要な時間はイオンの拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であってもイオン活性化は完了する。
【0081】
また、フラッシュランプ69を点灯して半導体ウェハーWを加熱する前に、加熱プレート74を使用して半導体ウェハーWの表面温度を200℃ないし600℃程度の予備加熱温度T1まで加熱していることから、フラッシュランプ69により半導体ウェハーWを1000℃ないし1100℃程度の処理温度T2まで速やかに昇温させることが可能となる。
【0082】
フラッシュ加熱工程が終了した後に、サセプタ73および加熱プレート74がモータ40の駆動により
図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置まで下降するとともに、ゲートバルブ68により閉鎖されていた開口部66が開放される。そして、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWが図示しない搬送ロボットにより搬出される。以上のようにして、一連の熱処理動作が完了する。
【0083】
以上のように構成された本実施形態に係る熱処理装置によれば、チャンバー65内の処理空間における気中パーティクル濃度が測定部50により測定される。気中パーティクル濃度は、処理室に収容される基板に付着するパーティクルの個数と相関関係がある。従って、パーティクルテストに合格可能な基板上のパーティクル数に相当する気中パーティクル濃度にまで処理空間内の気中パーティクル濃度が低減された後にパーティクルテストが行われれば、熱処理装置のメンテナンス後に必要となるパーティクルテストの回数が削減され得る。また、装置自体に測定部50が備えられているために気中パーティクル濃度の測定に要する時間や手間は、パーティクルテストに比べて格段に少ない。従って、本実施形態に係る熱処理装置によれば、大幅なコスト削減も可能となる。
【0084】
また、以上のように構成された本実施形態に係る熱処理装置によれば、磁気ディスク14にチャンバー65内の処理空間における気中パーティクル濃度とチャンバー65に収容された基板に付着するパーティクルの個数との相関関係を示す相関情報が格納される。そして、コントローラ10は、測定部50による測定結果と該相関情報とに基づいてチャンバー65に収容される予定の基板に付着するパーティクルの個数を算定する。さらに、処理空間のパーティクル濃度が基準値以下であれば、つまり基板に付着するパーティクルの個数として算定された結果が所定の規定値以下となって初めてパーティクルテストを実施する。従って、実際に基板を使用したパーティクルテストが行われなくても、パーティクルテストに合格可能なレベルにまで、チャンバー65内のパーティクル濃度が低減され得る。
【0085】
また、以上のように構成された本実施形態に係る熱処理装置によれば、測定部50の排気を行う排出路93が設けられているので、チャンバー65内の気体の測定部50の測定室への導入が、より円滑に行われ得る。
【0086】
また、以上のように構成された本実施形態に係る熱処理装置によれば、測定部50の排気を行う排出路93の内径が、チャンバー65内の排気を行う排出路79、84の内径よりも細いので、排出路93内から測定部50内への気体の逆流が、起こりにくい。従って、気中パーティクル濃度の測定精度がより改善される。
【0087】
また、以上のように構成された本実施形態に係る熱処理装置によれば、フラッシュランプ69を備え、チャンバー65内に収容した基板に対してフラッシュランプ69から閃光を照射することによって収容された基板が熱処理される。フラッシュランプによる閃光が用いられる場合には、熱処理時に基板におよぶ衝撃が大きくなり基板が割れやすくなる。その結果、メンテナンス頻度が高くなる。しかしながら、本熱処理装置では、測定部50によって気中パーティクル濃度が測定されるので、メンテナンス後の立ち上げ処理におけるクリーニング結果の検証が容易となる。従って、フラッシュ発光によりメンテナンス頻度が増えたとしても、気中パーティクル濃度が用いられない場合に比べて、立ち上げ処理におけるコスト増を抑制することができる。
【0088】
また、以上のように構成された本実施形態に係る熱処理装置によれば、フラッシュランプ69などを備えた光源5と吸排気系との組み合わせによりチャンバー65内の処理空間における気中パーティクルが除去される。従って、チャンバー65内の処理空間における気中パーティクル濃度を、パーティクルテストに合格できるレベルにまで低減することができる。
【0089】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の構成は第1実施形態と全く同じである。第1実施形態ではメンテナンス作業終了後に気中パーティクル濃度を測定してチャンバー65のクリーニング処理を行っていたが、第2実施形態においては、半導体ウェハーWの熱処理中に気中パーティクル濃度を測定して必要に応じたクリーニング処理を行う。すなわち、本発明に係る熱処理装置には、気中パーティクル濃度を測定する測定部50がチャンバー65に付設されており、半導体ウェハーWの処理中であっても随時チャンバー65内の気中パーティクル濃度を測定することができる。そこで、第2実施形態では、半導体ウェハーWの定常処理中にチャンバー65内の気中パーティクル濃度を測定し、その濃度レベルに応じたパーティクル除去処理を行うのである。
【0090】
図8は、第2実施形態の熱処理装置での処理を示すフローチャートである。まず、半導体ウェハーWの処理中に気中パーティクル濃度の測定を行う(ステップS30)。熱処理装置における半導体ウェハーWの熱処理の内容については第1実施形態にて説明した通りである。すなわち、チャンバー65内にて加熱プレート74およびサセプタ73によって保持されて予備加熱された半導体ウェハーWの表面にフラッシュランプ69から閃光を照射してフラッシュ加熱を行うというものである。
【0091】
このような半導体ウェハーWの定常的な熱処理を行っているときの任意のタイミングで測定部50によってチャンバー65内の処理空間における気中パーティクル濃度を測定する。処理中に測定部50によって測定するパーティクルのサイズ(粒径)は適宜の値に設定することができる。測定部50による測定結果はコントローラ10に伝達される。
【0092】
第2実施形態においては、ウェハー処理中の気中パーティクル濃度に3段階の閾値を設定し、濃度レベルに応じた対応を行う。具体的には、ウェハー処理中の気中パーティクル濃度がレベル3(第3の閾値)を超えたときには
図9に示すフローチャートの処理を行う(ステップS40)。気中パーティクル濃度がレベル3以下でかつレベル2(第2の閾値)を超えたときには
図10に示すフローチャートの処理を行う(ステップS50)。気中パーティクル濃度がレベル2以下でかつレベル1(第1の閾値)を超えたときには
図11に示すフローチャートの処理を行う(ステップS60)。
【0093】
ここで、気中パーティクル濃度を判定する第1の閾値であるレベル1は、熱処理装置にて半導体ウェハーWの熱処理を行う前後でウェハー1枚当たりに付着しているパーティクル数が25個から50個増加するのに相当する気中パーティクル濃度である。また、気中パーティクル濃度を測定する第2の閾値であるレベル2は、同じく半導体ウェハーWの熱処理を行う前後でウェハー1枚当たりに付着しているパーティクル数が51個から100個増加するのに相当する気中パーティクル濃度である。さらに、気中パーティクル濃度を測定する第3の閾値であるレベル3は、半導体ウェハーWの熱処理を行う前後でウェハー1枚当たりに付着しているパーティクル数が101個以上増加するのに相当する気中パーティクル濃度である。
【0094】
図12は、処理前後での半導体ウェハーW上のパーティクル増加数と気中パーティクル濃度との相関を示す図であり、
図4と同様の意味のものである。ウェハー上のパーティクル増加数は気中パーティクル濃度と概ね比例しており、パーティクル増加数が最も大きい場合に相当するレベル3はレベル2よりも大きく、レベル2はレベル1よりも大きい。コントローラ10は、測定部50の測定結果に基づいて、ウェハー処理中の気中パーティクル濃度がいずれのレベルであるかを判定し、例えばその判定結果を表示部21(
図3)に表示する。そして、その表示内容に基づいて気中パーティクル濃度のレベルに応じた対応が行われる。
【0095】
説明の都合上、ステップS60にて気中パーティクル濃度がレベル2以下でかつレベル1を超えたと判定されたときの手順から説明する。
図11は、気中パーティクル濃度がレベル1を超えたときの手順を示すフローチャートである。気中パーティクル濃度がレベル2以下でかつレベル1を超えているときには、チャンバー65内に軽微なパーティクル汚染が生じている状況である。このような軽微な汚染状況のときには、チャンバー65への給排気流量を最大にしてチャンバー65内のパーティクルを除去する。以下、その手順について具体的に説明する。
【0096】
まず、気中パーティクル濃度がレベル2以下でかつレベル1を超えたと判定されたときには、半導体ウェハーWの処理が中断される(ステップS61)。但し、熱処理装置にて処理中の半導体ウェハーWの処理を直ちに中断するのではなく、区切りの良いところまでの処理が終了した後に中断する。例えば、その処理中の半導体ウェハーWを含むロットの最後の半導体ウェハーWの処理が終了した後に中断する。
【0097】
ウェハー処理を中断した後、チャンバー65に対して最大流量で30秒間給排気を行う(ステップS62)。具体的には、ガス配管82に設けられたマスフローコントローラ89によってチャンバー65に供給する窒素ガスの流量を最大流量(例えば、50リットル/分)とする。同時に、チャンバー65の排気経路を排気管83の大径管に切り替え、チャンバー65から最大流量で排気を行う。
【0098】
このようなチャンバー65に対する最大流量での給排気を30秒間行った後、通常流量でのチャンバー65に対する給排気を15秒間行う(ステップS63)。具体的には、マスフローコントローラ89によってチャンバー65に供給する窒素ガスの流量を通常のウェハー処理時の流量(例えば、20リットル/分)にするとともに、排気経路を排気管83の小径管に切り替え、チャンバー65から通常流量で排気を行う。
【0099】
ステップS62の最大流量での給排気(30秒)とステップS63の通常流量での給排気(15秒)とを50回繰り返す(ステップS64)。このような最大流量での給排気と通常流量での給排気とを繰り返すことによって、チャンバー65内に滞留しているパーティクルをチャンバー65の外部に排出する。なお、ここに示した最大流量での給排気時間および通常流量での給排気時間、並びに、繰り返し回数は一例であり、これらの数値は上記の例に限定されるものではない。
【0100】
その後、測定部50によってチャンバー65内の気中パーティクル濃度の測定が行われる(ステップS65)。測定部50による測定結果にて気中パーティクル濃度が上記のレベル1以下となっていた場合には、ステップS66からステップS58に進んで熱処理装置における半導体ウェハーWの処理が再開される。
【0101】
一方、最大流量での給排気と通常流量での給排気との繰り返しによるパーティクル除去によってもなお気中パーティクル濃度がレベル1を超えている場合には、ステップS62からステップS64の処理をさらに2回繰り返す(ステップS67)。すなわち、最大流量での給排気と通常流量での給排気とを50回繰り返す処理を2回行うのである。なお、ステップS67での繰り返しの回数も2回に限定されるものではなく、1回または3回であっても良い。
【0102】
その後、測定部50によってチャンバー65内の気中パーティクル濃度の測定が再度行われる(ステップS68)。再測定の結果、気中パーティクル濃度がレベル1以下となっていた場合には、ステップS69からステップS58に進んで熱処理装置における半導体ウェハーWの処理が再開される。一方、それでも猶、気中パーティクル濃度がレベル1を超えている場合には、以下に述べるレベル2相当のパーティクル除去処理が行われる。
【0103】
図10は、
図8のステップS50にて気中パーティクル濃度がレベル2を超えたときの手順を示すフローチャートである。気中パーティクル濃度がレベル3以下でかつレベル2を超えているときには、チャンバー65内に中程度のパーティクル汚染が生じている状況である。このような中程度の汚染状況のときには、「ゴーストラン」を行ってチャンバー65内のパーティクルを除去する。
【0104】
まず、気中パーティクル濃度がレベル3以下でかつレベル2を超えたと判定されたときには、半導体ウェハーWの処理が即時中断される(ステップS51)。具体的には、仕掛かり中の半導体ウェハーWについてはそのまま処理を続行するが、熱処理装置への新たな半導体ウェハーWの投入が停止される。チャンバー65内の汚染が軽微(気中パーティクル濃度がレベル2以下でかつレベル1より大きい)なときには処理の継続が一応は可能な状況であるが、汚染が中程度(気中パーティクル濃度がレベル3以下でかつレベル2より大きい)のときには処理を続行すると不良ウェハーとなるおそれが高くなるため、処理を即時中断するのである。
【0105】
ウェハー処理を即時中断した後、ゴーストランを100回実行する(ステップS52)。また、
図11のステップS69にて気中パーティクル濃度がレベル1を超えていると判定された場合にも、ステップS52に進んでゴーストランが100回実行される。ここで、「ゴーストラン」とは、あたかもチャンバー65内にウェハーが搬送されているかのように搬送ロボット、ゲートバルブ68および加熱プレート74などを動作させつつ、窒素雰囲気下でフラッシュランプ69を点灯させる処理であり、
図5のステップS150と同様の処理である。すなわち、実際には半導体ウェハーWは存在していないのであるが、仮想的に半導体ウェハーWを搬送しつつ、その仮想の半導体ウェハーWに処理を行ってパーティクルをチャンバー65から排出する。このようなゴーストランを100回実行することによって、チャンバー65内に滞留しているパーティクルを除去する。なお、ゴーストランの実行回数は100回に限定されるものではなく、適宜の回数とすることができる。
【0106】
その後、測定部50によってチャンバー65内の気中パーティクル濃度の測定が行われる(ステップS53)。測定部50による測定結果にて気中パーティクル濃度が上記のレベル1以下となっていた場合には、ステップS54からステップS58に進んで熱処理装置における半導体ウェハーWの処理が再開される。
【0107】
一方、ゴーストランによるパーティクル除去によってもなお気中パーティクル濃度がレベル1を超えている場合には、再度ゴーストランを100回実行する(ステップS55)。なお、ステップS55でのゴーストランの実行回数も100回に限定されるものではなく、適宜の回数とすることができる。
【0108】
その後、測定部50によってチャンバー65内の気中パーティクル濃度の測定が再度行われる(ステップS56)。再測定の結果、気中パーティクル濃度がレベル1以下となっていた場合には、ステップS57からステップS58に進んで熱処理装置における半導体ウェハーWの処理が再開される。一方、それでも猶、気中パーティクル濃度がレベル1を超えている場合には、以下に述べるレベル3相当のパーティクル除去処理が行われる。
【0109】
図9は、
図8のステップS40にて気中パーティクル濃度がレベル3を超えたときの手順を示すフローチャートである。気中パーティクル濃度がレベル3を超えているときには、チャンバー65内に深刻なパーティクル汚染が生じている状況である。このような深刻な汚染状況のときには、チャンバー65を開放してメンテナンスを行う必要がある。なお、
図8のステップS30にてウェハー処理中に気中パーティクル濃度を測定したときに、突如として気中パーティクル濃度がレベル2或いはレベル3以上となることもある。このようになる原因としては、半導体ウェハーWがチャンバー65内にパーティクルを持ち込んだり、チャンバー65に対する給排気系統のトラブルが生じたことが考えられる。
【0110】
気中パーティクル濃度がレベル3を超えたと判定されたときには、半導体ウェハーWの処理が即時中断される(ステップS41)。これは
図10の即時中断と同じであり、仕掛かり中の半導体ウェハーWについてはそのまま処理を続行するが、熱処理装置への新たな半導体ウェハーWの投入が停止される。チャンバー65内の汚染が深刻(気中パーティクル濃度がレベル3より大きい)なときには、処理を続行すると不良ウェハーとなるおそれが極めて高いため、処理を即時中断する。
【0111】
ウェハー処理を即時中断した後、チャンバー65を開放してメンテナンスを実行する(ステップS42)。また、
図10のステップS57にて気中パーティクル濃度がレベル1を超えていると判定された場合にも、ステップS42に進んでメンテナンスが実行される。このメンテナンスは
図5のステップS110と同じ工程である。そして、メンテナンス終了後は、第1実施形態の
図5および
図6のステップS120からステップS210にて示したの同様のメンテナンス後の処理が行われる(ステップS43)。すなわち、測定部50による気中パーティクル濃度測定の結果を踏まえた上での実際のパーティクルテストが行われる。
【0112】
このように第2実施形態においては、半導体ウェハーWの熱処理中に測定部50によって気中パーティクル濃度を測定し、その濃度レベルに応じたパーティクル除去を行っている。本発明に係る熱処理装置には、気中パーティクル濃度を測定する測定部50がチャンバー65に付設されているため、半導体ウェハーWの処理中であっても随時チャンバー65内の気中パーティクル濃度を測定することができる。そして、測定したパーティクル濃度が所定の閾値を超えているときには、チャンバー65内のパーティクル除去を行うため、半導体ウェハーWの処理中にチャンバー65内のパーティクル濃度が高くなった場合にも迅速にパーティクルを減少させることができる。
【0113】
また、ウェハー処理中に測定した気中パーティクル濃度がレベル3以下(チャンバー65内の汚染状況が軽微または中程度)のときには、チャンバー65を開放することなく、パーティクル除去処理が行われる。このため、熱処理装置のダウンタイムを削減することができる。
【0114】
<変形例>
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。例えば、RTP装置や枚葉式のCVD装置などフラッシュランプ以外により熱処理が行われる装置に対して気中パーティクル濃度を測定する本発明が適用されたとしても、本発明の有用性を損なうものではない。また、本実施形態に係る熱処理装置では、加熱プレートによって熱処理時の基板の予備加熱が行われているが、ハロゲンランプ等からの放射熱により予備加熱が行われても良い。
【0115】
また、第1実施形態において、ステップS150とステップS160との間に、ウェハー搬送を50回程度実施するようにしても良い。このときには、ダミーウェハーを通常の処理フローに従って搬送してチャンバー65内に収容する。フラッシュ加熱については、例えば50回のうちの25回を行うようにして、残りの25回は行わないというようにすれば良い。ダミーウェハーをチャンバー65内に搬入・搬出することによって、チャンバー65内に滞留しているパーティクルがダミーウェハーに付着して持ち出されることとなる。その結果、パーティクル除去の効果をさらに増すことができる。なお、このようなウェハー搬送によるパーティクル除去を行うときには、毎回新しいダミーウェハーを用いるのが好ましい。
【0116】
また、第2実施形態にてゴーストランを行った後(ステップS52およびステップS55の後)にも、ウェハー搬送を50回程度実施してパーティクル除去効果を高めるようにしても良い。