特許第6184738号(P6184738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184738コンクリート部材の補強構造及びその補強構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184738
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】コンクリート部材の補強構造及びその補強構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/34 20060101AFI20170814BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   E04C3/34
   E04G23/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-98214(P2013-98214)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-218822(P2014-218822A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】503119111
【氏名又は名称】株式会社ジェイアール総研エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】大屋戸 理明
(72)【発明者】
【氏名】木村 礼夫
(72)【発明者】
【氏名】星 秀朋
(72)【発明者】
【氏名】西村 昭彦
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3157662(JP,U)
【文献】 特開平10−096330(JP,A)
【文献】 特開2011−226172(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3178589(JP,U)
【文献】 特開2007−321486(JP,A)
【文献】 特開平09−078850(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3084325(JP,U)
【文献】 特開平08−303018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/20, 3/34
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、前記単材又は芯材の表面に摩擦力増強用の微小な突起を設けてなることを特徴とするコンクリート部材の補強構造。
【請求項2】
コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、前記単材が前記コンクリート部材に与える拘束力を増強するために、単材を予め外向きに屈曲させてなることを特徴とするコンクリート部材の補強構造。
【請求項3】
コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、全体を拘束する横拘束材とは別に前記単材を部分結束材で2本ずつ部分的に結束してなることを特徴とするコンクリート部材の補強構造。
【請求項4】
コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、前記全体を拘束する横拘束材とは別に前記単材を部分結束材で編み込み結束してなることを特徴とするコンクリート部材の補強構造。
【請求項5】
コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、全体を拘束する横拘束材とは別に、一部の前記単材を前記コンクリート部材とともに部分的に結束してなることを特徴とするコンクリート部材の補強構造。
【請求項6】
単材を間引きした状態で仮の横結束線または横拘束材に固定して格子状のプレハブ単材を予め作製し、この格子状の単材をコンクリート部材の外周に締結し、間引きしてある間隙に単材を挿入することを特徴とするコンクリート部材の補強構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材の補強構造及びその補強構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート部材の補強構造として鋼板や繊維シートによる巻立て補強構造があった。
【0003】
また、本願発明者らによって、芯材と、この芯材の周囲に配置される単材又は組単材と、それら全体を拘束する拘束部(横拘束材)とを具備するコンクリート集成材及びその構築方法が提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−226172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの従来あった巻立て補強構造では、部材に曲げが作用して圧縮力を受けた部分がはらみだして座屈し、破壊するという問題があった。また、例えば鋼板巻き立て補強の場合は、溶接やモルタル充填などが必要なことから、施工に手間が掛かり高コストであるとういう点が課題であった。
【0006】
また、本願発明者らが提案していたコンクリート集成材を補強構造として用いる場合、補強対象となるコンクリート部材を芯材として、その周囲に小部材(単材)を多数配置することが必要となるが、その簡易な配置施工の方法はこれまで提案されておらず、現場作業が煩雑になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、集成構造を用いることにより、コンクリート部材の補強を行う、現場作業が迅速なコンクリート部材の補強構造及びその補強構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、前記単材又は芯材の表面に摩擦力増強用の微小な突起を設けてなることを特徴とする。
【0009】
〕コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、前記単材が前記コンクリート部材に与える拘束力を増強するために、単材を予め外向きに屈曲させてなることを特徴とする。
【0010】
〕コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、全体を拘束する横拘束材とは別に前記単材を部分結束材で2本ずつ部分的に結束してなることを特徴とする。
【0011】
〕コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、前記全体を拘束する横拘束材とは別に前記単材を部分結束材で編み込み結束してなることを特徴とする。
【0012】
〕コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材で締め付けた集成構造を用いるコンクリート部材の補強構造において、全体を拘束する横拘束材とは別に、一部の前記単材を前記コンクリート部材とともに部分的に結束してなることを特徴とする。
【0013】
〕コンクリート部材の補強構築方法において、単材を間引きした状態で仮の横結束線または横拘束材に固定して格子状のプレハブ単材を予め作製し、この格子状の単材をコンクリート部材の外周に締結し、間引きしてある間隙に単材を挿入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、施工費用を低廉かつ現場作業を迅速としながら、コンクリート部材の耐力および靱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例を示すすだれ状のプレハブ単材を示す模式図である。
図2図1のすだれ状のプレハブ単材の図面代用写真である。
図3図1のすだれ状のプレハブ単材を組み合わせる方法を示す説明図である。
図4】本発明のすだれ状のプレハブ単材をコンクリート部材の周囲に組み合わせる作業の状態を示す図面代用写真である。
図5】すだれ状のプレハブ単材を配置し締結バンドにより拘束して完成した状態を示す図面代用写真である。
図6】本発明の他の実施例における格子状のプレハブ単材の模式図およびコンクリート部材の周囲に組み合わせる方法を示す説明図である。
図7】格子状のプレハブ単材を丸く組んだ状態のイメージ図である。
図8】コンクリート部材に集成補強を施した場合の効果について、単純はり形式の繰り返し曲げ載荷を行った結果を示した概念図である。
図9】単材として使用する丸鋼又は芯材の表面に、摩擦力増強用の微小な突起を設ける例を示す図である。
図10】単材が芯材に与える拘束力を増強するために、単材を予め外向きに屈曲させておくようにした例を示す図である。
図11】部材の耐力およびエネルギー吸収能力を高めるため、鉄筋に予めプレストレス(緊張力)を付与するようにした例を示す図である。
図12】単材の量を増すために、二重以上に芯材周囲に配置するようにした例を示す図である。
図13】全体を拘束する横拘束材とは別に、予め単材を部分結束材で2本ずつ結束しておくようにした例を示す図である。
図14】全体を拘束する横拘束材とは別に、単材を部分結束部材で編み込み結束しておくようにした例を示す図である。
図15】全体を拘束する横拘束材とは別に、一部の単材をコンクリート部材とともに部分的に結束しておくようにした例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のコンクリート部材の補強構造は、コンクリート部材の補強として単材を周囲に配置し、横拘束材を締め付けた集成構造を用いてなり、前記単材又は芯材の表面に摩擦力増強用の微小な突起を設けてなる
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施例を示すすだれ状のプレハブ単材を示す模式図であり、図1(a)はすだれ状に配置された平面図、図1(b)はそのすだれ状のプレハブ単材をコンクリート部材に組み合わせた状態の断面図、図2はそのすだれ状のプレハブ単材の図面代用写真である。
【0019】
これらの図に示すように、人力運搬するのに支障のない大きさおよび重量の範囲で、10数本程度の複数の単材1を予め部分結束することですだれ状のプレハブ単材2を予め作製し、これを現場でコンクリート部材3に組み合わせる方法を用いてコンクリート集成構造を構成する。ここで、単材1は丸鋼などの小部材である。短冊状あるいは半円・1/4円等に予め成形され、分割された鋼板を単材として用いることも可能である。さらに、本集成補強を使用後、解体し再利用した単材も使用可能である。
【0020】
図3は工場で製作された電柱に建植前に予め集成構造による補強を行う場合の概念を示し、図1のすだれ状のプレハブ単材を組み合わせる方法を示す説明図である。
【0021】
すだれ状のプレハブ単材は、1枚当たり30kg程度と重量があることから、プレハブ単材を人力にてコンクリート部材に組み合わせる際は、以下に説明するように仮の締結を行いながら集成構造を構成していく。まず、図3(a)に示すように、1枚目のプレハブ単材12Aをコンクリート部材11の周囲に配置し、図3(b)に示すように、番線で第1の仮の締結を行う。次いで、図3(c)に示すように、全体を回転させ、図3(d)に示すように、1枚目のプレハブ単材12Aに隣接するようにして2枚目のプレハブ単材12Bを配置し、図3(e)に示すように、第2の仮の締結を行う。次いで、図3(f)に示すように、第1の仮の締結を解除し抜き去った後、図3(g)に示すように、第2の仮の締結を引き締める。この図3(d)〜(g)の手順を、プレハブ単材12を順次隣接させてコンクリート部材11を一周するまで繰り返すことにより、コンクリート部材の補強構造を構成する。
【0022】
なお、例えば、図3(h)に示すように、1枚目のプレハブ単材12Aから4枚目のプレハブ単材12Dまで順次配置したら、スリング13をコンクリート部材11の下部より配置し、クレーンで吊って番線を一旦引き締める。次いで、図3(i)に示すように、プレハブ単材12Eを配置し、その後、図示しないが、プレハブ単材12Eと1枚目のプレハブ単材12Aとの間に残った隙間に適合する幅を有するすだれ状のプレハブ単材を配置し、最後にさらに間隙が生じれば単材を1本ずつ追加し、横拘束材で全体を引き締めることで、隙間無く単材を配置することができる。
【0023】
図4は本発明のすだれ状のプレハブ単材をコンクリート部材の周囲に組み合わせる作業の状態を示す図面代用写真、図5はすだれ状のプレハブ単材を配置し横拘束材により締めつけて完成した状態を示す図面代用写真である。
【0024】
このようにして、すだれ状のプレハブ単材によりコンクリート部材の補強を行うことができる。上記特許文献1では組単材を用いる方法が示されているが、本発明によれば、プレハブ単材をすだれ状とし自由に曲げられるため、補強対象の断面形状に合わせて変形が可能であり、施工性が向上する。
【0025】
なお、既に現場で建植された既存のコンクリート部材を補強する場合は、図3の(b)から(c)に至る回転は行わない。また、図3の(h)に示すクレーンにより吊って引き締める工程は行わない。
【0026】
次いで、本発明の第2実施例のコンクリート部材の補強方法について説明する。
【0027】
図6は本発明の他のコンクリート部材の補強方法の説明図であり、図6(a)は本発明の格子状のプレハブ単材を示す模式図、図6(b)は格子状のプレハブ単材をコンクリート部材に取り付けた状態を示す断面図、図7は格子状のプレハブ単材を丸く組んだ状態のイメージ図である。
【0028】
これらの図に示すように、コンクリート部材の1周分の長さに相当する数のうち例えば4本即ち90度につき1本ほどの少数に間引きした単材21を、コンクリート部材に締結するための仮の横結束材または締結バンド22に結束して、格子状のプレハブ単材23を予め作製し、これを現場でコンクリート部材24に締結してから残った隙間の部分に上部又は下部から単材を挿入することで、コンクリート部材の補強構造を構成する。
【0029】
上記したコンクリート部材としては、例えば、電柱が挙げられ、その電柱の外周にプレハブ単材を締結バンドによって締めつけることにより、コンクリート部材の補強を行う。本発明は、施工性に優れるため、現に構築された既存のコンクリート部材に適用する場合に特に有用である。また、例えば、鋼管柱などコンクリート以外の部材への適用にも応用可能である。
【0030】
本構造をコンクリート部材に適用した場合の実施例のうち、力学的な性能に関する事項を示す。
【0031】
図8はコンクリート部材に集成補強を施した場合の効果について、単純はり形式の繰り返し曲げ載荷を行った結果を示した概念図である。縦軸Pは曲げ荷重、横軸δは加力点の変位量を示す。集成補強を施した場合(1)は、施さない場合(2)より、大変形域における荷重が大きく、靱性に優れた構造とすることができる。
【0032】
(1)の曲線は、以下図9図15に示す方法を採用することにより、(3)の曲線のようにさらに耐力・靱性を高めることが可能である。
【0033】
図9では、単材として使用する鉄筋又は芯材31の表面に、摩擦力増強用の微小な突起32を設ける。
【0034】
図10では、単材41が芯材(コンクリート部材)42に与える拘束力を増強するために、単材41を予め外向きに屈曲させておく。
【0035】
図11では、補強後の部材の耐力およびエネルギー吸収能力を高めるため、芯材(コンクリート部材)51に取り付けた後に、単材52に予めプレストレス(緊張力)を付与する。
【0036】
図12では、単材61の量を増すために、二重以上に芯材(コンクリート部材)62の周囲に配置する。
【0037】
図13では、芯材(コンクリート部材)72の全体を締めつける横拘束材(締結バンド)とは別に、単材71を部分結束材73で2本ずつ部分的に結束しておく。
【0038】
図14では、芯材(コンクリート部材)82の全体を拘束する横拘束材(締結バンド)とは別に、単材81を部分結束材83で編み込み結束しておく。
【0039】
図15では、芯材(コンクリート部材)92の全体を拘束する横拘束材(締結バンド)とは別に、一部の単材91をコンクリート部材92とともに部分結束材93で部分的に結束しておく。
【0040】
このようにして、格子状のプレハブ単材によりコンクリート部材の補強を行うことができる。上記特許文献1では組単材を用いる方法が用いられているが、本発明によれば、プレハブ単材が格子状として自由に曲げられ、かつ間隙に単材を挿入することが可能であるため、補強対象の断面形状にあわせて変形が可能であり、施工性が向上する。
【0041】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のコンクリート部材の補強構造は、プレハブ単材を予め作製することによって現場作業が迅速なコンクリート部材の補強構造及びその補強構築方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1,21,31,41,52,61,71,81,91 単材
2 すだれ状のプレハブ単材
3,11,24,42,51,62,72,82,92 芯材(コンクリート部材)
12A〜12E 1枚目〜5枚目のプレハブ単材
13 スリング
22 仮の横拘束材又は締結バンド
23 格子状のプレハブ単材
32 突起
73,83,93 部分結束材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15