【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施例を示すすだれ状のプレハブ単材を示す模式図であり、
図1(a)はすだれ状に配置された平面図、
図1(b)はそのすだれ状のプレハブ単材をコンクリート部材に組み合わせた状態の断面図、
図2はそのすだれ状のプレハブ単材の図面代用写真である。
【0019】
これらの図に示すように、人力運搬するのに支障のない大きさおよび重量の範囲で、10数本程度の複数の単材1を予め部分結束することですだれ状のプレハブ単材2を予め作製し、これを現場でコンクリート部材3に組み合わせる方法を用いてコンクリート集成構造を構成する。ここで、単材1は丸鋼などの小部材である。短冊状あるいは半円・1/4円等に予め成形され、分割された鋼板を単材として用いることも可能である。さらに、本集成補強を使用後、解体し再利用した単材も使用可能である。
【0020】
図3は工場で製作された電柱に建植前に予め集成構造による補強を行う場合の概念を示し、
図1のすだれ状のプレハブ単材を組み合わせる方法を示す説明図である。
【0021】
すだれ状のプレハブ単材は、1枚当たり30kg程度と重量があることから、プレハブ単材を人力にてコンクリート部材に組み合わせる際は、以下に説明するように仮の締結を行いながら集成構造を構成していく。まず、
図3(a)に示すように、1枚目のプレハブ単材12Aをコンクリート部材11の周囲に配置し、
図3(b)に示すように、番線で第1の仮の締結を行う。次いで、
図3(c)に示すように、全体を回転させ、
図3(d)に示すように、1枚目のプレハブ単材12Aに隣接するようにして2枚目のプレハブ単材12Bを配置し、
図3(e)に示すように、第2の仮の締結を行う。次いで、
図3(f)に示すように、第1の仮の締結を解除し抜き去った後、
図3(g)に示すように、第2の仮の締結を引き締める。この
図3(d)〜(g)の手順を、プレハブ単材12を順次隣接させてコンクリート部材11を一周するまで繰り返すことにより、コンクリート部材の補強構造を構成する。
【0022】
なお、例えば、
図3(h)に示すように、1枚目のプレハブ単材12Aから4枚目のプレハブ単材12Dまで順次配置したら、スリング13をコンクリート部材11の下部より配置し、クレーンで吊って番線を一旦引き締める。次いで、
図3(i)に示すように、プレハブ単材12Eを配置し、その後、図示しないが、プレハブ単材12Eと1枚目のプレハブ単材12Aとの間に残った隙間に適合する幅を有するすだれ状のプレハブ単材を配置し、最後にさらに間隙が生じれば単材を1本ずつ追加し、横拘束材で全体を引き締めることで、隙間無く単材を配置することができる。
【0023】
図4は本発明のすだれ状のプレハブ単材をコンクリート部材の周囲に組み合わせる作業の状態を示す図面代用写真、
図5はすだれ状のプレハブ単材を配置し横拘束材により締めつけて完成した状態を示す図面代用写真である。
【0024】
このようにして、すだれ状のプレハブ単材によりコンクリート部材の補強を行うことができる。上記特許文献1では組単材を用いる方法が示されているが、本発明によれば、プレハブ単材をすだれ状とし自由に曲げられるため、補強対象の断面形状に合わせて変形が可能であり、施工性が向上する。
【0025】
なお、既に現場で建植された既存のコンクリート部材を補強する場合は、
図3の(b)から(c)に至る回転は行わない。また、
図3の(h)に示すクレーンにより吊って引き締める工程は行わない。
【0026】
次いで、本発明の第2実施例のコンクリート部材の補強方法について説明する。
【0027】
図6は本発明の他のコンクリート部材の補強方法の説明図であり、
図6(a)は本発明の格子状のプレハブ単材を示す模式図、
図6(b)は格子状のプレハブ単材をコンクリート部材に取り付けた状態を示す断面図、
図7は格子状のプレハブ単材を丸く組んだ状態のイメージ図である。
【0028】
これらの図に示すように、コンクリート部材の1周分の長さに相当する数のうち例えば4本即ち90度につき1本ほどの少数に間引きした単材21を、コンクリート部材に締結するための仮の横結束材または締結バンド22に結束して、格子状のプレハブ単材23を予め作製し、これを現場でコンクリート部材24に締結してから残った隙間の部分に上部又は下部から単材を挿入することで、コンクリート部材の補強構造を構成する。
【0029】
上記したコンクリート部材としては、例えば、電柱が挙げられ、その電柱の外周にプレハブ単材を締結バンドによって締めつけることにより、コンクリート部材の補強を行う。本発明は、施工性に優れるため、現に構築された既存のコンクリート部材に適用する場合に特に有用である。また、例えば、鋼管柱などコンクリート以外の部材への適用にも応用可能である。
【0030】
本構造をコンクリート部材に適用した場合の実施例のうち、力学的な性能に関する事項を示す。
【0031】
図8はコンクリート部材に集成補強を施した場合の効果について、単純はり形式の繰り返し曲げ載荷を行った結果を示した概念図である。縦軸Pは曲げ荷重、横軸δは加力点の変位量を示す。集成補強を施した場合(1)は、施さない場合(2)より、大変形域における荷重が大きく、靱性に優れた構造とすることができる。
【0032】
(1)の曲線は、以下
図9〜
図15に示す方法を採用することにより、(3)の曲線のようにさらに耐力・靱性を高めることが可能である。
【0033】
図9では、単材として使用する鉄筋又は芯材31の表面に、摩擦力増強用の微小な突起32を設ける。
【0034】
図10では、単材41が芯材(コンクリート部材)42に与える拘束力を増強するために、単材41を予め外向きに屈曲させておく。
【0035】
図11では、補強後の部材の耐力およびエネルギー吸収能力を高めるため、芯材(コンクリート部材)51に取り付けた後に、単材52に予めプレストレス(緊張力)を付与する。
【0036】
図12では、単材61の量を増すために、二重以上に芯材(コンクリート部材)62の周囲に配置する。
【0037】
図13では、芯材(コンクリート部材)72の全体を締めつける横拘束材(締結バンド)とは別に、単材71を部分結束材73で2本ずつ部分的に結束しておく。
【0038】
図14では、芯材(コンクリート部材)82の全体を拘束する横拘束材(締結バンド)とは別に、単材81を部分結束材83で編み込み結束しておく。
【0039】
図15では、芯材(コンクリート部材)92の全体を拘束する横拘束材(締結バンド)とは別に、一部の単材91をコンクリート部材92とともに部分結束材93で部分的に結束しておく。
【0040】
このようにして、格子状のプレハブ単材によりコンクリート部材の補強を行うことができる。上記特許文献1では組単材を用いる方法が用いられているが、本発明によれば、プレハブ単材が格子状として自由に曲げられ、かつ間隙に単材を挿入することが可能であるため、補強対象の断面形状にあわせて変形が可能であり、施工性が向上する。
【0041】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。