特許第6184741号(P6184741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184741
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20170814BHJP
   F01N 5/04 20060101ALI20170814BHJP
   F02M 26/08 20160101ALI20170814BHJP
【FI】
   F02B37/00 302F
   F01N5/04 B
   F02M26/08 301
   F02M26/08 331
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-102925(P2013-102925)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-224468(P2014-224468A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】高倉 隆
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−240156(JP,A)
【文献】 特開平03−117632(JP,A)
【文献】 特表2010−513133(JP,A)
【文献】 特表2007−515585(JP,A)
【文献】 特開2014−152763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/04
F02B 33/00−41/10、47/08−47/10
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンである内燃機関の排気通路に設けられたタービンを有し、排気ガスからエネルギーを回収するエネルギー回収手段と、
前記エネルギー回収手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記エネルギー回収手段は、前記タービンの回転により発電するターボ発電機であり、
前記制御手段は、前記タービンの回転負荷を変更することにより前記排気通路内の排気圧を調整し、排気ブレーキを掛ける場合、前記タービンを固定することにより前記排気通路内の排気圧を高めて排気ブレーキを掛けることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記内燃機関の吸気通路の空気を過給する固定翼式のターボチャージャーと、
前記排気通路の排気ガスの一部を前記吸気通路に導入するEGRと、を更に備え、
前記制御手段は、前記排気通路の排気圧が前記吸気通路の吸気圧より高くなるように前記タービンの回転負荷を変更することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の低燃費を実現するために、ターボチャージャーの駆動を電動機によってアシストする電動アシストターボチャージャーを備えた内燃機関が知られている(例えば、特許文献1参照)。この内燃機関では、車両の急加速時など排気圧の上昇が間に合わない場合に電動機によってタービンを回転させることで適切な吸気効率を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−265810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タービンブレードの開口面積が一定である固定翼式のターボチャージャーを備える内燃機関においては、車両の走行状態などによって排気圧が吸気圧よりも低下する場合がある。この場合には、EGRを効かせることができないため、排気絞り弁によって排気圧を吸気圧より高める制御が行われている。しかしながら、高めた排気圧については十分なエネルギー回収が行われておらず、排気圧損により燃費が悪化するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、排気圧の調整を実現しつつ、排気ガスから適切にエネルギー回収を行うことができる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ディーゼルエンジンである内燃機関の排気通路に設けられたタービンを有し、排気ガスからエネルギーを回収するエネルギー回収手段と、エネルギー回収手段を制御する制御手段と、を備え、エネルギー回収手段は、タービンの回転により発電するターボ発電機であり、制御手段は、タービンの回転負荷を変更することにより排気通路内の排気圧を調整し、排気ブレーキを掛ける場合、タービンを固定することにより排気通路内の排気圧を高めて排気ブレーキを掛けることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る内燃機関によれば、排気ガスからエネルギーを回収するエネルギー回収手段を備え、エネルギー回収手段のタービンの回転負荷を変更することにより排気ガスを排出しにくく又は排出しやすくすることで排気通路内の排気圧を調整することができる。しかも、この内燃機関によれば、高まった排気圧が必ずタービンを通過するので、そのエネルギーを回収することができる。従って、この内燃機関によれば、排気圧の調整を実現しつつ、排気ガスから適切にエネルギー回収を行うことができる。これにより、内燃機関の燃費向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明に係る内燃機関においては、吸気通路の空気を過給する固定翼式のターボチャージャーと、排気通路の排気ガスの一部を吸気通路に導入するEGRと、を更に備え、制御手段は、排気通路の排気圧が吸気通路の吸気圧より高くなるようにタービンの回転負荷を変更してもよい。
この内燃機関によれば、排気圧が吸気圧より高くなるようにタービンの回転負荷を変更することで内燃機関の運転状態により排気圧が低下した場合であってもEGRを効かせることができる。また、この内燃機関によれば、EGRを効かせるために高めた排気圧のエネルギーをタービンで回収することができるので、排気圧損による燃費悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る内燃機関によれば、排気圧の調整を実現しつつ、排気ガスから適切にエネルギー回収を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るディーゼルエンジンを示す概略図である。
図2】第2の実施形態に係るディーゼルエンジンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る内燃機関の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1に示す第1の実施形態のディーゼルエンジン1は、トラックやバスその他の車両に備えられる車載用の内燃機関である。このディーゼルエンジン1は、ECU[Engine Control Unit]2によって統括的に制御されている。ECU2は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニット(制御手段)である。
【0016】
また、ディーゼルエンジン1は、複数の気筒を備えるエンジン本体3と、エンジン本体3に空気を供給するための吸気通路4と、エンジン本体3から排気ガスを排出するための排気通路5と、吸気通路4において過給を行うためのターボチャージャー6と、を備えている。
【0017】
吸気通路4には、空気中の粉塵を捕えて清浄な空気とするためのエアクリーナ7と、過給により温度上昇した空気を冷却するためのインタークーラ8が設けられている。また、吸気通路4において、エアクリーナ7及びインタークーラ8の間にはターボチャージャー6のコンプレッサ6aが設けられている。
【0018】
一方、ターボチャージャー6のタービン6bは、排気通路5に設けられている。ターボチャージャー6では、エンジン本体3から排出される排気ガスの圧力によってタービン6bが回転されることにより、コンプレッサ6aが回転駆動され、吸気通路4内の空気の過給が行われる。このターボチャージャー6は、固定翼式の過給機であり、タービン6bのタービンブレードの開口面積は一定である。
【0019】
排気通路5には、排気ガスのエネルギーを回収するターボ発電機9と、排気ガスを処理する後処理システム10を備えている。後処理システム10は、排気ガスを浄化するための酸化触媒やNOx低減装置などから構成される排気ガス処理のシステムである。
【0020】
ターボ発電機9は、排気ガスのエネルギーを電力として回収するエネルギー回収手段である。ターボ発電機9は、排気通路5に設けられたタービン9aと、シャフトを介してタービン9aに接続されたモータ9bと、を備えている。
【0021】
このターボ発電機9では、エンジン本体3から排出された排気ガスの圧力(排気圧)によってタービン9aが回転され、モータ9bにおいて発電が行われる。モータ9bで生じた電力は、車載のバッテリーに蓄えられる。バッテリーはリチウムイオン電池などの大容量のものが好ましい。
【0022】
また、このターボ発電機9は、ECU2によってコントロールされている。ECU2は、タービン9aの回転負荷(回転トルク)を変更する。タービン9aの回転負荷を変更する方法は特に限定されないが、例えば電磁石を利用してシャフトの回転を抑制する方法などが挙げられる。電磁石はモータ9bに設けられていても良く、モータ9bとは別に設けられていてもよい。また、回転抑制用の発電機を別途設けてもよい。その他、摩擦などを利用して機械的にタービン9aの回転負荷を変更する構成であってもよい。
【0023】
また、ディーゼルエンジン1は、EGR[Exhaust Gas Recirculation]通路11が備えている。EGR通路11は、NOx抑制や燃費向上を目的とした排気再循環を行うための通路であり、排気通路5と吸気通路4とを繋いでいる。EGR通路11には、排気通路5から導入した排気ガスの一部(EGRガス)を冷却するEGRクーラ12と、EGRガスの流量を制御するEGRバルブ13が設けられている。
【0024】
このディーゼルエンジン1では、ECU2によってタービン9aの回転負荷を変更することにより、排気通路5の排気圧を調整する。具体的に、ECU2は、EGR率コントロールのために排気圧の調整を行う。ECU2は、エンジンの運転状況によって排気圧が吸気圧より低くなる場合(例えばエンジンに高トルクの負荷が掛かっている場合)であっても、適切にEGRを効かせるため、吸気圧より排気圧が高くなるようにタービン9aの回転負荷を変更して排気圧を調整する。
【0025】
更に、ECU2は、運転者が排気ブレーキボタンを操作した場合など、排気ブレーキを掛ける際にタービン9aの回転負荷を増大させる。ECU2は、タービン9aの回転負荷を増大させて排気圧を高めることにより、エンジンのポンピングロスを大きくして制動力を発揮させる。なお、ECU2は、排気ブレーキを掛ける際にタービン9aを固定して回転不能な状態としてもよい。また、ディーゼルエンジン1は、排気ブレーキ専用の排気絞り弁を別途備えていてもよい。
【0026】
以上説明した第1の実施形態に係るディーゼルエンジン1によれば、排気ガスからエネルギーを回収するターボ発電機9を備え、ターボ発電機9のタービン9aの回転負荷を変更することにより排気ガスを排出しにくく又は排出しやすくして排気圧を調整することができる。しかも、このディーゼルエンジン1では、高まった排気圧が必ずタービン9aを通過するので、そのエネルギーを回収することができる。従って、このディーゼルエンジン1によれば、排気圧の調整を実現しつつ、排気ガスから適切にエネルギー回収を行うことができる。これにより、ディーゼルエンジンの燃費向上を図ることができる。
【0027】
また、このディーゼルエンジン1では、EGR率をコントロールするため、排気圧が吸気圧より高くなるようにタービン9aの回転負荷を変更して排気圧を調整することができる。このディーゼルエンジン1によれば、EGRを効かせるために高めた排気圧のエネルギーをタービン9aで回収することができるので、排気圧損による燃費悪化を抑制することができる。これにより、通常時の排気調整において排気絞り弁を使用する必要が無くなるので、排気絞り弁を排気ブレーキ専用とすることもできる。この場合、排気絞り弁の使用頻度が大幅に低下するので排気絞り弁の長寿命化や構成の簡素化が可能となる。なお、必ずしも排気絞り弁を設ける必要はない。
【0028】
更に、このディーゼルエンジン1によれば、タービン9aの回転負荷を増大させることにより、排気圧を高めてポンピングロスを大きくさせ、排気ブレーキを掛けることができる。しかも、このディーゼルエンジン1によれば、排気ブレーキにおいて高まった排気圧のエネルギーをタービン9aの回転として回収することができ、燃費向上に有利である。また、このディーゼルエンジン1では、ターボ発電機9により、排気ガスのエネルギーを汎用性の高い電力として回収することができる。回収した電力は、バッテリーに蓄積することもでき、様々な用途に用いることができる。
【0029】
[第2の実施形態]
図2に示す意第2の実施形態に係るディーゼルエンジン20は、第1の実施形態に係るディーゼルエンジン1と比べて、ターボ発電機9に代えて電動アシストターボ21を備えている点が大きく異なる。なお、第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
電動アシストターボ21は、排気ガスのエネルギーを回転エネルギーとして回収するエネルギー回収手段であり、回転エネルギーをディーゼルエンジン20のクランクシャフト3aに伝達させる。電動アシストターボ21は、排気通路5に設けられたタービン21aと、シャフトを介してタービン21aに接続されたギア21bと、を有している。
【0031】
ギア21bは、流体継手23の入力側のギア22と噛み合っている。流体継手23は、流体を介して回転運動の伝達を行う継手である。流体継手23の出力側のギア24は、中間ギア25を介してフライホイール26のギア27と連動している。フライホイール26は、クランクシャフト3aに接続している。このような構成により、電動アシストターボ21のギア21bの回転出力は、クランクシャフト3aに伝達される。
【0032】
この電動アシストターボ21も、ECU2によってコントロールされており、ECU2は、タービン21aの回転負荷を変更することで排気圧の調整を行う。
【0033】
以上説明した第2の実施形態に係るディーゼルエンジン20によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、このディーゼルエンジン20では、第1の実施形態に係るターボ発電機9に代えて、電動アシストターボ21を備えており、排気ガスのエネルギーを回転エネルギーとしてクランクシャフト3aに伝達することができる。この場合、排気ガスのエネルギーを高い効率で回収することができ、燃費向上に有利である。
【0034】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明はディーゼルエンジンに限られず、ガソリンエンジンにも適用可能である。また、必ずしも固定翼式のターボチャージャーである必要はなく、可変ノズルベーンを有する可変容量ターボチャージャーを備えていてもよい。また、特許請求の範囲に記載のエネルギー回収手段としてターボチャージャーを利用してもよい。この場合のターボチャージャーは二段ターボの二段目とすることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1,20…ディーゼルエンジン(内燃機関) 2…ECU(制御手段) 3…エンジン本体 3a…クランクシャフト 4…吸気通路 5…排気通路 6…ターボチャージャー 6a…コンプレッサ 6b…タービン 7…エアクリーナ 8…インタークーラ 9…ターボ発電機(エネルギー回収手段) 9a…タービン 9b…モータ 10…後処理システム 11…EGR通路 12…EGRクーラ 13…EGRバルブ 21…電動アシストターボ(エネルギー回収手段) 21a…タービン 21b…ギア 22,24,27…ギア 23…流体継手 25…中間ギア 26…フライホイール
図1
図2